熱間回転鍛造...

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14 SOKEIZAI Vol.54 2013No.2 熱間鍛造は古くから使用されてきた塑性加工法のひとつである。その中 でも様々な環状部品の代表的な加工法である熱間回転鍛造「リングロー リング」について概要を解説し、現状の課題やその取組みの一部につい て紹介する。 熱間回転鍛造 リングローリング 1.はじめに 野 見 山 智 広  三菱長崎機工 ㈱ 近年、熱間鍛造加工においてもますます高精度化、 自動化、省エネ化が求められているが、実際の鍛 造作業については今だに経験と勘にたよることが多 い。しかし最近の塑性変形の解析技術や鍛造設備の 制御技術の進歩によって高精度化などの様々な要求 に対応できるフレキシブルな鍛造設備の開発が進め られている。リングローリング鍛造についても他の 鍛造加工と同様に様々な要求に対応するよう開発が 進められている。ここではリングローリング鍛造の 概要と現状での課題と開発の動向などについて紹介 する。 2.1 リングローリングの特徴 リングローリングは環状部品の代表的な加工法で あり、矩形断面から異形断面まで各種フランジやギ ヤ、ベアリングレースなどの成形に使用されている。 リング材の加工方法としては、鍛造プレス・ハンマ による自由鍛造やフラッシュバット、矯正などの方 法がありリングローリングと製法上競合する。この リングローリングとは鍛造プレスなどにより予備成 形されたドーナツ状の材料を回転するロール間で半 径方向の厚みを圧下することによりその断面を減少 させながらリング外径を拡径させる加工法である。 また、それらの加工法を行うための機械をリング ローリングミルという。 リングローリングはリング成形が回転によって行 われ、部分接触による連続的な圧下であるのでプレ スなどによる鍛造法でのリング成形と比較して小さ 2.リングローリング鍛造 な圧下力で成形が行え、鍛造プレス設備と比較する と騒音や振動が少なく作業環境が良好であると言え る。また、連続的な材料流れが得られ高い圧下率に より良好で微細な結晶組織及び滑らかな表面状況と 良好な寸法精度も得ることができる。さらにリング ローリングは比較的工具設備が単純であるので多品 種少量・大量生産のいずれにも対応でき、特に異形 断面の成形ができ機械加工代についても少なくする ことができるので歩留りの良いリング成形が可能で ある。 リングローリング鍛造の始まりは 100 年以上前に ヨーロッパで考案され、当初は主に鉄道用タイヤの 製造に用いられていた。日本国内でも 1900 年初め頃 に導入され鉄道の発達と共に鉄道用タイヤが量産さ れるようになった。さらにベアリングや自動車の需 要が増大するとともにベアリングレースやギヤ素材

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14 SOKEIZAI Vol.54(2013)No.2

熱間鍛造は古くから使用されてきた塑性加工法のひとつである。その中でも様々な環状部品の代表的な加工法である熱間回転鍛造「リングローリング」について概要を解説し、現状の課題やその取組みの一部について紹介する。

熱間回転鍛造 リングローリング

1.はじめに

 野 見 山 智 広 三菱長崎機工㈱

 近年、熱間鍛造加工においてもますます高精度化、自動化、省エネ化が求められているが、実際の鍛造作業については今だに経験と勘にたよることが多い。しかし最近の塑性変形の解析技術や鍛造設備の制御技術の進歩によって高精度化などの様々な要求に対応できるフレキシブルな鍛造設備の開発が進め

られている。リングローリング鍛造についても他の鍛造加工と同様に様々な要求に対応するよう開発が進められている。ここではリングローリング鍛造の概要と現状での課題と開発の動向などについて紹介する。

図 2 金型修理工数の比較例

2.1 リングローリングの特徴 リングローリングは環状部品の代表的な加工法であり、矩形断面から異形断面まで各種フランジやギヤ、ベアリングレースなどの成形に使用されている。リング材の加工方法としては、鍛造プレス・ハンマによる自由鍛造やフラッシュバット、矯正などの方法がありリングローリングと製法上競合する。このリングローリングとは鍛造プレスなどにより予備成形されたドーナツ状の材料を回転するロール間で半径方向の厚みを圧下することによりその断面を減少させながらリング外径を拡径させる加工法である。また、それらの加工法を行うための機械をリングローリングミルという。 リングローリングはリング成形が回転によって行われ、部分接触による連続的な圧下であるのでプレスなどによる鍛造法でのリング成形と比較して小さ

2.リングローリング鍛造

な圧下力で成形が行え、鍛造プレス設備と比較すると騒音や振動が少なく作業環境が良好であると言える。また、連続的な材料流れが得られ高い圧下率により良好で微細な結晶組織及び滑らかな表面状況と良好な寸法精度も得ることができる。さらにリングローリングは比較的工具設備が単純であるので多品種少量・大量生産のいずれにも対応でき、特に異形断面の成形ができ機械加工代についても少なくすることができるので歩留りの良いリング成形が可能である。 リングローリング鍛造の始まりは 100 年以上前にヨーロッパで考案され、当初は主に鉄道用タイヤの製造に用いられていた。日本国内でも 1900 年初め頃に導入され鉄道の発達と共に鉄道用タイヤが量産されるようになった。さらにベアリングや自動車の需要が増大するとともにベアリングレースやギヤ素材

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特集 回転成形技術の動向

用といった小型のリング部品にも使用されるようになった。また、タイヤ用を除く大型のリング部品についても建設機械や産業機械設備用の大型リングならびにフランジの需要の増大により使用されている。 リングローリングにおいて表 1に示すように変形抵抗の低い炭素鋼は言うに及ばず、変形抵抗の高いスーパーアロイなどを材料とする航空・宇宙産業、ガスタービン、原子力プラントなどの部品類にも適用されるなどあらゆる産業分野のリング材がリングローリングにより成形されている。リングローリングされる金属材料は、炭素鋼やニッケル・コバルト系合金、チタン系合金などだけでなく銅、アルミウムなど広範囲の金属材料の圧延が可能である。 近年ではリングローリングの大型化、難加工材へのさらなる適用によって最大リング外径がφ9000mm、圧延力が 1000ton を超える設備も導入されている。

2.2 リングローリングミルの特徴 次にリングローリングミルの構造について説明する。(1)横型(ラジアル型)リングローリングミル 図 1に示すように半径方向の厚みをロール圧延することによって外径を拡径する構造でリングローリ

図 1 ラジアル型

ングの初期から使用されている。図2のようなフィッシュテールを防止することができない。

(2) 横型(ラジアル-アキシャル型)リングローリングミル

 図 3に示すようにラジアル型の欠点であるフィッシュテールの発生を防止するためにリング断面の高さ方向を圧下する機構を追加したリングローリングミルである。 その他構造上ではリング材を水平方向に置くか、垂直方向に置くかによって、横型式と縦型式があるが、製品重量や搬入出の点から横型式が主に採用さ

表 1 製品用途

用途 部品名

機械部品(産業・建設・土木) 溝付きタイヤ、歯車、ボールレース、ベアリングレース、ドラムタイヤピストンリング

輸送機器(鉄道・船舶・自動車) 車輪、タイヤ、歯車、フランジ、電気機関車用駆動歯車、舶用歯車プラント(配管・石油化学) 反応塔用フランジ、熱交換用フランジ、カップリング、ベアリングカバー

航空機エンジン ケースタービン、ケースコンプレッサー、エアシーリング、ノズルベアリング、フランジ、ファンケース、ベアリングサポート

ガスタービン シールレールリング、ノズル、コニカルシーリング、フランジ原子力プラント フランジ、ガイドリング、カップリング風力発電プラント ギヤ、タワーフランジ

図 2 フィッシュテール

図 3 ラジアル-アキシャル型

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れている。縦型式には図 4 a、bの示すようにラジアル型のロール構造で圧延方向を単純に地面に対して斜めや垂直に傾けたものや一般的に斉藤式と呼ばれる日本独自のリングローリングミルがある(図 5)。この斉藤式リングローリングミルは軸が一定の角度で傾斜して駆動する 2ケのメインロールと従動するマンドレルとで肉厚方向と高さ方向が圧下され、さらに数個配置されたガイドロールでリングを拘束し圧延を行う。

 この型式の機械は、以下の各種ロールから構成される。① メインロール:地下ピットないしフレーム下部に設置された電動機、減速機を介して回転駆動される。② マンドレル:基本的に回転駆動はなく圧延時はリング材を介してメインロールの回転により従動回転する。リング半径方向の圧延を行う。その圧延はマンドレルをドーナツ状の荒地の穴に挿入しメインロールへ押し付けて行う。③ アキシャルロール:リング高さ方向の圧延を行う。メインロールの反対側に配置され、円錐形をして上下一対をなしている。上下ロール共駆動される場合と上ロールのみ駆動される場合があり、DCモータやインバータが使用される。④ センターリングロール:メインロールの両側にそれぞれ 1ヶずつ配置され、圧延中のリングをガイドし、リングの滑らかな回転と真円を保つ役割を持つ。⑤ メジャーリングロール:上下アキシャルロール間に配置され圧延中、常に接触しリングの外径を計測する役割を持つ。 各ロール移動用のアクチュエータは油圧を駆動源としている。また、小型リング成形では油圧駆動に変わりサーボモータを駆動源としたメカ式リングローリングミルが使用されている場合もある。このメカ式リングローリングミルは油圧式と比較して油管理が不要、運転時の騒音の減少、高精度などの利点があるが能力的な制約があり、油圧式ほど一般的でない。

2.3 リングローリング成形2.3.1 リングローリングの工程 リングローリングでのリング素材は回転炉やバッチ炉、インダクションヒータなどで加熱された後、油圧プレスやメカ式プレス、ハンマなどを使用して自由鍛造または金型で閉塞鍛造され、その後リングローリングミルで所定の形状、寸法まで成形される。荒地成形の工程は一般的に据込み、ポンチング(穿孔・成形)、ピアシング(穴明け)の 3工程で行われる。また、リングローリングの後工程として所定の熱処理を行い、機械加工、試験・検査を経て最終製品となる。これらリングローリングを使用したリング成形の一連の工程を図 6に示す。一般的な鋼材で矩形断面や単純異形断面のリングローリングでは荒地鍛造後の再加熱やプリローリングを行わず、荒地鍛造-最終成形リングローリングを連続的に行う場合も多い。通常は荒地鍛造やそのハンドリング、リングローリングミルとそのリング搬入出などの各工程に作業

図 4 縦型リングローリングミル

(a)

(b)

図 5  斉藤式リングローリングミル

 ここでは今日主流として使用されている横型(ラジアル-アキシャル型)リングローリングミルについて詳しく構造を説明する。

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特集 回転成形技術の動向

図 6 リング製造工程

員を複数人配置してリング圧延作業を実施するが、市販のハンドリングロボットなどのマテハン装置を使用し各工程を連動化して最小人員の配置でリング圧延が可能なラインの自動化も進められている(図 7)。

2.3.2 リングローリングの制御 リングローリングは材質、荒地重量、断面形状、鍛造温度など様々なファクターにより圧下速度や圧延力に微妙なコントロールが必要で、この操作は熟練の作業者による手動圧延で行われ、加工精度や生産性は作業者に左右された。しかし近年は油圧技術及び制御技術の進歩とともに自動化が完成されている。 一般的な自動圧延のプロセスは以下のように制御される。(1)半径方向圧延 一定速度で回転するメインロールとマンドレルの 2つのロール間で圧延され、マンドレルを主ロール側に移動させ荒地の肉厚を減少させ、リングを拡径させる。適切に設定されたリング拡径速度となる

ようマンドレルの圧下速度が制御される。最終外径到達付近では拡径速度を遅くし、リング仕上がり精度の向上が図られる。(2)高さ方向圧延 円錐形をした上下2つのアキシャルロールで高さ方向の圧延が行われる。リング形状に適した圧下制御により仕上がり高さに移動するよう位置制御される。(3) アキシャルフレーム後退位置制御とアキシャル

ロール回転数制御 アキシャルロールとリングの接触部分で周速が異なりスリップが起きるとリングが振られ、精度の良いリング圧延を行うことができない。そこでアキシャルロールの仮想頂点とリング中心位置を一致させそれぞれの周速が同じになるようにリングの拡がりに応じてアキシャルフレームを後退させる。つまりリング外径成長量の 1/2 でフレームが後退すれば常にこの状態を保持することができ、刻々と変化するリングとアキシャルロール接触部分の周速を一致させるようDCモータやインバータを採用して回転数を可変制御させる(図 8)。

 しかし、この方式で例えば外径φ4500mmのリングを圧延するとすれば長さ 2250mm のアキシャルロールが必要となるが、実際にはそのような長さは

図 7 自動圧延ライン

図 8 アキシャルロール回転数

アキシャルロール

マンドレル

メインロール

n5Ni Vdi・π

最終リング

アキシャルロール回転数

周速:V n4

n1

d1d2

d3

d4

d5

n2

n3

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構造上困難であり、大径用リングローリングミルでもアキシャルロール長さは 1000mm程度である。アキシャルロール長さ× 2倍を超える外径を圧延する場合、スリップを享受しながら圧延するパターンが一般であるが、このスリップにより、 -アキシャルロールの摩耗を早める -リングの振れや浮上がりなどを発生させるといった影響がある。このスリップを防止するためにアキシャルロールの回転制御の補正が行われる。(4)センターリングロール制御 センターリングロールの制御方式には圧力制御と位置制御がある。圧力制御とはリングにある力で常にセンターリングロールを押し付けながらリング拡径に伴い、そのリングからの反力によりセンターリングロールが押し拡げられる方式である。しかし押付け力が不適切であるとリングを押し潰すこともあり得る。これに対して位置制御とは刻々と変化するリング外径に応じて幾何学的に求まる位置へセンターリングロールを強制的に移動させる方式である。圧力制御、位置制御ともに圧延最終段階ではその位置を保持し真円を向上させる。

2.3.3 リングローリングの形状と寸法 リングローリングで成形されるリング断面形状は、単純矩形のものと異形断面のものに大別できる。矩形断面リングの成形は、リングローリングの基本であり圧延方法は図 3によるが、異形断面のリング成形を行うためにはリングローリングの各工程での寸法や形状、金型設計のみならず荒地材の寸法、形状なども重要な要因であり、経験を含めて高度な工程設計、造形方案、金型方案などが必要となる。

図 9  リング断面形状

図 10 荒地-ローリング寸法

荒地

1

ローリング ローリング荒地

8

2

3

4

5

6

7

9

15

10

11

12

13

14

大型リング小型リング

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特集 回転成形技術の動向

 近年、ますます需要が高まる熱間リング圧延市場において省エネ志向、コスト競争力の向上要求を受け、圧延リングの高精度ニアネットシェイプ化が求められている。リングローリングの制御の自動化などによって生産性の向上は図られてきているが、高精度ニアネットシェイプ化については多くの課題がある。それらの課題を克服するためリングローリングミルの機械的要素や圧延ノウハウの構築に関する取組みが必要であり、その一部を紹介する。

3.1 リングローリングミルの機械要素の向上 現状の異形断面リング製造工程においては複数個のロールを用いる多工程プロセスとなり、複数回のロール交換作業とリング素材の再加熱工程が必要となる。さらに異形断面リングの圧延は金型へリング素材が入り込む型鍛造に近い形の圧延となるので各種ロールや圧延テーブルの位置関係が矩形断面リングローリングの場合と比較して厳しく管理されなければならない。これらに対応するためにメインロール、

3.リングローリングの課題と取組み

マンドレルなどの各種ロールやテーブルの高さ微調整機構などが補助機能として従来のリングローリングミルに追加されている。また、メインロールをカセット化しロール交換作業の時間短縮に対応している場合もある。 複雑な異形断面リングの外径測定においても課題があった。リング外径を測定するメジャーリングロールはこれまで接触式タイプであったために複雑な異形断面リングでは必要な外径位置での寸法測定ができない場合があった。しかしレーザによる非接触外径計測装置により、複雑な異形断面リングについても安定したリング外径測定が可能になっている。以上のように高性能の圧延を実現させるためにさまざまな機構や装置が考案されている。

3.2  変形解析シミュレーションを使用した圧延ノウハウの構築

 リングローリングにおいて荒地形状と圧延条件設定の最適化を行うことが圧延リングのニアネット

 図9及び図10にリング断面形状例及び荒地-ローリング後の寸法例を示す。 リングローリングは外径に対して内径の小さいリング、例えばディスク上のリングや外径に対して高さが高い円筒状のリングの圧延はリング上下面や側面のヒケが発生するので注意が必要である。また、異形断面のリングにおいては上下対称で上下の重量が等しいものは比較的容易に圧延できるが、上下非対称で上下の重量が等しくないものについては上下の圧延率が異なってくるので欠肉が生じるなどの不具合が発生しやすい。

2.3.4 リングローリングの温度条件・管理 リングローリングにおいて各材質に対する加熱温度の設定は、成形されるリングに対して要求される結晶粒度、メタルフロー、常温、高温引張りなどの材料特性を得るためにきわめて重要な要素である。表 2に各材質に対する温度範囲を示す。特に航空部品用など使用条件が厳しいリング材料では加熱炉の炉内温度分布が設定温度に対して±15℃以内と熱処理炉なみに厳しい温度管理の中で加熱することが求められる。従って航空部品用リング材の成形については単純な矩形断面のリングであっても適正な品質特性を得るために再加熱を繰り返しながら圧延を行うため、温度条件とともに圧延工程の高度な設計と

厳しい管理が必要である。 また、材料の適正な温度管理がなされていない場合、材料特性への影響のみならず、圧延中リングの浮上がりやうねり、欠肉といった現象を生じ、リング外・内径の真円度不良、寸法のばらつき、リングの傾き(ラッパ形状)といった影響を及ぼす。

表 2 加熱温度及び加工温度

合金系 合金名 温度(℃)

炭素鋼 1200 ~ 800

合金鋼 1200 ~ 850

工具鋼 1150 ~ 900

銅  800 ~ 700

黄銅  750 ~ 500

アルミニウム青銅  850 ~ 650

アルミニウム ジュラルミン 550 ~ 400

ニッケル

ニクロム 1100 ~ 800

モネル 1100 ~ 800

ハステロイC-276 1100 ~ 850

インコネル 600 1100 ~ 800

コバルト ヘインズアロイNo.25 1150 ~ 850

Fe-Ni インコロイ 800H 1100 ~ 800

チタン Ti-6Al-4V  950 ~ 750

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4.おわりに

 以上、熱間回転鍛造リングローリングについての概要と現状の動向について紹介した。今後の課題としては先に述べたように高度なリング圧延ノウハウの構築を含めたさらなるニアネットシェイプ化が挙げられる。また、日本国内では航空産業用部品を中心とした難加工材のリングローリングの需要が増加すると思われるのでリングローリング設備の高出力化とその設備の安定した稼働が求められる。 リングローリング製造メーカー及びリングローリングを使用する鍛造メーカーともに今後もさまざまな取組みを行い、付加価値の高い新しい生産システムの構築ができることを期待したい。

 参考文献1 ) 中小企業総合事業団:熱間自由鍛造,鍛造荒地加工及びローリング鍛造マニュアル(2000年)P37-43.

2 ) 葉山益次郎:新回転加工 理論と応用(1992年)P295-335.3 ) 日本塑性加工学会:回転加工 -転造とスピニング-(1990年)P106 -127.

4 ) 守谷巌樹:鍛造技報 第34号(1988年)P43 -52.

シェイプ化を進める上で非常に重要となる。現状のリング製造工程においては新規品番の生産立ち上げごとに各工程で荒地形状や圧延設定条件の最適化を見出すための試圧延を複数回繰り返し行っている。この作業には多くの手間とコストが必要となるために試圧延によらない新たな圧延ノウハウの構築が求められているが、近年になってリングローリングにおける変形解析シミュレーション技術を利用した取組みが始まっている。この試圧延によらない圧延ノウハウが構築できれば新規品番ごとに必要であった試圧延の削減が可能となり、コスト縮小が期待できる。さらにこの圧延ノウハウがさらに高度化できれば高精度ニアネットシェイプ化がますます進むと考えられる。図 11 a、b、cに外径φ4000mmの矩形断面大型圧延リングにおける外径変化、半径方向圧

延力、高さ方向圧延力の圧延実績とシミュレーション結果を参考例として示す。圧延力、外径変化ともにほぼ一致している。

(a)外径変化

(b)半径方向圧延力

図 11 矩形断面大型圧延リングにおける実測とシミュレーションの結果

三菱長崎機工株式会社 設計部〒851-0301 長崎県長崎市深堀町 1-2-1TEL. 095-871-2932 FAX. 095-871-3288http://www.mnm.co.jp/

(c)高さ方向圧延力

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

0 50 100 150 200 250 300 350

圧延時間 [sec]

リン

グ外

径変

化 

[m

m]

シミュレーション

実測結果

4500

4000

3500

3000

2500

2000

1500

1000

500

00    50   100   150   200   250   300   350

圧延時間  [ s e c ]

リング外径変化  [mm]

―シミュレーション―実測結果

0

10

20

30

40

50

60

70

0 50 100 150 200 250 300 350

圧延時間 [sec]

半径

方向

圧延

力 

[%

シミュレーション

実測結果

半径方向圧延力  [%]

70

60

50

40

30

20

10

0

圧延時間  [ s e c ]0    50   100   150   200   250   300   350

―シミュレーション―実測結果

‑10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 50 100 150 200 250 300 350

圧延時間 [sec]

高さ

方向

圧延

力 

[%

] シミュレーション

実測結果

90

80

70

60

50

40

30

20

10

0

-10

高さ方向圧延力  [%]

圧延時間  [ s e c ]

―シミュレーション―実測結果

0    50   100   150   200   250   300   350

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