無形資産評価©日本証券アナリスト協会 2010 5 1.はじめに...
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©日本証券アナリスト協会 2010� 5
1.はじめに
2.技術資産利益率の評価手法の検討
3.特許の質的レベルの持つ意義
4.特許の質的レベルを規定する各種の要素
5.特許の質的要素を用いた実証研究
6.まとめと課題
目 次
研究開発投資(インプット)から利益獲得(インカム)に至る過程は、研究開発ステップと、事業化ステップ
に分けることができる。そして、研究開発ステップから生み出される成果を特許の質的レベルによって測定し、
研究開発効率を確認することができる。また、特許の質的レベルと利益率との対比によって事業効率の適否を判
定することもできる。なお、特許の質的レベルは収益性と密接な親和性を有していることが求められる。
技術資産の経営的意義に関する分析と課題―技術資産利益率の評価手法の検討―
石 井 康 之
1.はじめに
今日、無形資産は企業経営にとって、欠くこと
のできない重要な資産として位置付けられるに至
った。刈屋[2005]は、「企業の価値創造能力が
有形資産から無形資産にシフトしてきた背景に
は、成熟社会の中で個人の価値観・嗜好が進化し、
価値を作る商品そのものが無形物の多様な複合体
となってきていることが指摘される」としている
が、その表現の仕方はどうであれ、無形資産が企
業価値の主たる源泉となっていることを否定する
者はいないであろう。
無形資産に類似する用語として、知的資産、知
的資本などといった言葉が用いられることがあ
る。Lev[2001]によれば、いずれの言葉も本質
的な差異を有するものではなく、無形資産が会計
上の文脈で、知的資産はエコノミストによって好
んで使用され、知的資本は経営や法律の側面にお
いて使用される傾向があり、それぞれ使用される
コンテクストが異なるだけであるとされる。しか
石井 康之(いしい やすゆき)
東京理科大学 専門職大学院教授。1974年一橋大学経済学部卒業後、東京海上火災保険株
式会社入社。91年9月より(財)知的財産研究所へ主任研究員として出向。2005年3月
専修大学経済学研究科(計量経済修士)修了後、同年4月より現職。08年7月より(社)
日本知財学会事務局長。主な著書として、『アーリーステージ知財の価値評価と価格設定』
(翻訳共同監修、中央経済社、2004年)、『知的財産の経済・経営分析入門』(白桃書房、
2009年)ほか。
無形資産評価