定置網網成り調査事業 2. 3. -...

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定置網網成 り調査事業 栗駒治正 ・日形知文 ・柴野富士夫 1.日的 水中テ レビカメラを用いて定置網漁場の網の敷設状況 を調査 し、漁業者 に対 し効果的な漁具仕立てや敷設方法 につ いて指導および助言を行 う。 2. 実施状況 1) 調査時期 2) 調査漁場 3) 使用船舶 4)使用機器 平成 14 4 19 ~7 26 県下各地の定置網漁場(表 1・図 1) 沿岸調査船 若潮丸 (総トン数 16 トン) 日航式水中テレビ(三井RTV-100) 3. 調査方法 若潮丸 を定置網の運動場付近に、ロープで固定 (四点)した後、水中カメラを海中に投入 し、ジ ョイスティックレ バー による遠隔操作で網成 り状況を観察 した。映像はビデオテープに収録 し、異常箇所等および特に必要 と認めた部 分はスチールカメラによる記録を行った。 4. 調査結果 1) 糠定置網漁場(定第 12 号) (漁場水深 64m~65m) 障子網の弓先部で水深約9m 付近に輪 くぐり環の絡みが見 られた。また、道網 と裏障子網の弓先部 において も、 水深 55m ~59mと海底付近で輪 くぐり環に絡みが見 られた。 その他の箇所には異常は認め られず、網成 りは全体的に良好で敷設 されていた。 三枚 口の切 り下が り水深は 62m であった。 2) 甲楽城定置網漁場(定第 15 号) (漁場水深 59m~61m) 障子網およ袖網の弓先部 (輪 くぐり)の状態は良好であった。また、その他の輪 くぐりにも異常は見 られな かった。 各立碇 ロープも正常に設置 されてお り、網成 りも良好で異常箇所は認め られなかった。 三枚 口の切 り下が り水深は 53m であった。 3) 河野定置網漁場(定第 20 号) (漁場水深 52m~53m) 障子網および袖網の弓先部 (輪 くぐり)の状態は良好であった。 横切網部分では磯の角戸および中央付近で立碇ロープの長さ調整不良による海底か ら約 1mの網裾上が りが 見 られた。また、沖の角戸では水深 44m 部 に、沖側網磯天では水深 48m 部 に立碇 ロープの交叉が見 られた。 道網 においては、輪 くぐり環が水深 9m 部で抜け、水深 40m 部では環落ちが見 られた。 裏障子網では水深 19m~29m 付近 に輪 くぐり環 と網の絡みが見 られ 網裾が水深 28mまで上がっていた。 なお、他の箇所では異常は認め られなかった。 三枚 口の切 り下が り水深は48m であった。 4) 糠定置網漁場(定第 12 号) (漁場水深 64m~65m) この漁場では三枚 口、内昇 り、漏斗、箱網の調査 (運動場 ・道網は除いた。)を実施 したが、異常箇所は認め られなかった。 -129-

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定置網網成り調査事業

栗駒治正 ・日形知文 ・柴野富士夫

1.日的

水中テレビカメラを用いて定置網漁場の網の敷設状況を調査し、漁業者に対し効果的な漁具仕立てや敷設方法につ

いて指導および助言を行う。

2.実施状況

1) 調査時期

2) 調査漁場

3) 使用船舶

4) 使用機器

平成14年4月19日~7月26日

県下各地の定置網漁場 (表 1・図1)

沿岸調査船 若潮丸 (総 トン数 16トン)

日航式水中テレビ (三井RTV-100)

3.調査方法

若潮丸を定置網の運動場付近に、ロープで固定 (四点)した後、水中カメラを海中に投入し、ジョイスティックレ

バーによる遠隔操作で網成り状況を観察した。映像はビデオテープに収録し、異常箇所等および特に必要と認めた部

分はスチールカメラによる記録を行った。

4.調査結果

1) 糠定置網漁場 (定第12号) (漁場水深64m~65m)

障子網の弓先部で水深約9m付近に輪くぐり環の絡みが見られた。また、道網と裏障子網の弓先部においても、

水深55m ~59mと海底付近で輪くぐり環に絡みが見られた。

その他の箇所には異常は認められず、網成りは全体的に良好で敷設されていた。

三枚口の切り下がり水深は62mであった。

2) 甲楽城定置網漁場 (定第 15号) (漁場水深59m~61m)

障子網および袖網の弓先部 (輪くぐり)の状態は良好であった。また、その他の輪くぐりにも異常は見られな

かった。

各立碇ロープも正常に設置されており、網成りも良好で異常箇所は認められなかった。

三枚口の切り下がり水深は53mであった。

3) 河野定置網漁場 (定第20号) (漁場水深52m~53m)

障子網および袖網の弓先部 (輪くぐり)の状態は良好であった。

横切網部分では磯の角戸および中央付近で立碇ロープの長さ調整不良による海底から約 1mの網裾上がりが

見られた。また、沖の角戸では水深44m部に、沖側網磯天では水深48m部に立碇ロープの交叉が見られた。

道網においては、輪くぐり環が水深9m部で抜け、水深40m部では環落ちが見られた。

裏障子網では水深 19m~29m付近に輪くぐり環と網の絡みが見られ 網裾が水深28mまで上がっていた。

なお、他の箇所では異常は認められなかった。

三枚口の切り下がり水深は48mであった。

4) 糠定置網漁場 (定第12号) (漁場水深64m~65m)

この漁場では三枚口、内昇り、漏斗、箱網の調査 (運動場 ・道網は除いた。)を実施したが、異常箇所は認め

られなかった。

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三枚口の切り下がり水深は62mであった。

5) 小川定置網漁場 (定第53号) (漁場水深58m~61m)全体に網成りも良く各輪くぐりは良好で、網裾は着底し、余り網も見られた。立碇の状態も良く適切に設置さ

れており、異常箇所は認められなかった。

三枚口の切り下がり水深は53mであった。

6) 河野定置網漁場 (定第 18号) (漁場水深48m~50m)

障子網および細網の弓先部 (輪くぐり)およびその他の輪くぐりも良好であった。

横切網では沖側の角戸付近で立碇ロープの交叉が見られたが、他の立碇は良好な状態であり、網成りも異常は

見られず網裾も着底していた。

三枚口の切り下がり水深は47mであった。

7)常神須崎定置網漁場 (定第51号) (漁場水深48m~50m)

この漁場では、平成 13年度まで羽口は道網を挟む両羽口で設計されていたが、今年度より後面の羽口を塞ぎ、

片羽口 (前面羽口)に変更されていた。

全体に網成りも良好で網裾は着底していた。道網部に立碇ロープによる網絡 (1箇所のみ)見られたが、その

他の箇所に異常は認められなかった。

三枚口の切り下がり水深は40mであった。

8) 莱崎定置網漁場 (定第 2号) (漁場水深47m~49m)

障子網の弓先部付近の海底では、使用されていない古い砂袋が多数見られた。また、沖天付近と道網部には不

用の立碇ロープが浮遊していた。道網部では他にも立碇ロープの不具合による網裾上がりと側張りロープの碇の

不具合 (道網前面に位置)による網裾上がりが昇り付け根磯付近で見られた。

その他の箇所は異常なく良好な網成りであった。

三枚口の切り下がり水深は38mであった。

9) 世久見定置網漁場 (定第56号) (漁場水深51m~54m)

障子網、袖網弓先の輪くぐりの状態も良く、網も着底していた。横切り網の沖角戸付近、水深50mで約2m

円の破網が見られた。

他の箇所では、立碇も適切で網も着底し、余り網も見られ網成り状況は良好であった。

三枚口の切り下がり水深は51mであった。

10)神子定置網漁場 (定第52号) (漁場水深58m~59m)

障子網弓先の輪くぐりの環が海底付近で抜けていた。また、突き当たり付近で立碇ロープが切断し、浮遊して

いた。

道網では立碇ロープによる破網が見られた。裏障子網では内立碇ロープ (ノシ)と外立碇ロープ (ハサミ)が

相絡み、網裾 が水深48m付近まで上がっていた。

他の箇所は異常なく良好な網成りであった。三枚口の切り下がり水深は確認できなかった。

ll)甲楽城定置網漁場 (定第 15号) (漁場水深59m~61m)

網成りは全体的に良好な状況で異常箇所もなく、網は着底し余り網も見られた。立碇ロープは貝類の付着も少

なく良好であった。

三枚口の切り下がり水深は48mであった。

5.考察

本年度は県下 11漁場の調査を実施し、7漁場において異常箇所が確認された。前年度では立碇ロープに多くの貝

類が付着し、網掛りと破網が多く見られたが、本年度は立碇ロープに貝類の付着が少なく、網掛りや破網が減少した

ことで、これらに起因する異常が前年度と比較し減少したように思われた。

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なお、本年度調査において多く見られた異常箇所は、①立碇ロープの相絡みと網裾上がり (写真1・2)、屠輪く

ぐり環の絡みであった (写真3・4)0

①については立碇ロープの切断や破網の原因になるため、正規の位置に取り変える必要がある。②については網が落

下しないので、網裾上がりの原因となるため、入網時に輪くぐりの絡まりに注意が必要である。

表1.定置網鋼査漁場

漁 場 名 公示 番号 統敦 調 査 年 月 日 三鷹果旦ぐ - .也速射岬班 (L.-.と娃ー 甲東城!ScL,i柿衣 放資港14年度定鷹鋼綱成 り刊査漁場図1 糠 定置網 定第 12号 1

平成 14年 4月19日2甲兼城 〝

〝 15号 1 〝 4月23日3河 野 〝 〝 20号 1 〝 5月

2日4 糠 〝 〝 12号 1

〝 5月 9日5小 川 〃 〝 53号

1 〝 5月13日6河 野 n 〝 18号 1 〝 5月14日7常神須崎n 〝 51号 1 〝 5月22日

8莱 崎 〝 〝 2号 1 〝 6

月 3日9世久見 〝 〝 56号 1 〝 6月28日

10神子 〝 〝 52号 1 〝 7月

5日ll甲兼城

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写真 :.1 道網 :網据上が り写真 :

3 裏障子 :輪くぐり環絡、み-132- 写真 :2 裏障子磯 :網据