空間結合符号 - ibismlibisml.org/archive/ibis2014/ibis_kasai.pdf空間結合符号 笠井健太...
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最近の符号理論の研究で分かったことルーピー BPによって解かれるシステムをいくつか用意して,チェイン状に結合させると大域的なMAP解をルーピー BPで解くことができる.
システムを L(= 5)個コピーしてもルーピー BPで訂正できるノイズレベルは個々のシステムのそれと同じだが,
隣と結合して大きな結合システムを作ると,ルーピー BPで訂正できるノイズレベルは個々のシステムがMAPで訂正できるノイズレベルまで向上する
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符号理論が解決しようとしている問題x = (x1, . . . , xn) ∈ C(H)を送信して y = (y1, . . . , yn)を受信する.
C(H) : = {x ∈ {0, 1}n|Hx = 0} (H ∈ {0, 1}m×n, n ≃ 105)
送信語は一様分布することを仮定
Pr(X = x) : =[x ∈ C]
#C
ノイズの統計的性質 Pr(Y |X)を知っていることを仮定する.簡単のために独立性も仮定する.
Pr(Y |X) =n∏
j=1
Pr(Yj |Xj)
符号理論の目的このとき,H をうまく設計して#C(H)を 2nI(X;Y )にできるだけ近づけて,エラーレート Pr(xj(Y ) = Xj)をできるだけ小さくする推定 xj(y)をO(n)の計算量で実現したい.
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符号理論が解決しようとしている問題の難しさ
エラーレートを最小にする推定はMAP推定 xMAP(y)である.
xMAPj (y) : = argmax
xj∈{0,1}pXj |Y (xj |y)
= argmaxxj∈{0,1}
∑
∼xj
pX|Y (x|y) ∼ xjは xj 以外の x
= argmaxxj∈{0,1}
∑
∼xj
pY |X(y|x)pX(x)/pY (y)
= argmaxxj∈{0,1}
∑
∼xj
pY |X(y|x) [x ∈ C(H)]/#C(H)
[x ∈ C(H)] = 0な x ∈ C の数は nの指数オーダなので,素朴なxMAPj (y)の計算は困難である.
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現代符号理論では,解くべき問題の拘束条件を利用者が設計できる前のスライドの最後の式MAP推定 xMAP(y)をルーピー BPで解けるように行列H を設計し,符号理論の目的を達成することに成功している.
pY |X(y|x)と [x ∈ C(H)]は次のように因子分解できる
pY |X(y|x) =n∏
i=1
pYj |Xj(yj |xj)
[x ∈ C(H)] =m∏
i=1
[ ∑
j:Hi,j=1
xj = 0]
ルーピー BPの信頼性グラフィカルモデルの局所木性により担保されるルーピー BPの低計算量スパースに因子分解できる (各因子の引数が少ない)ことで担保される
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ルーピーBPに適した行列Hの設計方法
Low-Density Parity-Check符号列重み l,行重み rである列数 nの行列H
例.l = 2, r = 4, n = 20
H =
⎛
⎜⎜⎜⎜⎜⎝
1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 10 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 00 0 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 01 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 00 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 0 00 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 1 00 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 0
⎞
⎟⎟⎟⎟⎟⎠, C = {x ∈ {0, 1}n | Hx = 0}
グラフィカルモデル
ルーピーBPに適した行列Hの設計方法Low-Density Parity-Check符号列重み dl,行重み dr である列数 nの行列H
例.dl = 2, dr = 4, n = 20
H =
⎛
⎜⎜⎜⎜⎜⎝
1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 10 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 1 0 00 0 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 01 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 00 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 0 00 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 1 00 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 0
⎞
⎟⎟⎟⎟⎟⎠, C = {x ∈ Fn
2 | HxT = 0}
グラフィカルモデル [x ∈ C(H)] =∏m
i=1
[∑j:Hi,j=1 xj = 0
]
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[x ∈ C(H)]
=m∏
i=1
[ ∑
j:Hi,j=1
xj = 0]
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消失通信モデルでルーピーBPの性能を測ろう
消失確率 ϵの消失通信路 BEC(ϵ)
Yj =
{? with probability ϵ
Xj with probability 1− ϵ
1 1次元のパラメータで表されるシンプルな方程式を解くことで,消失通信路における復号誤り率を評価できる.
2 消失通信路の評価に用いた1次元のパラメータを確率分布に拡張することで,容易に他の通信路における復号誤り率を評価することができる.
3 消失通信路でシャノン限界に達成する符号の構成法を開発すれば,一般の無記憶通信路でも同様な構成法でシャノン限界に接近する符号を構成できる.
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ルーピーBPの動作のもよう
x5 x7 x10 x12
x5 + x7 + x10 + x12 = 0 (∗)❄
ルーピー BPの途中で x5 =?, x7 = 1, x10 = 1, x12 = 0とすると,式 (∗)から,x5 = 1であることが分かる.
?がなくなるか,決定できる?がなくなるまで繰り返し更新する辺の数に比例する計算量O(n)で,訂正を完了できる.
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(l, r)符号のBEC(ϵ)におけるルーピーBPの訂正性能次数 rである拘束条件ノードのメッセージ消失確率
q(t) = 1− (1− p(t−1))r−1
次数 lであるビットノードのメッセージ消失確率
p(t) = ϵ(q(t))l−1
まとめると,
p(t) = ϵ(1− (1− p(t−1))r−1)l−1
= f(g(p(t−1)); ϵ)
BP閾値:(l, r)符号の性能を測る指標
ϵBP(l, r) = sup{ϵ | limt→∞
p(t) = 0}
ルーピー BPで訂正可能な最大ノイズレベルを表している.9 / 21
非空間結合システム (l, r)符号の性能解析 (つづき)
(l, r) ϵBP(l, r) ϵMAP(l, r)(2,4) 0.3333 0.33333(3,6) 0.4294 0.48815(4,8) 0.3834 0.49774(5,10) 0.3416 0.49949(6,12) 0.3075 0.49988(7,14) 0.2797 0.49997
非結合システム (l, r)符号のMAP閾値 ϵMAP(l, r)
ϵMAP(l, r) = sup{ϵ | 1
n
n∑
i=1
Pr(Xi = xMAPi (Y (ϵ))) = 0
}
x = (x1, . . . , xn) : (l, r)符号の符号語
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非空間結合システム (l, r)符号の性能解析
p(t)1 = f(g(p
(t−1)1 ); ϵ) · · · · · · · · · · · · p
(t)5 = f(g(p
(t−1)5 ); ϵ)
空間結合システム (l, r, L, w)符号の性能解析
p(t+1)i =
1
w
w−1∑
k=0
f( 1
w
w−1∑
j=0
g(p(t)i+j−k); ϵi−k
)
i = 1, 2, . . . , L
wは結合幅: w離れたシステムまで結合する (例.w = 2)
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空間結合符号システムの訂正過程デモのページ
reg36_eps048_animation.gifを開く
l = 3, r = 6, L = 51, w = 2, ϵ = 0.48
なぜ端から訂正されていくのかを説明するなぜ中から訂正されていかないのかを説明するスライディング復号法を説明する
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結合システムの訂正性能はどこまで向上しているのか?結合システム (l, r, L, w)符号の BP閾値 ϵBP(l, r, L, w)
ϵBP(l, r, L, w) = sup{ϵ | lim
t→∞p(t)i = 0, i = 1, . . . , L
}
結合システムの BP閾値は非結合システムのMAP閾値と一致する[2010 Kudekar et al., 2011 Takeuchi et al., 2012 Yedla et al. ]
limw→∞
limL→∞
ϵBP(l, r, L, w) = ϵMAP(l, r)
(l, r) ϵBP(l, r) ϵMAP(l, r)(2,4) 0.3333 0.33333(3,6) 0.4294 0.48815(4,8) 0.3834 0.49774(5,10) 0.3416 0.49949(6,12) 0.3075 0.49988(7,14) 0.2797 0.49997
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空間結合符号の定義 (範囲)
このように,BP復号の連鎖反応が端から起こり結合前よりも強いレベルの誤りを訂正することができる事を空間結合効果と呼び,空間結合効果が起こることを狙って設計された符号を空間結合符号と呼ぶ.
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Felstrom-Zigangirovの空間結合符号の構成法 (続き)
H ′ =
2. を L個コピーする3. 対角状にコピー行列を並べる.
4. 疎な帯行列であるパリティ検査行列H ′が得られる
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空間結合符号の万能性空間結合符号より前に開発されていた誤り訂正符号は通信路に依存した設計が必要であった空間結合符号は,任意の無記憶通信路だけでなく有記憶通信路に対してもその理論限界の訂正性能を達成することが知られている
yj =∑
i≥0
aixj−i + ξj
さらに,任意の通信路容量を有する任意の通信路に対して,レートレス符号器と復号器の単一のペアを用いてその理論限界性能を達成することが実験から予想されている
(x1, x2, . . . , x105)
(x1, x2, . . . , x105 , . . . , x2×105)
(x1, x2, . . . , x105 , . . . , x2×105 , . . . , x3×105)
どこで通信をやめてもその系列の符号化率でシャノン限界を達成することができる.
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バースト誤りに対する弱さ
空間結合符号の訂正過程はドミノ倒しのような連鎖反応である一時的にノイズレベルが高くなり訂正の連鎖反応を止めてしまうことがあるインターリーバを使うとスライディング窓法が使えなくなってしまう
連鎖反応の迂回路を作って連鎖反応が止まらないようにすれば良い
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有限計算量でシャノン限界達成へシャノン限界を達成するために,MAP閾値が良いものを探したいBP閾値<MAP閾値であるから,BP閾値がよい符号を空間結合すればいいんじゃないか?(l, r)符号のMAP閾値をシャノン限界まで到達させるためにはl → ∞, r → ∞が必要だが,l, rは訂正に必要な情報ビットあたりの計算量に比例するので大きくしたくないMacKay-Neal符号は2つの疎行列H とGを用いて定義される符号
CMN(H,G) = {y ∈ {0, 1}n|Gx = Hy, x ∈ {0, 1}k}
である.MacKay-Neal符号はルーピー BP復号では,反復復号の初期状態でアルゴリズムの不動点にいるので,結合しないと全く役に立たない.情報をドーピングして符号化率を落とすことで,動作するように修正して使っていた.MacKay-Neal符号のMAP閾値はシャノン限界と一致していて空間結合MacKay-Neal符号はルーピー BPにより情報ビットあたり有限の計算量でシャノン限界を達成する事ができる.
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