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1演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して 西本 一志 1.研究のねらい 本研究の最終的な目標は、アマチュアからプロフェッショナルまで、幅広い層の人々がより自分の 思い通りに音楽を演奏して楽しむことができるようにするための方法論と技術を確立することにある。 この目標に向けて、さきがけ研究の 3 年間では、特にクラシック音楽に代表される「再現演奏型楽曲」 の演奏を主な研究対象とし、まずはその演奏表現構築過程の分析を行い、そこで得られた知見に基 づき、誰もがより自在に独自の演奏表現を実現できる楽器のあり方を考案する。さらに、構築したプロ トタイプシステムを用いた被験者実験を実施し、考案したアイディアの有効性を評価した。加えて、合 奏のインタラクションの面白さに着目した、音楽を媒介とするコミュニティウェアとしても機能する装着 型楽器の研究開発も行った。 音楽という芸術への取り組み方には、作曲・演奏・鑑賞の 3 つの方法がある。このうちもっとも広く普 及している方法は「鑑賞」である。音楽の鑑賞は、高度に精神的な芸術行為であり、それによって様々 な喜びや感動を得ることができるにもかかわらず、その実施のためになんら特殊な技術や知識を必要 としないため、古くから老若男女問わずきわめて幅広い層に愛されてきた。しかしながら、多くの人々は 音楽鑑賞という受動的な音楽との関係に飽き足らず、もっと能動的に音楽と接することを欲していると 思われる。とりわけ、自ら音楽を演奏して楽しむことへの欲求は強い。かつてのバンドブーム、近年のカ ラオケの流行や大人向けピアノ教室の登場などは、このことを示唆している。ところが現状において、 自分の思うように音楽を演奏することは、一般に容易ではない。ほとんどの場合、楽譜どおりの音をは ずさずに演奏したりったりすることができるようになるという最段階でつまづいてしまう。また、してこの最段階えたとしても、には自分がした演奏のをいかにして向るかという問がえているし、そもそも「演奏のの向」ということに目を向けようとしないで、ただ闇 に「楽譜どおりにけた」けで足してしまう場合も々にして見受けられる。これは、音楽の精神 面を考しないなる機的作への習熟であり、音楽とはいがたいものである。 では、 音楽演奏をもっと一般に広く楽しむことができるようにするには、どうすれいいのろうか。 演奏者は、を考え、をなすきなのか。そして、演奏者の支援きで、支援きで ないのか。本研究のいは、このような問題意識のもとに、演奏構築過程の分析を行うことによってかな演奏表現を実現するために考き要らかにするとともに、より自在に独自の演奏表 現を実現できるような、いわしい楽器」を実現することにある。

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Page 1: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

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演奏構築過程の分析に基づく

音楽演奏支援システムの実現を目指して

西本 一志

1.研究のねらい 本研究の最終的な目標は、アマチュアからプロフェッショナルまで、幅広い層の人々がより自分の

思い通りに音楽を演奏して楽しむことができるようにするための方法論と技術を確立することにある。

この目標に向けて、さきがけ研究の 3年間では、特にクラシック音楽に代表される「再現演奏型楽曲」

の演奏を主な研究対象とし、まずはその演奏表現構築過程の分析を行い、そこで得られた知見に基

づき、誰もがより自在に独自の演奏表現を実現できる楽器のあり方を考案する。さらに、構築したプロ

トタイプシステムを用いた被験者実験を実施し、考案したアイディアの有効性を評価した。加えて、合

奏のインタラクションの面白さに着目した、音楽を媒介とするコミュニティウェアとしても機能する装着

型楽器の研究開発も行った。

音楽という芸術への取り組み方には、作曲・演奏・鑑賞の 3 つの方法がある。このうちもっとも広く普

及している方法は「鑑賞」である。音楽の鑑賞は、高度に精神的な芸術行為であり、それによって様々

な喜びや感動を得ることができるにもかかわらず、その実施のためになんら特殊な技術や知識を必要

としないため、古くから老若男女問わずきわめて幅広い層に愛されてきた。しかしながら、多くの人々は

音楽鑑賞という受動的な音楽との関係に飽き足らず、もっと能動的に音楽と接することを欲していると

思われる。とりわけ、自ら音楽を演奏して楽しむことへの欲求は強い。かつてのバンドブーム、近年のカ

ラオケの流行や大人向けピアノ教室の登場などは、このことを示唆している。ところが現状において、

自分の思うように音楽を演奏することは、一般に容易ではない。ほとんどの場合、楽譜どおりの音をは

ずさずに演奏したり歌ったりすることができるようになるという最初の段階でつまづいてしまう。また、努

力してこの最初の段階を乗り越えたとしても、次には自分が創り出した演奏の質をいかにして向上させ

るかという難問が控えているし、そもそも「演奏の質の向上」ということに目を向けようとしないで、ただ闇

雲に「楽譜どおりに弾けた」だけで満足してしまう場合も往々にして見受けられる。これは、音楽の精神

的側面を考慮しない単なる機械的作業への習熟であり、音楽とは言いがたいものである。

では、 音楽演奏をもっと一般に広く楽しむことができるようにするには、どうすればいいのだろうか。

演奏者は、何を考え、何をなすべきなのか。そして、演奏者の何を支援すべきで、何を支援すべきで

ないのか。本研究の狙いは、このような問題意識のもとに、演奏構築過程の分析を行うことによって豊

かな演奏表現を実現するために考慮すべき要素を明らかにするとともに、より自在に独自の演奏表

現を実現できるような、いわば「新しい楽器」を実現することにある。

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2.研究成果 2.1. ピアノ・レッスンのケース・スタディに基づく演奏表現構築過程の分析

~何が難しいのか~ 本研究を開始するにあたり、まずは演奏表現の構築過程においてどのような部分が問題となるのか

を明らかにするために、ピアノ・レッスンのケース・スタディを実施し、その分析を行った。一般に演奏表

現を構築する際に考慮する必要がある要素には、音高、音量、音長等があり、これらの要素を有機的・

統合的に組み合わせることによって、演奏者は独自の演奏表現を構築する。しかし、特に初心者や初

級者の場合、これらすべての要素に気を配ることは難しく、ほとんどの場合はごく一部の要素にのみ着

目し、他の要素に対する配慮が疎かになる。この結果、演奏表現が全体としてバランスを欠いたものと

なってしまう。そこで 5回のピアノ・レッスンを 2ケース行い、先生と生徒の演奏データを比較して、生徒

の演奏における個々の「音楽表情に関する要素」の変化を分析し、ピアノ演奏学習者がどのような点を

見落としがちであるのか、あるいはどのような点に困難を感じるのかを洗い出すことを試みた。

実験に用いた課題曲は、F. ショパン作曲の「幻想即興曲 作品 66」の中間部 “Moderato

cantabile” とその手前 6小節である(37-82小節)。生徒として 2人の被験者を採用した。どちらの被験

者も今回の課題曲を間違えることなく弾き通す技量を持ち、すでに数年前にレッスンを受けずに課題

曲を演奏した経験があった。一方ピアノ指導者は、私の所属する大学院の博士後期課程に在籍し、

音楽大学でピアノ演奏を専攻し、およそ 9 年間一般に対してピアノ指導を行ってきた経験をもつ学生

である。レッスンは両者とも同じ施設にて、YAMAHA Silent Ensemble Grand Piano C5 を使用して行っ

た。このピアノは MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データの出力機能を持つ。演奏中に出

力される MIDI データは、すべて SGI Indy Workstation で記録した。同時にレッスンの模様と演奏を

VCR及び DATで、映像音響データとしても記録した。

生徒がレッスンの各回の最初と最後に全体を通した 10回分の演奏と、1回目のレッスンの途中で全

体を通した 2回の演奏、及び 5回目のレッスン後 1 ヶ月経過した後の演奏と先生の演奏の MIDIデー

タを分析した。なお、先生の演奏はレッスンとは別の機会に記録され、生徒にはこれを聞かせていない。

MIDIデータのうち分析に使ったデータは、発音メッセージの発行時刻(Note on time)と消音メッセージ

の発行時刻(Note off time)、さらに鍵盤が下りる速さ(Note on velocity)と、鍵盤が元の位置に戻る速さ

(Note off velocity)である。なお、一つの音におけるNote off timeとNote on timeの差がほぼ音長に対

応し、Note on velocityがほぼ音の強さに対応する。また、Note off velocityは音の切れ方に関連する

値である(詳細は 2.2 節参照)。採取した MIDI データをメロディ(主に右手による演奏)の演奏データと

伴奏(主に左手による演奏)の演奏データに分け、メロディのデータのみを用いて分析を行った。分析

結果の一部を図1に示す。図1 (a)は生徒 Aの、(b)は生徒 Bの分析結果である。横軸はどの回の演奏

データであるかを示している。たとえば、1.1 は第 1回目のレッスンの最初の演奏、4.L は 4回目のレッ

スンの最後の演奏、M.2は、5回目のレッスン終了後 1 ヶ月経過時の 2回目の演奏のことである。図中、

3種類のグラフを示している。一番下のグラフから順に簡単に説明する。「演奏差(velocity)」のグラフは、

Note on velocity と Note off velocityの両方について、まず平均が 0、分散が 1 となるように正規化した

上で、個々の音についての生徒の演奏と先生の演奏の正規化 velocity 値の差に対して求めた RMS

の値であり、値が大きいほど両者の演奏に違いがあることを示している。「velocity の分散」のグラフは、

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図1 : 2名の被験者によるピアノ・レッスンのケース・スタディの分析結果

Note on velocity と Note off velocityの両方について、1回の演奏全体から得られた velocity値の分

散を示しており、値が大きいほど 1 回の演奏の中での変動が大きいことを示している。「遅離鍵個所の

一致割合」のグラフは、離鍵速度が非常に遅い個所(すなわち、Note off velocity がある閾値より小さ

い個所)が生徒と先生でどの程度一致しているかを示すグラフであり、値が大きいほど一致率が高いこ

とを示している。これらの結果から導き出される示唆は非常に多く、そのすべてを列挙することは紙幅

の都合で不可能であるため、特に興味深い点についてのみ以下で示す。

「演奏差(velocity)」のグラフを見ると、Note on velocityについては、レッスンが進むにつれて両生徒

とも演奏差が減少していくのに対し、Note off velocity については演奏差がほとんど減少しない。Note

on velocityは、ほぼ音の強弱と対応しているため、聞き取ることが容易である上に、楽譜に f (フォルテ)

やクレッシェンドなどの「強弱記号」が明示的に指示されており、通常この指示に従った演奏を行うことに

なる。この結果、Note on velocity については先生の演奏に容易に接近することができる。一方、Note

off velocity については聞き取ることが難しい上に、楽譜には明示的に指示されていない。このため、先

生の指導を受けても Note off velocity を類似させることは容易ではないと思われる。Note off velocityは

音の切れ方と関わる値であるため、「フレージング」や「アーティキュレーション」などの、いくつかの音の

「まとまり感」の表現と密接に関連する。そこで、Note off velocityについてもう少し詳細に見てみよう。

(a) 生徒 Aの分析結果 (b) 生徒 Bの分析結果

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「演奏差(velocity)」の Note off のグラフからわかるように、生徒 A、B いずれも曲全体を通しての

Note off velocityの先生との差は、すべての演奏において 1.1~1.2程度で変化なく横ばいであるが、

「velocityの分散」のグラフを見てみると、生徒 A と Bには大きな違いが見られる。生徒 Bについては、

回を追うごとに Note on velocity も Note off velocity も分散が増加している。これは、音の強弱のつけ

方や音の切り方(スパッと切る、あるいはやさしく切るなど)にメリハリができてきたことを示唆するもので

ある。一方、生徒 Aについては、Note on velocityについての分散は最初からかなり高い値であるのに

対し、Note off velocityについては回を追うにつれて減少していく。つまり、生徒 Aの演奏では、レッス

ンが進むにつれて音の切り方が一様で単調なものになっていることが示唆されている。また Note off

velocity は、フレーズ感を出そうとする個所で非常に遅い(小さい)値をとることが多い。したがって、

Note off velocity がある値以上に小さな値をとる個所の一致度を調べれば、生徒と先生とでフレーズ

感の作り方がどの程度一致したかを見るための指針が得られる。そこで「遅離鍵個所の一致割合」の

グラフを見ると、生徒 Aについては第 4回のレッスンあたりで非常に一致割合が低くなり、最終的にもレ

ッスン開始時と同程度の一致割合しか示さないのに対し、生徒 B では回を追うに連れて一致度がゆる

やかにではあるが上昇している。

以上の結果から、演奏表現構築にあたって、Note on velocityに関連する表現(つまり主として音の

強弱の推移)の構築は比較的容易であるのに対し、Note off velocityに関連する表現(つまり主として

離鍵の制御によるフレージング)の構築は難しく、そもそもピアノ演奏学習者はこのような点にあまり注

目しない可能性があることが示されたといえる。そこで、本研究ではより詳しく離鍵動作についての分

析を試みた。詳細は 2.2 節で示す。また、以上のデータでは直接に示してはいないが、今回の実験の

2名の被験者のうち、生徒 Bは技術的な面で若干生徒 Aより劣る部分があり、その分 Note on velocity

の演奏差の減少がやや遅い傾向などが見られた。しかし、上述のように生徒 B の方が Note off

velocityのコントロールに対しても配慮している点にも見られるように、生徒 Bが必ずしも「音楽的に」生

徒 A より劣っているとは言い切れないし、むしろ生徒 B の方が優れている可能性もある。つまり、技術

的な問題さえ乗り越えられれば、生徒 B は非常に優れた演奏を実現できる可能性があると思われる。

そこで、このような「技術的な壁」を乗り越えることを容易とすることによって、よりすぐれた演奏表現を本

当に実現できる可能性があるかどうかについての検証も行った。詳細は 2.3節で示す。 2.2. 離鍵動作に関する基礎的分析 ~ピアノ演奏の独自性の現われどころはどこか~

ピアノの演奏の際、ピアニストが手で制御できる要素は、(1)鍵を叩く時刻、(2)鍵を叩く強さ、(3)

鍵を離す時刻、(4)鍵を離す速さ、の、実にわずか4つしかない。これら4つの要素は、ピアニストが独

自の演奏表現を構築するために非常に重要であり、本来いずれを欠くこともできない。これらのうち、

(1)~(3)の要素については、一般に楽譜上に明示的に記述されている。特に(1)と(3)については、

いずれを欠いても演奏が成立しないし、(2)を欠くとまったく抑揚のない「非音楽的な」演奏となってし

まう。しかしながら、(4)の鍵を離す速さ(離鍵速度)については、明示的に楽譜上に記載されていな

いし、特に意識しないまま演奏しても一応は音楽の態を成す演奏となりうるためか、従来から非常に

軽視されている。たとえば、ほとんどの電子楽器では鍵を離す速さに関するデータ(つまり Note off

velocity)を出力することも入力することもできない仕様となっており、Note off velocity を扱える楽器

離鍵速度を考慮しているシステムはほとんどない。では離鍵速度は本当に無視してよいものであろう

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図2 : Note off velocityのみを変えた場合のスペクトログラム

か。すぐれたピアニストの演奏する姿を見ていると、鍵盤を叩く時以上に、鍵盤から指を離すときの動

作に思わせぶりと言えるほどの特徴を見出すことができる。この動作は無意味なのだろうか。無意味

でないとすればどのような意味があるのだろうか。この点について、本研究では基礎的な分析を実施

し、離鍵動作が「フレージング」と密接に関連があり、その結果として演奏者それぞれの演奏表現の

「独自性」に関係があることを見出した。以下、この結果について要点のみ示す。

まず、Note off velocityの変化によって音はどう変わるのかについての例を示す。Note off velocity

の値以外はすべて同一の内容の MIDI データを作成し、これをヤマハサイレントアンサンブルピアノ

C5 プロフェッショナルモデル(この楽器は Note off velocityの再生機能を持つ)を使用して、電子音

源ではなく実際にハンマーで打弦して音を発生させ、これをマイクで記録した WAV データからスペク

トログラムを求めた。図2に、2つの音高の音(C4 と D4)について、Note off velocityを 127 と 25 とした

場合のスペクトログラムを示す。図中、Note off メッセージ発行時刻(図 2中の縦線。多少のずれはあ

るが、ほぼ離鍵動作開始時刻にあたる)以後の周波数成分の変化(赤丸の中)を比較すると、以下の

2点の差が明らかに見られる:

1. Note off velocity が 127の場合、離鍵開始直後に、それまで存在しなかった周波数成分の音が

出現する。これは、速い離鍵によって鍵のアクション機構が高速に元に戻る際に生じるノイズでは

ないかと思われる。このノイズは、Note off velocityが 25の場合には見られない。

2. Note off velocityが 127の場合、Note off velocityが 25の場合よりいずれの帯域についてもパワ

ーの減衰が速いが、特に高周波成分の減衰が著しい。

特にここで注目すべきは第2の差であり、周波数成分のパワーのこのような減衰の差は、音の消滅

の時間の違いとしてのみならず、音色の差としても知覚されるはずである。被験者実験によって、実

Off - velocity = 127

Off - velocity = 25

C

C

D

D

Note off メッセージ発行時刻

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図3 : 一人の被験者による 10回の演奏における Note on/off velocityの推移

際に音色がかなり違って聞こえることを確認している。具体的には、Note off velocity が 25の場合の

ほうが丸くやわらかい音色となる。このように、Note off velocityの差は知覚可能な差として現れ、しか

も単なる音の長さの違い以上の意味を持つので、これをコントロールすることは演奏表現上大いに意

味があることであると言える。

それでは、ピアニストは離鍵動作をどのように制御しているのであろうか。2.1 節で示したように、初級

者はこれについてあまり配慮していない可能性が高いので、熟練者の演奏データを収集し、その分析を

試みた。被験者は、大学でピアノ演奏を専攻する学生3名と、2.1節で指導者を担当した学生1名の、計

4名である。実験に使用した課題曲は、F. ショパンのエチュード作品 10 第 3 番(別れの曲)の冒頭8小

節のメロディ部分のみである。これをペダルを使用せずに、自分の納得いく演奏ができるまで練習しても

らった後、演奏を MIDI データとして記録し、分析した。図 3 に一人の被験者が 10 回演奏した際の Note

on velocity(図 3(a)) と Note off velocity(図 3(b))の推移を示す。なお、この図では平均値が 0になるよう

に velocity値を変換している。図 3(a)に見られるように、Note on velocityは 10回の演奏を通じて非常に

安定して再現されている。このように、練習を積んで演奏表現が確立された場合に打鍵速度の推移が非

常に再現性が高いものとなることは従来からよく知られている(たとえば Shaffer と Toddによる研究1など)。

一方、図 3(b)のNote off velocityの推移を見ると、(a)のNote on velocityの推移よりは変動が大きい。

この変動がどの程度意味を持つのかを調べるために、同じ一人の被験者に対し、一つの音を極力同じ

速度で 30回打鍵すること、および

極力同じ速度で 30 回離鍵するこ

とを試みてもらい、その標準偏差

を調べてみた。打鍵速度は p、mf、

f の 3 種類(それぞれ実際どの程

度の速度とするかは、具体的な数

1 L. H. Shaffer and N. P. Todd: The Interpretive Component in Musical Performance, Action

and Perception in Rhythm and Music, A. Gabrielsson(Ed.), the Royal Swedish Academy of

Music No.55, 1987

Average STDV = 2.24

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

35

37

39

Sequence number of notes

Nor

maliz

ed o

n-ve

locity

Perf. 1 Perf. 2 Perf. 3

Perf. 4 Perf. 5 Perf. 6Perf. 7 Perf. 8 Perf. 9

Perf. 10 Average STDV

Average STDV = 3.43

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

35

37

39

Sequence number of notes

Norm

aliz

ed

off

-ve

locity

Perf. 1 Perf. 2 Perf. 3

Perf. 4 Perf. 5 Perf. 6Perf. 7 Perf. 8 Perf. 9

Perf. 10 Average STDV

(a) Note on velocityの推移 (b) Note off velocityの推移

p / slow mf /medium f / fast Average On-velocity 3.95 3.59 1.80 3.23 Off-velocity 4.14 5.43 2.16 4.06

表1. 一人の演奏者が一つの音を極力同じ打鍵・離鍵速度に

なるように心がけて30回演奏した場合の打鍵・離鍵速度

の標準偏差

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値としては示さず、被験者の判断に任せた)、また離鍵速度はゆっくり(slow)、中くらい(medium)、速く

(fast)の 3種類(やはりそれぞれ実際どの程度の速度とするかは、具体的な数値としては示さず、被験

者の判断に任せた)とした。結果を表 1 に示す。この値は、一人の演奏者が同じ打鍵・離鍵速度を再

現しようとした際にどうしても生じてしまう避けがたい変動と言える。図 3中に示してあるように、10回の

演奏で得られた Note on velocityおよび Note off velocity の標準偏差の平均はそれぞれ 2.24およ

び 3.43 であり、表 1に示した平均値の 3.23(Note on velocity)および 4.06(Note off velocity)よりも

いずれも小さい。このことから、図 3(b)に見られる変動も、実際にはこの不可避な変動程度であること

がわかる。つまり、練習を積んで演奏表現が確立された場合には、離鍵速度についても打鍵速度と

同様にその推移が安定してくることが示された。なお、図 3(b)について詳細に調べると、標準偏差の

値が 4.06 より大きくなっている個所がいくつかある。特に、非常に離鍵速度が遅い個所で標準偏差

が大きくなっていることが多い。離鍵速度は、その絶対値よりは前後の値に対する相対差にむしろ意

味があると思われる。つまり非常に離鍵速度が遅い個所については、前後の音よりも「ぐっと」遅くする

ということに表現上の意味がある。2.1 節の図1で示した「遅離鍵個所の一致割合」においても、その

離鍵速度の絶対値を考慮しなかったのは同じ理由による。したがって、図 3(b)の標準偏差の大きい

個所については、離鍵速度の絶対値に差はあるが、ほとんどの個所で大きな極小値を一致して取っ

ており、相対差の点では同じであるので、表現上は変動していないとみなせよう。唯一、音符番号 17

~19の部分のみ表現上の変動があると思われる。

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

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25

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33

35

37

39

Sequence number of notes

Norm

aliz

ed

off

-ve

locity

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

35

37

39

Sequence number of notes

Norm

aliz

ed

off

-ve

locity

(a) 被験者 A (b) 被験者 B

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

35

37

39

Sequence number of notes

Norm

aliz

ed

off

-ve

locity

-30

-20

-10

0

10

20

30

1 3 5 7 9

11

13

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

35

37

39

Sequence number of notes

Norm

aliz

ed

off

-ve

locity

(c) 被験者 C (d) 被験者 D

図4 : それぞれの被験者についての Note off velocityの推移

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次に、演奏者間における離鍵速度の違いについて検討する。図 4に 4名の被験者それぞれの代表

的な演奏における Note off velocityの推移を示す。図 4に見られるとおり、個々の演奏者の Note off

velocity の推移の様子は相当異なっている。これは(ここにはデータを示していないが)、Note on

velocity の推移が演奏者が異なってもあまり大きく異ならないことと比べて対照的である。しかし、詳細

に調べると、個々の演奏者はそれぞれに一貫した Note off velocityの制御をしていることがわかった。

たとえば、

・ 被験者 A と B は速い velocity と遅い velocity を同程度に使用しているのに対し、被験者 C と D

はほとんど平均値一定の velocity を用い、所々で極端に遅い velocity を使用する。

・ 被験者 A は音価の大きい音(つまり長い音)の直前の音で velocity が遅くなるのに対し、被験者

B と Cは音価の大きい音の個所で velocityが遅くなる。被験者 Dは両者の中間である。

といったような特徴を見出すことができ、明らかに楽曲の構造と関連性をもった Note off velocityの制

御を行っていることがわかる。ただし、その制御の仕方は演奏者によってそれぞれ異なっており、Note

on velocityの場合のような一様なものではない。

以上の結果から、Note off velocityの制御は、その他の 3つの要素と同様に演奏表現構築におい

て重要な位置を占めるものであり、しかも演奏者個々の演奏表現の独自性と強く関連するものである

ことが明らかとなった。 2.3.理想の楽器を目指して ~「再現演奏」のための楽器を例題として~ 理想の楽器とは何かを一意に定義することは難しい。おそらく無数の視点からの、無数の定義があ

りうるのではないかと思われるが、私の考えでは以下の条件を満たす楽器が理想の楽器である:

1. 低い初期障壁:初心者の入門が容易であり、楽器に触れてすぐにそこそこの演奏ができて楽しめる楽器であること。

2. 上達の余地:さらに、練習を積むことによって、実感できる速度で上達することができること。

3. 極限における品質の高さ:最終的に到達可能な演奏表現のレベルは、既存の伝統的な楽器と比べて勝るとも劣らないものであること。

ほとんどの伝統楽器は初期障壁が非常に高い。この問題は、既存の楽器が非常に高い自由度を

持つことに起因すると考えられる。つまり、演奏者は常に全ての要素に気を配ってそれらを意図どお

りに制御するという困難な作業を強いられる。大多数の初心者はこの困難な作業を実現することがで

きず、楽器演奏をあきらめてしまうことになる。しかしながら、なんらかの楽曲の演奏において、伝統楽

器が持つ自由度のすべてを必要とする場面は、実際にはほとんどない。つまり、場面に応じて不必要

な自由度を削減もしくは削除して必要な自由度のみを残すようにすれば、余分な負荷が軽減されて

初期障壁が低減されると同時に、より本質的な作業に演奏者は直接取り組めるようになり、上達速度

が増すとともに演奏の質も向上すると思われる。

そこで近年、演奏者が行う必要のあった作業の一部を機械(計算機)に代行させて、演奏者に許す自

由度を削減することによって初期障壁を低くした「初心者用楽器」が多数開発されている。これらによっ

て、たしかにすぐに演奏を楽しむことはできるようになるが、上達の余地がない場合や、上達できたとして

も最終的に到達可能な演奏表現のレベルが低いものにとどまる場合がほとんどであるため、結局のとこ

ろこれらの楽器は飽きられてしまう。これは、自由度の削減が適切になされておらず、多くの場合、独自

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図5 : 試作した「再現演奏用楽器」のプロトタイプの構成

の演奏表現を実現するために必要な自由度まで過剰に削減してしまっていることに起因している。

どの自由度をどれだけ削減してよいかは、演奏する楽曲のタイプ、あるいは個々の楽曲に依存して決

まる。そこで本研究では、再現演奏と呼ばれるタイプの演奏を例題として、理想的な楽器のあり方を検討

した。再現演奏とは、クラシック音楽の演奏などに代表されるような、作曲家が作った楽譜どおりに音高

の並びとそれぞれの音の基本的な音価を再現する演奏のことである。このタイプの演奏においては、ど

のような旋律を演奏するかについての自由度は、演奏者には一切与えられていない。したがって、再現

された旋律には演奏者による差が表れないため、演奏者が独自性を発揮できる部分は、旋律に対する

「表情付け」となる。しかしながら、「表情付け」の段階に到るには、まず旋律を正しく再現できなければな

らない。初心者はまずこの段階でつまづき、表情付けの段階に到達しないままに挫折したり、場合によ

っては旋律の正確な再現のための技巧に習熟することが音楽演奏の上達であると勘違いするケースも

非常に多く見られる。また熟練者においても、旋律の正確な再現のための認知的・肉体的負荷が避けら

れないため、その持てる能力のすべてを表情付けのために注ぐことができなかった。

そこで先述した考えに基づき、再現演奏を対象とした楽器の構築を試みた。図 5に、試作したプロトタ

イプ楽器の構成を示す。再現演奏では、各瞬間において出力してよい音は限定されており、それ以外

の音を出力できる必要はないし、不要な音を出力できる自由度を残すことはミスタッチなどの誤りに結び

つくため有害であるとさえ言える。そこで試作した楽器は、演奏すべき楽曲の音高列データを、あらかじ

め楽曲データベースに登録しておき、演奏者が演奏インタフェース(図 5では鍵盤)上のどの操作子(図

5 では個々の鍵)を操作しても、音高列データの音高列を順に出力・再生するという構成とした。ただし、

打鍵/離鍵時刻ならびに打鍵/離鍵速度についてはシステムは一切手を加えず、演奏者が操作した

とおりに出力・再生する。したがってこの楽器では、音高の選択に関する自由度は削減されているが、表

情付けのための自由度は一切削減されていない。この結果、演奏者は極めて容易に旋律を正しく再現

演奏できると同時に、既存楽器と同等の高度な演奏表現を追及することが可能となっている。

このプロトタイプを使用して、音楽演奏経験がほとんど無い被験者から、18 年のピアノ演奏経験を持ち

大学でピアノ演奏を専攻している学生まで、幅広いレベルの被験者による演奏実験を行った。この結果

本システムによって、初心者から熟練者までどのようなユーザでも、満足できる演奏を容易に短時間で実

現可能であることがわかった。特に注目すべきことは、従来このような「支援機能付き楽器」は、熟練者に

音源

楽曲データベース

ソ ド ド レ ミ ソ ド

音高    シ

打鍵速度 67打鍵時刻 12:36:25.64離鍵速度 35離鍵時刻 12:36:26.32

音高    レ

打鍵速度 67打鍵時刻 12:36:25.64離鍵速度 35離鍵時刻 12:36:26.32

音高の置き換え

演奏どおり

音高列データ

音源音源

楽曲データベース

ソ ド ド レ ミ ソ ド

音高    シ

打鍵速度 67打鍵時刻 12:36:25.64離鍵速度 35離鍵時刻 12:36:26.32

音高    レ

打鍵速度 67打鍵時刻 12:36:25.64離鍵速度 35離鍵時刻 12:36:26.32

音高の置き換え

演奏どおり

音高列データ

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-10-

図6 : 熟練者による評価結果

とっては無用なものであると見なされていたが、実際には熟練者にとっても有用性があった点である。

図 6 に、熟練者を被験者とした実験の評価結果を示す。被験者は、ピアノ演奏経験 10~18 年の

音楽専攻学生 10 名である。課題曲は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲第 1 楽章から 95-102 小節

目とした。この部分は、音の動きが非常に速く、しかも音高のばらつきが大きいためきわめて難しく、

熟練者にとっても演奏は容易ではない。各被験者には、次の 3 通りの方法で課題曲の演奏データ

(MIDI フォーマット)を作成することを求めた:

(1) 通常のピアノを演奏用インタフェースとした本プロトタイプシステムを用いて、まず鍵盤を用いて

音高列データを作成した後、この音高列データを用いて本プロトタイプシステムによって演奏し

た結果をシーケンサで記録し、演奏データを作成する。(図6の「提案手法」)

(2) 通常のピアノをそのまま使用し、普通に演奏した結果をシーケンサで記録し、演奏データを作

成する。(図6の「通常」)

(3) シーケンサの持つ「ステップ入力機能」を用い、音高をはじめ、打鍵・離鍵タイミング、打鍵速度

などをすべて計算機のキーボードとマウスを用いて数値的に入力し、演奏データを作成する。

(図6の「ステップ」)

以上 3 つの方法によって課題曲の演奏データを作成し、その作業の難易度と、できあがった演奏データ

の満足度とを、0(難易度:非常にやさしい、満足度:非常に不満)から 5(難易度:非常に難しい、満足度:

非常に満足)までの 6段階で評価してもらった。なお、図 6の横軸の各項目意味は以下のとおりである:

音高: 個々の音の音高と、音高列の正確な入力についての評価

音長: 個々の音の長さの入力についての評価。なお、ここでいう「音の長さ」とは、楽譜上に示され

た個々の音符の「音価」だけではなく、微妙な時間的ゆらぎを含んだ音の長さのことである。

強弱: 音の強弱変化の入力についての評価

速度: テンポのゆらぎの入力についての評価

アティ: アーティキュレーションの入力についての評価。アーティキュレーションとは、一つ一つの

音の区切り方(たとえばスタッカートやレガートなど)のことである。

したがって、横軸は本来は名義尺度であるが、おおむね左側の項目ほど楽器の操作要素の複合度

0

1

2

3

4

5

音高 音長 強弱 速度 アティ

提案手法通常ステップ

0

1

2

3

4

5

音高 音長 強弱 速度 アティ

提案手法通常ステップ

(a) 難易度 (b) 満足度

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(つまり複数の要素を統合的に同時に操作する必要性)が低いのに対し、右側の項目ほど操作要素

の複合度が高い項目となっている。また、音高以外の項目は、すべて時間的変化を含んでいる。

さて、図 6 の結果を見ると、まず難易度については、提案手法が他の 2 つよりどの項目についても

易しく、また満足度については、提案手法が他の 2 つよりどの項目についても満足度が高いことがわ

かる。また、提案手法は横軸のいずれの項目についても、均一にやさしく、かつ均一に満足度が高い。

これに対し、「通常」と「ステップ」の2つの手法は、横軸の項目によって難易度・満足度が変動してい

る。「通常」の場合、右側の複合度の高い項目ほど易しくかつ満足度が高いのに対し、「ステップ」で

は逆に左側の複合度の低い項目ほど易しくかつ満足度が高い結果となっている。

「ステップ」の入力方法は、すべての要素をばらばらに、かつ非リアルタイムに入力する方法である

ため、各要素を独立に入力するのに便利である。したがって音高のような、ばらばらで離散的な項目

の入力に向いている。しかし、複数の要素が複雑に絡み合った複合度が高い項目や、時間的変化

を伴う項目の入力には向いていない。たとえば「クレッシェンド」は辞書的には「音の強さをだんだん強

くする」という意味だが、実際の演奏では単調に強くするわけではなく、拍子感なども考慮して複雑に

変動するし、またその箇所の個々の音符の長さも併せて微妙に変化する。このような項目については、

その構成要素を同時かつ統合的に、しかもリアルタイムに操作する方が自然であるため、操作を要素

レベルに分解して実時間の経過と切り離して入力することは、かえって作業を不自然で困難なものに

する。ゆえに、「ステップ」の場合は横軸の右側に行くほど難度が高く、満足度が低くなってしまう。

「通常」の入力方法の場合、一つの音高の音のみに着目すると、(音高選択以外の)すべての項目

の入力をひとつの鍵に対する操作で行え、それらの量やバランス、時間的変化を統合的かつリアルタ

イムに加減することができる。しかしながら、音高列の入力についてはひとつの鍵だけでは達成できず、

多数並んだ鍵群の中から、正確に必要な鍵を選択しなければならない。その際、音高以外の項目がリ

アルタイム入力であるために、音高の選択もリアルタイムに行うことを強いられる。これは楽曲が容易で

あればあまり問題にならないが、今回の課題曲のように難度の高い楽曲の場合には非常に困難となる。

そして、その困難さゆえに、本来この入力方法が得意とする項目の入力まで阻害されてしまう。このため、

図6(b)に見られるように、「通常」の結果は左側の項目ほど満足度が低く、右側の項目に行くにつれてゆ

るやかに満足度が上昇するものの、あまり高い値にはならないという結果となっていると思われる。

提案手法は、これら2つの手法の「良いところどり」をしたものとなっているといえる。つまり、入力プロセ

スを離散的で複合度の低い項目を入力する第一の段階と、複合度が高くリアルタイム性が要求される項

目を入力する第二の段階に分割し、それぞれの段階にそれぞれの項目の特徴に応じた入力方法を提供

することで、すべての項目について低い難度と高い満足度を実現したのである。特に再現演奏において

は、第一の段階は演奏者の独自性と無関係な段階であり、この段階の負荷が演奏全体の満足度、ひい

てはクオリティを下げている可能性がある。図6(b)の右側の項目において、提案手法における満足度が

「通常」と比べて大幅に増加しているのは、第一段階の負荷を大きく軽減したことによるものと見なすことが

できるだろう。

2.4.協調的な音楽演奏活動の拡張と支援 ~音楽コミュニティウェアの提案~ 以上、2.1 節から 2.3 節で示してきた演奏表現構築過程の分析およびそのための支援ツールは、

基本的には個人による演奏を対象としたものである。しかし、音楽演奏には、個人による演奏だけで

Page 12: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

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はなく、複数の演奏者による「合奏」というスタイルがある。合奏では、通常の音楽演奏の楽しみに加

えて、演奏者間で演奏中にリアルタイムに行われるインタラクションを楽しむことができる。このインタラ

クションが演奏者に与える影響はきわめて大きく、たとえできあがった音楽の質が高くなくとも、インタ

ラクションがうまくいけば、演奏者は非常な心地よさと達成感を得ることができる。したがって、「合奏」

という演奏スタイルに関して、特に演奏者間におけるインタラクションに注目した分析と支援ツールの

開発も、「幅広い層の人々がより自分の思い通りに音楽を演奏して楽しむことができるようにするため

の技術を確立する」という本研究の大目的の達成のためには必要となってくる。

そこで本研究期間においては、「いつでも・どこでも・誰とでも」気軽に合奏を楽しむことができるよう

な、ウェアラブルでモバイルな楽器を提案した。これは、単なる新楽器の提案にとどまらず、音楽を媒

介として人と人を結ぶ、新しいタイプのコミュニティウェアの提案とみなすことができる。図 7に、構築し

たシステム “CosTune” (衣装を意味する Costume と、楽曲を意味する Tune から作った造語)の構

成図と、今回開発・実装した「行きずりセッションプロトコル」の状態遷移図を示す。また、図 8 に、

CosTune を装着しての演奏の様子を示す。この例では、パンツ型(左)とジャケット型(右)の 2種類の

装着型インタフェースを使用している。

現在のプロトタイプでは、ジャケットやパンツの上に貼付されたタッチセンサを叩くと、どのセンサが

図8 : 2台の CosTuneによる「行きずりセッション」の様子

JacketTypeControlerJacketTypeControler

PantsTypeControlerPantsTypeControler

Sensor data

MIDI  I/FTone Generator(Yamaha MU15)

Headphone

MIDI dataWireless LAN

Laptop PC

Note On/OffMessages

Note No.Mapper

A/D Converter(iCube) ASP Process

Ad-hoc Session

PerformanceData

JacketTypeControlerJacketTypeControlerJacketTypeControlerJacketTypeControler

PantsTypeControlerPantsTypeControlerPantsTypeControlerPantsTypeControler

Sensor data

MIDI  I/FTone Generator(Yamaha MU15)

Headphone

MIDI dataWireless LANWireless LAN

Laptop PC

Note On/OffMessages

Note No.Mapper

A/D Converter(iCube) ASP Process

Ad-hoc Session

PerformanceData

セッション未参加状態

セッション中状態

初期状態S: 0 0 0A: 0 0

参加処理待ちS: 0 0 0A: 1 0

指定オープンセッションS: 1 0 1 A: 0 0

完全オープンセッションS: 1 1 0A: 0 0

離脱処理中S: 1 0 0A: 0 1

離脱処理中S: 1 0 1A: 0 1

離脱処理中S: 1 1 0A: 0 1

セッション離脱

条件変更 条件変更

条件変更

Action 第1ビット = 0セッション参加要求

セッション離脱要求 セッション離脱要求セッション離脱

要求

Action 第2ビット = 0

Action 第2ビット = 0

セッション参加新セッション立ち上げ

Action 第2ビット = 0

セッション参加失敗

クローズドセッションS: 1 0 0A: 0 0

セッション未参加状態

セッション中状態

初期状態S: 0 0 0A: 0 0

参加処理待ちS: 0 0 0A: 1 0

指定オープンセッションS: 1 0 1 A: 0 0

完全オープンセッションS: 1 1 0A: 0 0

離脱処理中S: 1 0 0A: 0 1

離脱処理中S: 1 0 1A: 0 1

離脱処理中S: 1 1 0A: 0 1

セッション離脱

条件変更 条件変更

条件変更

Action 第1ビット = 0セッション参加要求

セッション離脱要求 セッション離脱要求セッション離脱

要求

Action 第2ビット = 0

Action 第2ビット = 0

セッション参加新セッション立ち上げ

Action 第2ビット = 0

セッション参加失敗

クローズドセッションS: 1 0 0A: 0 0

(a)システム構成 (b) 行きずりセッションプロトコルの状態遷移

図7 : CosTuneの構成

Page 13: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

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どの程度の強さで叩かれたかに関するアナログデータが A/D コンバータによってデジタルデータ

(MIDI フォーマット)に変換され、MIDI インタフェースを介して PCに入力される。入力されたデータは、

Note no. Mapperによって、個々のタッチセンサに対して予め割り当てられている音のデータに変換さ

れる。この音のデータは、MIDIインタフェースを介してMIDI音源に入力され、実際の音としてヘッドフ

ォンから出力され、演奏者はこれを聞くことができる。一方、音のデータは、ASP(Ad-hoc Session

Protocol:行きずりセッションプロトコル)処理モジュールによってパケット化され、ワイヤレスネットワー

クから近傍に存在する別の CosTune ユーザに対してブロードキャストされる。受信されたパケットは、

ASP処理モジュールによって解析されて元の音データに還元され、MIDIインタフェースから音源に入

力され、ヘッドフォンから実際の音として再生される。このようにして、CosTune ユーザは自分と、自分

の近傍の別の CosTune ユーザの演奏を同時に聞くことができる。

同じ場所で複数のセッションが同時に存在することを可能とするために、「行きずりセッションプロト

コル」では個々のセッションに対し、その立ち上げ時にユニークな ID を付与する。CosTune ユーザは、

この IDを選択することによって、任意のセッションを聴取したり、好みのセッションに参加したりすること

ができる。現在、セッションの形態として、いつでも誰でも参加可能な「完全オープンセッションモード」

と、必要な楽器パートなどを指定して、その条件に一致する場合にのみ参加可能な「指定オープンセ

ッションモード」、および所定のメンバー以外参加できない「クローズドセッションモード」の 3 種類を用

意している。これら各モードは、セッション立ち上げ者によって随時自由に移行可能としている。

また CosTune を用いての演奏は、一般には歩きながら、しゃべりながら、ウィンドウショッピングをし

ながら、踊りながら、などの「ながら演奏」になると思われる。したがって、従来の楽器のように、その演

奏中には他のことを何もできなくなるようでは困るため、操作の簡便な演奏インタフェースが不可欠で

ある。このために、2.3節で示したような手法を採用することが有効と考えられる。現在のプロトタイプシ

ステムには、私が過去に提案した「音機能固定マッピング2」の考え方に基づく演奏インタフェースを

実装しており、主として即興的な演奏を簡単に実現できるようにしている。

このようなメカニズムによって、街角などで複数のCosTuneユーザが偶然出会ったとき、そこで即座

に「行きずりセッション」を楽しむことができる。この結果、見知らぬ者同士が音楽を媒介として出会い、

新たなコミュニティを形成することが可能となる。さらに、CosTune と同様の機能と大きなストレージを

備えたシステムを街角に設置し、その近傍に集う CosTune ユーザの演奏データを吸い上げて蓄積し

たり、あるいは逆にストレージに蓄えられた演奏データを近傍の CosTuneユーザに配信することにより、

「地域音楽文化のボトムアップ的形成」や「街の演出」などの面白く新しい応用を実現できる可能性も

秘めている。偶発的な出会いの場を即座に協調的な音楽演奏の場とする CosTune は、単なる新奇

な楽器にとどまらず、新たな音楽文化をもたらすシステムとして機能するであろう。

3.今後の展開 演奏の表現構築過程の分析と解明については、まだまさに端緒についたばかりといえる。特に、い

わゆる「解釈」のプロセスについてはまだまったく手付かずの状態にある。これは最終的には音楽演奏

2 西本 一志、渡邊 洋、馬田 一郎、間瀬 健二、中津 良平 : 創造的音楽表現を可能とする音楽演奏支援

手法の検討 ~音機能固定マッピング楽器の提案~、情報処理学会論文誌、Vol.39, No.5, pp.1556-1567,

1998.

Page 14: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

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における創造性とは何かということにつながる非常に困難な問題であるが、今後このプロセスの分析と、

その知見に基づく支援ツールの開発を進めたい。また、演奏支援楽器については、これまでに再現演

奏用楽器と、ジャズなどにおける和声進行が与えられている状態での即興演奏用楽器を開発してきた。

しかし、これらはまだ演奏上の制約が非常に多いので、より自由に使うことができるように改良する必要

がある。さらに、他のジャンルの演奏に使用できる楽器の開発や、子供の音楽教育を視野に入れた新

楽器の開発にも取り組みたい。装着型楽器については、レイヤー3 以下の通信プロトコルの新規開発

が必要である。また実用化に向けて、通信トラフィックの爆発の問題も解決しなければならない。

いつの日か、誰もが自分の心の中で鳴っている自分だけのすばらしい音楽を、お互い自由に聞か

せあうことができるようになることを願って、今後も音楽における創造性を触発支援するシステムの研

究開発に邁進する所存である。

4.成果リスト 学術論文等 1. 前川督雄、西本一志、多田幸生、間瀬健二、中津良平:ネットワーク型ウェアラブル音楽創奏システムによる日常生活空間演出構想の提案、日本バーチャルリアリティ学会論文誌、Vol. 6, No. 2,

pp.69-78, 2001.

2. Chika Oshima, Yohei Miyagawa, Kazushi Nishimoto and Takashi Shirosaki : Two- step Input

Method for Supporting Composition of MIDI Sequence Data, Entertainment Computing --

Technologies and Applications, pp.257-264, Kluwer Academic Publishers, 2003.

3. 大島千佳、西本一志、宮川洋平、白崎隆史:音楽表情を担う要素と音高の分割入力による容易なMIDIシーケンスデータ作成システム、情報処理学会論文誌、Vol.44, No.7, pp.1778-1790, 2003.

国際会議 1. Yukio Tada, Kazushi Nishimoto, Tadao Maekawa, Romain Rouve, Kenji Mase and Ryohei Nakatsu :

Toward Forming Communities with Wearable Musical Instruments, Proc. the 21st IEEE

International Conference on Distributed Computing Systems Workshops Mesa (ICDCS Workshops

2001), pp. 260-265, 2001.

2. Chika Ooshima, Kazushi Nishimoto and Akihiko Konagaya : Toward Computer Supported Piano

Lesson to Opportunely Advance to the Creative Stage, Proc. Artificial Intelligence and Soft

Computing (ASC2001), pp.85-92, 2001.

3. Kazushi Nishimoto and Chika Ooshima : Computer Facilitated Creation in Musical Performance,

Proc. Scuola Superiore G. Reiss Tomoli (SSGRR-2001: CD-ROM proceedings), L'Aquila, Italy,

Aug.6-12, 2001.

4. Kazushi Nishimoto, Tadao Maekawa, Yukio Tada, Kenji Mase and Ryohei Nakatsu : Networked

Wearable Musical Instruments Will Bring A New Musical Culture, Proc. The 5th International

Symposium on Wearable Computers (ISWC2001), pp.55-62, 2001.

Page 15: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

-15-

5. Kazushi Nishimoto, Chika Oshima, Yohei Miyagawa and Takashi Shirosaki : A Musical Instrument

for Facilitating Musical Expressions, CHI2002 Extended Abstracts, pp.722-723, 2002.

6. Chika Oshima, Yohei Miyagawa, Kazushi Nishimoto and Takashi Shirosaki : Two-step Input

Method for Supporting Composition of MIDI Sequence Data, Proc. First International Workshop on

Entertainment Computing (IWEC2002), pp.253-260, 2002.

7. Chika Oshima, Kazushi Nishimoto, Yohei Miyagawa, and Takashi Shirosaki : Coloring-in Piano :

Indiscrete Musical Elements are Essential for Performers, Proc. ICAD 2002 Rencon Workshop -

Performance Rendering Systems : Today and Tomorrow -, pp. 21-23, 2002.

8. Chika Oshima, Yohei Miyagawa and Kazushi Nishimoto : Coloring-in Piano : A Piano That Allows

A Performer to Concentrate on Musical Expression, In C. Stevens, D. Burnham, G. McPherson, E.

Schubert, and J. Renwick (Eds.), Proc. the 7th International Conference on Music Perception and

Cognition (CD-ROM Proc.), Adelaide: Causal Publications, Paper No.707, 2002.

9. Chika Oshima, Kazushi Nishimoto, Yohei Miyagawa, and Takashi Shirosaki : A Concept to

Facilitate Musical Expression, Proc. Creativity & Cognition 2002, ACM Press, pp.111-117, 2002.

10. Tadao Maekawa, Kazushi Nishimoto, Kenji Mase, and Makoto Tadenuma : A Wireless-networked

Wearable Musical Instrument with Which We Can Go to Town, Proc. 12th International

Conference on Artificial Reality and Telexistence (ICAT2002), pp. 170-173, 2002.

11. Tadao Maekawa, Kazushi Nishimoto, of Wearable MIDI Instruments, Conference Proceedings of

10th International Conference on Telecommunications (ICT'2003), Vol.II, pp. 1731-1734, 2003.

12. Kazushi Nishimoto, Chika Oshima and Yohei Miyagawa : Why Always Versatile? : Dynamically

Customizable Musical Instruments Facilitate Expressive Performances, Proc. of the 3rd

International Conference on New Instruments for Musical Expression (NIME03), pp.164-169, 2003.

13. Kazushi Nishimoto and Chika Oshima : Basic Analyses on Effects of Key-release Velocity in a

Piano Performance, Proc. of the IJCAI-03 workshop on methods for automatic music performance

and their applications in a public rendering contest, pp.46-53, 2003.

14. Chika Oshima and Kazushi Nishimoto : An Attempt of Performance Rendering Based on

Correlation Between Duration of Notes and Key-release-velocity, Proc. of the IJCAI-03 workshop

on methods for automatic music performance and their applications in a public rendering contest,

pp.76-77, 2003.

国内研究会等

1. 多田幸生、西本一志、前川督雄、間瀬健二、中津良平 : CosTune : 状況に応じた自己演出を可

能とする装着型楽器の実装、情報処理学会主催 インタラクション 2001 講演論文集、情報処理学会

シンポジウムシリーズ、Vol.2001, No.5, pp.37-38, 2001.

2. 大島千佳、西本一志:離鍵動作の変化に基づくピアノ・レッスンの分析、情報処理学会研究報告 音

楽情報科学 2001-MUS-41, Vol.2001, No.82, pp.21-26, 2001.

3. 大島千佳、宮川洋平、西本一志 : Coloring-in Piano : 表情付けに専念できるピアノの提案、情報

処理学会研究報告 音楽情報科学 2001-MUS-42, Vol.2001, No.103, pp.69-74, 2001.

Page 16: 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システム …...-1- 演奏構築過程の分析に基づく 音楽演奏支援システムの実現を目指して

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4. 宮川洋平、白崎隆史、大島千佳、西本一志 : Coloring-in Piano による 2 ステップ打ち込みの提案、

情報処理学会研究報告 音楽情報科学 2001-MUS-43, Vol.2001, No.125, pp.21-26, 2001.

5. 西本一志、大島千佳、宮川洋平、白崎隆史:離散的情報と連続的情報の分離による音楽演奏表現の支援、情報処理学会第 64回全国大会講演論文集(4)、pp.4-601--4-606, 2002.

6. 大島千佳、西本一志、宮川洋平 : CiP (Coloring-in Piano)、FIT ワークショップ「蓮根:目指せ世界

一のピアニスト」、http://shouchan.ei.tuat.ac.jp/~rencon/FIT2002/index.htm、2002. (CiP の演奏

は、聴き比べコンテストで 4位獲得)

7. 藤本貴之、西本一志 : 機能統合DJシステムによるDJパフォーマンスの支援とその可能性、情報処

理学会研究報告 2002-MUS-47、情処研報 Vol.2002, No.100, pp.47-52, 2002.

8. 藤本貴之、西本一志 : ブースをフロアへとシームレスに拡張するWearable DJシステム、エンタテイ

メントコンピューティング 2003論文集、IPSJ Symposium Series Vol.2003, No.1, pp.47-52, 2003.

9. 西本一志、前川督雄、辻靖彦、間瀬健二、蓼沼眞 : 装着型楽器 CosTune による「行きずりセッショ

ン」の実現、エンタテイメントコンピューティング 2003論文集、IPSJ Symposium Series Vol.2003, No.1,

pp.59-64, 2003.

10. 平賀瑠美、大島千佳、西本一志 : Rencon を外と内から眺めたら…、情処研報 2003-MUS-50,

Vol.2003, No.48, pp.33-38, 2003.

11. 宮下芳明、西本一志 : MIDI データからのクロマプロファイルの抽出と分析、情処研報

2003-MUS-51, pp.97-101, 2003.

解説記事・チュートリアル 1. 西本一志 : 音楽における創造的表現の支援、電子情報通信学会 2003 年総合大会講演論文集

(CD-ROM), 2003.

2. 西本 一志 : 心を表現するインタフェース、システム制御情報学会誌 システム/制御/情報、Vol.47,

No.4, pp.173-178, 2003.

3. 西本一志 : 音楽における創造的表現の支援、特集「エンタテインメントコンピューティングの事例」、

情報処理、Vol.44, No.8, pp.819-822, 2003.