社会福祉士実習におけるsns問題に関する考察 · 3-3.実習中におけるsns...

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要約SNS の普及に伴い,個人情報に関するトラブルが社会問題となっている。それは, 利用者の個人情報にふれる機会が多い実習でもいえる問題である。そのため,社会福祉士 養成校においては,率先して実習授業の中で,SNS マナー教育を取り入れていく必要があ る。しかし,「デジタル・ネイティブ」世代と言われる昨今の学生は,「無意識」に,また, 「日常的な習慣」としてスマートフォンに触れ,「書き込み」「つぶやき」をしている。その 無意識の行為に,どのように「意識」を促していくのか,具体的な教育方法が求められる。 そのためにも,実習中の学生の心理状況を知り,さらに,養成校の実際の取り組みも参考に しながら,学生に届く教育のあり方を模索していく。いきつくところ,SNS 問題に対する マナー教育は,社会福祉実践の基盤である「価値」「倫理」教育につながることを示唆する。 キーワードSNS 問題,社会福祉士実習,「価値・倫理」教育 目次 1.はじめに 2.何が問題なのか?-SNS 問題- 2-1SNS の利用状況とモラル 2-2SNS 問題と実習の関連 3.実習中における学生の SNS 使用状況-アンケート調査とグループ・インタビューを通して- 3-1.「実習に関して何をつぶやき,なぜ,つぶやきたいのか」を知る 3-2SNS 使用状況のアンケート調査 3-3.実習中における SNS 使用状況におけるグループ・インタビュー 3-4.グループ・インタビューのまとめ 4.社会福祉士実習指導における SNS マナー教育の現状把握 4-1.マニュアルの記載内容からみる SNS マナー教育の問題と課題 4-2.社会福祉士養成校の取り組み例 5SNS マナー教育における今後の課題 5-1.「無意識の意識化」からの出発 5-2.一人での取り組みの限界 5-3.倫理的ジレンマの共有 5-4.実習だけの問題か?-福祉現場における虐待の温床- 6.おわりに ──────────── 同志社大学社会学部嘱託講師 2016 12 5 日受付,2016 12 5 日掲載決定 研究ノート 社会福祉士実習における SNS 問題に関する考察 ──社会状況に応じたマナー教育の模索── 塩田祥子 145

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Page 1: 社会福祉士実習におけるSNS問題に関する考察 · 3-3.実習中におけるsns 使用状況におけるグループ・インタビュー 3-4.グループ・インタビューのまとめ

要約:SNS の普及に伴い,個人情報に関するトラブルが社会問題となっている。それは,利用者の個人情報にふれる機会が多い実習でもいえる問題である。そのため,社会福祉士養成校においては,率先して実習授業の中で,SNS マナー教育を取り入れていく必要がある。しかし,「デジタル・ネイティブ」世代と言われる昨今の学生は,「無意識」に,また,「日常的な習慣」としてスマートフォンに触れ,「書き込み」「つぶやき」をしている。その無意識の行為に,どのように「意識」を促していくのか,具体的な教育方法が求められる。そのためにも,実習中の学生の心理状況を知り,さらに,養成校の実際の取り組みも参考にしながら,学生に届く教育のあり方を模索していく。いきつくところ,SNS 問題に対するマナー教育は,社会福祉実践の基盤である「価値」「倫理」教育につながることを示唆する。

キーワード:SNS 問題,社会福祉士実習,「価値・倫理」教育

目次1.はじめに2.何が問題なのか?-SNS 問題-2-1.SNS の利用状況とモラル2-2.SNS 問題と実習の関連

3.実習中における学生の SNS 使用状況-アンケート調査とグループ・インタビューを通して-3-1.「実習に関して何をつぶやき,なぜ,つぶやきたいのか」を知る3-2.SNS 使用状況のアンケート調査3-3.実習中における SNS 使用状況におけるグループ・インタビュー3-4.グループ・インタビューのまとめ

4.社会福祉士実習指導における SNS マナー教育の現状把握4-1.マニュアルの記載内容からみる SNS マナー教育の問題と課題4-2.社会福祉士養成校の取り組み例

5.SNS マナー教育における今後の課題5-1.「無意識の意識化」からの出発5-2.一人での取り組みの限界5-3.倫理的ジレンマの共有5-4.実習だけの問題か?-福祉現場における虐待の温床-

6.おわりに†同志社大学社会学部嘱託講師*2016年 12月 5日受付,2016年 12月 5日掲載決定

研究ノート

社会福祉士実習における SNS 問題に関する考察社会状況に応じたマナー教育の模索

塩田祥子†

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1.はじめに

今や,スマートフォン(以下,スマホ)は,日本人の 6人に 1人が所有し,生活必需品として定着化している。そして,今後もその普及は進むとみられている(1)。また,その利用率は,総務省の調査(2)(2014)によれば,全年代合わせて 62.3%であり,なかでも,20代は 94.1%と高い割合を占めている。さらに,その数字を裏付けるように,スマホは様々な機能を有し(3),日常生活の便利さに一役を買っている。そのため,その一台で何役もこなすことができるが,その一台がなければ不便さを強いられ,どこにでも持ち歩く習慣,持っていないと落ち着かないという心理状態を生んでいる。そして,スマホの普及により,インターネットアクセスがより身近になり,「社会的ネットワークをインターネット上で構築するサービス(=SNS)が人々の社会生活の中に急速に浸透している」(4)(田中:2014,69頁)。しかし,SNS の便利さや手軽さの一方で,メール機能をチャット化した LINE,自分の日常の様子,興味,関心事を写真やメッセージで公開できる Facebook,Instagram,短い言葉で自分の思いを流す(つぶやく)Twitterの普及は,自らの個人情報を流出すると同時に,自らが他者の個人情報を流してしまう危険をも孕んでいる。このように,SNS 普及と個人情報保護の問題は切り離せない問題であり,スマホ普及とともに社会問題と化している。そのことを踏まえて,対人援助の専門職養成校各機関(5)は,利用者の個人情報にふれる機会が多い実習において,利用者の権利侵害を招かぬように,SNS マナー教育の必要性を訴え実践している。それは,社会福祉士養成課程でも同様であり,多くの養成校が,実習事前学習時に,「SNS 上で,利用者のことを書きこむ,つぶやくことは,秘密保持の原則に反し,また,利用者の権利侵害にあたる」と注意喚起している。ただ,SNS マナー教育は養成校に応じてその方法は異なり,その指導の効果は確認されてはいない。そもそも,昨今の学生(特に 10代~20代)は,「デジタル・ネイティブ(6)」世代ともいわれ,物心ついたころから日常的に SNS を体感している。スマホを持つ,触る,つぶやく,書き込むことが当たり前になっている彼らに対して,「つぶやきはしてはいけません」「書きこんではいけません」と注意したところで,その注意に耳を傾けるとは思いにくい。もし,耳を傾けたとしても,それを実習時間中にだけ意識し,実習が終わり日常生活に戻り,気が緩んでいる時にまで反映されるとは思いにくい。しかし,だからといって,ともすると人権侵害に当たる行為をほっておくことはできない。また,そのつぶやき,書き込みは,知らぬ間に「つい」してしまう行為であるとすれば,どこでどのように人権侵害が行われているかは「わかりにくい」状態といえ,その無意識の

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行為を意識にのぼらせる取り組みも必要となる。そこで,本研究では,実習における利用者の権利を守るためには,どのような SNS

マナー教育が必要か,そのためにどのようなことを意識するべきか,学生個々が自分の問題として意識するためには,どのような取り組みが必要かを様々な文献資料を整理し考えていく。そして,学生への聞き取り,養成校の取り組み等の資料から,SNS マナー教育は,行き着くところ,実践の根源,基盤としての「価値,倫理」教育につながることを示唆していく。

2.何が問題なのか? -SNS 問題-

2-1.SNS の利用状況とモラル(7)

SNS 問題は見えにくい。そのことが SNS 問題の一番の特徴といえる。そのことに対して竹下は,「インターネット上・人と人が面と向かって話をしていない場所といった常に目が届いていないところで問題が起こっている」(竹下:2014, 28頁)と指摘している。では,実際の SNS 活用状況,それにまつわる問題とはどのようなものか,また,その対策について統計資料を用いて概略する。総務省平成 27年版情報通信白書(2015)によると,最近,約 1年以内に利用した経験のある SNS を尋ねたところ,LINE(37.5%)Facebook(35.3%),Twitter(31.0%)の順となっている。特に,LINE の利用率は,20代以下は 6割以上の人が利用しており,電話や電子メールのやり取りよりも,LINE で情報共有していることが多い。世代ごとのライン活用理由は様々であるが,10代,20代層の日常生活の中では,その手軽さ,便利さが人気を呼んでいる。また,20代以下では SNS 利用者のうち 26.0%が何らかのトラブルにあった経験をもっている。代表的なトラブル例として,「自分は軽い冗談のつもりで書き込んだが,他人を傷つけてしまった」,「自分の発言が自分の意図とは異なる意味で他人に受け取られてしまった(誤解)」がいわれている。このように,トラブルの内実は,個人情報に関するものや,表現の捉え方,見解の相違によるところが多い。つまり,相手の個人情報を流した(うっかり流してしまった),あるいは,書き込み,つぶやきにより,傷つけた(傷つけてしまった),誤解されたということであろう(8)。もちろん,トラブルは,加害性だけでなく,被害生も孕んでいる。知り合いに自分の個人情報を流され,情報が漏れてしまったということや,誰かの書き込みに傷ついたということが起こる。このように,SNS トラブルは,自らが加害者,被害者どちらにもなりうることがわかる。また,トラブルが起こるのは知り合い同士とは限らず,知らない誰かとのなかで起こりうる可能性も高まっている。

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個人情報の保護とは,すべての個人に関する情報を使用することを闇雲に制限するものではない。そのことについて,個人情報保護法では,「個人情報を正しく扱いましょう(9)」という基本理念を示し,続く第二条において,「この法律において『個人情報』とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう(10)」と定義している。さらに,「他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と記している。このことは,例えば,その情報が個人に関する情報であったとしても,個人を特定せず,モラルを守って正しく発信すれば何ら問題はないということを示す。しかし,裏を返すと,発信の仕方によっては個人の情報が安易に漏れやすくなるということであり,さらには,発信する側の表現,方法のみならず,その情報を受け取る側の状況次第によっては,捉え方に齟齬が生じる可能性は否定できない。それは,「人によっての捉えられ方」は様々であり,こちらのよかれと思った発信が,他者にとっての不快になることもある。また,一度 SNS 上に公開された情報は,発信者の手を離れ,「完全に削除することはできない」(竹下:2014, 30-31頁)。そのため,真実がどうか定かではない情報(=噂)が独り歩きするといったことや,発信後,時を経て問題として浮上するということも起こりうる。したがって,ただ,個人情報を発信しなければいいということではなく,SNS を活用している人それぞれが,どのように発信するか,そして,その発信がどのように受け取られ解釈されるかを,発信する際に意識し,内容を吟味することが求められる。そのため,「よりしっかりした情報モラル教育が必要」(総務省:2015)との意見があがっているが,「モラル」とは何か,「情報モラル教育」とはどういった教育か,明確になっていないまま,モラルの個人任せが横行している。そして,「手軽」で「便利」な SNS 発信に対して,そのような「面倒」なプロセスが沿うことができるかも疑問である。

2-2.SNS 問題と実習の関連SNS は,今や 10~20代層にとって「息をするのと同じ(11)」と表現されるほど日常生

表 1 「書き込み」方からみる「加害性」と「被害性」の分類

加害性 自らが意図的に他者の個人情報を他者の意に反して,書き込んだ,流したそんなつもり(=悪意)はなく書き込んだ・軽い冗談のつもり・自分の意図とは違う見解に捉えられた・特定の範囲だけのはずが,他者が拡散して,おおもとの自分が責任を問われた

被害生 知り合いが書きこんだ(ことを知った,知らなかった)知らない誰かに,自らの個人情報を意図しないように書きこまれた(ことを知った,知らなかった)書き込まれていたことも知らない

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活に浸透している。そのため,スマホに代表される通信機器を使うことに制限をかけるよりも,うまく使いこなす方法を身につけていくことが,自分や他者を具体的に守ることにつながっていく。ただ,その方法を身につけるための出発物等多数みられる(12)が,それが自分のものとして習得できているかどうかは,依然,本人の意思,個人のモラルに頼るところが大きい。そして,それぞれ自分の行為が何らかのトラブルに結びつく可能性があると意識しなければ,その出版物すら手に取らない。そのため,トラブル要因は気づかれることなく積み上げられ,また,さらに作りだされていく。極端に言えば,知らない誰かを知らないところで傷つけているということが当たり前のように起こりうるのである。このような,日常に潜む危険,情報の流し手,受け手の解釈の相違,その気づきにくさは,対人援助の専門職を育成する実習の場においては,支援する対象者である利用者の人権侵害にもつながりかねず,対応が求められている。実際,日本赤十字看護大学のホームページ(13)には「ソーシャルメディアガイドライン」として,SNS 利用上のルールやマナーが記載されている。その中には,特定の大学に限らず過去にあった SNS に関するトラブル内容が記されている。以下,その内容の抜粋である。

•看護大学の保健所実習中,健康福祉事業に参加した区民を侮辱する内容を発信•看護専門学校の病理学の授業中,献体された患者さんの臓器の写真を撮り発信•在宅看護学実習で有名芸能人宅への訪問したことを発信•アルバイト先での有名スポーツ選手の情報を発信•カンニングや自分たち未成年の飲酒・喫煙などを写真や文章で発信•遊園地などでの集団いたずら行為を写真付きで発信•友人を誹謗中傷する写真や文章を発信

いずれも,実習だからというより,社会人としてのモラルが問われる行為であるが,このように改めて文章化し,可視化すると問題に値する発信であると捉えられやすいが,それぞれの行為,発信が,問題を意図的に流布しようとしたのか,悪質な意図があっての発信だったか,「遊び感覚」なのかどうかは定かでない。それぞれ結果的に大事になってトラブルとして表舞台にでたが,それが指摘されなければ本人たちの問題意識は生まれなかったかもしれない。となると,単なる罰則規定だけを作ったとしても,「何か悪いことをつぶやいてしまった」,「大事になってしまった」,「罰則規定にふれてしまった」というだけのことであり,結局,何が悪くて,何を正さなければならないか意識できないままとなる。さらに,そのような罰則規定の存在は,単なるその場の抑止力に過ぎず,その規定に触れなければ何をしてもいいという個人の価値判断に任されるところが大きい。そのため,日常生活の中で習慣化している発信に意識して,具体的に

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注意喚起していかなければ,真の SNS マナー教育にはなりえない。このように,総じて SNS 問題は,「見えない,気づきにくい」問題といえるが,実習に関していえば,その見えにくさ,気づきにくさに対応し切れていない教育側(その対策,方法)にも課題はあるようにも思う。

3.実習中における学生の SNS 使用状況-アンケート調査とグループ・インタビューを通して-

3-1.「実習に関して何をつぶやき,なぜ,つぶやきたいのか」を知る日本理学療法学会小野田公らの研究発表によれば,「実習中の SNS の活用方法では,実習生同士の情報交換・共有や励まし等の記載が多く見られた。また,少数であるが,実習中の自分の気持ちを twitter へ書き込んでいた」ということがわかっている。そして,「今回の結果よりほとんどの学生が日常的に複数の SNS を頻回に利用していることがわかり,個人情報流出に関する対策不足が認められた。また,実習中に半数以上の学生が SNS を利用しており,頻度としては半数の学生は変化がなかった。活用方法としては,実習生の情報交換や共有に使われており,患者様の検査結果を含んでいることが認められた」(小野田・金子他:2014)。このように,リハビリ教育,看護教育において,SNS マナーの問題提起,その実態把握をした文献はいくつか見られるが,社会福祉士養成教育においては,その問題の指摘はあっても具体的な統計調査結果は見当たらない。そのため,社会福祉士養成教育においても,学生の SNS 使用の実態把握,そして,何をつぶやき,何のためにつぶやいているのかといった「つぶやきの背景」を知る調査を進めていくことが求められる(14)。

3-2.SNS 使用状況のアンケート調査そこで,筆者の取り組みを紹介する。実際の学生の SNS 使用状況を確認するため,筆者担当授業(ソーシャルワーク演習Ⅰ,Ⅱ)学生(2年,3年生,計 25人)を対象に授業内アンケート調査を行った(15)(16)。また,アンケートの協力に際し,学生に研究意図,演習の授業内容との関連を説明の上,同意を得ている(17)。【統計結果】(1)使用状況5つのアプリケーション(Facebook, mixi, Twitter, LINE, Instagram)を現在①「使用しいる」,②「以前使用していた」,③「使用したことがない」かを回答してもらい,その理由を記載してもらった。

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【統計からみる傾向と使用理由のまとめ】2, 3年生ともに全員が LINE を使用しており,電話,メール機能を有した LINE は,学生の通信,連絡手段として必須アイテムであることがわかった。また,Facebook は,友達や先輩等が活用していれば,自分も同じように活用しはじめていた。そして,Facebook と似たような機能を有し,写真掲載に特化した Instagram は,いずれのアプリケーションよりも最近の流行(18)のものであり,今「使用している」か,「使用したことがない」という 2択に分かれており,今後,流行に応じて「以前使用していた」という結果が増えるように思われる。それとは逆に,mixi は,高校生の時に活用していた学生が多く,大学生となった今では,それを使用することは幼く感じるようである。そして,Twitter は短文の打ち込み,アプリ自体の打ち込みやすさ(=学生からは記載内容の一覧が LINE よりもわかりやすいという声があがる),特定の誰かに返事を求めないところに便利さを感じていた。それは,特定の誰かに対して発信し,返事を求めるLINE より気楽に活用でき,なおかつ,誰かにメッセージを伝えたい欲を満たしてくれるようである。要するに,ただ「つぶやきたい」「言いたい」のであり,でも,一人だけの世界ではなく,特定されない(でも,知り合いである)誰かに言っていることで孤独感は解消されるようである。学生にすれば,なぜつぶやくかという問いかけに,明確な答えはなく,ただ,スマホに触ることが習慣化しており,そのため,持っていることで落ち着き,持っていないと手持無沙汰であり,たとえ「つぶやき」を記載しても流さず,消してしまうこともあるのだという。それほど,スマホに触れることそのものが日常生活の中に当たり前に浸透しているということがわかる。

表 22016年 10月 24日月曜日 3時間目授業時実施(対象学年:2年生)

Facebook mixi Twitter LINE Instagram

①使用している 4人 0人 10人 15人 7人

②以前使用していた 3人 6人 4人 0人 0人

③使用したことがない 8人 9人 1人 0人 8人

2016年 10月 18日火曜日 2時間目授業時実施(対象学年:3年生)

Facebook mixi Twitter LINE Instagram

①使用している 7人 0人 7人 10人 9人

②以前使用していた 1人 4人 1人 0人 0人

③使用したことがない 2人 6人 2人 0人 1人

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(2)自由記述「SNS 使用に際して気をつけていること」(2, 3年生)【記載内容】・自分が特定されるような情報を書かない,顔がわかる写真を載せない等・Twitter 等,「カギ」をかけて,特定のつながりの中でしか見られないようにしている・人に見られているという意識を持つ,自分の発言を吟味する・大学生であるということを隠すために別のアカウントを作成している・依存しすぎないように気をつける

【記載内容のまとめ】学生の多くは,個人情報に留意していた。ただ,具体的方法は,写真や学歴等を載せないというものであり,個人情報を流さないように「気をつける」というレベルにとどまっていた。また,「カギ」をかけている(=特定の自分が選択した人しか見られないようにしている)ことへの安心感も見受けられた。

3-3.実習中における SNS 使用状況におけるグループ・インタビュー上記調査対象の中でも,2016年度夏に実習を終えた 3年生を対象に,統計調査内容を具体的に把握するため,グループ・インタビューを行った(19)。グループ・インタビューにあたっても,あらかじめ学生に研究意図を説明の上承諾を得た。(1)グループ・インタビューの結果(実習中の SNS 使用状況)全員の学生が実習中に SNS を使用していた。使用目的は,全員が「連絡」手段としており,さらに,「つぶやき」「自らの近況報告」「友達の近況確認」のためがあがった。(2)結果(なぜ,SNS を使用するのか?)家族や友達等への連絡(通話)のためにスマホを使用する目的以外に,LINE グループ,Twitter 上でのつぶやき,写真等の掲載,閲覧はなぜ行われるのかを尋ねた結果,【気持ちを共有したい】,【事務手続き等の情報を得たい】の 2つのカテゴリーに分けることができた。また,【気持ちの共有】は,〔ひとり感〕〔自分だけじゃない〕〔帰校日の反動〕,【事務手続き等の情報を得たい】は,〔手続きの質問〕〔掲示板の役割〕のコードに分けることができた。インタビュー内容の概要は,表 3のとおりである。

3-4.グループ・インタビューのまとめ学生たちは,利用者情報を SNS で発信することはプライバシーの侵害になることを十分理解していた。また,事前指導段階でうけた SNS に関する指摘は,実習中頭の中をかすめたようである。当初,筆者が想像していたよりも,実習や利用者に関する情報

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に関して意識して捉えていたように思われる。ただ,利用者に関しては意識がいっても,職員との関係や,指導上で納得いかなかったことは限られた範囲に,自分の思いを発信していた。特に,LINE グループがその典型であり,実習クラスの LINE グループが存在すれば,その場が気持ちのはけ口にもなっていた。ただ,学生は,LINE グループをたくさん有しており,実習のことでつぶやいてよいグループ,その他の私的な感情

表 3 インタビュー内容の結果

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をつぶやくグループと区別しており,その場(グループ)を使い分けることが学生なりの個人情報保護につながっていたように思う。また,帰校日,巡回指導の際の,情報収集,共有,感情の分かち合いの場としての役割は大きかったが,その分,張っていた気持ちが緩くなり,「もっともっと話したくなる」という声があり,学生ならではの感覚といえる。そのため,帰校日,巡回指導後の様子も意識した上での指導の必要性を感じた。そして,実質教員は,実習期間中,帰校日,巡回指導しか学生と顔を合わせないことを考えると,その時々の学生の様子をアセスメントしていくことが求められる。さらに,実習だけではなく,普段から困ったことがあればその時々に発信し,尋ねる習慣があるため,実習でも同じようにその時々に自分がほしい情報を得ていた。例えば,事前学習で事務的手続きを聞いていたとしても,それは,その手続きを活用するときに必要な情報であり,その時に再度誰かに SNS を通して確認するという習慣が身についているように感じられた。そのことをわかった上で必要な情報をどのように伝えるかは,教員側の手腕が問われる。

4.実習指導における SNS マナー教育の現状把握

4-1.マニュアルの記載内容からみる個人情報保護に関する指導実際,養成校ではどのような個人情報についての教育が行われているのか。その内容を知るために,学生に対する実習指導用の教科書や,実習指導者,実習担当教員用のマニュアル(テキスト)を確認する。なお,教科書の内容を確認するにあたっては,索引から「個人情報」について記載されている頁を検索の上,内容を確認,整理している。上記 3文献に共通して,個人情報保護に関する法律の説明と,専門職としての倫理についての記述がある。特に,「実習マネジメント」の章に,個人情報の取り扱い,情報漏えい等あった際の責任の所在,その明確化について記述している。関連法律では,「個人情報保護法(20)」と「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省,2004年)の記載,説明が目立ち,実習生を職員と同じように管理する義務があることを実習指導者に示すと同時に,養成校教員,実習生,それぞれにも責任,自覚を促している。それは,あくまでも実習は,実習先,養成校との「契約」に基づくことを強く示している。そのことは,養成校の学生である実習生,実習先の職員に準じた位置にいる実習生を個々の機関,組織が,実習システムを通して守る,ということにもつながる。しかし,実習生には「契約」だから,あるいは,個人情報保護の法律があるからという説明だけではなく,実習で知り得た利用者個々の情報にはプライバシーがあり,人権擁護の視点で取り扱いに留意しなければならないことも合わせ

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て伝えていく必要がある。そして,それは,何のために契約があり,何のために法律があるのかを伝えることにもつながる。また,文献では,個人情報保護の方法は利用者の匿名化や,個人記録の要約の作成といった記載にとどまり,具体的にどのように留意するかの記載は十分でなかった。さらに,3文献ともに,SNS に関する記載はなかった。それは,出版された年月日と関連しているものと思われる。それだけ,SNS による情報漏えいは,昨今浮き彫りになった問題と言え,社会状況に応じたマニュアル,その見直しが求められる。今後,学生が手に取る書物に当たっては,SNS の注意喚起を記載した内容を盛り込む,また,具体的に,どのような行為がダメかも記述していくと学生の意識に残りやすいと思われる。それは,単なる「ダメ」という禁止事項の羅列ではなく,なぜダメなのかという注意の根拠も併せて記載していく。もちろん,活字で訴えているならば,マニュアルを使いこなす養成校教員,実習指導者の力量も同時に問われることは忘れてはならない。

4-2.社会福祉士養成校の取り組みそれでは実際,社会福祉士養成校では,どのように SNS マナー教育が実施されているのか,社会福祉士養成校に関連するセミナー等に参加してえた情報を整理,提示していく。

表 4 マニュアルごとの個人情報記載概要

本タイトル等

社団法人日本社会福祉士養成校協会監修(2009)『社会福祉士相談援助実習』中央法規出版.

公益社団法人日本社会福祉士会(2014)『社会福祉士実習指導者テキスト 第 2版』中央法規出版.

一般社団法人日本社会福祉士養成校協会(2015)『相談援助実習指導・現場実習教員テキスト第 2版』中央法規出版.

掲載章 第 4章「契約関係のなかにある実習」第 2節「実習先機関・施設におけるリスクマネジメント」3「実習におけるプライバシー情報に関する留意点」/第 12章「相談援助技術の理解と実習における実践」第 3節「利用者や家族への権利擁護,支援と評価」,第 6節「社会福祉士としての職業倫理,施設・職員などに関する規定と責任の理解」

第 1章「実習指導概論」第 3節「ソーシャルワーク実践と社会福祉士相談援助実習プログラム」7.「個人情報と実習の関係の理解」/第 2章「実習マネジメント論」2.「個人情報保護法の対象となる情報とは」

第 2章「実習指導方法論Ⅰ-実習教育マネジメント」第 1節「相談援助実習指導,相談援助実習教育におけるマネジメントの意義と対象」

概要 利用者保護の立場,専門職倫理の視点から個人情報に対する具体的な保護,その対応が実習生にも当然求められる,そして,個人情報保護に関する法律等各種ある中で,その内容を実習生が理解していることが実習実施の前提となることが記載されている。また,実習指導者は実習生に対して利用者の個人情報等を保護できうるか,それを監督する立場にあることを明記,その上で,実習契約時の契約書等の取り交わしの重要性を記している。さらに,章を変えて,「社会福祉士及び介護福祉士法」による専門職としての義務(=誠実義務,信用失墜行為の禁止,秘密保持義務)の規定を強調し,個人情報保護について明記している。

個人情報の定義の明文化,実習についての個人情報の取り扱いの留意点を記載している。また,日々の記録をまとめるにあたっての利用者の匿名性や,利用者本人の同意に基づく情報の活用について述べている。また,本人より使用拒否の訴えがあった場合は,その旨尊重することも追記されている。その上で,実習生には守秘義務が課され,その義務を果しえなければ損害賠償請求に発展する可能性も指摘している。そのことが,学ぶ意識,専門職として育つものの意識の醸成につながる。それは,実習生も組織内の人間に準じた扱いであることを示している。

個人情報の定義の明文化,個人情報保護に関する各種規定の紹介,その内容について,教員,学生の理解,そして,実習における責任体制の明確化について記載している。また,匿名化等による,個人情報保護に関する取扱いの留意点や,利用者本人による同意の原則について明記している。さらに,専門職としての誠実義務の明記をしている。

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(1)京都児童福祉施設実習教育連絡協議会主催「2015年度社会福祉実習担当職員研修」:2015年 9月 4日於)光華女子大学

実習における SNS についてのマナー,モラル教育は,社会福祉士養成校として統一したマニュアルがあるわけではく,養成校ごとに学生への注意喚起の方法はそれぞれ違う。その中でも,京都児童福祉施設実習教育連絡協議会主催の社会福祉実習担当職員研修(2015)では,「社会福祉士実習における人権擁護」として「SNS 問題」を取り上げ,養成校(21)の報告が配布資料に基づいて行われた。その報告は,「人権尊重に基づく利用者理解」と「SNS 使用上の留意点」にまとめられている。この報告は,ただ,SNS使用上の留意点のみを並べるのではなく,価値,倫理教育の中での SNS マナー指導,教育となっている点で非常に参考になる。それは,SNS 問題は,確かに現代社会の便利化がもたらした産物といえるが,利用者の権利侵害の方法が多様化したに過ぎず,「利用者の権利擁護」という基盤的考えは,何ら変わっていないからである。であるならば,SNS マナー教育は,ソーシャルワークの歴史の中で言われ続けている価値,倫理教育の一環といえ,そのことは,当日配布資料の以下の文章にも反映されている(以下資料抜粋)。

私たちは,社会福祉に関する多様な科目やソーシャルワーク演習等で,社会には多様な価値観があり,自分の価値観に合わないものを排斥したり,排除したりしてはならないことを学んできた。他者の価値観を理解しようと努めることは,自分の価値観をも大切にすることであり,実習生として最低限必要なことである。インターネット上であっても,相手がそれを読む・読まないにかかわらず,相手をののしったり,相手の人格を否定するような書き込みをしたり,私生活上の事実や秘密などを記載してはならないことを肝に銘じておいてほしい(傍線筆者)。

(2)日本社会福祉教育学校連盟主催「第 45回全国社会福祉教育セミナー」:2015年 10月 31日~11月 1日於)同志社大学

日本社会福祉教育学校連盟主催第 45回全国社会福祉教育セミナーでは,元 NHK アナウンサー,現 NPO 法人「8 bitNews」代表堀潤氏の特別講演(22)があった。「私たちが未来を変える-アクションを起こす原動力-」と題した本講演は,堀氏が代表を務めるNPO 法人の紹介とともに,その発信力に焦点が当てられていた。実際,Twitter, Face-book, Googleplus,ニコニコ動画を用いて活動を続けておられる。その紹介とともに,堀氏は,スマホ普及が総人口の 5割を占める昨今,その発信媒体をうまく活用し,自らが言葉を投げかけていく,そして,その際,個人的な意見ではなく,忠実なまでに「事実をせめる」ことが大切と投げかけた。自らの活動と,SNS を見事に使いこなす姿は圧巻であったが,社会福祉士養成校教員が多くを占める受講者からは,実習における

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SNS 活用に際しての危惧が質問としてあがった。つまり,実習指導にあたり,スマホ所持の禁止や,利用者の個人情報を流してはいけないといった徹底指導をしているなかで,本講演内容に戸惑いを隠せないということであった。しかし,それに対して堀氏は,このご時世に「スマホ(や SNS)を使うなという方が無理である」と言い切り,それぞれが単なる受信者ではなく,発信者としての意識を持ち,質の高い情報を流す,そのための教育の必要性を訴えた。上記講演内容は,いち NPO 法人代表の考えであり,すべてそのまま実習指導に応用できるかは今後の課題となるが,本講演が,社会福祉士養成校教員間で,SNS 問題に対して,「最近の流行についていけない」,「若いものがすることはわからない」と,現実社会と切り離し真摯に向き合ってこなかった(向き合い方がわからなかった)現状に警告を鳴らしたことは間違いない。そして,教員として,「してはいけない」という禁止事項を述べるにとどまらず,昨今の流行りも主体的に学びの対象にすることが「社会状況の中の福祉教育」であり,そのあり方は,時代とともに変遷するものであると同時に,時代が流れても変わらない価値が基盤にあるからこその変遷であることを忘れてはならない。

5.SNS マナー教育における今後の課題

5-1.「無自覚の自覚化」からの出発SNS 普及に伴い,現代社会は,「つい」「知らず知らずのうちに」,自らが権利侵害を起こす側となりうる。それほど,当たり前に日常生活の中に,誰かの権利を侵害する危険が潜んでいる。ましてや,利用者の個人情報に多く触れる実習期間中においては,その危険性が増す。そのため,実習の事前学習においては,そのことを学生個々に伝えていく必要がある。しかし,その伝え方が,利用者の個人情報についてのつぶやき,書き込みをしてはいけないという規則の周知徹底に終わっては,学生個々が自らのことと受け止めにくく,また,その規則の項目に沿わないマナー違反は防げないことになる。ましてや,学生個々の行い全てを監視し,統制することは不可能である。また,「注意されているからしない」ということは,ただ,機械的に規則に従っているに過ぎず,根本的な問題は解決できていない。ということは,また,新たな問題が起こる可能性もある。であるならば,なぜ,普段の何気ないつぶやきが権利侵害に結びつくのか,何がいけなくて何が良いのかといった具体的な提示とともに,発信(書き込む)主体者である学生個々が,「それはしてはいけないことかどうか」を考えるプロセスが大切となる。それは,竹内が,「彼らが思わず受け取ってしまうような『球』を用意しなければ,何も伝えられずに終わってしまう」(竹内:2014, 105頁)と指摘するように,自らの問題

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として主体的に気づく投げかけが必要となる。そして,学生個々,自らの行為,発信が,もしかすると権利侵害になるという具体的な気づきの促し,その方法の模索が教育側に求められている。また,SNS は,使用しているものだけがわかる,あるいは,そのシステムを理解したものが操れる世界,情報がある。そのため,SNS 上の高度な技術を習得すれば,何を発信,つぶやいても明るみに出ることはなく,責められることもない。いわゆる,「ばれなければ何をしても大丈夫な世界」ともいえる。それが,別アカウント作成による知らないところでの「つぶやき」にもつながるのであろう。しかし,「ばれなければ良い」という考えは,社会福祉実践の価値,倫理からはずれてはいないか。となると,専門職になるための実習においては,個々人のモラルに任せるということではなく,社会福祉実践の価値,倫理という基盤に基づく SNS マナー教育をすすめていく必要がある。それは,専門職を育てる養成校に課せられた責務といえ,それを遂行してこそ,実習生を守り,かつ,実習生が出会う利用者を守ることにつながる。

参考までに,「無自覚の自覚化」に留意して,筆者なりに資料を作成,活用している(下記資料参照)。この資料は,その時々の状況を見ながら改良していきたいと思っている。

資料 筆者授業時配布資料(23)

日常生活に使われているようなツールには以下の点を再度確認・要注意!!①「つぶやく」癖:何気なくつぶやいていることが利用者の情報を漏らしていることになります。遅刻や休まざるをえない時,Twitter や mixi でつぶやいていませんか?みんなに伝える必要はありません。担当の先生,実習先に伝えることが大切です。

②「友達にきく」癖:どうしたらよいか,スマホに向かって聞いていませんか?困ったことがあれば担当の先生に相談してください。電車が遅れたり,寝坊したり,記録が書けなかったり,どうしていいかわからない時も,「つぶやく」必要はありません。

③「写真」癖:美味しいもの,おもしろいもの,変わったものがあれば,すぐに写真をとる癖がありませんか?例えば,利用者の生活場面はもちろん,泊まり実習の場合,泊まっている部屋を取ることも施設の秘密を外に漏らしていることになります。※記録がわからないと,先輩や友達から写メしてもらうのも禁止です。

④「ゲーム」でつながる癖:実習担当者から「ハート」等(LINE ゲーム)をもらって仲良くなれたと勘違いする学生も多いです。もし,もらったら担当の先生に報告してください。LINE は,相手の電話番号がわからなくてもつながることができます。実習指導者の方とボランティアのことで携帯番号を教え合うこともあるかもしれません。その際,LINE でつながっても気安くやりとりを始めないでください。はじめてしまった場合は,担当の先生に報告してください。

⑤「なう」癖:「夜勤なう」という職員さんがいました。何が問題か,あるいは問題でないかはクラスごとに話し合ってください。つぶやいていいこといけないことの判断がつかないのなら,実習に関するすべてのこと(利用者のことだけでなく,「実習終わったー」というつぶやきも含め)をつぶやかない方

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がいいです。⑥「さわりたくなる」癖:携帯,スマホに触れていないと不安という人もいます。休み時間のたびに触れないと気がすまないという人はいませんか?その癖が積み重なって,実習時間中でもさわってしまう人もいます。気をつけてください。

※受け手がどのように捉えるかわからない。それが,ネット社会のこわさです。皆さん一人ひとりに責任が重くのしかかっていると思ってください。

※非公開,カギ付き,グループ限定の部屋に安心感を持っていませんか?ばれなければいいですか?・・・結局ばれますよ。そして,ばれなければいいという考え方自体,倫理に反しています。

5-2.一人での取り組みの限界SNS をつかいこなすもの,楽しむもの,縁のないもの,嫌うもの,すべてが同じ社会に存在している。それは,わかるものだけがわかる,わからないものはわかろうとしない,そうした短絡的なことと終わらせるのではなく,わかり合う関係性を築くことも教育の一環である。そして,その模索を今も続けている。といっても,私自身,若者文化についていくことが必死であり,学生たちの無意識のつぶやきを後追いする現状は否定できない。正直,疲れるときもあり,ふと気づくと,私もつぶやきにハマっていく。そして,我に返り,自分のモラル低下を省み,私を監督する役割を求めたくなる。そうした,確認体制を築くことは,実習を支える体制づくりにもつながり,実習内容の質的向上につながると思っている(24)(25)。そう考えると,SNS 問題の表面化は,文明の発達によってもたらされた産物ではなく,教育体制の本質を問い直す機会なのかもしれない。また,実習が始まれば,学生の SNS 使用状況を監視するわけにもいかず,教員としては学生を信じるしかない。それは,学生それぞれに責任に委ねることになり,そのことが,実習生それぞれの価値観,倫理観の醸成につながると信じている。ただ,「信じる」を貫くためにも,教員も一個人として共に感情を分かち合う存在を求めてしまう。そして,その気持ちは,実習中の学生が誰かを求める気持ちと同じなのかもしれない。

5-3.倫理的ジレンマと共有の場遠藤が述べるように「援助者は,利用者のプライバシーや尊厳を重んじることを意識的かつ意図的に自らの実践の中に取り入れて援助を行っていかなければ,生活場面での援助事態が利用者のプライバシーを侵すことになりかねない」(遠藤:2008, 64頁)。そして,そのことは,専門的な援助,関わりの場面だけの留意ではない。なぜなら,専門職は,日常の自分が専門性を身につけ,専門的な実践を遂行していくものであり,常に,素の自分が問われるからである。そのために,自己覚知や日々の自己研鑽が求められるが,実習生は,慣れない福祉現場において,専門職のタマゴとして,「利用者との

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関係」の中でもがき,「職員との関係」に悩み,「記録の書き方」に苦戦している(26)。そのため,おのれの実践を顧みて,さらに,自らを律することに十分な状況とはいえない。そのため,そのような感情を分かち合う場が求められ,その一つとして,SNS がある。そして,それが,感情の分かち合いの場であるならば,自由に,制限なく吐露し合いたいところであるが,そこに,マナー教育が参入し,居心地の悪いものとなり,そもそもの場の意味が変わってくる(27)。また,SNS に書き込む,つぶやく行為をただ一方的に禁じることで,実習生が抱く感情にまで蓋をするということも起こりうる。であるならば,今後,SNS に代わる感情表出,その分かち合いの場が求められ,実習生の「言いたい」,「伝えたい」を聴く場としての巡回指導,気持ちの分かち合いの場としての帰校日指導の活用がさらに求められる。もちろん,指導後の学生の心理状態,行動傾向も予測したうえでの取り組みといえる。

5-4.実習だけの問題か? -福祉現場における虐待の温床-平田が述べるように「日常的に忙しい現場では,利用者一人ひとりの人格を尊重する,という感覚がマヒしてしまう」ことがあり,その感覚のマヒによって,専門的援助場面でおこったことを SNS 上で「愚痴る」ことが予想され,「SNS を日常的な行為の延長線上で考えてはいけない」(平田:2015, 20-21頁)と手軽なつぶやきに警笛を鳴らしている。また,北川は,倫理教育を十分受けていないものが専門職となり,「何のためらいもなく SNS を介して共有または公開し,…(中略)…瞬時にありのままの様子を目にする…拡散され永遠に消し去ることができない」現状を嘆き,SNS による個人情報流出は「明らかに虐待」であると断言している(北川:2015, 24頁)。となると,SNS 問題,それに関するマナー教育は,実習生だけではなく,福祉現場全体の問題であり,その取り組みについて真摯に考えていかなければならない。

6.おわりに

もはや,日常になくてはならないスマホ(それを活用した SNS)は,自分の意識しだいで,誰かを傷つける武器にもなりうる。しかし,その便利さがもたらした産物を使いこなすのは「人」であり,その人の質(例えば,マナーやモラル)が問われている。それは,便利さに流されるも,流されないも人次第であることを示すが,少なくとも対人援助の専門職,その実習生たちは,文明の産物を利用者の権利侵害の道具にしてはらない。しかし,そのようなことはわかっているようでいて,実は,その落とし穴は日常の身近なところにある。いつの間にか日常に浸透した便利さは,ゆくゆく当たり前と化し,便利であることにも慣れていく。そして,便利さと表裏一体にある権利侵害という

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危険にも鈍くなっていく。そのため,そのような危うさに気づきをもたらす教育が今後も必要であり,それは,どのような時代であっても揺らがない価値が根づいてこそできる教育である。

注⑴ 総務省平成 27年版情報通信白書.平成 26年末の情報通信機器の普及状況をみると,「携帯電話・

PHS」及び「パソコン」の世帯普及率は,それぞれ 94.6%,78.0%となっている。また,「携帯電話・PHS」のない数である「スマートホン」は,64.2%(前年比 1.6ポイント増〕と急速に普及が進んでいる。http : //www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc372110.html

⑵ マイナビニュース,総務省統計調査.http : //news.mynavi.jp/news/2015/05/20/171/⑶ 通話機能のみではなく,「人とのコミュニケーションツールとしてのメール機能」,「辞書や地図といった検索機能」,「財布代わりのクレジット機能」等が挙げられる。

⑷ その普及,浸透により,「人と人とのつながりの促進・サポートするコミュニティ型の Web サイトで,友人・知人間のコミュニケーションを円滑にし,趣味や嗜好,居住地域,性別,年齢,出身校などの属性をきっかけにつながる,あるいは,それらの時間的・空間的関係に縛られない新たな人間関係が構築」していくこととなる(田中:2014,69頁)。

⑸ ここでは主に,対人援助専門職養成(社会福祉士養成校,介護福祉士養成校,看護師養成校,リハビリ専門職養成校)の取り組みを参考にしている。

⑹ デジタル-ネイティブとは,生まれた時,または物心がつく頃にはインターネットやパソコン等が普及していた環境で育った世代。日本における商用インターネットは 1990年代半ばより普及したため,概ねこれ以降に生まれた世代を指す.https : //kotobank.jp/word/

⑺ 総務省平成 27年版情報通信白書.http : //www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000084.html⑻ 朝日新聞朝刊(東京)2013年 10月 26日 11面.⑼ 「やさしく読む『個人情報保護法』(1)『個人情報』とは何でしょうか」.http : //www.atmarkit.co.jp/ait/

articles/0503/18/news121.html⑽ 内閣府ホームページ「個人情報保護法について平成 24年 11月 26日消費者庁消費者制度課資料 3-1」.

http : //www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2012/wg1/121126/item3-1.pdf#page=1⑾ 華頂大学准教授武田康晴氏(当時)の報告参照(京都児童福祉施設実習教育連絡協議会主催「2012年度社会福祉実習担当職員研修」シンポジュウム).武田氏が学生との会話の中でそのような表現を直接聞いたというエピソードを報告.

⑿ 本研究において活用した文献は,竹内和雄(2014)『家庭や学級で語り合うスマホ時代のリスクとスキル-スマホの先の不幸をブロックするために-』北大路書房.樋口進監修(2013)『ネット依存症のことがよく分かる本』講談社.等である。また,インターネットサイト Yahoo!!(2016年 9月 11日閲覧)において,「ネット 活用」と検索

すると約 25,100,000件,「SNS 活用」と検索すると約 14,800,000件のヒットがある。また,ネット上での記事や文献紹介等,活用術に関する資料は多い。

⒀ 日本赤十字看護大学ホームページ.https : //www.redcross.ac.jp/⒁ 山本らは,「ソーシャルワーク実習において学生が実習前に抱えている不安は,保育実習と同様に『日誌の書き方』や『指導者(職員)との関係』もあるが,最も大きな部分を占めるのは『利用者との関わり』である。…(中略)…『利用者との関わり』が不安要素となるのは当然のことであろう」(山本他:2014, 10頁)と記している。このように,実習中の学生の不安に焦点を当て,そこからつぶやき,書き込みの内容を推測することもできる。実習生が悩みを誰かに聞いてほしい,わかってほしいという感情を理解することが,SNS への発信内容理解につながると思われる。

⒂ アンケート対象は,約 25人(インタビュー対象はそのうち 10人)と限られた人数のため,結果においては学生全体の意見を反映したとは言い切れず,今後,この結果をもとに調査対象範囲を広げてい

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きたい。⒃ 久保田らの調査によれば,大東文化大学学生 61人は,LINE, Twitter, Facebook, mixi を主に利用していることがわかった(久保田他:2013)。また,田中の調査でもこの 4つに限定しており,予備調査で利用者が多いことが判明したためと記載している(田中:2014, 69頁)。なお,この 2文献に記載はないInstagram においては,2010年から配信されており,筆者自身の普段の学生とのやり取りの中で流行を感じたため,今回アンケートに記載している。

⒄ 授業内でアンケート,グループ・インタビューをするにあたっては,事前に担当専任教員にも確認した。

⒅ 2010年 10月リリース開始。http : //techwave.jp/archives/instagram3th.html⒆ ソーシャルワーク演習,実習は,同志社大学において卒業必須科目ではなく,また,実習にいかない者であっても演習受講が可能なため,演習受講学生が実習経験者ではない場合もあるが,本年度の担当 3年生 10名は,すべて実習を経験しているため,授業内で受講学生全員にインタビューを行った。なお,アンケートは,2016年 10月 17日(2年生),10月 18日(3年生),インタビューは,10月 25日に行った。

⒇ 個人情報保護に関する各種規定とは,「個人情報保護法」(2003年),「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(2003年),「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(2003年),「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン(厚生労働省,2004年),「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(厚生労働省,2004年,2006年改正,2010年改正),「個人情報保護施策の今後の推進について」(個人情報保護関係省庁連絡会議決定,2007年 6月 29日,「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」(厚生労働省,2013年)を記している(一般社団法人日本社会福祉士養成校協会:2015, 65頁).

21 龍谷大学准教授高松智画氏の講演「SNS 世代の学生への指導や支援のあり方について-人権保障の観点から」の報告参照.

22 NPO 法人「8 bitNews」代表堀潤氏による特別講演「私たちが未来を変える~アクションを起こす原動力~」参照.

23 筆者の取り組みとして,スマホいじりが習慣となっている学生に,どのように注意喚起すれば,自分の無意識のつぶやきに意識をのぼらせることができるか,また,一つ一つの書き込み,つぶやきには,個々に責任を負えるか,さらに,SNS 問題は,SNS 問題だけにあらず,実は,価値,倫理教育にあることの気づきを求めるために,配布資料を作成した。

24 日本看護系大学協議会(2008)『看護学教育における倫理指針』(改訂版)「倫理教育を行う教育者自身の責務」によれば,「教育環境としての教育者の影響は大きく,看護学教育にかかわる全ての教育者は,看護倫理を基本に据えた看護実践ができる看護職者を養成しているという自覚に基づいた個人としての取り組み,さらに倫理的配慮が保障されるようなシステム作りが重要である」としている。また,「倫理は社会的価値観の変化,現実の変化に対応しながら検討していかなければならない」とし,その社会状況ごとの倫理教育の見直を示唆している(8頁)http : //www.janpu.or.jp/umin/kenkai/rinrish-ishin08.pdf

25 社会状況の変化でとらえると,社会問題として取り上げられている SNS 問題の多様化,悪質化については,教育現場でも具体的に取り上げ,身近な問題として捉えていく必要がある。でなければ,教育は,問題の後追いに過ぎず,予防的な取り組みにはつながっていかない。

26 山本らは,学生の「学びの共有」の大切さを説いている。「学生の立場からの体験談が,教科担当教員の指導から生まれない安心感を(実習前の)学生たちにもたらしていることは,合同授業を終えた学生からの感想からも伺える」(山本他:2014, 10頁)。これは,事後学習に関する記載であるが,実習中の帰校日指導にも言えることである。また,沖田は,看護師実習を通しての学生同士の学び合いの場として,実習後の合同カンファレス

について紹介している(仲田友紀「臨床実習生とスタッフとの情報共有の効果-学生主体の合同カンファレンスを実施して-」nshp.jp/common/fckeditor/editor/.../php/transfer.php?...)。

27 田中の調査報告によれば,コミュニケーションのチャット化は,若い世代のコミュニケーションの変

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化,人とのつながりの変化を生んでいる。しかし,今流行りの LINE を批判したところで,「それに代わる新たなサービスが登場し,また,それを批判することにならざるを得ない」と記し,問題の後追いとなっている倫理教育の現状を危惧している。さらに,ネット上で生まれる人と人とのつながりが仮想ではなく,現実と化し,それに伴うトラブルが予想される。そして,気分転換の SNS の活用のはずが,居心地の悪さを生み,その防御として,複数の SNS の「使い分け」による「別人格」の形成が予想される。そうなると,「対面では言えないことを憶することなく発言したり楽しんだりする」といったことが起き,マナー問題では解決できない仮想現実のトラブルや,その広がりに警笛を鳴らしている。

文献・一般社団法人日本社会福祉士養成校協会(2015)『相談援助実習指導・現場実習教員テキスト第 2版』中央法規出版.

・遠藤清江(2008)「介護福祉士実習教育における倫理教育の課題-学生の実習自己評価と倫理観について-」『京都女子大学生活福祉学科紀要』第 4号.

・小野田公・金子純一郎・森田正治・丸山仁司(2014)「評価実習時のソーシャルネットワーキングサービスの利用実態について」第 49回日本理学療法学術大会,ポスター教育・管理/臨床教育系 3.

・北川妙子(2015)「リスクマネジメントと SNS 意識を高めるための研修の必要性」『ふれあいケア』8月号,全国社会福祉協議会.

・京都児童福祉施設実習教育連絡協議会主催(2015)『社会福祉実習担当職員研修 社会福祉士実習における人権擁護-SNS 問題を通して-』.

・久保田紘一・本田啓資・山崎裕紀(2013)「SNS 利用における被害と問題点」一般社団法人教育システム情報学会 2012年度 Jsise 学生研究発表会発表要旨.

http : //www.jsise.org/society/presentation/doc/pdf/2013/03_kanto/302.・公益社団法人日本社会福祉士会(2014)『社会福祉士実習指導者テキスト第 2版』中央法規出版.・社団法人日本社会福祉士養成校協会(2009)『社会福祉士 相談援助実習』中央法規出版.・田中浩史(2014)「跡見学園女子大学生の SNS 使用状況に関する調査報告と学生が理想とする SNS 環境についての研究考察」跡見学園女子大学文学部コミュニケーション文化学科『コミュニケーション文化』.

・竹下尚克(2014)「ソーシャルメディアの光と影-若者の SNS 利用状況と問題点の一考察-」『サレジオ工業高等専門学校』.

・竹内和雄(2014)『家庭や学級で語り合うスマホ時代のリスクとスキル-スマホの先の不幸をブロックするために-』北大路書房.

・夏目美喜子・太田勝正(2013)「臨地実習における学生の患者情報取り扱い上の問題およびその指導法」『看護科学 Vol.11, 1-9』.

・日本社会福祉教育学校連盟(2015)『第 45回全国社会福祉教育セミナー』.・日本社会福祉大学社会福祉実習教育研究センター(2015)『ソーシャルワークを学ぶ人のための相談援助実習』中央法規出版.

・樋口進監修(2013)『ネット依存のことがよく分かる本』講談社.・水沼友宏・菅原真紀・池内淳(2013)「大学生の Twitter における行動規範に関する分析」『情報社会学会誌』Vol.8 No.1.

・平田厚(2015)「SNS の落とし穴 介護従事者のコンプライアンス」『ふれあいケア』8月号,全国社会福祉協議会.

・山本学・中澤秀一(2014)「保育実習指導における『学びの共有』の有効性-保育実習を終了した学生と保育実習前の学生間での試み-」静岡県立大学短期大学部研究紀要第 28号.

・横山さつき(2008)「介護実習における学生の不安に関する因子分析的研究」『中部学院大学・中部学院短期大学部研究紀要第 9号』.

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With the increase in social networking services (SNS), privacy problems related to personalinformation have become a matter of public concern. Such problems also occur in the practicaltraining context, where trainees are often privy to service users’ personal information. Therefore,incorporating SNS manner education into practical classes at social worker training schools isnecessary. However, students today, who are said to belong to the “digital native” generation,tend to interact with their smartphones “unconsciously” and “habitually” as they “post” and“tweet” to their SNS accounts. Thus, developing specific education methods that address thequestion of how “consciousness” regarding these largely unconscious behaviors can be promotedis essential. Therefore, the present study sought to examine the mental states of students duringtraining ; furthermore, it also aimed to explore forms of education that resonate with studentswhile drawing on a few actual initiatives being implemented at training schools. The results ofthe study indicate that manner education on SNS problems is connected to “values” and “ethics,”the foundations of social welfare training.

Key words : SNS problems, Practical training for social workers, “values and ethics” education

SNS Problems in Practical Training for Social Workers :Exploring Manner Education Corresponding to Social Conditions

Shoko Shiota

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