精神科看護における認知症高齢者のbpsdへの対応...

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Instructions for use Title 精神科看護における認知症高齢者のBPSDへの対応と課題 : 「問題行動」をキーワードとしたケーススタデ ィの文献検討から Author(s) 片丸, 美恵; 宮島, 直子; 村上, 新治 Citation 看護総合科学研究会誌, 11(1), 3-13 Issue Date 2008-09-30 DOI 10.14943/33986 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/35523 Type article File Information 11-1_p3-13.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Instructions for use

Title 精神科看護における認知症高齢者のBPSDへの対応と課題 : 「問題行動」をキーワードとしたケーススタディの文献検討から

Author(s) 片丸, 美恵; 宮島, 直子; 村上, 新治

Citation 看護総合科学研究会誌, 11(1), 3-13

Issue Date 2008-09-30

DOI 10.14943/33986

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/35523

Type article

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Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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原著論文

精神科看護における認知症高齢者の BPSDへの対応と課題

ー「問題行動」をキーワードとしたケーススタディの文献検討から一

片丸美恵宮島直子村上新治

(北海道大学大学院保健科学研究院)

Nursing Intervention and Study Themes to Behavioral Psychological Symptoms of

Dementia 包PSD)in Elderly Patients with Dementia in the Field of

Psychiatric Nursing

-Review of Literature about the Case Studies 台omthe View Point of Problem Behavior-

Mie KATAMARU, Naoko MIYAJIMA, Shinji MURAKAMI

(Faculty of Health Sciences, Hokkaido University)

要旨

認知症高齢者の BPSDへの看護介入と看護研究の課題を明らかにする目的で,過去 10年間の文献検

討を行なった。精神科看護における BPSDを示す認知症高齢者のケーススタディ 6編が選択され な

じみの関係をつくるJ,r安定した場所の確保J,r行動症状・心理症状の背後にある要因をアセスメント

するん「自尊感情を守る関わり J,rコミュニケーションの工夫J,r介入のタイミングを見計らう J,rセ

イフティマネジメントJ,r非薬物療法への参加を奨める」という 8項目に分類された。精神科看護技術

の統合に向けて1.ケーススタディにおいて,神経学的要因, BPSD,看護介入,結果を丁寧に記述

し,それぞれを認知症タイプや病期において比較検討する, 2. BPSDに対するコミュニケーション技

法を検討する, 3.認知症の重篤な BPSDに対するセイフティマネジメントを検討する,の課題があげ

られた。

キーワード:認知症, BPSD,精神科看護,文献検討

1.はじめに

認知症における精神症状と行動障害は, 日常

生活を脅かし本人の苦痛を増大させるだけでは

なく,介護者の負担を増し,在宅介護生活や施

設入所生活が破綻する要因にあげられているに

認知症の行動障害には,身体攻撃性,喚声,不

穏、,焦燥,俳f固などがあり ,心理症状には不安,

抑うつ気分,幻覚,妄想、などがある針。これら

の症状は,従来は認知症の周辺症状,随伴症状,

問題行動と呼ばれてきた3)が, 最近では

3

Behavioral and psychological symptoms of de

mentia 認知症の行動・心理症状,以下 BPSD

とする)という概念が用いられるようになって

いる 2)(表 1) 0 1990年代に国際老年医学会

Onternational Psychogeriatric Association 以下

IPAとする)において BPSDの概念が提唱され,

BPSDによる早期の施設入所や医療費の増大,

介護者と認知症高齢者の QOLの低下が指摘さ

れていた九

認知症高齢者の BPSDに対する看護介入を確

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表 1 BPSDの特徴的症状

片丸美恵・宮島直子 ・村上新治

International Psychogeriatric Association, 2005

グループ I

(厄介でL対処が難しい症状)

心理症状

妄想

幻覚

抑うつ

不眠

不安

行動症状

身体的攻撃性

俳佃

不穏

)圃

状一

症一

る一

れ一

キC

ま一

吋凶-

tPE--

V

-i-

E

置一

p

:園、

1

・心

行動症状

焦燥

社会通念上の不適当な行動と

性的脱抑制

部屋の中を行ったり来たりす

喚声

グループE

(比較的処置しやすい症状)

行動症状

泣き叫ぶ

ののしる

無気力

繰り返し尋ねる

シャドーイ ング

立することは,認知症高齢者本人だけではなく

介護者の QOLを高めることができると考えら

れる。そこで,認知症高齢者の BPSDに対する

看護介入を検討するために,医学中央雑誌デー

ターベースにおいて「認知症J,IBPSDJのキー

ワードで 1998年から 2008年の過去 10年間の

原著論文を検索した結果, BPSDに対する看護

研究はまだ少ない状況にあった。これは,認知

症高齢者の BPSDが看護の分野において重要視

されていないことを示しているのではない。

BPSDの概念で示される攻撃的行動,俳梱など

の行動症状を, 2000年の文献では認知症の問

題行動という言葉を用いて説明していたヘま

た,認知症高齢者の俳佃や暴言,幻覚などの問

題行動に対する看護師の認識に関する研究5)や,

認知症高齢者の問題行動の経験頻度や援助の困

難性に関する研究6)なと看護の分野において

認知症高齢者の問題行動に対する知見が積み重

ねられてきている。したがって,認知症高齢者

の問題行動に関する看護研究を検討することに

より, BPSDに対する看護への示唆が得られる

と考えた。

また,池田は,精神科外来を受診する認知症

高齢者の BPSDの重症度は,重篤で緊急性を要

する場合が多いことを指摘し,精神科臨床にお

ける BPSDの課題について述べている九精神

科看護においても,重篤な BPSDを呈する認知

看護総合科学研究会誌 Vo1.11,No.1, Sep. 2008

症高齢者への看護介入を確立していく課題があ

ると考える。

本研究では,精神科病棟に入院している問題

行動を呈する認知症高齢者への看護研究を文献

検討することにより, BPSDに対してどのよう

に介入されているかを検討し,精神科看護にお

ける BPSDへの看護介入と看護研究の課題を明

らかにすることを目的とする。

11. 研究方法

1 用語の定義

BPSD:認知症でみられる行動・心理症状

であり,知覚,思考内容,気分または行

動の障害による症状2)

問題行動:認知症でみられる症状や行動の

中で,本人,看護師,介護者,他の患者

などにとって有害とみなされた行動

2.文献検討の方法

平成 20年 2月末に,医学中央雑誌データー

ベースにて 1998年から 2008年 2月現在までの

過去 10年間認知症J,IBPSDJのキーワー

ドで AND検索し,原著論文に絞り込んだ結果

77編の文献が検索された。さらに 「看護」で

絞り込み 11編の文献が検索されたが,文献要

旨から分類した結果,精神科病棟もしくは精神

病院に入院している認知症高齢者を対象とした

看護に関する文献はなかった。

-4一

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精神科看護における認知症高齢者の BPSDへの対応と課題

次に,同時期に医学中央雑誌データーベース

にて 1998年から 2008年 2月現在までの過去

10年 間を認知症J,r問題行動J,r看護」の

キーワードで AND検索し,原著論文に絞り込

んだ結果, 142編が検索された。そのうち,

BPSDに関連のない文献 3編を除外し, 139編

の論文を文献要旨によってテーマもしくは研究

対象によって分類した。これより, rBPSDに

対する介入に関する研究J34編在宅認知症

高齢者のケアを対象にした研究J27編非薬

物療法J23編家族を対象とした研究J12編,

「認知症高齢者の身体的ケアJ7編, rセイフティ

マネジメントJ 6編ケアスタッフを対象と

した研究J 7編グループ。ホームを対象とし

た研究J 6編尺度開発J 6編 r救急J 2編,

「薬物療法J 2編その他J 7編に分けられた。

rBPSDに対する介入に関する研究J34編の

文献のうち 4編 7-10)は一般総合病院など精神

科以外の診療科病棟を対象としており, 3

編4,11,12)はナーシングホーム 8編13ー却)は老人保

健施設・特別養護老人ホームなどの施設を対象

としていたために, これらを除外した。 9

編21-29)は,認知症病棟または療養型医療施設が

対象であったために除外した。これらには,診

療科が明記されていないために精神病院と確定

できなかったものも含まれている。また 1

編町立認知症の医学的研究を行なう施設という

特殊性があるために除外した。その結果,精神

科病棟に入院している認知症高齢者を対象にし

た研究と判断できたものは 9編で、あった。

これらの 9編の文献のうち, BPSDに対する

具体的な看護介入を文献から検討することを目

的にしているため,量的研究の 1編31)を除外し

た。次に,認知症の経過や年齢によって対応が

異なることが考えられるため,検討する看護介

入の対象を 70歳以上の認知症高齢者に限定し

た。したがって, 70歳以下の認知症患者を含

めて対象としていたケーススタディ 2編32却を

除外し, 70歳代以上の認知症を対象としたケー

ススタディ 6編34-39)を分析対象とした。 この 6

編の文献から, BPSDに対してどのような介入

が効果的だったとあげられているかを抽出して

BPSDへの介入方法を分類し, BPSDへの介入

方法を検討して精神科看護における看護研究の

課題を導き出した。

ill. 結果

分析対象とした文献6編において,疾患名・

対象者・対象とした BPSD・介入方法・結果

(対象者の変化)について表にまとめた(表 2)。

1 ,文献の対象者の概要

6編の文献が対象とした認知症は,アノレツハ

イマー型認、知症4例,脳血管性認知症 1例,老

年痴呆 1例で、あった。認知症の評価をスケーノレ

で示していたのは 3編あり,そのうち 2編の対

象者は,改訂長谷川式簡易スケーノレ(以下

HDS-Rとする。最高得点は 30点であり, 20

点以下は認知症を疑う。)においてそれぞれ 1

点 3点であり, 1編の対象者は Dementia

Behavior Disturbance Scale (以下 DBDSとする。

得点は O点'"'-'112点あり,高得点であるほど問

題行動が高い頻度でみられる。)において 47点

であった。年齢は, 70歳代前半から 80歳代後

半であった。男性は4名,女性は 2名だった。

2 文献が対象とした BPSD

幻覚,妄想,俳佃,身体的攻撃性,暴言,拒

否,不眠,収集癖,奇声,危険を伴う行為で、あっ

た。

3, BPSDへの介入方法

6編の文献から, BPSDに対して効果的だっ

たと記述されていた看護介入を抽出した結果,

「なじみの関係をつくるJ,r安定した場所の確

保j, r行動症状・心理症状の背後にある要因を

アセスメントするJ,r自尊感情を守る関わり J,

「コミュニケーションの工夫J,r介入のタイミ

ングを見計らう J,rセイフティマネジメントJ,

「非薬物療法への参加を奨める」の 8項目に分

類された。

5 看護総合科学研究会誌 Vol.11,No.1, Sep. 2008

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ヰ 判 「 淋 掛 ・ 時 加 耐 ボ ・ 泣 l r 塑 芯

文献

の概

筆者

・出版年

対象

者対象とする

BPSD

介入

結果(対象者の変化)

顔馴

染み

にな

るた

めに

担当

看護

師の

関わ

りを

強化

返事が返ってくるようになり,笑顔がみられるようになった。

脳血

管性

痴呆

暴言、

ケアを実施するときは,言葉をかけて同意を得るように心がけた。

言葉による反応が多くなった。

藤井

公貴

・垣

井豊

子トIDS-R:

1,長

身体的攻撃性,

他患者と食事の席を同席とし,馴染みの関係をつくる。

他患者と言葉を交わすようになった。

2005

80歳

代後

半拒否

促せ

ば毎

日の

よう

に参

加し

,塗

り絵

を行

うこ

とが

日課

にな

った

頃よ

り,

ro歯む

JI

男性

小グ

ルー

プ活

動へ

の参

加行為はなくなり,暴力は減少し,言葉も穏やかになり,

リハビリの

参加

を拒

否す

ることはなくなった。

看護

師が

顔釧

染み

にな

るた

めに

,最

初は

少し

距離

をお

きな

がら

,ゆ

くりと近づき,短い会話から始め,常に笑顔で対応した。

相F1回H寺は

,むやみに制止したり叱責せずに,

rどこ

かへ

おで

かけ

です

かJ

と声をかけ,返答を否定しないで一緒に手をつないで歩いたり,

3週

を過

ぎる

ころ

より

拒否

する

こと

は少

なく

なっ

てき

た。

現実

見当

はで

きて

いな

加藤

智也

老年痴呆(高度)

不眠

,関心を他に向けるようにした。

くても,笑

顔や

穏や

かな

表情

がみ

られ

るよ

うになった

80歳

代前

半身

体的

攻撃

性,

オム

ツ交

換・

衣類

交換

時は

,尿

で汚

染し

てい

るよ

うな

言葉

を避

け,

拒2002

男性

1JF1回

,奇声

否す

る場

合に

は,

少し

問を

あけ

,世

間話

から

落ち

着い

た気

持ち

を持

せたところで援助した。

夜間

の俳

佃を

続け

る場

合は

,様

子を

見て

,眠

気が

おき

たと

ころ

を見

は夜

間の

俳f回

が減少し,十分な陸

11民をとれることが多くなった。

かりベッドに誘導した。

名前で呼ぶよりも,働いていたときに呼ばれていた役職で呼んだ。

反応は良く,拒否的態度が少ないことがあった。

増田恵津子

アノレツハイマー型痴呆

俳f回

の目

的を

「物

を集

める

ため

」と

アセ

スメ

ント

し,

夜間

の収

集を

容短

時間

の俳

御で

,そ

の後

まと

まっ

た睡

眠が

得ら

れる

よう

にな

った

と同

時に

,収

集堀内真一路

80歳

代前

半俳f回

(収集相手)

認し

盗ら

れる

」と

いう

不安

感を

持た

ない

よう

に愚

者の

隣室

後に

集11寺

に見せていた笹戒的態度や表情が徐々に緩和されていった。しかし,頻度は減っ

2003

女性

めたものを元に戻した。

たものの

,完全に改善されてはいない。

暴力

に対

して「暴力はやめてくださしリと説得

了解

が得

られ

るこ

とは

なく

,複

数の

援助

者で

なだ

めな

がら

も強

制的

に制

止し

なけ

れば

なら

ない

こと

が多

かっ

た。

レクリェーションへの参加

風船

バレ

ーや

玉入

れは

楽し

げに

行い

,屋

外へ

の散

歩時

には

気候

や植

物の

様子

に関

鈴木

和代

,前

崎正

江アノレツハイマー型痴呆

,身体的攻撃性,

心や

感動

を表

した

。I-IDS-R3,保

危険

を伴

う行

為,

役割意識に基づく行動障害に対しては

,自他の安全を脅かす即

Jきで、あっ

2005

80歳

代中

頃拒

否て

も,

援助

者は

「仕

事で

ある

こと

を認

めて

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」と

伝え

るた

めに

お礼

笑顔でうなずいたが,

!Ii.IJきを変えることはなかった

。を言ーった。

おし

ぼり

たた

みな

どの

単純

作業

を勧

め,

労を

ねぎ

らい

感謝

の気

持ち

を作業中は表情に活気や笑顔が見られ,作業後も数十分から2~3時間落ち着いて

{云えた。

ホーノレに座って過ごすことができた。

俳f回

は家に帰りたい,他患への干渉や多聞

Jは

お世

話し

たい

気持

ちと

アノレツハイマー型痴呆

幻覚

,妄想,

セスメン卜した。

鍋島

鹿子

70歳

代後

半相F1回,

危険やトラブルがあるときには制止したが,できるだけ傾聴、し,見守

夫と電話で会話をすると「安心しました」という言葉がきかれた。

2006

女性

身体

的攻

撃性

ると

とも

に,

家族

には

面会

を依

頼し

,夫に電話をかけた。

病棟

内の

合同

体操

,室

内作

業,

SSTへの参加

日勤帯

,準

夜勤

帯の

俳佃

,多!Ii1Jの沈静化は完全ではなかったが,夜間良

l民できる

ようになった。

非自

語的

コミ

ユー

ケー

ショ

ンを

用い

、表

情や

しぐ

さか

らA氏

の言

葉に

前頭

葉優

位型

ならないニードを把握するように心がけた。

河村充洋,渡部治子、

アノレツハイマー病

記憶

障害

があ

るた

め,

ドアに大きく名前を表示し,繰り返し誘導した。

自室に対する認識を深めた。

梶村礼

子{也

DBDS47,#.

身体的攻撃性,

日課にラジオ体操、レクリェーション、買い物を取り入れた。

易怒、性も消失し,表情良く活動に参加できるようになった。

2006

70歳

代前

半俳

佃デイノレームでは,常に一定の場所を確保した。

暴力行為の出現には至らなかった。

男性

気持ちを受容し,自尊心を傷つけないように配慮、した。

主治医の指示にて

,本人の同意を得て,

夜間

のみ

自室

施錠

を行

った

興奮することなく,睡眠を健保できた。

喜びを共有し

,で

きた

こと

を評

価し

た。

注疾

患名

は文

献の

原文

記述

を引

表2

醐 臨 時 開 ゆ 草 川 w g 河 臥 府 関 〈 O 一 - - 戸 Z 0 ・4

・ ω 0 3 ・ M g ∞ σ 、

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精神科看護における認知症高齢者の BPSDへの対応と課題

1)なじみの関係をつくる

藤井らは,担当看護師の関わりを強化し,他

患者とも席を同席にしてなじみの関係をつくる

ように配慮した結果,対象者からの返事や笑顔

が見られるようになったことを報告していたへ

加藤は,看護師が顔なじみになるために,少し

距離をおきながらゆっくりと近づいていく方法

をとっていた3ヘ

鍋島は,看護師より家族への面会の依頼や配

偶者に電話をかける援助をし,対象者が配偶者

と電話で話すことにより「安心しました」とい

う言葉がきかれたことを報告していた36)。

2) 安定した場所の確保

河村らは,記憶障害に対して自室のドアに大

きく名前を表示し,繰り返し誘導して自室に対

する認識を深めたこと,デイルームで、は常に同

一の場所を確保したことを報告していたへ

3) 行動症状・心理症状の背後にある要因をア

セスメン卜する

俳佃の目的について,増田らは「物を集める

ため」却に鍋島は「家に帰りたい気持ちJ とア

セスメントしていた制。また,鍋島は他患者へ

の干渉や多動を 「お世話したい気持ちJと捉え

た36)。鈴木らは,危険を伴う行動障害の中に

「役割意識を伴っているj とアセスメントして

いた3ヘ河村らは,表情やしぐさから言葉にな

らないニードを把握するようにしていた3九藤

井らは,噛む行為やリハビリへの拒否の背景に

は,身体が思うように動かなくなったことによっ

て, リハビリが苦痛になったのではないかと考

えたω。

4) 自尊感情を守る関わり

俳佃時の関わりでは,加藤はむやみに叱責せ

ずに「どこかへおでかけですか」と声をかけ,

その返答を否定しない対応をとった3ヘ増田ら

は,夜間俳千四時の物の収集を容認し,盗まれる

不安感を持たせないよう,対象者が部屋を離れ

た後に集めたものを元の場所に戻していた38)。

河村らは,夜間の俳佃に対して主治医の指示を

受けた後本人の同意を得て自室施錠を行い,興

奮することなく睡眠を確保できたことを報告し

ていた37)。

ケアを実施するときは,藤井らは言葉をかけ

て同意を得てから実施した剖)。加藤は,オムツ

交換や衣類交換時に尿で汚染していることを指

摘する言葉を避けて対応していたお)。

さらに,鈴木らは,役割意識に基づくと判断

された行動障害がみられた時にはその行為を仕

事として認めていることを伝えるよう配慮し,

おしぼりたたみなどの単純作業を勧めた後に労

をねぎらい,感謝の気持ちを伝えていた39)。鍋

島はできるだけ傾聴する 36)こと,河村らは気持

ちを受容し自尊心を傷つけないように配慮した

こと,喜びを共有したことを報告していたへ

加藤は,名前で呼ぶよりも働いていたときの役

職名で呼ぶと反応が良く,拒否が少なかったこ

とを報告していた刻。

5)コミュニケーションの工夫

加藤は,看護師が顔なじみの関係になるため

に,短い会話から始め,常に笑顔で対応したお)。

また,俳f回時には一緒に手をつないで歩いた3ヘ

藤井らは,重度の難聴のある対象者に,大きな

声で、ゆっくりと,言葉を短く,繰り返したずね

て同意を得るようにした34)。鈴木らは言葉かけ

にジェスチャーを交え39) 河村らはアイコンタ

クトや指差しなどの非言語的コミュニケーショ

ンを用いた3η。

6) 介入のタイミングを見計らう

加藤は,顔なじみの関係になる前に,最初は

ゆっくりと距離をおきながら近づいていたお)。

また,ケアを拒否する場合には少し聞をあけ,

世間話によって気持ちが落ち着いたところで援

助していた3ヘ俳佃時は一緒に手をつないで歩

き,関心を他にむけるように関わっていた3ヘ

夜間俳佃を続ける場合は,しばらく見守り,眠

気がおきたところを見計らいベッドに誘導する

という方法をとっていたお)。鍋島は,暴力や拒

否がみられる場合,子どもや故郷の話をすると

落ち着きがみられたことを報告していたへ

-7ー 看護総合科学研究会誌 Vol.11,No.1, Sep. 2008

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片丸美恵・宮島直子・村上新治

7)セイフティ マネジメント

増田らは,夜間俳佃時の危険の回避, トラブ

ノレには特に注意することを述べていた3ヘ 河村

らは,身体的攻撃性が予測される場合は物理的

距離をあけること,危険を防ぐために見守るこ

とができるように人的環境を整える必要性を述

べていたぺ

8) 非薬物療法への参加を奨める

藤井らの対象者は塗り絵などの小グループ。活

動に参加し3ぺ 鈴木らの対象者は風船バレーや

散歩などの レクリェーションベ鍋島の対象者

はダンスなどの合同体操・室内作業に参加して

いた36)。河村らの対象者は,日課にラジオ体操・

レクリェーション・買い物を取り入れていたぺ

N 考察

室伏は,健忘型認知症の要因の進行による変

化像,老年期の喪失と存在不安,認知症に伴う

行動・心理症状の成因とそれによる対応を根拠

としたメンタノレケアの原則42)を述べている(表

3)。具体的には,人物誤認(既知化)がもた

らす人間関係や,手続き記憶の潜在的な保持を

促すこと,安心 ・安定を図ることの重要性など

表3 メンタルケアの原則 室伏君士 (2008)

1.認知症高齢者の態度や言動を, 受容し理解する

2.なじみの人間関係をつくること

3.認知症高齢者の心のベース(とくに思い,感情)

に合わせること

4 理屈による説得よりも,気持ちが通じて心でわ

かるような共感的な納得を図ること

5 よい刺激をたえず与える,ふさわしい状況で隠

れた能力を発揮させること

6. 認知症高齢者を孤独にしない,安易に寝たきり

にしないこと

7.急激な環境変化を避ける,記憶の学習では変化

させずに(パターン化して)教える

8. 現在 今を大切にして,安心・安定 ・安住の暮

らしを図ること

9. 過去:従来の“過去の自分らしさや生き方"を

できるだけ保つ,よい質の生き方を図る

10. 未来安心・安全 ・安楽の余生を図ること

看護総合科学研究会誌 Vol.11,No.1, Sep. 2008 -8

が説明されている 42)。文献の検討から得られた

「なじみの関係をつくるJ,r安定した場所の確

保J,r自尊感情を守る関わり J,rコミュニケー

ションの工夫J,r介入のタイミングを見計らう J,

「非薬物療法への参加を奨める」の 6項目は,

室伏が述べたメンタルケアの原則と共通してい

ると考えられる。

今回,文献が対象としていた BPSDの中には,

幻覚,妄想、,俳佃,身体的攻撃性,暴言,拒否,

不眠,奇声・喚声があり ,BPSDの中でもグノレー

プ 1 (厄介で対処が難しい症状)に分類される

症状2)である。認知症の評価をスケールで示し

ていた文献は 3編で、あったが,そのうち 2編の

対象者は HDS- Rにおいて 1点 3点であり,

重度の認知症に分類されるものであった。も う

1編の対象者は DBDSにおいて 47点であり,

俳佃,尿失禁,暴力,逸脱行為において得点が

高かったと述べられていた。使用されたスケー

ルは同一で、はなく, 他 3編の文献は認知症の評

価をスケールで示されていないが,本研究にお

ける文献の対象者は, BPSDの分類からも重度

で対応困難であった と考える。松本らは,精神

病院への入院の適応となる BPSDの行動障害は

激しく ,本人や周囲が危険な状態となると述べ

ている州。これらのこ とから,精神科における

BPSDに対する看護介入は, BPSDのアセスメ

ント,コミュニケーション技術,セイフティマ

ネジメン トの側面から特に専門性が要求される

と考える。以下,これらの 3点について考察す

る。

1 .精神科看護における BPSDのアセスメン ト

本研究の文献検討によって得られた BPSDへ

の看護介入の 8項目のうち,全ての文献におい

て 「行動症状・ 心理症状の背後にある要因をア

セスメン トするJことにより,看護師の対応が

肯定的・受容的な対応に変化していた。 BPSD

に影響するものには環境要因,心理学的要因,

神経学的要因があり 2) これらをアセスメント

することによって BPSDの背後にある対象者の

心理や背景に着眼した対応を可能にする。しか

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精神科看護における認知症高齢者の BPSDへの対応と課題

し, BPSDは認知症高齢者に負担や危険を生じ

させるだけではなく,家族や周囲への影響も大

きい。また,高齢者の薬物に対する脆弱さのた

めに,薬物療法が困難であることが多い。この

ために,身体拘束や行動症状を抑制する対応に

なってしまうなど, BPSDの病理を理解するま

での過程には看護師の心理的な葛藤が生じてい

たことが推察される。高山は, BPSDの根底に

は認知症による病理が存在すると理解すること

で看護師の心理的苦痛は軽減し,感情的になっ

た行動は軽減するだろうと述べているへこの

ように, r行動症状・心理症状の背後にある要

因をアセスメントする」という項目には,

BPSDの病理の存在を理解し,看護師の心理的

な葛藤を乗り越えるというプロセスが含まれて

いると考える。このプロセスにおいて,看護師

自身に生じた心理的苦痛や否定的な感情に対し

てどのように対処してきたかを明らかにするこ

とも,認知症高齢者をケアするスタッフのパー

ンアウトを予防するための示唆が得られるので

はなし、かと考える。

一方,文献において BPSDが生じた根拠とし

てあげられていたのは環境要因,心理学的要因

が中心であり,神経学的要因にふれていたのは

1編だけであった。 BPSDに対するそれぞれの

要因があげられていても, BPSDとの関連を言

及していたとはいえない。例えば,藤井ら3勺ま

脳血管性認知症を対象としており,介入によっ

て対象者の言葉による反応が多くなったと報告

していた。これは,アルツハイマー型認知症を

対象とした他の文献と異なり特徴的であった。

脳血管性認知症の場合,脳血管障害が起きた領

域の機能が強く障害され,脳血管障害のない領

域の機能は保たれているという特徴があるべ

同じ脳血管性認知症で、あっても,脳の障害され

た部位によって看護介入を変える必要があり,

またその介入に対する反応や結果は異なるであ

ろう。したがって,ケーススタディにおいて,

環境要因や心理学的要因からのアセスメントに

偏らずに,脳のどの部分が障害されているのか,

9

どのような BPSDが出現しているのか,どのよ

うな看護介入をして,どのような結果がもたら

されたかを丁寧に記述していくことが重要であ

る。

これは,アルツハイマー型認知症, レピー小

体型認知症においても同様である。それぞれの

認知症タイプや病期によってもたらされた知見

を比較検討することにより,エピデンスに基づ

いた個別的な対応が可能になると考えられ,今

後の課題である。高原らは,認知症の病因解明,

診断,治療,予防の医学的研究を行なう施設に

おけるレピー小体型認知症の特徴に基づいた看

護介入を報告している 30)が,このような看護研

究を精神科の臨床の場からも多く報告していく

必要がある。

2.精神科看護におけるコミュニケーション技術

「コミュニケーションの工夫Jと「介入のタ

イミングを見計らう」としづ看護介入は,破局

反応を防ぎ,薬物を使用せずに症状を鎮静させ

る可能性があるという点において, BPSDの対

応では重要と考える。加藤はケアを拒否された

時に聞をあけて世間話から気持ちを落ち着かせ

る方法35)をとり,鍋島は子どもや故郷の話をし

た36)。これは,聞をっくり話題を転換させるこ

とで怒りの感情を忘れるというように,記憶障

害を対象者の自尊心を傷つけずに利用している。

これらの対応には看護師の声の高低や強弱,看

護師の表情やまなざし,話しかけた時の看護師

の位置,声かけの語葉数など,文献には記述さ

れていないが,対象者の反応をみながら様々な

工夫と判断があったことが推察される。これら

は,それぞれの看護師の経験によって培われた

コミュニケーション技術であることが多い。こ

のような看護師のコミュニケーションを詳細に

観察して分析し,熟練した看護師の技術として

留まらせるのではなく,在宅における介護者に

も活用できるようにしていくことも精神科看護

師の特有の役割だと考える。

3.精神科看護におけるセイフティマネジメント

「セイフティマネジメント」では,転倒など

看護総合科学研究会誌 Vol.11,No.1, Sep. 2008

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片丸美恵・宮島直子・村上新治

の危険性だけではなく,他患者とのトラブケレの

危険性にも触れられていた。精神科病棟の場合,

閉鎖病棟では施錠されているために俳佃時に外

に出ていってしまうリスクは低く,このような

環境によって他施設より俳佃していても見守れ

る環境にある。その一方で,精神科の混合病棟

の場合は易刺激性や易怒性のある患者も入院さ

れているため,激しいトラブツレになる危険性が

ある。また,河村らは医師の指示により本人の

同意を得て夜間の自室施錠を行なったことを述

べている 37)が,このように隔離の方法をとるこ

とも精神科の特徴的な対応である。しかし,こ

の場合,認知症高齢者の同意はどの程度の信頼

性があるのか,施錠は治療において必要な対応

なのか,認知症高齢者の人権は守られているか

など,治療的な側面だけではなく倫理的な面か

らも慎重な検討が必要で、ある。このような精神

科における処遇や環境的特徴からも,認知症の

重篤な BPSDに対するセイフティマネジメント

を明らかにしていくことは必要であると考える。

v.研究の限界と今後の課題

本研究は,精神科看護に限定した 6編の文献

検討であるため,認知症高齢者の BPSDへの対

応として一般化されるものではない。しかしな

がら,一事例のケーススタディであっても,異

なる施設から報告されたケーススタディを複数

集めて検討することにより,精神科看護におけ

る認知症高齢者の BPSDに対する看護介入のあ

り方と課題を明確化できたことは,本研究の意

義であると考える。今後,精神科看護における

BPSDへの看護介入のエピデンスを明らかにし

ていきながら,他施設や在宅における看護介入

と比較検討していく必要がある。

VI. 結論

文献検討によって精神科看護における BPSD

に対する看護介入を抽出した結果なじみの

関係をつくるJ,r安定した場所の確保J,r行動

症状・心理症状の背後にある要因をアセスメン

看護総合科学研究会誌 Vol.ll,No.l , Sep. 2008 10

トするJ,r自尊感情を守る関わり J,rコミュニ

ケーションの工夫J,r介入のタイミングを見計

らう J,rセイフテイマネジメントJ,r非薬物療

法への参加を奨めるj の8項目に分類された。

また,精神科看護における看護研究の課題と

して,以下の 3点があげられた。

1. BPSDのケーススタディにおいて,環境要

因や心理学的要因からのアセスメントに偏ら

ずに,神経学的要因, BPSD,看護介入,結

果を丁寧に記述していくことが重要であり,

それぞれの認知症タイプや病期によってもた

らされた知見を比較検討してし、く。

2. BPSDの対応時の看護師の対応をより詳細

に観察し分析することにより,精神科看護に

おける BPSDに対するコミュニケーション技

法を検討するo

3.精神科における処遇や環境的特徴から,認

知症の重篤な BPSDに対してどのようなセイ

フティマネジメントが必要かを明らかにして

し、く。

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看護総合科学研究会誌 Vol.11,No.1, Sep. 2008

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精神科看護における認知症高齢者の BPSDへの対応と課題

Nursing Interventions and Study Themes to Behavioral Psychological Symptoms of

Dementia (BPSD) in Elder1y Patients with Dementia in the Field of

Psychiatric Nursing -Review of Literature about the Case Studies from the View Point of Problem Behavior-

お1ieKATA恥1ARU,Naoko MIY AJIMA, Shinji恥1URAKAMI

(Faculty of Health Sciences, Hokkaido University)

Abstract

This literature review in from the last 10 years was done for the pu中oseto reveal nursing interven-

tions and study themes to behavioral psychological symptoms of dementia (BPSD) in elderly patients with

dementia.

We overviewed six case studies of elderly patients with dementia, who showed problem behavior at

psychiatric hospitals. On the nursing interventions, we classified eight intervention which are “to make fa-

miliar relationship",“"to keep the steady po凶SIれti山onぜ"¥,“"tωoback fおorthe BPSD

“、bett匂erway戸stωo c∞ommumωca託tewith patients" ,“to consider the timing",“safety management" and “to rec-

ommend non medication treatments".

W e chose three nursing points for studying further. One was to compare the type and stage of de幽

mentia and to describe exactly the brain function deficit, BPSD, nursing interventions and their results.

Secondly we considered how to communicate with patients who are exhibiting BPSD. Thirdly we looked

at safety management for severe cases of BPSD.

Key words : elderly patient with dementia, BPSD, psychiatric nursing, literature review

-13一 看護総合科学研究会誌 Vol.ll, No.l, Sep. 2008