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発熱性好中球減少症について 松山赤十字病院 内科 池田祐一 Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

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発熱性好中球減少症について

松山赤十字病院 内科 池田祐一

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

・血液疾患や悪性腫瘍の治療中に好中球が減少した患者で発熱を伴ったときには、重症化の危険があり、内科Emergencyの一つとして、早急に対処する必要がある病態である。

• Febrile neutropenia(FN)は、1990年に提唱された細菌培養陰性の不明熱、あるいは敗血症疑いなどの病態を感染症とみなす疾患概念で、2004年には国内でも「発熱性好中球減少症」という疾患名で認知されるようになった。

はじめに

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

①好中球数が500/μL未満、あるいは1000/μL未満で48時間以内にに500/μL未満に減少することが予測される状態

②腋窩温が37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合

両方を満たした場合をFNと定義する

Febrile neutropenia(FN)の定義

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

発熱性好中球減少症の原因の大半は何らかの感染症であるといわれているが、4つの特徴が挙げられる。

①症状や所見が表面に現れにくいこと。

②発生すると進行が早い場合があること。

③通常見られない部位に感染症がおこること。

④アスペルギルス属などのまれな微生物による感染症がおこること。

Febrile neutropenia(FN)の特徴

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

MASCCスコア

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

項目 スコア

臨床症状 ・無症状 ・軽度の症状 ・中等度の症状

5 5 3

血圧低下なし 5

慢性閉塞性肺疾患なし 4

固形癌である、あるいは造血器腫瘍で真菌し感染の既往なし

4

脱水症状なし 3

外来管理中に発熱した患者

60歳未満(16歳未満には適応しない)

3

2

21点以上を低リスク症例、20点以下を高リスク症例とする。

・白血球分画を含む全血球計算(CBC)

・腎機能、電解質、肝機能を含む生化学

・2セット以上の静脈血培養

中心静脈カテーテルが挿入されている場合はカテーテル逆血より1セット、末梢血静脈より1セット採取する

・呼吸器症状を伴った感染が疑われる場合は胸部レントゲン

・感染が疑われる症状・徴候を示す身体部位での培養

Febrile neutropenia(FN)の初期検査

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

FNにおけるCRP,PCTは経過を評価する副次的指標として有用であるが

これらが陰性でもFN初期には基準値内でとどまることもありCRP,PCTが陰性でも抗菌剤治療が不要となる根拠とはしない。

Febrile neutropenia(FN)の原因

Antimicrob Agents Chemother 40:1108~15,1996.

Febrile neutropenia(FN)の起因菌

Clin Infect Dis 34:730~51,2002.

起因菌が同定された感染症では60~70%がグラム陽性菌

Febrile neutropenia(FN)の初期治療 MASCCスコア高リスク、あるいは低リスクで入院加療を要する場合。

検査結果を待たずに、グラム陰性桿菌を抗菌スペクトラムに含むβ-ラクタム剤を単剤で経静脈的に投与する。

①セフェピム 1回2g 12時間毎 ②メロペネム 1回1g 8時間毎 ③タゾバクタム・ピペラシリン 1回4.5g 8時間毎 ④イミペネム・シラスタチン 1回0.5g 6時間毎 ⑤ドリペネム 1回1g 8時間毎 ⑥セフタジジム1回1g 6時間毎

解熱

好中球500/μLまで抗菌剤の投与を継続する

発熱が持続する場合

次のスライドへ

初期治療後開始3~4日後の再評価

抗真菌薬の経験的治療を検討 (高リスクでFNが4~7日間持続かつ好中球の回復がまだ期待できない場合) ・ミカファンギン・・・150mg/日 1回点滴静注 ・イトラコナゾール・・・ 200mg/日 1回点滴静注 ・アムホテリシンBリポソーム製剤・・・2.5mg/kg/日 1回点滴静注 ・ボリコナゾール 4mg/kg 2回点滴静注

(特に血行動態が不安定な時は・・)抗菌剤の変更・追加を検討 ・グラム陽性菌感染s/o⇒バンコマイシンの追加 ・グラム陰性菌感染s/o⇒アミノ配糖体の追加 ・嫌気性菌s/o⇒カルバペネムへの変更

発熱継続、診察、必要に応じ培養・画像評価を検討し

Febrile neutropenia(FN)のG-CSFの予防投与

計画しているがん薬物療法のFNの発症頻度を予測する。

10~20% 10%以下 FNの発症頻度20%以上

FNの危険因子 ・65歳以上 ・病期分類で進行期 ・抗菌薬の予防投与なし ・FNの既往がある

予防投与推奨 推奨されず

すでに発症したFNに対して一律にG-CSF製剤を投与する治療的投与は推奨されない。 重症化する危険因子を有する症例については検討することは妥当である

Febrile neutropenia(FN)の発症頻度

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital

・ Febrile neutropenia(FN)は内科Emergencyの

一つとして、早急に対処する必要がある病態である。

• FNのコントロールは、最終目標である原疾患

の治療成績を向上することが期待され、適切な治療、発症の予防が重要である。

おわりに

Department of Internal Medicine, Matsuyama Red Cross Hospital