牛にイソプロチオラン製剤を飼料添加投与後の残留確認試験 ......a feed...
TRANSCRIPT
34
〔技術資料〕
牛にイソプロチオラン製剤を飼料添加投与後の残留確認試験
小池(浜本)好子、臼井 優、峯戸松勝秀、1 1 1下山 晃 、園部研一 、飯塚智美
(平成 年1月 日受付、平成 年4月7日受理)21 30 21
〔 〕TECHNICALREPORT
A Residue Determination Test of Isoprothiolane-added Cattle Feed Additive
Koko Koike-Hamamoto, Masaru Usui, Katsuhide Minetomatsu,1 1 1Akira Shimoyama , Kenichi Sonobe , Tomomi Iizuka
National Veterinary Assay Laboratory, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries1-15-1 Tokura, Kokubunji, Tokyo 185-8511, Japan
( )Received: 30th January 2009; Accepted: 18th June 2009
A feed additive which contained isoprothiolane as an active ingredient was added to a cattle feed at the highestapproved level and was continuously administered to three cows for four weeks. After a 14 day withdrawal period,the cows were sacrificed and quantitative analyses of isoprothiolane concentration in fat, the liver and smallintestines were carried out by GC-MS/MS.
イソプロチオランを有効成分とする飼料添加剤を、承認された用法及び用量の最高用
量となるように飼料に添加し、3頭の牛に4週間連続投与した。これらの牛を使用禁止期
間( 日間)経過後に屠殺採材し、脂肪、肝臓及び小腸の中のイソプロチオラン濃度を14質量分析装置付ガスクロマトグラフィー( )を用いて測定した。GC/MS/MS
緒言
この試験の目的は、イソプロチオランを
有効成分とする飼料添加剤の使用基準の妥
当性を確認することである。暫定残留基準
値(暫定MRL)が設定されている成分で
あるが、当該成分の使用基準作成時には、
イソプロチオランの牛への強制経口投与で
の残留試験の結果しかなかったため、本試
験を実施した。
本試験では、3頭の牛にイソプロチオラ
(財)日本冷凍食品検査協会1
Japan Frozen Foods Inspection Corporation
ンを有効成分とする飼料添加剤を、使用基
準の用法及び用量の最高用量となるように
飼料に添加し、承認されている最長投与期
間である4週間の連続投与を行った。投与
終 了 か ら 使 用 禁 止 期 間 ( 日 間 ) 経 過 後14にこれらの牛を屠殺採材し、臓器・組織中
のイソプロチオラン濃度を質量分析装置付
ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( ) をGC/MS/MS用いて測定した。臓器・組織としては、牛
への強制経口投与による残留試験のデータ
からイソプロチオランが最も多く残留する
ことが想定される肝臓及び脂肪の他、その
他の内臓として小腸を選択した。
Ann. Rep. Natl. Vet. Assay Lab., No.45, 34-40 (2008)
35
実験材料及び方法
被検物質は、製剤1g中イソプロチオ1
ランとして 含 有する顆粒剤である250mgフジックス(日本農薬(株)製、製造番
号: ) を用いた。B6512
試験方法2
(1)供試動物
( 、ホルスタイン種の牛 雄2頭雌1頭
導入時体重 ~ k )を室温で飼育73 120 gした( 日 間 。馴化期間中は、濃厚飼20 )
料 及 び ヘ イ キ ュ ー ブ を 2 回 日 給 餌 し 、/。 、自由飲水とした 休薬期間中においては
馴化期間と同様に飼育した。コントロー
ル(無投薬の臓器・組織)は、動物医薬
品検査所において投与群と同様に飼育し
た牛から別途採材した。
(2)投薬量及び投薬方法
薬 剤 は 、 イ ソ プ ロ チ オ ラ ン と し て
と な る よ う に 濃 厚 飼 料 に 混 合50mg/kgBWし、朝9時に投薬した。牛が薬剤を添加
した濃厚飼料を全て食べ終えた後、ヘイ
キューブを与えた。水は、自由飲水とし
。 、 、た 投薬時は 1週間毎に体重を測定し
製剤の投与量を補正した。このような飼
料添加による投薬を、4週間連続で行っ
た。
(3)分析用試料の採材
休 薬 日 目 に 屠 殺 し 、 肝 臓 、 脂 肪14及び小腸(牛海綿状脳症の危険部位を除
く食用部分)を採材した。採材した臓器
g 80・組織は 5 ずつにわけ 分析まで-、 、
℃で凍結保存した。
試料中のイソプロチオランの残留分析3
(1)牛の各臓器・組織中のイソプロチオ
ラン濃度の測定は、平成 年1月 日17 24付 け 食 安 発 第 号 厚 生 労 働 省 医 薬0124001食 品 局 食 品 安 全 部 長 通 知 の 一 斉 試 験 法
(畜水産物)により行った。具体的な方
法を、スキーム1に示した。
この分析方法で使用したゲル浸透ク
ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( 、 固 相 抽 出GPC)( ) 及 び の 条 件 等 は 、 下PSA GC/MS/MS記に示した。
① 条件GPC機種名 : ( サイエンス製)GL-Science G-Prep-8150 GL
カラム: × ( 製)にGPC CLNpak EV-2000, 20mm i.d. 300mm shodex× ( 製)を接続した物。CLNpak EV-G, 20mm i.d. 100mm shodex
移動相 :アセトン:シクロヘキサン( )1:45mL/min流速 :
カラム温度: ℃40UV254nm検出波長 :5mL注入量 :
の分取範囲は、 とした。GPC 16.01-23.4min
② カラムPSA( 製)Bond elute PSA 500mg Varian
③ 条件GC/MS/MS装置 :タンデム型 ( 製)GC/MS/MS Varian
ガスクロマトグラフ( 型)Cp-3800質量分析計( )300MS
条件GCカラム : ( × 、 膜厚 μ 、 製)VF-5MS 30m 0.25mm 0.25 m Varianカラム温度:注入後 分間 ℃に保ち、その後 ℃まで ℃ で昇温し、1 50 125 25 /min
次いで ℃まで ℃ で昇温し、 ℃を 分間保持する。300 10 /min 300 10キャリアガス:高純度ヘリウム
1.2mL/minキャリアガス流量:注入口温度: ℃250注入方式 :スプリットレス( )40psi,1mL
1 L注入量 : μ
条件MS/MSEIイオン化モード:
イオン化エネルギー :( )70eVトランスファーライン温度: ℃300イオン源温度 : ℃250
25Vコリジョンエネルギー :コリジョンガス :アルゴン
2m torrコリジョンガス圧 :定量イオン :プロダクトイオン z85.0m/
(プレカーサーイオン: )162.0m/z
45 34-40 (2008)動薬検年報 第 号
食用動物における動物用抗菌薬の使用状況の調査結果について
36
Ann. Rep. Natl. Vet. Assay Lab., No.45, 34-40 (2008)
小池好子、臼井優、峯戸松勝秀、下山晃、園部研一、飯塚智美
37
45 34-40 (2008)動薬検年報 第 号
食用動物における動物用抗菌薬の使用状況の調査結果について
(2)検量線
イソプロチオラン標準品(和光純薬
、 、 )工業製 残留農薬試験用 純度: %99.0を 量り、アセトンで溶解し、標準20.0mg
原 液 ( ) を 作 成 し た 。 こ の 標 準200mg/L原液を ~ n の 濃度となるよう5 100 g/mLにアセトン:ヘキサン(1:1)で希釈
した標準溶液を用いて、イソプロチオラ
ンのピーク面積を測定し検量線を求めた
結果、イソプロチオランの検量線は良好
。( 、 )な直線性を示した 以 上 図1r=0.995
(3)添加回収率及び検出限界
牛の各コントロールにイソプロチオ
ランの暫定 相当の と なるよMRL 0.02ppmう に 、 ( )の 標 準 原 液 ( ) を ア セ1 200mg/Lト ン : ヘ キ サ ン ( 1 : 1 ) で の0.1mg/L
濃度に希釈し、試料5 にこの希釈液1gを 添 加 し て 、 添 加 回 収 率 を 求 め た 。mL
Table1 Recovery of Isoprotiolane from bovine tissuesSpike level Recovery(%) CV
(0.02ppm) 1 2 3 Mean (%)
Liver 84.0 98.1 88.4 90.2 8.0
Fat 96.0 99.9 102.1 99.3 3.1
Intestines 89.0 97.4 96.7 94.4 4.9
イソプロチオラン標準溶液、コントロール、添
加回収及び検体の各クロマトグラムを図2~4に
示す。イソプロチオランの保持時間は、約 分で16あった。添加回収率は、全ての臓器・組織で平均
以上であり、変動係数は 以下であった。90% 10%これらの結果は、残留に関する試験ガイドライン
12(動物用医薬品関係事務の取扱について、平成
年3月 日、 農林水産省畜産局衛生課薬事31 12-33室長通知)を満足していた。
イソプロチオランの検出限界(S/N=3)及
び定量限界(S/N= )は、肝臓及び小腸でそ10れぞれ g及び g、脂肪でそれぞれ0.85ng/ 2.8ng/
及び gであった。肝臓及び小腸の定1.7ng/g 5.7ng/量限界は、暫定 ( )の1/7以下であMRL 20ng/gり、脂肪の定量限界は1/3以下であったことか
ら、この残留分析法の感度は十分であると考えら
れた。
結果
1 供試動物
(1)試験期間中、投薬期間以外の休日を除く毎
日一般状態を観察した。その結果、異常は観察
されなかった。
(2)導入時、投薬時、投薬後及び屠殺時に体重
を測定した。その結果を表1に示した。牛の平
均の体重増加は、投薬期間中は 日、休薬0.6kg/期間中は k 日であった。1.2 g/
38
Ann. Rep. Natl. Vet. Assay Lab., No.45, 34-40 (2008)
小池好子、臼井優、峯戸松勝秀、下山晃、園部研一、飯塚智美
Table2 Body weights of the three cattle
Body weight at each time point(kg)
Cattle No. Induction Pre-administration Post-administration Pre-sacrifice
120 124 142 1531
73 83 100 1152
95 108 123 1423
96 105 122 137Mean
23.5 20.7 21.0 19.6SD
39
45 34-40 (2008)動薬検年報 第 号
食用動物における動物用抗菌薬の使用状況の調査結果について
40
Ann. Rep. Natl. Vet. Assay Lab., No.45, 34-40 (2008)
小池好子、臼井優、峯戸松勝秀、下山晃、園部研一、飯塚智美
2 試料中のイソプロチオランの残留分析
(1)試料分析結果
牛の各臓器・組織におけるイソプロチオラ
ン濃度の分析結果を表3に示した。イソプロチ
オランは肝臓で5~9 、脂肪で検出限界付ppb近の量が検出されたが、小腸では検出限界以下
であり、全て暫定 以下であった。MRL
ND Not detectedTable3 Residue levels of Isoprotiolene in each tissue * :
(A) Liver (B) Fat
Cattle No. Residue level Cattle No. Residue level
(ppm) (ppm)
1 0.005 1 (0.002)
2 0.004 2 (0.002)
3 0.009 3 (0.002)
Mean±SD 0.006±0.003 Mean±SD (0.002)
(C) Intestines
Cattle No. Residue level
(ppm)
1 ND
2 ND
3 ND
Mean±SD ND
まとめ
牛にイソプロチオランを有効成分とする飼料添
加剤を使用基準の用法及び用量の最高用量
50mg/kg/ 14( 日)で4週間投与し、使用禁止期間(
日間)経過後に屠殺採材し、肝臓、脂肪及び小腸
のイソプロチオランを 法で定量した。GC/MS/MSその結果、すべての臓器・組織で、イソプロチオ
ランは暫定 以下であった。MRLこの結果より、イソプロチオランを有効成分と
。する飼料添加剤の使用基準の妥当性が確認された
引用文献
1)厚生労働省: 食品に残留する農薬、飼料添加「
物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法
について (平成 年1月 日 付け食安発第」 17 24号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通0124001
知)別添