岡田安弘(kek/総合研究大学院大学) 高エネル...
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岡田安弘(KEK/総合研究大学院大学)
高エネルギー加速器科学セミナー
2011年4月19日 KEK
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内容 現代の素粒子像
素粒子の対称性とヒッグス機構
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(1)現代の素粒子像 自然界には4つの基本的な力がある。二つは古い力(重力と電磁力)で後の二つの新しい力(強い力と弱い力)。このうち重力以外の3つの力はハドロンの奥深くでは本質的な違いはない。
基本となる考え方(量子場の理論)
力は粒子が運ぶ
結合定数は走る
まだ見つかっていない力や粒子があるはず。
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素粒子物理は限界に挑む
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104m=10 km1m
10-4m=0.1mm
われわれが目で認識できる範囲の距離は8桁ぐらいにわたっている。
KEK KEKB リング 一周約3km
距離の限界
1m10-4m 104m10-12m10-20m10-28m10-36m 1012m 1020m 1028m
原子
原子核
大統一スケール
太陽系
銀河系
宇宙の見えている範囲
地球の大きさ
コライダー実験のフロンティア
プランクの長さ
現在自然科学で扱っているスケール
Maxell 方程式
Einstein方程式
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距離の限界=エネルギーの限界
量子力学によるとミクロな世界では粒子は波の性質も示す。
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高いエネルギーの粒子 短い波長の波
~陽子の質量 ~陽子の半径
小さな距離の世界を調べるためには、高いエネルギーの粒子をぶつける必要がある。
時間の限界=宇宙初期
• 宇宙は約137億年前に高温状態から始まり、膨張とともに冷えてきた。その名残が約2.7度Kの宇宙背景輻射として発見された。
「距離」 「エネルギー」 「温度」 「時間」 の関係
sec10K10
1TeVGeV10cm10
1 21 6
31 6
tT
Ed
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時間
温度
ビッグバン
インフレーション
良く分からない
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現代の素粒子像=標準模型
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物質の基本粒子3世代12種類のクォークとレプトン
基本的な力 4種類強い力弱い力電磁気力重力
力を伝える素粒子が存在する(ゲージ粒子)
これだけでは不十分
ヒッグス粒子が存在するはず
粒子 反粒子
どのようにしてこの描像に到達したか:強い力
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中性子の発見(1932)=>核力の導入原子核は陽子と中性子でできている。それらをクーロン反発力に抗してくっつけているには別の力が必要。
ラザフォード散乱(1911年)
原子核の発見原子の中心には小さな正電荷を持った核がある。
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p 中間子の発見
湯川中間子の導入
核力は中間子という粒子の交換によって生じる。力の及ぶ領域は粒子の質量の反比例する。 (1934年)
100MeV(=0.1 GeV)程度の質量の粒子があるはず。
力の到達距離 ~ 1/(湯川中間子の質量)
陽子、中性子
p
陽子、中性子
時間の進む方向
場と粒子湯川は核力を説明するために新しい場の存在を仮定した。場があればそれに対応した粒子が存在する(量子力学)場の質量項が力の及ぼす範囲を表し、同時に対応する粒子の質量を表す。
平面波
運動量 p の相対論的粒子を表す
球対称解
核力ポテンシャル
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強い力の理論はこれで終わりではなかった。
様々なハドロンの発見。ストレンジネスの量子数の導入。様々な中間子やバリオンが発見され、もはや陽子、中性子、π中間子などは最も基本的な粒子とは考えられなくなった。
1950-60年代
ハドロンのスペクトラム=> strangeness, SU(3) 対称性
ゲルマン(1969年ノーベル賞)
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PDG 2010現在の理解 Meson
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Baryon
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クォーク、パートン模型ハドロンはクォークからできている。クォークをハドロンに閉じ込めている機構は何か?
電子
光子
1960年代終わりから
meson クォーク―反クォーク
baryon 3つのクォーク
QCD(量子色力学)
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クォークの閉じ込めと短距離での力の振る舞いを両方説明する強い力の理論
数学的には電磁気学の拡張
量子電磁気学(QED)
Maxwell 方程式の相対論形式
F0i: 電場Fij: 磁場
電子
光子
電荷をもった粒子が光の放出や吸収の源となる。(電磁相互作用)
QCDカラーの自由度を導入
(U(1) からSU(3) への拡張)
運動方程式
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(a=1-8)
クォーク
グルーオン
グルーオン自体がグーオン吸収、放出の源になる。
QCDはQEDと数学的な形式は似ているけれども、物理的な効果には大きな違いが出る。
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漸近的自由性
クォーク間に働く力は距離によって変わる。近距離(高エネルギー)になるほど力は弱くなる。逆に長距離では力は強くなり、クォークはハドロンの中に閉じ込められる。
nf :クォークの種類
Gross-Wilczek-Politzer (1973年)
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電子・陽電子衝突 クォーク
グルーオン
反クォーク
強い力の結合常数のエネルギー依存性
どのようにしてこの描像に到達したか:弱い力
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中性子の発見=>フェルミ理論(1934年)
b線の発見弱い相互作用は19世紀の終わりに元素の変換として発見される。
b 線 = 原子核からの電子線
原子核中の中性子が陽子と電子およびニュートリノに崩壊する。
W ボソンの交換
弱い力も粒子の交換で生じる。
ただし、交換される粒子の質量は湯川中間子の約500倍重い。
弱い力が弱く働くのは、力の到達距離が短いため。
中性子 陽子
W粒子電子
ニュートリノ
d u
u u
d d
弱い力 到達範囲が短い重い粒子によって媒介される
弱い力を記述する理論があるか?
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2つの予言
(1)ゲージ粒子は4種類ある光子、Wボソン、Zボソン(新しい中性粒子)
(2)ヒッグス場の存在素粒子はヒッグス場との相互作用により質量を持つ。その証拠として、ヒッグス粒子が存在するはず。
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電弱理論
弱い力と電磁力を同じ枠組みで扱う統一理論。1960年代に S.Glashow, S.Weinberg, A.Salam により提唱され、1970年代の初めにG. ‘t Hooft, M.Veltman により理論的に正当化されることが示された。自発的対称性の破れという概念に基づいている。QCD と電弱理論をあわせて素粒子標準模型という。
標準模型の実験的検証
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quark lepton ゲージ原理 ヒッグス機構
標準模型の提案
u,d,s e,m,n photon
charm(SPEAR,AGS)
t (SPEAR)
1970
1980
1990
2000
bottom(FNAL)
gluon (PETRA)
top (TEVATRON)
gluon-coupling(TRISTAN)
gauge-interaction(SLC, LEP)
CPの破れ関する小林 益川 機構(KEKB, PEP-II)
(質量生成機構)
実験的には未検証
W, Z bosons
(CERN)
(2)素粒子の対称性とヒッグス機構対称性と保存則は物理系で重要な役割を果たす。
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d
u
We
時間並進対称性 エネルギー保存則空間並進対称性 運動量保存則
電荷の保存則やバリオン数の保存則も素粒子の相互作用を表すラグランジアンあるいはハミルトニアンの持つ対称性から導き出すことができる。
ed=-1/3 eu=2/3
ee=-1
光子電子
陽電子
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正確な対称性と近似的な対称性
電荷の保存のような正確な対称性でなくても、近似的な対称性も役に立つ。
SU(3)フレーバー対称性
up/down/strange quark 間の近似的な対称性
クォーク・反クォーク対でできている中間子の質量 (MeV)
自発的対称性の破れ 物理法則は対称性を持っている場合でも真空が対
称でない場合がある。このとき対称性の帰結として特徴的な効果が現れる。 (隠れた対称性) このような状況を自発的な対称性の破れという。
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2重井戸ポテンシャルを持った場の理論。
真空
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宇宙全体としては真空状態は2つある。縮退した真空の間の遷移確率はゼロ。(一体問題の量子力学とは違う。)
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連続的な対称性の場合
f(x) :複素数の場
連続して縮退した真空がある。
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Nambu-Goldstone ボソン
ひとつの真空状態 真空のまわりの揺らぎの伝播
縮退した真空の方向があるために、真空のまわりの揺らぎを引き起こすのに小さなエネルギーしか要らない。=> 質量ゼロ (スピンもゼロ)の粒子が出現する。
これを 南部・ゴールドストンボソンという。
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南部陽一郎はπ中間子がほかの粒子(ρ中間子など)に比べて特に軽いのは、強い相互作用の真空の自発的な対称性の破れのためであると主張した。 (1961年ごろ)
現在ではこのことはQCDの重要な性質として確立している。
素粒子の世界の法則を決めるには、真空の構造が重要であることを明らかにした。
質量(MeV)
ヒッグス機構ゲージ理論の枠内で自発的な対称性の破れを引き起こすと、特別なことが起きる。
もともと質量ゼロのゲージ粒子と南部・ゴールドストンボソンが組み合わさって、質量を持ったゲージ粒子が出現する。これをヒッグス機構という。
(P.Higgs, 1964)
この方法が弱い力を媒介するW粒子、Z粒子に質量を与える唯一の理論的に正当なやり方。
(G. ‘tHooft, 1971)
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W W
vv
W W
ff
f=v
基本的な相互作用 W 粒子の質量
vv
v v
v vv
v
v
v
v
v
v
v
v
v
v
vv
v
W
W
W 粒子は背景に溜まっているヒッグス場の中を進むときヒッグス場との相互作用により速度が光速より遅くなる。 W粒子が質量を持つことになる。
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数式では
複素数の場と結合させると右辺に余分な項が加わる。
Maxwell 方程式
f=v とおくと最後の項はゲージ粒子の質量項になる。
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素粒子標準模型では
W粒子、Z 粒子クォーク、レプトン
ヒッグス機構によって質量を生じる。
光子グルーオン
ヒッグス場と直接には相互作用をしないため質量は生じない。
これらの素粒子の質量は、ヒッグス場との結合力が大きいほど重くなる。
ヒッグス機構による質量生成の特徴
ほんとうにヒッグス場なんてあるのだろうか。それを確かめる方法。
ヒッグス粒子を生成する。
SU(2) X U(1) -> U(1)em ゲージ場に吸収されるNGボソンは3つ
ヒッグス粒子 ヒッグス場の真空からの揺らぎに対応する粒子。
真空にエネルギーを集中させてやれば励起されるはず。(コライダー実験でのヒッグス粒子の生成)
ヒッグス粒子がいくつあるか、その質量はいくらかは、実はよくわかっていない。最も簡単な模型の場合は中性のヒッグス粒子がひとつだけ存在するはず。
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ヒッグス粒子