琉球列島に分布するマングローブ樹種の集団遺伝学的解 析に...

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Title 琉球列島に分布するマングローブ樹種の集団遺伝学的解 析に関する基礎的研究( 表紙、研究概要 ) Author(s) 馬場, 繁幸; 中須賀, 常雄; 佐藤, 一紘 Citation Issue Date 1991-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/18687 Rights

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  • Title 琉球列島に分布するマングローブ樹種の集団遺伝学的解析に関する基礎的研究( 表紙、研究概要 )

    Author(s) 馬場, 繁幸; 中須賀, 常雄; 佐藤, 一紘

    Citation

    Issue Date 1991-03

    URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/18687

    Rights

  • 琉球列島に分布するマングローブ樹種の

    集団遺伝学的解析に関する基礎的研究(課題番号 63480063)

    平成2年度科学研究費補助金(一般研究B)

    研究成果報告書

    平成 3年 3月

    研究代表者 :馬 場 繁 幸(琉球大学農学部・助手)

  • 1.研究員的

    今日、地球規模での環境問題の一つとして、熱帯林の消失が挙げられ、その消失面積は

    一年間に1,130万haにも達している。この急激に消失しつつある熱帯林とは、ラワン(1au-

    aJl)などの名称で親 しまれるフタバガキ科(Dipterocarpaceae)の樹木が主要な構成種となっ

    ている森林を、その対象とすることも多かった。しかし、フタバガキ科の森林と同様、熱

    帯に、しかも亜熱帯をも含め、河口域や潮間帯に分布するマングローブ(mangrove)林も、

    今日、危機的状態にさらされている。このマングローブ林、タイ国ではここ10年間に現在

    の面積の63%の10万ha、バングラデシュではこれまでに100万haのマングローブ杯が消失し

    たと推定されている。

    マングローブとは特定の植物を指し示す単語(termあるいはword)ではなく、南限をニュ

    ージーランドの北島、北限を我が国の鹿児島県とした熱帯や亜熱帯の潮間帯(intertidal

    zone)や、河口などの河川の水 (淡水)と海水とが混ざり合う汽水(brackishwater)域に成

    立する 「植物群落(plantcom皿ity)」、あるいはその 「植物群落を構成する植物の総称」

    として用いられている。したがって、研究者によってマングローブの構成種は異なるが、

    一般にはシダ植物やヤシ科の植物も含め、80-100種以上と考えられている。

    マングローブに関しては、これまで多くの研究が行われているが、それらの研究は、植

    物分類学、植物地理学、植物生理学、植物生態学、植物形態学、森林防災学、造林学、林

    産学、土壌学などの分野からの研究が中心であり、遺伝学的あるいは育種学的観点からの

    研究は極めて少なく、組織培養等に関する研究もその研究の緒についたばかりである。

    また、我が国の林木に関するこれまでの育種学的研究、特にその中でも集団遺伝学的研

    究はオオシラビソ(地建 mariesiiHast.)、トドマツ(地垣 sachalinensisFr.Sch皿.)、

    ヒノキ(ChNnaeCyparis辿 Endl.)、スギ (CryptomeriajaponicaD.Don)、アカエゾ

    マツ (旦主些 glelmiiHast.)、アカマツ (旦皇塁些densifloraSieb.etZucc.)、クロマツ

    (迦 thunbergiiParュ.)などの針葉樹を対象とすることが多かったが、近年では、マン

    グローブ杯の主要な構成樹種と同じ広葉樹であるアカシデ(CarpinuslaxifloraBlume)、

    ブナ(馳 crenataBlume)、コナラ(Quercus)属などもその研究対象とされるようになっ

    てはきている。しかしながら、我が国でのマングローブの広汎な分布は、唯一沖縄県のみ

    にしかみられず、しかも世界的にみてもマングローブに関する遺伝学的あるいは育種学的

    研究は少なく、集団遺伝学的解析もこれまでに行われていなかったのが実状である。

    -1-

  • 前述の通り我が国でマングローブが広汎に分布するのは沖縄県のみであるが、この沖縄

    県は、大小多くの島々から構成されており、しかもその中で、主要な島、すなわち沖縄島、

    宮古島、石垣島、西表島などを含む島々にはマングローブが分布 している。したがって、

    それら島々に分布 しているマングローブを集団遺伝学的に研究するのには、極めて恵まれ

    た地理的条件を備えているといえよう。

    本研究は、以上のようなマングローブに関する今日の現状、これまでの研究動向、沖縄

    県の地理的特使 (フィール ドとしての特性)などを踏まえ、マングローブの集団遺伝学的

    解析に関する基礎的研究を試みたものである。

    したがって、本報告では、まず初めに、世界に分布するマングローブと、沖縄県を含む

    琉球列島のマングローグを概説するとともに、琉球列島のマングローブの位置付けとマン

    グローブ林の構成種を簡単に記述 した。次に、琉球列島に分布するマングローブ林の主要

    構成樹種であるオヒルギ (βru郎iera,gymnorrhiza (L.) Lank.)、メヒルギ (Kandelia

    由 虫 (L.)Druce)、ヤエヤマヒルギ(RhizobhorastylosaGriff.)を主要な研究材料とし、

    集団遺伝学研究に極めて有効な研究方法であるポリアクリルアミド垂直スラブ電気泳動法

    を用いたアイソザイムの染色法について論述 した。ポリアクリルアミドゲル上にザイモグ

    ラム(zymogram)化された表現型(PhenotyFe)の解析を行い、その表現型の解析を通 じて遺伝

    型(genotype)の推定を行ったOまた、それらの結果から、集団遺伝学的解析を行い、アイ

    ソザイムを用いたマングローブの集団遺伝学的研究の可能性と研究の今後の方向性等につ

    いても考察した。

    2.研究組織

    研 究 代 表 者 : 馬 場 繁 幸 (琉球大学農学部 ・助 手)

    研 究 分 担 者 : 中 須 賀 常 雄 (琉球大学農学部 ・助教授)

    研 究 分 担 者 : 佐 藤 - 紘 (琉球大学農学部 ・助教授)

    3.研究経費

    昭 和 63年 度 2,300千円

    平 成 元 年 度 1,600千円

    平 成 2年 度 1,500千円

    計 5,400千円

    一 2 -

  • 4.研究発表

    1)BABA,S.,K.OGINOandT.NAKASUGA:isozymepatternsofsixmangrove

    treespeciesinOkinawa.Galaxea8:79-83,1989

    2) 馬場繁華 :海に浮かぶ森林 -マングローブ林-、北方林業 42:249-254、 1990

    3) 馬場繁華 :マングローブの二、三の特徴と造林の可能性、育種学雑誌 42(別冊

    2号):531-537,1990

    4) 馬場繁華 :マングローブの二、三の特徴と造林の可能性、 育種学最近の進歩

    32 (印刷中)

    5) 馬場繁幸 ・酒井終秀 :沖縄に分布するマングローブ樹種の集団遺伝学解析に関す

    る基礎的研究(Ⅰ)、日本熱帯生態学会第 1回年次大会 (発表予定)、1991

    6) 馬場㌢幸 :沖縄に分布するマングローブ樹種の集団遺伝解析に関する基礎的研究

    (II)、第45回日本林学会九州支部大会 (発表予定)、1991

    7)BABA,S.:IsozyTnePhenotyFebandingpattern ofKandelia⊆坦旦吐 inOkinawa(仮題)、Japan.J.Trop.Agr.(投稿予定)

    8) 馬場繁華 :沖縄産マングローブ樹種のアイソザイムバンディングパターン(仮題)、

    琉大農学報 (投稿予定)

    -3-