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統計基礎(第3回) 確率の基礎 早稲田大学大学院会計研究科 2019年10月16日 大塚忠義 1

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統計基礎(第3回)

確率の基礎

早稲田大学大学院会計研究科

2019年10月16日

大塚忠義1

講義資料

http://tyotsuka.cocolog-nifty.com/blog/

から各自事前にダウンロードしてください

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Agenda

第3回 確率の基礎

• 確率変数と確率関数

• 等確率の世界

• 条件付確率

• 事象の独立

• ベルヌーイ試行

• 二項分布

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課題(第1回)

野球チーム 早稲田スタカスティックスのメンバーの打率、100メートル走のタイム、視力について、それぞれ次の値を求める。合計、平均、中央値、最大値、最小値、範囲

同じくメンバーの打率、100メートル走のタイムについて、度数分布を作成し、それらをヒストグラムまたは折れ線グラフで表現する。

期限は10月23日

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確率変数(1)

・コインを1回投げ、根本事象:表または裏では、コインを1億回投げる時に対応できない

・日本人1億2千万人、年間100万人死亡する

・表=1、裏=0または死亡=1、生存=0とする

・コインを100回投げ、表が60回出る・日本人の年間死亡者数・明日の日経平均株価 5

確率変数(2)

・表=1、裏=0または死亡=1、生存=0というように根本事象を数値で表す・試行:コインを100回投げる:根本事象:1,1,1,1,1,1,1,1,0,0・・・(100個)2の100乗事象:表がX回出る全事象: 0≦X ≦100の101個の数値

・確率変数:事象を数値で表したもの6

確率関数(1)

・確率の表現

・コインを100回投げ表が50回出る

・全事象: 0≦X ≦100

は確率の公理を満たさなくてはならない 7

iP(X=x ) ip=

P(X=50) q=

100

i

0

P(X=x ) 1i=

=

P(X)

確率関数(2)

・関数の表現

xが定まれば、計算式によりyが一意に定まる

・確率関数

・確率のモデル化:ある事象の確率変数が定まるとその事象が発生する確率を求めることができる 8

( )y f x=

P(X= ) ( )x f x=

等確率の世界(1)等確率:すべての根本事象が同じ確率で起こると仮定

根本事象の数×根本事象の起こる確率=1

根本事象の起こる確率=𝟏

根本事象の数

このクラスからランダムに1人を選ぶあなたが選ばれる確率は?

等確率の前提で最も重要なのは根本事象の数を数えること

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等確率の世界(2)P(E)=事象Eの起こる確率=事象Eに含まれる根本事象の数

根本事象の数

P(E)についても確率の公理を満たす

例題)サイコロを2回投げて出た目の数の和が10になる確率を求めよ。なお、骰子の目の出方は等確率とする事象Eの数:46、55、64の3つ根本事象の数:6×6=36確率:1/12=3÷36

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等確率の世界(3)等確率:すべての根本事象が同じ確率で起こると仮定

骰子の目、コイン投げこのクラスからランダムに1人を選ぶ

先験的確率:根本事象が起こる確率をあらかじめ仮定すること

本当に等確率?

経験的確率:試行実験のなかで個々の事象が起きた割合を確率とする:死亡率etc…

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骰子の罠

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骰子は最初の乱数発生装置

正確な立方体であることが条件

実社会には、正確な骰子やコインはまれ

距骨:牛の後ろ足の踝。骰子のもととなる古代エジプトの遺跡で副葬品として見られる

経験調査試行実験のなかで個々の事象が起きた結果をもとに率を定める

統計的推論、仮説検定:統計学の発達商学、経済学の世界での成果

死亡率、事故の発生率の調査⇒近代保険業の誕生

散布度、平均からの乖離の調査・分析⇒ポートフォリオ理論、オプション価格理論⇒金融工学の誕生

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条件付き確率(1)P(B/A):条件付き確率:事象Aが起きたという条件のもとで事象Bが起きる確率

例1)コインを2回投げる。1回目表という条件下で2回目が表となる確率は?(等確率を仮定)1回目表という条件下でのすべての事象は表表、表裏の2つ、このうち2回目が表となる事象は1つ。従って確率は1/2

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条件付き確率(2)例2)壺のなかに赤玉3個、黒玉2個が入っている。1回目に取り出した球が赤の場合次に黒が出る確率赤を取り出した後壺の中には赤玉2黒玉2なので、1回目に赤を取るという条件下でのすべての事象は赤赤、赤赤、赤黒、赤黒の4つ、このうち2回目が黒となる事象は2つ。従って確率は1/2

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条件付き確率(3)

P(B/A)=𝐴∩𝐵に含まれる根本事象の数Aに含まれる根本事象の数

=P(𝐴∩𝐵)

P(𝐴)

P(𝐴 ∩ 𝐵 )=𝐴∩𝐵に含まれる根本事象の数すべての根本事象の数

P(𝐴 )=𝐴に含まれる根本事象の数すべての根本事象の数

P(𝐴 ∩ 𝐵 )= P(B/A) P(𝐴 ):乗法定理16

事象の独立(1)

P(B/A)= P(𝐵 )

P(A/B)= P(𝐴 )

P(𝐴 ∩ 𝐵 )=P(A) P(𝐵 )

のいずれかが成り立つこと

事象Aは事象Bに影響しない。事象Bは事象Aの起こる確率に影響しない

例1:独立、例2:従属

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事象の独立(2)

コインを2回投げる。1回目表という条件下で2回目が表となる確率は1/2

コイン2回、100回投げ:無理なく独立の前提が見込める

日本人1億2千万人、年間100万人死亡する

表=1、裏=0または死亡=1、生存=0とする

・コインを100回投げ、表が60回出る・日本人の年間死亡者数・明日の日経平均株価

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事象の独立(3)

統計処理を行ううえで、独立性の前提は極めて重要!!

多くの統計手法、確率モデルは事象の独立を前提としている

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博打の落とし穴

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丁半の目は半々、確率1/2

骰子の目は1/6 骰子の目は直前の結果に影響されない独立事象

でたら目の語源

博打での勝ち運に乗って儲ける

負けが込んでる。そろそろ逆目がでるころ

どちらが真実?

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独立性への疑問(1)

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死亡率、事故の発生率:各個人の死亡、個々の事故の発生は独立と仮定して保険制度が成立⇒パンデミック、大災害はその前提を崩し、保険会社を破綻させる

パンデミック:16~19世紀のペストの大流行はヨーロッパの人口を1/3に。。スペイン風邪は全世界で1千万人を超える死者

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独立性への疑問(2)

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大型旅客機は同時に墜落しない:Sep.11では4機同時に墜落

株価モデル、オプション価格モデル行動は過去の価格に影響される

⇉モデルエラーの発生

経済は理論通りの動きをしない行動ファイナンスの発達

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独立性への疑問(3)

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ほとんどの統計学の本は、コイン投げサイコロ投げから理論が展開される

多くのモデルで独立性は暗黙の前提

現実社会に独立な事象は、ほとんど存在しない:特に経済事象は。。

従属事象を独立としてモデルに入れたら正しい結果は得られない!

ゴミを入れた結果はゴミ

ベルヌーイ試行(1)結果が2種類しかない試行

コイン投げ、死亡、事故、成功・失敗

実世界にベルヌーイ試行は非常に多い

根本事象:成功=1、失敗=0

P(成功)=P(X=1)=pP(失敗)=P(X=0)=1-p=qp+q=1

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1( ) x xP X x p q −= =

ベルヌーイ試行(2)実世界の多くの現象をベルヌーイ試行に当てはめることにより、単純化する

骰子投げ:根本事象は1~6までの6つ1,2を成功、3~6を失敗とする

死亡率:死亡:1、生存:0人口100万人の都市で年間1000人が死亡死亡の発生は独立と仮定。100万回のベルヌーイ試行を足し合わせる死亡率p:0.001=1000/100万?:こんな単純ではないが。。。

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ベルヌーイ試行(3)

ブラウン運動:空間上の微小粒子(原子レベル)の移動2次元空間上、微小時間における右への移動:1、左への移動:-1

⇒微小時間を積み重ねることで粒子の移動法則を説明(移動事象は独立と仮定)

破産確率、信用モデル、オプションの価格モデルもブラウン運動を応用しているものがある

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二項公式

二項公式は確率の公理を満たす

関数はパスカルの三角形を使い、組合せとp,qをもとに展開できる

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2 2 2

3 3 2 2 3

1

( ) 2 1

( ) 3 3 1

( ) ( , , ) 1n

p q

p q p pq q

p q p p q pq q

p q f p q n

+ =

+ = + + =

+ = + + + =

+ = =

二項分布

確率事象n回の試行でx回成功する根本事象の数:2のn乗成功、失敗の確率:p、qN回の事象は独立であるという前提が必要確率関数X=xの確率は、n,x,p,qで表現できる

⇒確率を数式で表現することにより、パラメーター(母数という、この場合p)が定まると確率が求まる

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( ) x n x

n xP X x C p q −= =

課題(第2回)

次の3問について、回答および回答を求める経過を10/30までに報告をお願いします報告先:コースナビ

1.サイコロを3回投げて出た目の数の和が6以下になる確率を求めよ。なお、骰子の目の出方は等確率とする

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課題(第2回)2.壺のなかに赤玉5個、黒玉3個、白玉2個が入っている。取り出した球が3回続けて赤

である確率を復元抽出、非復元抽出の両方の場合で求めよ

3.コインを10回投げて表が5回出る確率を

求めよ。なお、コインの表裏の出方は等確率とする

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Question?

お疲れ様でした

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