再生医療のための高分子足場材料の開発ナノバイオ材料によ...

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再生医療のための高分子足場材料の開発 氷を利用することによって、表面開孔性と連通性に富んだ空孔、さらにマイクロパターン構造を有する高分子 多孔質足場材料を開発した。また、細胞成長因子やデキサメタゾンなどと複合化した複合足場材料を開発した。 これらの高分子足場材料は皮膚や軟骨、骨、筋肉などの組織再生及び疾患治療に応用可能である。 Keyword :足場材料、生体材料、生体模倣材料、複合材料、生体組織再生、がん治療 バイオ機能分野 生体組織再生材料グループ 国平 大きな生体組織を再生するために、細胞の足場となる材料が必要。 細胞の増殖や分化などの機能を制御する材料技術は不可欠。 生体内の微小環境を模倣する生体親和性材料の設計と開発は重要。 足場材料の多孔質構造及び複合構造を制御し、幹細胞などの細胞の機能への影響を調べる。 生体組織を効率よく再生するための高分子足場材料を作製し、その効果を確かめる。 がん細胞の死滅効果と組織再生効果を兼ね備える複合足場材料を開発し、がん治療に応用する。 Acta Biomaterialia. 67, 341-353 (2018). Tissue Engineering, Part C: Methods, 23, 367-376 (2017). Journal of Materials Chemistry B, 5, 245-253 (2017). 生体組織再生の促進効果 幹細胞の分化制御 がん細胞の殺傷効果 病態モデル組織の再構築 再生医療用の足場材料 手術支持材と創傷被覆材 がん治療用材料 病態モデル組織の再構築用材料 氷鋳型で作製したマイクロ溝 を有する足場材料 デキサメタゾンを導入した コラーゲン複合足場材料 再生した骨組織 200 µm 高分子多孔質材料の空孔にナノ粒子(磁性酸化鉄ナノ粒子や金ナノ粒子など)を導入し、磁場や光などの 外部刺激でがん細胞を死滅させる複合多孔質材料を開発した。これらの複合多孔質材料はがん治療と組織 再生に応用可能である。 空孔表面の拡大像 ゼラチンと磁性 ナノ粒子との複 化多孔質材料 [email protected] | http://www.nims.go.jp/research/group/tissue-regeneration-materials/ Photo 91

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Page 1: 再生医療のための高分子足場材料の開発ナノバイオ材料によ …ナノバイオ材料による細胞制御と生体精密計測 細胞膜界面の分子反応の例として、免疫細胞

ナノバイオ材料による細胞制御と生体精密計測

細胞膜界面の分子反応の例として、免疫細胞の活性化(右上図)に関わる因子を人工的に細胞外の化学システムとして再構成。細胞膜界面における分子反応と組織構造化をイメージングにより計測するシステムを構築した。

細胞の主要機能を担う細胞質の区画へ、外部から物質を届けることは通常多くの制約がある。我々は細胞外環境の制御により、サイズ材質に依らず金属無機ナノ粒子を細胞質へ導入することに成功した(右下図)。また細胞膜への高分子導入法も開発した。

細胞と外部表面(材料や他の細胞)との結合を流路上で光学的にリアルタイム計測する手法を開発し、材料評価に活用している。

Keywords: 細胞膜 免疫 分子認識 生命情報 界面 イメージング バイオフォトニクス

バイオ機能分野 ナノメディシングループ

貝塚 芳久[email protected] | https://samurai.nims.go.jp/profiles/kaizuka_yoshihisa

ナノスケール材料は分子・細胞レベルで生体を精密に制御できるポテンシャルがあるが、有用な

材料設計のためには、生体との界面の制御などの複合的な課題が存在する

材料と細胞の相互作用を含む複合的な生体システムの挙動を評価する手法は限定されるため、

新しい計測法の開発が必要である

細胞の化学システムに取り込まれ新しい生命機能を創る材料(各種ナノ粒子、ポリマー)を開発

細胞・材料の界面の分子反応をモデル化して計測する実験手法の開発

細胞と外部表面(材料、他の細胞を含む)との結合を計測する手法の開発

・Kaizuka, Ura, Lyu, Chao, Henzie, and Nakao.. Langmuir (2016)

・Ushiyama, Ono, Kataoka, taguchi, and Kaizuka. Langmuir (2015)

・Furlan, Minowa, Hanagata, Kataoka, and Kaizuka. J. Biol. Chem (2014)

細胞界面(細胞膜)の分子反応の計測系を構築

細胞質・細胞膜への物質導入法を開発

細胞と外部表面との結合計測法を開発

細胞質内への分子導入条件の最適化

細胞膜結合分子による界面制御法の開発

10 µm

単⼀細胞(⽩線)の細胞質内に導⼊された⾦ナノ粒⼦

10 µm

単⼀免疫細胞(⽩線)の細胞膜での分⼦反応(リン酸化)の進⾏(緑⾊蛍光ラベル)

再生医療のための高分子足場材料の開発

氷を利用することによって、表面開孔性と連通性に富んだ空孔、さらにマイクロパターン構造を有する高分子多孔質足場材料を開発した。また、細胞成長因子やデキサメタゾンなどと複合化した複合足場材料を開発した。これらの高分子足場材料は皮膚や軟骨、骨、筋肉などの組織再生及び疾患治療に応用可能である。

Keyword :足場材料、生体材料、生体模倣材料、複合材料、生体組織再生、がん治療

バイオ機能分野 生体組織再生材料グループ

陳 国平

大きな生体組織を再生するために、細胞の足場となる材料が必要。

細胞の増殖や分化などの機能を制御する材料技術は不可欠。

生体内の微小環境を模倣する生体親和性材料の設計と開発は重要。

足場材料の多孔質構造及び複合構造を制御し、幹細胞などの細胞の機能への影響を調べる。

生体組織を効率よく再生するための高分子足場材料を作製し、その効果を確かめる。

がん細胞の死滅効果と組織再生効果を兼ね備える複合足場材料を開発し、がん治療に応用する。

・Acta Biomaterialia. 67, 341-353 (2018).

・Tissue Engineering, Part C: Methods, 23, 367-376 (2017).

・Journal of Materials Chemistry B, 5, 245-253 (2017).

生体組織再生の促進効果

幹細胞の分化制御

がん細胞の殺傷効果

病態モデル組織の再構築

再生医療用の足場材料

手術支持材と創傷被覆材

がん治療用材料

病態モデル組織の再構築用材料

氷鋳型で作製したマイクロ溝を有する足場材料

デキサメタゾンを導入したコラーゲン複合足場材料

再生した骨組織

200 µm

高分子多孔質材料の空孔にナノ粒子(磁性酸化鉄ナノ粒子や金ナノ粒子など)を導入し、磁場や光などの外部刺激でがん細胞を死滅させる複合多孔質材料を開発した。これらの複合多孔質材料はがん治療と組織再生に応用可能である。

空孔表面の拡大像

ゼラチンと磁性ナノ粒子との複化多孔質材料

[email protected] | http://www.nims.go.jp/research/group/tissue-regeneration-materials/

Photo

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機能性材料