松永登喜雄広報みね 2009年(平成21年) 11月1日 ⑧ ⑨ 広報みね...

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Page 1: 松永登喜雄広報みね 2009年(平成21年) 11月1日 ⑧ ⑨ 広報みね 2009年(平成21年) 11月1日 Title No39_02.indd Author macpro Created Date 10/26/2009 11:38:05

加齢は脳外傷の原因

 

人は誰でも加齢に伴って、

視力低下、筋力低下、集中

力低下や逃避反応の遅れな

どさまざまな身体能力が低

下してきます。また、色々

な病気にかかりやすくなり、

体力の衰えがさらに身体能

力を低下させてしまいます。

これらのことが、ご高齢の

方々の外傷の大きな原因と

なっています。

 

近年、高齢化社会が進み、

同時にご高齢の方々の脳外

傷も多く発生しています。

若年者の脳外傷の原因の主な

ものは交通事故や高所からの

転落です。しかし、高齢者の

脳外傷の大きな特徴は、日常

生活の中でのちょっとした転

倒やベッドや椅子からの転落

が原因で、脳外傷につながっ

てしまう事が多いということ

です。少ししか頭を打ってい

ないのに、脳がけがをしてし

まったという事が起こりやす

くなってしまいます。これに

は、脳の加齢が大きな要素と

なります。脳が年をとると脳

萎縮(脳の体積が減少するこ

と)がおこります。年をとっ

ても頭蓋骨(脳の入れ物)は

小さくはなりませんが、脳が

小さくなった分、少しの外力

が頭に加わっただけで、脳は

たくさん揺さぶられてしまい

ます。このことが、高齢者の

脳外傷の大きな原因と考えら

れています。また、脳梗塞や

心筋梗塞などの予防薬を服用

している場合、出血が止まり

美祢市立病院

副院長松

永登喜雄

にくくなり、このことが脳外

傷をいっそう重症化させてし

まうこともありますので注意

が必要です。

頭を打って1ヶ月後に

わかる慢性硬膜下血腫

 

私たちは、頭を打ってしま

うと誰でも不安になり、脳は

大丈夫だろうか?と心配しま

す。高齢者の頭部外傷のう

ち、急性期に診断される脳外

傷は、外傷性くも膜下出血、

脳挫傷などです。これらは頭

を打って、数時間から数日の

うちに判明します。しかし、

その時に検査をして脳外傷が

なかったとしても、その1ヶ

月後に頭蓋内に血液が貯まっ

ていたということがあるので

す。その代表的な脳外傷が慢

性硬膜下血腫です。男性に多

く、症状は、頭痛、手足の麻

痺、重症例では意識障害など

です。

 

脳は、頭蓋骨、硬膜とくも

膜によって保護されていま

す。硬膜というのは、字のご

とく、「硬い膜」で、通常1

mm程度の厚さがあり、頭

蓋骨の直下にあります。骨と

しっかりと結合している膜で

す。硬膜の下に、くも膜とい

問合せ先 

美祢市立病院

  (☎0837521700)

う膜があり脳を保護していま

す。硬膜より非常に薄い膜で

すが、なかなか頑丈な膜で、

顕微鏡で見ると蜘蛛の巣のよ

うに脳と結合している膜なの

で、「くも膜」と呼んでいます。

 

慢性硬膜下血腫とは、この

「硬膜」の下で「くも膜」よ

り上の隙間に、慢性期になっ

て血(血腫)が貯まる脳外傷

の事です。では、どこから出

血するのでしょうか?脳の表

面と硬膜との間には細い静脈

が走っています。これは、か

なり細い静脈で、これが切れ

て出血したとしても急性期に

は症状もでなければ、CT検

査をしても出血量が少なく診

断出来ません。しかし、この

出血が「じわり、じわり」と

続き、やがて、3週間から

2ヶ月程度かけて「硬膜」と

「くも膜」の隙間に血液が貯

まってくる、これが、「慢性

硬膜下血腫」です。加齢に

伴って脳萎縮がおこると脳と

硬膜の距離が広がり、この静

脈が引っ張られるようになり

ます。さらに、脳が揺さぶら

れやすくなりますので、その

力に耐えられなくなった静脈

が切れてしまいます。そして、

頭を打って約1ヶ月後、検査

をすると血液が貯まっている

のが診断できるようになりま

す。

転倒予防が脳を護る

 

治療は、主に手術です。頭

皮に5cm位の切開を加え

て、約1cm程度の穴を頭

蓋骨にあけて、中の血液を取

り除きます。約1時間で手術

は終了します。通常2週間程

度の入院が必要です。再発率

は、10%程度で、よりご高齢

の方に多い傾向があります。

 

予防は、なんと言っても、

頭を打たないようにすること

なのですが、誰しも加齢に伴

い転倒しやすくなります。75

歳頃から、急速に筋力が低下

するとも言われています。筋

力低下の予防こそが、脳外傷

を予防すると申し上げても過

言ではありません。「転倒予

防が脳を護る」、この事が大

切だと思っています。

 

もしも頭を打って、大し

たことがないと思われても、

1ヶ月後に頭痛などの自覚症

状があれば、是非、我々専門

医にご相談下さい。

健康チェック

 

高齢者の脳外傷

    

〜慢性硬膜下血腫〜

広報みね 2009 年(平成 21 年) 11 月1日 ⑧

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⑨ 広報みね 2009 年(平成 21 年) 11 月1日