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第50回 生物研究の集い 東京生物クラブ連盟 2018年2月18日(日) 9:00~ 東京農業大学 百周年記念講堂 -口頭発表編-

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第50回

生物研究の集い

主 催 東京生物クラブ連盟日 時 2018年2月18日(日) 9:00~場 所 東京農業大学 百周年記念講堂

-口頭発表編-

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平成 29 年 12 月 1 日

学 校 長 各位 生物ご担当教諭 各位 生物クラブ顧問 各位

東京生物クラブ連盟 代表 篠本隆志 第 50 回 「生物研究の集い」のお知らせ

拝啓 向寒の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。 今年度も下記の要領で、生物研究の集いを開催いたします。日頃の成果について、口頭発

表・展示発表など、是非ご参加下さい。 また、要旨集の表紙の生物イラストも合わせて募集いたします。奮ってご応募下さい。

敬具 記 1.主 催 東京生物クラブ連盟 2.期 日 2018 年 2 月 18 日(日)9:00~17:00 (時間が変更になる場合があります) 3.場 所 東京農業大学百周年記念講堂

〒156-8052 東京都世田谷区桜丘 1-1-1 17 号館

4.参加資格 東京及び近郊の中学・高等学校の生物部員(原則として引率して下さい。) 5.持 ち 物 昼食 なお,ごみはお持ち帰りください。 6.特別講演 長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学学長)

7.参 加 費 生徒一人 100 円(教員は無料です。) なお,連盟費 3000 円も,当日受付可能です。

8.発表者打合せ 事前打ち合わせは行いません。 9.問合せ先 安田学園 志田憲一 03(3624)2666 [email protected] FAX 先;03(3624)2668 安田学園・志田憲一 申し込みは FAX またはメールで平成 30 年 1 月 15 日(月)までにお願いします。

「生物研究の集い」参加申込み 学校名 団体名

参加区分 口頭発表 展示発表 見学 発表題・ 発表者名 (ふりがな) 賞状に記載する通りにお願いします

使用予定 の機器等

Power Point(CD, DVD, USB メモリ等に限る) VIDEO その他( )

研究内容 ○印

フィールド ラボラトリー

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発表者へのお知らせ 1 口頭発表 10分を予定しています。(発表件数によって変更になる場合があります) 時間厳守。 8分、9分でベル ※質疑応答は 1 分は確保

活発な質疑応答によりお互いに向上できる有意義な会にしたいです。

2 展示発表

セロテープの準備を各校でお願いします。 要旨提出の際に、どの程度のスペースが必要かお知らせください。

3 要旨提出

締め切り 1 月 31 日(水)

提出方法 メールでお願いします。(昨年同様要旨集のデータを送りますので、各校で必要

な部数の印刷をお願いします。) メール [email protected]

添付ファイルのデータが大きすぎるとメール自体が届かない場合があります。メールを

受信したときは、必ず返信しますのでご確認お願いします。

4 要旨書式 本文の文字のサイズは 10.5 ポイントまたは 11 ポイント、字色は黒とし、1 行

45 字以内、1 枚 40 行以内とする。 提出原稿は上下左右 20mm の余白を設定し、ヘッダ・フッター・ページ番号を

振っていないこと。図やグラフはそのまま使っても問題ないよう、解像度を

144pixel/inch 以上としてください。

A4 2枚以内

*展示発表も要旨を載せますので、よろしくお願いいたします。

5 その他

① 発表の順番はこちらで決めさせていただきます。もし希望があれば備考欄に記入し

てください。 ② 必要事項は楷書で丁寧に記入お願いします。 ③ 表紙イラストを募集しています。提出は原稿と同じ期日、方法でお願いします。 (郵送も可能です)〒130-8615 墨田区横網2-2-25 安田学園 志田憲一 宛 ④ 司会進行役は未定です。希望があれば事務局までメールでご連絡ください。 ⑤ その他何かありましたら、安田学園志田までお願いします。 ⑥ 発表校の申し込みが多い場合、調整させていただくことがあることをご了承くださ

い。 以上。

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平成 30 年 2 月 6 日

学 校 長 各位

生物ご担当教諭 各位

生物クラブ顧問 各位

東京生物クラブ連盟 代表 篠本隆志

第 50 回 「生物研究の集い」のお知らせ

拝啓

厳寒の候、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

時程、研究発表校が決まりましたので、お知らせいたします。

敬具

1.主 催 東京生物クラブ連盟 2.期 日 2018 年 2 月 18 日(日)9:00~18:00 (時間が変更になる場合があります) 3.場 所 東京農業大学百周年記念講堂

〒156-8052 東京都世田谷区桜丘 1-1-1 17 号館

4.参加資格 東京及び近郊の中学・高等学校の生物部員(原則として引率して下さい。) 5.持 ち 物 要旨集(東京生物クラブ連盟ホームページからダウンロードして各校で印刷をお願いします)

昼食 なお,ごみはお持ち帰りください。 6.特別講演 長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学学長)

「毎日の暮らしを進化で考える:ヨーグルト、飛行機そしてスマホ」

7.参 加 費 生徒一人 100 円(教員は無料です。) 連盟費 3000 円は当日受付しております。

8.発表者打合せ 事前打ち合わせは行いません。 9.問合せ先 安田学園 志田憲一 503-3624-2666 [email protected]

東京京生物クラブ連盟 HP URL:http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~bhs-bio/ 10.発表資料 要旨とは別に資料を用意される発表者は、450 部お持ち下さい。

11.当日の流れ

【司会】世田谷学園、香蘭女学校 8:30 受付開始

9:00 開会式

9:20 口頭発表 10 件(発表時間は各校 10 分、その後質疑応答)

11:40 展示発表見学、昼食

12:50 顧問打ち合わせ

13:20 口頭発表 9 件(発表時間は各校 10 分、その後質疑応答) 15:30 特別講演 17:00 講評

17:20 閉会式(賞状授与 ほか)

18:00 展示片付け、解散

*見学参加

渋谷教育学園渋谷中学高等学校理科部、国府台女子学院、晃華学園中学校高等学校科学同好会 学習院女子中・高等科生物部、東京都三鷹中等教育学校、東邦大学付属中学校高等学校 ほか

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【口頭発表】

1.香蘭女学校における鳥類の習性②/香蘭女学校 自然科学部

2.マウスは教え学ぶのか/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

3.尾瀬のコメツガ切株更新の仕組み~コメツガ切株更新におけるダケカンバへの他感作用の解明と応用~

/東京農業大学第一高等学校 尾瀬班

4.ワカケホンセイインコの生態/恵泉女学園中学・高等学校

5.都市緑地を 大限活用するには~エネルギーから見る生田緑地の生態系~

/世田谷学園高等学校 生物部 自然科学班

6.都立林試の森公園昆虫調査/攻玉社生物部

7.模型を用いたムササビの滑空実験/開成学園生物部

8.赤いミジンコをつくれ!~オオミジンコの低酸素状態におけるヘモグロビン生成~

/多摩大聖ヶ丘中学高等学校自然科学部

9. 昆虫食の可能性/獨協中学・高等学校生物部

10.群馬県川場村における獣害の現状 〈その2〉 ~野生動物と人間との適切な関係~

/東京都市大学付属中学校・高等学校 生物研究部

11.シロイヌナズナの花芽形成遅延変異体CaD428 成長速度の解析

/広尾学園中学校医進・サイエンスコース植物研究チーム

12.千葉県我孫子市岡発戸に生息する昆虫類調査~水生昆虫編~/中央学院高等学校 生物部

13.伊豆大島と武蔵野市周辺における環境比較/聖徳学園中学高等学校 理科部

14.玉川上水を流れる高度処理水は、冬の虫に影響を与える?(13年目)/創価高校3年 生物選択者

15.ヒキガエルの体色の変化/鷗友学園女子中学校 理科班

16.都市型養蜂は新しい農業なのか?/安田学園中学校 生物部 養蜂班

17.オカダンゴムシにおける交替性転向反応について/吉祥女子高等学校

18.ミナミヌマエビの交替性転向反応について/大森学園高等学校科学研究同好会

19.シリコーン樹脂標本の作製~鳥獣の内蔵を利用して~/学習院中等科生物同好会

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【展示発表】

1.八重山のゲンゴロウの観察/城北中学・高等学校 生物部

2.ダンゴムシの交替性転向反応/城北中学・高等学校 生物部

3.クロスズメバチの習性/城北中学・高等学校 生物部

4.皇居千鳥ヶ淵の水質調査/二松學舎大学附属高校 理数科研究部

5.ニホンアマガエルの採餌行動における視覚刺激の効果/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

6.奇形胚の骨格から見る発生条件/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

7.ゼニゴケの再生能力/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

8.アイスプラントの耐水性~なぜ雨に弱いのか~/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

9.音楽の種類がマウスの行動に変化を与えるか/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

10.コオロギの求愛行動~鳴き声かフェロモンか~/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

11.粘菌は三次元迷路が解けるのか/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

12.セミの羽化について~その規則性~/東京農業大学第一高等学校 生物部 セミ班

13.プナラリアの光走性/恵泉女学園中学校

14.都市河川の河川環境/世田谷学園高等学校 生物部 自然科学班

15.コウベモグラの生息域の変遷について/世田谷学園高等学校 生物部

16.ミシシッピアカミミガメの骨格分析/世田谷学園高等学校 生物部

17.透明骨格標本で見るマウスの硬骨の発達/攻玉社中学校高等学校 生物部

18.クロオオアリの口移しによる生命維持について/攻玉社中学校高等学校 生物部

19.目録作成作業から探る攻玉社標本コレクションの概要/攻玉社中学校高等学校 生物部

20.式根島におけるオカダトカゲの分布調査/芝学園 生物部

21.2017 芝学園生物部海合宿報告/芝学園 生物部

22.海水魚の体色変化について/芝学園 生物部

23.小浅間山での植生調査の試み/開成学園 生物部

24.開成学園校内での鳥類観察について/開成学園 生物部

25.食肉目哺乳類における骨密度の比較と不明哺乳類骨格の同定技法への応用の検討

/東京都市大学等々力中学校高等学校 理科部 生物班

26.爬虫類の採餌行動~トカゲ亜目3種を比較して~/獨協中学・高等学校生物部

27.成蹊中学校林苑野鳥報告(2017)年度/成蹊中学校自然科学部

28.奄美群島におけるトカゲ類の分布に基づく古環境と個体群分散史の推定

/東京都市大学付属高等学校 生物研究部

29. シロイヌナズナの変異体CaD428 の開花制御機構の解析

/広尾学園中学校医進・サイエンスコース植物研究チーム

30.メジナの食性の季節変化/武蔵高等学校 生物部

31.クマムシ孵化の撮影レポート/千代田区立九段中等教育学校

32.ハグロトンボの翅打ち合わせの効果について/創価高校 生物部

33.イカの発光バクテリア実験/日出学園中学高等学校生物部

34.透明骨格標本の作製/鷗友学園女子中学高等学校 理科班

35.プラナリアの記憶実験/吉祥女子高校 生物クラブ

36.イネの密度実験/吉祥女子中学校 生物クラブ

37.セイヨウミツバチは人工甘味料を飲むのか?/安田学園中学校高等学校 生物部

38.クロマルハナバチの倍数化の研究/安田学園高等学校生物部 マルハナバチ班

39.オオマルハナバチの死体排除行動/安田学園高等学校 生物部

40.カニの巣穴レプリカ作成の試み~焼石こうを利用して~/学習院中等科生物同好会

41.大島のイタドリに関する研究/東京都立国分寺高等学校

42.ハグロトンボ生態調査/桐朋高校生物部

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交通情報

2/18(日)井の頭線 渋谷~明大前が運休となります。 京王電鉄は 2018年 2月 17日から 18日にかけ、井の頭線の下北沢駅付近(東京都世田谷区)で上り線橋りょうの

架替工事を行います。これに伴い、井の頭線は 2018 年 2 月 18 日の初発から 11 時頃まで、下北沢駅を含む渋谷~

明大前間 4.9km が運休。明大前~吉祥寺間 7.8km は折返し運転となりますのでご注意ください。

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口 頭 発 表

[ 午 前 の 部 ]

9:20 [p.8-p.17]

1. 香蘭女学校における鳥類の習性②/香蘭女学校 自然科学部

2. マウスは教え学ぶのか/東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

3. 尾瀬のコメツガ切株更新の仕組み~コメツガ切株更新におけるダケカンバへの他感

作用の解明と応用~/東京農業大学第一高等学校 尾瀬班

4. ワカケホンセイインコの生態/恵泉女学園中学・高等学校

5. 都市緑地を最大限活用するには~エネルギーから見る生田緑地の生態系~/世田谷

学園高等学校 生物部 自然科学班

<休憩>

10:20 [p.18-p.27]

6. 都立林試の森公園昆虫調査/攻玉社生物部

7. 模型を用いたムササビの滑空実験/開成学園生物部

8. 赤いミジンコをつくれ!~オオミジンコの低酸素状態におけるヘモグロビン生成~

/多摩大聖ヶ丘中学高等学校自然科学部

9. 昆虫食の可能性/獨協中学・高等学校生物部

10. 群馬県川場村における獣害の現状 〈その2〉 ~野生動物と人間との適切な関

係~/東京都市大学付属中学校・高等学校 生物研究部

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1 香蘭女学校内における鳥類の習性②

香蘭女学校 自然科学部

北久保 希愛(高 1) 前田 美晴(高 1)

富井 胡花(中 2) 石崎 詩乃(中 2) 田口 満理奈(中 2)

1. はじめに

私たちの学校は都内の品川区にありながら自然

が多く、木々や小動物の憩う水場があり、鳥類の

観察には大変恵まれた環境にある。その中で私達

自然科学部は代々鳥見というものを行ってきた。

集まる鳥類は種類も様々であり、それを観察する

ことは私たち部員の楽しみでもある。今回の実験

では、鳥見で多く見られる 4種類の鳥に着目し、

実験を行った。

昨年度の実験では、ムクドリやハシブトガラスな

どの、ウォーキングができる鳥は、雨に多く見ら

れるのではないか、と考察した。この考察を確か

なものにするために、今回の実験では、データを

増やし、データの解析方法を検討した。

2. 仮説

実験①

昨年の結果から、ムクドリ、ハシブトガラスはウ

ォーキングができるため、雨の日に多く見られる。

実験②

ヒヨドリとスズメは晴れの日に多く見られたた

め、気温が高い日に多い。

ムクドリ、ハシブトガラスは雨の日に多く見られ

たため、気温が低い日に多い。

3.方法

毎朝7時50分から8時までの10分間鳥見を行う。

その観察記録から、そして日々の天候と個体数と

の関連を集計する。

実験①

晴れの日を基準として、雨、曇りの日に見られる

個体数が、晴れの日と同じ割合だと仮定したもの

を期待値とし、実際に見られた個体数と比較した。

前回は、2012~2016 年のデータだったのに対し、

今回は、1991~2017 年の鳥見のデータを使用し

た。

実験②

2012~2017 年の 5年間の鳥見データを使用し、

気温による個体数の変化を比較した。

4. 結果

実験①

〈図①〉1991~2017 年の晴れに見られた個体数

〈図②〉1991~2017 年の曇りに見られた個体数

〈図③〉1991~2017 年の雨に見られた個体数

曇りでは期待値との差が見られなかったが、雨で

は期待値との差が見られた。

010002000300040005000

晴れ(1196日)(羽)

01000200030004000

曇り(766日)

実際

期待値

0200400600800

1000

雨(206日)

実際

期待値

(羽)

- 8 -

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実験②

〈図④〉2012~2017 年のスズメの気温別個体数

〈図⑤〉2012~2017 年のヒヨドリの気温別個体数

〈図⑥〉2012~2017 年のムクドリの気温別個体数

〈図⑦〉2012~2017 年のハシブトガラスの気温別個体数

4 種類とも、気温による大きな差は見られなかった。

5.考察

実験①

上記の結果から、昨年度の雨の日にムクドリとハシ

ブトガラスの個体数が多くなるという考察が否定さ

れた。昨年度は、平均を求めたときの雨の日の分母

の値が少なかったため、結果として不十分だった。

それを踏まえて、今年は日数の違いを考慮したため、

このような結果になった。

雨の日に鳥があまり観察されなかったのは、鳥は飛

ぶ時にたくさんのエネルギーを使うため、雨で羽が

ぬれて重くなったり、体温が奪われたりすることは、

致命的だからではないか。

実験②

図④~⑦より、グラフに変化が見られないことから、

気温と個体数には関係がないと考えられる。

ハシブトガラスは体が黒く、光を集めやすいため、

熱がたまりやすく、気温が高い日は、少ないのでは

ないかと考えられる。

本校は、自然が多く、気候に左右されず常に鳥たち

の餌となる木の実などが豊富なため、鳥が餌を求め

て移動する必要がなく、個体数があまり変化してい

ないのではないか。

6.今後の展望

今回使用した 1991~2017 年のデータと、昨年使用し

た 2012~2016 年のデータでは、結果に違いがでた。

このことから、次回は年ごとのデータから、天気や

気温による個体数の違いを比較し、その年によって

個体数にどのような変化が起きているのかを確かめ

たい。

y = 0.0387x + 2.5894R² = 0.0124

0

5

10

15

20

-10 0 10 20 30 40

スズメ

y = -0.0033x + 4.968R² = 2E-05

0

20

40

60

-10 0 10 20 30 40

ヒヨドリ

y = 0.0395x + 2.6278R² = 0.005

0

10

20

30

40

-10 0 10 20 30 40

ムクドリ

y = -0.0194x + 3.261R² = 0.004

0

5

10

15

20

25

-10 0 10 20 30 40

ハシブトガラス

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2 マウスは教え学ぶのか

東京大学教育学部附属中等教育学校 生物部

大友沙羅

〈背景〉

今までマウスのコミュニケーションについての実験は、超音波での求愛や本能的な性行動、極限状態な

どでしか行われてこなかった。そこで、同じ性別で血縁関係も無く、なおかつ極限状態でない条件下で、マ

ウスのコミュニケーション実験をすることにした。今回は特に、高度なコミュニケーションであると考えら

れる知識の伝達に焦点を絞り、実験を行った。元々マウスは回し車を回す習性があるが、それを嫌悪学習に

より回さなくさせる。その学習をしたマウスが、学習をしていないマウスから「回し車を回しても安全であ

る」という情報を受け取り再び回すようになるのかを調べた。そこで伝達をしている可能性が見受けられた

ため、さらに追加としてその伝達の手段を調べる実験も行った。 〈目的〉

嫌悪学習を受けたマウスは、受けていないマウスと同居することで学習が有意に早く消去されるのか、

その影響はどのような手段で及ぼされるのかを調べる事を目的とした。

〈実験方法〉

知識の伝達を調べる実験では、オスのマウスを回し車のある実験ケージに入れ、回し車に乗ったら霧吹き

をかける嫌悪学習を行った。次に学習済みマウスと未学習マウスのペア、学習済み同士のペアを作り、ペア

ごとに回し車のある実験ケージに入れ、様子を動画で記録した。それを5日間続けた。(図1、図2)

伝達手段を調べる実験では、知識の伝達を調べる実験と同じ実験を、実験ケージを透明のアクリル板とラ

ップで密閉することによりマウス同士の音の伝達を遮断して行った。(図3)

〈結果〉

知識の伝達については、学習済みのマウスとペアだった場合と、未経験のマウスとペアだった場合で

は、前者は学習の消去が緩やかであったのに対し、後者はその消去が一日早かった。(図4) 伝達の手段については、今回嫌悪学習の効果が有意に出ず、また知識伝達の実験とは反対に学習済みのマ

ウスから未学習のマウスに及ぼされる影響がある可能性が見受けられた。(図5、図6)

〈展望〉

対照実験の条件を増やすなどして結果の精度を上げていきたい。またマウスが発するとする超音波を

人工的に流し、聴覚伝達の影響を詳細に調べたい。

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図 1 マウスが回し車を回したら霧吹きをかける

図2 実験ケージでペアで過ごす様子を記録する

図3 音を遮断して過ごす様子を記録する

写真 実験時の様子

図4 学習・未学習ペア、学習・学習ペアの学習済みマウスが一匹の状態で各日でそれぞ

れ回し車を回した時間 ( Bars: mean ± SE, 各条件: n=10, それぞれ1 日目とのtwo-way ANOVA 及びDunnett の多重比較検定。 日数 P < 0.0001,ペア有意差なし、交互作用なし *;P < 0.05,**; P < 0.01, ***;P<0.001 )

図5 未学習・学習済みペアの学習済み,未学習各マウスが初日と最終日のペア時にそれぞれ回し車を

回した時間 ( Bars: mean ± SE, 各条件: n=10, 日にち、条件別の two-way ANOVA 及び Tukey の多重比較検定。 日数 P < 0.01,ペア P<0.01,交互作用あり **;P < 0.01, ) 図6 固定回し車・学習済みペアの学習済みマウスが初日と最終日のペア時に回し車を回した時間 (Bars: mean± SE, 各条件: n=10, Welch の t 検定, 有意差なし)

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3 尾瀬のコメツガ切株更新の仕組み

~コメツガ切株更新におけるダケカンバへの他感作用の解明と応用~

東京農業大学第一高等学校生物部

宇田川在考、吉川美優、植村果穂、吉澤日向子

1.研究動機、研究目的

私たちは 1990 年から計 5 回尾瀬国立公園について継続研究を行っており、コメツガが減少しているのを示し

てきた。私たちはコメツガの回復のためにコメツガが生育しやすい環境を明らかにしたいと考えている。今年度

のフィールド調査で、コメツガが切株更新をする過程でパイオニア種であるダケカンバに負けずに生育している

ことを発見し、その要因の一つがコメツガから滲出する化学物質によるダケカンバの成長阻害であると証明する

ことを研究目的とした。なお、以後、阻害物質をアレロケミカル、物質による作用をアレロパシーと記す。

2.フィールド調査

尾瀬鳩待峠登山道における 4 地点でコドラート調査を行い、調査対象種(コメツガ、ダケカンバ、クロベ、コメ

ツガ)の優占度を求める。

また、ダケカンバの根の形状はコメツガと似ており、切株上に生育していたことから、従来の

「ダケカンバが根の形状が原因で切株上に生育しづらい」という定説は否定された。

3.実験 サンドイッチ法 ①寒天挟んだコメツガの葉の有無でレタスの生育状況を比較(暗条件、25℃、 48 時間静置)。

②同様の方法で寒天の厚さのみを変え、物質の滲出により、根が達する位置が同じであることを確認。寒天に

メチルレッドを加え、特定を行う。効果範囲を算出。

結果

4.アレロケミカルの構造とその所在

①抽出実験を行い、コメツガの葉に含まれているアレロケミカルの構造を明らかにする。

②それぞれの検定試料(葉、切株、残渣)を挟んだ寒天上のレタスの生育状況を比較。

① ②

① ②

・赤い部分

:20mm前後

・効果範囲の平均

:22.4mm(約 44.1ml)

挟んだ葉付近の寒天(左)と

上部の寒天(右)

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結果

5.ダケカンバへの阻害効果の確認

ダケカンバに濃度別の安息香酸水溶液を与え、枯れるかを観察。枯れたものと枯れなかったものの境の

濃度をさらに細かくし、枯れる安息香酸水溶液の濃度を特定する。

結果

6.作用経路の特定

異なる 4 地点の土から物質を抽出。物質の有無から作用経路を調べる。

結果

番号 土 の 種 類 物質の有無 作 用 経 路

① コメツガの生えているコメツガ切株上の土 有 葉、切株、切株(バーク) ② ダケカンバが生えているコメツガ切株上の土 有 葉、切株、切株(バーク)

③ ダ ケ カ ン バ 林 の 林 床 の 土 無 無 ④ 木 道 間 の 土 有 葉

7.結論 本研究では、伐採によって減少してしまったコメツガが同種の切株上で生育しやすい理由の解明を行った。

パイオニア種であるダケカンバに勝っているという事実を「コメツガが生育しやすい」と言える根拠の一つとし、

その仕組みの解明が「コメツガが生育しやすい」理由の解明につながると考え研究を進めた。 研究の結果、コメツガが同種の切株上でダケカンバに勝つことができるのは、周辺のコメツガの落葉や切株自

身から滲出した化学物質がダケカンバの生育を阻害していることが理由の一つであると証明された。

また私たちは、登山道脇に存在するコメツガの伐採木をチップ化し、コメツガの切株周囲に施すことでコメツ

ガの実生の天然更新を促す策を提案する。本提案は研究で示された「効果」と、放置されているコメツガ木を利

用する「安価」、素材が分解して自然界に戻る環境への「負荷」の少ない方策である。

① 抽出法からカルボン酸の一種で

あることが判明。

阻害度合は、葉>切株>残渣

-なぜ安息香酸を用いるのか-

・薬学雑誌掲載論文より、

コメツガには安息香酸が含まれている。

・『植物の香りと生物活性』より、

安息香酸は阻害効果の大きいアレロケミカルのひとつ。

・抽出実験より、

コメツガの葉から抽出した物質は安息香酸の仲間と同じ構造をもつ。

以上より、コメツガは安息香酸を含み、その安息香酸はアレロケミカル

として十分な作用を持つため実験に使用。

左から 10-2~10-6mol/L

安息香酸濃度 9.0×10-5~9.5×10-5mol/L

の間で成長が阻害される。

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4 ワカケホンセイインコの生態

恵泉女学園中学・高等学校

津田朔 上原睦

① ワカケホンセイインコについて オウム目インコ科、全長 37~40cmの中型のインコ。全体が鮮やかな黄緑色をしている。原産地

は東南アジア、インド、スリランカなど。日本では主に関東地方に分布している。果実、葉を中心

とした植物食である。寿命は飼育実験下では 25 年、自然環境下では不明である。夜は集団でネグラ

をつくり、そこで眠る。非繁殖期では集団ネグラが生活の中心だが、繁殖期はペアで行動する。

② 背景 本種は約 50 年前から日本に定着しているが、現在の詳しい生活状況は分かっていない。1960 年

代のインコブームによって本種は輸入された。帰化鳥類研究会の調べでは 1967 年以降、逃がして

しまった記録が数多くあり、1990 年には 900 羽にも増大したというデータがある。

③ 目的 本種が集団ネグラとして約 1300 羽が利用していた東京工業大学内(東京都目黒区)の木が伐採

された。以降、集団ネグラの場所が特定されていない。私たちは、集団ネグラの場所を探し、本種

の生態について調べることで、外来種の環境への適応性について知ることを目的としている。

④ 調査方法 本種の動向を調べるために、2017 年に 3 回アンケート調査を行った。1 回目(1 月)と 3 回目(11

月)は本校の関係者に向けて、2 回目は文化祭(11.3)を利用し一般に向けて調査を行った。アン

ケートでは、目撃日時・目撃場所・移動方向・その他について聞いた。それによって得られた情報

を地図におとして、分布地域を調べた。 アンケートで得られた有力情報をもとに等々力緑地(神奈川県川崎市)で 13 人で実地調査を行

った。緑地内に観察ポイントを 4 か所設け、日没までの約 1 時間、目視と撮影で調査を行った。 ⑤ 結果

3 回のアンケート調査の結果、計 54 通の有効回答が得られた。記録は 1 都 2 県(川崎市、千葉県

市川市)であがった。都内の記録は最東・文京区、最西・小金井市だったが、記録のほとんどは世

田谷区内に集中していた。 等々力緑地の実地調査では目視で 296 羽確認できた。3 か所の樹木帯に集まり 16:30 を目安にネ

グラ木に集まった。

⑥ 考察 アンケート調査の結果が世田谷区内という限定的な場所に集中したのは、調査を行ったのが学校

内だけだったからだと考えられる。 実地調査後に聞き取りをし、目撃情報として約 1 年まえから等々力緑地に飛来しているという情

報も得られたことから、約 1 年の定着は認められると考えられる。 目撃情報(日時・場所)のご協力をよろしくお願いします。こちらまで→ [email protected]

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INTENTIONARY LEFT BLANK

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5 都市緑地を最大限活用するには ~エネルギーから見る生田緑地の生態系~

世田谷学園高等学校 生物部 自然科学班

〇秦 吉人 帆足 拡海 小川 靖史 森口 拓 蓮沼 孝明

Ⅰ.はじめに

都会における緑地不足は深刻である。また都会の緑地の問題点として,狭い範囲内で多くの生物が住処を奪い

合い,生態系が形成されにくい事が言える。本研究では松川他(2005)の手法に基づき,生態系をエネルギーの流

れとして定量化を行い,緑地の有効活用への提言を試みた。調査の舞台には神奈川県川崎市多摩区の生田緑地を

選んだ。

Ⅱ.研究の方法

本研究では松川他(2005)の手法に基づき,生田緑地生態系の定量化することで,生態系の評価を行った。また

定量化には以下の①・②がある。

①理論値による定量化

植物が1年間に生産するエネルギー量であるNPPを求め、生物体内でエネルギーが失われる割合

(Begon,1999)を乗じることで,生態系内でエネルギーの使われ方が分かる(図 1)。

計算は以下のように行った。

・生産量:草本 NPP(乾燥重量 g×4.25kcal/y)+樹木 NPP(700kcal/y/㎡) ・草食動物消費量:草本 NPP×消費効率(0.25)+ 樹木 NPP×消費効率(0.05) ・肉食動物消費量:草食動物の消費量×同化効率(0.5)×生産効率(0.02)×肉食動物の消費効率(0.8)

②実測値による定量化

実測値による生態系の定量化は,実際の生田緑地の生物相を観察し,年間要求エネルギーを推定することで求

めた。計算は以下のように行った。(Matsukawa et all,2005) ・昆虫消費量:全体 NPP×昆虫の消費量(0.05) ・草食鳥類:2×(78.3×W0.723)×(1/0.5)×個体数 ・草食哺乳類:2×(70×W0.75)×(1/0.5)×個体数 ・肉食鳥類:2×(78.3×W0.723) ×(1/0.5) ×個体数 ・肉食哺乳類:2×(70×W0.75) ×(1/0.8) ×個体数

Ⅲ.調査

①植生調査

生田緑地内の緑道を歩き、服部(2011)に基づき,草本面積,

幹面積,被樹木面積を区別し,植生分けをした。各型ごと

の乾燥重量は,それぞれ 3 か所ずつ 2 回の調査を,幹面積

については全 61 地点で調査を行い,図2を作製した。 図 2:生田緑地の植生

生産量

草食動物消費量

肉食動物消費量

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②生物調査

昆虫については全 50 地点での調査で 26 種・川島他(2014)から 26 種を確認した。また鳥類については佐野

他(2014)から 73 種,哺乳類については岩田(2011)から 4 種を確認した。また鳥類と哺乳類は 1 種ずつ肉食・

草食に分類した。さらに鳥類については,松川他(2005)に基づき体長から,スズメ大,ムクドリ大,ハト大,

カラス以上に分類し,計算に用いた。

Ⅳ.結果

以上の調査から図 3・4 を作成した。また松川他(2005)に習い,人間から多くのエネルギーを得ていると考

えられるカラス・ネコを計算から除外した推定の生態系についても計算し,図 5 を作製した。

Ⅴ.考察

図 3 と図 4 の結果を比較すると,誤差は肉食動物は約 7.3 倍,草食動物

は約 0.42 倍という結果になった。一方で,推定された肉食動物の消費量の誤

差は約 0.77 倍となり,理論値と近似した。このことから理論値の結果は,現

実の生態系のバランスに近くなっていると仮定し,実測値の定量化(図 4)で求

めた草食動物の消費量の値から利用されている NPP を推定した(図 5)。する

と 58%分の NPP が利用されていない事になった。また生田緑地の NPP の内

訳(図 6)を見ると,放置型草本と樹木によるものが 99.9%を占める。以上から

本研究では利用されない 58%のエネルギーをササの生産するものだと結論付

けた。さらに生田緑地管理事務所の方から,放置型の大半であるササは草食

昆虫にとって利用できないというお話も伺うことができた。

Ⅴ.未来へ

本研究では生田緑地の生態系を拡大するためには,利用されていないササを刈り取り新たな環境に整備する必

要があると提言する。また代替の環境としては,最も多様な草食昆虫が見られた湿地型のような環境が理想だと

思われる。しかし,公園利用の観点からすると整備型的環境も必要となるため,いずれにせよ人間による定期的

な調査・適切な管理が必要である。

また本研究で用いた生態系を定量化する手法によって,生態系を支えるための植物量を逆算的に求め,緑地の

開発を行える可能性が生まれた。将来生態学的知見から都市開発を行う未来が訪れるだろう。

参考文献

1. Begon et al (1999)Ecology,Individuals,populations and communities (3rd edition)Blackwell Science,1068pp.堀道雄(監訳)2003. 『生態学 個体・

個体群・群集の科学[原著第三版]. 京都大学学術出版会,1304pp. 2. 服部保 (2011) 「環境と植生 30 講」朝倉書店 pp.113. 岩田臣生 (2011) 定点カメラによる生田緑地の中大型哺乳類調査の結果 pp5 川崎市教育委員会 特定非営利活動法人かわさき自然調査団

4. Matsukawa et al. (2005) Early Cretaceous terrestrial ecosystems in East Asia based on food web and energy flow models. Cretaceous Research 26 5. 松川正樹他(2005)東京学芸大学構内の生態系:食物網とエネルギー流に基づいて 東京学芸大紀要.自然科学系、57:159-1846. 佐野悦子・野鳥班 (2011) 川崎市生田緑地の鳥類―3 川崎市教育委員会 特定非営利活動法人かわさき自然調査団

7. Whittaker (1975) Communities and ecosystems [2nd edition]Macmillan New York pp385(宝月欣二訳 1979 『生態学概説 生物群集と生態系(第 2 版)』培風館 363pp)

8. 矢野亮 (2004) カラスの採餌行動, 国立科学博物館ニュース, 国立科学博物館(編)422 pp.29

①理論値 ②実測値 ③推定値

図 3:理論値 図 5:推定値 図 4:実測値

図 6:NPPの内訳

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6 都立林試の森公園昆虫調査

攻玉社生物部 高校 2年

目黒区、品川区にまたがって位置する都立林試の森公園において、土曜日の放課後、甲虫及びチョウ

相の調査を行った。林試の森公園はもともと林業試験場で、学校から近いため、調査しやすいと考え調

査を行った。なお、調査の際の採集行為については東京都から許可を取得したものであり、調査後はリ

リースした。

甲虫調査

・調査方法

1 周約 1時間 30 分のルート上で、ビーティング法、ルッキング法を用いて甲虫を採集し、種類、個体

数、場所を記録した。

・調査結果

25 亜科 41 種が記録された。このうちカシワクチブトゾウムシ、スグリゾウムシの個体数が昨年に引

き続き多かった。また、今年度の調査では初めてリュウキュウツヤハナムグリが見られた。

・考察

カシワクチブトゾウムシの個体数変動は食樹であるブナ科コナラ属の葉の展開に影響を受け、4月~5

月の歯の柔らかいうちに個体が多いと考えた。昨年度に、スグリゾウムシの個体数変動は生活史に関係

すると予想したが、今年度の調査により成虫で越冬している可能性が考えられる。リュウキュウツヤハ

ナムグリは南方からの移入種として各報告が出ているが、林試の森公園では未記録である。

チョウ調査

・調査方法

品川区林試の森公園におけるチョウ相を明らかにするために、2015 年から 2017 年にかけてトランセ

クト調査を行った。多様な環境を通るよう設定された約 2 キロのルートを定期的に土曜日の 14:00 か

ら約 1時間歩き、観察されたチョウの種類、個体数、場所を記録した。

・調査結果

2017 年の調査において総計 5 科 24 種 355 頭が確認され、ミズイロオナガシジミ、キマダラセセリ、

ヒカゲチョウなどの比較的環境が保たれた場所に生息する種も観察された。また、ヤマトシジミ、モン

シロチョウ、クロアゲハの 3種が多く観察された。

1.優占 3種の季節変動

この優占 3種の季節変動を調べると、ヤマトシジミは 9~10月、モンシロチョウは 6月、クロアゲハ

は 6月、7月に増加する傾向が見られた。

2.チョウの生息環境

2017 年に確認されたチョウを田中(1998)に従い、草原性、森林性に分けた。その結果、森林性のチョ

ウが 62%、草原性のチョウは 38%だった。公園のほとんどが森林で覆われ、草原性のチョウが生息で

きる環境が少ないことが原因だと思われる。

3.EI 法による環境評価

EI 法を用いて公園の環境評価を行った。EI 法とはそれぞれの種に与えられた指数の和を求め、環境

を評価する方法で、値が大きいほど、環境が良好であることを表す。2017 年の調査での EI 指数は 41

となり中自然(農村・人里)に分類され、都市公園としてはチョウにとって良好な環境だと考えられる。

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7 模型を用いたムササビの滑空実験

開成学園生物部

高 1 堀 智貴

1. はじめに

我々は今年の夏休みを利用し、軽井沢で合宿を行った。合宿では実際にムササビを滑空する姿

を観察することができた。このムササビの滑空に興味を持ち、滑空動物について調べたところ、

飛膜や長い尾を共通して持っていることが分かった。我々は模型を使って、飛膜や長い尾が滑空

に与える影響について調べた。

2. ムササビの基本情報と生態

分類:ネズミ目リス科ムササビ属 全長:60~90cm 体重:700~1300g 食性:基本的に草食。樹上で葉や木の実を食べる

滑空:ムササビは木々の間を移動する際、腕と足の間にある飛膜を拡げ滑空する。、木の高い

ところから飛び立ち、高低差を利用し、風に乗って滑空する。

3. 模型を用いた滑空実験

3.1 模型の作製

3.2.1 模型の材料

角材(1cm 角)、紙粘土、布、段ボール、針金、輪ゴム、接着剤

3.2.2 模型の作製手順

①角材を骨格状に組みあげ、紙粘土で胴体に肉付けする

②布を張り、尾には幅 6cm ほどの段ボールを取り付ける

③前足の付け根と後足の付け根の 2ヶ所にヒートンを取り付ける

④胴体と尾の間を針金で繋げ、輪ゴムで固定する

図 1 作製したムササビの模型

45 cm

尾を可動させるため、 針金で繋ぐ

2 か所のヒートンに それぞれ針金を通し、 胴体の向きを変更する

ヒートン

差し込む

図 2 ヒートンの取り付け

胴体

タコ糸

針金

ヒートン

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3.2 実験方法

左図のように模型を 45°、5mに張ったタ

コ糸の下に吊り下げ滑らせる。ヒートンに

通す針金の長さを調節して、胴体の向きを

変える。

また、以下の 2つの条件で各々5 回ずつ実

験する。

①胴体が地面と水平、 尾が地面と 上向き 45°・水平・下向き 45° の 3種類(図 4)

②尾が地面と水平、 胴体が地面と 下向き 45°・水平・上向き 45° の 3種類(図 5)

4. 結果

5. 考察

・図 4 において、尾を下方向へ 45°曲げたものが最も遅くなっているが、これは進む際

の空気抵抗が大きくスピードが落ちたことによるものではないか。

・図 5 においても最も遅くなっているのが、飛膜が受ける空気抵抗が最も大きい、胴体

が上向き 45°のときであるため、胴体及び尾の向きが、減速に少なからず影響を与えて

いることが読み取れる。

・ただし、胴体並びに尾が下向き 45°の際、空気抵抗が少なくスピードが上がりそうな

のにも関わらず、地面と平行である時より遅いのは、飛膜に生じる揚力により落下速度

を減少させている可能性も考えられる。

実験途中、尾の固定が外れ失敗したことがあった。その際、尾が垂れ下がったまま滑

ったが、模型全体がグラグラした状態で下りた。今回の実験では尾が滑空に与える影響

について詳しく分からなかったが、飛行時の全身のバランスを保っている可能性がある

ので、その点を解明する必要がある。

45°

5m

図 3 実験の略図

00.10.20.30.40.50.60.70.80.9

11.11.21.31.41.51.61.71.81.9

22.12.2

図5

00.10.20.30.40.50.60.70.80.9

11.11.21.31.41.51.61.71.81.9

22.12.2

図4

平均滑空時間棒グラフ(単位は秒) 誤差範囲は集計 5回の最大値・最小値 尾: 上 水平 下 胴体: 下 水平 上

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8 赤いミジンコをつくれ!

オオミジンコの低酸素状態におけるヘモグロビン生成

多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校自然科学部

金刺はるか(高2) 江頭満梨香(高2) 秋山佳音(中1) 小沢真里奈(中1)

菊谷思恩(中1) 佐藤環(中1) 向山季沙(中1) 渡邊里穂(中1)

1.はじめに

私達の部活では、この数年オオミジンコの飼育・観察を継続している。ミジンコは、通常メスのみの単為

生殖を行い、1~2ヶ月の寿命の中で条件がよければ200~400の子を産む。しかし、水質悪化や栄養不足

などの環境が悪化してくると、オスが出現する。これまでは、オスが出現する環境要因を調べ報告してきた。

環境悪化の要因の一つに低酸素状態がある。低酸素状態になるとミジンコはヘモグロビンを増やし、その

結果体全体が赤くなる。今回は「赤いミジンコ」づくりに挑戦した。具体的なデータを得るところまでは行

かなかったが、今後の研究につながる結果を得ることができたので報告する。

2.ミジンコのからだ

ミジンコは、エビやカニに近い節足

動物である。体は2枚の透明な殻で包

まれていて、この殻を脱皮して成長す

る。メスの背中の育房に卵ができ単為

生殖でふ化して子どもが生まれる。手

のように見えるのは第2触角である。

赤血球のような血液はないが、体液

中にヘモグロビンが存在し酸素を結合

する。ヒトのヘモグロビンとは異なり、

8個のポリペプチド鎖が平面上に並ん

だドーナッツのような形をしたものが二層に重なった構造をしている。

3.今回の実験の目的と方法

今回は溶存酸素量を測定する装置がなかったので、いろいろな容器を用い、空気を少なくしてふたを

閉め、1~2週間飼育を継続し、どのような条件でミジンコが赤くなるかを確かめた。本来ならば、正

確な酸素溶存量とヘモグロビン生成の関係を調べることが目的である。以下のような容器で、空気の量

を変えて実験してみた。飼育条件は20℃、14時間照明、エサのクロレラを1日1回与えている。

4、実 験 の

結果

空気の量が多いとあまり色が変化しなかったり、少なすぎると翌日に死んでしまったりして、また、

容器に入れるミジンコの数によっても異なる結果となり、きちんとした方法を確立することはできなか

ったが、それぞれの容器で1~2週間後には赤みがかったミジンコを得ることができ、酸素の少ない条

▲ミジンコのヘモグロビン

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件でヘモグロビン量が増加することが確かめられた。

▲(左)低酸素状態 (右)普通の状態 ▲(左)低酸素状態 (右)普通の状態

5.ヘモグロビンの抽出とルミノール反応

赤くなったミジンコをすりつぶし、ルミノール反応で発光するかどうか確かめてみた。

① 赤くなったミジンコ数十匹を簡易ホモジェナイザーにとり、生理食塩水を用いてすりつぶす。

② 遠心分離器にかけ上澄みだけをとる。

③ 陰イオンカラムを利用し、赤い色の付いた部分(ヘモグロビン)だけを取り出す。

(今回の発表に向けてはこの実験ができなかったので②の上澄みをルミノール反応に用いた。写真は

過去に先輩達が取り組んだときのもの)

④ ルミノール液は、ルミノール50mg、水酸化ナトリウム0.2gを50mLの水に溶かしたものを使用した。

反応の直前に 30%過酸化水素水 2.5mL を加えた。

⑤ ルミノール液をマイクロチューブにとり、②のヘモグロビン抽出液を加えた。

⑥ 下の写真のような発光が観察された。

6.考察と課題

① ふたを閉めない容器でも、口の狭いものや、ミジンコの密度の高いものでは、普通の状態より赤み

がかったミジンコとなった。

② 水中の酸素量やミジンコの密度などの違いをより正確に測定して実験を行いたい。

③ エサとしているクロレラがどの程度酸素濃度に影響を与えているかも調べる必要がある。

④ オオミジンコだけでなく他のミジンコの仲間または近縁種でも同じ様な現象が見られるのか調べ

てみたい。

▲②のヘモグロビン抽出液 ▲⑥のルミノール反応の発光 ▲③陰イオンカラム

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9 昆虫食の可能性

獨協中学・高等学校生物部 中学3年 野々村美徹

1.はじめに 昆虫は古来より世界各地で食べられ、近年昆虫食の新たな可能性が注目されている。

例えば、2013 年の国連食糧農業機関(FAO)は食品及び飼料における昆虫食の役割に関する報告書を公表した。その報告書では、昆虫食が 20 億人の伝統食の一部であり、1900 種類以上の昆虫が食用として扱われていることなどが述べられていた。そこで私は昆虫食の実態や未来をアンケー

ト調査や文献調査を通して調べ、今後の昆虫食のありかたについて考察した。

2.FAO の報告書による昆虫食の利点 FAO の報告書に指摘された、昆虫食の主な 3 つの利点を紹介する。

栄養面:タンパク質や良質な脂肪、カルシウム、鉄などの豊富な栄養素を含む。

環境面:①土地利用率が高く、小さい面積で大量飼育が可能。②牛肉 1kg 得るのに飼料 11kg が必要だが、コオロギの場合 2kg で済むなど飼料変換効率が高い。③哺乳類と生物学的に大きく異なるため、昆虫の感染症がヒトに感染するリスクが低い。

経済面:昆虫の養殖技術は比較的簡単なため、費用が低くて済む。よって、発展途上国で

の昆虫のビジネスは始めやすい。 これらの利点より、昆虫食は畜産物に代わる

重要なタンパク源として世界の食糧安全保障を

担う大きな可能性があるといわれている。

3.日本における昆虫食 表 1 は日本で 1919 年に農務省の三宅技師が

各都道府県の農事試験場に依頼して調査した食

用昆虫のリストである。8 目 48 種、所属不明 7 種の合計 55 種であった。昆虫食文化について 研究している立教大学の野中健一教授が 1986 年に三宅氏と同様な方法で調べたところ、イナ

ゴ、ハチ、カイコの蛹、カミキリムシ・ガ・水

生昆虫の幼虫が食用とされていた。1919 年当時の調査と比べ、食用昆虫の種類はずいぶん少

なかったとのことである。 4.アンケート調査

1986 年の記録は既に 30 年以上前と古く、現在とは異なる可能性がある。そこで、身近な昆

虫食の実態を調べるためにアンケート調査を行

った。アンケートの対象としたのは本校の生徒 107 人、教員 12 人の計 119 人で、このうち 115 人から回答を得ることができた。

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自由記述(生徒) 自由記述(教員) ・おいしいなら食べたい ・考えるとおぞましい ・見たことがないので食べたくない ・食べ物が少なくなったとき必要になる

・結構おいしいと思う ・栄養価が高いと思うが苦手 ・自分は考えるだけでだめ ・抵抗があるが、食糧が他にないと考える

アンケート結果の一部を図 1 と表 2 に示す。昆虫を食べたことがある人の割合は生徒で約 1/4 と少なく、反対に教員で 3/4 と多く、年齢が高い人ほど昆虫食の経験があるという傾向が見て取れた。食べた昆虫の種類はイナゴが最も多く、その次にハチノコという結果だった。自由記述では昆虫食

に対して関心を示して食べてみたいという回答などもあったが、見た目からくる抵抗感や嫌悪感、

食べたことがない不安などから食べたくないという回答が多かった。

5.ビジネスとしての昆虫食 昆虫食への嫌悪感を取り除く方法として、メデイアや教育により一般に昆虫食を伝えていく必

要性、形を変えて一般に受け入れやすい商品化を行うことが考えられた。 商品化の例として、欧米の Exo という会社で行われているコオロギのビジネスを紹介する。

Exo はコオロギから高純度のタンパク質を抽出し、精製、粉末化したクリケットフラワーを使用したプロテインバーを販売している。1 つのプロテインバーに約 40 匹のコオロギが使用されている。アスリートなどからの評判は上々で、今後は昆虫食になじみのない一般消費者にも広めていこう

としている。Exo の商品は近日中に日本上陸の予定である。

6.考察とまとめ 昆虫食には、古来からの伝統がある。文献や今回のアンケートの結果からは、イナゴやハチが

多かった。イナゴやハチが伝統的によく食べられている原因を考えてみる。イナゴは世界で最も

食用にされてきた昆虫で、日本では 3000 年以上の歴史がある稲作と関係が深い昆虫である。身近の水田において大量に採集することが容易で、佃煮にして高タンパク質の保存食としても食べられ

ていた。バッタも水田において採集されるが、味が劣るとのことである。 ハチは、市街地でも身近に生息し、水田のない山村でも採集しやすい昆虫である。イナゴを食

べることが主に稲作ができる地域にみられたのに対して、ハチは北海道から沖縄まで各地で食べ

られてきた。「ハチ追い」という採集の技は、長年の知恵の集積された技術でもある。 つまり、大量に採集しやすいこと、味がよいことが、伝統的な食材としてイナゴやハチがひろ

く食べられてきた理由であると思われる。 前述した Exo 社のプロテインバーなどのように、養殖された昆虫を材料にした商品を開発す

るなどの、新しい昆虫食の形態が出現している。このような昆虫食は、伝統的な昆虫食に比べ人

工的で企業によるビジネスの側面が強い。こうした食品が、伝統食とは異なる面から昆虫食への

関心を高め、新たな食文化を育てる可能性もあるのではないかと考える。 参考文献 1. FAO 報告書 "Edible insects Future prospects for food and feed security" ,2013 年 2. 野中健一: 昆虫食先進国ニッポン, 亜紀書房, 2008 年 3. 野秋収平:世界の昆虫食スタートアップ 5 選 Agri in asia 2016 年

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10 群馬県川場村における獣害の現状 <その2>

~野生動物と人間との適切な関係~

東京都市大学付属中学校・高等学校 生物研究部

高度経済成長期を経て、生活スタイルの変化とともに自然と人間の関係は大きく変化した。里地里

山における集落や田畑とそれを取り巻く二次林との間に保たれていた均衡は崩れ、近年は生息域の拡

大や個体数が増加しているサル、シカ、イノシシなどによる田畑への被害が深刻化している。

今回は、群馬県川場村にて去年に引き続き農家の方々へのインタビューと農作物の被害の現状につ

いて調査を実施したので、追加分を含めて報告する。

<調査地の自然環境>

武尊山(標高 2158m)の南麓において扇状に広がる、面積 85.25 ㎢の農村。8 割が森林で、薄根川

とその支流の桜川・溝又川の流れに沿って集落と田畑(コメ、コンニャク・その他野菜)、果樹(リ

ンゴ・ブルーベリーなど)が広がる。過去には養蚕業も盛んだったため、桑も多い。

<調 査>

◇内 容:薄根川と桜川沿いに立地する 7 つの集落において、

①農作業をしている方に、野生動物による農作物の被

害状況について「出没頻度、出没場所、誘引物、人へ

の反応」の4項目についてインタビュー調査を行った。

②野生動物の糞や食痕、足跡を採集し、糞の未消化含

有物を分析した。

また富士山地区活性化委員会の協力のもと、獣害のあ

る畑地と緩衝帯造成に適した候補地を提供していただき、③野生動物が畑地に侵入しやす

い 3 地点(橋、斜面、川沿い)にセンサーカメラを設置して野生動物の出没頻度を調べた。

④緩衝帯造成候補地における林内環境を調べた。

さらに、中野地区の森林(友好の森)内にて、⑤シードトラップを 10 ヶ所設置し、ドン

グリの結実量を調査した。

◇結 果

①インタビュー調査

出没頻度:冬季は「毎日来る」割合が 60%を超え、年間で頻度が最も高い季節である。また、秋

季は「全く来ない」割合が 60%強を占め、頻度が最も低い季節である。

出没場所:経験不足で秋季のデータに不備が見られたため除外した。秋季以外は、いずれの季節も

山際の畑地が約 60%、人の気配がある民家や道路近くの畑地が約 40%であった。

誘 引 物:夏季は「収獲部位」が 100%であり、農作物に強い依存性・執着が感じられた。冬季に

は他の季節には見られない「ゴミ箱を漁る」という例外的な行動がみられた。

人への反応:夏・冬季は「逃げずに留まる」行動が 75~85%、逆に春・秋季は「すぐ逃げる」

行動が 45~55%であり、人に対する野生動物の反応は季節によって異なる。

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②糞の未消化含有物分析

夏(2016.8) 秋(2016.11) 冬(2017.3) 春(2017.5)

サル

バッタ類の脚

ブルーベリーの果皮

軍手の一部

哺乳類の体毛(白色)、

卵の殻、カキの種子

不明植物の繊維・葉・

種子(2 種類)

イネ科植物?の種子

白い毛、

不明植物の一部 マツの種子・樹の枝

イノシシ なし なし 不明植物の一部 不明植物の一部

③センサーカメラによる出没頻度分析

橋ではキツネしか撮影できず、時間帯は夕方から朝方にかけて出没。

斜面ではサル、キツネ、タヌキの 3 種で、それぞれの出没時間帯は、

サルは昼頃、キツネは橋と同様、タヌキは夜だった。川沿いではキツネ、

ハクビシンの 2 種で、出没時間帯はどちらも夕方から朝方だった。

※④緩衝帯造成候補地における林内環境、⑤ドングリの結実量調査は、

次回(2018 年夏・秋季に実施予定)の調査結果と比較検討をする。

◇考 察

α:行動

春-子連れのイノシシなどによる威嚇行動が目立つ。冬と同様山中ではエサが不足しているため、

作物の収獲部位への被害がある。

夏-栄養価が高い作物に対する依存・執着が強く出ており、被害が大きい。

秋-山中には動物のエサとなるドングリなどの果実や種子が多いため、畑地へ出てくる必要がない。

冬-山中・畑地ともにエサが不足している状況であり、「ゴミ箱を漁る」という特殊な被害がある。

またエサの確保に必死なためか、人に対する動物の反応が激しい(襲うなど)時がある。

まとめ-野生動物の行動は、山中でのエサとなるドングリなどの結実量の変化や畑の作物への依

存・執着の度合いが強く関係している。特に「人への反応」はその動物の繁殖・育児期

と密接な関係にあり、季節によってその差は顕著に表れることが分かった。

β:対策

現在は電気ショックを利用した電気柵や爆音で威嚇する空砲を中心に行われているが、その場しの

ぎで大きな効果はない。2016 年、大型捕獲檻でサルの一群(太郎群)を全頭捕獲した結果、2017 年

は被害が減少しており、その効果があったように見える。しかし、別の群れが新たに進出してくる可

能性があり、長期的に考えるとその効果は一時的なものである。

◇結 論

長期的かつ確実に野生動物との距離を保つため、新しい対策を考える必要がある。その候補が「緩

衝帯」である。これは下草刈り、間伐や枝打ちなどでできた見通しのよい地帯で、自らの存在を隠し

たい野生動物にとっては都合の悪い条件となっているため、以前は集落や田畑と二次林との境界線と

しての意味を持っていた。この「緩衝帯」を用いることで獣害は改善が望めるのではないだろうか。

<今後の計画>

来夏、富士山地区において「緩衝帯」を造成する予定である。その後、林内環境の変化を調べ、か

つインタビュー調査による被害状況の変化やセンサーカメラによる野生動物の出没頻度を比較分析す

ることで、「緩衝帯」による効果を検証したい。

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<memo>

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口 頭 発 表

[ 午 後 の 部 ]

13:20 [p.30-p.39]

11. シロイヌナズナの花芽形成遅延変異体CaD428 成長速度の解析/広尾学園

中学校医進・サイエンスコース植物研究チーム

12. 千葉県我孫子市岡発戸に生息する昆虫類調査~水生昆虫編~/中央学院高等学

校 生物部

13. 伊豆大島と武蔵野市周辺における環境比較/聖徳学園中学高等学校 理科部

14. 玉川上水を流れる高度処理水は、冬の虫に影響を与える?(13年目)/創価

高校3年 生物選択者

15. ヒキガエルの体色の変化/鷗友学園女子中学校 理科班

<休憩>

14:20 [p.40-47]

16. 都市型養蜂は新しい農業なのか?/安田学園中学校 生物部 養蜂班

17. オカダンゴムシにおける交替性転向反応について/吉祥女子高等学校

18. ミナミヌマエビの交替性転向反応について/大森学園高等学校科学研究同好会

19. シリコーン樹脂標本の作製~鳥獣の内蔵を利用して~/学習院中等科生物同好

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11 シロイヌナズナの花芽形成遅延変異体CaD428の成長速度の解析

広尾学園中学校 医進・サイエンスコース

銅坂 悠 政近 岳

背景と目的:

植物は子孫を残す。子孫を残すとは葉などを作る栄養生長期から花を作る生殖成長期へ変わるこ

とにより実を作ることである。この一連の流れのことは花芽形成と呼ばれている。現在、花芽形成を誘

導する要因として日長などの光周期シグナル、植物の年齢や温度により生じるシグナル、一 定期間

の低温によるシグナル、植物ホルモンであるジベレリンによるシグナルの4つがあることが明らかとな

っている[1]。そして、これまでに各シグナルを受けて働く花成の経路と、それに関わる遺伝子群が明

らかにされている[1]。しかし花芽形成の全貌は未だ解明されていない。シロイヌナズナは小さいため

育てやすく、種の収穫までに約3ヶ月しかかからないため扱いやすいことや2000年に全ゲノム解析が

できていることから双子葉植物のモデル植物として実験によく用いられる。シロイヌナズナはロゼッタ

葉と呼ばれる地面にはうような葉と茎によって構成されている。シロイヌナズナは通常5ヶ月程度で栄

養成長期から生殖生長期に切り替え、花茎を伸ばすようになる。

CaD428は野生型であるColにEMS処理をすることでランダムに変異をかけカルシウム欠乏条件下

と通常条件下において表現型に差があるものを選抜してきたものである。これを育てるとCaD428で

は野生型より花茎が伸び始めるのが約3週間遅いことがわかっていた。私たちはこれを使って花芽

形成の全体像を明らかにすることを目的としている。この花芽形成遅延の原因を突き止めるために

私たちは野生型とCaD428の見た目上の違いから花芽形成に関わる違いを見つけようと研究をして

いる。この花茎が伸び始めるのが遅いことに対して2つの仮説を立てた。1つ目はCaD428は野生型

に比べて全体的に成長が遅い仮説、2つ目は花茎が伸び始めるというスイッチが入るのが遅い仮説

である。1つ目の仮説が正しければ遅咲きの原因は全体の成長に関わる遺伝子にあると推測でき、2

つ目の仮説が正しければ変異の原因は生殖成長期に関わる遺伝子にあると推測できる。また先に

述べた実験より葉の枚数と重量に関係があると考えて葉や茎の組織に違いがあるのではないかと考

え組織の違いを見るために切片を作った。

[1] Sciense portal China 遺伝子の転写制御と植物の花成 2011年1月5日

実験方法:

1. 野生型とCaD428をそれぞれ3粒ずつ60個の土に植え1週間ごと計12週間重量、葉の枚数、花茎

の長さ、花の数の項目を測定を行った。重量以外の項目に関しては植えた時に決めておいた同じ5

個体を測定し平均の値をだした。重量はロゼッタ葉より上の部分を標準通りに育っている5個体を測

定し平均の値を出した。

2. 野生型とCaD428の花茎が伸びた直後の葉と茎を葉は4%、茎は5%寒天で包埋し、葉を横切りにし

た切片と茎を輪切りにした切片の観察を行った。またその切片にサフラニン、ファストグリーンFCF、

ヘマトキシリンで染色する3重染色を行って切片の観察を行った。

結果:

1.葉の枚数は2週間目あたりから9枚ほどの差があるのに対し、重量はほぼ同じくらいであることがわ

かった。花茎の長さについてはCol-0とCaD428のグラフの線の傾きが一緒であることがわかった。花

の数はCol-0のほうがCaD428よりも花茎が伸びてくる日数の差を考慮しても花の数が多いことが分

かった。同じ実験を行い同様の結果が得られため、今回は2回目のグラフを提示した。

2.Col-0とCaD428を観察した共通点としてどちらにも葉脈やトライコームを観察できたが今回の実験

では目立ったのた違いは見つけることが出来なかった。またCaD428は切片の端の方が切れて見え

た。さらに、茎の中心のあたりは空洞になっていた。 染色の実験はまだ試作段階のためCaD428の

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みで行った。葉の側面をファストグリーンFCFが、中心がサフラニンとヘマトキシリンで染まっているこ

とがわかる。また葉脈も染まっていることがわかる。細胞1つ1つが粒として観察することができなかっ

た。全体的にファストグリーンFCFの緑色で染まってしまっていいたが棘は確認できた。

実験1.におけるCol-0とCaD428の重量、花茎の長さ、葉の枚数、花の数の比較グラフ

考察:

1.葉の枚数は2週目あたりから9枚ほどの差があるのに対し、重量はほとんど差がないことから葉の組

織に違いがあるのではないかということが予想できた。花茎の長さについてはCol-0とCaD428の花

茎の長さの伸び方が似ており、同じ成長の仕方をすると考えられた。さらに花茎伸長に費やす栄養

はCol-0とCaD428では変わらないのではないかと考えられた。花の数には個体差があるため一概に

は言えないが、両方の花茎が伸びてきた週数からの花の数を比較するとCol-0のほうがCaD428より

も花の数が多いことが分かった。この原因としてはCaD428は葉に主に栄養を費やしているからでは

ないかと考えた。重量にはあまり差がなく、葉の枚数の差が大きいことからCaD428は葉に多くの栄養

を長い時期送っていると考えられた。このことから最初から成長に差があるのではなく、花茎の伸び

始めるスイッチが入るのが遅いのではないかと考えられた。

2.染色前の切片では今回の実験では目立った違いを観察することはできなかった。1.の実験より花

茎の伸び始めるスイッチが遅いのではないかということ考察できたため次回は花茎が伸びる前の葉

と花茎が伸びた直後のCol‐0とCaD428の葉と茎切片を作りたいと考えている。また今回染色は試作

段階のためCaD428のものしか無かったが、次回のときには比較を行えるようにしたいと考えている。

まとめ:

実験1と2より2つの仮説をたてることができた。1つ目はCaD428は花茎伸長のスイッチが壊れており、

花茎伸長のスイッチが入るのが遅いため花茎伸長が遅れ結果的に葉に多くの栄養分を使う仮説で

ある。2つ目は花茎伸長のスイッチが壊れており、スイッチの感知には多くの栄養が必要となりそのた

めに葉に多くの栄養を送りその分花茎伸長が遅くなる仮説である。今後はこの追求も行っていきた

いと考えている。

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12 千葉県我孫子市岡発戸に生息する昆虫類調査 ~水生昆虫編~

中央学院高等学校生物部

2年 世鳥山和也 1年 吉原功人

今回、私たち中央学院高校生物部昆虫班では、千葉県我孫子市中央部に位置する岡発戸、都

部周辺に広がる谷津に生息する昆虫類の調査記録をまとめた。私たち昆虫班は谷津に生息する

昆虫類の調査を 2003 年から継続して実施してきた。2003 年の調査記録は翌年 2004 年に「我

孫子市岡発戸の谷津に生息する昆虫類査報告書」として我孫子市より発行された。今回はその

2003 年以降の水生甲虫類、水生カメムシ類の水生昆虫類の調査記録をまとめることにした。 私たちが調査地点としている谷津は、全長約 1.7 ㎞にわたる県内でも有数の規模の谷津を調

査地としており、谷津は森林環境や草地環境、水辺環境など非常に複雑で多様な環境が整って

いることから様々な生物が豊富に生息しているため谷津は貴重な環境資源となっている。 調査期間は 2004 年から 2017 年現在までとし、採集して同定を行った個体を記録としてまと

めた。採集方法は主に「がさがさ」と呼ばれる水中にいる生き物をタモ網ですくい取る方法を

用いて泥や水草に隠れている水生昆虫を網ですくい取り採集する。採集した昆虫は標本として

保管し同定を行い、同定の際には厳重に確認を行い間違いのないように努めた。 2003 年以降の調査結果は、2003 年までにも採集されており、それ以降も確認されている種

(調査報告書にも記録がありそれ以降にも採集記録がある種)が6種類、2003 年までにしか採

集記録がなく、それ以降採集記録のない種(調査報告書には記録があるがそれ以降確認されて

いない種)が8種類、2004 年から新たに確認できた種は 3 種となった。

2003 年から現在にかけて採集できた6種に関しては、ハイイロゲンゴロウやヒメガムシなど

の比較的環境変化などに強く都市部を含む全国の広い範囲で生息している種が多く確認できた。

だが中にはコガムシなどの貴重な種類も含まれており、コガムシは千葉県レッドデータブック

の一般保護生物(D)に指定されている。しかしコガムシの 2003 年以降の採集記録は 2005 年

0 5 10 15 20

本調査で確認された水生昆虫類

2003年に確認でき2004年以降も確認されている種 

2003年以降確認されていない種

2004年に新たに確認された種

6種 8種 3種

2003年と2004年以降確認された総種類数 17種

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から 2009 年にかけて確認できた7個体のみで 2009 年以降は採集されていなかった。2003 年

以降採集記録のない8種には水生カメムシの仲間であるタイコウチが含まれていた。タイコウ

チに関しては本調査では 2003年以降確認できなかったが我孫子市全体では 2004 年にも採集記

録があった。また長野県などの一部の県では環境省により準絶滅危惧種に指定されている。

2004 年から新たに採集された3種ではマツモムシなど比較的有名な種類のほかにマルガタゲ

ンゴロウが含まれていた。マルガタゲンゴロウもまた貴重な種類であり、千葉県レッドデータ

ブックの重要保護生物(B)に指定されている。マルガタゲンゴロウは、2012 年から初めて谷

津内で確認でき今年の調査でも複数の個体を確認することができたので現在本谷津内では比較

的多く生息していると考えられる。 これらの調査結果から本谷津内では 2003 年から継続して確認できた種類より 2003年以降確

認できなっかた種類のほうが多いことがわかった。原因としては 2004 年からの昆虫班の調査

活動内での水生昆虫の採集頻度がかなり少なく記録があまりないこともあるが、近年、多くの

種類の水生昆虫が全国的に減少しており本谷津内の水生昆虫もそのような影響をうけている種

がいるのではないかと考えた。その原因は一般的に水田などの湿地地帯の埋め立てによる土地

開発や農業の近代化による急激な環境変化、用水路やため池のコンクリート掘りによる水質悪

化など様々な原因があるが、最近ではアメリカザリガニやウシガエルなどの外来生物の侵入も

大きな原因と考えらる。 特にアメリカザリガニに関しては繁殖力が非常に強く一回の産卵で多くの個体が生まれ、ま

た雑食性であるため多くの水生昆虫を捕食し、さらに水生昆虫の隠れ場所にもなる水草も食べ

てしまうため水生昆虫の逃げ場所がなくなりさらに多くの水生昆虫がアメリカザリガニに捕食

されてしまうことで水生昆虫が生存競争に負けてしまい減少してしまうことも考えられる。実

際本谷津内ではほぼ全水域で多数のアメリカザリガニが確認されたため 2003 年以降確認でき

なかった種類の一部の水生昆虫もアメリカザリガニの影響を受けている可能性がある。また、

ウシガエルに関しては谷津内ではまだ鳴き声のみの確認であるが今後アメリカザリガニと同様

に増えていく可能性があるので注意が必要である。しかし、現在でも確認できる水生昆虫の一

部ではまだ多くの個体が生息している種もおり、最近新たに確認できた種類もいたため全ての

種類の水生昆虫類が外来種の影響を受けているわけではないようだ。またマルガタゲンゴロウ

を含む新たに確認できた種類に関しては近年本谷津内では環境保護活動が行われているためそ

の効果があって新たに発生したのかもしれない。 今後の課題としては全体的に 2003 年以降の水生昆虫の採集記録自体が極端に少なく明確な

データを得られていない可能性が高いので今後は水生昆虫類の採集も徹底して行うようする。

そして、水生昆虫は外来種の影響だけでなく、水質の影響も受けやすいものと考えられるので、

今後調査する際は採集を行うのと同時に水質調査なども行い、より水生昆虫の生息状況を詳し

く調査していきたい。

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13 伊豆大島と武蔵野市周辺における環境比較

聖徳学園中学高等学校 理科部

【きっかけ】 部では、夏休みに伊豆大島での合宿で生物観察を行ったり、休日には普段通っている

学校のある武蔵野市周辺や多摩地域(高尾山)などでも生物観察を行ったりしていた。 そのような中から、両地域の比較を行い、生物多様性を考えたいと思った。

【 目 標 】 伊豆大島と武蔵野市周辺の生態系などを比較し、環境の違いを絡め、総結論を見つけ

出す。

【 概 要 】 合宿や日帰り実習で、厳密な調査は行ってはいないが、現地を観察することで、相観

を感覚的につかんでいる。実習後、本校にて資料集めを行った。 比較するテーマは、以下の6つである。 ① 水 ② 地形と宅地 ③ 昆虫類 ④ 魚類 ⑤ 鳥類 ⑥ 植物

これらの各テーマにつき、以下の作業を行っていく。 ①、②についての作業 ③~⑥についての作業 ・項目比較 ・種名比較 ・同項目の数 ・同種の出現数 ・小結論 ・小結論

これらの研究結果に基づき、下記の総結論へと導く。

【 総結論 】 伊豆大島が海に囲まれた特殊な環境であることを示めす。また、それを裏付ける調査

方法および評価方法を確立する。

【今後に向けて】 武蔵野地域を軸として、南北差および標高差の違う地域を調査・比較し、その つど様々な結論を出しこれからの活動に活かしていきたい。

(資料)両地域の載っている地図 Google Maps より Yahoo!地図 より

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INTENTIONARY LEFT BLANK

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14 玉川上水を流れる高度処理水は、冬の虫に影響を与える?(13 年目)

創価高校 3 年

生物選択者

はじめに

多摩川の水を引く玉川上水では、途中地点の小平監視所から高度処理水が流れている。

この高度処理水は、多摩川の自然水に比べて水温が高く、虫をはじめとした自然環境に影

響を与えていると考えている。過去 12 年間の研究に引き続き、自然豊かな玉川上水と人間

活動等による環境の変化を調べていきたい。

研究の目的 ○調査地点ごとに水温が異なること、冬に水温の影響を受けやすいと思われる多くの虫

は木にいると考えられることを踏まえ、水温と樹上個体数との関連を調べる。 ○土壌温度・土壌中の微生物の個体数の測定から、高度処理水の高い水温は土壌環境に

影響を与えるか調べる。

調査方法 下の地図に示している、昨年までと同様の玉川上水の4つの地点、地点 A~D で一斉に、

それぞれ次の5項目の測定を行った。 項目:気温、水温、樹上個体数(一定量の葉に対する虫の数)、

土壌の温度、土 200 ㏄あたりの土壌中微生物の個体数(ツルグレン装置を使用)

ただし、4地点のうち、上流側の地点 A のみ多摩川からの自然水が流れており、下流側

の地点 B ~D は高度処理水が流れていることが分かっている。

自然水

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結果

要旨作成時では、まだデータ採集途中のため、このページに載せたグラフ1,2を含む、

結果・考察は、1月 30 日までの記録を基にしているため、口頭発表時のデータが完全なも

のとなります。ご了承宜しくお願いします

グラフ1 水温と樹上個体数について グラフ2 水温と土壌温度、土壌微生物数について

グラフ 1 より、水温については、例年と同じく高度処理水の放流口である地点 B で上昇

し、下流の地点 C ,D に向かうにつれて低下した。樹上個体数について、水温の高い地点

B では樹上個体数も多くなったが、今のところ予想に反し、自然水が流れていて水温の低い

地点 A と、地点 C の間に樹上個体数には大きな差は見られていない。 グラフ2より、土壌個体数と土壌温度、水温の間に相関はあまりなく、また土壌個体数

については地点や、測定回ごとで差が大きかった。

考察 ○過去 12 年間、水温の高い地点ほど樹上個体数は多かった。今年度の水温は各地点で例年

とほとんど変わらないにも関わらず、地点 C での樹上個体数が多くないことには注目し

ている。地点 C としている新橋は6年前に開通し、4地点の中で唯一車が通行する橋で

ある。今年度に地点 B,C,D を含む玉川上水の岸にある木が剪定・伐採され、虫たちが日

当たりや風などの、水温以外の影響を受けやすくなった等の可能性も考えられる。 ○2017 年度内に行われた、大規模な木の剪定・伐採による、1 本の木あたりの樹上個体数

への大きな影響は見られなかった。しかし、1月 23 日の大雪の後、1 匹も虫が取れない

木が数本あった。樹木密度の減少により、玉川上水沿いの樹木に関わる個体群が持つ環

境の変化への寛容性が落ちている可能性もある。 ○土壌環境について今年と過去のデータより、水温が高いことで土壌温度が上がり、玉川

上水の岸にいる土壌微生物が活発になるということは考えにくい。今年の研究中にはツ

ルグレン装置にかけて 24時間以上経過後も土壌微生物数が大きく増えることも分かるな

ど、土壌生物の個体数を正確に測る新たな工夫の必要性も感じた。

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15 ヒキガエルの体色の変化

鷗友学園女子中学校 理科班

中 1 小飼紗貴子

〈動機〉

・私カエルが好きで、現在ニホンヒキガエルを飼っている。

・一般に、ヒキガエルの体色は変化しないと言われている。しかし、ヒキガエルを飼っているうち

に日によって体色が違うような気がしてきた。そこで本当に体色が変化しているのか確かめて

みた。

〈方法〉

・カエルをペーパータオルの上に置き、隣にコピー用紙を配置して写真を取る。

(条件が変わらないよう、コピー用紙・カエル・ペーパータオルが毎回同じ位置にくるように

した。また、撮影ではすべて同じ道具を使った。光の入りにくい同じ部屋で同じ電気をつけ

て撮影した。)

・フォトショップを使って写真の明るさ・色を調節してコピー用紙の色を揃える。

(フォトショップとは写真を加工・合成する機能がある画像編集ソフトのこと。)

・フォトショップの色を数値化する機能を利用し、カエルの目の間の部分の色を数値化する。

それを参考に体色が変化しているかを確認する。

〈結果〉

1/4〜1/11 にかけて 8枚の写真を取った。(結果 1参照)写真の中のコピー用紙の色を揃えた。(結

果 2参照)カエルの目の間の部分の色を数値化し、それを表とグラフに表した。(結果 3・4参照)ま

た、その中で最も差が大きいものと小さいものを比較した。1/4 は全体的に数値が高く明るい。1/5

は全体的に数値が低く暗い。(結果 5 参照) 1/5 と 1/7 は似たような数値で見た目も似ている。(結

果 6参照)結果 3・4・5より、ヒキガエルの体色は変化しているということが分かった。

〈考察〉

一般的に動物の体色の変化は、身を守るため、繁殖期にメスの気をひくために行われる。ヒキガ

エルもそうなのではないかと考えてみた。しかし微妙に体色を変化させるだけでは周りに溶け込む

ことはできないし、ヒキガエルは体色を変化させる特別な組織を持っていない。これらのことから、

身を守るためである可能性は低いと考えられる。それから、今は繁殖期ではないのでメスの気をひ

くためというのも考えられにくい。そのため結局のところ、ヒキガエルが体色を変化させる理由は

よく分からない。

〈展望〉

次の実験では、フォトショップの精度を更にあげたい。1 日に数枚の写真を取って平均を取ると

より正確になると思う。

参考文献:カエル飼育ノート(カエルの生態から、飼育、繁殖まで)著者:水谷継

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16 都市型養蜂は新しい農業なのか?

安田学園中学校 生物部 養蜂班

3 年 川口 拓真 吉村 翼 Ⅰ.研究背景・目的

近年,都市部でミツバチを飼育する都市型養蜂が盛んに行われている.蜂蜜

を収穫した実績はあるが,都市環境のどこから花蜜や花粉を得ているのか総合

的に調査した報告はない.本研究では,東京都墨田区安田学園中学校周辺の花

資源の位置と量,ミツバチの行動範囲,収穫した蜂蜜の量と安全性について調

査した.

Ⅱ.研究方法 調査は,①花粉源植物の開花カレンダーの作成,②餌場の位置を仲間に伝え

る 8 の字ダンスの逆探知による餌場の位置の特定と餌場までの距離の測定,③

安田学園周辺の餌場の調査,④収穫した蜂蜜の量と糖度の測定,⑤蜂蜜の残留

農薬分析,の 5 項目行った.

Ⅲ.結果 調査の結果,266 種類の植物から花粉を得ていることがわかった.また,1

種類の花から集めるのではなく,同時に様々な種類の花から花粉を得ていた.

さらに,住宅地や街路樹,道路の植え込みの園芸植物から資源を得ていた.ミ

ツバチの行動範囲は 1000m〜3000m 程度と比較的狭く,遠くまで飛ばなくて

も十分な資源を得ていた.1 群あたりの年間採蜜量は 2016 年が 39.3kg,2017年が 35.9kg となり,残留農薬は検出されなかった.

Ⅳ.考察 これらの結果より,都市型養蜂が行えるだけの十分な資源が都市部にあるこ

とが明らかとなった.さらに,残留農薬が検出されなかったことから周辺地域

で農薬が散布された可能性は低く,蜂蜜の安全性も示された.

Ⅴ.結論 街の景観や緑化に利用された植物の花という未開拓の資源から蜂蜜が収穫

できる都市型養蜂は,都会でできる新しい農業の一例となるかもしれない.一

方で都市部は,ミツバチと共に花資源を利用するチョウやハエなどの昆虫が生

活できない自然とかけ離れた環境と言えるのではないだろうか.

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INTENTIONARY LEFT BLANK

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17 オカダンゴムシにおける交替性転向反応について

吉祥女子高等学校

2 年 北村萌絵 三浦杏子

1.動機・目的 オカダンゴムにおける交替性転向反応を確かめ、何が関わっているのかを調べた。

2.オカダンゴムシ Armadillidium Vulgare

分類はオカダンゴムシ科オカダンゴムシ属オカダンゴムシ。北海道、本州、四国、九州に分布する。体長は約

1cmで、7対の足があり節足動物である。落ち葉などを食べる。メスは体表にある黄色の斑点が濃く、体色が

薄いのに対し、オスは黄色の斑点が少なく、体色が黒く濃いのが特徴である。 以下ダンゴムシと記す。

3.交替性転向反応とは 交替性転向反応とは、障害物に当たったときに左右交互に曲がる反応を言う。同じ方向に曲がり続けると元の

場所に戻ってしまうため、この性質は天敵などからの逃避の際に有効であると考えられている。 例えば連続する T 字路にダンゴムシを歩かせると、最初の角で右に曲がると、次に壁にぶつかったときは左へ

と左右交互に曲がっていく。 4.方法 ・実験 1 迷路にいれ、交替性転向反応を確かめる 連続する T 字路を5つ並べ、最初の角は必ず右に曲がるようにした。すべてのダンゴムシにおいて一匹につい

て 2 回ずつ、合計 100 匹(雌雄 50 匹ずつ)200 回行った。 T 字路を上から見ると図1の通りで、壁の高さは 1cmである。 ・実験 2 迷路の長さを長くする

T 字路を三つ並べ、二つ目の曲がり角から三つ目の曲がり角までの距離を 5 ㎝、7 ㎝、10 ㎝、15 ㎝と変えた。

三つ目の角をどちらに曲がるのか記録した。 ・実験 3 壁と触角が触れる角度を変える 図2のように、曲がる時の角度を 90°、120°、135°、150°と変えてダンゴムシの左の触角が最初に壁に触れや

すくなるようにした。 ・実験 4 片方の触角を使えないようにする

右の触角のみを水のりで固めた個体、左の触角のみを水のりで固めた個体を 10 匹ずつ用意した。1匹につき

4回、合計 80 回を図3のように通路に入れた。触角が壁に触れたか、どちらの方向に曲がったのかを記録した。

・実験 5 右の触角を使えないようにし、迷路に入れる 右の触角のみを水のりで固めた固体を8匹用意した。図4のようにそれぞれ2回合計 16 回行った。最初に角

は必ず右に曲がらせ、二番目の角において交替性転向反応なのか触角による転向反応なのかを記録した。 ・実験 6 両方の触角を使えないようにし、迷路に入れる

ダンゴムシの両方の触角を水のりで固めた。実験1と同じ迷路に入れ、10 匹合計 20 回行った。

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5.結果・考察 実験1 角を曲がり続けると確率は下がっていったものの、二つ目の角では約8割が交替性転向反応を示した。 ⇒ダンゴムシには交替性転向反応があることが確認できた。

実験2 迷路の距離を長くしていくにつれて、交替性転向反応を示す確率が下がった。 ⇒ダンゴムシの交替性転向反応には距離が関係していると考えられる。 実験3 左の触角が触れたときは右に、右の触角が触れたときは左に曲がる個体が多かった。 ⇒ダンゴムシには触れた触角と反対側の方向に曲がる性質があると考えられる。

実験4 左の触角しか使えないときでは右に曲がる個体が、右の触角しか使えないときでは左に曲がる個体が多

かった。 ⇒一方の触角しか壁に触れないためその個体の曲がる方向は一方に固定されたといえる。実験4で考察した

「ダンゴムシは触れた触角と反対の方向に曲がる」という性質を確認することができた。 実験5 ダンゴムシを迷路に入れると左の触角が壁に触れているにもかかわらず、実験4の性質ではなく交替性

転向反応がみられた。 ⇒交替性転向反応と触角の触れた反応が同時に起きると、交替性転向反応が優先されると考えられる。 実験6 両方の触角が使えない場合でも交替性転向反応が見られた。の ⇒ダンゴムシの交替性転向反応には触角以外の何かが関わっていると考えられる。 6.今後の展望 ・ダンゴムシにおける交替性転向反応には、触角以外に何が関係しているのかを調べる。 ・左右の足の負担をできるだけ平等にするためにこの反応が起きているとも考えられるため、引き続き実験を工

夫する。 7.参考文献 ・ダンゴムシに心はあるのか 森山徹 発行年 2011 年 04 月 発行所 PHP研究所 ・オカダンゴムシ http://mushinavcom 最終閲覧日 2016 年 8 月 29 日

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18 ミナミヌマエビの交替性転向反応について

大森学園高等学校科学研究同好会

鵜澤 巴(高 2) 石井 鈴(高 1) 古田 悠人(高 1) 金澤 好祐(高 1)

1 はじめに

連続する分岐点においてある方向に曲がると、次の分岐点では前とは逆の方向に高確率で曲がる動物

の反応を交替性転向反応という。これまでにワラジムシ(等脚)目の動物を中心に盛んに研究がされてきた。

私たちは、昨年より淡水エビの一種であるミナミヌマエビを用いて交替性転向反応について調べてきた。そ

こでミナミヌマエビが交替性転向反応を示すこと、さらにオカダンゴムシと異なり交替制転向反応とは別に

右に曲がりやすい性質があることを明らかにした。しかし、昨年行った光条件をかえた実験の時のみ左に

曲がりやすい性質が見られた。そこで、本研究では左右の転向に偏りが出る理由を明らかにすることを目

的とし実験を行い交替制転向反応との関係について調べた。 2 実験

2-1 強制転向後の迷路実験 図 1、2 のようなスタート地点に強制転向を一回入れた迷路

をプラバンを使って作成した。図 1 の迷路ではスタート後に右

曲がりの強制転向、図 2 の迷路では左曲がりの強制転向をそ

れぞれ 1 回入れた。これらの迷路の S 地点にミナミヌマエビを

置き、その後、行動を観察した。そして、到達地点の番号を記録した。 2-2 水温の違いにおける迷路実験

右に曲がる性質が見られた実験と左に曲がる性質が見られた実験とでは水温の

条件に差があった。そこで、水温の差と曲がる方向の間に何らかの関係があったの

ではないかと考え、それを調べるために水温をかえた実験を行った。図3 のような迷

路をプラバンを使って作成し、1 つは水温を 29(±1)℃、もう 1 つは 19(±1)℃に保

って実験した。S 地点に置いた後のミナミヌマエビの行動を 2-1 と同様に観察・記録

すると同時にミナミヌマエビが迷路を終えるまでの時間を計測した。 3 結果

実験 2-1 においてミナミヌマエビが到達した

地点を表 1 に示した。強制右転向を行った実

験では地点 6、強制左転向を行ったものは地

点 3 が最も多くなった。これはどちらも交替制

転向反応を示した場合に到達する地点であっ

た。また、どちらも二番目に多かったのは、二つ目の

角で強制転向した方向と同じ方向に曲がり、その後

交替性転向反応を示したものだった。 次にこの実験における強制転向後の最初の分岐

点で曲がった方向を表 2 に示した。強制右転向後に

交替性転向反応に逆らって右に転向した個体と、強

制左転向後に左に転向した個体数を比較すると、右

表 2 強制転向 1 回 n=各 200

右 左

右転向

個体数 83 117

割合 41.5% 58.5%

左転向

個体数 141 59

割合 70.5% 29.5%

表 3 4 回中 3 回同じ

右 左

個体数 106 69

割合 26.5% 17.3%

表 1 強制転向後の迷路実験 n=各 200

地点 1 地点 2 地点 3 地点 4 地点 5 地点 6 地点 7 地点 8

強制右 18 19 37 9 18 64 25 10

強制左 15 28 84 14 14 27 11 7

図 3

図 2 図 1

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に転向した個体の方が多くなっていた。さらに、4 か所

の転向点のうち 3 回以上右もしくは左に曲がった個体

数とその割合を表 3 に示した。この結果から過半数の

転向点で右に曲がった個体数が過半数左に曲がった

個体数より多いことが分かった。 次に実験 2-2 における 29(±1)℃での結果を表 4

に、19(±1)℃での結果を表 5 に示した。29(±1)℃で

は地点 6 が最も多く、19(±1)℃では地点 3 が最も多くなった。また、

29(±1)℃と 19(±1)℃での 1 つ目の分岐点と 2 つ目の分岐点で曲

がった方向を表 6 および 7 にまとめた。2 回連続で同じ方向に転向し

た個体数を比較すると、29(±1)℃のときは左右にあまり差がなく、

19(±1)℃では左が多くなっていた。 そして、水温別に全ての分岐点で同じ方向に曲がる個体と、交替性転向

反応を示した個体、どちらも示さなかった個体にわけ迷路にかかった平均

時間を表 8 に示し、この時の個体数を表 9 に示した。29(±1)℃においてす

べて同じ方向に曲がった個体と交替性転向反応を示した個体の平均時間

が他の 4 つのグループより明らかに短いことがわかった。またそれ以外の

4 つのグループには大きな差がないこともわかった。

4 考察 強制右転向後に交替性転向反応に逆らって右に曲がる個体が多かっ

たこと、また過半数の転向点で右に曲がっている個体が多いことから右に

曲がる傾向があることが確認できた。 29(±1)℃のときは2連続右転向と左転向の間に偏りがなかったのに対

し、19(±1)℃のときは 2 連続左転向が明らかに多かったことから、水温が冷たくなると左に曲がる傾向が現れ

るのではないかと考えられる。しかし、ここまでの結果では左右の曲がりやすさに偏りの出る理由を明確にする

ことはできなかった。しかし、今回水温を変えた実験において、29(±1)℃で交替性転向反応を示すグループと

すべて同じ方向に曲がるグループの二つが、それ以外のグループに比べて明らかに速くなることがわかった。

時間がかかった実験ではミナミヌマエビが迷路を途中で止まる様子が見られている。これらより水温が低いと

エビの行動は遅くなり静止しやすくなり、この静止により前の転向の影響が薄くなると考えられる。つまりミナミ

ヌマエビは水温が高い方が直感的に動くと考えられ、より正確に行動の特徴をみられるのではないかと予想さ

れる。よって今後ミナミヌマエビの行動を調べるには、水温を 29(±1)℃にそろえ、検討すべきだと分かった。

6 参考文献 渡辺宗孝・岩田清二 (1956) ダンゴムシにおける交替性転向反応.動物心理学年報 6: 75-82 川合隆嗣 (2011) 無脊椎動物における交替性転向反応研究の展開と問題点について,The Japanese of Animal Psychology 61,1,83-93 川合隆嗣 (2010) オカダンゴムシの交替性転向反応:通路長・転向方向・転向回数の効果,関西学院大学リポ

ジトリ 人文研究,60(3): 113-125

表 4 29(±1)℃での迷路実験 n=100

地点 1 地点 2 地点 3 地点 4 地点 5 地点 6 地点 7 地点 8

13 11 16 7 6 27 7 13

表 5 19(±1)℃での迷路実験 n=100

地点 1 地点 2 地点 3 地点 4 地点 5 地点 6 地点 7 地点 8

7 6 21 9 11 17 16 13

表 7 19℃転向方向

右 左

右 13 30

左 28 29

表 6 29℃転向方向

右 左

右 24 23

左 33 20

表 8 水温別における平均時間

29℃ 19℃

全て同じ方向 (地点 1,8) 17 24

交替性転向反応 (地点 3,6) 18 23

どちらでもない (地点 2,4,5,7) 27 25

表 9 水温別における個体数

29℃ 19℃

全て同じ方向 (地点 1,8) 26 20

交替性転向反応 (地点 3,6) 43 38

どちらでもない (地点 2,4,5,7) 31 42

1 つ目 1つ目 2 つ目 2 つ目

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19 シリコーン樹脂標本の作製

~鳥獣の内臓を利用して~

学習院中等科 生物同好会

齋藤 快

SAITO Kai

☆はじめに

私達は,今年も昨年に引き続いて臓器にセメダイン社製のシリコーンレジンを用いてシリコーン

樹脂標本を作製した。 昨年は哺乳類どうしの比較として,ハクビシン,アナグマ,ブタの肺を比較したが,今年は部員

の一人が行きつけの鶏肉専門店でニワトリの肺(食用部位ではないので販売されていない)を譲っ

ていただくことができ,哺乳類‐ブタ‐の肺と鳥類‐ニワトリ‐の肺を比較してみた。 ☆なぜ肺なのか

これまでに,ニワトリの心臓(鳥ハツ)について試みたが,ニワトリの心臓の血管が細い,心房・

心室の隔壁が薄いことから,シリコーンレジンを注入する際の圧力に耐えることができずに破れて

しまい,成功率および完成度が低かったのである。肺の場合は太くて丈夫な気管から注入すること,

気管支末端まで比較的丈夫であることから肺を用いて行った。 ☆作製手順

① シリコーンレジンを 60 ℃以上の湯に 1 時間

以上つけて温める。

② 肺を水中に入れて内部の空気をできるだけ押

し出す。

③ ②の肺の気管からコーキングガンを使ってシ

リコーンレジンを注入する。

④ ③の肺を濃水酸化ナトリウム水溶液につけお

く。

⑤ ④の肺をよく水洗いしたのち,残った肉を落

とす。

⑥ 酸素系漂白剤に漬け込んだのちに,よく水洗

いする。

☆哺乳類の肺標本-ブタ-

ブタの気管は太く,シリコーンレジンも入りやすい。

図 1では,気管の部分が注入したシリコーンレジンにより白っぽく見える。

図 2 は完成したブタ肺のシリコーン樹脂標本。気管から左右に枝分かれした一次気管支,一次気

上)シーラント用シリコーンレジン

下)コーキングガン

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管支がさらに枝分かれして各肺へと進む二次気管支,さらに細気管支へと分岐している様子がわか

る。末端を指でつまんでみると,肺胞のツブツブが感じられる。

☆鳥類の肺標本-ニワトリ-

横隔膜によって気室を陰圧にすることで肺呼吸をする

哺乳類と異なり,鳥類は吸気を後方の気のうに入れ,後方

の気のうから前方の気のうに吸気を移動させる際に,両

方の気のうの間に肺を挟むことで肺に空気を吸気を送り

込んでいる。したがって,肺には気のうとの間の管がたくさんあり,一見して切れ目が入っている

ように見える(図 3)。このため,鳥類の肺は哺乳類のような伸展性に乏しく,逆に気圧が低い場所

でもガス交換が可能となっている。

肺の伸展性に乏しいということは,シリコーンレジンをコーキングガンで注入すると,注入圧で

肺壁が破れやすいということになる。そのために,十分に温めて粘性が低くなっているシリコーン

レジンをシリンジにとり,指の感覚頼りにピストンで静かに注入する方法をとった(図 4)。

☆おわりに(謝辞)

この研究に当たっては,セメンダイン株式会社より製品に関する助言や製品の提供をいただきま

した。感謝申し上げます。

図 1 ブタ肺にシリコーンレジンを注

入したもの

図 2 ブタ肺のシリコーン樹脂標本

図 3 ニワトリの肺には気のうとつな

がっている管の穴がたくさんあいて

いる。

図 4 ニワトリ肺への注入はシリンジを使う

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<memo>

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