新たな国民病「慢性腎臓病（CKD）」

～あなたの腎臓を守る生活・食事について～

名古屋大学医学部 CKD 地域連携システム講座

准教授 安 田 宜 成

肝腎かなめの腎臓（じんぞう）とは？

皆さんの体には背中のあたりに 2 個の腎臓（じんぞう）があります。1 個は 160g 程度で

握りこぶしより少し大きな位の臓器です。でも腎臓はすごい働き者です。皆さんのおしっ

こ、つまり尿（にょう）は 1 日におよそ 1～2 リットルですよね。でも腎臓はもっとたくさ

んの尿のもとを作っています。その量は 1 分間に約 100 ミリリットル（ml）。ですから、1

日あたりにすると、何と 144 リットルになります。2 リットルのペットボトルが 74 本にも

なるのです！腎臓は尿のもとから、体に不必要な毒素や、余分な塩分、水分を体外に捨て

ています。もともとの 144 リットルからみると、実際に尿として排泄している量はわずか

1％にすぎません。これは皆さんの体が常に同じ健康な状態でいられるために大変に重要な

のです。この尿のもとを作るために、皆さんの腎臓には 1 分間に 1 リットル弱もの血液が

流れています。心臓は 1 分間に約 4～5 リットルの血液を体中に送っています。脳にも、手

足にも、そして腎臓にも。体中を流れる全部の血液のうち、腎臓に約 20%もの血液が流れ

ているのです。このように腎臓はたくさんの血液から、少しずつ調整をして尿を作り、皆

さんの健康を守ってくれています。

腎臓の働きは尿を作るだけではありません。実は腎臓は、血圧にも深い関係があります。

これは生命が太古の昔に海で生まれ、川や湖の淡水に、さらに陸上に上がっていく進化の

過程と密接に関係しています。現在の海は昔より少し塩辛くなっています。でも皆さんの

体の中の成分は、太古の昔と同じ塩分の濃度に保たれているのです。これも腎臓の大切な

働きの一つです。でも最近になり人間は塩分を多くとりすぎてしまい、高血圧に苦しんで

います。生命を維持するのに必要な塩分はごくわずかです。実際にアマゾンの奥地に住ん

でいるヤノマノ族の平均塩分摂取量は 1 日 1 グラムにもなりません。一方で日本人は 12 グ

ラム以上、場合によっては 20 グラムも 30 グラムも塩分をとっています。文明の進歩によ

り人間はあまり汗をかかなくなりました。そして腎臓の性能が良すぎるために、塩分をと

りすぎて高血圧になる人がものすごく増えています。塩分を上手にとって、血圧をコント

ロールしましょう。

さらに腎臓は、貧血にならないようにホルモンを作っています。この仕組みは運動選手

の高地トレーニングにも取り入れられています。また腎臓は骨を健康にするためにも重要

な働きをしています。加えて、皆さんの体の酸性やアルカリ性を調整するのも腎臓です。

このように腎臓は皆さんの健康を守るために日夜がんばっているのです。まさに肝腎かな

めの腎臓ですね。

新たな国民病、慢性腎臓病（CKD）：腎臓を守る生活、食事、お薬

腎臓病は国民の健康に重大な影響を及ぼしています。腎臓が働かなくなると腎不全とい

い生命を保つことができなくなります。これは国民の死因の第 8 位を占めています。しか

し現在は医学が進歩して、腎不全でも透析（とうせき）や腎臓を移植することで、健康な

人とあまり変わらない生活を送ることができます。このような透析治療を受けている患者

さんはどんどん増えているのです。平成 21 年末の透析患者数は 29 万人を超えてしまいま

した。これは日本人の 414 人に一人にあたり、世界第 2 位です。透析患者さんが多いこと

は日本の医療水準が高いこと、また日本の保険制度が優れていることを示しています。し

かし透析には多くの治療費が必要です。1 人の透析患者さんあたり年間 500 万円にもなり、

日本全体では 1 兆 4500 億円です。国民の総医療費は 34 兆円くらいですから、透析だけで

全体の約 4.3％かかってしまうことになります。日本は高齢化をむかえ今後も医療費の増大

が心配されています。このまま透析患者さんが増え続けると、近い将来日本の医療システ

ムそのものが壊れてしまうのではないかと心配されているのです。これは日本だけの問題

ではなく、世界中で透析患者さんの増加が問題になっています。

ではなぜ透析を必要とするような状態になってしまうのでしょうか？誰も透析を受けた

い人はいませんから、もっと早くにしっかりと治療をして、透析にならないようにするこ

とが大切ですよね。そこで透析の予備軍となる人を慢性腎臓病（Chronic Kidney Disease

（CKD）：以下「CKD」という。）という広い概念で捉え直し、公衆衛生学的な対策を立て

る必要があると考えられるようになっています。

CKD とは、医学的には「蛋白尿などの腎障害の存在を示す所見」、もしくは「腎機能低

下」が３か月以上続く状態と定義されています。加齢に伴って腎機能は低下しますので、

高齢者では CKD の危険が高くなります。さらに高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロー

ムといった生活習慣病が CKD の発症や悪化に深く関わっています。一般には腎臓病という

となじみのない特別な病気といった印象を持たれている方が多いかもしれませんが、日本

腎臓学会の調査では、わが国の推定 CKD 患者数は約 1,300 万人と膨大な数にのぼります。

また CKD は、透析の予備軍であることはもちろんですが、腎機能が低下すればするほど、

またアルブミン尿や蛋白尿が多くなるほど、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の危険

が高まることが明らかになってきています。つまり CKD は国民の健康を脅かす、新たな国

民病であるといえます。

しかし CKD のほとんどは自覚症状に乏しいことから、容易に見過ごされがちですが、重

症化を防ぐためには早期発見、早期治療が大切なことは言うまでもありません。皆さんが

CKD であるかどうかは、健康診断などで尿検査と血清クレアチニンという血液検査を行う

ことで、簡単にチェックすることができます。また CKD は生活習慣の改善や薬物療法等に

よって治療・進行予防が可能な疾患です。例えば禁煙、肥満の是正、高血圧があれば減塩

食、腎機能が低下していれば低たんぱく食を心がけることで、患者さん自身が CKD 治療に

取り組むことができます。もちろんお薬も重要です。CKD は心血管疾患にもつながります

から、腎臓を守る治療は、心臓や脳を守ることにもつながります。

愛知県では、愛知県医師会など様々な医療関係者と協力して、新たな国民病である CKD

対策に熱心に取り組んでいます。

この講演会では、どうしたら皆さんの腎臓を健康に保てるのか、日常の生活や食事で心

掛けること、そして CKD の治療などについて、クイズを交えながら一緒に楽しく学びまし

ょう。

1

新たな国民病「慢性腎臓病（CKD）」

～あなたの腎臓を守る生活・食事について～

愛知腎臓財団・CKD対策協議会

名古屋大学腎臓内科学・ＣＫＤ地域連携システム講座安田宜成

第705回愛知県医師会健康教育講座

平成22年9月18日・あいち健康プラザ健康科学館ヘルスサイエンスシアター

“あなたの腎臓は大丈夫？”毎年3月第二木曜日は

「世界腎臓デー」

世界腎臓デーにあわせ、世界6大陸100カ国以上の国々でさまざまなCKD啓発キャンペーンが開催されます！

J-CKDIが主催した世界腎臓デーイベント

2009年

2010年

テレビ放映例

NHK東京 KTV大阪 NHK名古屋

RSK 岡山BBCびわ湖放送

世界腎臓デー

2008年

東京会場には何と元ヤクルトスワローズの古田

氏が登場！

名古屋、岡山、近江八幡、三重、高知でも世界腎臓デーイベント開催されました

世界腎臓デーイベントはどんどん拡がっています！

金沢、和歌山、兵庫、山口、福岡、熊本、沖縄でも様々なイベントが開催されます

2

本日の講演内容

肝腎かなめの腎臓：腎臓のはたらき

透析患者さんが増えています。その原因は？

新たな国民病、慢性腎臓病（CKD)とは？

あなたの腎臓だいじょうぶ？

尿検査とクレアチニンからGFRを計算しよう！

CKD治療とくに減塩食を中心に

かかりつけ医と専門医の診療連携

腎臓ってどんな働きがあるの？

肝腎かなめの腎臓です！

腎臓は腰のあたりに2個あります。そらまめのような形です

1個が150gほどの小さな臓器ですが、心臓から送り出される血液の20％以上が流れ、毎日150～200 リットルもの血液をろ過し、

体の中をきれいにしてくれます

3

腎臓の正常構造と機能：解剖

腎臓は後腹膜臓器そら豆形重さ：120～300 g

長さ：10～12 cm

幅：５～６ cm

厚さ：４ cm

腎臓には１００万個糸球体があります！

4

腎臓では、尿のもとを毎日150

リットルつくり、必要のないものだけを体外へ。

クイズ１腎臓の働きを選びましょう

① 体内の水分やミネラルを調節する

② 体の酸性とアルカリ性の調節をする

③ 骨を健康に保つ

④ 血液（赤血球）をつくる

⑤ 血圧を調節する

⑥ ①～⑤の全て

5

腎臓ってどんな働きがあるの？

肝腎かなめの腎臓です！

その他にも様々な重要な働きがあります水分や塩分の調節

ミネラルのバランスを保つ血圧の調整

酸性・アルカリ性のバランスを保つ血液を作るホルモンを分泌する

骨を健康に保つ、など

みなさんの腎臓は淡水や陸上で生活するため進化してきました

皆さんの血液や体液の塩分は約0.9％これは太古の昔、私達が海の中で生活していた環境に近いと言われておる。

その環境はなんと！腎臓が創りだしているのである！！つまり、腎臓は尿をつくるだけではなく、体の中の状態をいつも一定に保つ（体液量、浸透圧、イオン組成、体内pH等の生体内環境維持）ために、とて

も重要な臓器なんじゃ。

6

腎臓は体の酸性・アルカリ性バランスを調整しています

腎臓は赤血球をつくるホルモンを調節します

7

腎臓はビタミンDを働く形に変化させます

腎臓は、尿を作る以外にいろいろな働きがある！

⇒腎臓が悪くなると、体中に問題が起こる

でも安心してください。症状にあわせた治療が可能です！

貧血：ホルモンの補充高血圧：降圧薬、塩分制限酸性・アルカリ性のバランス：重層（ふくらし粉）高カリウム：カリウム制限食・カリウム吸着剤骨：ビタミンDの補充、リン吸着剤尿毒素：活性炭（クレメジン）

8

クイズ２世界中で透析患者さんが増えています。では、日本の透析患者さんは何人？

a. 約1万人

b. 約3万人

c. 約10万人

d. 約３０万人

e. 約100万人

慢性透析患者数の推移

【出展：図説 わが国の慢性透析療法の現況2009年12月31日現在 】

（人）

透析医療費のみで1.4兆円を超える！

9

クイズ３医療の進歩で腎不全でも移植や透析治療が可能ですが、その治療費は高額です。日本で透析治療にかかる医療費は？

a. 約100億円

b. 約300億円

c. 約1000億円

d. 約3000億円

e. 約1兆円

参考：日本の総医療費は約34兆円です

クイズ４日本は医療先進国です。ではなぜ透析患者さんが増えるの？透析になる主な原因は何でしょう？

① 遺伝する特殊な腎臓病

② インフルエンザなどの感染症

③ タンパク尿や血尿のあるいわゆる腎臓病

④ 高血圧や加齢による動脈硬化

⑤ 糖尿病

⑥ きちんと健康診断を受けていないから

10

年別透析導入患者数の推移（主要原疾患）

日本透析医学会編: わが国の慢性透析療法の現況（2006年12月31日現在）（引用改変）

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000（人）

‘83 ‘84 ‘85 ‘86 ‘87 ‘88 ‘89 ‘90 ‘91 ‘92 ‘93 ‘94 ‘95 ‘96 ‘97 ‘98 ‘99 ‘00 ‘01 ‘02 ‘03 ‘04 ‘05 ’06（年）

糖尿病性腎症

慢性糸球体腎炎

腎硬化症

透析導入患者数

原因不明が約10%。病院にきちんとかかっていないからです。

慢性腎臓病(CKD)とは

①タンパク尿など、腎臓の障害がある

②腎臓の機能（GFR)が60%未満になった状態

①か②が3カ月以上続くと、CKDです

腎臓病を早期発見し、重症化を防ごう！

11

クイズ５腎臓病って、あまり聞きませんが、日本の慢性腎臓病（CKD）患者数は？

a. 約30万人

b. 約100万人

c. 約300万人

d. 約1000万人

e. 約3000万人

参考：高血圧は約2000万人、糖尿病は約600万人。

日本のCKD患者数は1,330万人！成人8人に１人

新しい国民病です！

自覚症状が無いため、ほとんどの患者さんは自分がCKDであることを知りません

あなたの腎臓は大丈夫ですか？

12

日本は医療先進国なのになぜ慢性腎臓病（CKD)がこんなに多いの？

１、高齢化２、生活習慣病（糖尿病、高血圧など）の増加３、自覚症状がないため、病院をかからずに

重症化してしまう

早期発見、早期治療が大切です！

こんな方は要注意です生活習慣の改善に取り組みましょう！

禁煙減塩

肥満の解消適度な運動

13

0

10

20

30

40

50

60

70

20-

29

30-

39

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49

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0

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20

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50-

59

60-

69

70-

79

80-

50-59

40-49

< 40

男性 (N=240,594） 女性 (N=333,430）

年齢 年齢

(%) (%)

GFR(ml/min/1.73m2)

年齢別のCKD頻度

頻度(%)

男性 女性

加齢に伴うGFR低下：シミュレーション

20

40

60

80

40-49歳50-59歳60-69歳70-79歳80-89歳20

40

60

80

40-49歳50-59歳60-69歳70-79歳80-89歳

GFR(ml/min/1.73m2)

(Imai E et al Hypert Res 2008)

推算GFR50以下で透析のリスクあり高齢者では40以下でリスクがある

14

蛋白尿（ＣＫＤステージ1or2）が出現するリスクとは？

Kidney Int 71：159,2007より改変

年齢

GFR

血尿≧2+

血圧 140-150/90-95

血圧 150-160/95-100

血圧 160-/100-

高血圧（治療中）

糖尿病（治療中）

高コレステロール血症

高トリグリセリド血症

肥満

喫煙

飲酒（エタノール＜20g/day）

飲酒（エタノール≧20g/day）

1.00.5 2.01.5 3.02.5 4.0

相対危険

男性女性

～ ～ ～

腎機能の悪化する原因は？(ﾌﾗﾐﾝｶﾞﾑ研究より）

因子 腎機能障害発生のオッズ比

加齢（10年ごと） 2.56 (2.18-2.99)

糖尿病 2.74 (1.56-4.82)

高血圧 1.57 (1.16-2.12)

喫煙 1.34 (1.01-1.79)

BMI（肥満） 1.28 (1.12-1.45)

Fox CS,et al.JAMA 2004;291:844-50より改変

フラミンガム研究において、1978～2001年に18.5年間追跡された2585例を対象とし、腎機能障害発症の予知因子を探索。

15

輸入細動脈を拡張する病態と糸球体高血圧

糸球体高血圧輸入細動脈 輸出細動脈

50mmHg

原尿

正常

高血圧

拡張

高血糖

高蛋白食

肥満

高インスリン血症

ネフロン数減尐（低出生体重）

柏原直樹（川崎医科大学）：ブロプレス印刷物「糸球体高血圧の是正が腎臓を守る」,2007年11月作成より作図

糸球体内圧の亢進

糸球体過剰濾過

微量アルブミン尿

タンパク尿

糖尿病性腎症-発症・進展機序と治療合併高血圧症の降圧治療,槇野博文,診断と治療社,80-84,1999.

メタボリックシンドロームのCKD発症に及ぼす影響

Ninomiya T et al.: Am. J. Kidney Dis., 48, 383-391, 2006.（引用改変）

久山町男女1,469名 1988-1993年

4.8

10.6*

0

3

6

9

12

15

1.0

2.2*

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0（%）

n=1,102 n=367

なし あり

n=1,102 n=367

なし ありメタボリックシンドローム メタボリックシンドローム

* p<0.01 * p<0.01CK

D

累積発症率

CK

D

相対危険

累積発症率：年齢・性を調整相対危険：年齢、性、糸球体濾過量、蛋白尿、血清アルブミン、血清総コレステロール、ヘモグロビン、喫煙、飲酒を調整

久山町研究第3集団のうち、登録時のメタボリックシンドロームの有無と試験期間中のCKD発症率との関係を調査した（追跡期間：1988～1993年）。メタボリックシンドロームはNCEP-ATPⅢの基準を用いた。

16

男性の喫煙率の国際比較

WHO報告書（2008年）より

世界の喫煙により死亡者は年間540万人

喫煙はさまざまな病気の発症や悪化を招く危険因子その多くは死亡率の高い深刻な病気

慢性腎臓病（CKD）は心筋梗塞や脳卒中などの危険が高まります

17

CKDでは心筋梗塞や脳卒中などの危険が

約3倍高くなります久山町第3集団のうち脳卒中、心筋梗塞既往例を除いた症例を12年間調査

00

10

20

30

40

50

2 4 6 8 10 12

(%)

心血管病累積発症率

観察年数（年）

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10

20

30

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50

2 4 6 8 10 12

(%)

心血管病累積発症率

観察年数（年）

男性 女性

Log rank p<0.01 Log rank p<0.01

CKD(＋)

CKD(－)

CKD(＋)

CKD(－)

12年累積発症率35.6%

12年累積発症率12.0%

12年累積発症率22.0%

12年累積発症率7.8%

GFR低下やタンパク尿は要注意

あなたの腎臓だいじょうぶ？

慢性腎臓病（CKD）は自覚症状がありません！

健康診断を受けましょう！

１．あなたのおしっこ(尿)は大丈夫？タンパク尿は腎臓の悲鳴！

２．腎臓機能ははどのくらい？血清クレアチニンから簡単に腎機能（GFR）がわかります。

３．腎臓を悪くする因子はない？血圧、血糖、脂質、肥満、メタボ・・・

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２５歳 男性 ７５歳 女性

血清クレアチニン 1.1mg/dl 血清クレアチニン 1.1mg/dl

推算GFR 90 ml/min/1.73m2 推算GFR 40 ml/min/1.73m2

クレアチニンからGFRに計算することが大切！

参考：正常範囲は男性 は0.61～1.04 、女性は 0.47～0.79 (mg/dL)です

0

20

40

60

80

100

120

0 2 4 6 8 10

血清Cr値 (mg/dL)

GF

R (

mL

/min

)

CrはGFRと反比例

一般にGFRが50%にまで低下してはじめてCrの異常に気づく

Cr GFR

0.80 100.0

1.00 80.0

2.00 40.0

3.00 26.7

4.00 20.0

5.00 16.0

6.00 13.3

7.00 11.4

8.00 10.0

9.00 8.9

10.00 8.0

19

http://j-ckdi.jp/ckd/check.html

自分の腎機能をGFRとして計算してみましょう！

日本慢性腎臓病対策協議会HPなどでGFRが計算できます

ＣＫＤと病期分類（重症度）

CKDは進行しても、なかなか自覚症状が出現しません

骨ミネラル代謝異常

貧血高カリウム

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腎臓病の治療では食事療法が重要です

たんぱく質の制限！

摂取量が多いと老廃物が多くなります、腎臓に負担をかけます。

適正なエネルギー量の摂取！

十分なエネルギーが摂られないと体力が落ち、腎臓にも負担をかけます

塩分の制限！

高血圧は慢性腎不全の最大の敵

• カリウムの高い方はカリウム制限も必要です

推定塩分摂取量（g/day）=蓄尿でのNa排泄量(mEq/day)÷17

推定たんぱく質摂取量（g/day）=

［尿中尿素窒素(mg/dl)×１日尿量(dl)＋31mg/kg×体重(kg)］×0.00625

塩分、たんぱく質の摂取量は1日の尿をためて検査すると計算できます

その他にも食事のメニュー、材料や分量から予想ができます

＜重要＞たんぱく制限はかえって体力を落とす危険もあります必ず専門知識のある医師や栄養士の指導のもとで行いましょう

食事療法にあたっては必ず医師や栄養士に相談しましょう

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塩分はどれだけ必要？

旧石器時代 現代

1.5 塩 (g/day)

2500エネルギー (Kcal/day)

10.2

1750 - 2500

86食物繊維 (g/day) 10 - 20

62.4鉄 (mg/day) 10 - 11

33.4亜鉛 (mg/day) 10 - 15

1520カルシウム (mg/day) 750

6970カリウム (mg/day) 2500

旧石器時代には高血圧症は存在しなかったかもしれない

Eaton SB, et al: J Nutr 126; 1732-1740, 1996

塩分はどれだけ必要？

Intersalt Cooperative Research Group: Lancet 1988; 297: 319

140

130

120

110

100

9000

502.9

1005.9

1508.7

20011.6

25014.5

尿中Na(mmol/日)食塩摂取量(g/日)

Osaka

TochigiToyama

b=0.0709 (mmHg/mmol Na), p<0.001±0.0187

Yanomano

Xingu

Papua New Guinea

Kenya

収縮期血圧

（mmHg）

塩分摂取量：0.1g/day未満高血圧患者は1%未満

加齢による血圧上昇はない

塩分摂取量：3g/day

高血圧患者は5%程度血圧上昇率：2.4mmHg/10歳

塩分摂取量：9.4g/day

高血圧患者は17.4%程度血圧上昇率：5mmHg/10歳

22

減塩治療と降圧効果

He FJ et al; J Hum Hypertens 16: 761-770, 2002

Sacks FM, et al; N Engl J Med 344: 3-10, 2001

1g/日の減塩で収縮期血圧が1～1.2mmHg低下する。

今の日本人の塩分摂取が約11g/dayであるため、これを推奨されている6g/日にすることにより、収縮期血圧で6mmHgの改善が期待できる。

食塩1g減らしたら何が期待できる？

心筋梗塞、脳卒中などの心血管病の危険が減らして、元気で長生き

日本人の平均的食塩摂取量 (H18)

・１日平均摂取量 １１．２ｇ 男性１２．２g （目標１０g以下）

女性１０．５ｇ （ ８g以下）

小麦加工品,0.8 , 7%

調味料, 6.2,55%

その他, 2,18%

魚介加工品,1.4, 13% 漬け物, 0.8 ,

7%

（平成18年数値を平成9年摂取割合で再配分）

23

食塩１ｇ相当分

調味料の塩分

＝

市販食品の食塩量表示

成分 １食75g当り

エネルギー ３３５kcal

蛋白質 ９．３ｇ

脂質 １３．０ｇ

炭水化物 ４５．４ｇ

ナトリウム １．８ｇ

（麺・かやく） ０．８ｇ

（スープ） １．０ｇ

塩分量の換算式 ＝ ナトリウム （ｇ）×２．５４

（ 食塩量 ４．６ｇ ＝ １．８ ｇ ×２．５４ ）

24

ポテトチップス と 竹輪

１袋65g １本40gNa318mg (食塩0.8g） Na332mg (食塩0.8g）

食品中の塩分量食品名 目安 数量 塩分量 食品名 目安 数量 塩分量

食パン ６切２枚 120 1.6 かまぼこ ３切 40 1.0

茹うどん 約１玉 200 0.6 焼ちくわ １本 40 0.8

塩さけ 中１切 80 1.4 さつま揚げ １枚 50 1.0

新巻さけ 〃 80 2.4 ロースハム ２枚 40 1.0

しらす干し 10 0.4 ｳｲﾝﾅｰｿｰｾーｼﾞ

３～４個 40 0.8

鯵開き干し 中１枚 80 1.4 ﾌﾟﾛｾｽﾁｰｽﾞ １個 25 0.7

めざし ２尾 50 1.4 奈良漬 ２切 20 0.9

鮪ﾌﾚｰｸ缶 50 1.0 たくあん漬 〃 20 0.9

シーチキン 50 0.5 梅干 大１個 10 2.2

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「塩分濃度」と人の味覚

汁物の標準的な塩分濃度

０．６ ～ ０．８％

料理名 塩分％ 料理名 塩分％

野菜即席漬け 2.0 おひたし 1.0

青魚の煮付け 2.0 ソテー 0.6-0.8

白身魚煮付け 1.5-2.0 茶碗蒸し 0.6

里芋の煮付け 1.2-1.5 ごはん物 0.6

減塩のコツ ０．６％ で 200cc ＝ 1.2ｇ

０．８％ で 100cc ＝ 0.8ｇ

「女子栄養大学出版部「成分表」附表より」

減塩食をおいしく食べるコツ

控えるとよい食品、料理• 漬物、佃煮、魚干物、練り製品（はんぺん等）、ハム、ソーセージなど

加工保存食品

• みそ汁 （味を薄くし、量を１/２に減らす。）

減塩の工夫• 味の付いているものに食卓塩やしょうゆをかけない。

• 煮物料理、おひたしを、フライ、てんぷら、炒め物にかえる。

• すき焼きを、みず炊き、しゃぶしゃぶなどにかえる。

• すし飯、味つけご飯、丼物を控える。

• めん類のだし汁は残す。

• 香辛料、かんきつ類（レモン、ゆずなど）や酢の酸味を利用する。

• 香りのある野菜や、のり、花かつおなど風味を利用する。

• 調味料を控え、材料のうま味を生かした料理にする。

• インスタント食品を控える。

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慢性腎臓病（CKD）と診断されたら

きちんと治療しましょう！

1. きちんとかかりつけ医の先生に診てもらう

2. 禁煙、肥満を是正して、規則正しい生活

3. 血圧を適切にコントロール。減塩が大切です。

血圧をしっかりコントロール

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筋力トレーニングは、転倒予防などにも有効です！

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慢性腎臓病（CKD）と診断されたら

きちんと治療しましょう！

4. 糖尿病や脂質異常症も、しっかりと治療

5. 腎機能がかなり低下する貧血や体が酸性になるなど問題を生じますでも、治療できますから安心してください。

かかりつけ医＋腎臓専門医でしっかり治療！

CKDの診療連携システム案

検尿（蛋白尿・血尿）

1）0.5g/gクレアチニン以上または2＋以上の蛋白尿2）eGFR＜50mL/min/1.73m2

3）尿蛋白と血尿がともに陽性

腎生検も含めた精査と治療

検尿異常か腎機能障害あり

検尿異常、腎機能障害ともになし

該当する該当しない併診

健 診

かかりつけ医

腎臓専門医

日本腎臓学会編: CKD診療ガイド（東京医学社発行）p51.

CKD診療連携

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名大病院CKD専門外来

・CKDを総合的に診療する– 循環器、糖尿病・内分泌、腎臓の専門医が協力する

・コ・メディカルとの協力、家族の支援

看護師 患者教育・禁煙指導・クリニカルパス

薬剤師 薬剤指導、コンプライアンスチェック

栄養士 食事指導、栄養評価

Cardiology

Kidney

Diabetes

名大病院のCKD外来では、

腎臓病の診断：なぜ腎臓が悪くなった？

腎機能の評価、腎不全合併症のチェック

かかりつけ医の先生へ治療方針をアドバイス

患者さんとご家族への教育：生活習慣改善と食事

看護師さん、栄養士さん、薬剤師さんが、皆さんの生活をチェック！栄養をチェック！お薬をチェック！

安心して治療を続けられます！

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本日のまとめ

腎臓の働きが低下する様〄な問題が起きますが、治療が可能です

透析患者さんが増えています。原因は高齢化、生活習慣病の増加

日本の慢性腎臓病（CKD)患者数は1330万人！新たな国民病です。

CKDは透析予備軍、心臓や脳に問題を生じる

尿検査、GFRを計算し、腎臓の働きをチェック

CKDと診断されたらきちんと治療、上手に減塩

名大病院CKD外来など、かかりつけ医と専門医の診療連携が大切です