海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった 40 ......

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95 科学・技術研究 第 8 巻 2 号 2019 年 Union Press 総論 海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった 40 年間の軌跡 甲斐 徳久(大分大学 理工学部, [email protected]Forty years-trace on mercuryand seleniumin marine ecosystem Norihisa Kai (Faculty of Science & Technology, Oita University, Japan) 要約 今日に至るまでの足掛け40年間、一貫して海洋生態系における「水銀」および「セレン」を対象として、環境・生物分析化学 的ならびに微量元素栄養学的視点からのプロジェクト研究を行ってきた。当初の研究では、主要海洋生態系の両元素をそれぞ れ定量し、それぞれのモル基準で換算したモル比(Se/Hg)が自然蓄積される水銀濃度の増大とともに著しく減少し、ほぼ1 に漸近することを認めた。環境分析化学的研究では、海水、懸濁物、沈降粒子および底泥中の「セレン」を状態分析すること により、当該海域における物質の鉛直循環および海洋環境を予察した。生物分析化学・微量元素栄養学的研究では、養殖魚で 「水銀」蓄積が抑制されるとともに、「セレン」含有酵母飼料を投与することにより、明瞭な肝機能促進が認められた。加え て、魚類非可食部の「水銀」の安全性とともにセレンの効能を利用した健康食品の開発の基盤が期待された。 キーワード 水銀,セレン,水産物,無毒化,有効利用 1. はじめに 「水銀」と「セレン」との出会いは、九州大学理学部化学科で の学位取得後であり、国立研究開発法人 水産研究・教育機 水産大学校(当時農林水産省所管)へ赴任当初配属された研 究室における研究であった。一連の「マグロ類の水銀および セレン含有に関する研究」において、暫定基準をはるかに越 える高濃度で水銀を含有する天然のマグロ類筋肉中に見出さ れたことに端を発している。水俣病発症当時、患者の水銀蓄 積部位にセレンをともなっていることが明らかとなって以来 Nishigaki and Harada, 1975)、これまでセレンについては、 1 からわかるように、複数の他の微量金属元素と相互作用 を示すことが知られていたので、水銀の無毒化に何らかの寄 与をしていることを伺わせた(Imura and Naganuma, 1978)。 その後、電子顕微鏡観察等から、組織に黒色の無毒化物と して沈着している物質は、セレン化水銀 HgSe {Se/Hg( モル比 ) = 1} であることが判明した。このことを皮切りに、in vitro 実験により、図 2 のようなセレンによる水銀の無毒化機構が 提案されていた(Iwata et al., 1982)。 以上のような背景から、プロの研究者として上記プロジェ クト研究を含め、以下の主要プロジェクト研究に携わった。 2. 主要プロジェクト研究 2.1 マグロ類の水銀およびセレン含有に関する研究 水銀は、一般に図 3 で示されるように、同一種であれば成 長とともに、また食物連鎖内では、低次から高次栄養段階の 種に至るにつれて蓄積する特性があることが知られている (喜田村等, 1975; 山県, 1978)。 そこで、勤務先が保持する 2 隻の練習船の遠洋航海を駆使 して、世界の主要海域における海水から始まり、プランクト ンからマグロ類に至るまでの主な海洋生態系の水銀とセレン をそれぞれ定量した。その結果、図 4 に示すように、それぞ れのモル基準で換算したモル比(Se/Hg)が自然蓄積される水 銀濃度の増大とともに著しく減少し、ほぼ 1 に漸近すること を認めた(上田・武田, 1979; 1983;武田等, 1993;甲斐他, 1983Kai, 1986; 1987; 1992)。 このことから、種々の食物栄養段階に位置する海洋生物が、 1:セレンを中心とした他微量金属元素との相互作用 Zn Co Cd Bi Hg Sn Mn Te Pd W Mo Tl Cr Ni Fe Au As Pt Cu Ag Pb Se 2:セレンによる水銀の無毒化の立証 SeO3 2- GSH* GSSeSG GSH H2Se H2Se+2 CH3Hg + (CH3HG)2Se (CH3)2Hg+HgSe SeO3 2- GSH GSSeSG Hg 2+ (GSHgSeSG)** GSSG*** + HgSe セレンによるメチル水銀の無毒化 * 還元型グルタチオン セレンによる無機水銀の無毒化 ** 仮想錯体 *** 酸化型グルタチオン

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  • 95科学・技術研究 第 8 巻 2 号 2019 年Union Press

    総論

    海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった 40年間の軌跡

    甲斐 徳久(大分大学 理工学部, [email protected]

    Forty years-trace on “mercury” and “selenium” in marine ecosystem

    Norihisa Kai (Faculty of Science & Technology, Oita University, Japan)

    要約今日に至るまでの足掛け40年間、一貫して海洋生態系における「水銀」および「セレン」を対象として、環境・生物分析化学的ならびに微量元素栄養学的視点からのプロジェクト研究を行ってきた。当初の研究では、主要海洋生態系の両元素をそれぞれ定量し、それぞれのモル基準で換算したモル比(Se/Hg)が自然蓄積される水銀濃度の増大とともに著しく減少し、ほぼ1に漸近することを認めた。環境分析化学的研究では、海水、懸濁物、沈降粒子および底泥中の「セレン」を状態分析することにより、当該海域における物質の鉛直循環および海洋環境を予察した。生物分析化学・微量元素栄養学的研究では、養殖魚で「水銀」蓄積が抑制されるとともに、「セレン」含有酵母飼料を投与することにより、明瞭な肝機能促進が認められた。加えて、魚類非可食部の「水銀」の安全性とともにセレンの効能を利用した健康食品の開発の基盤が期待された。

    キーワード水銀,セレン,水産物,無毒化,有効利用

    1. はじめに 「水銀」と「セレン」との出会いは、九州大学理学部化学科での学位取得後であり、国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産大学校(当時農林水産省所管)へ赴任当初配属された研究室における研究であった。一連の「マグロ類の水銀およびセレン含有に関する研究」において、暫定基準をはるかに越える高濃度で水銀を含有する天然のマグロ類筋肉中に見出されたことに端を発している。水俣病発症当時、患者の水銀蓄積部位にセレンをともなっていることが明らかとなって以来(Nishigaki and Harada, 1975)、これまでセレンについては、図1からわかるように、複数の他の微量金属元素と相互作用を示すことが知られていたので、水銀の無毒化に何らかの寄与をしていることを伺わせた(Imura and Naganuma, 1978)。 その後、電子顕微鏡観察等から、組織に黒色の無毒化物として沈着している物質は、セレン化水銀HgSe {Se/Hg(モル比 )

    = 1}であることが判明した。このことを皮切りに、in vitroの実験により、図2のようなセレンによる水銀の無毒化機構が提案されていた(Iwata et al., 1982)。 以上のような背景から、プロの研究者として上記プロジェクト研究を含め、以下の主要プロジェクト研究に携わった。

    2. 主要プロジェクト研究2.1 マグロ類の水銀およびセレン含有に関する研究 水銀は、一般に図3で示されるように、同一種であれば成長とともに、また食物連鎖内では、低次から高次栄養段階の種に至るにつれて蓄積する特性があることが知られている(喜田村等, 1975; 山県, 1978)。 そこで、勤務先が保持する2隻の練習船の遠洋航海を駆使して、世界の主要海域における海水から始まり、プランクトンからマグロ類に至るまでの主な海洋生態系の水銀とセレンをそれぞれ定量した。その結果、図4に示すように、それぞれのモル基準で換算したモル比(Se/Hg)が自然蓄積される水銀濃度の増大とともに著しく減少し、ほぼ1に漸近することを認めた(上田・武田, 1979; 1983;武田等, 1993;甲斐他, 1983;Kai, 1986; 1987; 1992)。 このことから、種々の食物栄養段階に位置する海洋生物が、図1:セレンを中心とした他微量金属元素との相互作用

    ZnCo

    Cd

    Bi

    Hg

    Sn

    Mn

    Te

    Pd

    W

    MoTl

    CrNiFe

    Au

    As

    Pt

    Cu

    Ag

    Pb

    Se

    図2:セレンによる水銀の無毒化の立証

    SeO32-GSH*

    GSSeSGGSH

    H2Se

    H2Se+2 CH3Hg+ (CH3HG)2Se

    (CH3)2Hg+HgSe

    SeO32-GSH

    GSSeSG

    Hg2+

    (GSHgSeSG)**

    GSSG*** + HgSe

    セレンによるメチル水銀の無毒化* 還元型グルタチオン

    セレンによる無機水銀の無毒化** 仮想錯体*** 酸化型グルタチオン

  • 96 Studies in Science and Technology, Volume 8, Number 2, 2019

    食物連鎖により水銀蓄積されてゆく過程において、生物生来の自己防御の一つとして体内へセレンの捕捉を行い、1 : 1 のモル比からなるセレン化水銀(HgSe)を生成し(Ganther et al., 1972)、水銀を無毒化することを予察した。

     一方で、セレンはすでに必須微量元素として知られており(Schwarz and Foltz, 1957)、さらには過酸化物分解酵素の一つであるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)の構成元素として存在することが報告されている(Rotruck et al., 1973)。加えて、筆者等が、魚類血液中にセレンがきわめて高濃度で存在することを、当時国内で初めて報告して(Kai et al., 1988;甲斐他, 1989)以来、今日までに図5に示されるような様々な機能を有することが報告されて来ている(Fernandez et al., 1999;Nanri et al., 2011;山下他, 2013)。

     前述の研究までは、セレン分析は常法の蛍光分光法で行い、試料の分解から測定に長時間要していた折、平成に入って、電子捕獲(ECD)型ガスクロマトグラフィーによる化学状態別定量がpptレベルで可能となった(Toei and Shimoishi, 1981)。そこで、早速この方法の水圏生物・環境試料分析への応用について、特に下石先生(当時岡山大学理学部化学科)からのアドバイスを賜り、新たに、微量生体関連元素としてのセレンを指標とした、環境・生物分析化学的および微量元素栄養学的視点からの研究を行ってきた。 以下に、校費研究以外に他省庁、国内外の大学および大手企業と行った主なプロジェクト研究の概要を示す。

    2.2 環境分析化学的研究2.2.1 海洋大循環の実態解明と総合観測システムに関する国際共同研究 - 海洋生物による鉛直物質輸送の実態解明 -I(1990~ 1993)とその関連研究(~ 2000) 1990年度から、当時科学技術庁(現文部科学省)振興調整費による上記総合研究のプロジェクトチームとして、水産大学校初の他省庁主査の研究に参画することができた。 具体的には、その小課題において、10機関のワーキンググループとともに、鉛直物質輸送の主役を沈降粒子とすることを共通認識のもとに、北海道道東沖深層(水深1,100 mと3,500 m)から捕集した沈降粒子および同海域で採取した海水ならびに浮遊懸濁物のセレンおよびヒ素の化学状態別分析を行った。また、同時に、原子吸光法等による各種無機元素の分析を行い、当該海洋環境を予察した(田川他, 1994;Hanaoka et al., 1995; 1997)。なお、セジメントトラップを用いた沈降粒子の捕集方法のポンチ絵を(図6)に示した。

    図3:水銀の蓄積性

    水銀レベル

    食物栄養段階

    微生物によるメチル化

    植物プランクトン

    大型魚類

    小型魚類

    動物プランクトン

    メチル水銀(CH3Hg+)

    無機水銀(Hg2+)

    私たちの体内に存在するセレンには以上のような効能があります。

    セレン

    老化防止

    糖尿病予防

    神経痛に効果

    美肌をつくる(コラーゲンとの関わり?)

    水銀などの重金属の無毒化

    脱毛、白髪にも効果

    白内障予防

    図5:セレンの機能性

    図4:海洋生態系とSe/Hg(モル比)

    100

    10

    1

    Se/H

    g (モ

    ル比

    ) (対

    数ス

    ケー

    ル)

    アサリ(高知産) 233.8

    アサリ(有明産) 125.8

    海水 84.7

    マイワシ 56.5

    プランクトン 33.0

    マアジ 28.4

    マサバ 22.6バショウ 20.3

    スケトウ 16.9マカジキ 16.7フウライ 14.6

    トラフグ 10.9トビウオ 10.2マダイ 9.8

    キハダ 5.5ブリ 5.2

    ビンナガ 3.4

    ホシザメ 2.4

    メバチ 2.0

    シロザメ 1.5

    クロカワ 1.1

    低次

    高次

    食物栄養段階

  • 97科学・技術研究 第 8巻 2号 2019 年

    甲斐 徳久:海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった40年間の軌跡

     沈降粒子の具体的な捕集方法を、以下のように概略する。 当時水産庁北海道区水産研究所(2016年から国立研究開発法人 水産研究・教育機構 北海道区水産研究所)調査船により、北海道道東沖に係留(図6:右)した自作のセジメントトラップ(図6:左)(ダブルコーン型、開口部直径および面積は各々0.60 mおよび0.124 m2)により捕集した。係留期間としては、一期間40日(最終日のみ26日間)、全八期間(計306日間)とした。各期において、2つのセジメントトラップには、約500 ml容のポリエチレンベッセルに防腐剤を添加したものと添加してないものにそれぞれ分けて、あらかじめコンピュータ制御した下部の捕集部位に装着し、初年度は水深約1,100 m位置で、翌年度は水深3,500 m位置でそれぞれ係留し、約1年間沈降してくる粒子を経日的に捕集した。 捕集方法の原理は、きわめてシンプルであり、図6(右)で示されるように、セジメントトラップの固定フレーム最下部に切り離し装置を装着したレール(重りの代わりとして廃棄処分された鉄道用のもの)を海底に留め、約1年間の係留期間終了後ほぼ同海域の海上から、調査船によりマイクロ波を送り、切り離し装置を解くことにより、係留ブイの浮力によって海上まで浮上させた上、目視により捕集するものであった。 このように、きわめてリスクの大きな実験ではあったが、当時の海洋化学の分野でのフィールド実験では、常法であった。しかしながら、このような実験は初めての経験であり、特に水深3,500 mでの約1年間の係留には、多くの予測できない海中障害(係留期間に大規模な釧路沖地震あり)等で回収できない可能性が大であったが、何とか回収に成功し、貴重な試料を得た。 この研究を皮切りに、1993年度には、本校練習船「耕洋丸」世界一周航海を利用して、様々な海域で採取した海水および浮遊懸濁物中のセレンの状態別分布を明らかにし(甲斐他, 1993; 1994;Kai et al., 2000)、1999年度には、同船の遠洋航海を利用して、南太平洋大学との共同調査海域であるフィジー諸島近海の海水および底泥におけるセレンの化学状態別分析を行い、これまで知られていなかった当該海域環境を環境化学的視点から予察した。 一方、2000年1月には、九州大学農学部との共同研究により、本校練習船「天鷹丸」の調査航海を利用して、対馬海峡における有機スズの汚染状況を調査した。この研究を機に、九州大学農学部チームが実施する「有機スズの二枚貝に及ぼす影響」に関する研究とその関連研究の共同研究者の一人となった

    図6:セジメントトラップを用いた捕集方法のイメージ図

    (Inoue et al., 2006; 2007;大嶋他, 2008)。

    2.3 生物分析化学・微量元素栄養学的研究2.3.1 魚類組織の脂質過酸化に及ぼす高濃度セレン含有飼料酵母(商品名:トヨコーボ)の抑制効果(1991 ~ 1995)とその関連研究(~ 2006) 一般に、食餌によって生成する活性酸素による生体内過酸化に対して図7のような防御機構がはたらくことが知られている。養殖魚は、天然魚と比較して餌料由来の脂質が蓄積しやすいことから、結果として脂質過酸化が進行し、死に至る(菊川, 1994;井岡・大島, 2002)。

     そこで、この脂質過酸化を抑えるための飼料の開発のため、1991~ 1995年度まで、㈱旭化成受託研究費による標記の共同研究チームとして宮崎大学農学部とともに参画した。酵素抗酸化剤の一つであるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)がセレンを必須成分としていることから、有機セレンを高濃度に含有する酵母の飼料への補足が、魚体内の抗酸化システムに対し、GSH-Px活性との関連でどのような作用をしているかを明らかにすることを目的とした研究であった。 具体的には、当該酵母を投与後の種々の魚類組織におけるセレンの分析、GSH-Px活性測定等から、魚類における微量セレンの摂取が明瞭な肝機能促進をもたらすことを明らかにした(Murata et al., 1991; 1992; 1993; 1994)。 この研究と前後して実施してきたマグロ・カジキ類、養殖ブリ等の海産魚やコイ、ティラピア等の淡水魚血液におけるセレン(酸化状態別)、総水銀の分析(Kai et al., 1992; 2002;甲斐他, 2004)に加え、GSH-Px活性を測定することにより、両元素の分布とGSH-Px活性の関連性を考察した(Kai et al., 1995; 1996; Nagai et al., 1999)。ここで特筆すべきこととして、魚類血液のGSH-Px活性測定は、当時国内外で初めての試みであったことを申し添える。 この当時の勤務先を取り巻く情勢は非常に多難であり、全国の大学校の民営化等が騒がれる中、独立法人化(2001年4月)が決定した。さらには、その第一期中期研究期間半ばでの講座改組(資源理化学講座から食品安全学講座へ配置換え)もあったが、これまでの研究をもとに、新たに食品としての安全性(Safety)を出発目標として、その基礎となる精密分析用機器(超純水製造装置、全元素(CHONS)分析装置、ガスク

    図7:脂質過酸化に対する生体内防御機構

    酸化

    生体に悪影響

    高度不飽和脂肪酸(魚類の必須栄養素)

    生体内脂質過酸化

    活性酸素

    グルタチオンペルオキシダーゼ誘導化

    無毒化

    ビタミン C、E

    抗酸化作用

  • 98 Studies in Science and Technology, Volume 8, Number 2, 2019

    ロマトグラフィー(ECD)(セレン化学種別分析)、マイクロ波湿式分解装置(MULTI WAVE)およびフローインジェクションを連動した冷原子吸光法(FIAS-CV-AAS)(水銀分析)(Aduna de Paz et al., 1997)、ICP)を駆使して、新たな側面から水銀およびセレン両元素の挙動解明の研究に着手した。 初めに、生体内でのセレンの状態別分布と代謝を明確にするため、異なった棲息環境下でのセレンの化学状態変化について実施した。結果として、自然環境下の水棲生物種には、概ね低酸化状態のセレン(主に -2価の有機体セレン)化学種が高酸化状態のセレン(6価セレン)化学種より優位に存在する一方で、飼育環境下の生物種体内のセレン分布は真逆であり、さらに両環境下に棲息する同種間においても、同様なセレン分布の差が認められた(Kai et al., 2004; 2006; 2007; 2008; 2009; 2010; 2011; 2012)。 以上の結果と他研究者の研究結果(Gasiewicz and Smith, 1978; Cappon and Smith, 1981)をもとに、生体内におけるセレンの代謝について図8に概略した。すなわち、この図は、生体内に取り込まれたセレンが、6価セレン(Se6+)→ 4価セレン(Se4+)→ - 2価セレン (Se2-)(最終生成化学種:H2Se)へと還元代謝され、生体維持のためにGSH-Pxの構成成分(セレノシステイン)として生体内に存在し、また、一方で生体防御のためセレンタンパク(後にセレノネイン(図9)として命名、Yamashita et al., 2013)が水銀等の重金属と直接結合し、水銀毒性を無毒化の上、排出されることを示している。 すなわち、棲息環境が異なると、同種でも生体内でのセレンの還元代謝速度が異なり、定期的に一定量の餌料を摂食している飼育環境下の生物種の方が、その速度が速く、言い換えると水銀と結合したセレンは排出されやすいことが伺え、結果として生体内では、高酸化状態のセレン(6価セレン)化学種が低酸化状態のセレン(主に -2価の有機体セレン)より優

    図9:セレノネインの化学構造

    HSe

    N

    HN

    H

    N+

    O

    O-

    selenoneine(2-selenyl-N,N,N-trimethyl-L-histidine)

    位に存在することを結論づけた。さらに、既に報告した海洋におけるセレンの挙動(甲斐他, 1993; 1994;Kai et al., 2000)をもとに、海洋生態系におけるセレンの挙動について総括的に図10を提案した(甲斐他, 2000;高橋他, 2001)。 このように、水圏環境における主に水銀およびセレンの動態に的を絞ったフィールド研究の経験とその後の食品機能学講座への再度の配置換えがあったことを踏まえ、2014年に大分大学に転出して以来、今日まで大分県が臨む豊後水道を含む水圏環境はいうまでもなく、食・生活環境における水銀についてはその安全性の確認とともに、セレンについては特に非可食部からの有効利用を目的とした基礎研究を行った。

    2.3.2 水産物非可食部からのセレンの有効利用の可能性に関する研究(2011 ~現在) 具体的には、大分県でブランド化されている天然の特産魚としてのマアジ(関アジ)、マサバ(関サバ)、タチウオおよびハモを対象とした研究を実施した。(図11、図12) 図11から、セレンレベルについては、すべての種で普通筋と比較して鱗、外皮および内皮でほぼ同レベルかやや高い結果が得られた。一方、水銀レベルはその真逆であり、特にマアジ鱗およびマサバ外皮で著しく低いレベルであった。さらに図12から、水銀レベルに対するセレンレベルのモル換算比(Se/Hg)は、すべての種で普通筋より、有意に高く、特にマアジ鱗およびマサバ外皮で著しく高いことが判明した。すなわち、これら特産魚についても、プランクトンフィーダーとしてのマアジ鱗およびマサバ外皮にこれまでと同様な傾向が認められ(Kai et al., 2013; 2014)、水銀の安全性とともに(Storelli and Marcotrigiano, 2002;Kehrig et al., 2009)、これら非可食部からのセレンの有用性が期待された(Kai et al., 2013; 2014; 2019)。一方で、貝類(二枚貝、巻貝)および甲殻類(エビ類)非可食部としての中腸腺および外骨格にはセレンの有用性は認められなかった(Kai et al., 2017; 2018)ことを付記する。 以上のように、転出後における「大分県特産魚非可食部からのセレンの有用性」の研究結果も含め、魚類非可食部からのセレンの効能を利用した健康食品の開発の基盤が創れた。一方で、普段廃棄されがちな鱗、外皮等を有効利用することで、地域の食・環境問題の改善にも繋がることが期待された。図8:生体内におけるセレンの代謝

    タンパクメチオニン残基

    S

    S

    Se

    O

    O

    タンパクシスティン残基

    S

    S

    Se O

    酸化(棲息環境?)

    タンパクGSH-Px H2Se

    S-HgSe-S

    SeH SeHg

    Se6+

    Se4+

    Se2-

    還元

    還元

    タンパク中の隣接したチオール基と結合

    タンパク中の隣接したチオール基と結合

    タンパク中の隣接したチオール基の Sと置換

  • 99科学・技術研究 第 8巻 2号 2019 年

    甲斐 徳久:海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった40年間の軌跡

    図10:海洋生態系におけるセレンの挙動

    大気圏

    水圏 水圏吸収 排出

    高次栄養段階生物

    低次栄養段階生物

    補食

    溶存化学種 分解化学種生体内存在化学種

    6 価セレン

    水圏からの除去

    SeO42-(表層で優位)

    揮発性の (CH3)2Se の生成

    微生物によるメチル化

    SeO32-(深層で優位)

    鉄やマンガンなどの酸化物と不溶性錯体生成

    沈降・堆積

    好気的環境

    水深増大

    嫌気的環境

    有機体セレン

    隣接したチオール基を持つタンパクと直接結合

    タンパク

    メチオニン残基?S

    SSe

    O

    O

    還元酸化

    (棲息環境?)

    還元

    酸化

    (海洋環境)

    微生物による分解

    深層で微量に存在する重金属イオンと不溶性金属セレン化物生成

    セレノシスティン型(代謝されない)

    SeO42-

    4 価セレン

    隣接したチオール基を持つタンパクと直接結合

    タンパク

    システィン残基?S

    SSe O

    (Se0)

    H2Se

    還元

    還元還元

    有機体セレン

    含硫タンパク中のチオール基の S と置換 (Se2-)

    SeO32-

    微生物による分解

    沈降・堆積

    有機体セレン

    HSe

    タンパク

    SHHS

    GSH-Px S-HgSe-S

    Hg, Cd などの重金属と結合

    セレン化物として解毒

    微生物による分解

    図11:大分県特産魚における水銀とセレンレベル

    2.5

    2.0

    0.5

    1.0

    0.5

    0

    セレ

    ンレ

    ベル

    (µg/

    g)

    マアジ マサバ タチウオ ハモ0.20

    0.15

    0.10

    0.05

    0普通筋 鱗 普通筋 外皮 普通筋 内皮 普通筋 外皮

    水銀

    レベ

    ル (µ

    g/g)

    普通筋 鱗 普通筋 外皮 普通筋 内皮 普通筋 外皮

    マアジ マサバ タチウオ ハモ

  • 100 Studies in Science and Technology, Volume 8, Number 2, 2019

    3. おわりに 本総論で、これまで関わった主なプロジェクト研究の概要と今後の展望について紹介した。なお、他の関連研究として、2003年度に入り、財団法人やまぐち産業振興財団研究助成金によるヤーコンビネガーの製法研究と商品化の一環として、㈱三井ヘルプのヤーコンジュース製造特許、山口県産業技術センターの所有する酢製造技術および前勤務先の栄養成分評価技術の組合せで山口県の特産品化を図ることを目的とした基礎研究を行った。水銀およびセレン分析の結果、実験室製造品については有用成分としてのセレンおよび毒性成分としての水銀濃度は、いずれも検出限界(1 ppb)かそれ未満であった。一方、工場製造品については , 前者が2.60±0.15 ppbであり、後者は検出限界かそれ未満であった。さらに、安全性の指標としてのSe/Hg(モル比)≫1により、原料由来あるいは製造過程における水銀等の重金属汚染ほとんど認められない上、食品の安全性が確証された。 また、2010年度に入り、いなば食品㈱より、近々にもペットフードに使用されるマグロ中の水銀レベルに国からの規制がかかる可能性があるとの提示があった。会社存続の危機もあるとして、これに対し、これまでの研究成果をもとに、セレンによる水銀の無毒化機構とその安全性について、ペットフード協会有志とともに文書化(甲斐他, 2012)して出版した上で、会社側関係者とともに農林水産省および厚生労働省担当官への説明を行った。結果として、ペットフード中の水銀については、基準値を設けるのではなく、行動規範を作成する方向で両省庁と意見が一致する見通しとなった。 一方、上記研究と並行して、1994年以来、前勤務先において、田上保博教授(2015年3月退職)との間で「天然色素および生理活性化合物」関連研究および永井毅助手(在職当時、2004年転任)との間で「食品とその機能性」関連研究の共同研究者の一人として参画した。 なお、現在、大分大学からの退職を前にして、山形大学農学部 永井毅教授との間で「地域食材を生かした食品開発」関連の共同研究者の一人として参画している。

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    図12:大分県特産魚におけるSe/Hg(モル比)

    800

    700

    600

    500

    400

    300

    200

    100

    0普通筋 鱗 普通筋 外皮 普通筋 内皮 普通筋 外皮

    Se/H

    g (モ

    ル比

    マアジ マサバ タチウオ ハモ

  • 101科学・技術研究 第 8巻 2号 2019 年

    甲斐 徳久:海洋生態系における「水銀」および「セレン」に関わった40年間の軌跡

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    (受稿:2019年9月10日 受理:2019年9月24日)