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1 細胞内でレアメタルを高蓄積する 大腸菌の作製とその応用 法政大学 生命科学部 生命機能学科 准教授 山本 兼由

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細胞内でレアメタルを高蓄積する 大腸菌の作製とその応用

法政大学 生命科学部 生命機能学科 准教授 山本 兼由

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従来技術とその問題点 レアメタルの獲得は、 レアメタル含有資源から物理・化学的分離法 で行われる。 資源に大きく依存。 →新しい鉱山の開発、リサイクルなどの改善 分離は金属種で異なる工程で環境負荷が大。 →低環境負荷の工程開発など、の改善

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 資源に依存しない根本的な技術改変が必要。 <新技術の特徴> • 濃縮されたレアメタルは、簡単に比較的高い純度で回収が可能

• バイオテクノロジーによる低環境負荷技術

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新技術の概要ー基礎研究から産業へー <基礎研究> 大腸菌の金属ストレス応答システムの理解

大腸菌

細菌本来の機能を 総合的に強化した 生物素子を開発 (ゲノム育種)

<産業への応用> 高濃度金属イオンを蓄積する細菌細胞などの創出

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基礎研究ー生物の金属恒常性ー

□Major elements

H, C, N, O, P, S

Na, Mg, K, Ca

□Transition elements

V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn

Mo, W

Wackett et al., (2004) AEM

<生物に必須な元素>

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基礎研究ー金属ストレス応答機構ー

大腸菌の各金属に対する応答ネットワークをゲノムワイドに解析 →大腸菌の金属ストレス応答を細胞システムと理解

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基礎研究ー大腸菌ゲノム発現の解析ー Comprehensive analyses for metal responses

・Molecular function of TF

□Specific DNA sequence recognized by TF

・Whole gene expression profile

□Transcriptome analysis using DNA array

Genomic analyses for molecular function of TF

・Identification of the binding sites of TF in genome

(1)in vitro □Genomic SELEX

(2)in vivo □ChIP-chip

・Transcriptional assay in vivo for putative targets

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基礎研究ートランスクリプトームー

+ Metal No addition

E. coli W3110 culture in LB medium

Preparation of total RNAs

Labeling cDNA with Cy3 or Cy5

Hybridization onto DNA chip

Mid-log phase

Level of Expression (No-addition)

Leve

l of

Exp

ress

ion

(C

oppe

r-ad

dition)

5 min Up-regulated genes

Down-regulated genes

copA

cusA

cusC

Yamamoto & Ishihama, (2002) Mol. Microbiol.

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基礎研究ーGenomic SELEXー Fragmentation of genome

DNA cloning & DNA sequencing

Binding of His tagged TF to DNA*

Isolation of ModE-DNA complex by Ni-NTA affinity chromatography*

Amplification of DNA by PCR

Repeat(SELEX cycles)

Amplification of genomic fragments

Construction of genomic library (pBR322ベクター)

Purification of DNA bound by ModE

Mapping in E. coli genome

*For ModE, with 1 mM Na2MoO4 For BasR, KdpE & ZraR, with 10 mM Acetylphosphate

Hybridization onto a tiling array

Mapping in E. coli genome

ゲノム ライブラリー

ModE (3 cycles)

BasR (3 cycles)

KdpE (3 cycles)

ZraR (2 cycles)

310 bp

234 bp

SELEX-clos SELEX-chip

Ogasawara et al. (2012) Microbiology, Kurata et al. (2013) J. Bacteriol.

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基礎研究ーChIP-chipー

0.2 mM Mn2+ 0.1 mM EDTA

E. coli BW25113 culture in LB medium

Labeling DNA with Cy3 or Cy5

Hybridization onto a tiling array

Mid-log phase (OD600 = 0.3~0.4)

Cross-linking by formaldehyde

Lysis by lysozyme

Fragmentation of genome by sonication

Preparation of MntR-DNA by anti-MntR

Purification of DNA from MntR-DNA complex

dps

mntR

yebN

mntH

ATTAAGTATAGCACCGGCTATGTGTT TACAGATATAGCACAGGCTATATTAT ACTAAACATAGCTTTGGCTAAATTCA ATCAGACATAGCTTAGGCTATATTAC ATGAAACATAGCAAAGGCTATGTTTT

dps mntR/rybA

yebN

mntH/nupC

Yamamoto et al. (2011) J. Bacteriol.

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ゲノム育種(1)

Time (hours)

Grow

th (

OD

600

nm

) マンガン取り込みポンプ遺伝子高発現 マンガン結合タンパク質遺伝子高発現

マンガン高蓄積大腸菌細胞のゲノム育種

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ゲノム育種(2) システイン合成酵素高発現 大腸菌細胞のゲノム育種

Yamamoto et al., (2011) FEMS Microbiol. Lett.

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レアメタルを高蓄積する大腸菌

レアメタル特異的取り込み能の強化 レアメタル特異的結合能の強化

レアメタル高蓄積大腸菌 〜5 mg/L(細胞容積)

〜0.5 mg/L(細胞容積)

ゲノム育種 X 10

大腸菌の金属輸送と結合システムの強化で細胞内高蓄積を可能

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高蓄積大腸菌からのレアメタル回収

大腸菌回収・破砕 レアメタル結合 タンパク質精製 タンパク質の除去

他の無機物・有機物とを分離して、抽出が可能

ワンステップの工程でタンパク質精製を可能

大腸菌内高蓄積レアメタルは、容易に高純度で回収が可能

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本技術の汎用性ー輸送システムー

大腸菌には各金属特異的な輸送システムが存在する

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本技術の汎用性ー金属結合因子ー

大腸菌には各金属特異的な認識(結合)システムが存在する

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想定される用途(1) • 海水などの水域からのレアメタル回収

海水

淡水

連続培養装置

省エネルギー工程

水域環境の すべてが資源

高純度 本技術により、海水を資源とした新しいレアメタル回収技術を構築

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想定される用途(2) • 金属による汚染環境の浄化

金属汚染海水 淡水

除染水

本技術により、金属汚染の除染技術を低環境負荷型技術として構築

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想定される用途(3) • 金属を補因子とする有用酵素精製

金属因子を配位した機能性酵素

大腸菌回収 破砕

酵素精製 大腸菌で大量合成される有用酵素

本技術により、金属配位型機能性有用酵素の生産を効率化

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実用化に向けた課題 • 現在、金属を高蓄積する微生物のゲノム育種技術は確立し、実際にレアメタル高蓄積大腸菌を取得済み。

• 今後、実用における汎用性をもたせるために、各種ストレス耐性能付加と高蓄積能の向上を検討。また、細胞内の高蓄積金属の回収を検証中。

• しかし、実用に目指す大量培養装置での適正化は未着手。

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企業への期待 • 未解決の大量培養装置を用いた検討については、発酵による物質生産の技術により克服できると考えている。

• 微生物の連続大量培養技術を持つ、企業との共同研究を希望。

• また、金属など無機化学関連の企業などが、バイオ分野への展開を考えている場合に、広い汎用性をもつ本技術のによる導入が有効と思われる。

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本技術に関する知的財産権

•発明の名称 :組換え微生物 •出願番号 :特願2013-102752 •出願人 :法政大学 •発明者 :山本 兼由

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産学連携の経歴 • 2005年-2006年 味の素(株)と受託研究 (バクテリアの金属応答ゲノム発現制御機構解析 と物質生産への応用) • 2007年-2011年 味の素(株)と共同研究 (バクテリアのシステイン応答に関する解析 と物質生産への応用) • 2011年 JST 研究成果最適展開支援プログラム ・探索タイプ事業に採択 • 2013年 JST 研究成果最適展開支援プログラム ・探索タイプ事業に採択

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お問い合わせ先 法政大学 研究開発センター 産学連携コーディネーター 中江 博之 TEL 042-387 - 6501 FAX 042-387 - 6335 e-mail [email protected]