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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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第Ⅱ章

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3.1. 土壌機能評価の流れ

[留意点]

機能評価値は測定項目に応じて,加重積算,平均,最大(最小)値を用いる。

3.2. 土壌の類型化と標準断面の設定

[留意点]

土壌の類型化にあたっては,土壌統群に反映されない1m以上の土層深と深層の母材も 類型化の区分基

準として用いる。

3.3. 土壌類型区分図の作成

[留意点]

土壌類型区分図の縮尺は,流域面積や目的によって異なるが,通常1:5,000~1:10,000とする。この土壌

類型区分図をデジタル化の基図とする。

3.4. 機能評価図の作成例

上記の方法によって,茨城県八郷町帆崎川小流域について機能評価を実施したので,これを例に実行方法

を示す。

3.4.1 機能項目

第Ⅱ章 流域環境調査法

流域内での物質移動に土壌の与える影響を評価するために,保水能など関係する土壌機能について評

価図を作成する。

土壌環境調査及び土壌断面調査の結果を元に,各種の土壌機能図を作成する。

1)目的とする機能評価のための測定項目を設定する。

2)流域内の土壌を構成する層を類型区分する。

3)土壌分類と土層深により土壌を類型化し,土壌類型区分図を作成する。

4)土壌類型毎の標準断面を設定する。

5)標準断面の各層毎の代表値と土層の厚さから,土壌図示単位の機能評価値を計算する。

6)デジタル化した土壌図の図示単位に,5)で作成した機能評価値を連結し,流域土壌機能図を作成

する。

農耕地土壌分類に基づく土壌統群,土層深及び深層の母材により土壌を類型化し,それぞれの類型区

分の中で代表的な断面を選定し,標準断面とする。

類型化した土壌区分を単位として,土壌類型区分図を作成する。

窒素,リン,農薬などの移動流出に関する各種モデルでは,土壌に関する項目も様々であると共に,気象,

作物栽培,水管理などに関する項目が要求されている。ここでは特定のモデルを想定せずに,土壌特性要因

から保水・透水能とリン酸固定能の項目を取り上げた(表1)。

Ⅱ-3 土壌機能評価図の作成法

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第Ⅱ章

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[留意点]

イオンの吸着・保持機能を表す陽イオン(陰イオン)交換容量や緩衝力を表す中和石灰量など目的によっ

て適宜分析・測定項目を選択する。

3.4.2 土壌の構成層の区分

[解説]

帆崎川小流域では,台地土壌の母材には段丘堆積物(d)と火山灰(v)があり,層位類型の接頭語に略

号で示した(表2)。また,土性の違いを必要に応じて細粒質(f)と粗粒質(co)で示した。なお,一部の

層については容積重を区分基準に用いた(vB1とvB2は容積重約0.65で区分)。

Ⅱ-3 土壌機能評価図の作成法

最大保水容量 水を貯留できる最大の容量 全孔隙率�

0-5kPa保水容量 圃場容水量までの重力水を貯留できる粗孔隙容量。浸透 水分特性曲線� 水の早い流出に関係する (PF1.7 )�

5-50kPa保水容量 毛管連絡切断水分点までの連続した毛管水を貯留できる 水分特性曲線� 孔隙の容量。浸透水のゆっくりした流出に関係する (PF1.7, pF2.7)�

飽和透水係数 透水性を表す指標 飽和透水係数�

浸透深指標 100 mmの水が飽和状態でピストン流で浸透した場合に 孔隙率� 元の水が下方に移動する深さ�

水田の減水深 灌漑期100日間の総減水深 減水深�

�リン酸吸収係数 リン酸の保持能を表す指標 リン酸吸収係数,容積重�

土壌の機能� 内        容� 分析・測定項目�

保水・透水能を表すもの�

表1 土壌の機能�

物質保持・浄化能を表すもの�

機能評価のための層の類型は,主に土壌学的層位,地質・母材,土壌型及び土性によって区分する。

注:層位名の主層位と接尾語g,p,hについて,詳しくは土壌調査ハンドブック(博友社,1997)を参照。土壌�  類型の土壌群,亜群・統群は農耕地土壌分類,第三次改訂版(農環研,1995)による。�

層位名� 土壌類型�

A 表層(通常有機物に富む) GrU 灰色台地土(Gray Upland soils) 21 深さ 1-2m� B 土壌化した無機質層 BF 褐色森林土(Brown Forest soils) 31 深さ 2-3m� C 土壌の母材からなる層 A 黒ボク土(Andosols) 41 深さ 3-4m�(接尾語) 51 深さ 4-5m� g グライ化。斑紋をもつ。� p 作土 hf 細粒質普通(haplic fine-textured)  (土性)� h 腐植質 hh 腐植質普通(haplic humic) f 細粒(fine)� af 細粒質ばん土質(andic fine-textured) co 粗粒(coarse)� -f 細粒(fine) ch 腐植質厚層(cumulic humic)� -co 粗粒(coarse) lt 典型淡色(low-humic typic)  (岩質)� h ホルンフェルス(hornfels)質�(接頭語) g 花崗岩(granite)質� d 段丘堆積物� v 火山灰�

表2 帆崎川小流域事例で用いた略号�

(主層位)    (土壌群)           (土層深区分+細分番号)�

(亜群・統群)�

略号 意味 略号 意味 略号 意味�

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3.4.3 土壌の類型化

[解説]

帆崎川小流域では,土壌統群に反映されない深層の母材の性質を台地では細粒質(f)か粗粒質(co)かに

より,山地では花崗岩質(g)かホルンフェルス質(h)かの違いにより区分した。帆崎川小流域では,土

壌の機能評価のために設定した土壌類型数は,低地で10,台地で15,山地で20,合計45であった。

3.4.4 標準断面の設定

[解説]

台地部分の土壌類型の標準断面を図1に示した。例えば類型番号27のAhh51は,作土を含めて厚さ

40cmの黒ボク質腐植層vAhを持ち,その下に2種類の火山灰由来のvB1,vB2層を持ち,その下に段丘堆

積物由来の細粒質なdBCg層とdCg層が続き,最低地下水位は深さ450cmの位置にあることを示している。

3.4.5 土壌類型別の保水・透水能と物質保持・浄化能

[方法と留意点]

ここでは土壌類型の標準断面の構成層の厚さ(表3)と土壌層位別指標値(表4)を組み合わせることに

より,土壌類型別の保水機能等の評価(表5)を計算した。

帆崎川の台地の例では,すべての容量は 土壌深が厚く なるとともに増加している。黒ボク土では保水容

量は他の土壌より大きいが,CECなどの物質保持容量は,重量あたりでは大きくても容積重が小さいため,

容積当たりの保持容量は必ずしも大きくならない。深層が粗粒質の場合は,細粒質に比べ保水容量は大きい

が物質保持容量は小さい。

農耕地土壌分類第3次改訂版に基づいて,土壌統群の違うものはすべて分け,同一土壌統群でも土層

深が1m 以上異なるものは別の土壌類型に区分する。

標準断面は,土壌類型毎に設定されるモデル断面であり,主要構成層の厚さ,地下水面の深さ等によ

り示す。

表3 土壌類型毎の構成層の土層の厚さ(cm)�

土壌類型�

層位類型�

dA(hp)-f�

dBw-f�

dBCg1-f�

dBCg2-f�

dCg-f�

dCg-co�

vA(h)p�

vAh�

vB1�

vB2�

Total

20 21 22 23 33 24 34 25 35 26

20�

20�

110�

150

40�

60�

20�

130�

250

20�

80�

20�

130�

250

20�

130�

20�

80�

250

20�

50�

80�

20�

80�

250

20�

130�

20�

80�

100�

350

20�

50�

80�

20�

80�

100�

350

20�

130�

20�

20�

40�

20�

250

20�

50�

80�

20�

20�

40�

20�

250

20�

130�

20�

20�

40�

120�

350

第Ⅱ章

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注:各容量の計算は以下のように行う

全保水容量 =Σ(保水容量×層厚)

=(69.1×20 + 48.9×20 + 41.7×110)/10 = 694(mm)

全リン酸吸収容量=Σ(リン酸吸収係数×容積重×層厚)

=(930*0.84*20+750*1.35*20+350*1.58*110)/10000=9.7kg/m2

Ⅱ-3 土壌機能評価図の作成法

表4 層位類型毎の水保全指標値(台地)�

層位類型� 容積重�

g/ml

全保水容�量�

(孔隙率)�vol.%

保水容量�

0-50kPa�

vol.%

保水容量�

0-5kPa�

vol.%

保水容量�

5-50kPa�

vol%

リン酸吸�収係数�P2O5mg/�100g soil

AEC�

平衡pH�

cmol/kg

CEC�

(NH4Ac)�

cmol/kg

dA(hp)-f�

dBw-f�

dBCg1-f�

dBCg2-f�

dCg-f�

dCg-co�

vA(h)p�

vAh�

vB1�

vB2

0.84�

1.31�

1.35�

1.07�

1.58�

1.51�

0.75�

0.80�

0.61�

0.74

69.1�

49.4�

48.9�

61.8�

41.7�

44.7�

72.2�

70.0�

78.4�

72.6

37.1�

2.7�

2.1�

11.2�

7.4�

20.6�

34.1�

30.8�

22.8�

12.6

31.1�

0.0�

0.0�

7.0�

3.6�

6.6�

22.2�

24.3�

15.0�

6.8

6.0�

2.9�

2.4�

4.2�

3.8�

14.0�

12.0�

6.5�

7.8�

5.7

930�

960�

750�

860�

350�

280�

1860�

1890�

2260�

2110

0.0�

0.9�

1.4�

1.8�

1.0�

0.5�

0.5�

1.0�

3.6�

3.7

24.7�

15.9�

12.4�

15.2�

8.6�

3.7�

29.4�

23.6�

22.0�

20.7

表5 土壌類型毎の保水機能等の評価�

類型番号� 土壌類型� 保水容量�

最大�mm

0-5kPa�mm

5-50kPa�mm

全リン酸吸�収係数�P2O5�g/m2

AEC�NH4Cl�mol/m2

CEC�NH4OAc�mol/m2

20�

21�

22�

23�

24�

25�

26�

27�

28�

29�

33�

34�

35�

36�

38

GrUhf21�

BFhf31�

BFtf31�

Ach31f�

Ach41f�

Ahh31f�

Ahh41f�

Ahh51�

Alt31f�

Alt41�

Ach31co�

Ach41co�

Ahh31co�

Ahh41co�

Alt31co

694�

1212�

1172�

1369�

2094�

1408�

2135�

2901�

1425�

2151�

1394�

2120�

1433�

2159�

1449

102�

171�

109�

299�

368�

227�

296�

421�

209�

277�

323�

392�

251�

320�

233

58�

95�

89�

134�

191�

137�

194�

266�

140�

197�

215�

273�

219�

276�

221

9.7�

19.9�

20.9�

23.9�

39.5�

23.5�

39�

53.3�

23.2�

28.8�

22.9�

38.4�

22.4�

38�

22.2

20.4�

30.8�

33.3�

30.4�

57.4�

39.8�

66.8�

90.1�

42.6�

69.6�

24.6�

51.5�

33.9�

60.9�

36.7

224�

419�

419�

404�

556�

375�

527�

667�

364�

516�

340�

492�

311�

463�

300

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53

3.4.6 土壌図のデジタル化と主題図作成

[留意点]

① 地理情報システム(GIS)の中では,土壌図のように境界線によって示される地図は,通常ポリゴン型

のデータとして取り扱われる。また,GISソフトを使わなくても他のデータと容易に演算することが目的

の場合は,はじめから統一したサイズでメッシュ化し,表形式のラスター型データとして作成することも

ある(国土数値情報3次メッシュデータなど)。

保崎川小流域では,土地利用,傾斜,流出方向等のデータと合わせて利用する事を目的としたため,同

一メッシュ(10m四方)を用いて土壌図データ(テキスト形式)を作成した。

② ポリゴン化した土壌図に対して,土壌の水保全機能評価の評価値データ(表4のもの)を土壌図示単位

コードを仲立ちに連結し,各土壌環境機能評価関係データを貼り付けた。その後目的に応じてリン酸吸収

能力図,水分保持能力図等の主題図を作成した。

③ 土壌図をデジタル化する事により,土地利用など各種地理データとの重ね合わせ,地点や注目する領域

などに応じた土壌情報の抽出等が容易に行えるようになる。

小原 洋 中央農業総合研究センター

<土壌図のデジタル化と主題図作成>

土壌図をデジタル化し,土壌の性質・機能評価等と連結し,流域土壌機能図を作成する。

第Ⅱ章

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図2 帆崎川集水域台地の土壌類型の標準断面

Ⅱ-3 土壌機能評価図の作成法

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4.1. 土地利用図と図示単位としての土地利用区分

〔方法と留意点〕

1)調査目的に応じて土地利用区分を決定する。区分は,例えば農地-普通畑-キャベツ-春どりのように,

大区分から小区分まで数段階の階層的なものが利用しやすい。各階層の定義や適用範囲を明確にする。

また,調査地域内の土地と定義した区分が1対1に対応する必要がある。

2)調査の目的に応じて,他の調査項目と整合性がとれる必要がある。例えば肥料の流出負荷の調査におい

て,施肥基準との組み合わせた利用を想定している場合には野菜の栽培体系や果樹の樹齢など施肥基準

の区分と対応がとれていることが望ましい。

3)土地利用区分は現地調査などにより変更が必要になることがあるので,方針を明確にし,厳密に設定す

る必要はない。データベース化を想定している場合にはコードを付与すると便利である。コードは階層

ごとに付与すると利用しやすい。

4)国土地理院発行の1/25,000土地利用図に用いられている区分(農林地に関係するもの)を表1に示す。

第Ⅱ章 流域環境調査法

Ⅱ-4 土地利用現況調査法

土地利用現況調査によって負荷源の位置と面的な広がりを明らかにする。調査は事前計画(土地利用

区分の決定,予察図の作成),現地調査,土地利用図の作成という手順で行う。

土地利用現況調査の結果を表した地図が土地利用図である。土地利用区分は図示のための最小単位で

あるが,詳細な情報が必要な場合には区分単位を細かくする。このときは,基図も大縮尺地図を用いる。

区     分� 定          義�

田�

�普通畑�

果樹園�

桑畑�

茶畑�

その他の樹木畑�

牧場および牧草地�

畜舎�

温室�

�針葉樹�

広葉樹�

混交樹林�

�竹林�

しゅろ科樹林�

はい松地�

しの地�

野草地�

裸地�

水稲,い草,蓮等を栽培している水田をいい季節により畑作物を栽培する�ものを含む�

麦,陸稲,野菜等を栽培している畑をいい,芝を栽培する畑を含む�

リンゴ,梨,ブドウ,ミカン等の果樹を栽培している畑をいう�

桑を栽培している畑をいう�

茶を栽培している畑をいう�

桐,ハゼ,コウゾ等樹木を栽培している畑をいう�

もっぱら家畜の放牧飼育に供される土地および牧草を栽培する土地をいう�

牛,豚,鶏等を飼育するための畜舎をいう�

野菜,花き,果樹等を栽培するためのガラス室,温室および軽量鉄骨等の�ビニールハウス等�

針葉樹が70%以上占める林地をいう�

広葉樹が70%以上占める林地をいう�

針葉樹,広葉樹等がいずれも70%に満たないものおよびいずれにも属さな�い林地をいう�

高さ2m以上の竹が70%以上を占める林地をいう�

しゅろ科樹が70%以上占める林地をいう�

はい松等が70%以上占める林地をいう�

高さ2m以下の笹,竹が70%以上占める林地をいう�

自然の草地からなる土地をいう�

露岩地,崩壊地,砂れき地等植物で覆われていない土地をいう�

田�

畑�

施   設�

農      地�

林     地�

荒れ地�

表1 1/25,000土地利用図の分類区分とその定義(農林地関係のみ)�

第Ⅱ章

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4.2. 予察図の作成

〔方法と留意点〕

1)予察図は目的に応じた縮尺あるいはそれよりも大縮尺の基図を用意する。基図としては1/200,000地勢

図,1/50,000,1/25,000または1/10,000地形図,1/200,000,1/50,000,1/25,000土地利用図,

1/5,000,1/2,500国土基本図などが利用できる。

2)国土基本図がない地域や作成年代が古い地域では何らかの工夫が必要である。自治体や土地改良区など

が大縮尺地図を作成している場合があるので問い合わせてみるとよい。

4.2.1. 地形図・土地利用図の読図

〔方法と留意点〕

1)基図の上に伸縮の少ない透明紙を重ね,土地利用区画,道路,河川など必要な情報を写し取る。道路,

河川などは現地調査の際の目印になるのでわかるように描き込む。

2)土地利用などがわかる場合には区画内に区分(コード)を記入する。地形図には土地利用区分が記載さ

れているが,農業的土地利用は水田,畑など大きな区分しかないので,空中写真の判読作業で細分して

いくことになる。

3)1/25,000土地利用図は地形図に比べ土地利用区分は細かい。必要であれば基図の縮尺にあわせてコピ

ーを行い,区画線を透明紙に加筆する。ただし,この土地利用図は昭和49年~平成2年頃に平野部を

主体に発行されているため作成年次が古く現在の土地利用と大きく異なる場合があるので注意が必要で

ある。

Ⅱ-4 土地利用現況調査法

土地利用は経年変化が激しいのでできるだけ最新の情報を整備することが望ましい。したがって,実

際に現地へ行き土地利用現況の調査をすることになるため,あらかじめ予察図を作成する。

図1 GISによる土地利用図(予察図)作成の例(基図の土地利用区画をトレース)

基図から道路,河川,土地利用区画など必要な情報を写し取り,予察図を作成する。

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57

4.2.2. 空中写真判読

〔方法と留意点〕

1)空中写真は日本地図センター(平野部),日本林業技術協会(山地部)から入手できる。民間航測会社

から購入できる場合もある。写真にはカラー,白黒の2種類あり,カラー写真の方が情報量が多い。

2)日本地図センターのホームページ(http://www.jmc.or.jp/index.html)には国土地理院撮影の空中写

真の一覧表(白黒・カラーの別,撮影年次,撮影位置)がある。ここから調査地域をカバーしているも

のを選択し,それに対応する標定図(インデックスマップ)を入手し,地区名,コース名および写真番

号を決定し,購入する。

3)入手した空中写真を予察図の縮尺に拡大コピー(あるいは縮小コピー)し,土地利用区分や区画線など

の加筆・修正を行う。ただし,空中写真は中心投影で撮影されているため,中心から離れるにしたがい

歪みが大きくなる。また,地表面の高さや撮影されている物体(例えば,木,家など)の高さによって

も歪みが生じる。このため,予察図と位置関係を合わせるには注意が必要である。

4)オーバーラップする2枚の空中写真を用いて実体視すれば,樹種や作物種を判別できることがある。

4.3. 現地調査

〔方法と留意点〕

1)現地調査を行うための準備として,調査計画の策定,調査班の編制と調査区域の割り当て,現地との打

予察図を空中写真を利用して加筆・修正する。最新の空中写真を利用することにより,土地利用区画

の変化や基図には記入されていない土地利用区分を決定できる。

作成した予察図を現地調査で確認,加筆・修正する。室内作業ではわからなかった土地利用に関する

情報を入手する。

図2 GISによる土地利用図(予察図)作成の例(空中写真との重ね合わせて区画線を修正)

第Ⅱ章

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ち合わせ,調査に必要な用具・機材の整備などがある。作物関連の情報が必要な場合には,夏作期間と

冬作期間中の最低2度の調査が必要である。

2)調査に必要な用具・機材としては地図,作業図(予察図のコピー),空中写真,野帳,筆記用具,植物

図鑑,標本採取袋,カメラ,双眼鏡などがある。また,GPS受信機は場所の特定や区画線の決定に有効

な道具である。

3)土地利用区分(土地利用,作目など)や区画などについて現地の様子と作業図の記載を比較し,確認す

る。修正が必要な場合には作業図に記入する。また,最終的な土地利用区分を決定する。

4)野菜などは作期,管理方法が多様であるが,これらの違いを区分する必要があれば,聞き取り調査を行

い現況把握のための資料とする。

4.4. 土地利用図の作成

〔方法と留意点〕

1)作業用土地利用図を参考に区画線を決定する。作業用土地利用図をコピーし,色鉛筆を用いて色分けを

しながら作業を行うと間違いが少ない。

2)最終的に区画線,土地利用区分が決定したら,清書をする。清書には作業用土地利用図に透明紙を重ね

て,土地利用区画・分類番号,道路および河川など必要な情報をロットリングまたは油性ペンを使用し

て記入する。

3)図名,土地利用番号対照表,縮尺,作成者,作成年月日などを記入する。

4)最後に過誤,脱落などの有無について確認する。

Ⅱ-4 土地利用現況調査法

図3 GISによる土地利用図作成の例(基図との重ね合わせて表示)

予察図に現地調査の結果を加え,土地利用図を完成させる。

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59

4.5. GISを利用した土地利用図の作成

4.5.1. 基図の入力

〔方法と留意点〕

1)基図(4.2を参照)をイメージスキャナを利用してコンピュータに読み込む。読み込む画像の解像度は

300~400DPI程度でよい。イメージスキャナは地図のサイズよりも大判のものを利用することが望ま

しいが,ない場合には切断あるいはコピーにより地図を分割して読み込む。コピーした地図はつなぎ目

が一致しないことがある。

2)GISソフトのインポート機能を用いて画像ファイルをGISデータに変換する。これに位置情報(ジオリ

ファレンス,緯度・経度など)を加える。位置情報を加えることで,他の様々な地理的情報と重ね合わ

せることができるようになる。

4.5.2. 区画線等の入力

〔方法と留意点〕

1)土地利用区画,道路,河川のレイヤーを作成し,それぞれの情報を入力する(図1)。

2)線の入力はベクター型データの入力機能を利用する。ベクター型データの型として点(サンプリング地

点など),線(道路,河川など),ポリゴン(土地利用区画や行政区画など)に分かれているので,それ

ぞれの情報に応じた型で入力する必要がある。例えば,土地利用区分を入力する場合は土地利用区分の

レイヤーを作成し,ポリゴンのベクター型データを選択した後,マウスで区画の分岐点から分岐点まで

の線上を適当な間隔でクリックする。ポリゴンの場合,始点と終点が一致した閉じた図形ができなけれ

ばならない。

3)作成したそれぞれの区画に土地利用コードや土地利用区分名といった属性を付ける。

4.5.3. 空中写真の入力

〔方法と留意点〕

1)空中写真は基図と同様の方法でGISデータ(空中写真レイヤー)を作成する。先に述べたように空中写

真には歪みがあるアフィイン変換などを行って歪みを補正しつつ位置情報を付ける。このために地上標

定点(GCP;Ground Control Point,空中写真上の点とそれに対応する基図上の点の組)を4組以上

設定する。GCPは全体に広がっている方がよい。

2)4.5.2同様に土地利用区画レイヤーに線のデータを入力する。場合によっては,先に入力した線データ

GISを利用した土地利用図では,土地利用に関する新しい情報を入手した際の更新や再編集などが容易

にできる。また,他の地理的情報と組み合わせることが容易でモニタリング結果の解析に利用できる。

1)市販されているGISソフトは10種類以上に及んでいる。操作はソフトごとに異なるので大まかな手

順のみを紹介する。

2)一般的にGISではレイヤーという概念を用いて地理的情報を管理している。レイヤーは地図に重ねた

透明紙のようなものである。属性に応じたレイヤーを作成し,それぞれを必要に応じて重ね合わせる。

基図の入力は画像データとなった地図を用い,これに緯度・経度などの位置情報を付与する。地図のデ

ィジタル化にはイメージスキャナを用いるが,市販のディジタル地形図を利用することもできる。

基図にかかれている線をトレースし土地利用区画,道路,河川などを入力し,予察図を作成する。入力

はマウスを使って画面をみながらでき,ディジタイザなどの入力装置は必要ない。

空中写真を入力し,土地利用区画線をトレースすることで,予察図を修正・追加する。

第Ⅱ章

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を修正する(図2)。

4.5.4. 土地利用図の作成

〔方法と留意点〕

1)作業用土地利用図を基図同様の方法でGISに入力し,位置情報を加える。

2)現地調査により新たに設定した線,修正した線をトレースしながら入力,修正する(図3)。この際に

予察図の土地利用区画レイヤーをコピーして作業を行うと大きな誤りがあったときに元に戻すことが容

易である。

4.5.5. ラスターデータの作成

〔方法と留意点〕

1)ベクターデータからラスターデータへの変換はGISソフトのベクター-ラスター変換機能を利用する。

変換にあたりグリッドの大きさ,区分に用いる項目などを決める必要がある。グリッドの大きさは目的

やデータの詳細さなどに応じて様々である。

2)わが国のメッシュシステムに合わせると既存のデータと組み合わせた利用ができる。このメッシュシス

テムは緯度によりメッシュの大きさが異なるので,GISソフトのマクロ言語を利用してプログラムを作

成したり,特殊な操作を行ったりする必要がある。GISソフトによってはマクロプログラムがあらかじ

め用意されていることもある。

3)わが国でいくつかの地理情報が整備されており,国土交通省の国土数値情報ダウンロードサービス

(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)から入手可能である。土地利用に関するディジタルデータとしては国土

数値情報の10分の1細密土地利用情報がある。これは3次メッシュ(1kmメッシュと呼ばれることも

ある)を縦,横に10等分したメッシュの土地利用の情報である。概ね10年に一度更新されており,最

新のものは平成9年に作成されている。

神山和則(農業環境技術研究所)

参考文献

1)国土調査研究会編(1992):土地・水情報の基礎と応用 国土の均衡ある発展と保全にむけて,古今

書院

2)日本地図センター編(1982):地形図の手引き,日本地図センター

3)日本写真測量学会編(1982):空中写真の判読と利用,鹿島出版会

4)J. Starら著,岡部篤行ら訳(1992):入門地理情報システム,共立出版株式会社

Ⅱ-4 土地利用現況調査法

現地調査の結果を加えて土地利用図を完成させる。

前述の手順で作成した土地利用図はベクターデータである。必要に応じてラスターデータ(メッシュデ

ータ)に変更し,他の地理的情報と重ねあわせて利用する。

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5.1. 衛星画像の選定と入手

[方法と留意点]

1)現在運用されている衛星画像の多くは,財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)よ

り購入できる。

2)ここが運営するホームページには,衛星や搭載センサーの諸元が記されているので,これを参考にする

とよい。

3)衛星画像を判読に用いる場合は,1m程度の分解能を有する衛星画像を利用する。代表的なものとして

IKONOSやQuickBirdなどがあげられる。

4)衛星画像を解析して土地被覆分類を行なう場合は,対象とする土地利用に特徴的な構造よりも大きな分

解能を持つ画像を選択する。たとえば,果樹園などを分類する場合に,個々の果樹が判別できるほど高

い分解能の画像をそのまま用いてはならない。分類項目が林地/農地/宅地等を分類する場合には,多く

の場合,10m程度の分解能の画像が適当である。この代表的なものとして,SPOT-5衛星搭載センサー

HRG-Xの画像があげられる。

5)IKONOSやQuickBird,HRG-X等は,いずれも可視・近赤外センサーに分類される。これらは,霧や

雲がある状態では地上が観測できないので,購入に当たっては予め画像を閲覧し,雲の状態を確認する

必要がある。

5.2. 衛星画像の判読

[方法と留意点]

1)衛星画像の撮影範囲は,空中写真のそれの100倍程度であるため,多数の空中写真にまたがる範囲を一

括してモニタリングする際に便利である。

2)衛星画像を判読に用いる場合は,パンシャープン画像と呼ばれるカラー画像を利用するとよい。

3)一般のカラー写真と同様な色調を好む場合には,「トゥルーカラー」と呼ばれる方法で彩色された画像

を利用し,葉をつけた植生を高感度に判別する必要がある場合は「フォールスカラー」と呼ばれる方法

で彩色されたカラー画像を利用する(図1)。

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

第Ⅱ章 流域環境調査法

水面や植生,人工構造物など地表面を覆う事物の存在や分布は,土地利用と密接に結びついているの

で,土地被覆の様子を知ることは土地利用の現況を把握する上で役立つ。地球観測衛星が取得するリモ

ートセンシング画像を利用すると,土地被覆を広域的かつ定期的に取得することができる。現在は,多

彩な地球観測衛星が運用されており,取得される画像も衛星の軌道や搭載されたセンサーの特性から

様々な特徴を持つ。これに対応して,土地被覆状態を解析する様々な手法が開発されている。

ここでは,標準的な手法として,画像判読と,土地被覆分類について実施要領を示す。

地上分解能が1m程度の衛星画像では,耕地の畦畔や樹木が識別できる。したがって,これを用いて地

上の事物を判読し土地利用図の加筆・修正に用いることができる。

衛星画像の利用に先立ち,現在運用されている衛星と搭載されているセンサーの諸元について検討し,

調査対象にふさわしい画像を選択する。

第Ⅱ章

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5.3. 衛星画像の幾何補正

5.3.1. 基準地図の作成

5.3.1.1. 数値地図25000(地図画像)の取り込み

[方法と留意点]

1)数値地図25000(地図画像)CD-ROMの¥DATA¥KANRI.CSVを開き,図名などから取り込むべき

地形図の2次メッシュコードを定める。地図画像は,¥DATA¥4930¥に,「2次メッシュコード」+

「.TIF」という名で収録されている。ここでは「493072.TIF」を読み込む。

2)GISのメニューから,/ Process / Importを辿り,インポートウインドウを開く。

3)ファイル形式のリストからTIFFを選択し,[Next...]ボタンをクリックする。

4)取り込むファイル(この例では¥DATA¥4930¥493072.TIF)を指定するとImport Parametersウイ

ンドウが開く。ここで,「Null Value:」という表示の左にあるボタンをクリックし,現れた入力ボック

スに0を入力し,[Import]ボタンをクリックする。これにより地図画像の背景(白)を透明にすること

ができる。

5)Select Objectウインドウが開き,読み込んだ画像を格納するファイルを指定するよう求められるので,

ファイルを置くべきディレクトリに移動した上で上部に並んだツールボタンから[New File...]ボタンを

押し,ファイルを新規作成する(Map25Kと入力する)。

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

衛星画像は,観測する地表面の地形や衛星の姿勢などから,多かれ少なかれ歪んでいるので,これを

地図や他の画像と重ね合わせて解析する場合は,あらかじめ基準となる地図を用意し,画像がこれと一

致するように意図的に歪める。これを幾何補正と言う。衛星画像を単純な判読図として用いる場合には

幾何補正は必要ない。幾何補正は,GISや衛星画像解析ソフトウエアを用いて行なう。ここでは,国土地

理院が発行する「数値地図25000(地図画像)」を基準の地図としてSPOT-4のHRV画像(分解能20m)

を幾何補正する手順を,米国Microimages社のGIS製品であるTNTmips 7.1を例に示す。

なお,IKONOS画像の製品の中には,すでに幾何補正がなされ,標準誤差1.75mの位置精度を謳う製

品もある。

数値地図25000(地図画像)は位置情報を持たないTIFF形式の画像である。これを地理情報とするた

めに,まず画像をGISに取り込む。以下では,「数値地図25000(地図画像) 熊本」のCD-ROMより

「佐賀北部」の画像を取り込む方法を示す。

図1 IKONOS画像の例(群馬県)。左から,トゥルーカラー,フォールスカラー,白黒画像。白黒(パンクロマチック)画像はカラー画像(3.3m)より解像度が高い(80cm)。

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6)続いて,Select Objectウインドウが再び開くので,上部に並んだツールボタンから[New Object...]ボ

タンを押し,数値地図画像にオブジェクト名(ここではMap493072とする)を付け,[OK]ボタンをク

リックする。

7)TNTmipsは,地図などを個別のファイルではなくオブジェクトとして管理する。データファイルはオ

ブジェクトの入れ物として扱われ,この中に任意の数のGISオブジェクトを格納することができる。フ

ァイルの拡張子は「.rvc」である。

8)TNTmipsはSMLと呼ばれるスクリプト言語を持っており,これを利用したプログラムにより,数値地

図の読み込みと位置情報の付与(5.3.1.2参照)をCD-ROM一枚分について一括して実施することがで

きる。このプログラムはTNTmipsの日本代理店のホームページより入手できる。

5.3.1.2. 地図画像への投影法と位置情報の付与

[方法と留意点]

1)CD-ROMの¥DATA¥KANRI.CSVを開き,図名などから取り込んだ地図画像の図郭四隅のピクセル座

標とそれらが位置する地理座標(UTM図法のNorthingおよび Easting)を控える(表1)。

2)GISのメニューから,/ Edit / Georeference...を辿り,Georeferencingウインドウを開く。

3)Map25K.rvcファイルを開きそこに格納されているMap493072を指定する。

4)Georeferencing Optionsウインドウが開くので,[Set All...]ボタンをクリックする。

5)Coordinate Preference Systemウインドウが開くので,PredefinedタブよりGlobal and Regionalを

選択し,その左側にある田の字マークをクリックしてサブメニューを展開し,Universal Transverse

Mercator (UTM)を選択し,同様の操作を行なって,最終的にUTM zone 52N(CM 129E)を指定

する。

6)次に,Coordinate System タブより,Coordinate System のプルダウンメニューが「Projected:

Easting(E), Northing (N)[meters]」となっていることを確認する。

7)次に,DatumタブよりDatumのプルダウンメニューからTokyoを選択する。

8)以上を設定し[OK]ボタンをクリックする。

9)Georeferencing Optionsウインドウに戻るので,ここの[OK]ボタンをクリックする。

10)3つのウインドウが開くので,タイトルバーにファイル名とオブジェクト名が表示されているウイン

ドウに対し,図角の四隅のピクセルとそれらの位置情報を順次入力する(図2)。メニューバーの下の

Mode:ラジオボタンが,Addとなっていることを確認したうえで,Input Objectの入力ボックスの

Line:に,CD-ROMの¥DATA¥KANRI.CSVの表において「左上L」に示された数値(ここでは75),

Column:に「郭四隅ファイル座標左上P」に示された数値(ここでは75),Name:に「UpperLeft」の

文字列を入力する。

11)同じウインドウの,今度はReferenceの入力ボックスのNorthingに,表において「左上N」に示され

た数値(ここでは1475429),Eastingに「図郭四隅UTM(ピクセル単位)左上E」に示された数値

(ここでは46528)を入力する。

12)数値を入力後,エンターキーを押すか他の入力ボックスをクリックすると,今まで灰色表示であった

ツールバーの[Apply]ボタンがカラー表示となるので,これをクリックして登録する。登録されると,

地図画像上にマーカが表示される(図3)。

13)この操作を四回繰り返して地図画像の四隅の位置を登録する。

数値地図25000(地図画像)をGISデータとするために,取り込んだ画像に対し,投影法と位置座標

を指定する。

第Ⅱ章

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14)このウインドウのメニューからFile / Saveを辿り,表示されるダイアログボックスで[OK]ボタンをク

リックする。

5.3.2. 衛星画像の取り組み

[方法と留意点]

1)GISのメニューから,/ Process / Importを辿り,インポートウインドウを開く。

2)ファイル形式のリストからSPOTを選択し,[Next...]ボタンをクリックする。

3)読み込むファイル(この例では¥SCENE001¥IMGY_00.dat)を指定するとImport Parametersダイ

アログボックスが開ので,[Leader File.. .]ボタンをクリックし,リーダファイルを指定(ここでは

¥SCENE001¥LEAD_00.dat)し,次に[Import]ボタンをクリックする(図4)。

4)Select Objectウインドウが開き,観測波長のバンドの数だけオブジェクトが示されるので,ウインド

ウ下部に並ぶツールバーより,[Auto-Name...]ボタンをクリックしてオブジェクトの名称を与える。

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

図2 位置情報のGeoreferencingウインドウへの入力

図3 Georeferencingにおける座標点の登録状況を示すウインドウ。登録された座標点が四隅に示されている

表1 数値地図25000(地図画像)�   CD-ROMのKANRI.CSVファイルより�   抜粋した「佐賀北部」の諸元。�

見出し�2次メッシュコード�図名(漢字)�図名(よみ)�地形図コード�号数�図郭四隅UTM(ピクセル単位)�左上E�左上N�左下E�左下N�右下E�右下N�右上E�右上N�図郭四隅ファイル座標左上P�左上L�左下P�左下L�右下P�右下L�右上P�右上L

データ�493072�佐賀北部�さがほくぶ�NI-52-11-9-3�熊本9号-3�46528��1475429�46572�1471734�51229�1471793�51181�1475488�75�75�73�3771�4731�3771�4728�75

衛星データの供給元から購入した衛星画像をGISデータとして取り込む。以下では,1997年4月26日

にSPOT衛星搭載センサーHXが撮影した佐賀平野周辺の画像を取り込む方法を示す。

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5)[OK]ボタンをクリックする。

6)Select Objectウインドウが開き,読み込んだ画像を格納するファイルを指定するよう求められるので,

ファイルを置くべきディレクトリに移動した上で,上部に並んだツールボタンから[NewFile...]ボタン

を押し,ファイルを新規作成する(ここでは, S P O T _ S a g a 9 7 0 4 2 6 と 入力し,

SPOT_Saga970426.rvcというファイルを作成する)。

7)続いて,Select Objectウインドウの下部に並ぶツールバーより,[Auto-Name...]ボタンをクリックして

オブジェクトの名称を与え,[OK]ボタンをクリックする。

8)Process Statusダイヤログボックスが開いて,処理の進行状況が示されるので,終了したら[OK]ボタ

ンをクリックしてダイヤログを閉じる。続いてImportウインドウの[Exit]ボタンをクリックしてこれを

閉じる。取り込まれた衛星画像を図5に示す

5.3.3. 衛星画像の幾何補正

[方法と留意点]

1)GISのメニューから,/ Edit / Georeferenceを辿り,Object Georeferencingウインドウを開く。

2)このメニューから,File / Open RGB Rasters...を辿り,衛星画像(SPOT_Saga970426.rvc)を指定

しそこに格納されている画像オブジェクトSPOT_XS_1, 2, 3を,3,2,1の順でダブルクリックし,

それぞれ赤,緑,青に割り当てる。すると,取り込んだ衛星画像が表示される。

図4 衛星画像のGISへの取り込み。左:TNTmipsのデータインポートウインドウ。ファイル形式を指定した後に,リーダーファイルなどを指定する。右:ファイルやオブジェクトにの名前を付与するためのウインドウ

幾何補正とは,基準となる地図と正確に重なるように衛星画像などを意図的に歪めることである。一

般的には,交差点や島嶼など地理的に特徴的な地点を画像から読みとり,画像処理ソフト上で地図にお

ける対応点と関連づけることで行なう。以下では,5.3.2で取り込んだSPOT画像を,5.3.1で取り込んだ

地図画像で幾何補正する方法を示す。なお,合成開口レーダーやSPOTなど,斜め下方を撮影する衛星

センサーの画像は,標高に依存する歪みを持つため,標高データを用いた特殊な幾何補正が事前に必要

となる場合がある。

第Ⅱ章

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3)ここで表示される画像の四隅には,四つのマーカーが記されていることに注意する。これは,GISが画

像の取り込みに際しデータファイルから読みとって付与した,画像のピクセル座標と地理座標との対応

点である。Object Georeferencingウインドウには,それらの数値が一覧表示されている。

4)Object Georeferencing (Georeferenceと改名されている)ウインドウのメニューから,/ Options

をクリックし,展開するプルダウンメニューより,Show 2D Reference Viewを選択する。すると,

新たに2つのウインドウが表示されるので,Reference Layer Controlsウインドウのツールバー上の

[Add Raster...]をクリックし,展開するプルダウンメニューからQuick add single...を選択する。する

と,参照すべき地図を指定するウインドウが開くので,ここに「佐賀北部」(Map25K.rvc内の

Map493072オブジェクト)を指定し,[OK]ボタンをクリックする。

5)Object Georeferencing (Reference Object View) 2Dウインドウのツールバーにある[Zoom Box]

ボタンをクリックにより押し込んでから,地図画像の適当な部分をクリック-ドラックし,この部分を

拡大する。すると,Object Georeferencing (Reference Object View) 上には矢印のマウスカーソ

ルが現れ,Object Georeferencing (Input Object View)には黄色い十字のカーソルが現れる。GIS

はこれら2地点を同一の地点と認識している。

6)Georeferenceウインドウのメニューバーの一段下にあるAddの左にあるラジオボタンをクリックして

押し込み,グランドコントロールポイントを追加するモードとする。

7)Object Georeferencing (Reference Object View)ウインドウ及びObject Georeferencing

図5 GISに取り込まれたSPOT画像。近赤外光の反射率を赤,赤色光の反射率を緑,緑色光の反射率を青で表示(フォールスカラー表示)した

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

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(Input Object View)ウインドウのツールバーにある[Crosshair]ボタンをクリックして押し込み,交

差点など特徴的な地物から同一地点を同定し,それぞれのウインドウでカーソルをあててクリックし,

グランドコントロールポイントを作成する。Georeferenceウインドウには,Reference画像より取得

された地理座標と InputObjec t のピクセル座標が自動的にセットされる。問題がなければ,

Georeferenceウインドウのメニューバーの下に並ぶツールボタンより,[Apply]ボタンをクリックし,

このグランドコントロールポイントを登録する。

8)この作業を繰り返し,解析対象領域全体に亘り十分な数のグランドコントロールポイントを登録する

(図6)。

9)必要に応じ,衛星画像の4隅に設定されていたグランドコントロールポイントを削除する。

10)GeoreferenceウインドウのメニューからModelを選択し,プルダウンメニューから画像を変形する方

法を選択する。最も単純な変形はAffinである。これは伸縮・平行移動・回転を画像全体を対象に行な

い,グランドコントロールポイント間の誤差の総和を最小にするものである。この他に,グランドコ

ントロールポイントを3次式で回帰し,それに従って画像を歪める方法(Order 3 Polynominal)や,

グランドコントロールポイントは完全に正しいと見なして,画像を3つのグランドコントロールポイ

ントで囲まれる微少部分に分割した上でそれぞれに対しAffin変形を適用する方法(Piecewise Affin)

などの変形方法もある。

11)GeoreferenceウインドウのメニューからFile /Exitと辿り,終了する。

12)GISのメニューから,/ Process / Raster / Resample & Reproject / Automatic...を辿り,Raster

Resampling using Georeference ウインドウを開く。

13)Rastersタブをクリックして選択し,[Select Raster]ボタンをクリックしてSPOT_Saga970426.rvcを

指定し,その中のSPOT_XS_1, 2, 3をすべて選択し,[Run...]ボタンをクリックする。すると出力する

ファイル名やオブジェクト名を指定するウインドウが表示されるので,ツールボタンより[New File..]

ボタンをクリックして地図データを格納する新しいプロジェクトファイル(ここでは,

SPOT_Saga_970426_GC.rvc)を指定し,ついで新しいオブジェクト名(SPOT_XS_1, 2, 3)を指定

したうえで[OK]ボタンをクリックする。すると,画像の変形処理が開始される。幾何補正を実施する

前の衛星画像と実施後のそれとを,地図画像と重ね合わせて図7に示した。

図6 グランドコントロールポイントの設定。

第Ⅱ章

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5.4. 土地被覆分類

[方法と留意点]

1)GISのメニューから,/ Process / Raster / Interpret / Auto-Classifyを辿り,Automatic

classification ウインドウを開く。

2)このウインドウの[Rasters...]ボタンをクリックし,分類の元となるNDVI画像をすべて選択する。

3)ウインドウ中段にある「method:」の右側にあるボタンをクリックすると,プルダウンメニューが展開

する。これには,分類に使用する様々な統計モデルが記されている。ここでは,「K Means」を選択する。

4)ウインドウ下段にあるパラメータは,基本的に,実行結果を見ながら試行錯誤により最適化する性質の

ものである。特に,分類の個数(Number of Class)には,想定する分類数の2倍程度の数を指定する

とよい。ここでは10を入力する。

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

図7 地図画像と衛星画像とを重ね合わせて表示した図。左は幾何補正前の衛星画像との重ね合わせ表示。右は幾何補正を行なった後の画像との重ね合わせ表示である。

衛星センサーは,様々な波長帯の分光反射率を繰り返し観測する。地表を構成する物質や生物はそれ

ぞれが固有の分光反射特性を持ち,特に植物などでは,季節により分光反射特性が変化するので,衛星

画像を解析することで地表の被覆状態を分類することができる。土地利用と土地被覆とは密接に関係し

ているので,土地被覆の分類結果は土地利用現況の把握に役立つ。

衛星画像による土地被覆分類は,教師無し分類(unsupervised classification)と,教師付分類

(supervised classification)に大別される。教師無し分類とは,クラスター分類などの統計手法をもと

に,分光反射特性が統計的に似通っているピクセル同士を,現地調査の知見を用いずにグループ化する

分類法である。これに対し,教師付分類は,現地調査の知見をもとに,その場所と類似の分光反射特性

をもつ領域を探索する分類法である。なお,分類のよりどころとしては,分光反射特性の違いのほか,

各種指数や特定の波長の分光反射率の季節変化や年変化を利用してもよい。

ここでは,1997年に取得された9枚のSPOT画像から計算した植生指数画像(図8)を用いて,植生

指数の季節変化特性の違いを利用して,佐賀平野北部の土地被覆を教師無し分類により分類する手順を

米国Microimages社のGIS製品であるTNTmips 7.1を例に示す。

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図8 教師無し分類に使用した,9枚(1997年1/17, 3/5, 4/26, 5/27, 6/17, 7/23,9/13, 9/29, 12/2)の植生指数分布図。

図9 植生指数の季節変化をもとに,K-mean法を用いて分類した佐賀北部地域の土地被覆分布図(左)。クラス1(深緑)とクラス3(緑)を合わせた領域は常緑樹林の分布域とほぼ一致する。クラス4(黄)は草地やゴルフ場と,クラス6(青紫)は市街化地域または水域と,クラス7(黄緑)は農地と,それぞれ対応する。クラス7(灰)は,宅地と農地の境界的領域分布する。右図は,参考のために同じ地域をフォールスカラーと地図画像の重ね合わせで示したもの。

第Ⅱ章

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5)ウインドウのメニューバーからRun...を辿ってクリックし,分類結果の出力先を指定して実行する。

6)分類結果には,都市域や農地など,明らかに特徴的な土地被覆を反映しているクラスのほかに,異なる

土地被覆のどちらともつけがたい領域に当てはめられているクラスや,どのようにも特徴づけにくい領

域に当てはめられたクラスも含まれている。

7)異なる二つの土地被覆の中間的なクラスについては,それをそのまま解析に用いる場合もあるが,どち

らかに分類して解析しなくてはならない場合には,GISのクラス編集機能を用いて中間的なクラスをど

ちらかのクラスに併合する。どちらに併合するかの判断が難しい場合には,分類のクラス数や統計モデ

ル,パラメータを変更して分類をし直すと容易になる場合がある。

8)分類は,必ずしも衛星画像全体を対象に実施する必要はない。「ROI」や「AOI」等と呼ばれるGISデ

ータを作成することにより,注目する領域にのみ分類処理を施すことができる。この機能は,一つのク

ラスに分類された領域を別な観点から複数の土地被覆区分に分けなおす場合などに用いる。これとは逆

に,「マスク」と呼ばれるGISデータを作成して特定の領域を分類処理から除外することもできる。

9)植生指数の季節変化をもとに分類すると,落葉樹,広葉樹,農地など,植生に関わる土地被覆を細かく

分類することができるが,反面,都市域と水域の判別が難しいなど植物(葉緑素)が少ない土地被覆に

対して分類する力が弱い。

10)1m程度の分解能の画像を土地被覆分類に用いる場合には,各画素に対しそれを取り囲むピクセルと

の平均値を埋め直す処理(フォーカルフィルタ処理)などを適用するとよい。

参考文献

1)日本リモートセンシング研究会編(2004):改訂版図解リモートセンシング,社団法人日本測量協会,

p.334

2)秋山 侃・福原道一・斉藤元也・深山一弥編著(1996):カラー図説農業リモートセンシング,養賢

堂,p.166

3)株式会社オープンGIS:TNT入門 日本語テキスト(pdfドキュメント),

http://www.opengis.co.jp/htm/getstart/getstart.htm

大野宏之・石塚直樹(農業環境技術研究所)

Ⅱ-5 土地利用現況調査法(リモートセンシング利用)

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6.1. 流線方向の推定

【方法と留意点】

1)国土基本図,地形図,空中写真や住宅地図から河川,かんがい・排水路を取り出し,流賂の方向は傾斜

から推定し,流線図の原図を作成する。水路のない林地や畑地では,等高線に対して直角を流線方向と

する。

2)地図や空中写真で確認できない緩やかな傾斜地および幅の狭い水路やふたで覆われている水路の流線方

向は現地で確認する。

3)標高情報の入ったメッシュファイル,(たとえば国土地理院の数値地図50mメッシュ標高)からは,簡

単なプログラミングによって傾斜方向を決定することが出来る。目的とする地点と隣接する4地点(東,

西,南,北)または8地点(北,北東,東,東南,南,南西,西,北西)の標高差を距離で除して勾配

を求め,最も大きな勾配となった2点の標高の高い地点から低い地点を結んだ方向が流線方向となる。

4)GISソフト(たとえばArc GIS)を利用すると,標高情報の入ったメッシュファイルから,自動的に流

線が作成される。ただし,標高差の少ない平坦地では利用上の制約がある。

6.2. 分水界・集水域の推定

Ⅱ-6 表流水流線および集水域調査法

第Ⅱ章 流域環境調査法

地形や空中写真から河川,かんがい・排水路の流賂と方向を決める。水路のない林地や畑では,等高

線の直角方向が流線方向である。地図や空中写真から流賂や方向が決定できないときは,現地調査をお

こなう。等高線のメッシュデータからGISソフトを利用して流線図が自動的に作成できる。

図1 流線(矢印)と分水界(破線)

対象とする地域が比較的広い場合は,数値データファイルから分水界・集水域を推定する。狭い地域

では,地図をもとに作成する。

第Ⅱ章

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図2 国土数値情報(100 mメッシュ)から作成された集水域の土地利用図の例

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【方法と留意点】

1)分水界は流線図において流線をまたがない線で,細長く延びている場合は主要な分水嶺となる。

2)集水域は,谷口の地点を起点とし,分水界をたどり,起点の谷口までもどる分水界に囲まれた地域であ

る。

3)対象地域が比較的広い場合は,メッシュデータを活用して集水域を推定する。メッシュデータは国土地

理院の国土数値情報ダウンロードサービスから無償で入手出来る。そこにある「流域・非集水域メッシ

ュ」は単位集水域の100mメッシュデータである。単位集水域を複数結合した,もう少し広い集水域を

作成するには,「単位流域台帳(表)」をダウンロードして作成する。データのフォーマット等は,そこ

である程度,参照可能であるが,詳しくは,下記の参考書を参考されたい。図には国土数値情報を利用

して思川流域に土地利用図を載せた地図が載せてある。国土数値情報には土地利用図もある。

4)GISソフトを利用すると,標高情報の入ったメッシュファイルから,自動的に集水域が作成される。ま

た,集水域のメッシュデータを地図上に描画も可能である。ただし,ソフトを別途購入する必要がある。

これらGISソフトの利用はメーカーに直接,問い合わせしてください。たとえば,Arc GISはESRIジ

ャパン(www.esri.com)で販売している。

参考文献

1)国土交通省国土地理院監修 (1998):国土地理院の数値地図利用手引書,数値地図ユーザーズガイド,

日本地図センター, p471

神田健一(農業環境技術研究所)

Ⅱ-6 表流水流線および集水域調査法

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第Ⅱ章

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Ⅱ-7 流域水収支及び水田水利用の概況調査法

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第Ⅱ章

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Ⅱ-7 流域水収支及び水田水利用の概況調査法

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第Ⅱ章

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Ⅱ-7 流域水収支及び水田水利用の概況調査法