米国地デジ次世代規格atsc 3.0最新状況 ~地方放...
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米国 地デジ次世代規格ATSC 3.0最新状況~地方放送局が考えるメディア戦略~
NHK放送文化研究所研究主幹 大墻 敦
研究主幹 大墻 敦
1986年、NHK入局。
主に教養番組、ドキュメンタリーを制作
国際共同制作、番組の購入、販売、展開
国際放送NHKワールドTVの調査、プロモーション
2017年6月から、現職。
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〇国際共同製作イベント"Tokyo Docs" 7年目の成果と課題
〇アメリカ公共放送のマルチプラットフォーム展開~フィラデルフィアでの聞き取り調査から~
〇NHK文研フォーラム2018 シンポジウム欧米メディアのマルチプラットフォーム展開~アメリカCNN とPBS(公共放送),イギリスBBCの報告から~
〇「ATSC3.0」にアメリカ公共放送局はどう取り組んでいるのか?~地方都市における新たなテレビ・エコシステムの構築へ~
〇商業放送局は「ATSC3.0」に何を期待しているのか~アリゾナ州フェニックスでの実証実験・最新報告~
① ATSC3.0とは
② 地方放送局は、この新技術で何をしようとしているのか
① ATSC3.0とは技術仕様の説明4K、HDRについてターゲティング広告について
牽引役のSinclair(OneMedia)Pearl TV Group
② 地方放送局は、この新技術で何をしようとしているのか
Phoenix Model Market Project・概要
・公共放送局の取り組み 双方向・教育コンテンツ
・商業放送局の取り組み 若者向け番組などの開発
① ATSC3.0とは
② 地方の放送局は、この新技術で何をしようとしているのか
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アメリカのテレビ放送1941年 NBCとCBSが商業テレビ放送を開始1953年 アナログNTSC方式で、アナログ・カラー放送開始1969年 PBS(公共放送サービス)発足1994年 情報スーパーハイウェーに関する政府の基本政策1996年 「1996年電気通信法」の制定
ATSC1.0をFCCが承認1998年 地上デジタル放送を開始2009年 アナログ放送が終了し完全デジタル化2011年 ATSCが、ATSC3.0の策定を始める2016年 周波数オークションを開始2017年 ATSC3.0の承認、任意での移行2018年 フェニックス・モデル・マーケットプロジェクト
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ATSC Advanced Television Systems Committee
高度テレビジョンシステム委員会
地上放送、ケーブルテレビ、衛星放送事業者、映画産業の関係企業、家電や放送機器、コンピューター、集積回路のメーカーなど125社が参加して、次世代規格の策定に携わった。
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ATSC3.0の機能について〇 4K、HDR(Hight Dynamic Range)〇 多チャンネル化〇 移動体、モバイルデバイスでの視聴〇 マルチチャンネル音声サービス〇 複数言語によるキャプション〇 地域ごとの高度な緊急警報放送〇 視聴者の属性にあわせた番組やCMの配信〇 IPベースで家庭内のテレビ、パソコン、タブレット、
スマホ などマルチ端末への双方向コンテンツ配信
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ATSC3.0の機能について
〇 テレビ、パソコン、タブレット、スマホなどをID管理
〇 双方向コンテンツ配信〇 視聴者の属性にあわせた番組やCM
の配信、データ収集と活用
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複数のCMを蓄積、あるいは呼び出す
インターネット
個々の視聴者に合わせてCMを挿入する
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2018年10月、市場調査会社e-Marketer (イーマケター) の調査結果
2020年の広告売上の見込みは、テレビが695億ドル(約7兆6,450億円)、ラジオが145億ドル(約1兆5,950億円)、印刷媒体が129億ドル(約1兆4,190億円)で、合わせて969億ドル(約10兆6,590億円)に対して
モバイルは1132億ドル(約12兆4,520億円)と推測されている。
2022年にはモバイルが1414億ドル(約15兆5,540億円)まで伸び、テレビ広告費681億ドル(約7兆4,910億円)の倍を超えると予想。
e-Marketerは、「人々の視聴習慣の変化に伴い、テレビの牙城と言われたスポーツ中継やニュースですら、モバイル視聴に移行しつつある。広告は今後も、既存の従来型メディアからモバイルに流れていくだろう。」と分析している。
広告費はテレビからデジタルへ
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「ブロードバンドオンリー世帯」の数は、2018年の2330万から2023年には4080万まで増え、総世帯数の3分の1に迫る見通し。【S&Pグローバルのプレスリリース 2019年1月28日】
米調査、2023年には全世帯の3分の1が有料放送契約なしに
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テレビ局は、近年の新聞が抱える経済的な問題に苦しんでいないため、より良い立場にある。
地方テレビ局は、米国成人のためのナンバーワンのジャーナリズムの源であり、46%が「頻繁に」見ているとされる。
ほぼ60%の放送局がニュースから収益を上げている。
メディア研究者たちの分析
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② 地方放送局は、この新技術で何をしようとしているのか
“Phoenix Model Market Project”・概要・公共放送局の取り組み 教育・双方向コンテンツ
・商業放送局の取り組み 若者向け番組の開発
・地方局所有会社の取り組み
アリゾナ州フェニックス
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サウス マウンテンパーク
サウス マウンテンパーク
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フェニックス市街地
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直接受信の家庭が24%(ニールセン調べ)
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12位 189万世帯(1.6%)39
四方にある程度の余白を残してください。
Pearl TV Group ①
◆1億1,100万世帯(全米世帯の63%)◆アメリカのDMA50のうち43◆173の放送局
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四方にある程度の余白を残してください。
Pearl TV Group ②173の放送局の内訳
◆4大ネットワークNBC 57(40%) CBS 40(30%)ABC 35(28%) FOX 17(9%)◆その他My Network 10、CW 6、独立系8
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*4K伝送:Univison(スペイン語放送)にある装置で、プロジェクトに参加している放送局の(Arizona PBSが製作している幼児番組“PBS Kids”など)を集めて、ATSC3.0の信号に変換して、サウスマウンテンの送信所に伝送して、そこから、市街地に向けて電波を発信し、継続的に受信テストを実施。テスト結果は、良好。
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*SFN(Single Frequency Network)の実験4月に実施する予定。
*ID取得テスト:アプリで、ID取得できることを確認。
*視聴データ取得:ウォーターマーク(透かし)を入れて、リアルタイムでの視聴データ取得の確認。ビジネスモデルの構築はまだ。
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複数のCMを蓄積、あるいは呼び出す
インターネット
個々の視聴者に合わせてCMを挿入する
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*ターゲティング広告:デモンストレーションは成功したが、ビジネスモデルの構築は、まだ決定していない。
*移動体への送受信:ジェネラルモーターズが、クリーブランドでテスト済み。
*双方向コンテンツの実験:PBSが2019年に、アリゾナ州立大学と共同で開発する幼児番組(PBSも協力)で実施予定。
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*最終目標は、ATSC1.0とATSC3.0の同時送信の実現。
*全体に結果は良好。放送局からの送信、安定的な受信の連鎖を確認。
*ソニー、Samsung、LGがテストに参加
*5月頃、追加の消費者調査、テストをして、市場戦略を練る予定。
② 地方放送局は新技術で何をしようとしているのか
Phoenix Model Market Project・概要・公共放送の取り組み・商業放送局の取り組み・地方局所有会社の取り組み
アリゾナ州フェニックス
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* 直接受信世帯が多い* 竜巻などの気象災害がある* 教育コンテンツのニーズがある* 若者人口が多い* 地上放送を好むヒスパニック人口が多い
アリゾナ州フェニックス
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放送局の人たちが強調していたのは、*ローカルニュースに力を入れること*新しい技術に積極的に取り組むこと*地域の人々のニーズを詳細に汲み取ること
などの重要性
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ATSC3.0の課題
*FTC(連邦取引委員会)によるデータ収集・活用に関するガイドライン
*公共放送はコストを負担できるのか?*Sincairの市場72% *特許技術、RANDライセンスの件*vs ローカリズム
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ATSC3.0は、地上放送の救世主なのか?
*消費者がデバイスを買い換えるかどうか。*コンテンツが魅力的なものとなるのか。*インターネット結線のテレビが増えるか。*地上放送を見る人が増えるか。*5Gとの競合に勝てるのか。
① ATSC3.0とは
② 地方放送局は新技術で何をしようとしているのか
③ 最後に世界の地上放送高度化の行方
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アメリカ次世代地上規格ATSC3.0
~Phoenix Model Marketの最新状況~
NHK放送文化研究所研究主幹 大墻 敦