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2017/4/13
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法工学by初村一郎
法工学
兵庫県立大学 経済学部 初村 一郎
2017年4月20日
第2回
リスクマネジメント・クライシスマネジメントと法工学
リスクマネジメント (狭義)
リスクを正しく 合理的に予測
目的:予防
クライシス マネジメント
事故発生直後 科学的に対処
目的:事故の収束
法工学
ものづくりプロセス 事後対応 個客使用中 事故発生
リスクコミュニケーション
リスクを科学的知見を含めて社会に発信し、 社会における合意形成の活動に貢献する
目的 : リスクの共有と社会の啓蒙
法工学
法工学
法工学
2017/4/20 初村一郎
ハインリッヒの法則
1:29:300は事例によって異なるかもしれません。 1:10:100かもしれない。 重要なことは、起こった問題に「共通原因」を探し、 「原則による解決」を図るという姿勢である
1つの重大事故
2017/4/20 初村一郎
ハインリッヒの法則
表面化する重大事故=1件 軽度の事故=29件 ひやっとしたこと =300件
重大事故にはならなかった329件は、放置されれば、確率的な必然で、次の事故を生みます。
小さなことを放置すれば「事故は必然」であると認識しておかねばなりません。
例)自動車保険では、ある人が一件の重大な交通事故を起こす裏には、29件の軽度の事故があり、300件の事故寸前のひやっとした状況があったはずだと考える
2017/4/20 初村一郎
組織のリーダーとしてのリスクマネジメントと法工学
◆組織のリーダーは、技術を伴った製品を開発・販売し 社会に貢献する役割を担っている。
技術には個客・社会の安全・安心を確保する「義務」も ある。
◆万一その製品起因により事故が発生した場合、 リーダーは果敢に即応しなければならない。
◆さらに、この一連のリスクに関わる情報を社会に 適宜共有し啓蒙する役目も担う。
リーダーとして、この全体のリスクマネジメントを 法工学的観点を加えて、修得していくことを目指す
2017/4/20 初村一郎
第2回: 法工学の意味・学ぶ目的 リスクの定義・リスク評価・リスクマネジメント
2017/4/20 初村一郎
安全とは
安全とは 受容できないリスクがない事 =そこまでリスク低減されたもの *世の中にリスク=0 はありえない
2017/4/20 初村一郎
受容できないリスクがないとは
◆今、5万人の市に救急車が3台あり、 必要時が重なること=4台必要なことは殆どないとする。 即ち、市民はこれで緊急時に十分対応できている としている。
=>リスクを受容している=安全と考える
例)
3台 / 5万人 ➡ これで十分対応可能
2017/4/20 初村一郎
◆これが、1台/5万人 ならば必要時の重複が起こる =リスクが受容できない=安全とは言えない
1台では 足りないヨ
◆6台ならば、税金の無駄遣いと考えるだろう =安全対策は過剰と考える
TOO MUCH!
安全とは 2017/4/20 初村一郎
危害の発生確率と その危害の大きさの 組み合わせ
リスクとは 2017/4/20 初村一郎
発生確率・頻度
危害の大きさ
R-MAP (リスクマップ) 2017/4/20 初村一郎
危害とは
製品バリ
感電 圧迫 骨折
切断 異物混入
中毒
アレルギー
窒息 火傷 ・・・
2017/4/20 初村一郎
ハザードから危害に至るシナリオ
窓
建物 壁
1.ハザードの存在
2.危 険な 状況
3.出来事の発生
4.回避の可能性
5.危害の発生
道路
事故の原因は
各プロセスに含まれる
2017/4/20 初村一郎
Hazard(ハザード)とは
Hazard(ハザード)とは 危害の源
鋭利なエッジ
鼻や喉をふさぐ(特に子供) 空気を通さない
小さな部品
子供が部品を飲み込んで 喉に詰まり気道を塞ぐ
エッジに触れ皮膚が裂ける
危険要素 (製品特性)
障害例
危害
気道閉塞
窒息
切り傷・裂傷
キャップ
2017/4/20 初村一郎
危害・損傷発生の要因
故障や誤使用時 ソフトウエアバグ
化学反応 想定外の組合せ使用 使用環境からの影響
操作ミス 不適切な取扱い 判断ミス 表示ミス
2017/4/20 初村一郎
危害発生のメカニズム
人が危害・障害を被る
危険なエネルギーや物質が露出
人や物に作用
出来事発生
回避の 失敗
火傷する
体温より高温の熱が人体に伝わる
体内の 冷却機能を 超える入力
熱源から 一定時間
以上離れない
AND:他の要因 との同時性が必要
AND:3つの要因 が同時に発生
2017/4/20 初村一郎
人が危険を回避する
人が危険を回避する
回避可能 回避行動 する
危険認識
人の判断 警告・警報
人の条件反射
AND:2つの要因 が同時に発生
OR:2つの要因の どちらかが発生
AND:2つの 要因が同時 に発生
2017/4/20 初村一郎
開始
製品のリスクアセスメント
Ⅰ製品仕様、使われ方、使用環境及び合理的に予見可能な誤使用の明確化
Ⅱ ハザード(危害の源)の特定
Ⅲ リスク見積もり
許容可能なリスクに到達したか
Ⅴ
リスクの低減
完了
リスク分析
Ⅳ リスクの評価
2017/4/20 初村一郎
リスクアセスメント: 合理的に予見可能な誤使用
製品の仕様、使用シーン、使用される環境を特定し、 予見可能な誤使用を見積もる
・乳幼児、高齢者、障害者などの特性に基づく行動は、予見しなければならない使用シーン
・メーカーが意図しない使用方法であっても、発生頻度の高い使用シ-ンは、合理的に予見可能な誤使用
誤使用の予見性とは: メーカーが意図する使用方法に反するものは、 誤使用の可能性があると考えられる。 が...
Ⅰ製品仕様、使われ方、使用環境及び合理的に予見可能な誤使用の明確化
供給者が考慮しなければならない範囲
2017/4/20 初村一郎
企業が想定すべき製品使用方法
正常使用
合理的に
予見可能な誤使用
「製造物責任」
製品欠陥起因で
損害賠償責任有り
「企業が
確保すべき
安全基準」
想定時の留意点: ・三角形の下から上へ考えていく
・「合理的に予見可能な誤使用」を出来る限り広く考える
経産省
「製品安全に関する事業者ハンドブック」 より加工
非常識な
使用
2017/4/20 初村一郎
リスクアセスメント: 合理的に予見可能な誤使用
・乳幼児、高齢者、障害者などの特性に基づく行動は、予見しなければならない使用シーン
・メーカーが意図しない使用方法であっても、発生頻度の高い使用シーンは、合理的に予見可能な誤使用
自動回転ドア
Ⅰ製品仕様、使われ方、使用環境及び合理的に予見可能な誤使用の明確化
折り畳み式乳母車
折り曲げ部で 指けが
2017/4/20 初村一郎
リスクアセスメント: 合理的に予見可能な誤使用
回転ドア
「六本木ヒルズ」内の二階正面入口で、母親と観光に訪れていた6歳男児が、大型自動回転ドアに挟まれて死亡。 主な原因は、
・回転ドアの重量が重く、停止動作開始後に停止するまでに時間がかかること、 ・男児がセンサの死角に入り緊急停止が働かなかった
2017/4/20 初村一郎
ハザードの特定
Ⅱ ハザード(危害の源)の特定
人や財産に危害や損傷を与え得る 潜在的な要因(ハザード)を抽出する
安全面からみた特質・仕様と照らし合わせて ハザードを抽出
このハザードが、製品事故を発生させるリスクになる
・ハンドルの付け根に隙間がある ・ハンドルの隙間近辺の円弧が小さい
2017/4/20 初村一郎
リスクの見積もり
Ⅲ リスク見積もり
リスクとは 危害の発生確率と その危害の大きさの組み合わせ
Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 0
致命的 重大 中程度 軽微 無傷
死亡 重傷 入院 治療
通院 加療
軽傷 なし
火災 建物 焼損
火災 製品 発火 焼損
製品 発煙
なし
定性
人の 危害
火災
レベル
2017/4/20 初村一郎
リスクの見積もり
Ⅲ リスク見積もり
リスクとは 危害の発生確率と その危害の大きさの組み合わせ
5
0
レベル
4
3
2
1
頻発する
考えられない
しばしば発生する
時々発生する
起こりそうにない
まず起こりえない
定性的表現
10⁻4超
10⁻4~10⁻5超
定量的表現
10⁻5~10⁻6超
10⁻6~10⁻7超
10⁻7~10⁻8超
10⁻8以下
10⁻4 =1/10⁴ =1/10,000
10⁻8 =1/10⁸ =1/1億
2017/4/20 初村一郎
発生確率・頻度
危害の大きさ
R-MAP (リスクマップ)
安全な領域
危険な領域 ≒リコール、販売中止
2017/4/20 初村一郎
A領域=重大事故・多発事故と判断し、 社会への緊急対応を行う
C領域=原則 安全とみなす
B領域=組織やケースにより 判断・アクションは異なる
R-MAPの判断基準
2016/5/26 Hatsumura&Hirano
2017/4/20 初村一郎
製品のリスクアセスメント
Ⅳ リスクの評価
見積もったリスクを現代社会がどのように評価するか 客観性をもって判断する
例) 危害の 大きさが中程度、 発生確率が時々 起こる~起こり そうにないの 中間に位置する 場合、どう判断 するか
危害の大きさ
発生確率
2017/4/20 初村一郎
製品のリスクアセスメント
許容可能なリスクに到達したか
Ⅴ
リスクの低減
NO
Ⅳ リスクの評価
2017/4/20 初村一郎
リスクの低減 : 3 Step Method
リスク低減方法として 3 Step Method という手法がある
製品事故の原因となる
危険源(ハザード)自体を除去するか、リスクを軽減する
危険源の除去やリスク低減が できない場合は
保護カバーやセンサー等で リスクを低減する
最後の手段として、警告ラベル等で注意喚起を行う。ステップ①②でも許容できるリスクまで低減できない 場合=これを残留リスクという。
Ⅰ 本質的安全設計
Ⅱ 保護手段を 加える
Ⅲ 使用上の 注意表示
2017/4/20 初村一郎
リスクの低減 : 3 Step Method
製品事故の原因となる
危険源(ハザード)自体を除去するか、リスクを軽減する
Ⅰ 本質的安全設計
ボタン電池を使用しない玩具にする。(危険源の除去 ※幼児の誤飲防止のため)
鋭利な端部を面取りする。(危害の程度の低減)
玩具
2017/4/20 初村一郎
リスクの低減 : 3 Step Method
危険源の除去やリスク低減が できない場合は
保護カバーやセンサー等で リスクを低減する
Ⅱ 保護手段を 加える
電子レンジのドアを開けると加熱停止になるようにする
2017/4/20 初村一郎
リスクの低減 : 3 Step Method
最後の手段として、警告ラベル等で注意喚起を行う。ステップ①②でも許容できるリスクまで低減できない 場合=これを残留リスクという。
Ⅲ 使用上の 注意表示
2017/4/20 初村一郎
リスクマネジメント(ものづくり)
製品仕様、使われ方、使用環境 ハザード(危害の源)の特定
リスク見積もり
リスクの評価
リスクの低減、残留リスクの受入れ
製造・販売後のリスク・事故情報の収集 収集情報のリスクの再評価
リスクアセスメント
リスクマネジメント(ものづくり)
2017/4/20 初村一郎