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通巻 第 196 号 VOL.46 NO.1 APRIL 2016 196 春号 一般財団法人 北海道建築指導センター C enter R eport センターリポート

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通巻 第 196 号 VOL.46 NO.1APRIL 2016 196 春号

北海道の住まいづくりをめざして一般財団法人 北海道建築指導センター

一般財団法人北海道建築指導センター

Center Reportセンターリポート

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センターリポートVol.46 No.1 春号

平成28年4月1日発行 通巻196号

発行人 辻井 久幸

発行 一般財団法人 北海道建築指導センター〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1番地

札幌北三条ビル 8階TEL(011)241-1893FAX(011)232-2870

印刷 ㈱アイワード

センターリポート編集委員名簿(敬称略)森 傑 北海道大学大学院工学研究院 教授谷口 尚弘 北海道科学大学工学部建築学科 教授松田 眞人 (一社)北海道建築士事務所協会 理事・広報委員長早川 陽子 (一社)北海道建築士会 情報委員会委員長竹田 公典 札幌市都市局市街地整備部住宅課

住宅企画係長田村 佳愛 北海道建設部住宅局建築指導課

建築企画グループ主査清水 浩史 (地独)北海道立総合研究機構(北方建築総合研究所)

建築研究本部企画調整部 企画課長

辻井 久幸 (一財)北海道建築指導センター田中 雅美 同

「センター倶楽部ほっかいどう」入会のご案内

センター倶楽部は、会員の皆さまとともに道内において質の高い住宅の供給を促進する団体です。会費や入会金は一切いただきません。入会を希望する方は「入会申込書」にご記入いただき、下記事務局に提出してください。詳しくは、北海道建築指導センターのホームページをご覧ください。

センター倶楽部ほっかいどう事務局〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1 札幌北三条ビル8階一般財団法人北海道建築指導センター内TEL:011-241-1893 FAX:011-232-2870http://www.hokkaido-ksc.or.jp

①まもりすまい保険の届出事業者であること②住宅保証機構の「設計施工基準」への適合③上記に加えて品質管理基準に適合すること【センター倶楽部ほっかいどう認定住宅の要件】・住宅の種別:一戸建て住宅、共同住宅等 ・工事種別:新築・住宅の構造:木造、RC・SRC造※木造の場合、通気構法及び基礎の高さ400㎜以上※RC・SRC造の場合、コンクリートの品質(水セメント比55%以下等)などの団体の基準があります。

■センター倶楽部会員の要件・会の趣旨に賛同する者・道内に事業所又は道内で事業を行う住宅関連事業者・まもりすまい保険・まもりすまいリフォーム保険を利用する場合は、会が定める設計施工基準を遵守し、住宅の品質の確保・向上に努めること。

■会員の皆さまへの特典・「センター倶楽部ほっかいどうニュース」により住宅建築に関する情報を提供します。・研修会、セミナー等への案内・参加することができます。・まもりすまい保険・まもりすまいリフォーム保険の団体割引が適用になります。(品質管理基準に適合する住宅)

■認定住宅の要件

入会金・年会費無料

会員830社

■まもりすまいリフォーム保険の団体割引が適用されると保険料が割引となります。(料金:平成27年度適用料金)■一定の要件のリフォーム工事を行う際に基本構造部分の保険期間を10年に延長できます。■料金プラン:保険料+現場検査手数料となります。 【凡例】A:構造耐力上主要な部分、B:雨水の浸入を防止する部分

センター倶楽部ほっかいどうは、平成28年1月に住宅保証機構㈱からリフォーム団体の認定を受けました。新築住宅に加え、リフォーム工事でも団体割引を適用!!センター倶楽部ほっかいどうの会員で、まもりすまいリフォーム保険登録事業者の皆さまは、当団体が定め

た設計施工基準を遵守し、設計・施工する場合、リフォーム保険料の団体割引料金が適用されます。

1.既存住宅のリフォーム工事(基礎の新設を伴う増改築を行わない工事)■工事事例 〈内外装・設備プラン〉床暖房の設置 (保険期間:1年間)

工事内容 床暖房システムの設置、床の貼り替え

工事請負額 180万円 料金

合計額

標準料金 36,420 保険料

(非課税)

22,460 現場検査手数料

(税込み)

13,960

1回分

差額

保険金支払い限度額 200万円 団体割引 32,150 18,190 4,270

2.基礎の新設を伴う増改築工事を行う場合(増築特約付帯)■工事事例 キッチンの改修と増築 (保険期間:基礎を新設する部分は10年、Aは5年、その他は1年)

工事内容リフォーム工事+増築工事(基礎を新設) 既存部分の耐力壁撤去(A)、システムキッチンの入れ

替え、増築・既存部分の床フローリングの貼り替え、壁・天井クロスの貼り替え

既存住宅のリフォーム工事部分の保険金支払限度額 ※申請時に設定してください。 200万円

基礎を新設する増改

築部分の床面積※110㎡

料金

合計額

標準料金 88,390 保険料

(非課税)

44,110 現場検査手数料

(税込み)

44,280

4回分

差額

団体割引 79,790 35,510 8,600

※1:既存住宅のリフォーム工事部分の床面積は除く。

センター倶楽部ほっかいどう事務局 一般財団法人北海道建築指導センター内 TEL:011-241-1893

〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1番地 札幌北三条ビル8階

詳しくは、北海道建築指導センターのホームページをご覧ください。 http://www.hokkaido-ksc.or.jp

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―1―

創立50周年のごあいさつ山田 博人

(一財)北海道建築指導センター・理事長

今年は当センター創立50周年の節目の年です。これもひとえに、永きにわたる皆さまのご高配

とご支援の賜たま

物もの

と心から感謝申し上げます。当センターは、東京オリンピック開催の2年後、

昭和41年に、道民からの防寒住宅の指導・相談機関の強い設立要望、さらには新しい材料・工法など、寒地建築技術の普及促進を図るため、当時の地崎宇三郎北海道建設業協会会長ほか多くの関係者のご支援と町村金五知事のご裁断により、大野和男初代理事長のもと設立されました。発足当時は、北海道銀行ご相談センター(中央

区南2西2)の片隅に職員わずか3名、予算770万円でのスタートだったようです。翌年、事務所は上田ビル(現在のさっぽろ東急

百貨店のあたり)に移転。昭和43年発刊の「センターニュース第1号」によると、当時の旺盛な住宅建設事情を反映し、当センターの1、2階には70社からなる建築資材展示場を常設し、3階講堂では一般向け講演会や技術講習会などが開催され、寄せられた住宅相談が年間約1500件、まさに高度成長の騒然とする熱気の中で業務が進められました。この頃、道内に建設された住宅のほとんどは、

断熱材がないか、あっても申し訳程度で、室内に発生する結露とカビが大きな社会問題となっており、寒地住宅普及に向けて、当センターを中心に当時の道内の住宅業界、大学・研究機関、行政が一体となって、その技術的解決に向け、叡智と熱意を注いだ時代でした。さて、当センターでは創立50周年を記念して今

年度いっぱい様々な行事を展開して参ります。スタートに当たり表紙の色も変えてみました。

お気づきいただけましたでしょうか。1年間、どうぞよろしくお願いいたします。

も く じ 第196号(2016.4 春号)

2 センターゼミナール Part1 戸松 誠都市の防火性能評価を活用した防火地域及び準防火地域指定基準の策定について

6 センターゼミナール Part2 菊地 優免震構造物の地震応答評価法に関する研究

10 生き意気まちづくり旭川駅周辺のまちづくり「北彩都あさひかわ」整備事業について旭川市都市建築部北彩都事業課

14 建築物活用を通じた保存への新たな試み「国指定重要文化財豊平館」保存活用事業札幌市市民文化局文化部文化財課

18 海外訪問記 千葉 隆弘ノルウェーでの海外研修

24 話題レポート平成27年度北海道赤レンガ建築賞受賞作品北海道建設部住宅局建築指導課

26 行政報告北海道太陽電池・風力発電設備景観形成ガイドラインの策定について北海道建設部まちづくり局都市計画課基本計画・景観グループ

28 北の近代建築散歩 向田 薫ニセコらしい交流拠点の空間へ「ニセコ中央倉庫群」①

30 建築の一村一品 宮下 英己災害時においても行政・避難所機能を維持するために「釧路市役所防災庁舎」の建設

アートな視点下村 憲一…17とき・まち・ひと/コラージュ(YO)…23北総研NOW32北の住まいだより33

〈表紙の写真〉「札幌三井JPビルディング2階アトリウムテラス」

2014年8月に竣工した「札幌三井JPビルディング」(札幌市中央区北2条西4丁目)は、オフィスと商業からなる複合施設。商業施設部分『赤れんがテラス』は、地下1階から地上4階にかけて27店舗で構成され、2階には大きな吹き抜けから自然の優しい光が入り込む憩いの広場空間・アトリウムテラスを設置している。関連事項は24ページに掲載。

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戸松 誠 地方独立行政法人北海道立総合研究機構北方建築総合研究所地域研究部居住防災グループ・主査(地域計画)

1.防火地域・準防火地域の役割

都市の防火性能を向上させるための都市計画的手法として、防火地域・準防火地域の指定があります。現行の防火地域・準防火地域の制度は昭和25年に建築基準法が定められ、当該地域内における建築物に防火上の制限内容が強化されたことにはじまります。今回の事例である旭川市では、昭和24年に初め

て都心部165haに準防火地域を指定し、昭和28年にはその一部約5haを防火地域に変更指定しています。昭和34年、同41年、同48年には大幅な見直しを

行い、防火地域を約33haから約60.2haと約2倍、準防火地域を約1,023haから約1,553haへと約1.5倍に拡大しました。その後、防火地域を都心部で拡大するとともに準防火地域の小規模な変更を行いつつも、平成20年の指定基準策定まで大きな指定変更を行っていませんでした。この間、都市構造や建物の仕様も大きく変化し、

指定当時とは都市の防火性能が大きく異なってきています。下見板張りのいわゆる裸木造からモルタル塗り、サイディング張りと外壁の材料の変化や、住宅地や出火危険施設などの郊外化などです。これらの変化に対して都市の火災危険度を評価

することができなかったため、市街地の火災危険度と防火地域・準防火地域の整合がとれていない可能性がありました。このことは、都市を災害から守るためには大変

重要な問題です。都市の安全性を高めるためには、危険な地域を客観的な根拠に基づいて抽出し、限りある防災資源を効果的に用いて、対策を実施する必要があるからです。このような背景から、旭川市においては、火災

の危険度が高いなど防火上注意を要する地区を具体的な指標により明らかにし、客観的な都市防火性能評価に基づき指定基準を作成することになりました。そして、旭川市からの委託により当研究所において都市防火性能評価を実施し、旭川市と

協同で防火地域及び準防火地域指定基準案を策定しました。なお、この指定基準案は、平成20年6月に決定さ

れ同年10月に防火地域及び準防火地域の変更について都市計画決定がなされ現在に至っています。

2.都市防火性能手法の概要

都市防火性能評価の流れを図1に示します。

①GISデータの整備及び建物構造調査都市防火性能評価には建物ごとの建築面積、延

べ床面積、建物構造、空地面積、評価地区面積が必要となります。都市計画基礎調査の GIS データを活用するとともに、建物構造(耐火・準耐火・防火木・裸木)の判定を行うため、昭和35年以前の木造建物については悉

しっ

皆かい

調査を実施しています。②現況の都市防火性能評価都市防火性能評価には、国土交通省総合技術開

発プロジェクト「まちづくりにおける防災性能評価・対策技術の開発(平成10~14年度)」において開発されたCVF※(Covering Volume Fraction)を用います。そして、CVF 値から火災面積を推定します。この CVF 値から火災面積を推定する手法は、旭川に適用できるよう当所で独自に開発したものです。ここで用いている CVF とは、対象となる建築

物の周囲に延焼限界距離の半分で領域(建物の構造・規模によって異なる)を作成したときに、地区面積に対するこの領域の一団であるクラスター

センターゼミナール 168

―2―

Center Seminar

Part 1 都市の防火性能評価を活用した防火地域及び準防火地域指定基準の策定について

図1 都市防火性能評価の流れ

①GISデータの整備及び建物構造調査

②現況の都市防火性能評価

③都市防火性能指標の想定最大値の予測

④延焼拡大地域の評価と要因分析

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面積の比であり、具体的には、GIS を用いて建物の構造種別に応じた延焼限界距離の半分の領域を発生させ、その領域が重なる部分をつなぎ合わせてクラスターを作成し、その面積の合計を地区面積で割ることによって計算できます。図2に CVF の計算イメージを示します。CVF

値から推計する火災面積は、1棟の建物からの出火を前提とした対象地区内の焼損建築面積の期待値である「平均焼損面積」及び最大値である「最大焼損面積」を用いています。③都市防火性能指標の想定最大値の予測防火地域・準防火地域による規制は、既存建築

物に対し遡及しないことから、都市防火性能の向上には長い期間が必要となります。このため、都市の防火性能の把握は現時点における現況値だけではなく、市街地が将来的にどの程度までの危険性を持ちうるかという想定最大値の予測を行うことが重要となります。市街地の防火性能指標の最大値を想定するため

に、今後建築物が建てられる可能性のある空き宅地に着目し、現況の建築敷地と同じ建ぺい率で建物が建てられた状況を想定することにより、都市防火性能の想定最大値を求めます。

④延焼拡大地域の評価と要因分析都市防火性能指標から、相対的に延焼が拡大す

る恐れのある地域として、延焼拡大地域を抽出します。延焼拡大地域の判定基準として、近年北海道内で発生した最大規模の都市火災である平成14年に稚内市で発生した火災(焼損面積8,845㎡)を基準としています。ここでは、安全率として2倍程度の焼損面積

(5,000㎡)を設定し、現況値の平均焼損面積2,500㎡以上かつ最大焼損面積5,000㎡以上並びに想定最大値の平均焼損面積5,000㎡以上かつ最大焼損面積10,000㎡以上の区画を延焼拡大地域としました。このようにして抽出した地区の街区形状や建物

及び空地の分布状況を詳細に検討し、火災が拡大する要因を分析します。そして、評価結果を活用し、防火地域及び準防

火地域指定基準案を策定します。

3.評価結果

図3(次ページ)に、旭川市と地震時などに火災危険度が高いと言われている東京都について、その火災危険度の比較を示します。

―3―

図2 CVFの計算イメージ

クラスター面積

延焼限界距離

地区境界

裸木造防火木造準耐火造耐火造

構造種別

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旭川市は、東京都と比較して、最頻値が1階級小さくなり、また最大値も小さくなっていることがわかります。なお、この数値が0.65以上になると「地震時等に著しく危険な重点密集市街地」に該当する可能性が発生します。図4に、抽出した延焼拡大地域を示します。併

せて、見直し以前の防火地域・準防火地域についても図中に示します。ここで抽出した5区画から明らかとなった延焼拡大の要因は、以下のとおりです。○旗はた

竿ざお

敷地の存在街区内に旗竿敷地が存在する場合、建物棟数が

多くなるとともに、当該敷地内の建物が延焼経路となり大きなクラスターが形成されている。○少ない空き地宅地以外の空き地が少なく、将来的に延焼を遮

断する空き地が街区内になくなることにより、街区内のすべての建物からなるクラスターが形成される恐れがある。○幅員の狭い道路既成市街地内に、幅員の狭い道路があり隣接す

る街区にまたがったクラスターが形成されている。○裸木造の分布既成市街地内にある大規模な裸木造により、道

路を越えたクラスターが形成されている。このため道路幅員が一定程度あるにもかかわらず、焼損面積が大きくなる。ここに示した要因は、従来からも火災危険度を

増加させるとして考えられてきた項目です。都市の火災危険度は、これらの要因が複雑に関係しており、従来の危険度評価手法では、これらの要因を持つ街区を抽出するのが困難でしたが、今回開発した手法を用いることで街区の詳細な特徴を抽出できるようになり、街区特性に応じた対策を検討することが可能となりました。

―4―

図3 火災危険度の比較

図4 延焼拡大地域

セミグロスCVF旭川東京都

0.200

0.150

0.100

0.050

0.000

0.05未満

0.05以上

0.10以上

0.15以上

0.20以上

0.25以上

0.30以上

0.35以上

0.40以上

0.45以上

0.50以上

0.55以上

0.60以上

0.65以上

0.70以上

0.75以上

0.80以上

市街化区域

拡大

数字は区画番号現況・想定最大値想定最大値現況

延焼拡大区画商業・近商地域準防火地域防火地域

④④

①①

⑤⑤

③③②②

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4.旭川市における防火地域及び準防火地域指定基準

延焼拡大地域はいずれも、従来からの既成市街地もしくは、昭和40年代以前に開発された地域であり、この年代に開発された地域に特徴的なパターンでした。言い換えれば、旭川市において、昭和43年都市

計画法による都市計画制度は、都市防火性能の向上に寄与してきたと言えます。この点を踏まえ、従前の防火地域・準防火地域

との関係性を考慮し、旭川市都市計画課において新たな指定基準が策定されました。抜粋して紹介します。

[新基準]

─「旭川圏都市計画防火地域及び準防火地域指定基準」より抜粋─●指定の考え方⟹1防火地域等の指定を要する区域次に掲げる区域は、防災上の観点から市街地の

不燃化等の促進と維持により、市街地の安全性を高めるべき区域であるため、防火地域等を指定する必要がある。ア.商業地域と近隣商業地域イ.指定容積率が高く設定されている区域ウ.商業地域で都市の中枢管理機能が集積してい

る区域エ.中心市街地オ.防火性能評価により判定された防火性能が低

い街区が隣接して一定規模以上の一団性を有する区域

⟹2防火地域等の指定を要しない区域次に掲げる区域は、都市計画制限により市街地

の安全性が高められている区域であるため、防火地域等の指定を必要としない。ア.地区計画区域(商業系用途地域の区域を除く、

地区整備計画及び都市施設が定められている区域に限る)

イ.指定建ぺい率50%以下の区域⟹3指定区域の境界原則として、道路、鉄道、その他の施設や河川、

がけ、その他の地形等により土地の範囲を明示するのに適当なものとする。

●指定基準1.防火地域⑴指定容積率600%以上の区域⑵商業地域で都市の中枢管理機能を担う官公庁施設が立地集積する区域

2.準防火地域 防火地域を除く次に掲げる区域

⑴商業地域と近隣商業地域⑵中心市街地(地区計画区域、都市計画決定された総合公園の区域とその区域に囲まれた区域を除く)

⑶防火性能評価が必要な区域において、次のア又はイに該当する街区が隣接し5ha以上の一団性を有する区域

ア.建築物の密集度が高い街区「建物棟数密度60棟/ha以上かつ木造建物棟数密度50棟/ha以上」の街区

イ.火災被害が大きくなると想定される街区「最大焼損面積5,000㎡以上」のクラスターを含む街区

新しい指定基準により、防火地域は変わりませんが準防火地域は1,564haから429haへと、大幅に減少することとなりました。

5.まとめ

客観的な都市防火性能評価に基づき防火地域・準防火地域の指定基準を策定することの意義は、住民に対して準防火地域という規制をかけることの必要性について明確に説明できることとなった点が非常に重要であると思われます。防火地域・準防火地域に指定することは、建築

物の防火性能を向上させるために建て主に対して費用負担を伴わせることになり、その指定と見直しに関しては、明確な基準を整備するなどして適切に進める必要があります。この成果は、苫小牧市や室蘭市など北海道内の

他都市における準防火地域の指定見直しに活用されており、苫小牧市においては、地震火災を想定した視点を加え都市防火性能の評価を当所で実施しています。〈参考文献〉※:国土交通省―国土交通省総合技術開発プロジェクト「まちづくりにおける防災性能評価・対策技術の開発」報告書、2003

―5―

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菊地 優 北海道大学大学院工学研究院建築都市空間デザイン部門空間防災分野・教授

1.はじめに

免震構造は近い将来に発生が懸念される巨大地震への備えとして、今後も普及・発展が期待される構造形式である。筆者は免震構造の健全な普及・発展を促すことを目的として1990年代から約四半世紀、免震構造の研究開発に取り組んできた。本稿では、上記の題目にて2015年日本建築学会賞(論文)の受賞対象となった研究成果について紹介する。

2.研究の動機

免震構造とは、建物基部に特殊な装置(免震装置)を設置することで建物を地震時の揺れから絶縁する構造である(図1)。通常、免震装置には、建物荷重を支えながら柔らかく水平変形することと、揺れを早く減衰させることの2つの性能が要求される。

筆者の免震構造との関わりは、1989年に東京都内の免震ビル新築工事作業所において、施工管理を担当したことに始まる(写真1)。免震構造は建物基礎部に免震装置を設置する床を設ける必要があることから、一般構造よりも工期とコストが余計にかかる。筆者が担当した免震ビルでは、支承が天然ゴム系積層ゴム、減衰装置が鋼材ダンパーとオイルダンパーと3種類の免震装置が組み合わされていた。しかし、技術開発が進み、支承と減衰が一体となった高減衰積層ゴムや鉛プラグ入り積層ゴムが出現したことで、免震工事は積層ゴムの設置のみで済むようになった。免震工事の施工管理を実際に経験した筆者に

とって、支承減衰一体型の免震装置は非常に魅力的であった。ただし、それらの装置では力学的特性の評価が複雑となり、性能を設計に取り込むことに工夫を要する。その困難さを克服さえすれば、低コストかつ簡易に免震構造を普及させることができる。当初の研究動機はここにあり、その後、簡易かつ精度良く免震装置や建物の地震時の挙動を予測できる解析的手法を提案し、今日に至っている。

3.研究の構成と概要

研究成果は、①免震装置に関する研究と②免震建物に関する研究の2つで構成される。前者は免震装置単体の力学特性について検討したものであり、後者では前者の成果を活用して免震建物全体の地震時挙動を検討している。以下、各項目の概要について記す。①免震装置に関する研究本研究では、数ある免震装置の中で主として支

承減衰一体型の積層ゴムを扱った。この種の積層ゴムは物質が有する履歴減衰という現象を利用することで、建物荷重を支持しながら水平方向に変形する支承機能と揺れを低減する減衰機能を併せ持つことが可能となる。図2は主要な免震装置の1つである高減衰積層ゴムの荷重変形関係(せん

センターゼミナール

―6―

Center Seminar

Part 2 免震構造物の地震応答評価法に関する研究

写真1 免震工事の施工管理(筆者:中央)

図1 免震構造のコンセプト

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断ひずみ-せん断応力度関係)である。免震設計では、このような履歴特性を精度良く評価することが求められる。一般的には2折れ線で近似するバイリニアモデ

ルが用いられる。しかし、バイリニアモデルでは大変形時に生じるハードニングや剛性低下を適切に表現できず、振動解析の際には高次振動モードの励起特性の再現性にも問題がある。そこで、本研究では免震装置の復元力を、指数関数を用いた滑らかな曲線によって表現するモデルを新たに提案した1)。図3はシミュレーション解析の一例であり、実験結果が適切に再現されている。この復元力モデルは拡張性の高い数式表現を用いており、他種の免震装置にも容易に拡張できる。現在、高減衰積層ゴムに加えて、鉛プラグ入り積層ゴムや鋼材ダンパーにも拡張され、日本国内で用いられる履歴減衰型免震部材をほぼ網羅するに至っている(写真2)。

2003年十勝沖地震以降、長周期地震動が注目されるようになり、今後発生が懸念される南海トラフ地震のような巨大地震に対して、長周期構造物である免震建物は過大な変形を強いられる可能性が指摘されるようになった。過大な変形下で積層

ゴムは、図4のように作用する軸力によって特性が大きく変化する。このように軸力と水平変形が連成する特性は、先に述べた復元力モデルのみでは表現できない。そこで、図5のような力学モデル(並列軸ばねモデル)を新たに提案した2)。この力学モデルと既提案の復元力モデルを組み合わ

―7―

図5 並列軸ばねモデルの提案

写真2 復元力モデルが適用された免震装置

図4 積層ゴムの極限挙動

図3 シミュレーション解析結果

図2 高減衰積層ゴムの荷重変形関係(ブリヂストンX0.4S タイプ)

高減衰積層ゴム

U型ダンパー鋼棒ダンパー

鉛プラグ入り積層ゴム

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せることによって、積層ゴムの極限状態を再現することが可能となった。②免震建物に関する研究免震装置単体の力学的挙動を再現するための各

種モデルの開発と並行して、それらを用いた免震建物の地震時挙動に関する研究を行った。米国 UC Berkeley/EERC の振動台を用いて、

実在 RC造3階建て免震建物の1/2.5縮小試験体の加振実験を行った(写真3)。長周期地震動による加振では、積層ゴム自体には損傷は見られなかったものの、上部建物は崩壊系が形成されるほどの著しい損傷が生じた。免震構造が本来守るべき上部建物に重大な損傷が生じたことをきっかけとして、免震構造物の動的非線形挙動に関する研究を新たに展開することとなった。

本研究において開発した免震装置に関する一連の復元力・力学モデルを集約することで免震構造物の地震応答解析システムを構築した(図6)。この解析システムは、写真3の振動台加振試験の結果を高精度に再現することで解析手法の妥当性を検証した後、数多くの免震設計に活用されることとなった。振動台加振試験で見られた上部建物の著しい損

傷については、現象を究明するために免震構造物を2質点振動系にモデル化して非線形定常振動に関する理論的考察を行った(図7)。調和地動下での定常振動理論解からは、免震構造物の上部建物が非線形化すると変形が急激に進行するという免震構造の脆弱性が示された3)。この現象は図6の解析システムを用いた地震応答解析結果からも確認され、免震構造が本来的に有する普遍的性質であることが明らかとなった。ここに、免震設計では上部建物に余裕ある耐力を与え、免震構造の効用は地震力低減による躯体の経済設計よりも、加速度低減による建物の機能維持に向けるべきであるという免震構造の本質を見極めた設計思想に到達した。

4.研究成果の社会展開

一連の研究成果を用いて設計された免震建築の棟数は120棟以上にのぼる(2012年時点)。代表的な適用事例としては、国立西洋美術館(写真4)、京都大学百周年時計台記念館、日本橋三越本店など著名な歴史的建造物の免震レトロフィットがある。免震レトロフィットでは既存建築の制約条件の

下で最適な免震装置の選択と配置計画が求められ

―8―

図6 免震構造物の地震応答解析システム

写真3 免震建物モデルの振動台試験

図7 2質点振動系の非線形定常振動解析

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るため、装置の性能評価には本研究で提案された復元力モデルが有用である。新築の免震ビルへの適用事例としては清水建設本社ビル(写真5)や北海道内ではDocomo 釧路ビル(写真6)がある。本研究で開発した解析手法は、国内外の汎用構

造解析プログラムへ実装され、研究者・技術者に利用されている。米国UC Berkeley で開発・運用されているオープンソース構造解析システムOpenSees(図8)には、筆者の名前が冠された解析モデルが公開され、研究成果がグローバル展開されている。

5.まとめ

本稿では、2015年日本建築学会賞(論文)の受賞対象となった研究成果について紹介した。筆者は、近い将来に発生が懸念される巨大地震への備えとして、免震構造が防災対策の中核をなす技術であると確信する。社会が免震構造の効用を最大限享受できるよう、一層の性能向上と普及を目指して、今後も研究開発を推進する所存である。〈参考文献〉1)Masaru Kikuchi, Ian D. Aiken, ‘An Analytical

Hysteresis Model for Elastomeric Seismic Isolation

Bearings’, Earthquake Engineering and Structural

Dynamics, Vol.26, 215-231, 1997

2)Masaru Kikuchi, Takahito Nakamura, Ian D. Aiken,

‘Three-dimensional analysis for square seismic isola-

tion bearings under large shear deformations and high

axial loads’, Earthquake Engineering and Structural

Dynamics, Vol. 39, 1513-1531, 2010

3)Masaru Kikuchi, Cameron J. Black, Ian D. Aiken, ‘On

the response of yielding seismically isolated struc-

tures’, Earthquake Engineering and Structural

Dynamics, Vol. 37, 659-679, 2008

4)http://opensees.berkeley.edu/index.php, 2015

―9―

写真6 Docomo釧路ビル

写真4 国立西洋美術館

写真5 清水建設本社ビル

図8 OpenSees への実装4)

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旭川駅周辺のまちづくり~『北彩都あさひかわ』整備事業について~

旭川市都市建築部北彩都事業課

1.はじめに

旭川市は、北海道のほぼ中央に位置し、面積747.6㎢、人口約34万5千人、北海道では札幌市に次ぐ第2の都市です。都心部は、明治31年に旭川から空知太(現滝川市)を結ぶ官設鉄道の開通に伴い飛躍的に発展し、交通の要衝として急激に人口も増えました。しかし、旭川駅が市域に流れる4大河川の一つ忠別川を背にして建築されたため、忠別川と鉄道によって市街地が南北に分断されることとなりました。こうした状態を解消することは、本市の長年にわたる懸案事項でしたが、解決の糸口がなかなか見つからない状況にありました。また、モータリゼーションの進行により、郊外型大型商業施設の出店が続き、都心部の魅力の減衰、活力の低下、中心市街地の空洞化が顕著となり、都心の再生が急務となっていました。

2.課題解決の検討

このような中で昭和62年に行われた国鉄分割民営化に伴い、旭川駅の南東にあった工場跡地などが国鉄清算事業団(当時)へと引き継がれ、利用の転換が可能な広大な土地が生まれることとなり、本市でも計画的な開発によってさまざまなまちの課題を解決するため本格的に調査・検討を進めました。平成4年度から都市拠点総合整備事業による調査・検討に着手し、鉄道高架事業や土地区画整理事業などの都市基盤整備を一体的に推進し、国鉄跡地などの広大な未利用地に、

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生き意気まちづくり

整備前の旭川駅周辺(平成7年頃)

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既成市街地と連続した市街地を形成し、新たな都市機能を導入することで都心部の再生を図るとともに、長年の懸案であった都心部と神楽地区をつなぐため、鉄道高架化に合わせ3本の新たな橋梁整備を含む幹線道路を整備することにしました。さらには、導入施設、公園や河川空間の整備などさまざまなまちづくりに関する調査・検討を行い、平成8年度に各事業が採択され、同10年度に本格的に着工しました。

3.北彩都あさひかわのコンセプトと整備方針

『北きた

彩さい

都と

あさひかわ』とは、鉄道高架や土地区画整理など、旭川駅周辺地区で一体的に行われたさまざまな事業の総称あり、この地区を表す名称としても使われています。豊かな自然と都市環境が調和する暮らしやすいまちを目指した『北彩都あさひかわ』は、基本コンセプトを『都心ルネッサンス・旭川』~人々の楽しく集う空間、未来型の都心~とし、整備方針を中心市街地の現況や課題を踏まえて、次のとおりとしました。○鉄道の高架及び忠別川を横断する南北道路の整備○旭川市発展のための新しい機能の導入○忠別川の環境を活かした都心部の形成○楽しくにぎわいを演出する都心部の形成

4.鉄道高架事業

『北彩都あさひかわ』の主要な事業である鉄道高架事業は、旭川駅を中心に函館線1.2㎞、宗谷線1.5㎞、富良野線0.8㎞、計3.5㎞の区間を高架化するもので、事業費約596億円。平成10年度に着工し同23年度に完了しました。高架事業は、地区内にあった車両基地(旭川運転所)を、北に約6㎞離れた永山地区に移設することから着手し、車両基地を移設することで利用可能な土地が増え、効果的に土地区画整理事業を進めることを可能にしました。

車両基地の移転完了後、平成15年度から高架工事に着手し、現線を生かしながら工事を行う別線施工方式が採用され、旧旭川駅から約70m忠別川寄りに高架橋を造り、これに合わせて駅舎も新築されました。高架橋は道路と交差する区間の見通しを考慮し、重厚な構造とならないよう形状を工夫したほか、公園へ流れ込む富良野線高架橋を周囲の緑や水辺空間と調和する構造に変更するなど、景観への配慮を行っています。新築した旭川駅は単に乗降機能のみではなく、まちの顔として大きな役割を担っています。川に隣接してつくられた全国的にも非常にユニークな立地となっている駅舎のテーマは「川のある駅」。全面ガラス張りの外壁で忠別川の豊かな自然と都市の活動を見ることができる透過性のある駅舎は、川とまちをつなぐインターフェースであり、道産の木材で覆われた内部は「木のまち旭川」、「家具のまち旭川」にふさわしい温かみを感じる空間となっています。また、旭川は積雪寒冷地であることから、4面7線からなるホーム全体を、幅180m、奥行き60mの大きな屋根で覆う構造になっており、大屋根を支える柱の数を20本と少なくし、駅利用者が快適に列車を待つことができる大きな内部空間を創り出しています。柱の形状は樹林をイメージし、屋根や柱の構造体をそのまま見せることにより、年月が経っても色あせないデザインとなっています。

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新しくなった旭川駅

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5.土地区画整理事業

『北彩都あさひかわ』のもう一つの主要な事業である旭川駅周辺土地区画整理事業は、施行面積86.2ha。事業費約209億円。平成10年度から本格的工事が始まり、同26年度にほぼ全ての工事が完了しました。都心機能の充実・強化及び既成都心部を駅南側に拡大を図るとともに、河川空間などの自然と調和した市街地を形成するため、道路や公園などの都市基盤整備を行い、鉄道高架用地などを確保しました。南北方向5路線、東西方向3路線、計8路線の都市計画道路と、住宅地は幅員8~14m、商業・業務地は幅員12~20mの区画道路を整備し、街区公園を4カ所、河川緑地と一体となった地区公園(宮前公園)を1カ所整備しています。買物公園など既存の商業地に隣接する駅周辺の街区は商業・業務地として、地区の東・西端は住宅地として、また地区の中央は公共公益施設用地や娯楽・宿泊施設用地としての土地利用を計画しました。旧駅舎の位置より高架橋が70m南側に移ったことから、駅前広場は約0.8haから約2.2haに拡大され、駅前広場周辺に点在していたバス停の集約を図るため、路線バス9台、催事用バス3台分が停車できるバス乗降場を整備しました。駐輪駐車場(自動車88台、自転車900台)、タクシープール、イベント広場、噴水なども整備しています。地区の東側の「シビックコア地区」は、約10haの街区に行政機能を集積した地区であ

り、平成14年度に旭川市障害者福祉センター「おぴった」、同17年度に旭川市科学館「サイパル」、同20年度に国の行政機関が入居する旭川地方合同庁舎、同22年度に旧鉄道施設の煉瓦造建物を保存活用した旭川市市民活動交流センター「CoCoDe」がオープンしています。

6.南北をつなぐ3本の橋

都心部と神楽地区を南北に分断してきた忠別川に新たな3本の橋を架ける幹線道路整備により、長年の懸案であった南北連続化を実現しました。平成15年度に開通した「新神楽橋」は上川神社へ向かう橋で、片側1車線の交通渋滞が慢性化した神楽橋の代替として架橋されました。4車線化を行い、国道39号と237号の二つの国道を連絡する幹線道路として重要な役割を担っています。残る2橋は、平成23年度に開通した「氷点橋」

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整備後の旭川駅周辺(平成27年7月)

新しくなった駅前広場

忠別川に架かる3橋

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と同25年度に開通した「クリスタル橋」で、新しい駅を挟むように架橋され、都心部と神楽地区をつないでいます。3橋の設計に当たっては、周辺の環境や景観に配慮し、「新神楽橋」は背景となる神楽岡公園の丘陵地にマッチするようにアーチ橋とし、「氷点橋」と「クリスタル橋」は姉妹橋として統一感を出しながらも、駅から川に出たときに豊かな自然を印象づけるため、「橋が主張しない」デザインとし、シンプルな桁橋としています。

7.河川空間と公園とガーデン

自然豊かな忠別川が地区に隣接して流れている特性を活かし、河川と都心空間が一体化するように整備しています。地区公園や緑地を忠別川に沿った形で帯状に配置して大規模な緑地空間を確保し、都市的環境から徐々に川の自然環境に近づけていく空間を形成するように植栽やランドスケープを工夫しています。また、駅南側の緑地から地区公園までを河川空間と一体的に整備した「あさひかわ北彩都ガーデン」が平成27年7月にグランドオープンし、約300種類、8万株の花木類・宿根草が代わる代わる咲き誇っています。地区公園にはガーデンの拠点となるガーデンセンターがあり、その周辺ではハーブや野菜を使ったガーデンなどが楽しめます。旧霞堤を利用して整備した大池もガーデンの一部となっており、中心市街地にいながら豊かな

自然が感じられる市民や観光客の憩いの空間となっています。

8.現在の『北彩都あさひかわ』地区

駅前広場西側に隣接した JR 北海道所有地に平成27年3月、イオンモール旭川駅前が駅直結型の大型商業施設としてオープンしたことにより、駅前周辺ににぎわいが戻りつつあります。また、駅前広場に整備されたイベント広場では、夏には北海道音楽大行進やビアガーデン、秋には食のイベント「食べマルシェ」、冬にはスケートリンクや氷彫刻世界大会など、四季を通じてさまざまなイベントが行われ、中心部のにぎわいに寄与しています。土地区画整理事業により生み出された保留地などは、公募型プロポーザル方式により売却が進み、ホテルやマンションが建設され、新しい都心が姿を現しています。

9.おわりに

『北彩都あさひかわ』は、都市景観大賞国土交通大臣賞や土木学会デザイン賞最優秀賞、日本都市計画学会賞など、多くの賞を受賞しました。これは、20年以上にわたる長期事業に携わった多く関係者の努力が評価されたものです。今後は、本市まちづくりの課題である中心市街地の活性化のため、新しく整備された駅前広場などを活用し、楽しくにぎわいのある都心づくりが期待されます。

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あさひかわ北彩都ガーデン(駅南側)

駅前広場のスケートリンク

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活用を通じた保存への新たな試み『国指定重要文化財豊平館』保存活用事業

札幌市市民文化局文化部文化財課

1.豊平館とは札幌市豊平館は、明治13年に開拓使により洋造ホテルとして建てられた開拓使建築の代表的遺構であり、明治、大正、昭和の3代にわたり行幸啓があった由緒ある建物です。昭和33年に大通西1丁目(現中央区北1条西1丁目)から中島公園内の現在地に移築後は主に市営の結婚式場として利用され、同39年には国の重要文化財に指定されています。総2階地下1階建ての木造建築で、外観は基礎を腰石積、壁は下見板張りとし、屋根には8基の煙突が取り付けられています。正面中央部に設けた半円形の車寄せの上部はバルコニーとなっています。木部はペンキ塗りで、下見板は白、柱や窓枠などの枠回りはウルトラマリンブルーを使用した白群青とする鮮やかな色彩が特徴です。また、米国の建築様式を基調としながら、要所で和の要素を巧みに取り入れており、それらは正面中央部の円弧型の破風に飾られる懸魚や内部の漆喰天井中心飾りなどにみることができます。正面中央部の棟飾りと左右の翼部の破風飾りには開拓使の建物であることを示す星(五稜星)があしらわれています。

2.保存活用工事の経緯豊平館は、昭和57年から同61年にかけて大規模修復工事を行っていましたが、耐震改修促進法の改正を受け、多数の方が利用する市所有施設についても耐震化の取り組みを進めるため、平成19年度に耐震

診断を実施しました。その結果、大地震時に倒壊の危険性ありとの診断結果を得たことを受け、平成21年度から有識者で構成される委員会において検討を進め、同23年度に保存活用基本計画を策定し、この計画に基づき同24年度から4年間をかけ保存及び活用に係る工事等を行いました。

3.コンセプト重要文化財であるとともに、市の公の施設でもある豊平館の保存活用に当たっては、事業のきっかけとなった「安全性(耐震性)の確保」に加え「バリアフリー対応」、「老朽化対応」、「式場としてのニーズ減少など活用方法に関する再検討」の課題を解消することが求められました。耐震改修は文化財としての価値を損なわないよう実施することが大前提となりますが、併せて豊平館

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建築物

星形にくりぬかれた翼部の破風飾り

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の建設当初の状態を可能な限り復原し、その価値をより高めることを目的に、後年に設置された事務室やトイレ等の便益施設を移設することとし、それらの機能を受け持つ附属棟を設置することとしました。また、附属棟にはエレベーターやスロープを設けるとともに、豊平館と接続させ、バリアフリーへの対応を図ることとしました。

4.保存修理工事豊平館の工事は、保存修理工事と活用整備工事に分けて行われました。保存修理工事では、文化庁の指導を仰ぎながら各部の保護の方針を定めた上で、耐震補強と復原工事のほか、屋根葺替や各部の部分修理を行いました。耐震補強については、外壁の下地板を構造用合板に置換えるなど壁内部に耐力壁・準耐力壁を設置したほか、2階床面等、接合部、基礎の補強等を実施しました。また、昭和57年から同61年に行った修復工事において、結婚式場として利用する必要性からあえて復原を見送った、各室の間仕切りの復原及び扉口等の復旧、煙道の整備などを行うとともに、腐朽部分の修復を行いました。内装についても、こて絵の技法を用いた天井中心飾は化粧直しを行い、内壁・蛇腹の漆喰塗装仕上げ部分は当時の工法で修復したほか、カーテンの復原などを行いました。

復原に伴う諸機能の移設とバリアフリー化を可能とするため、2階背面中央の附属棟接続部に必要最小限の開口部を設けています。これらの工事は、文化庁より現状変更の承認を得たうえで、解体調査等により各部材の保存状態を確認しながら慎重に進められ、竣工まで4年度間を要しました。

5.活用整備工事活用整備工事は、豊平館の復原に伴い移設された諸機能とともに、バリアフリー化の機能を受け持つ附属棟の設置を主な目的として実施しました。附属棟の立面は、豊平館と同様左右対称とし、背後に日本庭園があるなどの敷地上の制約などから地上部分の平面は平たい T 字形になっています。また、豊平館のファサードへの影響を避けるよう高さを抑え、地上2階地下1階として各階で豊平館と接続しています。外壁は、豊平館の下見板張りとの調和を考慮し、東西北の3面は下見板調の白のセメント板を基調とし、渡り廊下と豊平館に面する南面においては豊平館に対する開放感や一体感を得られるようガラスとアルミカーテンウォールで構成。腰壁も豊平館の基礎と高さを揃えるなど、意匠上の配慮を行っています。また、地上の各室は北側に寄せ、豊平館が見えるガラス面側は通路部分とするとともに、アプローチ部は日本庭園に沿った広いスロープとするなど、こ

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優雅にカーブする階段(ロビーより)

照明は、ガス式灯具をロウソク灯として使用した建設当初からのシャンデリア(左)と後年設置した電灯式のもの(右)がある

2階広間(奥)と前室(手前)天井中心飾りは全部で17基あり、伝統的なモチーフが採用されている。左は蝦夷菊、右は波に千鳥

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れまであまり人目に触れなかった豊平館の背面を積極的に見せる仕掛けをしています。附属棟中央部には軽快な印象の周り階段を設けており、壁面をガラスとすることで、渡り廊下から日本庭園を望むことができます。内装は、豊平館と対照をなす近代的なデザインとしていますが、白を基調に一部ブルーのアクセントを入れ、ガラス面から見える豊平館の外観を意識した仕上げとしています。

6.リニューアルに向けた取り組み本事業は、当初耐震性の確保とバリアフリー化を目的としていましたが、併せて今後の活用方法についても検討がなされ、改修を機に、市営結婚式場としての使い方から、文化財に親しみながらその知識と理解を深める場を提供する施設へとその使用目的を変更することとしました。具体的には、日中の時間帯は豊平館の文化財としての価値や歴史を学べる観覧施設とし、夜間は貸室施設として、改修前に行われていた披露宴などのほか、様々な目的に利用していただくこととしました。

そのため、展示も一部を除き一新し、建物そのものの魅力を体感していただけるよう、白い壁面を活かした映像投影やAR技術による映像主体の展示とし、パネルや実物展示は一部の室や附属棟に集約しました。また、展示内容も豊平館の歴史や意匠上の特徴、行幸啓に関する情報、結婚式場としての市民とのかかわりなど多様性をもたせ、子供から大人まで何度でも楽しめるよう工夫しています。

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左:開放感のある渡り廊下からは日本庭園を望むことができる中央上:豊平館2階に設けた最小限の開口部中央下:附属棟2階。全面ガラス張りの直線廊下からは豊平館の背面を見ることができる右:1階渡り廊下。元裏口から豊平館に入る

フヨウ寝間フヨウ寝間

ブドウ寝間ブドウ寝間ヒメユリ寝間ヒメユリ寝間

ユリ寝間ユリ寝間

帳場帳場

ロビーロビー

前室前室下の広間下の広間

会食所会食所

エントランスホールエントランスホール

事務室事務室

渡り廊下渡り廊下荷捌き駐車施設荷捌き駐車施設附属棟(増築)附属棟(増築)

WWCWWCMWCMWC

車椅子使用者用駐車施設

車椅子使用者用駐車施設

フヨウフヨウユリユリ

ブドウブドウヒメユリヒメユリ

EVEV

重要文化財指定部分重要文化財指定部分重要文化財指定部分

1階平面図

西側外観

バルコニーバルコニー

ホールホール広 間広 間

重要文化財指定部分重要文化財指定部分重要文化財指定部分

倉 庫倉 庫MWCMWCMWCWWCWWCWWC

ウメウメシャクヤク寝間

シャクヤク寝間

ウメ寝間ウメ寝間シャクヤクシャクヤクムラサキムラサキ

ムラサキ寝間ムラサキ寝間前室前室

ツバキツバキススキとオミナエシススキとオミナエシ

タケ寝間タケ寝間

タケタケ

EVEVHCWCHCWC

2階平面図

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7.結び本事業は、文化財を積極的に活用しながら保存していく本市では最初の取り組みであり、得られた検討プロセス等を他の施設にも活かし、文化財に親し

んでいただけるよう取り組みを進めていく予定です。平成28年6月に観覧・貸室施設として新たなスタートを切る豊平館が、多くの方に利用され、身近な文化財として発展していくことを願っています。

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施設概要

施 設 名 札幌市豊平館所 在 地 札幌市中央区中島公園1番20号建 築 面 積 (豊平館)528.8㎡建 築 面 積 (附属棟)238.53㎡延べ床面積 (附属棟)702.02㎡構 造 (豊平館)地下部分RC造地上部分W造

(附属棟)地下部分RC造地上部分S造階 数 地上2階地下1階設計・監理 (保存修理工事)公益財団法人文化財建造物保存技術協会

(活用整備工事)〈建築〉 株式会社三菱地所設計〈設備〉 株式会社真紀設備設計事務所

工 期 (保存修理工事)2012年8月~2015年11月(活用整備工事)2014年9月~2015年1月

施 工 者 (保存修理工事)株式会社大林組札幌支店(活用整備工事)〈建築〉 株式会社大林組札幌支店〈電気〉 札幌通信電設株式会社〈冷暖房衛生〉 新拓空調設備株式会社〈エレベーター〉 フジテック株式会社北日本支社

北海道支店〈小荷物専用昇降機〉 日本オーチス・エレベータ

株式会社北海道支店展 示 整 備 株式会社丹青社

ストーンヘンジの岩とエンジニアの魂

私は若い頃、「あなたの好きな建築作品は何ですか?」という建築雑誌のアンケートに「ストーンヘンジ」と答えたことがある。しかしストーンヘンジは建築物ではない。それは古代の祭礼に使われたといわれる謎の巨大遺跡だ。人が造った歴史的建造物の中で、私の心に強く残っている一つである。昨秋、話題を呼んだTVドラマ「下町ロケット」を見て、この遺跡がまた頭に浮かんだ。ストーンヘンジはロンドンから西に約200㎞、ソールズベリー平原にある環状列石(ストーンサークル)である。夏至には、高さ6ⅿのヒール・ストーンと呼ばれる岩と中心を結ぶ直線上に太陽が昇ることから、設計者には天文学の高い知識があったようだ。また最大で1個40tもある岩を運搬するのにも、高度な技術が使われている。材料となった巨岩は数㎞先の岩もあれば、200㎞離れた山のブルー・ストーンという砂岩も使われている。1200年ほどかけ、何代にもわたり現在の姿になったそうだ。このような環状列石は北海道小樽市忍路

おしょろ

をはじめ、日本や世界各地で数多く発掘されている。巨石文化の遺跡は珍しいものではないが、ストーンヘンジは建設規模と技術レベル、その謎の多さでは屈指のものだ。

さて「下町ロケット」は池井戸潤の直木賞小説をドラマ化したもので、国産ロケットの燃料バルブの開発・搭載に、下町の中小企業の技術者が夢とプライドをかけて挑戦する物語である。先端技術で宇宙時代を開く衛星ロケットの打ち上げを成功させる姿と、古代人がストーンヘンジの巨岩に挑む姿とが重なる。そして5000年の時を超え、権力や利益とは無縁に、時代が求める技術を純粋に追い求めるプロフェッショナルたちの姿に心を打たれる。未知なる宇宙に夢をかけ、技術力で新たな何

かを創り出そうとするモノづくりの魂がそこにはある。もう一つ共通点を挙げると、どちらも地上と天空をつなぐために造られたものだ。人はいつも空を見上げ、より良い明日を願ってきた。人間の力の及ばない宇宙の摂理の前で、エンジニアたちは今なお様々な技術を磨き、人の幸せのために自らの限界に挑戦している。時として、人は驚くべき力を発揮するが、その超越的な力は空から舞い降

りるものかもしれない。40年ほど前、私はバルセロナで同じ魂に触れて感動した。サグラダファミリア大聖堂の建設現場である。そこで働く技術者たちは、設計者ガウディー亡き後も、ストーンヘンジの岩のように強く、「下町ロケット」のような緻密さで、美しい夢を積み上げていた。出来上がっていた聖堂の尖塔部分は、まさにロケットのように空を突いていた。

下村 憲一(建築家)

ストーンヘンジ(BC2500年頃造、イギリス・ソールズベリー近郊)

photo by simonwakefield-Stonehenge in your face

第11回のテーマ:挑む

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1.はじめに

2014年9月1日から2015年3月30日の期間、私はノルウェーで海外研修を行った。研修の目的は、現在取り組んでいる研究分野における諸外国での進捗状況を実際に出向いて把握するためである。私の研究は、建築物における屋根雪荷重の評価に関する分野を中心としており、このことが上記に示した研修先とその期間とした理由である。ノルウェーの人口は約540万人であり、北海道の人口と同程度である。すなわち、世界の先進諸国と比べて、人口が少ない国と言える。しかし、ノルウェーは産油国であり、経済的および技術的な遅れは皆無であるとともに、物価が世界一高いと言われているにもかかわらず、人々の生活に十分な豊かさを感じることができた。本報告では、取り留めのない形で恐縮ではあるが、ノルウェーでの海外研修で感じたことを述べたい。

2.研修先の概要

私は、ノルウェーの首都であるオスロから約40㎞南に位置するオース(Ås)という町にあるノルウェー生命科学大学(NorwegianUniversity of Life Science)で研修を行った。本大学は、オスロ大学に次いでノルウェーで2番目に歴史のある国立大学であり、農学や環境学を中心とした学部構成となっている。私は、数理科学技術学科(Department ofMathematical Science and Technology)における Thomas Thiis 教授の研究室でお世話に

なった。Thomas 教授の専門は、建築環境工学であり、主に流体および吹雪の数値シミュレーションに基づいて建築物の屋根雪荷重を評価する研究を行っており、私の研究分野と共通している。図1にノルウェー滞在中の訪問先を示す。短い期間ではあったものの、様々な場所を訪問することができた。以下で、そのすべてではないものの、訪問先を写真で紹介したい。

3.訪問先の概要

⟹1最北端の町―ヒルケネス2014年8月31日に日本を出国し、コペンハーゲンを経由して同日の夕刻にノルウェーのガーデモエン国際空港に到着した。ノルウェーと日本との時差は7時間(サマータイム時)である。まずは、オスロで数日過ごそ

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千葉 隆弘北海道科学大学工学部建築学科・准教授ノルウェー生命科学大学・客員研究員(2014.9~2015.3)

ノルウェーでの海外研修

図1 ノルウェーでの主な訪問先

エストニア

フィンランド

ヒルケネス

オースオスロ

ゴロフィンセ

ベルゲン

ノルウェースウェーデン

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うと考えていたが、Thomas 教授から「ヒルケネスという町で新築する病院の吹雪・吹きだまり対策に関する打ち合わせがある」と伝えられていたので、到着した翌日から1泊2日でその打ち合わせに同行した。ヒルケネスはノルウェーの「最北端」に位置しており、オーロラ観光で有名な町である。もちろん、9月上旬はオーロラを観測することができない。また、国境近傍の町だと聞かされていたが、まさか隣国が「ロシア」とは思いもよらず、中心街でロシア語の標識を見て国境を実感した。打ち合わせは2日間実施され、病院の規模がさほど大きくないこともあり、その雰囲気は極めて穏やかであった。オスロ行きの飛行機まで時間があったため、ヒルケネスの港で数時間過ごしたが、まさに「地の果て」だった。⟹2オスロ市街地2014年9月3日から、大学の近くで下宿生活

が始まった。「退官した先生の研究室が空いているので、使用してくれ」とのことだったので、大学の個室で研究活動ができることになった。私の研究目的は、建築物の雪荷重と吹雪による吹きだまりに関することだったので、基本的には雪が降るまで待つというのが前半の過ごし方であった。ノルウェーに入国し最初の週末にオスロを散策してみた。オースからオスロまでは電車で30分程度であり、非常に行きやすかった。しかし、電車の運賃が片道70NOK(ノルウェークローネ)であり、当時、1NOKが日本円で約17円だったので、約1,200円となる。地元の人々も言っていたが、公共交通機関の運賃は極めて高額である。オスロの市街地は、非常にコンパクトであった。オスロ中央駅、オペラハウス、カール・ヨハン通り、王宮、ノーベル平和賞の授賞式が行われるオスロ市庁舎など、1日で周っ

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写真1 ヒルケネスでの打ち合わせ風景

写真2 ヒルケネス港からの眺望

写真3 オペラハウス

写真4 オスロ市庁舎の内部

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てしまった。また、ノルウェーは「ヴァイキング」の国であり、10世紀頃は世界最先端の造船技術を保有していた。こうした歴史的背景を有することから、Thomas 教授にオスロ郊外にある博物館に案内された。そこには、当時の木造ヴァイキングシップが展示されていたが、レプリカではなく、20世紀前半に発掘したものをメンテナンスして展示しているとのことで、いたく驚いた。同博物館に続き、ホルメンコーレンジャンプ競技場を案内してもらった。2010年に全面改修した非常にきれいなジャンプ台であった。そこにはスキーの歴史博物館も併設されていた。「ノルディック複合」というスキー競技があることから、クロスカントリーとジャンプはノルウェーが発祥と思っていたが、歴史をたどりアルペンスキーもノルウェーが発祥と知った。ただし、地元で「ス

キー」と言えば「クロスカントリー」を表し、ゲレンデで滑るのは「アルペンスキー」という具合に区別しているようだ。⟹3ノルウェー生命科学大学研修の大半は、ノルウェー生命科学大学で過ごした。大学の敷地は広く、北海道大学くらいあったように思う。ノルウェーで2番目に歴史のある国立大学であり、メインの校舎は、それにふさわしい建築であった。一方、学生数は約5,000名で、北海道大学(約18,000名)に比べれば圧倒的に少ない。キャンパス内を散策すると、学生の多さというものはほとんど感じなかった。また、昼食時の学生食堂はどこの大学でも行列ができるものだが、ノルウェー滞在中、そのような学生の行列は皆無であった。10月の第4日曜日にサマータイムが終了するが、その頃から日の出が遅く、日の入りが早くなった。冬至には、日の出が午前9時頃、

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写真5 オスロ中央駅前

写真6 カール・ヨハン通り

写真7 ヴァイキングシップ

写真8 ホルメンコーレンジャンプ競技場

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日の入りが午後3時30分頃となり、日光が大変貴重であることを体感した。オスロ近郊の降雪状況は、札幌市に比べて圧倒的に少なかった。10月中旬に初降雪を観測したものの、それ以降は全く雪が降らず、12月上旬にようやく根雪となった。滞在期間中の年最大積雪は、約30㎝であった。これに対し、12月から1月にかけての気温は、札幌よりも低いと感じた。クリスマスの頃は、最低気温が-15℃に達し、真冬日が連日と言っていいほど継続した。大学構内にはいくつかの池があり、1月に入ると、その池がスケートリンクと化していた。大学の隣地には畑が広がっており、冬にはクロスカントリーのコースが作られていた。北海道に比べて大変身近な場所でウィンタースポーツを楽しむ習慣があると感じた。⟹4フィンセ2015年1月中旬、3泊4日の日程で吹雪実験を行った。場所は「フィンセ」と呼ばれる地

域で、オスロとベルゲンを結ぶベルゲン鉄道のルートで最も標高が高い。オスロ近郊では雪が少なく、吹雪もほとんど発生しないことから、Thomas 教授からフィンセで吹雪実験を行う旨伝えられた。フィンセは、自動車が通行可能な道路がなく、ベルゲン鉄道で行くしかない場所であった。ここにノルウェー国内の大学が利用可能な研究施設があり、ここで寝泊まりしながら吹雪実験(次ページ、写真12)を行ってきた。夏季はハイキングで、冬季はクロスカントリーで有名な地で、駅周辺には2件ほどホテルがあり、雪の多いフィンセ駅(次ページ、写真13)で降りる人の多さに驚いた。山に囲まれた地形であるが、小さな湖が点在しており、凍った湖の周りに開けたフィールドで多くの人がクロスカントリーを楽しんでいた。フィンセは北緯60° 近くにあり、北海道に比べて高緯度に位置している。高緯度になるほど樹木が生息できる標高が低下するよう

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写真9 ノルウェー生命科学大学メイン校舎

写真10 スケートを楽しむ様子

写真11 クロスカントリーコースとなった畑

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で、フィンセでは標高約800ⅿがその境界となっている。フィンセの標高は約1,200ⅿなので、樹木はほとんど生息していなかった。このようなこともあり、フィンセは吹雪実験には適した場所であった。滞在中は風も強

く、毎日のように吹雪となり、十分な実験をこなすことができた。⟹5ベルゲン研修の終盤である2015年3月中旬に、ノルウェー第2の都市・ベルゲンへ出向いた。人

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写真14 ベルゲンの「ブリッゲン」

写真15 ベルゲンのフロイエン山からの眺望

写真16 ベルゲンの街並み

写真12 吹雪実験を行ったフィンセの様子

写真13 フィンセ駅にて

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口は約28万人で、北海道の旭川市よりも少ない。ここはノルウェーを代表する観光都市であり、世界遺産に登録されている「ブリッゲン」という木造長屋建築が有名である。18世紀に火災で焼失してしまい、1955年に復元された三角屋根の木造建築が連続して立ち並び、壁の色は様々。かわいらしいイメージの街並みを形づくっている。これら建物は、主に鱈

たら

の加工場として使用され、ベルゲンからヨーロッパへ輸出していたようだ。ノルウェーは全土にわたって木造建築が主流で、ベルゲンでは世界遺産のブリッゲンのみならず、一般の住宅街においても、木造住宅がひしめき合うように立ち並んでいた。道路が石畳で、白く塗装された木の壁が並んで

いる情景は、日本では目にすることがないもので興味深かった。火災に対して、極めて慎重に対応しているようで、ベルゲンの木造住宅密集地ではスプリンクラーを配備するなど、貴重な街並みを守る取り組みがなされているとのことである。

4.おわりに

今回の海外研修は、今後の研究活動において重要な知見を得ることができ、充実したものとなった。この研修がきっかけとなって取り組み始めた研究課題もあり、日本に戻ってからもその研究を継続している。最後に、私の海外研修を後押しするとともに、応援し続けて下さった方々に感謝申し上げたい。

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とき・まち・ひと/コラージュ

四重奏(カルテット)今年はアメリカ合衆国大統領選があり、現在候補者選びの真最中だ。世界最高権力者である合衆国大統領の任期は1期4年の2期限りで3選はない。しかし、再選されることにより8年の任期が与えられることになり大きな政策が執行可能となりレームダック※期間も短くなる。5年1期はレームダック期間の割合が大きく、10年では君臨する期間が長すぎると言われる。日本では忌み嫌われるこの「4」という数字、なにやら絶妙のバランスらしい。周りでは、季節を表す「四季」や仏教用語が転じて有能な4人組に冠する「四天王」など意外に使われている。クラシック音楽の「四重奏(カルテット)」、特に弦楽四重奏は魅力がある。ソロ、デュオ、トリオと楽器が増えるなかで四重奏が聴きやすい。大編成のオーケストラより軽やかでありながら、ときにはそれを凌駕

りょうが

する広がりや感銘を受ける演奏を聴けるのも四重奏の魅力であり、また名曲も名演奏家も数多い。

クラシック音楽に限らず、20世紀に名を残すビートルズ、クイーン、ABBA なども4人組。スポーツでは「黄金のカルテット」、「夢の中盤」と呼ばれたソクラテス、ジーコら4人をそろえた82年、86年サッカーW杯のブラジルチームが有名だ。優勝できなかったにもかかわらず史上最強のチームと今でも言われるほどである。1人より2人、2人より3人と多くなれば力を発揮しそうだが、カルテットを超え、クインテット(5人)となると個々人が専業化・分業化するように思う。しかし、どんなに優れたカルテットといえども1人減った場合には、バランスが崩れて解散に至るようだ。北海道は、ここ最近省エネルギー住宅先進地として注目されている。住宅の温熱環境や省エネルギー技術を語る時には「断熱・気密・暖房・換気」の4項目が重要だ。しかし国内の傾向は、ゼロ・エネルギー住宅を目指し、太陽光をはじめとする設備を加えることが急速に、しかも声高に叫ばれている。北海道にいる身としてはバランスの良いカルテットに(産業政策としての)機械設備が1項目加わると、どうにも据わりが悪いように感じる。また、バランスの良いカルテットをないがしろにしてまで、クインテットにするわけにはいかないとも思う。 (YO)※レームダック:任期終了を間近に控え、政治的影響力を失った大統領や首相(出典:大辞林)

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平成27年度北海道赤レンガ建築賞受賞作品

北海道建設部住宅局建築指導課

「北海道赤レンガ建築賞」は、北海道における建築創造活動を促進し、建築文化の向上を図り、地域に根ざしたまちづくりを推進するため、地域社会の発展に貢献する創造性豊かな建築物等を表彰するもので、北海道及び建築関係団体の16団体からなる実行委員会により運営されています。第28回目となる平成27年度は、全道各地から17

作品の応募があり、1次審査(書類審査)では次の3作品が選考され、2次審査(現地審査)を実施しました。

・東川小学校・東川町地域交流センター・札幌三井JPビルディング 札幌市北3条広場・高齢者等複合施設むすびれっじ昨年11月に開催された最終審査の結果、本年度

の北海道赤レンガ建築賞には「札幌三井JPビルディング 札幌市北3条広場」、同奨励賞には「東川小学校・東川町地域交流センター」が選定され、実行委員会での承認を経て平成28年2月に知事表彰状が授与されました。

話題レポート

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北海道赤レンガ建築賞 札幌三井JPビルディング 札幌市北3条広場

建 築 主 三井不動産株式会社、日本郵便株式会社設 計 者 株式会社日本設計、鹿島建設株式会社施 工 者 鹿島建設株式会社建築概要所 在 地:札幌市中央区北2条西4丁目及び北3条西4丁目主 要 用 途:事務所、店舗、地域冷暖房施設構造と階数:S、一部RC・SRC造 20/B3階建

建 築 面 積:4,550.28㎡延べ床面積:68,192.35㎡竣工年月日:平成26年8月1日

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北海道赤レンガ建築賞を受賞した「札幌三井JPビルディング 札幌市北3条広場」は、「札幌三井JPビルディング」の建築主が、建物内の商業施設と、公共貢献として整備した北3条広場、さらには既存の地下歩行空間を含めて立体的かつ総合的に人々の往来を計画したことにより、年間を通じて様々な魅力あるイベントが開催されるなど、美しい景観や賑わいと落ち着きをあわせもった空間として再生したものです。都心の発展に大きく貢献することを期待しています。「北海道赤レンガ建築奨励賞」を受賞した「東川小学校・東川町地域交流センター」は、小学校に

学童保育所やコミュニティ機能を併設した施設です。学校とともに地域の人々や行政が施設の計画づくりに参加し、大雪山や水田の風景に配慮するとともに、子供たちが作ったアートワークの設置や、地域の木材の採用といった地域文化と教育が融合した施設整備を図ったもので、地域の活性化に大きく貢献することを期待しています。本表彰事業については、平成28年度についても、

本年度と同様のスケジュールにより実施する予定です。事業への協賛や候補作品のご応募など、今後もご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

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北海道赤レンガ建築奨励賞 東川小学校・東川町地域交流センター

建 築 主 東川町設 計 者 〈建築〉ブンク・中原・柴滝・アイエイ特定建築設計共同行動企業体(株式会社アトリエブンク、株式会社中原

建築設計事務所、株式会社柴滝建築設計事務所、株式会社アイエイ研究所)

〈基本計画・基本設計・設計統括・総合デザイン監理〉北海道大学大学院工学研究院都市地域デザイン学 小篠研究室

施 工 者 〈建築〉新谷・橋本川島・荒井・小岩特定建設工事共同企業体(新谷建設株式会社、株式会社橋本川島コーポレーション、荒井建設株式会社、株式会社小岩組)

畠山・盛永・高特定建設工事共同企業体(畠山建設株式会社、株式会社盛永組、株式会社高組)吉宮・廣野特定建設工事共同企業体(吉宮建設株式会社、株式会社廣野組)

〈電気設備〉西山坂田・東川特定建設工事共同企業体(西山坂田電気株式会社、株式会社東川電気工事)東邦・石森・ミヤコ特定建設工事共同企業体(東邦電設株式会社、石森電気工事株式会社、旭栄ミヤコ電業株式会社)

電業・大林特定建設工事共同企業体(株式会社電業、有限会社大林電気工業)〈機械設備〉東洋・山田・ヤマサ・開成特定建設工事共同企業体(東洋設備株式会社、株式会社山田ポンプ商会、

ヤマサ暖房機器株式会社、開成設備株式会社)

大洋・飯塚・日進特定建設工事共同企業体(大洋設備株式会社、株式会社飯塚設備、日進設備工業株式会社)木本・鹿取永井特定建設工事共同企業体(株式会社木本動力工業所、鹿取永井工業株式会社)

建築概要所 在 地:上川郡東川町西4号北8番地、西3号北7番地主 要 用 途:小学校・集会場構造と階数:鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造、鉄骨

鉄筋コンクリート造 平屋建一部2階建

建 築 面 積:11,336.74㎡延べ床面積:10,922.11㎡竣工年月日:平成26年3月25日

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北海道太陽電池・風力発電設備景観形成ガイドラインの策定について北海道建設部まちづくり局都市計画課基本計画・景観グループ

1.これまでの取り組み

景観への関心が高まる中、平成16年の景観法制定を受け、道では平成13年に策定した北海道美しい景観のくにづくり条例を、平成20年に北海道景観条例へ全面改正し、北海道らしい雄大で美しい良好な景観づくりを進めています。この法・条例に基づき策定した「北海道景観計画」では、景観行政団体である市町村の区域を除く道内全域を「景観計画区域」に指定し(図1)、良好な景観形成への方針と、建築物の建築、工作物の建設、都市計画法による開発行為を行う際の届出の対象行為と、その規模及び基準を定めています。近年、地球温暖化防止への意識の高まりや、エネルギーをめぐる情勢が大きく変化する中、再生可能エネルギー導入拡大の重要性がますます高まっています。全国トップクラスの新エネルギーの賦存量を有している本道では、広大な事業用地を確保しやすいという地域特性もあり、太陽電池及び風力発電の事業化の動きが活発化してきています。道では、太陽電池及び風力発電設備を景観法に基づく行為の届出が必要な工作物に位置

づけ(表1)、そのうち一定規模を超えるものには届出を求めていますが、その届出件数は増加傾向にあります。

2.北海道太陽電池・風力発電設備景観形成ガイドラインの策定

太陽電池及び風力発電設備のうち大規模なものは、地形改変や施設の存在に伴う自然景観への影響が広域的に及ぶと予想されるため、周辺景観への配慮が必要になります。そこで、太陽電池及び風力発電設備の整備をする際に、景観上配慮すべき考え方や配慮事項を整理した解説書を「ガイドライン」として策定しました。このガイドラインにより、事業者の方々は、事業計画段階から良好な景観と調和するよう意識を高めるとともに、市町村や住民の方々には、それぞれのまちの魅力と景観への意識を高め、良好な景観の保全と形成を図る際の参考として活用されることを期待しています。⟹1ガイドラインの概要道では、北海道の景観特性を踏まえた「自然を生かした景観」「ゆとりと秩序ある空間としての景観」「歴史的な景観」「風土に適した景観」の視点に立った景観形成をめざすことが重要であるとの考えから、このガイドラインでは良好な景観形成に向けた基本的な考え方を整理し、太陽電池及び風力発電設備の事業

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行政報告

表1 届出を要する行為と規模(抜粋)

工作物新設・移転

一般地域 広域景観形成推進地域

太陽電池発電設備

高さが5mを超える場合

高さが5mを超える場合

築造面積が2,000㎡を超える場合

築造面積が1,000㎡を超える場合

風力発電設備

高さが15mを超える場合

高さが10mを超える場合

図1 北海道景観計画図(平成28年1月)

:北海道景観計画区域:道以外の景観行政団体の区域

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計画を検討する際の流れを示すほか、各段階で検討すべき事項を「各地区共通」「自然的地域」「観光地地域」「沿道」「田園地域」「市街地」ごとに、景観形成上の配慮事項として示しています。なお、主な配慮事項はチェックリスト化し、事業者が自主チェックすることで、理解しやすいよう工夫しています。⟹2チェックリストの位置付けこのチェックリストは、太陽電池及び風力発電設備のうち、一定の規模を超える整備をする際に求めている景観法に基づく行為の届出に、平成28年1月1日から添付を求めることにしました。なお、チェックリストの各項目は届出の基準ではないため、全ての項目を満たさなければならないものではありません。チェックリストを添付することにより、届出を審査する側は、事業者が景観に配慮した内容を把握しやすくなり、手続きがスムーズに進むことを期待しています。

3.今後に向けて

ガイドラインは、届出前の問い合わせや相談時、ホームページ等を活用し、事業者へ周知を図ります。併せて、市町村や関係機関との連絡を密にし、施設整備に係る情報収集を

行います。特に風力発電設備については、環境影響評価法による手続きを行う場合がほとんどであることから、この手続き窓口担当部局に対し、風力発電事業者へこのガイドラインの周知を図るよう依頼するとともに、環境影響評価法による手続き状況を、景観法に基づく行為の届出窓口となる振興局へ情報提供するなど、関係機関での情報共有をより一層図ります。このガイドラインを多くの方にご覧いただき、良好な景観をかけがえのない道民共有の財産として守り、育て、その価値を高めて、未来に引き継がれることを期待しています。

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表2 ガイドラインの概要

第1章 ガイドラインの位置付け・性格・良好な景観形成を意識するきっかけとしての内容・「北海道景観形成ビジョン」における景観づくりに基づく施策として、位置付け第2章 景観形成の基本的な考え方・景観は地形・気象・歴史などの影響を受けてかたちづくられるものであり、季節や時間で変化するもの

・良好な景観形成は、住民、事業者、専門家、行政が協力し、地域特性に応じた景観形成と評価の繰り返しによるもの

第3章 景観形成ガイドライン・ガイドラインの具体的な内容を記載・「各地区共通」「自然的地域」「観光地地域」「沿道」「田園地域」「市街地」ごとに景観形成上の配慮事項を設定

第4章 良好な景観形成を進めるために・多くの「私的空間」によって構成される景観も公共性を認識し、地域全体として個性豊かに景観を形成

・事業者、行政、地域住民が担うべき役割資料編

※ガイドラインは、道のHPからダウンロードできます。http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/tki/mdr/guideline/taiyouhuuryoku.htm

図2 チェックリストの添付案内

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北の近代建築散歩ニセコらしい交流拠点の空間へ『ニセコ中央倉庫群』①

向田 薫NPO法人ニセコ倉庫邑・理事

一般社団法人北海道建築士会後志支部

倉庫群の再活用大正から昭和にかけて、ニセコ町(当時の狩太

町)の駅前周辺には、羊蹄山麓や近隣地域から集まる農作物を保管するための石造倉庫や澱

でん

粉ぷん

工場などが建ち並び、20棟以上からなる倉庫群が形成されました。現在は6棟を残すのみとなりましたが、「群」として一体的な景観を形成し、往年の繁栄を象徴する歴史的な地域資産であるとして、地域住民や観光客が集う交流の拠点として再活用することになりました。倉庫群の再活用にあたっては、2011(平成23)

年よりニセコ町と地域住民において検討を重ねるとともに、効果的な活用策や課題などを探り、再活用について広く PRするために、倉庫群を舞台にしたイベント「ニセコ倉

そう

庫こ

邑むら

」を開催し、ニセコで活躍する作家やミュージシャンによるものづくり体験やライブなどが行われ、4年目の2014(平成26)年には約3,000人が来場し盛り上がりました。さまざまな検討の結果、「1号倉庫」と「旧でん

ぷん工場」の2棟については敷地中央にある広場と合わせて、国の社会資本整備総合交付金事業である都市再生整備計画によって交流センターとして再活用することになり、2016(平成28)年の夏ごろのオープンを目指して、現在、改修工事および準備が進められています。「2号倉庫」、「12号倉

庫」、「肥料新倉庫」は民間事業者により事務所や作業所などとして、「13号倉庫」は倉庫として既に活用されています。

「旧でんぷん工場」と石造倉庫ニセコ町の主要畑作物である馬

鈴れい

薯しょ

生産は、開拓当初から自家用食糧として栽培されていましたが、収穫が軌道に乗ると、澱粉原料としての栽培が盛んになっていきます。こうした原料イモから未粉澱粉(荒澱粉)を作る「小規模な澱粉工場」は、最盛期には、ニセコ町内に約200軒も点在していました。そして、この澱粉工場から未粉澱粉を買い付け、

製粉して澱粉(片栗粉)を作る「大規模な澱粉工場」が、倉庫群には複数所在していました。この

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軟石の外観が特徴的な1号倉庫(右)と2号倉庫

ニセコ中央倉庫群と羊蹄山

倉庫群配置図

肥料新倉庫

1号倉庫

2号倉庫

旧澱粉工場

12号倉庫

広場

13号倉庫

1号倉庫の内部※

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うち、1957(昭和32)年に建設された「旧でんぷん工場」だけが、北海道で唯一、製粉機器の一部を当時のまま残し、澱粉の製粉工程を現在に伝える貴重な木造建築物として現存しています。また、温度や湿度が変化しにくいことから農作

物の保管に適し、火災などの災害に強いとされる石造倉庫の「1号倉庫」と「2号倉庫」は、1931(昭和6)年に建設され、軟石を用いた特徴的な姿を現在に残しています。

「旧でんぷん工場」の魅力と特徴延べ床面積およそ362㎡、木造軸組工法で建設

された「旧でんぷん工場」は、青磁色に塗られた下見板張りの外壁が目を引く建築物でした。とは言え地域住民にとっては、塗装が剝がれて傷み始めた下見板の、黒に近いこげ茶色の方が印象深いかもしれません。建設当時は、従来の木造工場には無かった明るさとモダンさがこの建物の魅力であったと想像できます。軒天が非常に特徴的で、工場内部に吹き込む風

や雪の侵入を防ぐため、壁面からケラバの先端に向かって屋根とは逆勾配に斜めに張られた羽目板が個性的です。屋根は切妻型の亜鉛鉄板一文字葺きで、工場建築によく使われている葺き方でした。建物としては一部2階建ての平屋で、製粉機械

を設置するため中央部分が高くなっていました。小屋組の一部には、現在では貴重な機器である、未粉澱粉を製粉する2基一組の篩

ふるい

や、製粉された澱粉を送る螺

旋せん

が残っていました。下部には製粉から製品化するまでの機械類が所狭いまでに並んでいたのでしょうが、工場の廃止とともに撤去されたようです。東側の一部が2階建てで、1階には片栗粉を袋詰

めするための作業スペースと便所、2階には事務室兼製品検査室と従業員の休憩室がありました。室内作業空間は、1950年代から60年代中頃の間

に日本の工場や病院の室内装飾に数多く用いられた「アイレストグリーン」で塗装されており、また、機械類があった箇所は注意喚起のために赤色で塗られているなど、色彩的特徴が数多く残っており、塗装色からも当時の様子をうかがい知ることができます。1階の作業スペースや2階の従業員休憩室の壁が

桃色に塗られていたのは、当時、澱粉工場で働いていた多くの女性作業員への配慮だったのかもしれません。

倉庫群のこれから現在、「旧でんぷん工場」と「1号倉庫」は、歴

史的な外観や内部構造などをできるだけ保存するよう配慮した改修・整備工事が行われています。特に「旧でんぷん工場」に残されていた篩などの製粉設備は、一度取り外し、改修の過程で組み上げる鉄骨フレームの上に再設置して、馬鈴薯から片栗粉を製造していた町の農産物加工の歴史を継承していきます。センターリポート夏号(197号)では、改修工事

で装いを新たにした倉庫群の様子と、活用についてお伝えいたします。

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旧でんぷん工場の外観

旧でんぷん工場の内部※

篩の撤去作業の様子

※印の写真撮影:山田スミ子

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災害時においても行政・避難所機能を維持するために

『釧路市役所防災庁舎』の建設宮下 英己 釧路市都市整備部建築課・課長補佐

施設整備の契機

釧路市において防災庁舎の施設整備の契機となったのは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災であった。釧路市でも釧路港で最大2.1mの津波が発生し、市の教育委員会などが入居するフィッシャーマンズワーフMOOが浸水被害を受け、1階及び地階が冠水し、地階機械室の電気設備等が機能不全となり、臨時休館を余儀なくされた。津波があと1m高ければ、地下室に電気室のある市役所本庁舎にもMOOと同様の被害が及ぶところであった。このことから、大津波が発生した場合においても、市役所の行政機能や避難所機能を最低限維持することができるよう、電気室をはじめ電算室など市役所業務に欠かせない機能の確保等について、平成23年4月より課内で基本構想の取り組みを始めた。

施設計画

釧路市では、北海道の新しい津波予測を受け、

平成24年7月に基本構想を修正した新たな拠点施設の整備方針を策定し、同年8月から2カ年で基本・実施設計に着手した。防災庁舎の施設整備方針は、次のとおり。

1.500年間隔地震による津波に対しては、浸水を受けない施設とすること

2.「最大クラスの津波」に対しても、電気室・電算室・避難所・備蓄庫などの重要な施設・設備の安全性が保たれる高さを確保すること

3.市役所本庁舎の電源を確保すること整備方針に基づき防災庁舎1階フロアラインを

500年間隔の津波高さより高くした。また、1階フロア部分を嵩

かさ

上げし、津波が通り抜けるピロティ形式を採用した。釧路が地震多発地帯であることから、津波だけ

ではなく、地震にも強い施設とするため、基本設計の中で中間免震構造を採用し、強い地震の発生時においても揺れの影響を最小限にとどめ、速やかに災害対策業務に移行できる施設とした。※津波波圧は平成23年国土交通省告示第1318号に準じて算定。

建築の一村一品

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釧路市役所本庁舎。2階と3階の間の赤ラインが中間免震層

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施設のBCP(事業継続計画)

あらゆる災害時においても施設機能を維持し、長時間にわたり機能する防災活動拠点を実現する施設とした。5階においても発電機室・オイルタンク室を配置し、停電時における本庁舎への電源供給を可能とした。暖房に関しては、電気・ガスの2系統の運転が可能となっており、災害時のリスクを分散した。

市民の安全を確保する施設

平常時においても、各階ホールで防災資料などを展示し、市民の防災意識の向上を図っている。避難が長期化した場合の対応として、シャワー

室(電気給湯・ガス給湯)、車いす対応浴室を設け

たほか、避難所となった際に天井バトンの利用によりプライバシーが確保できるよう配慮した。また、災害時の汚水排水に対応可能な地下汚水槽を設置した。

利便性の配慮

平常時は窓口業務を行っており、ワンストップサービスを目指し、関連する窓口を機能的に配置して分かりやすさ・視認性を重視した窓口表示とするとともに、各課ごとにサインの色といすの座面・背当ての色を統一した。内部・外部の動線は、段差のないバリアフリー

とし、各階には多機能トイレを設置してオストメイト洗浄機器(3階は男女各トイレブース内に設置)を整備するとともに、ベビーチェアなども設置した。2階から5階には給湯設備の整った個室の授乳室を整備した。

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1階駐車場(ピロティ形式)

中間免震層の階段

◀発電機(1,000kVA)

重油タンク(18,500ℓ)▶

天井バトンを利用し避難時のプライバシーを確保

2階窓口カウンター

個室として設けた授乳室

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「住まいづくりに関する地域意見交換会」を開催しました北総研では、道内の住宅建築に関連する企業や団体、自治体における研究ニーズや技術支援ニーズを的確に把握するため、今年2月から3月にかけて、道内6カ所において「住まいづくりに関する意見交換会」を開催しました。また、北海道が平成26年8月からすすめている「きた住まいる」の普及推進に向けた意見交換もあわせて行いました。(開催地:網走市・北斗市・釧路市・帯広市・旭川市・室蘭市)同意見交換会は、例えば地域型ブランド住宅や地域型住宅グリーン化事業など地域特性を活かした住まいづくりに取り組んでいるグループ、住宅建築関係団体、きた住まいるメンバー、市町村の担当者の方々などに参加いただき、どの会場においても活

発な意見交換がありました。参加いただいた皆様には厚く感謝いたします。今回各地でいただいた貴重なご意見については、今後の北総研の調査研究や技術支援の参考とさせていただくとともに、「きた住まいる」については、より多くの皆様に活用していただくための制度拡充等の参考とさせていただきます。今後、引き続き他の地域においても同様の取り組みをすすめ、地域の住まいづくり、まちづくりにより一層貢献したいと考えていますので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。メールマガジン「北方かわらばん」を配信しています北総研では、イベントや各研究分野の調査・研究内容など、北総研に関する様々な話題・情報をお知らせするため、メールマガジン「北方かわらばん」を月1回発行しています。ホームページに掲載していますが、配信を希望される方は次の URL からご登録ください。http://www.hro.or.jp/list/building/research/nrb/

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北総研NOW

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網走市での意見交換会の様子

北斗市での意見交換会の様子

きた住まいるメンバーロゴマーク

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センターリポートVol.46 No.1 春号

平成28年4月1日発行 通巻196号

発行人 辻井 久幸

発行 一般財団法人 北海道建築指導センター〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1番地

札幌北三条ビル 8階TEL(011)241-1893FAX(011)232-2870

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センターリポート編集委員名簿(敬称略)森 傑 北海道大学大学院工学研究院 教授谷口 尚弘 北海道科学大学工学部建築学科 教授松田 眞人 (一社)北海道建築士事務所協会 理事・広報委員長早川 陽子 (一社)北海道建築士会 情報委員会委員長竹田 公典 札幌市都市局市街地整備部住宅課

住宅企画係長田村 佳愛 北海道建設部住宅局建築指導課

建築企画グループ主査清水 浩史 (地独)北海道立総合研究機構(北方建築総合研究所)

建築研究本部企画調整部 企画課長

辻井 久幸 (一財)北海道建築指導センター田中 雅美 同

「センター倶楽部ほっかいどう」入会のご案内

センター倶楽部は、会員の皆さまとともに道内において質の高い住宅の供給を促進する団体です。会費や入会金は一切いただきません。入会を希望する方は「入会申込書」にご記入いただき、下記事務局に提出してください。詳しくは、北海道建築指導センターのホームページをご覧ください。

センター倶楽部ほっかいどう事務局〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1 札幌北三条ビル8階一般財団法人北海道建築指導センター内TEL:011-241-1893 FAX:011-232-2870http://www.hokkaido-ksc.or.jp

①まもりすまい保険の届出事業者であること②住宅保証機構の「設計施工基準」への適合③上記に加えて品質管理基準に適合すること【センター倶楽部ほっかいどう認定住宅の要件】・住宅の種別:一戸建て住宅、共同住宅等 ・工事種別:新築・住宅の構造:木造、RC・SRC造※木造の場合、通気構法及び基礎の高さ400㎜以上※RC・SRC造の場合、コンクリートの品質(水セメント比55%以下等)などの団体の基準があります。

■センター倶楽部会員の要件・会の趣旨に賛同する者・道内に事業所又は道内で事業を行う住宅関連事業者・まもりすまい保険・まもりすまいリフォーム保険を利用する場合は、会が定める設計施工基準を遵守し、住宅の品質の確保・向上に努めること。

■会員の皆さまへの特典・「センター倶楽部ほっかいどうニュース」により住宅建築に関する情報を提供します。・研修会、セミナー等への案内・参加することができます。・まもりすまい保険・まもりすまいリフォーム保険の団体割引が適用になります。(品質管理基準に適合する住宅)

■認定住宅の要件

入会金・年会費無料

会員830社

■まもりすまいリフォーム保険の団体割引が適用されると保険料が割引となります。(料金:平成27年度適用料金)■一定の要件のリフォーム工事を行う際に基本構造部分の保険期間を10年に延長できます。■料金プラン:保険料+現場検査手数料となります。 【凡例】A:構造耐力上主要な部分、B:雨水の浸入を防止する部分

センター倶楽部ほっかいどうは、平成28年1月に住宅保証機構㈱からリフォーム団体の認定を受けました。新築住宅に加え、リフォーム工事でも団体割引を適用!!センター倶楽部ほっかいどうの会員で、まもりすまいリフォーム保険登録事業者の皆さまは、当団体が定め

た設計施工基準を遵守し、設計・施工する場合、リフォーム保険料の団体割引料金が適用されます。

1.既存住宅のリフォーム工事(基礎の新設を伴う増改築を行わない工事)■工事事例 〈内外装・設備プラン〉床暖房の設置 (保険期間:1年間)

工事内容 床暖房システムの設置、床の貼り替え

工事請負額 180万円 料金

合計額

標準料金 36,420 保険料

(非課税)

22,460 現場検査手数料

(税込み)

13,960

1回分

差額

保険金支払い限度額 200万円 団体割引 32,150 18,190 4,270

2.基礎の新設を伴う増改築工事を行う場合(増築特約付帯)■工事事例 キッチンの改修と増築 (保険期間:基礎を新設する部分は10年、Aは5年、その他は1年)

工事内容リフォーム工事+増築工事(基礎を新設) 既存部分の耐力壁撤去(A)、システムキッチンの入れ

替え、増築・既存部分の床フローリングの貼り替え、壁・天井クロスの貼り替え

既存住宅のリフォーム工事部分の保険金支払限度額 ※申請時に設定してください。 200万円

基礎を新設する増改

築部分の床面積※110㎡

料金

合計額

標準料金 88,390 保険料

(非課税)

44,110 現場検査手数料

(税込み)

44,280

4回分

差額

団体割引 79,790 35,510 8,600

※1:既存住宅のリフォーム工事部分の床面積は除く。

センター倶楽部ほっかいどう事務局 一般財団法人北海道建築指導センター内 TEL:011-241-1893

〒060-0003 札幌市中央区北3条西3丁目1番地 札幌北三条ビル8階

詳しくは、北海道建築指導センターのホームページをご覧ください。 http://www.hokkaido-ksc.or.jp

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