立命館国際研究 20 october · 2019. 10. 31. ·...
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論 説
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(夏 ,立命 大学国 系系教授)
日中の社会・文化の多面的比較(風土・国情篇)――地理人文学的考察(5)
キーワード:日中比較、風土・国情、民族精神、世界戦略、国際競争
本稿は中国と日本の特質を客観的に把握する為、風土・国情の比較に焦点を当て、存続の基
礎的諸条件及び其に影響される心性構造を論じる物である。連載の第1-4回では、国土・人口
や地形・気候、国勢と国民性・地域性を考察し、天災・人災(戦争や環境破壊等)に絡んで
「命」(命脈・宿命)と「形」(形態・様式)を浮き彫りにし、国家観念・民族意識ナショナル・アイデンティティ
の角度から
両国の位相を掘り下げ、地理に関わる政治・経済・文化の諸問題を分析し、「表徴の帝国」の
記号の読解や歴史・観念の伝統への照射を試みた。今回は「全球グローバル
化時代」下の「海洋文明」と
の関り方を軸に、21世紀の両国の発展の展望に力点を移す。
特に検証・詳説した見解は、次の諸点である。①西湖凹陥海盆の東海石油瓦斯田群の命名に
隠れた毛沢東時代の投影、及び東南沿海の黄金地帯との地理・人文上の繋がりから、箱庭的島
国・日本を凌ぐ中国の遠大な資源戦略と旺盛な海外進出が見て取れる;②北京と京都の首都建
設の根底の「龍脈・龍穴」発掘・活用の風水思想を手掛りに、平和・繁栄・強盛の持続を願う
民族の精神的基盤・地下水脈を読み取り、国運の維持・発展に於ける中国の列強撃破の為の意
地と日本の米国依存の故の萎縮を比較する;③領海の拡大や超高層建築の世界一を巡る国際競
争の中の覇気の強弱の差から、中国が先頭を飛び日本が「4小龍」(韓国・台湾・香港・新嘉
坡)・「4小虎」(インドネシア・泰・マレーシア・比律賓)の後を追う「逆雁行型成長」の
趨勢が予感される。
(夏 剛[XIA Gang]立命館大学国際関係学部教授)