皮下脂肪織炎様t細胞リンパ腫 の 診断におけるfdg...
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皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫*の診断におけるFDG‐PETの有用性
群馬大学医学部附属病院 核医学科守屋真吾 有坂有紀子 樋口徹也
織内昇 遠藤啓吾
*SPTL: Subcutaneous panniculitis‐like T‐cell Lymphoma
症例1: 70歳 女性
<主訴>
上肢、体幹の皮下硬結
*発熱・盗汗・体重減少(-)
<既往歴>
69歳:RA
<家族歴>
父:胃癌
<現病歴>
H17年頃~:両側上腕に皮下硬結が出現
⇒ A病院にて生検⇒ no malignancyで経過観察
H19年3月:皮下硬結が手拳大に増大
⇒ B病院にて生検⇒脂肪織炎と診断
⇒ PSL 10mg開始し症状は軽快
H19年8月:両側上腕~胸に皮下硬結が再び出現
⇒ B病院受診⇒ 10月当院皮膚科を紹介受診
H19年12月:精査目的で当院皮膚科入院
<検査所見>WBC 3300, RBC 414x10⁴, Hb 12.7, Plt 21.1x10⁴, TP 6.7, Alb 59.1, T‐bil 0.6, AST 38, ALT 25, LDH 219, γGTP 25, BUN 11, CRP 0.3, Na 138, K 3.5, Cl 102, 抗DNA抗体 <1, CH₅₀ 58.8 U/ml, sIL‐2R 505 U/ml<細胞表面マーカー>B cell系: CD10‐, CD19‐, CD20‐, CD23‐T cell系: CD2+, CD3+, CD4‐, CD5+, CD7+, CD8+, CD56‐<遺伝子再構成>TCRcβ +
<組織診>
・皮下脂肪織に腫瘍細胞や組織球の浸潤を認める。
・真皮の血管周囲にも軽度のリンパ球浸潤を認める。
・表皮には腫瘍細胞や組織球浸潤は認めない。
診断:Malignant lymphoma, suggestive of subcutaneous pnniculitis‐like T cell lymphoma
ガリウムシンチグラフィ
CT
CT
FDG‐PET(治療前)
max SUV=16.6
FDG‐PET (治療前)
FDG‐PET(CHOP3クール終了後)
G‐CSF使用
FDG‐PET(CHOP3クール終了後)
FDG‐PET(CHOP3クール終了後)
症例1 まとめ
<診断>
皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
<経過>
CHOP 3コースにより完全寛解
症例 2: 78歳 男性
<主訴>
四肢・顔面の皮下硬結
*発熱・盗汗・体重減少(-)
<既往歴>
H11年~:脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎
<家族歴>
特記事項なし
<現病歴>
H15年頃~:両側上腕に皮下硬結が出現
H17年6月 :顔面・下肢・体幹にも皮下硬結が出現 ⇒近医を受診
H17年7月:当院皮膚科を紹介受診
⇒生検にてmalignant lymphoma s/o.
H17年7月:精査加療目的で皮膚科入院
⇒ Peripheral T‐cell lymphoma, unspecified
H17年9月:再入院
<検査所見>
WBC 5600, RBC 436x10⁴, Hb 13.2, Plt 20.2x10⁴,
TP 6.1, T‐bil 0.5, AST 24, ALT 18, LDH 201,
BUN 19, Cre 1.1, CRP 1.2,
<細胞表面マーカー>
B cell系: CD19‐
T cell系: CD2+, CD3+, CD4+, CD5+, CD7+, CD8+, CD56+
<遺伝子再構成>
TCRcβ +
ガリウムシンチグラフィ
CT
FDG‐PET(治療前)
<診断>
Peripheral T‐cell lymphoma, unspecified
<経過>
再入院直後に死亡
症例2 まとめ
SPTLとは?
• 1991年、Gonzalezらにより提唱された疾患*• 脂肪織炎に似たT細胞リンパ腫と報告されたのが始まり
• 罹患率は不明(100万人に1例程度?)• WHO分類では皮膚T細胞リンパ腫の一種
*Gonzalez CL, et al. T‐cell lymphoma involving subcutaneous tissue: a clinicopathologic entity commonly associated with hemopagocytic syndrome. Ame J Surg Pathol. 1991; 15:17:17‐27
SPTLの特徴
• 男女差・年齢差(-)• 症状は多発性・有痛性の皮膚腫脹や皮下硬結• 上下肢→体幹・顔面• リンパ節腫脹(-)• 皮下脂肪織に腫瘍細胞が浸潤• 真皮への浸潤(-)• 強力な多剤併用化学療法、予後良~不良
SPTLは2つのサブタイプに分類*① STPL‐AB・TCRがαβ鎖から成る ・CD4‐, CD8+, CD56‐・軽症例多く、予後良好5生率:82%
② SPTL‐GD・TCRがγδ鎖から成る ・CD4‐, CD8‐, CD56‐/+・重症例多く、予後不良5生率:11%
*Rein Willemze, et al. Subcutaneous panniclitis‐like T‐cell lymphoma: definition, classification, and prognostic factors: an EORTC Cutaneous Lymphoma Group Study of 83 cases. Blood. 2008 111: 838‐845
まとめ 1
• 今回我々は、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫の
1症例を経験した。
• 症例1は、SPTL‐ABに該当すると思われる。
• 本症例では、Gaシンチでの正確な病巣進展範囲の診断は困難であった。
• 一方、FDG‐PETでは、一回の検査で進展範囲を明瞭に診断でき、治療効果判定にも有効であった。
まとめ 2
• 他の皮膚T細胞リンパ腫との鑑別が問題となるが、画像上はリンパ節病変や内臓病変を伴わない点が特徴的である。
• 難治性で原因不明の脂肪織炎様所見をみた場合、SPTLを念頭に置き早期にFDG‐PET検査を行うことで、病巣進展範囲の把握、生検部位の決定が可能となる。 これにより、診断精度が向上し、早期治療が可能となり、治癒率の向上にも寄与すると思われる。
ご静聴ありがとうございました。
<組織診>
・皮下脂肪織に脂肪細胞を取り囲むように異型リンパ球の増殖を認める。
・真皮の血管浸潤も認める。
診断: Peripheral T‐cell lymphoma, unspecified
皮膚T細胞リンパ腫• 菌状息肉症• Sezary病
• 未分化大細胞型リンパ腫(リンパ腫様丘疹症)• Paget病
• 成人T細胞白血病/リンパ腫
• NK/T細胞リンパ腫
• 皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
• 上記に該当しない皮膚T細胞リンパ腫
*新WHO分類、EORTC分類:統一見解はない。
菌状息肉症/Sezary病の病気分類決定要素
T :皮膚病変(10%? 単発? 紅皮症?)
Ad:リンパ節触知
LN:リンパ節病変(生検;反応性? 異型細胞?)
V :内臓病変
B:血液所見(スメアで異型細胞?)
SPTL‐ABの生存曲線
46%
46%
91%
SPTL‐GDの生存曲線
22%
WHOはdoxorubinを軸としてCHOP療法を勧奨
しかし、
・ SPTL‐ABとSPTL‐GDでは予後が全く違う
・ SPTL‐ABはHPSの有無で予後が差がありそう
・ CHOP療法、ステロイド療法、免疫抑制療法の
いずれでも完全寛解は同程度(60%前後)
・一方、SPTL‐GDではHPSの有無、CD56‐/+に関係なく予後不良
つまり、
SPTL‐ABとSPTL‐GDは別疾患として考えた方がいい