生体軟組織の粘弾性を 長期安定して再現可能なゲルの作成法...
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生体軟組織の粘弾性を長期安定して再現可能なゲルの作成法
千葉大学 フロンティア医工学センター准教授 菅 幹生
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エラストグラフィ概要
撮像室操作室
MRI装置
MRI制御装置
アンプ
波形生成器
弾性波画像 弾性率分布加振
解析手法
貯蔵弾性率[kPa]
0
4
MRI制御プログラム
弾性波
振動子
音圧発生器
肝線維症の病期判定やガンの良悪性の鑑別に有効な診断装置として、生体軟組織の粘弾性を評価可能なエラストグラフィがある。
MR elastography (MRE)
Visco-elastic parameters
P < 0.001
P < 0.01
弾性 粘性硬度
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MRIを用いた生体組織の硬度分布画像化手法MR Elastography: MRE
肝線維症のStage判定
http://discoverysedge.mayo.edu/de07-1-biotech-ehman/肝線維症正常肝
MREのメリット 生検による医療事故リスクとサンプルエラーの回避
短い間隔で経過観察可能
Philippe Garteiser et al., Eur. Radiology, 2169-2177, 2012
硬度
,弾性
,粘性
[kP
a]
硬度= 弾性2 +粘性2
硬度
[kP
a]
正常 良性腫瘍 悪性腫瘍 線維化
S. K. Venkatesh et al., Proc. ISMRM2008, 2781
*Meng Yin et al,
Clin Gastroenterol and Hepatol,
pp. 1207–1213 ,2007.
肝臓の平均硬度
硬度
生検
硬度 [kPa]
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新技術の概要
医療機器としての装置性能評価には,人体を模擬した物体(ファントム)を用いて評価しなければならない
エラストグラフィの定量性評価には,基準となる粘弾性物体が必要である。
本発明ではこのような用途に利用可能な長期安定性を有し、生体軟組織の粘弾性を再現可能なゲルを安定して作製可能とする。
小さい
高い
大きい
低い
偏り再現性
7
0貯蔵弾性率
[kP
a]
3
0
損失弾性率
[kP
a]
弾性率分布 粘性率分布
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従来技術とその問題点
• エラストグラフィで撮像可能な素材で,生体組織と同等な粘弾性の再現が困難
• 作製再現性が低い
– 企業: 歩留まりが低い.計測装置が必要
– ユーザ:信頼度が低く,基準として利用困難
• 保存が困難
– 企業: 受注作成,在庫管理が面倒
– ユーザ:適切な保存環境を用意する必要
• 壊れやすい
– 輸送や取り扱いが困難
等の問題があり、広く利用されるまでには至っていない。
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従来技術・競合技術との比較
寒天,ゼラチンゲル アクリルアミドゲル
粘弾性ヒト肝臓程度の軟らかさの場合,
自重により崩れる可能性が高いため容器のまま撮像する等の工夫が必要
ヒト肝臓程度の軟らかさでも,自重により崩れないようにできるため
容器から出して撮像可能
作成の容易さ
経時的変化
容易に作成可能加熱が必要
水素結合,イオン結合で架橋されるため,
弾性率が経時変化しやすくかびやすい
防腐剤(アジ化ナトリウム)は有毒
容易に作成可能モノマーの状態では有毒(劇物)であるが,
ポリマーの状態では無害
共有結合で架橋されるため
構造的に安定している乾燥を防げば室温保管で1年程度変化無し
測定装置や撮像技術の評価などに利用可能なファントム
• エラストグラフィ用ファントムに望まれる条件1. 定量性・再現性2. 長期的な使用ができる
• 経時的変化が小さい• 丈夫
3. 生体(健常組織,病変組織)に近い特性を持つ• 弾性,粘性• MRI信号のT1,T2緩和時間• 超音波信号強度
ポリアクリルアミドゲルファントム
主鎖 架橋剤 溶媒
アクリルアミド N,N’-メチレンビスアクリルアミド グリセリン (水)
貯蔵弾性率の調整(硬さの指標:G’)
3次元網目構造の形成損失弾性率の調整(粘度の指標:G”)
アクリルアミドゲル概念図
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架橋剤濃度を上げて崩れにくい形状
多量のグリセリン(約70%)により高粘性化
従来
架橋剤濃度を下げて3次元網目構造を緩める
→ グリセリンによる増粘効果向上を図る
低グリセリン濃度でも高粘性化を実現可能
提案法
不均一
均一
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
A B C
損失正接
肝線維症ステージ模擬ファントム
0
1
2
3
4
5
6
A B C
貯蔵弾性率
[kPa
] グリセリン 40% (提案)
グリセリン 70% (従来)
ファントムの粘弾性率導出の流れπ
-π
変位
[rad
]
7
0
貯蔵弾性率
[kP
a]
3
0
損失弾性率
[kP
a]
弾性波画像 弾性率分布 粘性率分布
強度画像
✓ 目標値に近い貯蔵弾性率
✓ 生体肝の損失正接の再現
✓ 均一性の向上
低グリセリン濃度の提案法で達成できたこと
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ゲルファントム
Φ 180 mm
高さ 160 mm
70%40%
グリセリン濃度
生体の損失正接
低グリセリン濃度で目標とする弾性率達成
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新技術の特徴・従来技術との比較
1. ファントムを再現良く作製するための条件を明らかにし,ファントム製造メーカーに対して生産性と品質向上を実現可能とする.
2. 扱いやすく,長期利用可能な標準ファントムの設計開発により,粘弾性測定装置メーカーと医療従事者等に対して測定装置の品質管理(QC)と品質保証(QA),点検,校正,操作者のトレーニングを可能とする.測定装置を点検,校正する標準物体(ファントム)はこれまでに無い
想定される用途• エラストグラフィを定量評価するための標準物質
• 粘弾性測定装置を定量評価するための標準物質
• 生体軟組織の粘弾性を模擬した人体モデル
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実用化に向けた課題
作製設備による作製再現性ファントムの蒸発を防ぐラップフィルムに亀裂が生じた場合の張り直しの手間
超音波エラストグラフィへの対応
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企業への期待
• 長期安定保管に必要なコーティング技術を持つ企業との共同研究を希望。
–蒸発を防ぎ,丈夫で柔軟性に優れた素材
–任意表面形状に対応可能
• 医用画像診断装置であるエラストグラフィや粘弾性測定装置の評価用ファントムとしての製造販売
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :ファントムの製造方法及びこれにより製造されるファントム
• 出願番号 :特願2016-173217
• 出願人 :千葉大学
• 発明者 :菅 幹生
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産学連携の経歴
• 2013年-2015年 (株)アールテックと共同研究実施
(経済産業省関東経済産業局戦略的基盤技術高度化支援事業
【小規模事業者型】 )
• 2015年- (株)日立製作所と共同研究実施
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お問い合わせ先
千葉大学 産業連携研究推進ステーション
産業連携コーディネーター 小柏 猛
TEL043-290-3565
FAX043-290-3519
e-mail [email protected]