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JAMSTEC深海研究 第19号 95 沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント化」 -「よこすか」・「しんかい6500」による "Lequios" 航海成果速報- 松本 *1 木下 正高 *1 中村 *2 Jean-Claude Sibuet *3 昭興 *4 坤樹 *5 大森 *2 新城 竜一 *2 橋本 *6 細谷 慎一 *6 今村 牧子 *6 伊藤 *6 *6 八木 秀憲 *2 館川 恵子 *7 加賀谷一茶 *7 外窪 周子 *2 岡田 卓也 *2 木村 政昭 *2 沖縄トラフ西部は,アジア大陸東縁部の活動的なリフティングの起こっている場所として知られており,背弧海盆の発達のテク トニクス・ダイナミクスを解明する上で重要な海域である。本海域に於ては,1996年の「ラタラン」による台湾東方SPOT海域の調 査結果を受けて,2000年7月から8月に掛けて,「よこすか」・「しんかい6500」により,調査("Lequios"航海:航海番号YK00-06 Leg2)が行われた。本調査研究は,(1)沖縄トラフ中央地溝の形成・発達過程, (2)トラフ域の火山活動, (3)トラフ域の熱水活動, (4)広域テクトニクス・ダイナミクスの解明を目指すものであり,調査期間中,「しんかい6500」による潜航が10回行われた。本調査 の結果,新たに2箇所の熱水活動域が確認された。一つはSPOT域内,もう一つは宮古島北方の沖縄トラフ中軸部に位置する。 噴出する熱水の最高温度は,前者が170° C,後者が151° Cであった。双方共,熱水性の硫化物の沈殿物と化学合成生物群集を 伴うものであった。 SEABEAM2112による海底地形調査の結果,中央地溝は明瞭にセグメント化していることが明らかになった。 東側の熱水活動域は2個のセグメントの境界部に位置している。また,セグメント中央部にはマグマ活動・熱水活動などの徴候は 確認されなかった。八重山中央地溝上の中央海丘は時代が古く,海丘周辺の海底は海丘の荷重による弾性変形を起こしてい る様子である。このことから,中央地溝に於てはもはやリフティングを起こしていないことが推定される。一方, SPOT域と同様,与 那国島・石垣島北方で,新たに蛇行した海底谷が確認された。これは明らかに陸上の河川の浸蝕により発達したものであり,本 海域が嘗ては陸上或いは浅海域にあって,沖縄トラフのリフティングの運動により1000m以上沈降を起こしたことが推定される。 キーワード:沖縄トラフ,リフティング,セグメント化,熱水活動 *1 海洋科学技術センター深海研究部 *2 琉球大学理学部 *3 仏国海洋開発研究所 *4 国立台湾海洋大学 *5 台湾国立中央大学 *6 日本海洋事業株式会社 *7 東海大学海洋学部 *8 Deep Sea Research Department, Japan Marine Science and Technology Center *9 Faculty of Science, University of the Ryukyus *10 IFREMER Centre de Brest *11 Institute of Applied Geophysics, National Taiwan Ocean University *12 Institute of Geophysics, National Central University *13 Nippon Marine Enterprises, Inc. *14 School of Marine Science and Technology, Tokai University

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Page 1: 沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント … · mal activity in the trough area, and (iv) regional tectonics and dynamics of the study

JAMSTEC深海研究 第19号

95

沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント化」-「よこすか」・「しんかい6500」による"Lequios" 航海成果速報-

松本  剛*1 木下 正高*1 中村  衛*2 Jean-Claude Sibuet*3 李  昭興*4

許  坤樹*5 大森  保*2 新城 竜一*2 橋本  結*6 細谷 慎一*6

今村 牧子*6 伊藤  誠*6 佃   薫*6 八木 秀憲*2 館川 恵子*7

加賀谷一茶*7 外窪 周子*2 岡田 卓也*2 木村 政昭*2

沖縄トラフ西部は,アジア大陸東縁部の活動的なリフティングの起こっている場所として知られており,背弧海盆の発達のテク

トニクス・ダイナミクスを解明する上で重要な海域である。本海域に於ては,1996年の「ラタラン」による台湾東方SPOT海域の調

査結果を受けて,2000年7月から8月に掛けて,「よこすか」・「しんかい6500」により,調査("Lequios"航海:航海番号YK00-06

Leg2)が行われた。本調査研究は,(1)沖縄トラフ中央地溝の形成・発達過程,(2)トラフ域の火山活動,(3)トラフ域の熱水活動,

(4)広域テクトニクス・ダイナミクスの解明を目指すものであり,調査期間中,「しんかい6500」による潜航が10回行われた。本調査

の結果,新たに2箇所の熱水活動域が確認された。一つはSPOT域内,もう一つは宮古島北方の沖縄トラフ中軸部に位置する。

噴出する熱水の最高温度は,前者が170°C,後者が151°Cであった。双方共,熱水性の硫化物の沈殿物と化学合成生物群集を

伴うものであった。SEABEAM2112による海底地形調査の結果,中央地溝は明瞭にセグメント化していることが明らかになった。

東側の熱水活動域は2個のセグメントの境界部に位置している。また,セグメント中央部にはマグマ活動・熱水活動などの徴候は

確認されなかった。八重山中央地溝上の中央海丘は時代が古く,海丘周辺の海底は海丘の荷重による弾性変形を起こしてい

る様子である。このことから,中央地溝に於てはもはやリフティングを起こしていないことが推定される。一方,SPOT域と同様,与

那国島・石垣島北方で,新たに蛇行した海底谷が確認された。これは明らかに陸上の河川の浸蝕により発達したものであり,本

海域が嘗ては陸上或いは浅海域にあって,沖縄トラフのリフティングの運動により1000m以上沈降を起こしたことが推定される。

キーワード:沖縄トラフ,リフティング,セグメント化,熱水活動

*1 海洋科学技術センター深海研究部

*2 琉球大学理学部

*3 仏国海洋開発研究所

*4 国立台湾海洋大学

*5 台湾国立中央大学

*6 日本海洋事業株式会社

*7 東海大学海洋学部

*8 Deep Sea Research Department, Japan Marine Science and Technology Center

*9 Faculty of Science, University of the Ryukyus

*10 IFREMER Centre de Brest

*11 Institute of Applied Geophysics, National Taiwan Ocean University

*12 Institute of Geophysics, National Central University

*13 Nippon Marine Enterprises, Inc.

*14 School of Marine Science and Technology, Tokai University

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JAMSTEC深海研究 第19号

96

Volcanic and hydrothermal activities and possible "segmentation"

of the axial rifting in the westernmost part of the Okinawa Trough

- preliminary results from the YOKOSUKA / SHINKAI 6500 Lequios Cruise -

Takeshi MATSUMOTO*8 Masataka KINOSHITA*8 Mamoru NAKAMURA*9

Jean-Claude SIBUET*10 Chao-Shing LEE*11 Shu-Kun HSU*12 Tamotsu OOMORI*9

Ryuichi SHINJO*9 Yui HASHIMOTO*13 Sinichi HOSOYA*13 Makiko IMAMURA*13

Makoto ITO*13 Kaoru TUKUDA*13 Hidenori YAGI*9 Keiko TATEKAWA*14

Issa KAGAYA*14 Shuko HOKAKUBO*9 Takuya OKADA*9 Masaaki KIMURA*9

The western part of the Okinawa Trough is characterised by an active rifting of the eastern margin of the Asian conti-

nent and is one of the key areas to describe the tectonics and dynamics of the evolution of backarc basins. The area was

surveyed by R/V YOKOSUKA and DSV SHINKAI6500 in July-August 2000 (Lequios Cruise : Cruise ID = YK00-06

Leg2) after the succession of the previous l'Atalante cruise in 1996 in the SPOT Area (east of Taiwan), in order to

detect (i) the formation and evolution of the central rift axes, (ii) the volcanic activity in the trough area, (iii) hydrother-

mal activity in the trough area, and (iv) regional tectonics and dynamics of the study area. Two active hydrothermal

sites were newly located through 10 dives in the study area. One is located in the SPOT area and the other on the axial

zone of the Okinawa Trough off the northern coast of Miyako Island. Maximum temperature was 170°C in the former

case and 150°C in the latter case. Both sites are characterised by active chimneys associated with sulphide deposits and

chemosynthetic communities. Regional topography surveyed by the SEABEAM2112 system shows the clear segmenta-

tion of the central graben. The eastern hydrothermal site is located on the junction of the two different segment edge.

On the other hand, there were no signs of the active magmatism or hydrothermalism in the segment centres. The central

knoll on the Yaeyama Graben seems to be rather old and the seafloor surrounding the knoll deforms like elastic bending

due to the load of the knoll. It shows that no more active rifting is taking place at the axis of the segment of the graben.

Largely meandering channels were located off the northern coast of Yonaguni Island and Ishigaki Island. These are

similar to those observed in the SPOT area. All these are apparently derived from onland fluvial erosion, which sug-

gests that this area was deformed down to 1000m corresponding to the rifting of the Okinawa Trough.

Keywords : Okinawa Trough, Rifting, Segmentation, Hydrothermalism

Page 3: 沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント … · mal activity in the trough area, and (iv) regional tectonics and dynamics of the study

97JAMSTEC J. Deep Sea Res., 19(2001)

1. 序琉球海溝・島弧・背弧系は,弧状をなすユーラシア大陸

東縁であり,フィリピン海プレートとユーラシアプレートとの境

界である。沖縄トラフは琉球島弧の北西側に位置する背弧

海盆であり,九州の南西から台湾の宜蘭平原まで連なって

いる。最大水深は石垣島北方沖の処にあり,約2400mであ

る。この地点から東西に向かい,水深は徐 に々浅くなる。沖

縄トラフは,ユーラシア大陸縁の伸張により形成されたこと

が古くから知られ(Uyeda,1977),また最近の研究により,大

陸のリソスフェアを割って島弧性或いは背弧性の火山活動

が起こっていることが明らかとなっている(Sibuet and Hsu,

1997)。

沖縄トラフ最西端部に当たる台湾東方の S P O T

(Southwestern Part of the Okinawa Trough,トラフ南西端部

から台湾東方にかけての122~123.5°Eの範囲)域について

は,仏国IFREMERと台湾との協力により,1996年に仏国

IFREMERの調査船「ラタラン」によるACT(Active Collision

in Taiwan)航海に於て,詳細な地学調査が行われた(Sibuet

et al., 1998;Shinjo et al., 1999)。この調査航海により,沖縄

トラフ最西端部は,(1)沖縄トラフ南縁付近の島弧性の火山

活動,(2)トラフの背弧性の火山活動,(3)フィリピン海上の

Gagua Ridgeの海溝への衝突と呼応した背弧と交差する方

向の異常な火山活動の3段階の発達を行っていることが示

された。これらの火山活動に伴う山体は大きくなく,相互に

分別可能であることから,詳細な調査によるマグマ構成成分,

形成順位,それらをもとにしたこの海域の広域テクトニクス・

ダイナミクス,発達過程を明らかにすることが可能である。

SPOT海域では,台湾の観測船により1998年春から数回

の調査航海が行われている。このうち,EK500型音響測深

機(38kHz)の記録をもとに,強い熱水噴出を伴う火山性の

海丘が5箇所確認されており,これらのうちの1箇所は背弧

火山と交差する火山列の南部に位置している(李,私信)。

また,これら火山活動域で40箇所以上でCTD観測と底層水

の採取が行われ,これらのデータが海底からの熱水噴出を

示唆している。更に,40箇所以上で海底熱流量観測が行

われ,1000mW/m2を越える値を示す箇所も見つかっている

(許,私信)。

この他,ACT航海でのマルチナロービーム測深調査に

よって,沖縄トラフ西部北側・南側両斜面上に蛇行する海底

谷が発見された。これは,嘗てトラフ底が陸上にあった時に

形成されたものとも見ることが出来る。「ドルフィン3K」による

潜航調査が2000年5月に実施され,海底谷表面の目視観察

と堆積物試料採取が行われ,海底谷の形成のメカニズム,

形成過程が考察されている(木村・他,2001)。

2. Lequios航海の概要「よこすか」・「しんかい6500」によるYK00-06航海Leg2

(Lequios航海)は,以上の諸点を考慮の上,沖縄トラフ西部

に於て次の課題の解決を目指して計画された(図1)。

図1 南西諸島域南西部調査海域図。本調査航海での調査域を□で示す。

Fig. 1 Index map of the study area in the southwestern Ryukyu area. The rectangle sur-

rounded by bold lines indicates the target area of the YK00-06 Lequios cruise.

Page 4: 沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント … · mal activity in the trough area, and (iv) regional tectonics and dynamics of the study

98 JAMSTEC J. Deep Sea Res., 19(2001)

(1)トラフ中軸リフトの形成・発達

沖縄トラフ最西端部のリフトを構成する与那国海底地溝,

八重山海底地溝,宮古海底地溝について,それぞれを横切

るトランセクトを設け,地溝底の変動状況及び火山岩貫入状

況の目視観察を行う。また,海底重力測定,温度・熱流量計

測等の物理計測を行い,その表層地殻構造,地殻内の熱の

移動,熱水変質(もしあれば)を定量的に評価する。以て,

沖縄トラフ最西端部の形成史,リフティングの発達過程を明

らかにする。

(2)トラフ域の火山活動

沖縄トラフ西端部の火山活動としては,トラフ軸に沿った

東西方向の正断層系に伴うものと,トラフ軸に斜交する北

東・南西方向に延びる火山列の2種類が存在するが,これら

の火山の表面の形態を観察するとともに,岩石試料を採取

し,化学成分分析・年代測定を行うことにより,両火山列の

マグマの起源,生成過程を明らかにする。

(3)トラフ域の熱水活動

沖縄トラフ南西部八重山海底地溝内の熱構造及び熱水

循環の形態を解明するため,熱水噴出の起こっている地点

を見つけ出し,その場所で熱流量測定を行う。可能な限り

長期間の計測を行うため,調査行動の最初の方でこれらの

機器を設置し,最後の方で回収する。また以上の他,熱水活

動や断層運動とも極めて関連性の高いガンマ線モニタリング

を潜航中継続して行う。

本行動中,「しんかい6500」による潜航は10回行われた

(潜航番号559~569,但し,沖縄島南西方のVENUS海域で

の1潜航は除く)。本調査航海の概要を表1に,またこれらの

潜航の概要については,表2に示す。

一方,潜航調査終了後の夜間及び潜水船整備日には航走

地球物理観測(海底地形・重力・地磁気調査)を行った。潜

水船整備日には,併せてシングルチャンネル反射法探査を行

なった。航走距離は1,500浬(約3,000km)に及び,沖縄トラフ

西部をほぼカバーする約20,000km2の範囲のマッピングが行

われた。調査範囲は,既にマッピングが行われたSPOT域の

調査範囲(Sibuet et al., 1998)を東に延長する様に計画され

た。SEABEAM2112音響測深機の探査幅はこの海域の水深

では120°を越えるが,探査幅の両端部のデータの質を考慮

し,データ取得時に120°で打切ることとした。広域マッピング

の結果得られる詳細な地形情報は,フィリピン海北西端での

広域応力場とプレート収斂境界背弧側のリフトの発達のメカ

ニズムを解明するための資料として重要である。また,沖縄

トラフ西部での測深調査によって発見された蛇行海底長谷

については,新たな地形データを加えてその分布状況を明ら

かにすることによって,沖縄トラフの形成時期や琉球古陸の

水没時期の解明に資するために活用される。

3. 海底地形図2には,ACT航海及び本調査航海によるデータを結合し

て新しく得られた海底地形図を示す。沖縄トラフ中央地溝

部が,大洋中央海嶺と同様にセグメント化していること,また

特に,調査海域西部・中部・東部の形態の違いを明瞭に示

している。

八重山中央地溝はトラフ内の123°35'Eから124°52'Eに掛

けて存在しているが,これは単純な1本の中央地溝ではなく,

124°15'Eと124°40'E付近に位置するセグメント境界により,計

3個のセグメントに分れている。これらセグメント境界に於て

は,トラフ軸の10km程度の重複が見られる。セグメント境界

付近には東西に伸びた小規模な海丘があり,リフティングに

対応した火山活動の痕であることを示している。しかし,

SPOT域とは異なり,これら火山性の海丘の水平規模が殆ど

のものが1km以下と極端に小さいことを考慮すると,地溝軸

部の海底でのマグマ活動は極めて乏しいことが示される。

この海域で最大の海丘は,中央のセグメント上の25°17'N,

124°25'Eを中心とし,東西に約15km伸びるものである。この

「中央海丘」の頂部は東西に伸びる幅1kmの地溝から成り,

これは明らかにトラフ軸におけるリフティング起源のものであ

る。しかし,地形から見る限り,このセグメント中心部にはマ

グマ活動・火山活動の徴候は見られない。

八重山地溝の東端部に当たる25°15'N,124°52'Eは,所

謂「non-transform offset」を形成している。径約2kmの海丘

群がこのnon-transform offsetのセグメント境界に位置してい

る。この地点で熱水活動が確認されたが,その詳細につい

ては,潜航結果の節で述べる。

20.Jul 21.Jul 22.Jul 23.Jul 24.Jul 25.Jul 26.Jul 27.Jul 28.Jul 29.Jul 30.Jul 31.Jul 1.Aug 2.Aug 3.Aug 4.Aug 5.Aug 6.Aug 7.Aug 8.Aug 9.Aug 10.Aug 11.Aug 12.Aug 13.Aug 14.Aug 15.Aug 16.Aug

Thu Fri Sat Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun Mon Tue Wed

Scientists get on board Departure from Shimizu Port.Transit Transit Transit Transit , Single-channel seismic profiler SHINKAI6500 #599dive (S.K. Hsu) SHINKAI6500 #560dive (J.C.Sibuet) Single-channel seismic profiler(S-2) SHINKAI6500 #561dive (M.Kinoshita) Single-channel seismic profiler(S-3) Single-channel seismic profiler(S-4) SHINKAI6500 #562dive (R.Shinjo) SHINKAI6500 #563dive (T.Matsumoto) SHINKAI6500 #564dive (R.Shinjo) Ishigaki Port, Chandler, Scientists get on/off SHINKAI6500 #565dive (C.S. Lee) Transit to Kagoshima Kagoshima Bay Anchored. kagoshima Bay. kagoshima Bay. Hove up Anchored Kagoshima Bay. Transit SHINKAI6500 #566dive (R.Iwase) SHINKAI6500 #567dive (T.Omori) Maintenance day SHINKAI6500 #568dive (M.Nakamura) SHINKAI6500 #569dive (T.Matsumoto) Naha Port, end of the cruise

Date Note

表1 YK00-06航海行動概要 

Table 1 Final navigation log of the YK00-06 Lequios cruise.

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99JAMSTEC J. Deep Sea Res., 19(2001)

123°30'E付近は,八重山地溝の西端部であると同時に,

与那国地溝の東端部でもある。しかし,今回得られた地形

データによれば,両地溝の間にもう一つ地溝があることが確

認され,この部分で地溝軸が雁行配列していることを示す。

地溝軸が重複している部分の長さは約25kmである。この様

な中央地溝の構造は,沖縄トラフ西部の形成の間にリフティ

ングを起こす場所が急に跳ぶ可能性を示唆している。

本調査海域の東端部では,八重山地溝は直接宮古地溝

に続いているのではなく,既刊の地形図(大島・他,1988;日

本水路協会,1991)によれば両者の間には約40kmのずれが

見られる。今回得られた地形データによれば,宮古海山の

南部に1個の地溝があり,宮古地溝は宮古海山の北から始

まっている。

大きく蛇行した海底谷が,与那国島~石垣島北岸沖の沖

縄トラフの南側斜面上で確認された。与那国島沖のものは,

SPOT域調査(Sibuet et al., 1998)で確認されたものの東側へ

の延長に当たり,石垣沖のものは今回の調査で新たに確認

されたものである。石垣沖のものは長さが15km程度と,この

海域で見つかった蛇行海底谷の中で最も短い。SPOT域の

他のものはトラフ北側・南側ともに長さは約50kmである。海

底谷の下刻の最大のものは,SPOT域のトラフ北側のもので

ある。これらの海底谷の形態は,その蛇行の水平規模を見

るに,明らかに陸上の河川或いは浅海域での水流による浸

蝕を起源とするものであり,このことは本調査海域が沖縄ト

ラフのリフティングによって1000~1500m沈降したことを示す

ものである。

4.「しんかい6500」潜航結果本調査海域での10潜航地点を図3に示す。

4.1. SPOT海域4.1.1. 高熱流量域(1潜航)第559潜航は,これまでの調査の結果確認されている高

熱流量域(李,私信)での熱水活動の捜索を目的として,沖

縄トラフ中央地溝内の24°55.4'N,123°05.9'Eに位置する比

高約300mの海丘を出発点として行われた(図4)。周囲の水

深は約1900mである。本潜航は,海丘の1.8km北北東より,

まずは海丘頂上を目指して航走した。最初の着底時,25cm

Dive No. 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568

Date 24-Jul. 26-Jul. 28-Jul. 31-Jul. 01-Aug. 02-Aug. 04-Aug. 11-Aug. 12-Aug. 14-Aug.

Observer Shu-Kun Hsu Jean-Claude Sibuet Masataka Kinoshita Ryuichi Shinjo Takeshi Matsumoto Ryuichi Shinjo Chao-Shing Lee Ryoichi Iwase Tamotsu Omori Mamoru Nakamura

Dive area SPOT Area SPOT Area SPOT Area Eastern end of the Yaeyama Graben Yaeyama central Graben Yaeyama Graben Southward SPOT Area VENUS Site Eastern end of the Yaeyama Graben Yonaguni Graben Southword

Start 24_56.241'N, 123_06.368'E (1902m) 24_50.509'N, 122_42.103'E (1408m) 24_50.584'N, 122_42.068'E (1409m) 25_14.273'N, 124_52.890'E (1924m) 25_14.849'N, 124_24.669'E (2281m) 25_00.058'N, 124_45.941'E (1991m) 24_50.586'N, 122_42.038'E (1403m) 25_14.275'N, 124_52.890'E (1924m) 24_43.453'N, 122_59.487'E (1623m)

End 24_57.019'N, 123_05.233'E (1918m) 24_51.595'N, 122_42.095'E (1148m) 24_51.100'N, 122_41.985'E (1345m) 25_13.782'N, 124_52.169'E (1653m) 25_15.821'N, 124_24.623'E (2117m) 24_58.572'N, 124_45.689'E (1104m) 24_51.037'N, 122_42.022'E (1338m) 25_13.482'N, 124_52.169'E (1653m) 24_42.851'N, 122_59.521'E (1612m)

表2 YK00-06航海潜航記録 

Table 2 Dive log of the YK00-06 Lequios cruise.

123˚E 124˚E 125˚E

25˚N

26˚N

123˚E 124˚E 125˚E

25˚N

26˚N

図2 調査海域における地形調査結果。EM12Dによる結果(Sibuet,他,1998)と本研究に

於てSEABEAM2112により得られた結果とを組み合わせたもの。

Fig. 2 Bathymetric map of the southwestern Okinawa Trough established by merging the

EM12D data (Sibuet, et al., 1998) and SEABEAM2112 data (this work), both of

which are swath bathymetric survey. Grid spacing is 0.025 minute of arc.

Page 6: 沖縄トラフ西端部における火山・熱水活動と中軸の「セグメント … · mal activity in the trough area, and (iv) regional tectonics and dynamics of the study

100 JAMSTEC J. Deep Sea Res., 19(2001)

長のプローブを用いた温度差測定を行った。測定された熱

流量は0.4K/mであった。しかしながら,活動中の熱水につ

いては,見付けることが出来なかった。潜航中ところどころ

急崖に沿って火山岩の露頭が見られ,計3箇所で石英安山

岩質の火山岩を採取した。

4.1.2. 熱水活動域(3潜航)第560,561,565の3潜航がSPOT域の熱水活動調査に充

てられた(図5)。

第560潜航はSPOT域の熱水活動の捜索に充てられた。

調査海域は,SPOT域のうち,火山地形列の南西端部とし,

特に火山に挟まれた谷に沿った部分とした。熱水活動は堆

積物の上に見出された。谷間に沿っては,約100m間隔で噴

出孔の存在することが確認された。噴出孔の形態は一様で

はなく,(1)高さ3-4cm,径5mm程度のゆらぎが頂部に見られ

る(炭酸塩の)筒状のもの,(2)ゆらぎ,或いは時に泡の噴出

が見られる30cm×20cm程度の白色の不定形のもの,(3)径

3m,高さ12m程度の大型チムニー,(4)高さ10-20m程度の広

がりを持ったマウンドで,熱水性の生物群集で覆われた硫

化物の熱水性堆積物或いは火山岩体から成るものなどが確

認された。山腹部より火山岩試料を採取した。

第561潜航は,その前の潜航結果を受けて,熱水域に座

布団型熱流量測定装置(ZABUTON = Zero-Age Basalt Unit

Thermal ObservatioN",木下・他,2001)を設置することを目的

とした。併せて,設置後の周囲の熱水活動のマッピングも行

われた。ZABUTONは,マーカー17番付近の熱水地点から

約2m離れた地点に設置された。設置点付近では,「しんか

図3 「しんかい6500」潜航位置 

Fig. 3 Dive sites by SHINKAI6500 during the YK00-06 Lequios cruise.

図4 SPOT域高熱流量地点における第559潜航航跡 

Fig. 4 Dive#559 track at the high heat flow site in the SPOT area.

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い6500」装備の熱流量計によって,2箇所で熱流量の測定を

行った。両地点とも,100K/mを超える熱流量が測定された。

この地点での作業の後は,東側斜面のソーナー反応に沿っ

て航走し,これらのソーナー反応が火山岩の露頭或いは活

動を停止した熱水噴出痕であることを確認した。NNW-SSE

方向の谷に沿って2箇所で大規模な熱水マウンドを確認し

た。これらはともに高さ約10mで,表面からは多くのゆらぎが

あり,また夥しい数の熱水性生物の付着が見られた。熱水

のゆらぎの起こっている場所の温度は170°Cであった。熱水

マウンドから採取した試料は天然硫黄を含む硫化物から

成っていた。本熱水域の海底は殆どが堆積物に覆われてい

たが,ところどころに露頭或いは熱水性沈殿物が見られた。

熱水活動域はNNW-SSE方向に走る谷に沿って分布してい

る様子であり,その中でも特に図#の北端部がより活動的で

あった。しかしながら,熱流量は南端部の噴出孔で特に高

い様であり,高温のマグマ溜りが海底直下の不透水層に覆

われていることが推定される。南側の噴出孔付近ではゆらぎ

を伴う白く変色した亀裂が幾筋もジグソー状になっているもの

が確認されたが,その向きはほぼN10W方向であり,谷の向

きに沿っていた。

ZABUTON装置は第565潜航で回収された。この潜航で

は回収作業終了後付近のマッピングを行い,新たに4地点で

活動中のチムニーを確認した(the No.3-6)。本潜航調査域

では概して,北部の方が南部に比べて,(1)活動中のチム

ニーの大きさが大きい(北部が3-10mであるのに対し,南部

では1-2m),(2)熱水の温度が高い(北部が170°Cであるの

に対し,南部では117°C),(3)同時に計測されたガンマ線放

出量が高い(北部が1000cpsであるのに対し,南部では

図5 SPOT域熱水地点における第560,561及び565潜航航跡 

Fig. 5 Dive#560, 561 and 565 tracks at the active hydrothermal site in the SPOT area.

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250cps)など,熱水活動が活発であり(Mound No.2,4,5,6),

このことは沖縄トラフ背弧海盆内の中央地溝に近接してい

るためと考えられる。尚,化学合成生物の分布については

南北差は殆ど見られなかった。

今回新たに存在が確認されたSPOT域熱水活動のビデオ

映像をもとに,海底の状況のルートマップを作成した(図6)。

また,マウンド1及びマウンド2について詳細なモザイク図を

作成した。マウンド1については,高さ4m,頂部はゆらぎと化

学合成生物群集を伴う白色の構造である(図7)。マウンド2

は高さ約10m,西側斜面が急峻であり,斜面のうち他の方位

については緩斜面より形成されている(図8)。頂部にはク

ラックが走り,そのクラックからゆらぎが起こっていることが確

認された。その他,熱水噴出マウンドの周囲にはクラックが

走っていたが,その向きは概ねN10°W方向であった。これ

より,主たる張力軸がほぼ南北方向を向いており,本海域の

正断層の方向と直交していることが示される。

4.2. 沖縄トラフ中央地溝域4.2.1 八重山地溝東端部熱水域の発見第562潜航は,八重山地溝の東端部の25°13.5'N,124°

52.5'E付近の火山地形の場所で実施され,火山岩の採取と

併せて熱水域の捜索を行った。精密海底地形によれば,こ

図6 第560,561及び565潜航によるルートマップ。ガンマ線計測結果を含む。

Fig. 6 Route map of Dive#560, 561 and 565 including gamma ray survey points.

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の場所は琉球弧火山フロントとトラフ中軸リフト性マグマ活

動列とが交差していると見られ,3個の火山性の海丘が確認

されていた(図9)。北東の海丘は中央にカルデラ状のクレー

ターを持つ南北に伸びた形状,西の海丘は円錐台状の形

状,南の海丘は東西に伸びた形状である。本潜航では,前

二者の火山体をカバーする様な航走を行った。潜航中は,

北東側の海丘のカルデラ状地形の急斜面の水深1920-

1856m付近に沿っては,玄武岩質の枕状溶岩が連続的に現

れた。熱水地点では澄んだ熱水のゆらぎが見られた。水深

1850mの地点で,熱水性沈殿物の採取と,熱流量測定を

行った。この海丘の頂部付近の水深1858mの地点と山腹に

当たる水深1897mの地点では,堆積物に覆われていない枕

状溶岩の露頭が見られ,この海丘が極めて最近の火山活動

によって形成されたことを示している。尚,西側の海丘の水

深1655mの地点では,活動を停止したチムニー,及びその

周囲に数多くのカニ類やエビ類が確認された。

この海域はその後,第567潜航と第569潜航で調査を

行った。第567潜航では,同様に北東側の海丘から西側の

海丘に掛けての航走を行い,西側の海丘で活動中の熱水

噴出孔を確認した。更にその海丘の西側斜面についても探

査を行ったが,この海丘に関しては,噴出域は頂部付近に

限定されていることを確認した。これら両海丘の熱水活動

域から,真空吸引式の採取装置を用いて熱水の採取を

行った。

第569潜航は,北東側海丘の600m西の水深2119mの地

点より開始した。開始点付近の底質は,薄く堆積物に覆わ

図7 SPOT域熱水マウンド#1のモザイク写真 

Fig. 7 Photographic mosaic image of Mound#1 at the active hydrothermal site in the SPOT area.

図8 SPOT域熱水マウンド#2のモザイク写真

Fig. 8 Photographic mosaic image of Mound#2 at the active hydrothermal site in the SPOT area.

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れた枕状溶岩であった。この潜航ではまずその東側の厚い

堆積層に覆われた平地に移動し,そこで重力測定を行った。

カルデラ状地形に向かう斜面は概して枕状溶岩の露頭に覆

われており,数箇所で巨礫が見られた。以上のマッピングの

結果を図10に示す。

4.2.2. 八重山中央地溝八重山中央地溝内の中央部には,東西に伸びる海丘があ

り,第563潜航は,その海丘の南側の麓から山頂に掛けての

マッピングに充てられた(図11)。最初の着底点は,海丘の麓

から南に約800m離れた地点であったが,この地点は,潜航

前のシングルチャンネル反射法探査結果(図12)により予想さ

れた様に,軟らかい堆積物に厚く覆われていた。この地点か

ら海丘の麓に近付くにつれて,水深は約10m深くなっていた

(図13)。潜水船の航跡に沿って殆どの箇所では,泥の海底

に生物の這い痕などが顕著に見られた(所謂bioturbationが

卓越していた)。海丘の斜面上の所々には,薄く堆積物に覆

われた露頭が見られた。頂部平坦面の南側には堆積物に

覆われた東西方向に走る起伏が見られ,これが沖縄トラフの

リフティングに伴い発生した正断層であると見られる(図13)。

斜面下部の水深2291~2202m辺りは,厚い堆積物に覆われ

た急斜面と僅かに堆積物に覆われた露頭とが交互に現れ

た。1箇所だけ,比高1m程度の起伏のある場所が見られた。

上部の水深2202~2117mの辺りでは,比高数mの地形の落

込みがあった。この地形の落込みは,泥に覆われていたもの

の,東西方向を示していることから,明らかに沖縄トラフのリ

フティングに伴うものと見られる。潜航中に得られた岩石試料

が全て玄武岩であったことから,この海丘が明らかに現在の

八重山中央地溝の中央部のリフティングに伴う火山活動によ

るものと推定される。しかし,今回の潜水船による目視観察

結果によれば,現在リフティングが起こっている,或いは最近

リフティングが起きたと云う証拠は見られない。

図9 東部熱水地点における第562,567,569潜航航跡 

Fig. 9 Dive#562, 567 and 569 tracks at the eastern active hydrothermal site.

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ろに現れていたが,殆どは厚い堆積物に覆われていた。底

部は緑色に変質した安山岩であり,これは石垣島・西表島

の陸上に現れる野底層(始新世,~45Ma)に相当する。潜

航コースの中程の辺りは細粒の砂岩であり,これは八重山層

群(中新世)に相当する。最上部は灰色の泥岩から成り,島

尻層(鮮新世)に相当する。これらの結果はほぼ同じ場所を

調査したシングルチャンネル反射法探査の記録とよく一致し

ている。反射法記録によれば,正断層が上部(島尻層)を断

ち切っており,リフティングが島尻層堆積後に起こったことを

示している。

5. まとめ本調査航海の成果の概要は以下の通りである。

(1)沖縄トラフ南西部で,2箇所の熱水活動地点を発見し

た。第1の地点はSPOT海域にあり,熱流量は1,000mW/m2

に及ぶ。第2の地点は宮古島北方のトラフ軸中央地溝のセ

グメント境界部に当たる。ともに,熱水チムニー,化学合成生

物群集が見られた。熱水の最高温度は,前者が170°C,後

者が151°Cであった。

(2)西部熱水域で約1週間の温度・熱流量観測を実施し,

潮汐に呼応した変化を確認した。

(3)本調査海域で,石英安山岩質(=酸性岩:二酸化珪

素成分多し)火山と,玄武岩質(=塩基性岩:二酸化珪素成

分少なし)火山とが隣接して分布している(所謂bimodalなマ

グマ組成)ことを確認した。

(4)SEABEAM2112による精密地形調査の結果,沖縄ト

ラフ中央地溝が一列のものではなく,分節(セグメント)化して

いることが明らかとなった。

(5)沖縄トラフ中軸に於て,音波探査による海底直下表

層構造から予想されていた断層痕の発達が目視観察により

直接確認された。これは,トラフがリフティングにより形成さ

れたことの直接の証拠となる。

(6)宮古列島~八重山列島北方沖のトラフ底に,蛇行海

底谷の存在することが確認された。東海陸棚及び与那国島

北方沖で既に見付かっていた同様の蛇行海底谷と併せて,

沖縄トラフ域が嘗て陸地或いは浅海であることを証明するも

のである。

(7)先島域の始新世~更新世に掛けて(約4000万年以

降)の地質層序を水納島北方の沖縄トラフ斜面で確認した。

図14 与那国地溝における第568潜航航跡 

Fig. 14 Dive#568 track at the Yonaguni Graben.

図15 沖縄トラフ南斜面における第564潜航航跡 

Fig. 15 Dive#564 track at the southern slope of

the Okinawa Trough.

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謝辞本調査研究を進めるに当たり,「しんかい6500」運航チー

ム,母船「よこすか」乗組員各位にひとらたならぬ世話に

なったことを,著者一同深く感謝する次第である。また本研

究は,科学技術庁より予算配分を受け,海洋科学技術セン

ターの実施するプロジェクト研究「海洋底ダイナミクスの研究」

の一環として実施されたことを付記し,実施の機会を与えて

頂いた関係各位に謝意を表する。

文献1)木村政昭・松本 剛・新城竜一・中村 衛・本山 功・町

山栄章・當山元進・八木秀憲,沖縄トラフ南西部で確認

された蛇行チャンネルとその意義,JAMSTEC深海研究,

18,103-120,2001.

2)木下正高・館川恵子・松本 剛,温度長期計測による海

底熱水活動の潮汐応答,月刊地球23,No.11,印刷中

3)日本水路協会,日本南方海域海底地形図,1991.大島章

一・高梨政雄・加藤 茂・内田摩利夫・岡崎 勇・春日

茂・川尻智敏・金子康江・小川正泰・河合晃司・瀬田英

憲・加藤幸弘,沖縄トラフ及び南西諸島周辺海域の地

質・地球物理学的調査結果.水路部研究報告,24,19-

43,1988.

4)Sibuet, J.-C. and S.-K. Hsu, Geodynamics of the Taiwan

arc-arc collision, Tectonophysics, 274, 221-251, 1997.

5)Sibuet, J.-C., B. Deffontaines, S.-K. Hsu, N. Thareau, J.-P.

Le Formal, C.-S. Liu and ACT Party, Okinawa trough

backarc basin : Early tectonic and magmatic evolution, J.

Geophys. Res., 103, 30,245-30,267, 1998.

6)Shinjo, R., S.-L. Chung, Y. Kato and M. Kimura,

Geochemical and Sr-Nd isotopic characteristics of volcanic

rocks from the Okinawa Trough and Ryukyu Arc :

Implications for the evolution of a young, intracontinental

back arc basin, J. Geophys. Res., 104, 10,591-10,608,

1999.

7)Uyeda, S., Some basic problems in trench-arc-back-arc-

system, Island Arcs, Deep Sea Trenches and Back-Arc

Basins, Ed. M. Talwani and W.C. Pitman, Washington

D.C., AGU, 1 : 1-14, 1977.

(原稿受理:平成13年8月13日)