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目次
日本音響エンジニアリングについて
不織布の吸音メカニズム
(≒多孔質材料の吸音メカニズム)
EVへの適用可能性
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日本音響エンジニアリングについて
日本音響エンジニアリングの概要
設立: 1972年
2015年7月に「日本音響エンジニアリング」に商号を変更
事業所 本社 : 東京
営業所 : 大阪、名古屋
研究所 : 千葉
グループ会社(タイ)
NOE Asia Pacific Co., Ltd.
売上高
47億円
従業員数 約80名
主な事業 建築音響工事の設計・施工
音響・振動の計測システム・シミュレーションシステムの開発・販売
音響・振動に係るコンサルティング・エンジニアリング・計測サービス Copyright 2018. All rights reserved. 3
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事業内容 - 会社全体
“音”に関する幅広い業務
音空間の設計・施工
事業内容 - 音空間設計・施工
提案 建築・音場設計 施工 音場調整 アフターサービスに至るトータルコーディネート
TVスタジオ
無響室 試聴室
シアター
レコーディングスタジオ 音声編集スタジオ
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事業内容 - 計測システム
計測/シミュレーションシステム開発・販売
音源探査システム Noise Vision
残響室法吸音率 測定システム 各種計測・シミュレーションソフトウェア
垂直入射吸音率測定システム
マイクロホン移動装置
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事業内容 - 音響材料評価
音響材料の吸音・遮音に関連する各種テスト、コンサルティング業務
吸音率・音響透過損失(音響管/残響室-無響室)
流れ抵抗,迷路度,弾性率等の材料パラメータ
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事業内容 - 音響材料評価
音響性能予測ソフトウェアの開発
防音材の仕様変更(層構造や材料の変更)の吸音・遮音シミュレーションやターゲットに対する最適化
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音響研究所 - 無響室
完全無響室・半無響室の切り替えが可能
車両音響測定が可能、排気設備付属
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音響研究所:無響室での車両実験の例
可視化ツールを用いた対策部位の可視化
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音響研究所 - 残響室
テストサンプルの吸音性能
車両総合遮音性能評価
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音響研究所:残響室での車両実験の例
可視化ツールを用いた車両総合遮音性能の評価
フロントガラスとインパネの 隙間
Aピラー,シール Bピラー,シール
リアガラス 助手席側Aピラー
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音響研究所 - 遮音性能評価用 残響室-無響室
結合された残響室と無響室
自動車コンポーネント、建材の遮音性能評価
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音響研究所 - Sound Lab.
新しい発想の音響設計のためのリスニングルーム、スタジオの開発拠点
「いい音空間」の追求
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不織布の吸音メカニズム
不織布の吸音メカニズム
吸音・遮音とは
多孔質材料の吸音
不織布の特徴
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吸音・遮音とは
目的 : 居住空間の快適化 (≒ 静粛化)
遮音 → 車室内へ侵入する音そのものを低減。
(一次的な静粛化)
吸音 → 車室内の侵入した音の響きを減らすことで低減
(どちらかというと二次的な静粛化)
*静粛効果は一般的に 遮音 > 吸音
エンジン放射音
タイヤ放射音
遮音
遮音
風切り音
吸音
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吸音・遮音とは
吸音を重視する場合
車室内へ侵入する音のエネルギーを減らす場合に有効
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2.1. 防音とは
「吸音」「遮音」「制振」「防振」
「吸音」「遮音」・・・空気伝搬音に対する対策
「制振」「防振」・・・個体伝搬音に対する対策
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タイヤ放射音 遮音
吸音 エンジン放射音
エンジン振動
防振 タイヤ振動 制振
吸音・遮音とは
吸音・遮音のエネルギー収支
入射波 (強さIi)
反射波 (強さIr)
透過波 (強さIt)
消失(吸収) (強さIδ)
構造物 (吸遮音材)
tri IIII
入射波 反射波 消失 透過波
吸音:跳ね返ってこない音(!=消失)
i
ri
i
t
I
II
I
II
吸音率:
遮音:透過しない音
1log10 10TL音響透過損失:
[dB]
i
t
I
I透過率
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吸音・遮音とは
Copyright 2018. All rights reserved. 21
吸音=遮音ではない!
入射波 (強さIi)
反射波 (強さIr)
透過波 (強さIt)
消失(吸収) (強さIδ)
構造物 (吸遮音材)
tri IIII
入射波 反射波 消失 透過波
吸音に寄与
遮音に寄与
吸音か、遮音か、 目的によって材料の選定も変わる場合あり
吸音・遮音とは
音の反射・透過=異なる媒質の境界での音の振る舞い
媒質1 (空気)
媒質2
インピーダンス1 インピーダンス2
境界
固い壁 フェルト 空気 空気
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吸音・遮音とは
インピーダンス
11, 22 ,
媒質1 媒質2 密度:
体積弾性率:
音速:
]/[ 3mkg
]/[ 2mN
]/[ smc
機械 : 力/速度 電気 : 電圧/電流 音響 : 音圧/粒子速度(特性インピーダンス)
]/[ 2smkgc
Zc
特性インピーダンス:
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吸音・遮音とは
境界面での反射
r ≒ 0.9994 ↓
= 1 - |r|2 ≒ 0.001
音圧反射率
11, 22 ,
媒質1 媒質2
1cZ
2cZ
12
12
cc
cc
ZZ
ZZr
例) 空気→水:
ρ
[kg/m3]
Κ
[kg/ms2]
c
[m/s]
Zc
[kg/m2s]
空気 1.2 1.4x105 3.4x102 4.1x102
水 1.0x103 2.1x109 1.4x103 1.4x106
ほとんどの固体(液体)は 空気よりZが非常に大
吸音に多孔質材料が有効
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空気中 材料中
吸音・遮音とは
消失(吸収)とは
材料中を伝搬中に音の運動エネルギーが熱へ変換(熱として消費)されること
空気伝搬音
固体伝搬音
粘性損失 熱交換損失
内部損失 入射波 (強さIi)
反射波 (強さIr)
透過波 (強さIt)
消失(吸収) (強さIδ)
構造物 (吸遮音材)
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吸音・遮音とは
理想的な吸音材 1. 材料表面での反射ができるだけ小さいこと 2. 材料中での減衰が大きいこと
例)無響室に用いる吸音楔
|Z|
空気
楔材料
x
インピーダンスが 徐々に変化
反射が少ない Copyright 2018. All rights reserved. 26
吸音・遮音とは
遮音の基礎 -「透過」とは
入射波 (空気伝搬音)
透過波 (空気伝搬音)
消失(吸収) (強さIδ)
固体 伝搬音
→ 空気中を伝わる音波が構造物を加振し,構造物 中を伝搬する音波(固体伝搬音,振動)が再放射
空気中を伝わる音波が 構造物を加振
構造物から音波を 再放射
→ 隙間からの漏れ
隙間があると 漏れ音大
構造体 Copyright 2018. All rights reserved. 27
遮音性能を表すキーワード
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質量則 (mass law)
単位面積当たりの重量で遮音性能が決まる
遮音性能を示す基本要素 透過損失(
dB)
周波数(Hz)
遮音性能の改善
積層構造により質量則以上の傾きを実現する
シミュレーションによる層構造の検討、最適化が可能
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音響
透過
損失
[dB]
0
10
20
30
40
50
60
70
80
400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500 3150 4000 5000
1/3オクターブバンド中心周波数 [Hz]
鉄板 = ほぼ質量則
鉄板+フェルト+ゴムシート
0
10
20
30
40
50
60
0.000001 0.00001 0.0001 0.001 0.01 0.1 1
開口率
音響
透過
損失
[dB
]
10dB
20dB
30dB
40dB
50dB
【注意!】隙間(穴)の影響
壁に生じた隙間(穴)が遮音性能に及ぼす影響
出典: 「自動車技術ハンドブック」
透過損失 50dB
開口率 0.1%
? 50dB 30dB
-20dB
50dBのTLが、開口率0.1%の穴で30dBのTLに! 高い遮音性能を持つ材料ほど、 ほんの僅かな隙間でも、著しい遮音低下の原因となる!
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多孔質材料の吸音メカニズム
多孔質材料
グラスウール、フェルト、通気のあるウレタンなど 粗毛フェルト グラスウール
ウレタンフォーム メラミンフォーム
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空隙を音(=空気の振動)が伝搬
粘性を持つ流体が膨張・圧縮しながら隙間を伝搬(空気伝搬音)
伝搬中に粘性および熱交換により損失が発生
多孔質材料の吸音メカニズム - 1
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音波
空隙 (air gap)
空気伝搬音
(air-borne
sound)
骨格 (frame)
粘性に
よる損失
熱交換に
よる損失
多孔質材料の吸音メカニズム - 2
空隙を音(=空気の振動)が伝搬
音波が骨格を励振し、骨格を音が伝搬(固体伝搬音)
伝搬中に骨格の内部損失によりエネルギー減衰
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音波
空隙 (air gap)
空気伝搬音
(airborne
sound)
固体伝搬音
structure-borne
sound) 骨格 (frame)
多孔質材料の吸音メカニズム - 3
等価流体モデル(Equivalent Fluid model)
多孔質材料の骨格の幾何的形状の性質を用いて多孔質材料中を減衰をもつ媒質としてモデル化
上記モデルで使用するパラメータ
流れ抵抗
多孔度
迷路度
粘性特性長
熱的特性長
上記パラメータを測定により取得
骨格の弾性も考慮したBiotモデルが普及
市販のCAEソフトでの解析も可能に Copyright 2018. All rights reserved. 34
多孔質材料の吸音特性
一般的な傾向
右肩上がりの周波数特性、周波数:高→吸音率:高
最初のピークより高周波数域で凹凸
吸音特性をより高めるための手段は?
Copyright 2018. All rights reserved. 35
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
100 1000 10000 Frequency[Hz]
Abso
rption C
oeff
icie
nt
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
100 1000 10000Frequency[Hz]
Abs
orp
tion C
oeff
icie
nt
吸音特性を高める方法 - 1
厚みを変える
材料中での多重反射と減衰 → 一般的に厚みを増すほど吸音率は上昇
*高周波での凹凸は表面の反射と材料中からの透過音の干渉
多孔質材 剛壁 グラスウール32kg/m3
厚さ25mm
厚さ50mm
厚さ100mm
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吸音特性を高める方法 - 2
背後空気層を設ける
吸音のピークを低周波に下げることができる
材料中および背後空気層で多重反射 → 空気層なしの場合よりも周波数特性の凹凸がより顕著
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
100 1000 10000Frequency[Hz]
Abs
orp
tion C
oeff
icie
nt
多孔質材 剛壁
グラスウール32kg/m3
空気層0mm
空気層25mm
空気層50mm
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吸音特性を高める方法 - 3
多層構造(積層材)を設計する
物性の異なる層を積層することで効果的な吸音実現
それぞれの層で反射。非常に複雑な伝搬となる。
性能予測には各層材料のパラメータと予測ソフトウェアが必要(等価流体モデル、Biotモデル)
多孔質材1 剛壁 多孔質材3 多孔質材2
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0.2
0.4
0.6
0.8
1
Norm
al abso
rption c
oeffic
ient
0
125 250 500 1k 2k 4k 8k
Frequency[Hz]
単層構造
3層構造
不織布系吸音材による吸音
多孔質材料による吸音
「骨格」ではなく「隙間」が重要
隙間を狭くすることで材料中の損失増
→ 骨格(繊維)構造によりどのように「隙間」を
構成するかが重要
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Hirosawa, K., JASA 141(6), 2017
不織布系吸音材による吸音
損失を高めるに隙間を小さくには…
空隙率(多孔度)を下げる(→繊維増やす)
→ 目付をあげてしまい好ましくない
目付をあげずに隙間を小さくするには?
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多い
不織布系吸音材による吸音(繊維径)
同じ目付(重量)なら
繊維がより細くすると…
→ 本数が多く
→ 隙間がより狭く(通気しにくくなる)
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太い 細い
不織布系吸音材による吸音(断面形状)
同じ目付(重量)なら
繊維を非円形断面にすると…
→ 繊維間がより狭く(通気しにくくなる)
表面積広くなることも寄与
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円形 楕円
廣澤, 日本音響学会2017秋季大会
不織布系吸音材による吸音
「損失」を高めすぎると、材料に音波が入りにくくなり、逆に吸音性能が下がる場合も
吸音を高めるためには、材料への音波の入り易さ(これも隙間)も考慮する必要あり
材料内部での適度な空気の流れを実現するための隙間の設計(繊維の構造・配置など)が重要
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EVへの不織布系吸音材の 適用
自動車騒音について
四輪自動車の振動騒音現象に対する一般的な周波数
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出典:「自動車技術ハンドブック」
自動車騒音について
自動車振動騒音現象の主な伝達経路
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出典:「自動車技術ハンドブック」
自動車騒音について
自動車の吸音・遮音部位
Copyright 2018. All rights reserved. 47
出典:「自動車用不織布のマーケット実態」
部位ごとに要求される性能が異なる
自動車騒音問題の今後の動向
EVへのシフト
対策すべき音源の変化
車外騒音規制強化
非常に高い騒音低減要求
エンジンをはじめ各部位の騒音を大幅低減
自動運転
自動車とのかかわり方が変わるかも
「移動手段」と「走る楽しみ」の両極化
「静かな」から「快適な」空間へ
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EV化に伴う騒音の変化
エンジン音がなくなることで従来聞こえなかった音が顕在化 エアコンノイズ (HVAC) 雨音、水音(ルーフ、ガラス、ホイールハウス) 低級音(異音) (S&R) カーナビ・オーディオ等機器動作音
EV/HV/PHV化によって発生する音に対する対策が必須に 磁励音:磁石(および周囲の部品)の膨張・収縮による発生音
「ビーン」 スイッチングノイズ。「キーン」という高周波音(数kHz~10数kHz)
従来の車と対策方法が大きく変化(主に高周波対策) 隙間処理(穴ふさぎ) 多孔質吸音材の効果的な使用(吸音・遮音)
ロードノイズ、風切音は依然として残る(要対策) Copyright 2018. All rights reserved. 49
EV化に伴う騒音対策(不織布)
エンジン→EVにより聞こえるようになった音への対策
エアコンノイズ:ダクトの吸音
石撥ね・水撥ね:発音部品の遮音(衝撃緩和効果も)
異音:部品同士の接触緩和
EV化による発生音
スイッチングノイズ:隙間処理・吸音
Copyright 2018. All rights reserved. 50