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各種がん 118 でんし冊⼦ 神経膠腫 (グリオーマ) 受診から診断、治療、経過観察への流れ 患者さんとご家族の明⽇のために 基礎知識 1.神経膠細胞とは ...................... 2 2.神経膠腫(グリオーマ)とは ..... 3 3.症状 .................................... 4 4.統計 ...................................10 5.発⽣要因..............................10 検査 1.神経膠腫の検査 .....................11 2.検査の種類 ...........................11 治療 1.悪性度( グレード )と治療の選択.. 13 2.⼿術(外科治療) ................. 14 3.放射線治療 .......................... 16 4.薬物療法 ............................. 18 5.再発................................... 20 療養 1.経過観察 ............................. 21 わたしの療養⼿帳....................... 22

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各種がん 118 でんし冊⼦

神経膠腫し ん け い こ う し ゅ

(グリオーマ) 受診から診断、治療、経過観察への流れ

患者さんとご家族の明⽇のために

⽬ 次

■基礎知識 1.神経膠細胞とは ...................... 2 2.神経膠腫(グリオーマ)とは ..... 3 3.症状 .................................... 4 4.統計 ................................... 10 5.発⽣要因 .............................. 10

■検査 1.神経膠腫の検査 ..................... 11 2.検査の種類 ........................... 11

■治療 1.悪性度(グレード)と治療の選択 .. 13 2.⼿術(外科治療) ................. 14 3.放射線治療 .......................... 16 4.薬物療法 ............................. 18 5.再発 ................................... 20

■療養

1.経過観察 ............................. 21 ■わたしの療養⼿帳 ....................... 22

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■基礎知識

1.神経膠細胞とは

神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)は、グリア細胞とも呼ばれ、神経細胞(ニューロン)とともに、脳・脊髄に無数に存在します。主な役割は、神経細胞を固定し、栄養の供給や神経伝達物質の伝達をすることなどです。

神経膠細胞が存在している脳は、頭蓋⾻(ずがいこつ)という脳を保護する⾻に囲まれており、さらに、頭蓋⾻の内側にある髄膜(ずいまく)によって被われています。脳は⼤まかに⼤脳や⼩脳、脳幹(のうかん)という部位に分けることができ、各部位にさまざまな機能があります。 脳内では、神経細胞から延びた神経線維(しんけいせんい)が集まり、束になり⾛⾏しています。神経線維は、細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしています。

図1.頭蓋⾻内の構造

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■基礎知識

2.神経膠腫(グリオーマ)とは

神経膠腫(しんけいこうしゅ)は、悪性の脳腫瘍の 1 つです。グリオーマとも

呼びます。神経膠腫は、神経膠細胞から発⽣します。 脳腫瘍には、他のがんのような TNM 分類やステージ分類がありません。代わりに悪性度(グレード)として 1 から 4 までの数字を⽤いて分類されています。グレード 1 の腫瘍は⼿術で全摘出できれば再発のおそれがほとんどない良性腫瘍です。グレード 1 の神経膠腫としては、⼦どもの⼩脳や視神経に発⽣することが多い⽑様細胞性星細胞腫(もうようさいぼうせいせいさいぼうしゅ)があります。 神経膠腫の中で最も多いのは、びまん性星細胞腫(せいさいぼうしゅ)や乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)で、グレード 2〜4 に分類されます(表1)。組織型やグレードによって治療⽅針が異なります。 乏突起膠腫は星細胞腫に⽐べてややおとなしく、薬物療法の効果が得られやすい腫瘍です。また、神経膠腫の中には主に脳室の壁の近くに発⽣する上⾐腫(じょういしゅ︓エペンディモーマ)という腫瘍もあります。

表1.神経膠腫と悪性度

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■基礎知識

神経膠腫をはじめ、脳腫瘍の診断は世界保健機関(WHO)2016 年分類に基づいて⾏われます。 これまで、脳腫瘍の分類は、主に顕微鏡で観察した組織学的検査に基づいていましたが、この分類では、腫瘍組織の遺伝学的検査がほぼ必須となっています。

神経膠腫では、IDHや p53と呼ばれる遺伝⼦変異の有無や、染⾊体 1p/19q 共⽋失(1 番染⾊体短腕と 19 番染⾊体⻑腕が共に⽋失している)の有無をもとに、表1の分類がさらに細分化されます。また、薬物療法(テモゾロミド)の効果が期待されるかは、腫瘍細胞の MGMT という遺伝⼦の⼀部の領域におけるメチル化が関係していることがわかっています。 しかし、神経膠腫の遺伝⼦検査は、2018 年 5 ⽉現在、保険適⽤ではありません。また、すべての施設で⾏うことができず、現在は⼀部の⼤学病院やがんセンターのみで実施が可能です。腫瘍の遺伝⼦診断などについては、主治医によく尋ねて、場合によっては⼤学病院やがんセンターなどでセカンドオピニオンを受けてください。

脳腫瘍は、神経膠腫のほかにも、中枢神経系悪性リンパ腫や髄芽腫(ずいがしゅ)などの悪性脳腫瘍や、髄膜腫(ずいまくしゅ)や神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)などの良性脳腫瘍に分類され、細かく分けると 150 種類以上にもなります。このため“脳がん”という⾔葉はほとんど使われることはありませんが、表にある神経膠腫は脳から発⽣した悪性腫瘍であり、“脳がん”にあたります。

3.症状

神経膠腫が脳に発⽣すると、腫瘍の周りには脳浮腫(のうふしゅ)という脳のむくみが⽣じます。⼿や⾜を強くぶつけると、⼿⾜が腫れることと同じです。腫瘍や脳浮腫によって、脳の機能が影響を受けることになります。 脳腫瘍や脳浮腫による症状は、腫瘍によって頭蓋⾻内部の圧⼒が⾼まるために起こる「頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)」と、腫瘍が発⽣した場所の脳が障害されて起こる「局所症状(巣症状︓そうしょうじょう)」に分けられます。

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■基礎知識

1)頭蓋内圧亢進症状︓多くに共通して起こる症状

脳は周囲が頭蓋⾻に囲まれた閉鎖空間であるため、その中に腫瘍ができると逃げ場がなく、その結果、頭蓋の中の圧⼒が⾼くなります。これによってあらわれる頭痛、吐き気、意識障害などの症状を、頭蓋内圧亢進症状といいます。⼈間の頭蓋内圧はいつも⼀定ではなく、睡眠中にやや⾼くなりますので、朝起きたときに頭痛が強く、吐き気を伴うことがあります。

2)局所症状(巣症状)︓脳の各部位が担う機能と関連する症状

運動や感覚、思考や⾔語などのさまざまな機能は脳の中でそれぞれ担当する部位が決まっています。脳の中に腫瘍ができると、腫瘍や脳浮腫によってその部位の機能が障害され、局所症状として出現するため、脳のどの部位がどのような機能を担っているのかを理解することが⼤切です。

脳は⼤脳、⼩脳、脳幹からなります。そして⼤脳は、前頭葉(ぜんとうよう)、側頭葉(そくとうよう)、頭頂葉(とうちょうよう)、後頭葉(こうとうよう)、⼤脳基底核(だいのうきていかく)に分けられ、それぞれに異なった機能を担っています(図2)。 腫瘍がどこにあるかは、⼿術のリスクや今後どのような症状が出る可能性があるかを予測する上で重要です。 図2.脳の表⾯図と断⾯図

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■基礎知識

前頭葉には思考や記憶⼒の中枢があります。前頭葉と頭頂葉の間には中⼼溝(ちゅうしんこう)という⼤きな溝があります。 前頭葉側には運動野(中⼼前回にある体を動かす機能を受け持つ部分)があり、 頭頂葉側に感覚野(中⼼後回にある刺激を感じる機能を受け持つ部分)があります。

顔、⼿、⾜の運動や感覚は、脳の外側から、中⼼側(左右⼤脳半球間裂[かんれつ])に向かって整列しています。したがって、脳腫瘍などが脳の内側(左右⼤脳半球の間)にある場合には⾜に強い⿇痺(まひ)や感覚障害が⽣じ、外側(側頭葉側)にある場合には、⼿に強い⿇痺や感覚障害が⽣じます。

⼈の脳は⼤脳半球と呼ばれる左右の脳に分かれます。右利きの⼈のほとんど、左利きの⼈の 7 割程度は、左の⼤脳半球が優位半球です。 優位半球とは⾔語中枢(話す、理解する)がある⼤脳半球で、この優位半球が障害されると、⾔葉での意思の疎通が障害される可能性が出てきます。⾮優位半球(多くは右脳)の病気ではあまり症状があらわれないこともあります。 側頭葉のウェルニッケ野には⾔語理解の中枢があり、前頭葉のブローカ野には発語の中枢があります。そしてこれらに障害があり、発語や⾔語の理解ができなくなることが失語という症状です。 ⼀般に左脳の広い障害では、利き⼿の右⼿⾜が不⾃由になるばかりでなく、⾔語の障害も起きるため、右脳の障害よりもはるかに⽇常⽣活上の困難が伴います。⼿術を⾏う際にも右脳と左脳ではリスクも異なります。 頭頂葉前部には痛みや触覚などを感じる感覚野があります。優位半球の頭頂葉の障害では計算障害などのほかに、失読・失書(字が読めない・書けない)などの症状が出現します。

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■基礎知識

後頭葉は視覚情報の認識に関わります。光は網膜(もうまく)から視神経に伝えられますが、視神経は頭蓋内に⼊ったところにある視交叉(しこうさ)という部分で交わり、視覚情報が伝達されます。つまり、視界の右側の情報は左後頭葉へ、視界の左側の情報は右後頭葉へとそれぞれ視放線(しほうせん)を通って伝えられます。 脳腫瘍により視交叉の前で左視神経が障害されると、左の視⼒が落ちます。視交叉の後で、左の視放線や左後頭葉が障害されると、左右の視⼒は保たれますが、右側の視界が⾒えなくなる半盲(はんもう)という状態になります。 また下垂体(かすいたい)腫瘍などによって視交叉が圧迫されると、⽿側性半盲(視野の外側が⾒えなくなる状態)が起こります。

⼩脳はバランスの中枢で、運動の学習効果を獲得する機能があります。⼩脳は⼤脳と異なり、同側性⽀配です。つまり右⼤脳の障害では左⼿⾜の障害をきたすのに対して、右⼩脳の障害では右側の運動障害を⽣じます。 ⼩脳に腫瘍があると、ふらつきやめまいなどの症状がみられます。

また⼩脳浮腫を起こすと、直前にある脳幹を圧迫したり、第四脳室を閉塞するため髄液の流れが滞り⽔頭症(すいとうしょう)をきたし、急速に意識障害が進⾏することがあります。

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■基礎知識

以下に、脳の各部位が担う機能(表2)と、腫瘍が存在する場所に応じた局所症状の例(表3)を⽰します。

表2.脳の各部位が担う機能

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■基礎知識

表 3.局所症状の例

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■基礎知識

4.統計

神経膠腫と新たに診断される⼈数は、⽇本では1年間に約4,000-5,000⼈です。 悪性脳腫瘍のうちで最も多く、20%強を占めます。1)

5.発⽣要因

神経膠腫と診断されたときには、なぜ神経膠腫になったのかと思いつめてしまう⽅もいます。しかし、神経膠腫の発⽣要因はほとんど明らかになっていません。 なお、まれですが、⽩⾎病などで過去に⾏った放射線治療の影響で、脳腫瘍(神経膠腫)を発⽣する危険性が⾼くなることがわかっています。

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■検査

1.神経膠腫の検査

神経膠腫が疑われる場合、症状の詳しい経過を問診した上で、専⾨的な診察や神経学的検査などを⾏います。⼿術を安全に⾏うための検査として腫瘍の位置、⼤きさ、⾎管との関係を確かめるために CT や MRI 検査が⾏われます。悪性度の検討や、CT や MRI 検査だけでは再発かどうかの判断がつかないときには、PET検査という脳の代謝をみる検査を⾏うこともあります。

2.検査の種類

1)CT、MRI 検査

CT は X 線を、MRI は磁気を使った検査です。頭蓋⾻の内部を描き出し、腫瘍の存在を調べます。多くの施設では、CT は MRI に⽐べて迅速に検査することができます。CT や MRI 検査では、病気をより明瞭に描き出すために必要に応じて造影剤を使った検査を⾏います。造影剤を使って検査を⾏うと、腫瘍の広がりや悪性度なども術前に推定することができます。

神経膠腫ではグレード 3 から 4 のように悪性度が⾼いほど、造影剤でよく染まる(腫瘍の輪郭がはっきりする)傾向があります。

また、通常の CT や MRI に加え、必要に応じて、特殊な MRI 検査を⾏うことがあります。例えば、脳の⾎液の変化をみる fMRI(functional MRI)を⽤いて、脳の運動野(⼿⾜の動きの中枢)や⾔語野(⾔葉の中枢)の位置を調べることがあります。

造影剤のアレルギーや喘息(ぜんそく)の既往(きおう)のある⽅、特に CT ではヨードアレルギーのある⽅は副作⽤の起こる危険性が⾼くなるので、医師に申し出てください。

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■検査

2)脳⾎管造影検査

造影剤を⽤いて X 線で脳の⾎液の流れを撮影する検査です。 ⼤腿部(だいたいぶ)の動脈に挿⼊したカテーテル(細い管)から造影剤を注⼊して、⾎管の⾛⾏と腫瘍との関係を調べます。脳⾎管造影検査によって時に脳梗塞が起こることがあります。

なお、最近では脳⾎管造影のかわりに、⽐較的体への負担が少ない以下のような検査が⾏われることも多くなっています。脳⾎管造影検査時に、⿇酔薬を使⽤して左右⼤脳半球の優位半球を同定する検査が⾏われることもあります。

●3D-CT アンギオ検査︓ヘリカル CT を⽤いて、脳⾎管の構造を詳しく調べます。 ●MRA 検査︓MRI 装置を⽤いて脳の⾎管を詳しく調べます。

これらの診察や検査によって、神経膠腫かどうか、ほかの腫瘍の可能性がないか、腫瘍の発⽣部位や広がりなどを推測することが可能です。しかし、診断を確定するためには、⼿術により腫瘍組織を採取し、その細胞を顕微鏡で観察して病理医が診断する病理検査(病理診断)が必要です。

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■治療

1.悪性度(グレード)と治療の選択

治療⽅法は、がんの進⾏の程度や体の状態などから検討します。がんの進⾏の程度は、悪性度(グレード)として分類します。 1)悪性度(グレード)

⼿術によって摘出した標本から、病理学的分類に基づき、悪性度(グレード)が診断されます。 脳腫瘍の病理学的診断は、腫瘍の遺伝⼦変異と組み合わせた世界保健機関(WHO)が発表した「WHO 分類」に従って⾏われます。

2)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。 神経膠腫の治療の原則は、可能な限り⼿術で腫瘍を摘出し、病理診断後に追加として放射線治療および薬物療法を⾏うことです。なお、グレード 2 の神経膠腫で腫瘍が全摘出できれば、経過観察することもあります。

表 4 は、神経膠腫のグレード別の治療⽅針を⽰したものです。

表4.神経膠腫のグレード別の治療⽅針

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■治療

2.⼿術(外科治療)

悪性脳腫瘍の⼿術の原則は、症状を悪化させないように可能な限り腫瘍を摘出することです。神経膠腫のような悪性脳腫瘍は、脳の表⾯ではなく、脳の内側から発⽣し、脳の中央部へしみこむように広がっていきます。 脳は部位により役割が決まっており、右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合には、腫瘍を⾁眼的に全摘出することが可能です。 ⼀⽅で、運動野(⼿⾜の動きの中枢)や⾔語野(⾔葉の中枢)に腫瘍が発⽣した場合には、腫瘍摘出により症状が悪化することがありますので、無理な全摘出は⾏いません。腫瘍の完全摘出よりも⼀部摘出による病理診断を⾏い、放射線や薬物療法での治療が主になります。

1)術中ナビゲーション

安全に⼿術を⾏うために、また、腫瘍が存在する部位を⼿術中に把握するために、⾞のカーナビゲーション装置よりもさらに精度の⾼いナビゲーション装置が使われます。 2)術中モニタリング

運動機能や感覚機能を SEP(体性感覚誘発電位)や MEP(運動誘発電位)といった術中脳波や筋電図でモニタリングしながら⼿術が⾏われます。

3)覚醒下⼿術

⾔語野の位置を同定し、⾔語機能や⾼次機能を温存するために、覚醒下⼿術(途中に⿇酔を緩めて意識をはっきりさせたまま⾏う⼿術)が⾏われます。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳⾃⾝の痛みを感じるレセプター(受容体)や領域がなく、脳を切除しても痛くありませんので、⼿術中に患者さんと会話しながら⼿術を⾏います。

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■治療

4)術中 MRI

腫瘍が摘出できたかどうか、術中に MRI 撮影を⾏うこともあります。

⼿術や⽣検(せいけん︓腫瘍の⼀部を採取すること)で得られた腫瘍組織は、病理診断によって腫瘍の性質や遺伝⼦変異、悪性度を診断し、放射線治療や薬物療法の⽅針を決定します。 なお、術前の画像検査では神経膠腫かどうかを判断しにくいことも多く、⼿術中の迅速診断(術中病理診断)によって、⼿術が続けられます。

5)⼿術の合併症

⼿術では、脳の機能を温存しながらできるかぎり腫瘍を摘出します。 画像診断の進歩により、腫瘍の部位や広がりを正確に把握することが可能にな

り、⼀般に、術前に⽐べ⼿術後の神経症状が悪化することは少ないといえます。 ⼀⽅、⼿術中や⼿術後に出⾎などが起こると、⿇痺や意識障害などの重篤な障害をきたすことがあります。そのため、術後に強度の頭痛が続いたり、意識障害や運動⿇痺などが出現した場合には、早急に CT 検査を⾏い、必要に応じて再⼿術を⾏います。 また、術後数⽇間は脳浮腫が強まり、神経症状が悪化することがありますが、多くの場合は、薬物療法で改善します。

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■治療

3.放射線治療

⾼エネルギーの X 線やそのほかの放射線を照射して、腫瘍細胞を障害する⽅法です。神経膠腫の治療において、放射線治療は重要な治療法の 1 つであり、⼿術後に、単独あるいは薬物療法と組み合わせて⾏われます。 1)局所照射

グレード 2〜4 の神経膠腫に対しては、局所放射線治療が⾏われます。腫瘍と腫瘍の浸潤(しんじゅん)部分に対して、1 回 1.8〜2.0 グレイの量を週に 5 回、6 週間かけて照射し、合計 54〜60 グレイの照射を⾏います。

2)IMRT(強度変調放射線治療)

転移性脳腫瘍は腫瘍と正常細胞との境界が⽐較的明瞭ですが、神経膠腫は浸潤性に発育し腫瘍の広がりも⼤きいため、ピンポイントに⾼エネルギーの放射線を照射する、ガンマナイフやリニアックを⽤いた定位放射線治療では腫瘍をコントロールすることは困難です。正常脳への照射を防ぐために、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる治療を⾏うことがあります。IMRT とは、コンピューターによる緻密な計算により、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射することで、がん組織には⾼い放射線量を与え、隣接する正常組織には線量を低く抑えることを可能にした治療⽅法です。

なお、陽⼦線治療や重粒⼦線治療※は頭頸部(とうけいぶ)がん(⽿⿐科領域のがん)に対してはよく⾏われますが、神経膠腫に対しては、これらの治療が通常の放射線治療よりも効果があるかどうかは不明です。

※ 陽⼦線治療・重粒⼦線治療︓陽⼦や重粒⼦(重イオン)などの粒⼦放射線のビームを病巣に照射する放射線治療の 1 つです。神経膠腫に対しては、先進医療として⾏われています。

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■治療

グレード 2 のびまん性星細胞腫、乏突起膠腫などに対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、⼿術診断後に早期放射線治療を⾏う場合と、再発あるいは腫瘍増⼤後に放射線治療を⾏う場合とで、⽣存期間が変わらないという結果が報告されました。全摘出されている場合は、⼿術のみで経過をみることも多いですが、神経膠腫の患者さんは、再発後に症状が悪化することもしばしばあるため、腫瘍が残っている場合にはグレード 2 の神経膠腫に対しても、早期に放射線治療が⾏われていることが多いです。

●副作⽤について 放射線治療後すぐにあらわれる副作⽤としては、放射線が照射され部位に起こる⽪膚炎、中⽿炎、外⽿炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐(おうと)、⾷欲低下などがあります。これらの症状は照射後約 1カ⽉で消失します。また、脳そのものの機能に影響が及ぶこともあります。中には、放射線治療が終了して数カ⽉から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もあります。このような影響は⾼齢者に少し多くなる傾向がありますが、全般に、患者さんによって副作⽤の程度は異なります。

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■治療

4.薬物療法

グレード 3 および 4 の神経膠腫に対しては、放射線治療に加え、薬物療法が⾏われます。グレード 2 の神経膠腫については、全摘出できれば経過をみることもありますが、放射線治療単独や、放射線+薬物療法により治療することもあります。 乏突起膠腫は星細胞腫に⽐べて薬物療法が効きやすい性質があります。

1)テモゾロミド

⼿術後に放射線治療と併⽤して 6 週間テモゾロミドを内服します。その後、維持療法として 5 ⽇間テモゾロミドを 4 週おきに内服します。 テモゾロミドは化学療法で⽤いられる経⼝の細胞障害性抗がん剤ですが、これまでの薬剤に⽐べて貧⾎、⽩⾎球減少、⾎⼩板減少などの⾻髄抑制が軽いのが特徴です。ただし、リンパ球減少が特徴的でニューモシスチス肺炎などの特殊な肺炎を合併するリスクがありますので、肺炎の予防薬を同時に併⽤するなど専⾨医とよく相談しながら治療することが必要です。

ほかの主な副作⽤は悪⼼(おしん)、吐き気、便秘などの消化器症状や倦怠感などですが、吐き気を予防する制吐剤(せいとざい)や緩下剤(かんげざい)などと服⽤することにより症状が軽減します。

2)ベバシズマブ

また、患者さん個々の状態に合わせて、⾎管の新⽣を阻害する薬であるベバシズマブを組み合わせた治療を⾏うこともあります。神経膠腫は腫瘍が⼤きくなるために、VEGF(⾎管内⽪細胞増殖因⼦)という物質を分泌して腫瘍への⾎管を発達させ、さらに脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こします。この薬は、VEGF に対する抗体であり、VEGF の働きを抑えることで腫瘍の⾎管新⽣を抑制し、脳浮腫やそれに伴う神経症状を改善します。

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■治療

3)脳浮腫に対する治療

脳浮腫に対しては、ステロイド治療が⾏われます。脳浮腫が強くなって頭痛や⼿⾜の⿇痺などさまざまな症状があらわれても、ステロイド治療を⾏うと脳浮腫が改善し症状が劇的によくなることがあります。しかしステロイドの効果は⼀時的なものです。腫瘍が進⾏した場合には、ステロイドが増量されますが、胃潰瘍(いかいよう)や糖尿病、感染(肺炎などを起こしやすくなる)、⾻折などの副作⽤に注意が必要となります。強い脳浮腫に対してはベバシズマブが効果的で、膠芽腫で⼿術後も強い神経症状がある場合には、初期治療から使⽤されます。

4)けいれん発作(てんかん)に対する治療

脳の神経細胞は、その⼀つ⼀つが適切な信号を送り出すことによって、体の働きを調節します。ところが、脳腫瘍や摘出⼿術をした後でも何らかの刺激が原因で、脳のある場所の神経細胞が⼀⻫に興奮して⼀度に信号を送ることがあります。このときに起こる発作をけいれん発作といい、発作が繰り返される場合に⼀連として、てんかんといいます。 刺激される脳の部位によって、脳とは反対側の⽚⽅の⼿または⾜が⾃分の意思に反して震える、⾔葉が話せなくなるなど、さまざまな症状が起こります。脳全体に神経細胞の異常な興奮が広がった場合は、意識を失い、全⾝の筋⾁が震えたり、つっぱったりする⼤発作となります。⼤発作の場合は、脳に酸素が⼗分⾏き渡らなくなり、重篤な事態を引き起こす可能性もありますので、すぐに医師にけいれん発作を⽌める処置をしてもらう必要があります。

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■治療

けいれん発作を予防するために、抗てんかん薬が処⽅されます。規則正しく服⽤を続けることで、発作を起こさずに⽣活することが期待されますが、抗てんかん薬を服⽤していれば絶対にけいれん発作が起きない、ということではありません。⾃らの判断で薬ののみ⽅を変えたり、薬をのむことをやめると、けいれん発作が起きる可能性があります。最近は、けいれんを起こしていない場合、抗てんかん薬による肝機能障害や中毒疹などのリスク、他の抗がん剤などの相互作⽤も考え、予防的に抗てんかん薬を処⽅しないこともあります。担当医とよく相談してください。けいれん発作のある⽅や起こす危険がある⽅は、⾞の運転はできません。

5.再発

再発とは、治療の効果により⽬に⾒える⼤きさの腫瘍がなくなった後、再び腫瘍が出現することをいいます。 腫瘍がどのように再発するかは腫瘍の種類によって異なりますが、多くの場合、もともと腫瘍があった場所に近い場所での再発(局所再発)が起こります。グレード 4 の膠芽腫は、初期治療が終わって数カ⽉から 1 年以内に再発することが多く、治療が困難となっていくのが現状です。再発した場合には、⼿術や、抗がん剤の変更・追加を⾏います。 再発した神経膠腫に対して、分⼦標的薬などの薬物療法が臨床試験として国内外で⾏われています。

しかし、これらは、現在、⼀部の限られた病院でのみ実施が可能です。 再発といってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。病気の広がりや、再発した時期、これまでの治療法などによって総合的に治療法を判断する必要があります。それぞれの患者さんの状況に応じて、治療やその後のケアを決めていきます。

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■療養

1.経過観察

治療を⾏った後の体調や再発の有無を確認するために、定期的に通院します。神

経膠腫では、定期的に MRI 検査による頭部の画像診断を⾏います。またテモゾロミドなどの薬物療法を継続している場合には、⽩⾎球や⾎⼩板が減少していないかどうか定期的に採⾎して調べる必要があります。ベバシズマブの場合には、⾼⾎圧や蛋⽩尿などが起きていないかも確認します。 神経膠腫の治療はまだまだ難しいことも多く、症状も⼀⼈ひとり異なります。新しい薬剤なども少しずつ開発され、臨床試験が⾏われており、神経膠腫の治療をしながらこれまで通りに仕事をしている⼈も多数います。 なお、神経膠腫の治療ではほとんどの場合、⼊院や定期的な通院、⾃宅療養が必要となります。このため、できれば周りの⼈に病気のことを伝え、理解と協⼒を得ておきましょう。

詳しい情報は「がん情報サービス」をご覧ください。

●「神経膠腫(グリオーマ)」参考⽂献

1)The Committee of Brain Tumor Registry of Japan. Report of brain tumor registry of Japan (2005-2008) 14th edition. Neurologia medico-chirurgica 2017; Suppl: 57

2)⽇本脳腫瘍学会編.⽇本脳神経外科学会監.脳腫瘍診療ガイドライン 1 2016 年版 成⼈膠芽腫・成⼈転移性脳腫瘍・中枢神経系原発悪性リンパ腫,2016 年,⾦原出版

3)臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約 第 4 版,2018 年,⾦原出版 4)International Agency for Research on Cancer. WHO Classification of Tumours of

the Central Nervous System (WHO Health Organization Classification of Tumours), 2016, World Health Organization

5)国⽴がん研究センター内科レジデント編.がん診療レジデントマニュアル 第 7 版,2016年,医学書院

6)抗がん剤報告書︓塩酸プロカルバジン(脳腫瘍)、硫酸ビンクリスチン(脳腫瘍), 薬事・⾷品衛⽣審議会医薬品第⼆部会(平成 16 年 8 ⽉ 27 ⽇)

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■わたしの療養⼿帳

記⼊⽇ 年 ⽉ ⽇ あなたの病気はどのように説明されましたか︖ あなたが担当医から受けた説明について、メモしておきましょう。 ●誰から ------------------------------------------------------------------------------- ●⼀緒に説明を聞いた⼈ ------------------------------------------------------------------------------- ●何のがんか(病名)、がんの部位 ------------------------------------------------------------------------------- ●どの検査結果からわかったのか 例︓内視鏡検査 ------------------------------------------------------------------------------- ●がんの⼤きさや広がり 例︓直径約3センチ ------------------------------------------------------------------------------- ●転移の有無、転移の場所 例︓リンパ節への転移は不明 ------------------------------------------------------------------------------- ●病期 例︓ステージ 2 と考えられる ------------------------------------------------------------------------------- 記⼊⽇ 年 ⽉ ⽇ 病気についての説明は⼗分に理解できましたか︖ よくわからないことがあったら、遠慮しないでわかるまで担当医に質問してみましょう。 わからないことはメモに書き出して、次回の診察のときに持参しましょう。 ● 説明でよくわからなかったこと 例︓どのくらい⼊院が必要か ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ●質問の例: 質問したいことはどのようなことですか? □ ○○がんと⾔われましたが、それは、どの検査でわかったのですか︖ □ 私のがんは、どのくらい進⾏していますか︖ □ 転移はありますか︖ どこに転移していますか︖

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■わたしの療養⼿帳

記⼊⽇ 年 ⽉ ⽇ 持病や、のんでいる薬を書き出す 治療中の病気やのんでいる薬、気になる症状があるかどうかによって、がんの治療法も変わって きます。持病やのんでいる薬があったら、正確に書き出し、担当医に伝えましょう。 ●現在治療中の病気 例︓糖尿病と⾼⾎圧 ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ●かかっている医療機関 例︓Aクリニック、⽉に1 回、○○医師 ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ●のんでいる薬 例︓朝、○○を 1 錠 ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ●気になる症状 ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- 記⼊⽇ 年 ⽉ ⽇ どのような治療法を勧められましたか︖ 担当医から勧められた治療法について、それぞれにどのような効果や副作⽤などがあるのか 書き出してみましょう。複数の治療法についての説明を受けた場合には、それぞれについて 書き出して、⽐べてみることが⼤切です。 ●治療法1 ------------------------------------------- -------------------------------------------●期待される効果 ------------------------------------------- -------------------------------------------●副作⽤や後遺症 ------------------------------------------- -------------------------------------------●その他、気になること -------------------------------------------

●治療法2 ------------------------------------------- -------------------------------------------●期待される効果 ------------------------------------------- -------------------------------------------●副作⽤や後遺症 ------------------------------------------- -------------------------------------------●その他、気になること -------------------------------------------

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■わたしの療養⼿帳

記⼊⽇ 年 ⽉ ⽇ 治療においてあなたが⼤事にしたいことは何ですか︖ それぞれの治療法には特徴があり、どの⽅法がよいかは、あなたが治療に求めることによっても 変わってきます。それを整理するために、あなたが⼤事にしたいことをあげて、治療法を選ぶ ときの参考にしましょう。 ●あなたが⼤事にしたいこと、優先したいこと 例︓・体への負担が少ないこと ・通院で治療ができること ・近くの病院で治療が受けられること ・⼊院の期間が短いこと ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------------------- わからないことは担当医に質問してみましょう。また、家族など、あなたの⼤切な⼈に考えを聞くことで、⾃分の気持ちの整理になるかもしれません。 ●質問の例: 質問したいことはどのようなことですか? □ 私が受けられる治療法には、ほかにどのようなものがありますか︖ □ 私の状態で、標準治療*はどれですか︖ □ どの治療法を勧めますか︖それはなぜですか︖ □ 治療にかかる期間と、具体的な治療スケジュールを教えてください。 □ 治療にかかる費⽤の⽬安はどのくらいですか︖ □ 私が受けられる臨床試験はありますか︖ □ 治療は外来で受けられますか︖⼊院が必要ですか︖ □ どのような副作⽤や後遺症が予想されますか︖ □ 緩和ケアを受けたいのですが、どうすればよいですか︖ □ 痛みや吐き気、だるさなどがあるので、和らげる⽅法はありますか︖ □ 家族や家庭の⽣活について、相談できますか︖ *標準治療︓ 治療効果・安全性の確認が⾏われ、現在利⽤可能な最も勧められる治療のこと

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●協⼒者(五⼗⾳順)︓ 沖⽥ 典⼦(⼤阪医療センター 脳神経外科) 永根 基雄(杏林⼤学医学部付属病院 脳神経外科) 成⽥ 善孝(国⽴がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科)

2018 年 7 ⽉作成(118E-201807-3)