直接時間積分法 研究室の学生のために...
TRANSCRIPT
直接時間積分法 研究室の学生のために 弓削康平
目次
はじめに ......................................................................................................... 1 1 中心差分法 ...................................................................................................... 2 2
差分法 ....................................................................................................... 2 2.1 運動方程式への適用 ................................................................................. 5 2.2 中心差分法の安定性解析 .......................................................................... 6 2.3
1 質点系振動の安定条件 .................................................................... 6 2.3.1. 2質点系振動の安定条件 ................................................................... 9 2.3.2. 有限要素モデル(多自由度系)の安定条件 .................................... 13 2.3.3. 減衰のある場合 ............................................................................... 13 2.3.4.
線形加速度法 ................................................................................................ 18 3 Newmark のβ法 .......................................................................................... 19 4
Newmark のβ法の安定条件 .................................................................. 20 4.1
はじめに 1
荷重に周期性がない,または幾何学的非線形性や材料非線形性を考慮したい
場合は,少しずつ時間を進めながら運動方程式を繰り返し解いていく直接時間
積分法が必要となる.この場合は加速度と変位の間に何らかの関係式を仮定す
る.最終的に連立方程式を解く必要がある時間積分法は陰解法(implicit time integration method)と呼ばれる.一方,連立方程式を解く必要がなく各変位自
由度が独立した漸化式となる時間積分法は陽解法(explicit time integration method)と呼ばれる.前者は1ステップを進めるのに計算時間がかかるが一般
に無条件安定であり大きく時間増分を取ることができる.一方,陽解法は短時
間の計算で1ステップを進めることができ,必要とするコンピュータメモリも
少ないが,条件安定であり時間増分については厳しい制限を受ける.したがっ
て陽解法は自動車の衝突解析のように自由度数の極めて多いモデルを用い,短
時間の動的挙動を調べる際に良く用いられる.一方,陰解法は骨組み構造の地
震応答解析など自由度数がそれほど多くないモデルを用いた長時間の動的挙動
の解析に用いられる.
中心差分法 2
本節では,ははじめに差分法による時間方向の離散化の概要を説明の概念に
ついて説明した後,中心差分法による運動方程式の定式化を示す. 差分法 2.1
ある時間 tの関数 ( )t を考える. ( )t は十分に tに関して滑らかであると仮定す
ると, tより微小時間 t だけ進んだ ( )t t はテイラー展開によって
2 2
2 2!
t t tt t t t
t t
(1)
と表される. t t について整理すると
2
2
1
2!
t t tt t t
t t t
1t t t O t
t
(2)
を得る.上式の第2項を無視した近似
1tt t t
t t
(3)
は前進差分法(forward difference method) と呼ばれる. O x は t の一次項以
上の項からなる打ち切り誤差である.このように前進差分法は t に比例して誤
差が小さくなる 1 次精度の差分スキームである.
図 1 前進差分法
一方, ( )t t について ( )t の周りに Taylor 展開すると
2 2
2 2!
t t tt t t t
t t
(4)
となる.上式を t t について解くと
2
2 2!
t t t t t t
t t t
t t tO t
t
t t t
t
(5)
を得る.この近似は後退差分法(backward difference method) と呼ばれ,前進差
分と同様に 1 次精度である.
図 2 後退差分法
さて(1)から(5)を引くと
3 2
32 3!
t t t t t t t
t t t
2
2
t t t tO t
t
2
t t t t
t
(6)
を得る.この近似は中心差分法と呼ばれ,打ち切り誤差は t の二乗以上の項か
らなる2次精度のスキームである.
図 3 中心差分法
次に2階微分を差分近似するために(1)と(4)の和をとり 2 2t t について解く
と
2 4 2
2 2 4
2
2
t t t t t t t t
t t t
2
2
2t t t t tO t
t
2
2t t t t t
t
(7)
となる.本スキームは2階の中心差分近似と呼ばれ,上式から明らかなように
2次精度のスキームである. 上記の中心差分は評価点から正の方向と負の方向へ等間隔 t だけ離れた点の
値を用いたが,等間隔ではない評価点を用いた2階の差分近似は以下のように
求める。 すなわち,ある位置 x から正の方向へ 1t 離れた位置の関数値 1t t と負の
方向へ 2t 離れた位置の関数値 2t t の Taylor 展開式を次のように求める.
2 32 3
2 3
1 11 1
2! 3!
x xt t
t t t
t t tx
(8)
2 2 3 3
2 3
2 22 2
2! 3!
t t t t tt t t t
t t t
それぞれ 1t と 2t を乗じたものを加えると
1
2
2
3
3
2 1 2 1 2
2 11 2
2 22 11 2
2
6
t t t t t
t
t
t
t
t t t t
t tt t
t tt t
(9)
となる.これを2階の微分項 2 2t t について整理すると次式を得る.
2
2
2 1 1 2 1 2
1 2 2 1
2 2 2tO
t
t t t t t t t t tt
t t t t
2 1 1 2 1 2
1 2 2 1
2 2 2t t t t t t t t t
t t t t
(10)
このように不当間隔にすると t の一次精度に落ちることに注意を要する. 運動方程式への適用 2.2
直接時間積分法により時刻を等間隔 t で進めることとした場合,第kステップ
の運動方程式エラー! 参照元が見つかりません。 を中心差分法で離散化すると
次式を得る.
( 1) ( ) ( 1)
( ) ( )
2
2k k k
k k
t
u u uM K u f (11)
上添字は時間ステップ数を表すものとする.今,質量行列 M として
1
2
0
0 0
0 0
0 n
m
m
m
M
(12)
と集中質量行列を採用することにする.また,
( ) ( )k kp K u (13)
とすれば上式は i 番目の変位自由度に関して
2
( 1) ( ) ( ) ( ) ( 1)2k k k k ki i i i i
i
tu f p u u
m
1,2, ,i n (14)
を得る.
右辺は既知量であるから,中心差分法は,未知の第(k+1)ステップの変位を漸
化式によって求める陽解法であることがわかる. 陽解法では連立方程式を解
かず漸化式を計算することによって計算を進めるため計算時間の大部分は内力
の計算(13)に費やされる. エラー! 参照元が見つかりません。に示したように,
全体変位ベクトルから要素 i の変位ベクトルを抽出する行列を
(i)L とすると
K は
1
NE t
i
(i) (i) (i)K L k L (15)
で表される.したがって(13)の計算は, ・要素番号 j=1~全要素数について
( ) ( )( ) ( ) ( )
( )( ) ( ) ( ) ( )
k ki i i
ktk k i i
p k L u
p p L p
と 2 段階に分ければ,全体剛性行列 K を実際に作成する必要が無い.さらに
iL も全体自由度から要素自由度を抽出する演算であるから,プログラムでは全
体変位自由度から要素自由度を抽出するようコーディングすれば実際に iL を
作成する必要はない..以上の点から陽解法では陰解法に比べ非常に小さいメモ
リしか必要としないという長所がある.
中心差分法の安定性解析 2.3
1 質点系振動の安定条件 2.3.1.
今,簡単のため下図のような簡単な1質点系の運動を考える.質点の質量をm ,
ばね定数を k ,外力を f とすると運動方程式は ku mu f (16)
で与えられる.これを中心差分法で離散化すると
2
( 1) ( ) ( ) ( ) ( 1)2k k k k ktu f ku u u
m
(17)
となる.
図 4 1質点のばねマス系
k
m
エラー! 参照元が見つかりません。は,(14)の荷重項を0とし適当な初期条件を
与えて自由振動解析を実施した結果である.横軸は系の固有周期 2T m k で
無次元化した時間 t,縦軸は変位を理論最大変位 20 0u v m k ( 0v は初速度)で
無次元化したものである.図に示すように時間増分 dt が固有周期T の 10 分の1
程度では良好な結果となっているが,時間増分を大きくしていくと解析精度が
悪くなる.そして /dt T が 0.4 になると数ステップで発散してしまう.このよう
に時間増分がある値以上になると解が発散するスキームは条件安定であると言
われる.
time(t/T)
0 1 2 3 4 5
Dis
plac
emen
t (u
/u0)
-10
-5
0
5
10
dt/T=0.1dt/T=0.2dt/T=0.3dt/T=0.4
図 5 中心差分法による 1 自由度系の自由振動解析
中心差分法の安定性を説明するために,(17)を
( 1) ( )2
( ) ( 1)
2 1
1 0
n n
n n
u ut k m
u u
(18)
または
( ) ( 1){ } [ ]{ }n nu A u (19)
と書き換える。ただし上式では簡単のため、外力は0(自由振動)とした。 (19)は漸化式であるから,
( ) ( 2)
2 ( 3)
(0)
{ } [ ] [ ]{ }
[ ] ]{ }
[ ] { }
n n
n
n
u A A u
A A u
A u
(20)
となる.[ ]nA がnが増大しても,任意の初期状態 (0){ }u を発散させないことが数
値的安定には必要であることが分かる.
そこで,適当な基底変換行列 P によって[ ]A を
1 1
2
0[ ]
0
A P P (21)
と,対角化することを考える.このとき, 1 , 2 は[ ]A の固有値となる.上式を
用いれば,
1 1 11 1 1
2 2 2
0 0 0[ ]
0 0 0n
A P P P P P P
1 1
2
0
0
n
P P 1 1
2
0
0
n
n
P P (22)
となるから,[ ]nA によって (0){ }u が発散しないためには[ ]A の二つの固有値のう
ち,絶対値の大きい方が1以下であることが必要であることがわかる. [ ]A の固有値を特性方程式
2
22
2 1det [ ] [ ] det
1
2 1 0
t k m
t k m
A I (23)
より固有値を求めると
22 21,
2
t k m
(24)
を得る.異なる2実根を持つなら,根と係数の関係より 1 2 1 となる.これよ
り1根は 1 となるから安定条件を満たさない.一方,重根または虚根を持つ
場合は
22 2 1t k m (25)
でありこのとき
21 i (26)
であるから,その絶対値は1であり,安定条件を満たす.(25)を整理すると安定
条件として
22
m Tt
k
(27)
を得る. 2質点系振動の安定条件 2.3.2.
続いて下図のような2質点系の自由振動を考える.
図 6 2 質点系の振動
この系の自由振動の運動方程式は
1 1 1 2 2 1
2 2 2 2 2
0 0
0 0
m u k k k u
m u k k u
(28)
で与えられる.上式に中心差分法を適用すると ( 1) ( ) ( 1)
1 1 1 12 ( 1) ( ) ( 1)
2 2 2 2
( )1 2 2 1
( )2 2 2
0 21
0 2
0
0
n n n
n n n
n
n
m u u u
mt u u u
k k k u
k k u
(29)
となる.簡単のため, 1 2m m m , 1 2k k k の場合,上式は
2( 1) ( ) ( ) ( ) ( 1)
1 1 2 1 1
2( 1) ( ) ( ) ( ) ( 1)
2 1 2 2 2
2 2
2
n n n n n
n n n n n
k tu u u u u
m
k tu u u u u
m
となる.これを適当な初期条件の下に, 0.05t T ( 2T m k )として解析
した結果を図 7 2 質点系の自由振動エラー! 参照元が見つかりません。に示す.
横軸は時間 t,縦軸は変位( / 0u u : 20 0u v m k ( 0v は質点1の初速度))を表
す.一次と 2次の振動モードが連成して複雑な振動となっていることがわかる.
time(t/T)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
Dis
plac
men
t(u/
uo)
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
mass1mass2
図 7 2 質点系の自由振動
次に時間増分 t を少しづつ大きくしていき, 5t T まで解析したときの質点2
の最大変位を調べたものをエラー! 参照元が見つかりません。に示す. 図から
0.2dt T 以上になると振幅が大きくなり発散してしまうことがわかる.
dt/T
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25
um
ax/u
0
0
2
4
6
8
10
図 8 時間増分と振幅
この系の安定性を調べてみよう.特性方程式
2 0 2det 0
0
m k k
m k k
(30)
を解くと系の固有値として
2 3 5
2
k
m
(31)
を,また固有ベクトルとして
1 2
1 1{ } , { }
1 5 2 1 5 2
q q (32)
を得る.これらの固有ベクトルを用いて,変位および加速度を
1 1 2 2{ } { } { }c c u q q (33)
1 1 2 2{ } { } { }c c u q q (34)
と表すことにする.これを運動方程式(28)に代入すれば
1 1 2 2 1 1 2 2
0 2 0{ } { } { } { }
0 0
m k kc c c c
m k k
q q q q (35)
となる.上式に左から 1 2{ } ,{ }q qt tを乗じると固有ベクトルの直交性より次式を得
る.
1 1 1 0im c k c (36)
2 2 2 2 0m c k c (37)
ここに
1 1 1
5 50{ }
0 2
mmm
m
q q
1 1 1
5 52{ }
2
kk kk
k k
q q
2 2 2
5 50{ }
0 2
mmm
m
q q
2 2 2
5 52{ }
2
kk kk
k k
q q
である.エラー! 参照元が見つかりません。に示したようにモード分解すること
に多自由度の系は,独立な一次自由度系の振動の集合として取り扱える.(36),(37)の各々の安定条件は,(27)より,
11
1
2 5 1m m
tk k
22
2
2 5 1m m
tk k
であるが,系全体の安定条件はこれらのうち厳しい方,すなわち
1 2 2min ,t t t t
で与えられる.エラー! 参照元が見つかりません。において t T がおよそ 0.2で解が発散しているが,これは
2
5 10.197
2
m kt
T m k
と良く合致している.
有限要素モデル(多自由度系)の安定条件 2.3.3.
有限要素法による解析では既に説明したように支配方程式を固有ベクトルを用
いて
i i i i ic m c k f (i=1,2,…,n)
と 1 自由度系にモード分解可能である.中心差分法を用いた離散化ではこれら
の独立した 1 自由度系振動の安定条件のうち最も厳しい条件,すなわち
min 1 2, , , nTT T
(38)
が系全体の安定条件となる.ここに iT は i 番目の系の固有周期である.系の最小
固有値を実際に計算するのは大変なので実際には,最小固有周期は要素を弾性
波が往復する時間であると仮定し,要素の代表長さ hを弾性波が往復する時間を
全要素について計算し,その最小値
min min 2T hE
(39)
を全要素について計算し,その最小値を で除した
minTt
(40)
を安定条件とする.この条件は波動方程式を中心差分法で離散化したときの安
定条件を示したクーランの名を取りクーランの安定条件もしくは著者全員の名
前から CFL 条件と呼ばれる.式より明らかなように中心差分法を用いた動的解
析では,堅い材料を細かく分割しない,同じ材料なら要素サイズを揃えること
などが解析時間の観点から重要となる. 減衰のある場合 2.3.4.
2.3.4.1 減衰項の中心差分近似
減衰のある一自由度系の運動方程式は
( ) ( ) ( ) ( )n n n nmu cu ku f (41)
で与えられる.これを加速度,速度をともに中心差分近似し, ( 1) ( ) ( 1)
( )2
2n n nn u u u
ut
,
( 1) ( 1)( )
2
n nn u u
ut
(42)
とすると運動方程式は ( 1) ( ) ( 1) ( 1) ( 1)
( ) ( ) ( )2
2
2
n n n n nn n nu u u u u
m c u ku ftt
(43)
これより第(n+1)ステップの変位に関する漸化式
2( 1) ( ) ( ) ( 1)
2 4 22
2 2 2n n n n
t k m m c tu f u u
m c t m c t m c t
を得る.安定性を調べるために上式を書き換え,
2( 1) ( )
( ) ( 1)
2 4 2
2 2
1 0
n n
n n
t k m m c tu um c t m c t
u u
(44)
とおく.なお,上式では簡単のため ( ) 0nf としている.系の安定条件は,前節
で示したように,上式の係数行列の固有値の絶対値がともに1以下であること
である.固有値の特性方程式は
22 4 2det 02 2
1
t k m m c t
m c t m c t
(45)
より
2 22 2 4 2 0m c t t k m m c t (46)
を得る.前節と同様に 2 根の絶対値が1以下となることが安定条件となる.こ
こでは T.Belytschko1)らに従い制御理論で使用される z 変換を用いて安定性解
析を実施する.Z 変換は(47)の複素解を
1
1
z
z
(48)
となる複素数 z に変換する.この時, 1 の条件は Re 0z と簡単な条件に変
換される. (証明) z a bi とおき
2 * 1 を表すと
2 22
2 2
1 1 1 21
1 1 1 2
a bi a bi a a b
a bi a bi a a b
(49)
となる.2 は正であるから分母は正でなければいけない.そこで不等式の分母
を符号を変えずに払い整理すると 0a を得る.(証明終) 特別な場合として
21 となるのは z の実数部が 0 の場合であることが上の証
明よりわかる。
図 9 と z 平面の安定領域
Z 変換された特性方程式の安定条件は Hurwitz の判定式を用いる. Hurwitzの判定式は Hurwitz 行列を用いる.今,z変換された p 次の特性方程式が
1 00 1 00 0p p
pc z c z c z c (50)
と表されるとすると,Hurwitz 行列 H は次式で定義される.
2 0 2
0
j iij
c j i pH
それ以外
(51)
Hurwitz の判定式は「Hurwitz 行列の 1 から p までの首座行列式が 0 以上とな
れば安定」で表される.第 k 番目の首座行列式は第1列からk列および第1行
から第k行までのk行k列部分を取り出した行列の行列式である. 2p の場合は特性方程式は
20 1 2 00 0c z c z c c (52)
また Hurwitz 行列は
1
0 2
0c
c c
H (53)
となるから,Hurwitz の判定式は
1 1
2 1 2 2
0
0 0
c
c c c
(54)
で与えられる. さてz変換前の特性方程式を
Im Im z
Re z
安定領域
1
2 0a b c (55)
とすると,z変換により上式は
21 1
01 1
z za b c
z z
(56)
となる.これを整理すると次式を得る.
2 2 0z a b c z a c a b c (57)
上式を(54)に代入するとともに 0 0c の条件を付加すると
0
1
2
0
2 0
0
c a b c
c a c
c a b c
(58)
を得る.これを減衰のある一自由度系の運動方程式(46)に代入すると
2 20
1
2 22
2 2 4 2 8 2 0
2 2 2 4 0
2 2 4 2 2 0
c m c t t k m m c t m t k
c m c t m c t c t
c m c t t k m m c t t k
(59)
第2,3式は自明である.また,第1式から
2m
tk
(60)
を得る.これは減衰がない場合と同じ条件である.したがって減衰項を中心差
分法で近似した場合,安定条件は減衰項が無い場合と変わらないことがわかる.
なお,多自由度の場合,減衰項を考慮した運動方程式は
( 1) ( ) ( 1)
2
2n n n
t
u u uM
M u C u K u f (61)
となるから減衰項に中心差分を適用すると
( 1) 2 ( ) 2 ( )
( ) ( 1) ( 1)
2
22
n n n
n n n
tt t
t
M C u f K u
M u u C u
となる.従って陽解法のスキームとするためには質量行列 M に加えて C も
集中行列にする必要がある.このため,陽解法においてはレーリー減衰
C M K において, 0 として質量減衰のみを考慮することが一般的
である. 2.3.4.2 減衰項の後退差分近似
レーリー減衰において剛性減衰も考慮したい場合は,減衰項に後退差分を用
いる.減衰項を後退差分すると
( 1) ( ) ( 1) ( ) ( 1)( ) ( )
2
2n n n n nn n
tt
u u u u uM C K u f
となるから,これを整理して
( ) ( 1)
( 1) ( ) ( ) ( ) ( 1)2 2
2
n nn n n n n
tt t
u uM Mu f C K u u u
を得る.陽解法を行う前提として減衰項の対角化を要求しない。 ・ 安定性解析
減衰のある一自由度の自由振動は次式で表される.
( 1) 2 ( ) ( 1)2 1n n nc k cu t t u t u
m m m
これを変形して
( 1) ( )2
( ) ( 1)
2 2 1
1 0
n n
n n
c k cu ut t t
m m mu u
または
( 1) ( )n n u G u
を得る。安定条件は G の固有値の絶対値がともに1を超えないことである。
G の固有値に関する特性方程式は
2
24
c m ct
k kk 2 22 1 0
c k ct t t
m m m
で与えられる。上式をフルビッツの安定条件*式に代入し,安定条件を求める
と
2
2
0
0
4 2 0
kt
mc
tm
c kt t
m m
これより減衰項を後退差分した場合の安定条件として
24c k c
tm m m
を得る。簡単な計算で確認できるようにこれは減衰がない場合の安定条件
4t k m より厳しくなっていることに注意する。
線形加速度法 3
線形加速度法では第 n ステップ(時刻 t)から第 n+1 ステップ(時刻 t t )
の区間で,加速度は線形的に変化すると仮定し,次式のように近似する.
1( ) 0n nnt tt
u u u u (62)
これを積分すると,
2
112
n n ntt
u u u u C (63)
さらにもう一度積分すると
2 3
11 22 6
n n ntt
u u u u C C (64)
を得る.ここに 1C , 2C は積分定数である. (63),(64)に 0 を代入すると ( )
1nt C u u および ( )
2nt C u u
を得る.これより(63),(64)は
2
1 ( )
2n n n nt
t
u u u u u (65)
2 3
1 ( ) ( )
2 6n n n n nt
t
u u u u u u (66)
となる.この2式に t を代入することにより
1( 1) ( )
2n nn n t u u u u (67)
2 2
1 1
3 6n n n n nt t
t u u u u u (68)
を得る.これが線形加速度法のスキームである.上式より
1 12
6 62n n n n n
tt
u u u u u (69)
であるからこれを運動方程式
1 1n n n M u K u f (70)
に代入すれば
1 12
2
6
6 62
n n
n n n
t
tt
M K u f
M u u u
(71)
を得る.本式から明らかなように線形加速度法は陰解法であるが,後述するよ
うに条件安定スキームである.
Newmark のβ法 4
Newmark のβ法は,線形加速度法を発展させ, と の 2 個のパラメータを
用いて速度および変位を次のように近似する.
1 11n n n nt t u u u u (72)
1 12 21
2n n n n nt t t
u u u u u (73)
上式で 1 2, 1 6 とすると線形加速度法の式となる.また, 1 2, 0 の
場合は中心差分法となる.上式の関係を線形加速度法の場合と同様に運動方程
式(70)に代入すれば,
1 12
2
1
1 1 11
2
n n
n n n
t
tt
M K u f
M u u u
(74)
となる.(74)の連立方程式を解くことによって 1nu を求め,それを(72),に代
入することによって 1nu , 1nu を計算する. Newmark のβ法の安定条件 4.1
多自由度の系も1自由度系にモード分解することができるので,以下では 1 自
由度系によって Newmark のβ法の安定性を議論する. 第 n ステップおよび第(n+1)ステップの運動方程式は質量をm ,ばね定数を k と
すると
1 1
0
0
n n
n n
mu ku
mu ku
(75)
と表される.上式に(72),(73)の関係を代入すると
1 1
1 12 21
2
n n n n
n n n n n
tku u u u
mk k
u u tu t u t um m
(76)
となる.これを整理すると次式を得る.
1
1 22
11
110 1
2
n n
n n
k tk tu umm
kk u ut ttmm
(77)
そこで
22
11,
110 1
2
m tm tkk
mmt tt
kk
A B (78)
とおくと(77)は
1
1
n n
n n
u u
u u
A B
(79)
と表される.ここで
11
1
n n n
n n n
u u u
u u u
A B G
(80)
とおく. G の具体形は次式で与えられる.
2
2 2
111
11 10 1
2
k tk k t
t mm m
kkt t t
m m
G (81)
このシステムの安定性は陽解法と同様に G の固有値の絶対値が1を超えない
ことである.特性方程式
det 0 G I (82)
より固有値に関する2次方程式
2 2
22 2
1 12 1 0
2 2
k t k t
m k t m k t
(83)
を得る。 1 2 の場合
Newmark のβ法では 1 2 が使用されることが多い。この時,特性方程式は
2
22
2 1 0k t
m k t
となる。2次方程式の根と係数の関係より,2根 1 2 は
1 2 1 (84)
の関係にあるので,これらが異なる2実根であれば1根の絶対値が1よりも大
きいのは明らかである。そこで2根が虚根または重根の場合,解の公式より
22 2
2 2
12 4 2
2
k t k ti
m k t m k t
(85)
となる。このとき2根の絶対値はともに
2 22 2
2 2
12 4 2 1
4
k t k t
m k t m k t
(86)
となって安定条件を満たす。このように2根が虚根または重根を持つ条件は判
別式より
22
22 4 0
k tD
m k t
(87)
で与えられる。これを変形すると
21 4 0k
tm
(88)
となるが,これは
1
4 (89)
のとき t の値に拘わらず常に成立する無条件安定となる.また,このとき固有
値が1となることから解に数値減衰は生じないことがわかる.また,
1 2, 1 6 を採用する線形加速度法が条件安定のスキームであることもこの
ことから理解できる. が任意
2 22 22 11 1 02
22
ttpp
( 1) ( ) ( ) ( 1)
( 1) ( ) ( ) 2 ( ) 2 ( 1)
(1 )
1
2
n n n n
n n n n n
u u t u tu
u u tu t u t u
( 1) 2 ( 1) ( ) 2 ( )
2 2 ( 1) ( ) 2 2 ( )
(1 )
1(1 ) 1
2
n n n n
n n n
u t u u t u
t u tu t u
22 ( 1) ( )
2 22 2 ( 1) ( )
(1 ) 11
111 0
2
n n
n n
tt u u
t tt u u
2
2
2 22 2
(1 ) 11
, 111 0
2
tt
t tt
A B
( 1) ( )
( 1) ( )[ ] [ ]
n n
n n
u u
u u
A B
( 1) ( )
1
( 1) ( )
n n
n n
u u
u u
A B
2 2 4 32
1
2 2
12 2
1
t tt
p p
t t
p p
G A B
2 21p t
2 2 4 32
2 2
12 2
det 0
1
t tt
p p
t t
p p
G I
2 1 12 1 0
2 2
qp p q
p
2 2q t
21 2
1 2
2
1 2
0.
1 0
1 1 0
1 0
d d
d d
d
d d
参考文献 1)T. Belytschko, W. K. Liu, B. Mortan, Nonlinear Finite Element Analysis
for Continua and Structures, John Wiley & Sons, LTD(2000)