三種類の小型実船による航走波の特性v k full load sea sp 巴巴 d...

13
三種類の小型実船による航走波の特性 誌名 誌名 水産工学 ISSN ISSN 09167617 著者 著者 塩谷, 茂明 藤富, 信之 斎藤, 勝彦 石田, 廣史 山里, 重将 巻/号 巻/号 33巻2号 掲載ページ 掲載ページ p. 123-134 発行年月 発行年月 1996年11月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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三種類の小型実船による航走波の特性

誌名誌名 水産工学

ISSNISSN 09167617

著者著者

塩谷, 茂明藤富, 信之斎藤, 勝彦石田, 廣史山里, 重将

巻/号巻/号 33巻2号

掲載ページ掲載ページ p. 123-134

発行年月発行年月 1996年11月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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水産工学 Fisheries Engineering Vo1.33 No.2. pp.123~134. 1996

【研究論文]

123

三種類の小型実船による航走波の特性

塩谷茂明市・藤富信之本人斎藤勝彦***

石田鹿史***・山里重将*

Characteristics of Waves Generated by Three Kinds of Small Actual Boats

Shigeaki SHIOTANI *, Nobuyuki FUJITOMI * *

Katsuhiko SAITO * * * , Hiroshi ISHIDA *叫

and Shigemasa YAMAZATO本

Abstract The information of ship waves generated by a small boat is very important to prevent damage of the floating

marine structure such as the cage for fishing aqua-culture. This pap巴rdeals with the measurements of ship waves

g巴neratedby three kinds of actual small boats. a displacement boat. a high-speed boat and a planing boat. The

main purpose of this study is to investigate the fundamental characteristics of waves gen巴ratedby a small boat

passing near the marine structures. The measurements of ship waves are carried out in the cases of varying

distance from th巴 sailingline with constant ship sp巴巴dand varying ship sp巴巴dwith constant distance from the

sailing line

The measured ship waves are compar巴dwith ones calculated by two kinds of simplified巴stimationmethods

and the evaluations of these methods are also inv巴stigated.As results. the both calculated results show relatively

good agreement with the measured ones of a displacement boat and a high-speed boat. but have discr巴pancywith

ones of a planing boat.

1. はじめに

船舶工学の分野では,船体設計の観点から各種の抵抗

軽減に関する様々な研究が行われ,造波問題を対象とし

た研究も発展してきた。そこでは,船舶による造波の情

報は船体の極く近傍に線られ,船体から伝播する波は研

究の対象外でほとんど関心がなかった。しかも,このよ

うな造波問題の研究はほとんどが模裂船レベルであり,

1996年 5月2日受付, 1996年 7月1日受理

キーワード:航送波,小型船船,線形造波理論,波形

計測

K巴ywords : Ship waves, Small boat. Linear wavemaking

theory. Measurements of wave profiles

傘長崎大学水産学部 守852長締市文教町1-14(Nagasaki

University. Faculty of Fisheries. 1-14, Bunkyomachi.

Nagasaki 852, ]apan) 口広島商船高等専門学校 千725--02広島県愛国郡東野

町4272-1(Hiroshima Mercantile Marine College. 4272-

1, Higashinocho. Toyotagun. Hiroshima 725--02, ]apan) *日神戸商船大学 〒658神戸市東灘区深江南町 5了

自1番 l号 (Maritim巴 Universityof Kobe. 5-1-1,

Fukaeminami-machi. Higashinadaku. Kobe 658. ]apan)

船体抵抗の捻定が罰的である。そのため厳密かつ高精度

な船側波形や船体周り粘性流場の情報が要求されるので,

船体近傍の波紋計算は複雑で容易ではない1), 2)。また,

研究対象が巨大船を含む比較的大型の船舶であるため漁

船,高速艇ならひーに滑走艇のような小型船舶による紋走

波の研究が十分行われていないのが現状である o

一方,水産工学の分野では,航行船の造波問題は養殖

筏や係留中の小型船舶の損傷,小型釣船の大動揺による

転覆や,釣り客の海中落下等の人身事故誘発の危険性等

に深く関わるため,航走波の研究が重要である。しかも,

このような筏を代表とする養殖施設は大型船が航行する

主要航路周辺より,湾内や入り江等に点在することが多

い。したがって,大製船舶による航走波の影響をほとん

ど受けないと考えてよい。むしろ,漁船,モーターボー

トを含む滑走艇や,離島問就航の高速艇等の小裂船舶は

航路外の海域を,比較的自由に航行することが可能であ

る。そのため,時には養殖施設の極く近辺を紘走するこ

とがあり,かえって大型船舶による航走波より大被害を

誘発する危険性がある。しかも,近年高馬力機関の開発・

改良に伴う船舶の高速化が急速に進展し,大きな波を造

りながら高速航行する小型船舶が多く見られ,今後ます

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124

ます航走波の影響が重姿な問題となるであろう。

それ故,小型船舶による航定波の特性を把握し,船総

工学で要求されるような厳密さに欠けるが,比較的容易

に,しかも短符聞に航送波の推定が可能な,実用的推定

方法の矯築が場合によって有効となる。

本研究の主目的は,異なった三給型の小型船般が造る

航走j皮の特伎を,実海域実験から把握することである。

実験は海洋構造物の近距離を,速度を変え競走する小型

船舶を想定して行った。供試船は小型船を代表する通常

の排水量君主船舶,高速艇ならびに滑走艇である。全ての

計測結果を検討するため,二種類の簡易機定法による計

算結果と比較した。さらに,これらの推定方法は本来大

型船舶を対象に得られたものであるため,ノト裂船舶への

適用性についても論ずる。

2. 航走波の計測

供試船は長崎大学水産学部所属の調査船「鶴水J.広

島商船高等専門学校所属の実習船「ひかりJと「はやぶ

さJであり.Photo 1に供試船を.Table 1に主要項目

を示す。「鶴水Jは通常の排水量型船舶であり,長崎県

沿岸の生物採集等に. rひかり」は高速艇であり,操船

や船船性能試験等の学生実習に. rはやぶさJは滑走艇

であり,主に交通艇として送迎等に使用されている。

航走波の計測は Fig.lに示すように fひかり」は長崎

市に商する長崎湾. rひかり Jと「はやぶさ」は広島県盛

田郡の大崎上島で行った。長崎湾は照聞が陵地に閉まれ

た湾奥であり,外洋からのうねりの進入はない。 7月下

旬の実験期間中.a青天に窓まれ風浪もほとんどなく,手事

義波高で数cm程度の静穏な海域であった。他方,大崎上

烏は瀬戸内海に位置し,周2芸が多数の小さな島で閉まれ

た海域である。 8月初旬の実験期間中,通常では風はな

くほとんど風浪もない状態であるが,たまたまこの時期

には珍しく,太平洋岸を通過した低気圧による数 m/sec

の沼寄りの風が吹いた。しかし,海面は穏やかで最大波

高で10cm程度の風浪があったが,航定波の測定に大き

な影響を与える波でなかった。

両観測海域の水深は約20mであり,ここで計測した供

試船の航走波はすべて深水波とみなすことができる。

一般に,統走波は航跡線から波高計ーまでの距離と船速

に関係するので,次の二条件で航走波の計測を行った九

(1) 船速一定で航跡線からの距離を変えた場合

(2) 航跡線からの距離一定で船速を変えた場合

Fig.2は実験条件の概略図を示す。航走j皮の計測は

岸皇室から2.5m張り出した鋼鉄製アンクソレ材の先端に,

垂直に取り付けた超音波式波高計で行い,ぺンレコーダ

に記録した。航走波の中で波高が最も大きく,海洋構造

物に影響すると考えられる特徴ある波は船主主波であるか

ら,本研究ではこれらの波の最大波高と周期を読み取っ

2

KAKUSUI

ト~IKARI

HAYABUSA

Photo 1 Three Idnds of small actual boats.

Table 1 Principal particulars of three

small boats.

It巴m KAUSUI HIKARI HAYABUSA

L (m) 20.00 14.00 7.95

Lpρ (m) 17.00 12.50 7.25

B (m) 3.90 3.75 2.34

D (m) 1. 60 1. 55 0.74

dm (m) 1. 30 1.10 0.48

d (ton) 27.80 19.99 5.00

SHPm (hp) 430.00 265x2 158.00

Vk (knot) 11. 00 16.00 21. 00

L : Length overall. Lpp: Length between perpen

diculars, B: Extreme breadth, D : Moulded depth, dm: M日andraught. J: Displac巴ment,SHPm: Maximum continuous, shaft horsepower,

V k Full load sea sp巴巴d

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三種類の小型笑船による航走波の特性 125

D

D Buoy

色、¥、

¥〈やら、/

Small boat

Fig.2 Schematic condition of measurements

of ship waves.

船速と船舶機関の回転数との関係から決定した。

3. 航走波の推定方法

最近の船舶工学の分野における船舶造波問題の解法に

は,計算領域をパネル分割し,速度ポテンシャルを境界

要議法で解く方法と, Navier-Stokes方程式を数値的に

解く方法が主流である。しかし,このような方法はかな

り難解で, しかも入力データには厳潜な船型データ(オ

フセット)が要求される。しかも,長時間の計算と大容

量のメモリーが必要であり,容易に取り扱うことは図難

である。また,計算対象は模型船レベルで、あり,実船に

そのまま直接適応できないのが現状である。

現実には,多少滋筏性に欠けるが,航走波の計算に

おいて,それほど詳細なオフセットデータを必要としな

いで,しかも実用的かつ簡易的な方法が時には有効な場

合がある。そこで,本研究では計測i結果を検討するため,

以下に示す二種類の簡易計算法による計算を行った九

1) 馬力による推定 (Cal.一1)

Fig.l Locations of two experimental waters. 第 1の簡易計算法として,小型船舶の馬力から航走波

を推定する方法(本報では以下 Cal.…1と称す)がある。

て評価した。紙走波の波長と波向の計測は今回のように, この計算方法は比較的容易であり,最大波高と周期が得

1点における波計測では困難であるため,目視観測を行 られるが,波形などの詳紛な計算はでさない。計算に必

い参考資料とした。また,小型船舶の姿勢と航送波の様 要なデータは機関の馬力,船体寸法,船遼等であり,最

予を把握するため,ビデオと写真撮影を行った。 大波高は次式で与えられる。

航跡緩からia高計までの距離の計誤IJは波高計近傍にまを

IT[に立てた,長さが既知の支柱の長さを,船上からダイ 恥 ax=Ho[τす]t[平] )

-(

• • • • • ・

アルカリキュレータ付き双眼鏡のレチクル毘盛りで読み

取り,決定した。既定のコースライン上を出来る限り正 ここに,dは航跡線から波高計までの距離,Vは実験

確に航走するために,供試船の針路と航走位置を決める 時の船速,Vkは満載航海速度である。 Hoは航跡線から

必要があるo これは各計測毎に, i皮高計から航跡線開の の距離が100mの最大波高を窓味し,特性波高と呼ばれ

距離を設定するために船般を移動し,その地点に目印清 次式で示される。

のプイを投入した。向時に船首方位角を読み取り,コー

スラインを決定して,その針路を保持しながらプイに向

かつて航走した。船速は事前に笑施した速力試験による

Ho=同判官事 -・・・・・(2)

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126

ここに,Lppは垂線開長,EHPwは造波馬力 (ps)で次式

で玉沢される。

EHPw =EHP-EHPF, EHP=C SHPm,

EHP", =~SV~ Cよー.2 J 75 .

0.075 Vo=0.514Vk, CJ=-; ・…-・(3)

.1 ,. VoLpp ザ(Iogーヲ一一2)

VoL 33 No.2

V一

π一σゐ

ηru

一一一T

nσ 円

bo

c

ハUT

…一T

-・・・(4)

ここに,gは重力の加速度,Tは航走波の縦波,T。は横波

の周期である。。は350-16'で Kelvinの造波理論から

得た航跡線に対する縦波の波向であり,波はこの方向に

伝播すると仮定した。

2) 線形造波理論による推定 (Calそ)

第 2の簡易計算法は線形遊波理論に基づいた縫定法

(以下 CaL-2と称す)であり,比較的に大型船舶を対

ここに,EHP=CSHPmは有効馬力 (ps).係数Cは0.62- 象に造られたものである。計算に使用するデータは船速

0.74, SHPm は最大連続軸馬力 (ps)へEHPFは船と悶じ と,船体形状を示す線図から得たオフセットであるが,

長さと表面積 (S)を持つ平板の抵抗にみあう馬力 (ps). これは厳密なものでなくてよく,船型を衛単な幾何学的

pは海水の密度,CJは船体摩擦抵抗係数, ν=1.2XlQ-6 形状で近似して,計算を衛略化している。この近似船型

(m2/s)は海水の動粘性係数, S は2.5.jt;[五.!J.は満載 を船長方向 (x)と喫水方向 (z)の巾級数で表示し,船型

排水量 (m3)である。 と等価な特異点分布を計算して航走波を得る。

最大周期は次式で計算した。 Fig.3で示すように船首からの任意距離Rと航跡線

からの角度@における波面 t (R.0) は次式で定義さ

η れる。

と(R,8)

Zo

R

θ

O Fig.3 Coordinate system.

宣言。一ω工@〉何〉〉話

2

⑧ Measured _ Cal.-1

ー合同 Cal.-2

O 40 80

C引(R.0恥ににSF川刊S針飢W川FC川川(伺川8約)sin叫仰陥R臼 山 仇 什 州

.・・(5)

ここに,1{O=g/V2.SF(8)は振幅関数で,特異点分布か

ら計算する。 (5)式の積分は漸近展開で計算する。

この方法では,船舶から任意地点における波の待問変

位が得られるので,波形を図示し,最大波高と最大周期

を読み取った。

4. 計測と計算結果の比較

ご 1) 排水援裂船舶の場合

通常の排水量型船舶である「鶴水j の結果を示す。最

初に,速カを一定 (10.3k't)にして航跡線からの距離を

、‘,,,hu

(

llikuh

a・⑧ Measured _ Cal.-1

.<:,_ Cal.-2 (ω)℃

OBao〉ω〉〉話お

a @

2ト @嘩聾

..t::r ~一 一 ~L:':i'.._",._;;'--;;:-;;:-O:; ι市ーー“

曜静 @

曜器 曜語 曜静 ー 軍事

⑧ ⑧ ⑧@ ⑧ 画事 司F

120 O 40 80 120

Distance (m) Distance (m) Fig.4 (a) (b) Measured and calculated ship wave height and period of the KAKUSUI versus the

distance from the sailing line with constant speed.

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三種類の小型実船による統走波の特性

4

(b) ⑧ Measured Cal.-1

d- Cal.-2 Dist.=20m ε

五二ol ω 工。〉

504

話::2:

0.8

O

(a) ⑧ Measured 一一 Cal.-1『合符 Cal.-2Dist.=20m

曜畢

4 8

Speed(knot)

ε ...... エ=ol ω 工Q) 〉

さ0.4× 6 2

0.8

O

(c) • Measured _ Cal.-1

-d伶 Cal.-2Dist.=70m

4 8

Speed(knot)

ε ェニol 0 工ω 〉

304

話2

0.8

O

(e) 曜静 Measured Cal.-1

-d- Cal.-2 Dist.=100m

Coef.=0.74

12

12

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2

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127

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4

• Measured _ Cal.-1

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O 4 8 12

Speed(knot) Fig.5 (a) ~ (f) Measured and calculated ship wave height and period of the KAKUSUI versus

(の)℃

O一」

oao〉信〉〉話芸

2

her ship speed with constant distance from the sailing line.

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128 水産工学 Vol.33 No.2

変えた場合の実験を行った。 Fig.4 (a) (b)は航走波の う印象を受ける。距離70m (3.5L)はそれらの中間距

最大波高と最大周期の計測と計算結果の比較を示す。波 離であり,海洋構造物に接近して航行する際,最も多く

潟図(a)の実線の Cal.-1は第 3主主で述べた有効馬力のニ の小型船舶が通過して,統送波の影響が懸念される距離

稜類の係数Cで計算したものである。両者に数 cmの差 であると考えられる。 Fig.5 (a) -(f)は最大波高,周

が生じたが,周期間(b)に見られるように,周期の計算で 販の計測と計算結果を示す。波高図で,計測値の⑧印の

は一致する。波高において,計測値は距離が長くなると 側に付記した数値は実験毎に,第 3設で述べた方法によ

ノfラツキが見られるが,距離に反比例して緩やかに減衰 り,船上から実測した航跡線と波高言十間の距離を示す。

する。実験時の目視観測によると,排水量型船舶では (a)(c)(e)閣の波高に関して見ると,いずれの距離において

船速が増すと船曽部で大きな波を造り,船首近傍で波頂 も,計測値は船速に比例して増加する。場加の比率は距

部分のみが砕波する。その結果,砕波後,比較的安定し 離が20mの場合が最も大きく,距離が長くなると小さく

た波となって伝播するため,距離に対する波高の減衰が なる。高速時に言十澱値のバラツキが見られる。

緩和されるものと恩われる。 計測波高と計算波高を比較すると,定性的に Cal.-1

二種類の簡易法による計算波高は両者とも,定性的に の方が百十洩u値の傾向を示す。定量的には距離70mの場合

計調u結果と悶じ傾向を示し,定量的に計測値より小さく が最も雨計算結果とも計測値をよく捻定しているが,三

なり,両者を比較すると, Cal.-lの方が Cal.-2より僅 種類の距離の全体でみると低速符は Cal.-2.高速時は

かに大きい。二種類の計算値は全体として,比較的計測 Cal. -1が計測億とよく一致するo

簡をよく推定している。 (b)(d)(f)留の周期に関し,計測値は船速に比例して増加

(b)悶の周期では計測値のバラツキが大きいが,距離に する。低迷時は計総周期のバラツキが小さいが,高速時

関係なく約 2-2.5秒程度とほぼ一定である。これは排 で特に距離が長くなると大きくなる。

水量型船舶が造る航走波が前述の通り,安定した状態で 雨計算結果どうしを比較すると,短い距離では高速時

伝機するからである。 にCal.-2の方が小さくなって両者の差が拡大するが,

計算周期では, Cal.-lの計算結果は速度が一定である 距離が長くなると援がなくなりほとんど一致するように

から,距離に関係なく一定値になるのに対し, Cal…2の なる。計測結果と計算結果を比較すると,定性的に計測

結果は短い距離のところて、増加する。計測値と計算値を 結果は両計算結果と同じ傾向を示す。定最的には低速時

比較すると,計測億が雨計算結果より小さくなり,これ で間計算結果とも計測結果に比較的よく一致するが,高

は突船の航走波が砕波により乱れることと,必ずしも玉虫 速時で計算値の方が小さくなる。しかし,全体に両計算

論通りの波向 (8=35016') に伝機しないことによる。 方法ともおよその周期の推定が可能であるo

次に,海洋構造物に比較的接近して航行する小型船舶 Fig.6はCal.-2による計測波形と計算波形との比較

を想、定して,距離を各々20m,70m, 100mと一定にし を示す。距離が70m,船速10.3k'tである。 4倒の比較

て,船速を変えた場合の実験を行った。距離20mは船長 的規則正しい船首縦波に続き,数偲の横波が次第に減衰

Lに相当し,海洋構造物に最接近した状況を仮定,距離 しながら連なっている。計算の横波が多少大きく計算さ

100m (5 L)は特性波高を定義する距離であるが,小 れたのは,船体を幾何形状で近似したことと,船型遼論

型船紛では海洋構造物からかなり離れた距離であるとい では砕波は発生しなくそのまま高い波が計算され,あま

Calculated Speedご10.3ki Dist.=7~富つ叫ベ!「剖」

0

0

0

0

0

2

nu

t

z

ω6.00

-12.00

(c悶)馳asured Speed=10.3 k't Dist.=7伽

40 ザ一一一一一一“一一一一一一目叩町一一一一 一一~一 ω一一一一一ーヲ日】一一一一一 一一一一一一} 一一 ー戸 一吋 一一 一一一司一一一iJ¥ 1¥ ~ ~ i

20

」一婦ヰ ----一一一一 一 ←ーコ ー一一一一一一o G 10 (sec)

rKAKUSUIJ Fig.6 Time series of calculated and measured ship waves of the KAKUSUI.

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三種類の小型実船による航走波の特性 129

り減衰しないで伝矯するのに対し,実験ではスクリュー

や船体自体の捜苦しによる波形の複雑な乱れによって減衰

することによる o 計測波と計算波の縦車由のiE宣言言と様輸の

時間スケールが同じでないが,航走波で設も問題となる,

船首で造波される高波高の縦波の波形全体のシミュレー

ションができている。

2) 高速艇の場合

次に,高速艇である fひかり」の結果を示す。最初に,

速力を一定(16.0k't)にして,航跡線、からの距離を変え

た場合の実験を行ったo Fig. 7 (a) (b)は最大波高,最

大周期の計測と計算結果を示す。 (a)図の波高に関し,計

測波高は距離に反比例し減衰する。 fはやぶさ」は排水

議君主船舶「鶴水j と比較すると. Table 1に示すように

船長,船阪ともに小さい船舶である。しかし,高速であ

るため波高が大きし最大波高が82cmにも達し r鶴水j の約1.7倍であった。しかも,距離に対する波潟の

減衰が顕著である。このように,高速艇による航走波は

大波高のため,海洋構造物に与える影響が大きくなるこ

とが予想され, しかも船舶が構造物に接近して航行する

ほど,影響が著しく増加する O

両計算結果を比較すると,両者とも定性的に計測値と

問じ傾向を示し,定f量的に Cal.-1の方が斎く, Cal.-2と

の遣をは約15cm程度である。 Cal.…1の有効馬カの係数に

よる影響は約 5cmの室長を示す。言f榔{直と両計算結果を

比較すると,定ま量的に計測値は Cal.-1の計算{直よりも

若干{尽く.Cal.-2の値より高くなり,両計算結果の中間

f直となった。

(b)区!の周期に測し,第4.1節で示した排水量型船般の

場合,計測績が距離に依存しないでほぼ一定値であった

のに対し,高速艇では距離に反比例して減少している。

計算結果は Cal.-1では距離に関係なく一定で.Cal.-2

言 0.8f¥

工=0)

0 I 。〉

504 × f百

• Measured Cal.-1

一企_ Cal.-2

?きょ¥ Coef.=0.74

込鳳噛繭

W

A

b

@

-

A

M

@A叫

Coef.=0.62

O 40 80 120

。istance(m)

では短い距離のところで一度小さくなり,距離の増加と

ともに少し増加し,ほぽ一定になる。

このように,距離に反比例した計測波高の減衰量が大

きいことと,周期が距離に対応して変化する原悶は,自

視観測からも明らかである。すなわち,高速艇は船首部

で大きな白波を立てながら航走し,カスプライン上の砕

波現象が船体から離れた場所でも見られる。その結果,

航走j皮は常に不安定な状態でかなり遼方まで伝播するた

め. i皮の変形と減衰が著しくなると考えられる。これら

は高速艇による航走波の特性でもある。

次に,距離を各々20m (1.4L). 70m (5 L). 100m

(7.1L) と一定にして,船速を変えた場合の実験を行

った。 Fig.8 (a) -(f)は波高,周期の計測と計算結果を

示す。波高に関しては,計測{痘は船速に比例し増加する

が,排水量型船舶の場合よワ,特に近距離て‘増加率が大

きい。船長Lをベースとした,距離 5Lの(c)図は排水盤

型船舶の Fig.5 (e)に相当し,高速艇の船長に基づいた

距離からみると,航跡線から速い印象を受ける。しかし,

雨者を比較すると船速が llk't以下ではほとんど同じ大

きさの波高になるが,それ以上の速度で高速艇の波高は

急速に増加し,依然と高波高を維持している。

計測値と計算伎を比較すると. (a)(c)図の近距離の場合

では,定性的に計測結果は Cal.-1の計算結果によく似

ている。定長約に低迷では計測結果の方が計算値より大

きく,高速では河じ程度の債になる。一方,計測値は定

性的に Cal.…2の計算結果と異なる分布を示すが,定主主

的には低迷で計算値とよく一致し,高速で主主が増し一致

しなくなるo(e)図の遠距離の場合では,計測値にバラツ

キが見られるが,計測値を Cal.-1の計算結果と比較す

ると,低速で大きく高速で小さいが.Cal.-2の計算結果

と比較すると,全速度領域で一致する。

の 4

てZOLω L -コ

sG〉J z

2 話

..C!..-----ーーーーー-~

、曜語 需器曜静 メ吉

、Zミ 曜語 重量¥ ⑬. .益事

曜器 曜静曜語 曜語

曜語 8J

(b)

• Measured Cal.-1

..f::,,- Cal.-2

O 80 40 120

Fig. 7 (a) (b) Measured and calculated ship wave height and period of the HIKARI versus the

Distance (m)

distance from the sailing line with constant speed.

Page 9: 三種類の小型実船による航走波の特性V k Full load sea sp 巴巴 d 三種類の小型笑船による航走波の特性 125 D D Buoy 、 色 ¥、 ¥〈や ら、/ Small

O 10 σ 10

Speed(knot) Speed(knot)

(c) ⑧ Measured (d) ⑧ Measured

0.8 一一 Cal.-1

4 Cal.-1 /角

E .I:e.司 Cal.-2 ~ .I:e.- Cal.-2

) ょ噌幽::: Dist.=70m て。コ陪 =70;寸・2・0) 」

ω 。工 a..

芸珪〉〉 0.4 3Cω 〉2 3 10⑧ 2 闘高バ附

話 鈎 ⑧ . . & ) 話10/'80.

Z三 80., 三,ム 75⑧

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五三「/プO 10 O 10

Speed(knot) Speed(knot)

130

(a) ⑧ Measured

一一 Cal.-10.8

企叩 Cal.-2ε Dist.=20m ) 工やdこ

24. 0) 26. 。工 Coef. =0.7~

2 。〉 04 ~I お@

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話三

⑧ Measured _ Cal.-1 。ωCal.-2Dist.=100m

Coef.=0.74

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1回,@"12

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O 10

Speed(knot)

Vol. 33 No.2

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⑧ Measured Cal.-1

-l:e.- Cal.-2 同 /18.Dist.=20m

4 (ω)習志向比@〉何〉〉話三

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(f) ⑧ Measured

一一 Cal.-1

~ 一合 ω Cal.-2 /ム'

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103⑧ 1曲@

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O 10

Speed(knot)

Fig. 8 (a) -(f) Measured and calculated ship wave height and period of the HlKARI versus her

ship speed with constant distance from the sailing line.

Page 10: 三種類の小型実船による航走波の特性V k Full load sea sp 巴巴 d 三種類の小型笑船による航走波の特性 125 D D Buoy 、 色 ¥、 ¥〈や ら、/ Small

三種類の小型実鉛による航走波の特性 131

Calculated Speedコ16.0kl Dist.=7白寝

勾 8.00

観easured Speed=16.0 k.t Dist.=7伽i 守@叶

Fig. 9 Time series of calculated and measured ship waves of the HIKARI

(b)(d)(f)閣の周期に関して,計測値は排水量型船舶と同 変えた場合の実験を行ったo Fig. 10 (a) (b)は最大波

様に,船速に比例して増加する。しかし,距離の増加に 高,最大周期の計測と計算結果を示す。 (a)図の波高に関

伴い高速時の周期の低下が著しくなる。 して,滑走艇は,目視観測では白波を立て水上を滑るよ

二種類の推定計算結果を比較すると,高速待の近距離 うに疾走する姿から,相当大きな波を造波するように見

において両者に羨が見られるが,距離が増加するとその える。しかし,計測結果を見ると,それほど最大波高は

羨が次第に小さくなり,全体でほぼ一致するようになる。 高くなく,約30cm程度にすぎず,排水量型船舶の「鶴

計算結果と計測{震を比較すると,計測値の方が小さく, 水」よりも低い。しかも,距離に対する波高の変化は小

遠距離になるほどこの差が増す。 さく,ほぼ一定備となり,排水量型船般や高速艇の場合

Fig.9は Cal.-2による計算と計測波形を示す。距離 と定性的に異なった性質を示す。

が70m,船速が16k'tである。波高,周期ともに多少差 計測値と雨計算結果を比較すると,この計測範囲では,

が見られるが 3健の大きな船首縦波の様子はよく似て 両者がよく一致していると言える。

おり,高速艇の場合でも波形の推定が可能である。 ところが, (b)図の周期に関しては,計測値は距離に独

3) 滑走艇の場合 立しでほぼ一定となり,しかも計浪u値が計算値のおよそ

最後に滑走艇である「はやぶさj の結果を示す。最初 1/3程度にすぎず,両者には大きな嫡たりがあるo

に,速力を一定 (21.01どt)にして,航跡線からの距離を 次に,距離を各々20m (2.5L), 70m (8.8L), 100

(E)EO一ω工ω〉ω〉〉話言

• Measured _ Cal.-1

-6- Cal.-2

6 f'--

_f:>: -ニムニニニ二二

ム一一--i弘、

Coef.=0.74

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4

(b) ⑧ Measured Cal.-1

6- Cal.-2

coff¥竺 , I唱IiTO

骨骨骨@骨⑧@⑧

@

O 40 80 120 O 40 80 120

Distance (m) Distance (m)

Fig.10 (a) (b) Measured and calculated ship wave height and period of the HAYABUSA versus

the distance from the sailing line with constant speed.

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Vol. 33 No.2 132

ムハ/

Measured _ Cal.-1

.-6.- Cal.-2 Dist.=20m

曜器(b) 6

(的)刀

05仏ω〉何言語豆

Measured _ Cal.-1 凸_ Cal.-2 Dist.=20m

@ (a)

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4

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Speed(knot)

0.8 E ..c ol Q)

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Speed(knot)

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Measured _ Cal.-1

--6.- Cal.-2 Dist.=70打1

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Measured

一一 Cal.-1.L::,- Cal.-2 Dist.=70m

曜器(c)

0.8 E ..c ol Q)

工。〉何

語三

0.4

20 10 O O

Speed(knot) Speed(knot)

Measured _ Cal.-1

--6.- Cal.-2 Dist.=100m

曜静Aリ( 6

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Ahila露出@ig露1∞@時

4

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05nZ〉6E話芸

Measured

一一 Cal.-1.-6.- Cal.-2 Dist.=100m

曜器(e)

0.8 E

Z ol Q)

工ω 〉何

語2

0.4

20

Speed(knot) Speed(knot)

Measured and calculated ship wave height and period of the HAYABUSA versus

her ship speed with constant distance from the sailing line.

10 O O

Fig. 11 (a) -(f)

Page 12: 三種類の小型実船による航走波の特性V k Full load sea sp 巴巴 d 三種類の小型笑船による航走波の特性 125 D D Buoy 、 色 ¥、 ¥〈や ら、/ Small

三種類の小型実船による航走波の特性 133

m (12.6L) と一定にして,船速を変えた場合の実験を のかもしれない。あるいは船体で生成したスプレーが波

行ったo Fig. 11 (a) ~ (f)は波高,周期の計調Jjと計算 を苦Lし,砕波によるエネルギー損失でト生成波が減衰する

結果を示す。 (a)(c)(e)図の計誤Jj波高に関しては,低速時か のかもしれない。このような現象に関し詳細な調査,吟

ら船速に比例して次第に波高が増加するが,ある速度以 味が今後必要である。

J二になると逆に減少している。このような傾向は排水量 計測と計算結果を比較すると,波高に関し, Cal.-1の

~船般や高速艇では,全く見られなかった現象である。 計算結果が他給と殉じ定性結果となるが,定量的には計

目視観測によると,この滑走艇は低迷時には排水最裂 測値よりかなり低くなった。他方, Cal.-2による計算結

船舶と向様,一定の船体姿勢で航定する。しかし, 12k't 果は定性的に他船と呉なった分布となり,幾分計測結果

になると次第に船体の浮上が起こり,船首部で喫水面下 に似た分布となるが,定f量的には計測結果より低い。阿

の船体一部が水面上に露出するようになり, 16k't近く 計算結果とも波高に関し,高速域では計測値と一致する

で船体は最も浮上し,滑走体制に入る。この符,船首都 が,その他の速度領域では定性的,定;設約にも他紛の推

船底が水面上に露出した大きな船尾トリムになる。しか 定結果のように,十分満足な航走波の推定が可能である

し,これ以上速度が増しても艇全体が多少浮上するかも とは言い難い。周期に関しでも,両者の計算結果は計測

しれないが,船体姿勢に著しい変化が見られない。 (a)(c) 結果が示す滑走艇特有の分布を示さない。

(e)図の波高に関し,距離に対する鼓大波高はあまり変化 このように計算結果と計測結果が異なる原因として,

しないが,最大波高になる船速は,距離が近距離の20m 船速に対応した船体姿勢の変化を考慮、しないで,他船と

では12k't, 70mで14k't.そして100mで16k'tである。船 向様に排水量,垂線関長,水線面形状などを一定値とし

体姿勢と速度に依存する波高の変化から,向者には何ら て取り扱ったことが考えられる。そこで航定波の計測時

かの因果関係があると恩われる o に問符に行った船体と波の関係を示す写真とビデオ狭像

一方, (b)(d)(f)図の周期に関し,計測値が波高の場合ど から,船体姿勢の変化に追従した船底露出度を見積もり,

同様に船速が12k't程度まで速度に比例するのは排水量 各々の速度毎にこれらの入力データを推定し,航走波の

裂船舶や高速艇の場合と同じである。ところが, 12k'tを 再計算を行った。しかし,二種類の推定計算結果とも全

越えると照期は僅かだけ低下,あるいはほぼ一定値とな 体に僅か波高が増加しただけで,著しい改善に受らなか

り,排水最型船舶などと全く異なった性質を持つ。三種 った。

類の距離の全速度領域で周期分布を比絞すると,周期は 一般に,滑走艇の造波問題は排水蚤型船舶の場合と理

距離に依存しないでほとんど変化しない。また他船と沈 論的にも取り扱いが異なる。例えば滑走緩が造る波を,

べ値のバラツキが小さい。 船体に対応した水面上の圧力撹乱分布が造る波と等価で

このように,船速に対する波高と周期の変化から, i骨 ある,と仮定した計算方法があるヘ本研究で示した二

走体制にある速度では,船首部に滑走艇特有の飛i末と呼 種類の簡易型航走波の推定方法は,前述の通り,本来排

ぶスプレー現象が見られるようになる。造波よりむしろ 水量型船舶を対象船型とするものであり,滑走艇のよう

船側方向への海水の噴出の給果,船首周りは泡立ち,波 な特殊船舶への適用にはやや限界があると考えられる。

しぶきのみで,船体に起因した大波高の波が起こらない 滑走艇の造波問題に関し,新しい推定法の詳細な調査,

Calculated $peedコ21.0k1 Dist.=70織

;:iL∞ 《仏 内 d'¥...ttA ,¥,.. A ωAω 門久的拡ムダ訟で年内ir.:::OLj〉〉 V V Lj¥/ V¥/ し(V V '---./ --~一

Fig.12 Time series of calculated and measured ship waves ofthe HAYABUSA.

Page 13: 三種類の小型実船による航走波の特性V k Full load sea sp 巴巴 d 三種類の小型笑船による航走波の特性 125 D D Buoy 、 色 ¥、 ¥〈や ら、/ Small

134 水産工学 Vol.33 NO.2

検討が必婆である。 定詰廷型船舶の場合,実用的な再現役が得られなかったが,

Fig.12は計測と Cal.-2による計算波形を示す。距 排水量型船舶と高速艇型船舶の場合,十分可能である。

離が70m,船速が21k'tである。滑走艇による航定波の 本研究で得られた結論から,今後さらに以下に示す誇

計測波形には,他の船舶と比較して,特に顕著な特色は 問題に取り組む所存である。

認められない。計測波は連続した 6,7個の船首縦波が 1) 数多くの小型船舶による航走波のデータベースの

比較的規則正しく連なるのに対し,計算波形は多少変形 確保

している。前述の通り両者の波高,周期がそれほど一致 2) 正確な波向,波長の計浪u

ないものの,両者の波形はある程度似ている。 3) 滑走艇に対応した新しい航走波推定法の開発

5. 結るι自開

船型が異なる代表的な三種類の小型船舶が,比較的構

造物等の近距離を航行する場合の航走波の計測を行い,

波の特性を調査した。計測結果を検討するため,二種類

の簡易推定法 (Cal.-1とCal.-2) を用いた計算結果と

比較した。さらに,小型船舶に対するこれらの簡易推定

法の評価も行い,次のような結果を得た。

(1) 排水盤型船舶では,波高に関し,計測波高は船速

に比例,航跡線からの距離に反比例する。計測結果を二

種類の計算結果と比較すると,低速時は線形造波理論に

よる推定法 (Cal.-2)の結果に,高速時は紛の馬力によ

る推定法 (Cal.-1)の結果とよく一致する。周期に関し,

計測結果は両計算結果より僅かだけ小さくなる。両者の

簡易計算方法で航走波の推定が可能である。

(2) 高速艇型船舶では,計泌波高は定性的に排水量型

船舶の結果と同じ傾向を示すが,定f量的にj皮高がより高

くなる。計算結果と比絞すると,低速時が Cal.-2,高速

時が Cal.-1の結果とよく一致する。高速時で距離が短

い場合の Cal.一2の計算精度は若干低下する。計測周期

は両計算法の周期より小さくなる。高速艇においても,

両簡易計算方法で航走波の推定が十分可能である。

(3) 滑走艇型船舶による航走波の波高は最も小さく,

距離に対する波高の変化は小さい。波高は速度に比例し,

滑走体制になる速度まで増加するが,それ以上の速度で

は逆に減表する。定性的には他の二船型と異なった波高

分布の特性を示した。二種類の衛易推定法による正確な

評価を行うことは慰難である。

(4) Cal.-2による小型船舶の航走波の波形推定は滑

4) 簡易式でない高度な航走波推定法の開発

5) 養殖筏等の海洋構造物への航走波の応答問題

最後に,本研究の航走波の計算にあたり,運輸省船舶

技術研究所推進性能部から提供頂いたプログラムを,一

部修正して計算したことを付記すると共に,深く感謝の

芳、を表し,お礼申し上げます。また航走波の計測実施に

あたり,御協力を頂いた長崎大学水産学部調査船「鶴水J,

広島商船高等専門学校練習船「ひかり」および「はやぶ

さJの船長はじめ乗組員の方々に対し,厚くお礼申し上

げます。

参考文献

1) 荻原誠功:Rankine Source法による定常造波問題

の解法,船舶数値流体力学フォーラム, pp.66-80,

1987.

2) S. Shiotani and Y‘Kodama : Numerical Simulation

of Viscous Flow with Free-Surface around a Ship

Model. International Conference on Computational

Engineering Science, Springer, pp. 838-843, 1995.

3) R. M. Sorensen R: Ship-Generated Waves, Ad-

vances in Hydroscience, Edited by Ven Te Chow,

vol. 9, pp. 49-83, 1973. 4) 日本海難防止協会:海上交通安全に関する基礎的

事項の調査研究, 航行船舶の航走波が小型船舶

に及ぼす影響の研究…,海難防止の調査研究事業

報告書,完了報告書~, p. 83, 1971.

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6) 滋谷茂明:滑走平板が造る波の研究について,一

三次元圧力撹乱が造る波の数値計算一,日本航海

学会論文集,第94号, pp. 1-10, 1996.