線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断...

15
1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 20101217日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 Fibro-osseous lesion(線維骨病変,線維性骨 病変,骨線維化病変):骨に生じる線維性組 織の増殖性病変のうち、種々の硬組織の形成 osseous metaplasia)を伴う歯原性および 非歯原性病変の総称 (診断名ではなく、総括 的名称) 1)線維性骨異形成症 fibrous dysplasia 2)骨形成線維腫 ossifying fibroma 3)根尖性セメント質骨異形成症 periapical cemento-osseous dysplasia 4)ケルビズム cherubism 1)線維性骨異形成症 fibrous dysplasia 臨床所見:非腫瘍性疾患であり、骨形成間 葉組織の異常によって線維骨の段階で止 まったもので、骨の肥大と変形を伴う。 顎骨では上顎に多い。 単骨性と多骨性に大別され、多骨性では女 性の性的早熟や皮膚の色素沈着を伴う Albright症候群の部分症として発症する場 合もある。 エックス線所見:病変部と周囲骨との境界は不明 瞭で、病巣内に線維性組織が多く含まれている場 合にはエックス線透過像を呈するが、骨組織が多 い場合にはエックス線不透過像を呈し、いわゆる スリガラス状「ground glass appearanceを呈 する。 透過性は病巣中の線維組織と骨組織のバランスや、 周囲骨との境界の程度により様々である。病巣中 の線維組織が多い場合には単房性あるいは多房性 の嚢胞様透過像を呈する(エナメル上皮腫に類 似)。嚢胞状を呈するのは若年者に多く、ごく短 期間のみにみられる。 内部の骨組織が多くなるほど斑紋状に不透過性を 増し、骨組織が多量でほとんど石灰化した場合に は、均一な不透過像となる。歯根の吸収や歯の偏 位はほとんどみられない。 Fibrous dysplasiaのシェーマ 20代・男性 Fibrous dysplasia

Upload: others

Post on 24-Mar-2020

11 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

1

線維骨病変・神経性疾患の画像診断

2010年12月17日(金)

線維骨病変(F-O lesion)の画像診断

• Fibro-osseous lesion(線維骨病変,線維性骨病変,骨線維化病変):骨に生じる線維性組織の増殖性病変のうち、種々の硬組織の形成(osseous metaplasia)を伴う歯原性および非歯原性病変の総称(診断名ではなく、総括的名称)

1)線維性骨異形成症 fibrous dysplasia2)骨形成線維腫 ossifying fibroma3)根尖性セメント質骨異形成症 periapical

cemento-osseous dysplasia4)ケルビズム cherubism

1)線維性骨異形成症 fibrous dysplasia

• 臨床所見:非腫瘍性疾患であり、骨形成間葉組織の異常によって線維骨の段階で止まったもので、骨の肥大と変形を伴う。

• 顎骨では上顎に多い。

• 単骨性と多骨性に大別され、多骨性では女性の性的早熟や皮膚の色素沈着を伴うAlbright症候群の部分症として発症する場合もある。

• エックス線所見:病変部と周囲骨との境界は不明瞭で、病巣内に線維性組織が多く含まれている場合にはエックス線透過像を呈するが、骨組織が多い場合にはエックス線不透過像を呈し、いわゆるスリガラス状「ground glass appearance」を呈する。

• 透過性は病巣中の線維組織と骨組織のバランスや、周囲骨との境界の程度により様々である。病巣中の線維組織が多い場合には単房性あるいは多房性の嚢胞様透過像を呈する(エナメル上皮腫に類似)。嚢胞状を呈するのは若年者に多く、ごく短期間のみにみられる。

• 内部の骨組織が多くなるほど斑紋状に不透過性を増し、骨組織が多量でほとんど石灰化した場合には、均一な不透過像となる。歯根の吸収や歯の偏位はほとんどみられない。

Fibrous dysplasiaのシェーマ

20代・男性Fibrous dysplasia

Page 2: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

2

2)骨形成線維腫 ossifying fibroma

• 臨床所見:好発部位は下顎臼歯部であり、増大は緩やかだが顎骨に膨隆をきたす。組織学的には線維芽細胞様の紡錘形細胞と線維性結合組織の増殖からなる線維腫内部にセメント質ないし骨類似の硬組織が散在性に形成される。

• エックス線所見:病変部の周囲骨との境界は明瞭であり、内部はエックス線透過像と不透過像の混在で不均一である。内部の透過性は形成された硬組織の量に応じて異なり、硬組織が多いほど不透過性が強い。(病巣と周囲の骨組織との境界が明瞭な点が線維性骨異形成症との鑑別点)

Page 3: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

3

Ossifying fibromaのシェーマ

50代・女性ossifying fibroma

Page 4: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

4

3)根尖性セメント質骨異形成症periapical cemento-osseous dysplasia

• 臨床所見:好発年齢・性は中年以降の女性。好発部位は前歯部であるが、しばしば多数歯に認められる。

• 組織学的には、病変の初期には線維芽細胞および線維性結合組織の増生が主体を占め、時期が進むにつれて塊状ないし梁状のセメント質様硬組織が形成される。

• エックス線所見:根尖部に生じる病変であり、経過時期により、エックス線透過像を呈する第I期、透過像の中に不透過像が含まれる第II期、全体が不透過像となる第III期に分けられる。

• 第I期では歯根嚢胞や歯根肉芽腫との鑑別が、第III期では骨腫などとの鑑別が問題となる。

• 多発性に病変がみられることもあり、上下顎左右に多数認められる場合は巨大型セメント質腫 gigantiform cementoma あるいは開花型セメント質骨異形成症florid cement-osseous dysplasia (FCOD) といわれる。

periapical cemento-osseous dysplasiaのシェーマ

30代・女性periapical cemento-osseous dysplasia

Page 5: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

5

根尖性セメント質骨異形成症Periapical cemento-osseous

dysplasia50代・女性

2001/7/11

1995/4/17 1993/10/04

2001/7/11 1995/4/17 1993/10/04

2001/7/11

1995/4/17

1993/10/04

Page 6: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

6

50代・女性Florid cemento-osseous dysplasia

30代・女性Florid cemento-osseous dysplasia

Page 7: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

7

40代・女性Florid cemento-osseous dysplasia

70代・女性Florid cemento-osseous dysplasia

Page 8: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

8

4)ケルビズム cherubism• 巨細胞肉芽腫が両側性ないし顎骨の広範囲に現れるもので、家族性に発症したもの。

• 多房性のエックス線透過像が顎骨を膨隆させるため聖書の童顔の天使のような顔貌になることからこの名称がある。

Hitomi G , Nishide N , Mitsui K. Cherubism: diagnostic imaging and review of the literature in Japan. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod.1996 May ; 81(5):623-8.

歯原性腫瘍のWHO分類2005

良性腫瘍benign tumors骨関連病変bone-related lesions・骨形成線維腫ossifying fibroma・線維性骨異形成症 fibrous dysplasia・骨性異形成症osseous dysplasia・中心性巨細胞病変(肉芽腫)central giant cell

lesion (granuloma)・ケルビズム cherubism・脈瘤性骨嚢胞aneurysmal bone cyst・単純性骨嚢胞simple bone cyst

central giant cell lesionのシェーマ

40代・女性central giant cell granuloma

Page 9: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

9

単純造影早期相

骨表示造影遅延期相

神経性疾患の画像診断

• 三叉神経痛

• 顔面神経麻痺

• 三叉神経麻痺

三叉神経痛 trigeminal neuralgia

頭部神経痛及び中枢性顔面痛Cranial neuralgeas and central causes of facial pain三叉神経痛

Trigeminal neuralgia典型的三叉神経痛

Classical trigeminal neuralgia症候性三叉神経痛

Symptomatic trigeminal neuralgia

典型的三叉神経痛

• 短時間の電撃痛、突然の発現および終了、三叉神経枝の支配領域の1つまたはそれ以上の部位に限って生じるなどを特徴とする片側性疾患。

• 通常、洗顔、髭剃り、喫煙、会話または歯磨きのいずれか1つ以上(トリガー因子)の些細な刺激により誘発されるが、自然発症する場合も多い。鼻唇溝またはオトガイ(あるいはその両方)の狭い領域が特に痛み誘発部位(トリガー域)になりやすい。痛みは様々な期間をもって緩解する。

• 通常、第2または第3枝領域に始まり、頬

またはオトガイが罹患部位になる。両側性に生じることは稀であり、両側性に生じた場合には多発性硬化症のような中枢性の原因を考慮しなければならない。

• MRIの実施頻度が増加しつつあることから、おそらくほとんどの典型的三叉神経痛患者で、蛇行または迷走する血管により三叉神経根が圧迫されていることが明らかになった(三叉神経根のentry zoneに対する血管圧迫vascular compression)。

Page 10: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

10

典型的三叉神経痛の診断基準

A. 三叉神経分枝の支配領域の1つまたはそれ以上の部位の発作性の痛みが数分の1秒〜2分間持続し、かつBおよびCを満たす

B. 痛みは以下の特徴のうち少なくとも1項目を有する

1. 激痛、鋭い痛み、表在痛または刺痛

2. トリガー域から発生するか、またはトリガー因子により発生する

C. 発作は個々の患者で定型化する

D. 臨床的に明白な神経障害は存在しない

E. その他の疾患によらない

症候性三叉神経痛

• 典型的三叉神経痛と鑑別不可能な痛みであるが、原因が血管性圧迫以外の証明可能な器質的病変。

三叉神経痛の痛みの特徴

• ヒトの体験する痛みの中でもっとも強い痛み

• トリガーによって、三叉神経の支配領域に引き起こされる発作性の激痛(三叉神経痛以外の神経痛はトリガーによって引き起こされる痛みではない)

• 鋭い痛みが走るように放散することが多いが、その場にとどまることもある

• 鋭い電撃痛;稲妻が光るようなチカチカ、電気が伝わるようなびりびり、ズキズキとした痛み

領域・左右差

• 三叉神経の支配領域に限局、顔面皮膚、頬(口腔)粘膜および歯槽部分

• ほとんどは片側性、両側は約1%• 2枝または3枝に痛みが生じることが多い

• 罹患枝数は、1枝であることが多いが、2枝に及ぶこともある

• 右の発症は、左の約1.5倍

随伴症状

• 疼痛の誘発以外に、他覚的な神経的異常所見はほとんどみられない

トリガー

• 食事、嚥下、洗面、ひげ剃り、会話、軽度の機械刺激や温度刺激などがトリガーになって、痛みが誘発される

• 刺激に感応する発痛点 trigger point、または、発痛帯 trigger zoneがある

• trigger point:口唇周囲、鼻翼、頬、眉毛、毛髪など

• trigger pointは、直径2~4mmであり、ひげ1本に触れただけでも、発作が誘発される

Page 11: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

11

発作の頻度・持続時間

• 1日に数回、あるいはそれ以上、間隔をおいて繰り返される

• まれには、連続して起こることもある

• 1回の発作は普通数秒、長くても数分以内

• 発作の起こる期間が数週間から数か月続いた後、何か月も発作のない期間が続くこともある

• 自然治癒することはなく、再発と緩解を繰り返す

• 発作の頻度や痛みの程度は次第に悪化していく

発症年齢・性差

・小児にはみられず、20歳代より発症し、50~70歳の間がピーク

• 女性が男性の約2倍とされるが、性差はないという報告もある

歴史的事項

• Dandy(1934)神経血管圧迫説を提唱

• Janetta(1967)Dandy説の復活

• 高齢化に伴って、動脈硬化性の脳血管病変が現れ、小血管ループが橋の近くで三叉神経根を圧迫しており、圧迫している血管ループと三叉神経根の間に止血用のゲルフォームの小片を挿入したところ、三叉神経痛が緩解したと報告した(神経血管減圧術neurovascular decompression,微小血管減圧術microvascular decompression)

• 手術所見において、多くの症例で血管の圧迫による神経根の圧痕、変色、変形が観察され、痛みの領域と血管圧迫部位との密接な解剖学的関係を確認した

• 圧迫血管はほとんどが上小脳動脈であるが、脳底動脈、前下小脳動脈、錐体静脈によることもある

• Kerr(1977)頸動脈三叉神経節接触説carotid / trigeminal ganglion contact theory

• 三叉神経痛発作の原因は、三叉神経節と三叉神経根の両方にある

• 三叉神経の脳底側は、内頸動脈に近い

• 高齢化に伴って骨の無機質が次第に失われていくと内頸動脈が三叉神経節を圧迫する

三叉神経痛の画像診断

• MRIが有用であり、特に高空間分解能のCISS法が三叉神経根のentry zoneと近接して走行する血管との位置関係を評価するのに有効である。またMRA(MR angiography)が責任血管同定に

役立つ。

典型的三叉神経痛

70代・男性

主訴:左上顎部の電撃痛

Page 12: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

12

T1-WI

T2-WI

T1-WIGd+ T1-WI

T2-WI

T1-WIGd+

内頸動脈内頸動脈

椎骨動脈椎骨動脈

内頸動脈

椎骨動脈

椎骨動脈による三叉神経根のentry zoneの圧排所見

MRA原画

MIP

1997年より上顎前歯部と舌の疼痛あり。外科・

脳外科・歯科・ペインクリニック通院するも症状改善なし。2003年6月に口外初診、CTにて異

常所見無し。

典型的三叉神経痛

70代・女性主訴:上顎前歯部と舌の疼痛

MRA原画 CISS

右側三叉神経根の entry zone に対する血管の圧迫

上小脳動脈

前下小脳動脈脳底動脈

Page 13: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

13

上小脳動脈

前下小脳動脈

脳底動脈

Sobotta Atlas of Human Anatomy : Head, Neck, Upper Limb vol.1 13TH EditionPutz, R. (EDT) /Pabst, R. (EDT) /Publisher:Lippincott Williams & Wilkins Published 2002/01

Sobotta Atlas of Human Anatomy : Head, Neck, Upper Limb vol.1 13TH EditionPutz, R. (EDT) /Pabst, R. (EDT) /Publisher:Lippincott Williams & Wilkins Published 2002/01

上小脳動脈

前下小脳動脈

脳底動脈

典型的三叉神経痛の治療法• 内服治療

• ブロック療法

– 経皮的に針を刺入し、薬液注入あるいは高周波凝固を行い三叉神経の伝導を抑制し、痛みのコントロールをはかる治療法

• 手術療法

– 唯一の根治療法である三叉神経痛の微小血管減圧術(microvascular decompression)。上小脳動脈あるいは前下小脳動脈よる三叉神経知覚根部での圧迫が多く、神経根の弯曲や圧痕を認めることもしばしばである。静脈による圧迫あるいはくも膜との癒着で三叉神経が変形屈曲して神経痛を生じている場合もある。これらの血管を三叉神経から剥離し,同時に脳幹部から遊離し移動させる。血管を移動した後、神経に触れないようにprosthesisを用いて移動した血管を固定する事が一般的におこなわれている。

• 定位放射線治療

症候性三叉神経痛(歯科疾患)

60代・女性主訴:左右両側上顎犬歯窩部の自発痛

T1-WI

T2-WI

T1-WIGd+ T1-WI

T2-WI

T1-WIGd+

Page 14: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

14

パノラマエックス線写真デンタルエックス線写真

Waters氏法エックス線写真

T1-WI

T2-WIFS

T1-WIFS Gd+

顔面神経麻痺

• 中枢性麻痺

– 障害を受けた中枢の反対側顔面筋の運動麻痺

– 前額部の筋の麻痺がないのが特徴(両側支配のため)

• 末梢性麻痺(ベル麻痺 Bell麻痺)

– 顔面神経核より末梢で障害が生じたもの

– 走行経路上の障害部位に応じてさまざまな麻痺が生じる・大錐体神経→翼口蓋神経節→涙腺分泌・軟口蓋運動・アブミ骨神経→アブミ骨筋(聴覚)・鼓索神経→舌前方2/3の味覚,顎下腺・舌下腺の分泌・顔面の分枝→顔面の表情筋

前額部の皺の形性困難,麻痺性兎眼,鼻唇溝の消失,ベル症状(白眼)

– MRI所見では、顔面神経の造影剤増強効果が知られているが、必ずしも特異的な所見ではないとする説もある。

顔面神経麻痺(Bell麻痺)

50代・女性

主訴:右眼が閉じられない

Page 15: 線維骨病変・神経性疾患の画像診断1 線維骨病変・神経性疾患の画像診断 2010年12月17日(金) 線維骨病変(F-O lesion)の画像診断 • Fibro-osseous

15

T1-WI

T2-WI

T1-WI Gd+

FS T1-WI Gd+

右側の内耳道~迷路部~膝神経節~水平部~垂直部が強く造影される

顔面神経の走行:内耳道→迷路部→膝神経節→鼓室部→乳突部中でも内耳道・迷路部での増強効果は特異的と判定されている

三叉神経麻痺(腫瘍)

30代・男性

主訴:右顔面部の痺れ

T1-WI

T2-WI

T1-WI Gd+

FLAIR

聴神経腫瘍 acoustic neuroma

(補足)非定型顔面痛atypical facial painについて

• 多くの症例があるひとつのパターンにまとめられてしまうため不適切な用語である。いくつかの症例では顔面、歯または歯肉の手術または損傷に続発する場合があるとの事実から、感染性または外傷性の原因である可能性が示唆される。疾患の詳細が判明するまでは、「持続性特発性顔面痛」(persistent idiopathic facial pain)の方が無難で望ましい名称と思われる(国際頭痛分類(ICHD-II)第2版日本語版より引用)。

• 非定型顔面痛に対する画像診断としては、一般的な歯科口腔領域の画像診断法が用いられているが、原因を明らかにすることは困難であることが多い。