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Meiji University Title Author(s) �,Citation �, 53: 111-131 URL http://hdl.handle.net/10291/21268 Rights Issue Date 2020-09-11 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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Meiji University

 

Title 平成の市町村合併がもたらした地方財政への影響

Author(s) 河合,芳樹

Citation 商学研究論集, 53: 111-131

URL http://hdl.handle.net/10291/21268

Rights

Issue Date 2020-09-11

Text version publisher

Type Departmental Bulletin Paper

DOI

                           https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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研究論集委員会 受付日 2020 年 4 月 16 日 承認日 2020 年 5 月 25 日

1 神野直彦・小西砂千夫(2014),p151

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商学研究論集

第 53 号 2020. 9

平成の市町村合併がもたらした地方財政への影響

The EŠects of Municipal Mergers on Local Government

Finance during the Heisei Era

博士前期課程 商学専攻 2019 年度入学

河 合 芳 樹

KAWAI Yoshiki

【論文要旨】

本稿で平成の大合併とは,平成 12 年度(2000 年度)から 27 年度(2015 年度)において 2,000

を超える市町村が合併したことを言う。国は,この合併の目的のひとつに,「基礎的自治体の自立

性と行財政基盤の充実強化を図る」ことを掲げている。本研究は,2000 年度以降 2015 年度まで

の市町村合併がもたらした財政力基盤強化への影響を分析した。分析は,市町村の財政力指数を被

説明変数として,2000,2005,2010,2015 年度について横断面分析を行い,さらに,それらをパ

ネルデータとして,固定効果分析により,合併が市町村の財政力にどの様に影響したかについて検

証した。その結果,合併は財政基盤の強化に影響を与えたことを示唆し,また,合併した市町村は

合併しなかった市町村に比べて格差を是正したことも確認した。しかし,平成の大合併をもって完

結ではなく,まだ,途上にあり,今後,議論を整理し,より明確な考え方を掲げて再合併を行う必

要があることも確認した。

【キーワード】 市町村合併,財政力指数,自主財源,パネルデータ,固定効果

.はじめに

「平成の大合併」と言われた市町村合併は,2000 年度(平成 12 年度)以降,2000 以上の市町村

が合併し,600 弱の市町村が生まれ変わった。国の財政が厳しさを増し始めた 1990 年代半ば以

降,地方分権を推し進める数多くの施策や提言が為され,市町村合併はそのひとつの集大成である。

1993 年の国会で地方分権改革推進の決議により1,1995 年に発足した地方分権推進委員会の 5

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2 地方分権推進委員会(2001)

3 伊藤敏安(2017)pp3334

――

次に渡る勧告,2 次に及ぶ地方分権推進計画,そして,2000 年に「市町村合併の推進についての

意見」が公表された。それらをまとめた 2001 年の 終報告に基づいて平成の大合併は進められ

た。 終報告では,地方歳出と地方税収の乖離の縮小を図るため,歳出に対して厳しい監視を続

け,偏在性を少なくし,安定した地方税体系の構築を目指して,◯地方分権の推進,◯市町村行政

の広域化,◯国・地方の財政状況への対応,◯担税者としての国民の意識への対応,の 4 点を目

的に掲げている2。具体的には,

◯は基礎的自治体の自立性と行財政基盤の充実強化を図る,

◯は介護保険制度の施行やごみ処理の問題等広域的な対応を行うため,圏域の拡大を図る,

◯は高齢化,少子化が進み社会保障関係費が増大していくなかで,行政サービスの水準を継続し

て維持していく,

◯は地方税の充実を図っていくとともに,国民に理解を得るため,徹底した行財政改革を実施す

る,

の 4 事項である。

本研究は,「基礎的自治体の自立性と行財政基盤の充実強化」の観点から市町村合併がもたらし

た財政力基盤への影響について,財政力指数の変化から,合併した市町村と合併しなかった市町村

(以下「合併市町村」,「非合併市町村」と記す)を比較検証する。分析は,2000 年度末を合併前と

して,1860 市町村の合併が完了した 2005 年度末,その後 211 市町村の合併が行われた 2010 年度

末,36 市町村の合併で平成の大合併がほぼ完了した 2015 年度末の 4 ヵ年度を対象として,その

間の変化を分析した。

.先行研究

平成の市町村合併から 10 数年が経過した今日,合併に関する研究や論考はピークを過ぎた感は

あるが,研究や論考の多くは伊藤(2017)3が指摘するように,歳出面から一部の地域の費用削減効

果を扱ったものが多く,全市町村の分析や歳入面に焦点を当てたものは少ない。本研究は,歳入面

から考察を進めているが,歳出面の研究での視点や分析手法について参考とすべき点は多い。

山下(2001)は,市町村合併の研究ではないが,法人市町村民税における超過課税の採否につ

いて,我が国の地方分権のあり方を議論するためにファクト・ファインディングを目的とした分析

を行っている。分析は,1998 年度における 3232 の市町村を対象として,法人市町村民税の超過

課税の採否を 1997 年度の地方財政,住民基本台帳人口と 1995 年の国勢調査のデータを用いて,

プロビット回帰分析による考察を行っている。結論として,◯超過税率の採否は近隣市町村の大勢

に影響され横並びの傾向が極めて強い,◯昼夜間人口比率が高い市町村ほど超過課税の確率が高く

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なる,◯財政力指数が 0.75 で法人均等割における超過課税の確率が 大になり,財政力指数が

0.90 で法人税割における超過課税の確率が 大になる,としている。

林(2013)は,町村合併が歳出にどのような影響を及ぼしたかについて,規模の経済による効

果と規模の変化以外の要因による効果を区分して分析をしている。分析対象は 2010 年度時点の東

京都特別区を除く市町村データに 1998 年度の市町村データを重ねてパネルデータを作成し,職員

一人当たりの給与と職員数について,新設合併か編入合併かの合併方式と地理的条件の影響の有無

を考察している。分析は,合併非合併に区分した二次元配置誤差モデルを想定して検証を行い,合

併方式と地理的条件の組合せによって,職員数の削減効果の有無は異なり,また,歳出額削減も異

なるが,全体としては,平成の合併による歳出削減効果は確認できるとしている。

西田(2016)は,歳入総額と歳出総額及び議会費,人件費等の性質別,目的別分類を問わず主

な費用について,◯合併による歳出総額への影響,◯合併非合併による階差が生じたか否か,◯合

併後の人口や人口増減率への影響を分析している。分析は,歳入や歳出を被説明変数として,それ

ぞれが,U 字型閉曲線を描く,すなわち,市町村の人口 適規模が存在するという仮説に基づい

て,合併非合併をダミー変数とする重回帰分析により検証している。分析対象は 2012 年度末の東

京都特別区を除く 1719 市町村で,2000 年時点のデータとの比較で分析を行い,歳出総額から

適都市人口の規模は 22 万人で,一人当たりの歳出額は 35 万円であり,人口規模,面積,合併の

有無が歳出項目に影響があるとしている。

伊藤(2017)は,平成の市町村合併を総括するかたちで,市町村間の財政格差,歳入総額と地

方交付税の肥大化,職員数への影響,議員定数と議員報酬への影響について分析考察し,財政力指

数と経常収支比率の変化を通して合併の影響をまとめている。分析は,変動係数,ジニ係数,タイ

ル尺度とその要因分解,シフト・シェア分析及びその応用分析を組み合わせて用いている。分析の

結論は,納税者の担税力の増大を伴わない国庫支出金と合併市町村における普通交付税の増加によ

る歳入の拡大で,2009 年度時点では削減効果は認められない。また,合併市町村の議員数は減少

しているが,まだ途上にあり,合併によって議員報酬の算定基礎が上がったため合併市町村は上昇

しているが,非合併市町村は減少している,としている。

.市町村合併の効果分析

()市町村合併の推移

平成の時代,国は地方分権を進めるため地方行政に係る様々な制度や法律等を改正した。なかで

も,「市町村の合併の特例に関する法律」の改廃,新設は,市町村合併を後押しし,市町村数は

2000 年度末 3,227 から 2019 年 10 月 1 日現在 1,718 にまで減少した。

「市町村の合併の特例に関する法律」(旧・合併特例法)は,1965 年 3 月 29 日に施行,2005 年

3 月 31 日に失効したが,翌 4 月 1 日から「市町村の合併の特例等に関する法律」として内容を新

たにして再度施行し,2010 年 4 月 1 日に再び「市町村の合併の特例に関する法律」と改題された。

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4 東京都特別区は含まず,北方領土 6 村を除く

5 道州制と町村に関する研究会と全国町村会(2008)pp6971

表 年度末以降の市町村数の推移

時 点 政令市 市 町 村 市町村数注

1989.4.1 11 644 2,000 591 3,246

2000 年度末 12 658 1,990 567 3,227

2005 年度末 14 763 846 197 1,821

2010 年度末 19 767 757 184 1,727

2015 年度末 20 770 745 183 1,718

2019.10.1 20 772 743 183 1,718

注東京都特別区は含まず,国の公表値から北方領土 6 村を除く

出所総務省,e-Stat「市町村数を調べる」(2020.1.31)

――

この間,2000 年 4 月 1 日施行の「地方分権一括法」によって旧・合併特例法を改正し,市町村合

併を促進した。2000 年度の改正は,合併特例債と地方交付税の合併算定替の期間延長を時限法と

して施行した。この結果,2001 年度から 2005 年度末までに 2000 以上の市町村が合併して 2005

年度末には 1,821 に減少し,2015 年度末には 1,718 となり,その後,2 町がそれぞれ市に移行し

たことから,数としては 1,718 で現在に至っている4。旧・合併特例法の改正において,町から市

への移行要件を特例として 5 万人から 3 万人に引き下げたことにより,合併により市に移行した

町村も多い。

こうした合併を経た 2008 年 10 月,「道州制と町村に関する研究会」と「全国町村会」の報告

書5 から,市町村合併を選択した主な理由を拾い上げると,◯財政的な危機感,◯高度化・多様化

する行政需要と広域行政への対応,◯国・県からの指導◯地域の活性化,◯従来からの広域連携の

延長,◯地域の一体感の醸成による合併気運の高まり,◯単独行政を選択した場合の疎外感へのお

それ,◯アンケート等による住民の意見の反映,◯市制移行人口 3 万人特例の適用,が記されて

いる。

このなかで着目すべき点は,◯,◯,◯といった政治的配慮によって合併を進めた市町村が多い

点である。◯に関する個別の意見として,「合特例債の部分を自分たちが確保しておかなければ,

将来,財政運営が立ちいかなくなったとき合併を選択しなかった理由を住民に説明できない」,「合

併特例債や県の支出金を得ることのできるメリットを重視」,「合併する必要はなかったが,県から

合併重点支援地域に指定されるなど,時代が急速に合併の方向に向いていった」,「人口 2,000 人足

らずの村が,国や県に相反して単独行政を選択することは無理であると判断した」など合併町村の

なかには,時限的な特例や周辺市町村に歩調を合わせるかたちで合併を行った市町村もある。これ

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6 山下耕治(2001)

表 本研究で対象とした市町村の合併の推移

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

201115年度合併 36 36 36 36 24 18 18 18 18 15 15 7 7 6 6 6

200610年度合併 211 211 211 210 194 145 128 117 101 54 54 54 54 54 54 54

200105年度合併 1,860 1,855 1,843 1,764 1,180 538 538 538 538 538 538 538 538 538 538 538

非合併 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110 1,110

注福島県 9 町村,東京都特別区,東京都三宅村を除く

――

は,市町村税の超過課税を選択するか否かの判断と同様6,地方自治が周辺市町村の動向に左右さ

れる傾向があることを示す。

()市町村合併による財政力指数の変化

本研究での分析は,東京特別区と 2000 年に発生した火山噴火による東京都三宅村及び 2011 年

3 月の東日本大震災で避難指示区域となった福島県の 9 町村を除き,2000 年度末 3,217 市町村,

2005 年度末 1,811 市町村,2010 年度末 1,717 市町村,2015 年度末 1,708 市町村を対象とした。

2000 年度,2005 年度及び 2010 年度末時点の市町村は 2015 年度末の 1,708 市町村に廃置分合処

理を行い,合併前は仮想都市とした。表 3-2 は,合併の時期による市町村数の推移で,下段か

ら,非合併は 1,110 市町村,2001 年度から 2005 年度末までに合併が完了した市町村は 1,860 が

538 になり,2010 年度までに合併が完了した市町村は 211 が 54 に,2015 年度までの合併完了は

36 が 6 市町村になったことを示す。

市町村合併は,「基礎的自治体の自立性と行財政基盤の充実強化」を目的のひとつとしているこ

とから,行財政基盤の充実強化を量る指標として,財政力指数を用いて,その変化を人口と人口構

成及び歳入面の指標を変数として回帰分析を行い,市町村合併が地方財政にもたらした影響を検証

する。

図 31 では,表 32 に対応する期間,各年度の市町村ごとの財政力指数を非合併と合併時期別

に単純平均し,その推移を示した。図は,表 32 の市町村を対象として,廃置分合処理を行わな

い現実の市町村を対象に財政力指数の推移を,合併時期による 3 区分と非合併市町村との 4 つに

分けて,それぞれの年度別平均をプロットしている。

表 32 にように,2003,2004 年度から合併が本格化し,脆弱な町村が吸収統廃合されたことに

より,2000 年度から 2005 年度にかけて財政力指数は右肩上がりで上昇している。しかし,多く

の市町村が合併を完了した 2005 年度を起点とすると 2005 年度までに合併を完了した市町村の財

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図 ~年度の市町村合併に伴う財政力指数の推移

7 2000 年度に黒埼町を編入した新潟市は 終合併が 2005 年度であるため該当しない。

――

政力指数は非合併の市町村と同じ様に 2008 年度をピークとして下落し,2015 年度は合併直後の

2005 年度の水準を下回っている。

()市町村の財政力強化に関する検証

■分析方法

財政力指数の分析手順及び分析方法は以下のとおりである。

◯2015 年度末時点において,財政力指数を被説明変数とし,国勢調査,地方財政状況調査の指

標を説明変数とする横断面での重回帰分析によって,市町村合併を介して財政力指数に影響

を与えた変数を絞り込み,その関係を踏まえて 2000,2005,2010 の各年度における財政力指

数と絞り込んだ説明変数の関係を検証した。回帰式では,表 32 及び図 31 と同じ様に 3 区

分した合併市町村に非合併市町村を加えた 4 区分にして,それぞれの年度末時点での合併済

み(=1)か否(=0)かにより合併後ダミー変数を適用した。複数時点で合併を行った市町

村は 終合併時点に拠る。2000 年度末を初期時点とすることから,2000 年度末は合併後ダ

ミー変数の適用はない7。分析対象各年度における合併後ダミー変数の適用方法は後掲し

た※。また,単年度の回帰分析で用いるモデル式は以下のとおりである。

Yi=a1・X1i+a2・X2I+…+an・Xni+b1D1I+b2D2I+b3D3I+C+ui (1)

Y財政力指数(自然対数)

X国勢調査,地方財政状況調査のから抽出した変数(説明変数)

a偏回帰係数 C定数項 u誤差 i市町村

D12001 年度から 2005 年度末の間に合併した市町村(2005,2010,2015 年度)

D22006 年度から 2010 年度末の間に合併した市町村(2010,2015 年度)

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8 奥井(2015)は「個別効果」,山本勲(2015)は「固有効果」としている。

※合併後ダミー変数 D1D2D3 の適用方法

回帰分析で用いている合併後ダミー変数は以下の様に振り当てている。

市町村の合併状況(サンプル)20012005

合併後ダミー変数

20062010

合併後ダミー変数

20112015

合併後ダミー変数

A 市(非合併市町村) 0 0 0

B 町(2000/10/1 合併市町村) 0 0 0

C 村(2002/10/1 合併市町村) 1 0 0

D 町(2006/3/31 合併市町村) 0 1 0

E 市(2008/10/1 合併市町村) 0 1 0

F 市(2014/10/1 合併市町村) 0 0 1

――

D32011 年度から 2015 年度末の間に合併した市町村(2015 年度)

◯社会科学の実証分析では被説明変数と説明変数の間での因果関係が生じているのが通常である

ため(欠落変数バイアス),それを回避するため,個別効果8 を除去した固定効果モデルを用

いた。方法は,2000,2005,2010,2015 年度のパネルデータを作成し,各市町村のそれぞれ

の変数について平均からの偏差(以下,「偏差」という)を求めて個別効果を除去し合併の影

響を検証した。

d(Yit)=a1・d(X1it)+a2・d(X2it)+・・+an・d(Xnit)

+b1D1i+b2D2i+b3D3i+c+eit (2)

d(Yit)=Yi.t-aveYi.

d(Xkit)=Xkit-aveXki.

aveYii 市町村の財政力指数の 4 ヵ年度平均

.aveXkii 市町村の変数 Xk の 4 ヵ年度平均

t分析対象年度 2000,2005,2010,2015 年度

a偏回帰係数 c定数項 e個別効果を除去した誤差 k変数番号

■分析対象

分析対象市町村は 2015 年度末の 1,708 市町村について 2000,2005,2010 年度末の廃置分合処

理を行った。回帰分析における変数は,財政力指数を被説明変数として,説明変数は総務省が公表

している国勢調査,地方財政状況調査から抽出し,合併後ダミー変数を加えた。

■被説明変数の財政力指数

総務省は,市町村別の財政力指数を 1980 年度以降,旧市町村の数値は公表しているが,合併市

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町村について,合併前の廃置分合処理による指数は公表していない。ただし,全市町村の 2000 年

度以降の基礎財政収入額と基礎財政需要額は公表しているので,分析対象各年度 1,708 市町村のう

ち,廃置分合処理による公表値のない 2000 年度 538 市町村,2005 年度 60 市町村,2010 年度 6

市町村については,2000 年度において 3 ヵ年平均ができないこと及び合併前の算定基礎係数が異

なることから,公表している当該年度の基礎財政収入額を基礎財政需要額で除した値を採用した。

■年度別の回帰分析結果

分析結果は表 33 のとおりで,説明変数は,偏回帰係数が有意か否かを含めて観察するため,

各年度とも同じ説明変数を採用した。被説明変数に対する説明変数の影響は以下の様に読み取れる。

「人口総数(自然対数)」は,市町村の規模を表す変数であり,4 ヵ年度の回帰式で有意水準を満

たし,標準偏回帰係数も被説明変数への寄与が高いことを示している。この結果は,各年度におい

て財政力指数は市町村の規模との関連が強いことを示唆している。「65 歳以上人口割合」は,市町

村の高齢化比率であり,山間部の町村など利便性の劣る市町村で割合が高いため,財政力指数との

単相関はいずれの年度も負となっているが,回帰分析の結果では t 値が低く,偏回帰係数の符号が

安定してない。これは,後掲の固定効果分析の結果において,偏回帰係数は負,単相関も負で,t

値も 1の有意水準を満たしていることから,単年度の横断面分析では,説明変数として採用した

「自主財源/歳入総額」,「個人市町村民税/歳入総額」,「固定資産税/歳入総額」との関係など個

別の要因を除去できないためと思料する。なお,説明変数に「15 歳未満人口割合」,「15~64 歳人

口割合」を採用した場合も,単相関の正負の違いはあるが同様の結果である。「従業地(における)

第 2 次産業就業者割合」が高い市町村は,財政力指数が「1.00」以上の愛知県豊田市や刈谷市など

の大企業が立地する市町村の影響が強い。他方,人口規模が極めて小さく財政力指数が「0.5」以

下で,第 2 次産業に分類される中小の企業が立地する市町村においては第 2 次産業就業者割合が

高くなることから,財政力指数との単相関は 4 ヵ年度とも 0.25~0.32 で符号は正であるが相関は

低くなっている。

「自己財源/歳入総額」の偏回帰係数は正で,被説明変数である財政力指数との単相関も正であ

る。「自己財源/歳入総額」は市町村財政の自立性を表す指標であり,自主財源割合を高めること

によって財政力が増し,自立性の向上の基礎を固めることになる。分析結果はこうした関係を表し

ている。一般財源は,自主財源である地方税と依存財源である地方交付税の割合が多く,「一般財

源/歳入総額」が高ければ市町村財政の裁量範囲は大きくなるが,地方交付税が多い場合は,依存

財源割合を高めることから,自主財源割合を下げて財政力指数を引き下げる。分析結果において,

偏回帰係数が負で,被説明変数である財政力指数との単相関も負でありることは,こうした関係を

表している。

個人市町村民税,法人市町村民税と固定資産税は,地方税である市町村税における法定普通税で

あり,都市計画区域を有する市町村は都市計画税などの法定目的税を課しているが,都市計画区域

外の町村は個人市町村民税,法人市町村民税と固定資産税の 3 税で地方税を構成する町村が多

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表 年度別の重回帰分析(被説明変数財政力指数)

2015 年度 2010 年度

変 数 偏回帰係数標準

偏回帰係数 t 値 偏回帰係数標準

偏回帰係数 t 値

人口総数(自然対数) 0.1592 0.3333 12.9260 0.2052 0.4064 16.9039

65 歳以上人口割合 0.1420 0.0143 0.6915 -0.2650 -0.0254 -1.1983

従業地第 2 次産業就業者割合 0.8654 0.0988 6.8212 0.7925 0.0876 6.0222

自主財源/歳入総額 0.5706 0.1202 3.1448 0.8740 0.1958 4.7442

一般財源/歳入総額 -0.4862 -0.0529 -2.8067 0.3332 0.0289 1.9009

個人市町村税/歳入総額 1.8578 0.1404 4.4886 0.1706 0.0134 0.4848

法人市町村税/歳入総額 1.7462 0.0594 3.2496 2.5811 0.0683 3.7555

固定資産税/歳入総額 3.0133 0.3093 10.9317 2.2132 0.2499 7.9730

200105 合併後ダミー 0.0428 0.0283 1.6633 0.0295 0.0188 1.1134

200610 合併後ダミー -0.0612 -0.0152 -1.0689 -0.0905 -0.0217 -1.5118

201115 合併後ダミー -0.1332 -0.0112 -0.8223 ― ― ―

定数項 -2.6055 -14.6534 -3.2793 -18.6069

回帰式 F 値/修正済決定係数 347.0320(P<0.001)修正 R20.6904 367.1738(P<0.001)修正 R20.6820

2005 年度 2000 年度

変 数 偏回帰係数 標準偏回帰係数 t 値 偏回帰係数 標準

偏回帰係数 t 値

人口総数(自然対数) 0.2467 0.4272 20.1911 0.2813 0.4307 23.4396

65 歳以上人口割合 0.3363 0.0289 1.3431 -0.1360 -0.0101 -0.4753

従業地第 2 次産業就業者割合 0.6943 0.0699 4.9475 0.5446 0.0647 4.5483

自主財源/歳入総額 0.5462 0.1136 3.5103 1.4619 0.2701 6.7380

一般財源/歳入総額 0.2434 0.0248 1.7398 1.0431 0.0851 5.4061

個人市町村税/歳入総額 0.4277 0.0278 1.1027 -0.6428 -0.0399 -1.4439

法人市町村税/歳入総額 0.6529 0.0223 1.2309 -0.3787 -0.0083 -0.4164

固定資産税/歳入総額 3.8962 0.4004 14.8657 2.7133 0.2634 8.5958

200105 合併後ダミー 0.0511 0.0291 1.8505 ― ― ―

200610 合併後ダミー ― ― ― ― ― ―

201115 合併後ダミー ― ― ― ― ― ―

定数項 -4.0253 -24.0339 -4.8228 -24.6579

回帰式 F 値/修正済決定係数 463.5685(P<0.001)修正 R20.7092 530.1327(P<0.001)修正 R20.7126

注: P<0.01 : P<0.05 : P<0.1

――

い。個人市町村民税は税率が全国一律で超過課税を行っている市町村も極めて少ないため,分析対

象期間での「個人市町村民税/歳入総額」の平均が 0.08 前後で変化は少ない。市部郡部の別では,

三大都市圏においては 0.1 から 0.2 前後,県庁所在都市や中核市で 0.1 前後,他の地方市部はバラ

ツキが大きいのに対して,地方の郡部は 0.05 前後で,さらにはそれを下回る町村もある。また,

郡部には,人口が少なく,過疎化と高齢化が進むなか,法人市町村民税を納める企業が減少した結

果として個人市町村民税の割合が高くなり,分析において有意性が低くなる場合がある。法人市町

村民税は,企業の大都市集中が反映して市町村税のなかで,償却資産に係る固定資産税とともに,

市町村間での偏在性が大きい税である。そのため,市町村の法人市町村民税の税収割合は,個人市

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――――

町村民税と固定資産税に比べると小さくなるように制度設計されており,分析対象期間の「法人市

町村民税/歳入総額」は 0.02 前後である。また,市町村間の偏在性を是正するため,国の所得再

分配政策の観点から国と地方公共団体の間で税源譲渡が行われ,たびたび税率が改正されている。

こうした点から,財政力指数が 0.1 を下回る市町村が多かった 2000,2005 年度では偏回帰係数の

t 値は低く,合併後市町村が多くなった 2010 年度以降の t 値は有意水準を満たし,符号は正にな

っている。「固定資産税/歳入総額」の上記期間の比率は,0.11 から 0.14 で,固定資産税は安定

した基幹税と言われ,分析結果からも,標準偏回帰係数が 0.25 から 0.4 で,財政力指数に安定し

て寄与していることを示唆している。

「合併後ダミー変数」は, 終合併時点から「1」とし,合併前は非合併と同じ「0」を適用して

いる。2005 年度の回帰式では 2001 年度から 2005 年度までに合併完了した市町村のみ「200105

合併後ダミー変数」だけが説明変数となり,2010 年度の回帰式では「200105 合併後ダミー変数」

と 2006 年度から 2010 年度までに合併完了した市町村に「200610 合併後ダミー変数」の 2 つが

説明変数で,2015 年度回帰式では 2011 年度から 2015 年度に合併完了した市町村において「2011

15 合併後ダミー変数」を加えた 3 つの合併後ダミー変数が説明変数となる。分析結果から,

「200105 合併後ダミー変数」は信頼性が十分とは言えないまでも,合併の効果が認められる可能

性を示唆している。一方,「200610 合併後ダミー変数」と「201115 合併後ダミー変数」は単相

関では正であるが,2010 年度と 2015 年度で偏回帰係数が負となっている。次に述べる固定効果

分析においては,偏回帰係数はいずれも正で有意水準を満たしていることから,単年度を対象とし

た横断面分析での限界を表している。

■固定効果モデルによる検証

上記では,各年度の横断面での財政力指数に対する合併の影響を考察した。分析は,前記(2)式

に基づいて,2000,2005,2010,2015 年度のパネルデータを作成し,採用する変数について個別

効果を除去するため 4 ヵ年度それぞれの偏差によるデータを作成し,被説明変数 d(Yit),説明変

数 d(X1It)とするモデル式を用いて表 34 の結果を得た。ただし,合併後ダミー変数は,単年度

横断面分析と同じく,合併 終年度以降にダミー変数「1」を適用した。すなわち,合併前は「0」

で,合併後は「1」となる。また,非合併市町村はすべて「0」である。分析対象は 6,832(=

1,708 市町村×4 ヵ年)である。

分析結果から,「人口総数(自然対数)」は,市町村の規模を示す変数として,偏回帰係数が正で,

標準回帰係数も 0.1649 と被説明変数への寄与は大きいことから,財政力指数に対して,合併によ

る規模拡大の効果が大きいことを示している。「65 歳以上人口割合」は,単相関は正であるが,偏

回帰係数は負となる。これは,「人口総数」と「従業地第 2 次産業就業者割合」との相関が-0.623,

-0.649 で,「201115 合併後ダミー」とも 0.775 の相関があり,多重共線性の統計量を示すトレ

ランスが 0.1 をやや下回ることから生じていると思料する。「従業地第 2 次産業就業者割合」の偏

回帰係数は,有意水準は満たしているが,単年度の回帰式では正で,固定効果分析では負になる。

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――

表 固定効果モデルによる検証(被説明変数財政力指数の偏差)

変 数 偏回帰係数標準

偏回帰係数 t 値 P 値 単相関 偏相関

人口総数(自然対数) 0.2229 0.1649 15.4418 P<0.001 -0.0237 0.1838

65 歳以上人口割合 -0.2781 -0.1114 -4.3195 P<0.001 0.1930 -0.0522

従業地第 2 次産業就業者割合 -0.0910 -0.0361 -2.9926 0.0028 -0.3582 -0.0362

自主財源/歳入総額 0.2239 0.1063 11.0098 P<0.001 0.2614 0.1322

一般財源/歳入総額 -0.5280 -0.3292 -28.2379 P<0.001 -0.1050 -0.3236

個人市町村税/歳入総額 0.0881 0.0095 0.8850 0.3762 0.1428 0.0107

法人市町村税/歳入総額 0.5454 0.0547 6.3401 P<0.001 0.0358 0.0766

固定資産税/歳入総額 2.0775 0.5501 48.9403 P<0.001 0.4162 0.5099

2005 年度ダミー 0.0929 0.4237 28.1603 P<0.001 0.2608 0.3228

2010 年度ダミー 0.1381 0.6297 27.7841 P<0.001 0.2975 0.3189

2015 年度ダミー 0.1155 0.5264 16.1963 P<0.001 -0.0542 0.1925

200105 合併後ダミー(2005, 10, 15) 0.0165 0.0740 8.7545 P<0.001 0.2146 0.1054

200610 合併後ダミー(2010, 15) 0.0278 0.0365 4.5220 P<0.001 0.0617 0.0547

201115 合併後ダミー(2015) 0.0501 0.0156 1.9636 0.0496 0.0161 0.0238

定数項 -0.0910 -24.9693 P<0.001

修正済決定係数 0.5690

回帰式の F 値,P 値 645.1028 P<0.001

注: P<0.01 : P<0.05 : P<0.1

――

これは,分析対象期間の「従業地第 2 次産業就業者割合」が減少しており,偏差データが,2000

年度は正で 2015 年度は負となるケースが多いため正負が逆転していることで表 3-3 と整合して

いる。

「自主財源/歳入総額」と「一般財源/歳入総額」は,表 33 の単年度の回帰式と変わることな

く,有意水準を満たし,自主財源,一般財源で正負は分かれるが,被説明変数に対する影響は安定

していることを示唆している。「個人市町村民税/歳入総額」は,t 値が低く,有意水準を満たし

ていない。これは,単年度の回帰分析の説明において記したように,個人市町村民税割合が,首都

圏と地方といった立地特性,市町村の規模,産業構造等の市町村の特性が強く反映しているため,

個別効果においても除去できない要因が影響していると思料する。「法人市町村民税/歳入総額」

は,市町村間での偏在性は大きいが,平均的な歳入割合は低く,分析対象期間においても偏在性を

是正する方向に税率改正があり,安定的な税収となるような仕組みが図られていることを示唆して

いる。「固定資産税/歳入総額」は,ダミー変数を除いた説明変数のなかでは,標準偏回帰係数が

大きく,地方税の 40 から 50を占める基幹税としての位置づけを明示している。ただ,近年,固

定資産税は従価的な要素を強めている点から,市町村の財政力指数との関係が深いことは,資本市

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――

9 佐藤主光(2011)pp159165

10 宮崎智視・佐藤主光(2013)

――

場に左右され易くなっていることを示すものでもある。この点について,佐藤(2011)は,資本

課税の性格を強くし,「固定資産税が応益課税から乖離」してきていることを説明している9。また,

宮崎・佐藤(2013)は,固定資産税が本来の応益課税として位置づけていくためには,「地方分権

が進展し,地方財政の責任が徹底」されることが必要であると説く10。

固定効果分析では,除去した個別効果に含まれない時系列的な変動を吸収し,合併の効果の有無

を明確にするため,年度ダミー変数を採用した。「2005 年度ダミー」,「2010 年度ダミー」,「2015

年度ダミー」変数はいずれも有意水準を満たし,標準偏回帰係数も大きいことから,説明変数とし

て採択した目的を担っている。「合併後ダミー変数」は,分析対象期間での対応は先に述べたとお

り, 終合併時点をもってダミー変数「1」を適用している。「200005 合併」「200610 合併」

「201115 合併」のダミー変数の偏回帰係数は,「201115 合併」の t 値がやや低いが,いずれも有

意水準を満たし,符号はすべて正である。この結果から,経年的な推移において,合併市町村の財

政力指数をプラス側に押し上げる要因になっていたこと,さらには,標準偏回帰係数の大小から,

「200005 合併」の市町村において 10 年を経た時点で市町村財政の基盤固めに効果を及ぼした可

能性を示唆している。単年度の回帰分析では,「200610 合併」「201115 合併」の偏回帰係数は負

であったことからも,この結果は,パネルデータによる固定効果分析に依拠するところである。単

年度の横断面分析においても,分析対象時点前後の経済的事象の変化から影響を受けているが,そ

の個別の影響を除去できないのに対して,固定効果分析によってその影響を除去できる点は有用性

が高い。

()市町村合併が与えた地方財政への影響

以上により,市町村合併は財政力指数をプラス側に押し上げたことを示唆する結果を得た。表

35 は,併非合併市町村の財政力指数の分布を合併前と合併後を比較している。

表 35 では,本研究で分析対象期間である合併が始まる直前の 2000 年度末と合併が終了した

2015 年度末おいて,合併市町村と非合併市町村に分け,財政力指数区分に基づいて,年度ごとに

市町村数とその累積割合を集計した。合併市町村は,合併前の 2000 年度末時点は 1,860 が合併後

の 2015 年度末は 538 と大きく減少し,非合併市町村はいずれの年度も 1,110 である。財政力指数

区分ごとの市町村数の累積割合が 50を超えるのは(網掛け部分),合併市町村は財政力指数区分

が「0.1 以上 0.2 未満」の区分から「0.4 以上 0.5 未満」に変化しているが,非合併市町村は「0.4

以上 0.5 未満」の区分から変化していない。合併非合併別の平均財政力指数においても,合併市町

村の上昇幅が非合併の上昇幅を上回っている。また,財政力指数の分布は,合併市町村の方が非合

併市町村よりも縮小している。

この表からも上記の固定効果分析による財政力指数に対する合併の効果は裏付けられる。

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――

表 年度までの合併市町村と非合併市町村における合併前と合併後の財政力指数の分布

財政力指数区分

200005 年度合併市町村 非合併市町村

2000(合併前) 2015(合併後) 2000 2015

市町村数 累積割合 市町村数 累積割合 市町村数 累積割合 市町村数 累積割合

0.01 以上 46 2.5 0.0 29 2.6 23 2.1

0.1 以上 459 27.2 34 6.3 210 21.5 193 19.5

0.2 以上 450 51.3 95 24.0 158 35.8 169 34.7

0.3 以上 292 67.0 104 43.3 133 47.7 115 45.0

0.4 以上 214 78.5 101 62.1 120 58.6 106 54.6

0.5 以上 162 87.3 54 72.1 103 67.8 102 63.8

0.6 以上 89 92.0 51 81.6 99 76.8 95 72.3

0.7 以上 75 96.1 41 89.2 71 83.2 92 80.6

0.8 以上 43 98.4 38 96.3 72 89.6 71 87.0

0.9 以上 15 99.2 14 98.9 43 93.5 88 95.0

1.0 以上 6 99.5 2 99.3 25 95.8 29 97.6

1.1~1.5 7 99.9 4 100.0 41 99.5 24 99.7

1.6 以上 2 100.0 100.0 6 100.0 3 100.0

総 計 1,860 538 1,110 1,110

平均財政力指数 0.347 0.474 0.481 0.498

注東京都特別区,三宅村及び福島県 9 町村を除く

――

.まとめ

本研究は,市町村合併が,その目的である「基礎的自治体の自立性と行財政基盤の充実強化」の

うち後の「行財政基盤の充実強化」にどの様に影響したかについて財政力指数を用いて検証した。

単年度横断面分析と固定効果分析を併用して,合併した市町村は,人口規模の拡大を伴いながら財

政力指数を押し上げ,非合併市町村に比べて市町村間の格差を是正したことを示唆する結果を得た。

後に,市町村合併の目的でもある「基礎的自治体の自立性」という面について,回帰分析で説

明変数として採択した「自主財源/歳入総額」を用いてその推移を概観する。

図 41 は,市町村の自主財源割合の 2000 年度から 2015 年度の各年度の推移を表している。

図から,合併と非合併に関わらず 2000 年度よりも 2015 年度は減少している。これは,市町村合

併の大きな目的である地方分権の確立への方向性が実態として変わってきていることを示す。すな

わち,自主財源に対する依存財源が増えていることを意味し,地方交付税が減少しているなかで依

存財源が増えているのは,国庫支出金,都道府県支出金等の補助金が増加していることにつなが

る。この傾向は,合併の影響ではなく,国の施策としてそうした方向になってきていることを示

し,地方分権推進委員会が掲げた市町村財政の自主性の拡充からとは逆の流れになっている。

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――

図 自主財源/歳入総額の推移

11 地方分権推進委員会(2001)第 4 章

――

本研究が示すように,自主財源の強化は財政基盤の強化につながる点からも,合併の効果を人口

規模の拡充だけに依存するならば,その効果は長くは続かない。

平成の大合併により,歳出面での削減は一定の効果が認められたことは先行研究で検証されてい

るが,歳入面から地方の財政力の充実と自主性を拡充し,財政的基盤を強化するという点について

の研究は少ない。本研究で,市町村合併は当初の目的である財政力の強化という点はある程度の効

果が確認できたが,それと表裏一体であるはずの自主財源を拡充し自立性を確保するという点は分

析が足りていないが危うい状況にあることも見えてきた。2005 年度までに多くの市町村が合併

し,当初の目的に基づいて市町村行政はスタートしたものの,2010 年度前後で,その流れが変わ

ってきていたことが推測させる。それが,リーマンショックによる影響か,政治的な判断なのかは

分からないが,市町村の歳入構造は当初の目的から外れてきている。この点が,合併を中途半端な

形にとどめているようにも見える。

地方分権推進委員会は次の様に指摘している11。

地方公共団体は,自主財源である地方税収入についてその税率設定権を含む課税自主権を積極的に行使

し,行政サービス水準と地域住民の地方税負担のバランスの当否を地域住民に問いかけていくべきであ

る。わが国のこれまでの地方自治は,国の地方税法に定められた法定税をその標準税率で課税して得た地

方税収入に,国から配分される地方交付税収入や国庫負担金収入,国に申請し交付を受けた国庫補助金収

入などを追加した歳入の総額を,いかなる行政サービスに配分するかという「歳出の自治」にのみ専念し

てきた観があるが,これからの分権型社会の地方自治は,地域住民にどれだけの地方税負担を求めるのか

という「歳入の自治」まで含むものでなければならない。

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――

12 持田信樹・林正義(2018)pp1418

――

地方財政において「歳入の自治」が達成されることによって,歳出における裁量の範囲が広が

る。市町村合併によって,人口規模の一定数までは規模の経済性がもたらす効率化を図ることを可

能にする。効率化による歳出削減は合併の効果である。また,財政力も規模に負うところは大き

い。歳入面での望ましい都市規模が,歳出面と同じかどうかについては,本研究では踏み込んでい

ない。ただ,今後,少子高齢化が今以上の早さで進むならば,2000 年代当初の地方分権と地方財

政の考え方を再吟味が必要である。この点に関して,持田・林(2018)12 は,「日本では,(中略)

国と地方が同一の課税客体に重複して課税していること」から,国から地方への財政移転に依存

し,自主財源が拡大しないとする考え方もあり,経済学者間でも議論があると指摘する。

合併を行わなかった 1,110 の市町村において格差は変わらず,また,自主財源の拡充という歳入

構造は,合併当初の目的から後退している。こうした点から,平成の大合併をもって完結ではな

く,まだ,途にあることは確かであり,そのためには,平成の合併の総括を行うとともに議論を整

理し,より明確な考え方を掲げて再合併を行う必要がある。また,3(1)で紹介した全国町村会の

報告にある「合併特例債」は,市町村合併を進める起爆剤になったかと思料するが,今回はその点

の考察には至らなかった。本研究は,そうしたなかで,市町村の財政基盤の充実に向けた望ましい

地方税のあり方を考察する端緒としたい。

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――

【参考回帰分析の結果】

. 年度の結果

◯基本統計量 n=,

変 数 平 均 不偏分散 標準偏差 小値 大値

人口総数(自然対数) 10.157 1.933 1.390 5.313 15.047

65 歳以上人口割合 0.221 0.005 0.067 0.076 0.472

従業地第 2 次産業就業者割合 0.325 0.012 0.108 0.030 0.692

自主財源/歳入総額 0.393 0.028 0.168 0.096 0.913

一般財源/歳入総額 0.606 0.005 0.074 0.262 0.806

個人市町村税/歳入総額 0.079 0.003 0.056 0.002 0.307

法人市町村税/歳入総額 0.022 0.000 0.020 0.001 0.250

固定資産税/歳入総額 0.130 0.008 0.088 0.004 0.690

財政力指数(自然対数) -0.317 0.825 0.908 -5.628 2.925

◯回帰式に含まれる変数(決定係数,P 値は本文表を参照)

変 数 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 単相関 偏相関 トレランス

人口総数(自然対数) 0.2813 0.0120 0.4307 0.7020 0.4943 0.4986

65 歳以上人口割合 -0.1360 0.2860 -0.0101 -0.6070 -0.0115 0.3747

従業地第 2 次産業就業者割合 0.5446 0.1197 0.0647 0.2590 0.1097 0.8321

自主財源/歳入総額 1.4619 0.2170 0.2701 0.7669 0.1613 0.1048

一般財源/歳入総額 1.0431 0.1929 0.0851 0.2565 0.1300 0.6799

個人市町村税/歳入総額 -0.6428 0.4452 -0.0399 0.6641 -0.0350 0.2204

法人市町村税/歳入総額 -0.3787 0.9094 -0.0083 0.6023 -0.0101 0.4235

固定資産税/歳入総額 2.7133 0.3157 0.2634 0.7264 0.2041 0.1793

定数項 -4.8228 0.1956

――

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――

. 年度の結果

◯基本統計量 n=,

変 数 平 均 不偏分散 標準偏差 小値 大値

人口総数(自然対数) 10.133 1.997 1.413 5.366 15.091

65 歳以上人口割合 0.251 0.005 0.070 0.085 0.534

従業地第 2 次産業就業者割合 0.278 0.007 0.082 0.013 0.529

自主財源/歳入総額 0.419 0.029 0.170 0.086 1.163

一般財源/歳入総額 0.587 0.007 0.083 0.211 1.489

個人市町村税/歳入総額 0.075 0.003 0.053 0.004 0.271

法人市町村税/歳入総額 0.025 0.001 0.028 0.000 0.459

固定資産税/歳入総額 0.140 0.007 0.084 0.007 0.601

200105 合併後ダミー 0.315 0.216 0.465 0.000 1.000

財政力指数(自然対数) -0.266 0.666 0.816 -5.589 2.986

◯回帰式に含まれる変数(決定係数,P 値は本文表をを参照)

変 数 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 単相関 偏相関 トレランス

人口総数(自然対数) 0.2467 0.0122 0.4272 0.6970 0.4400 0.3806

65 歳以上人口割合 0.3363 0.2504 0.0289 -0.5914 0.0326 0.3673

従業地第 2 次産業就業者割合 0.6943 0.1403 0.0699 0.2835 0.1192 0.8537

自主財源/歳入総額 0.5462 0.1556 0.1136 0.7307 0.0849 0.1626

一般財源/歳入総額 0.2434 0.1399 0.0248 0.1156 0.0422 0.8399

個人市町村税/歳入総額 0.4277 0.3879 0.0278 0.6443 0.0268 0.2682

法人市町村税/歳入総額 0.6529 0.5304 0.0223 0.5387 0.0299 0.5203

固定資産税/歳入総額 3.8962 0.2621 0.4004 0.7293 0.3394 0.2348

200005 合併 0.0511 0.0276 0.0291 0.0859 0.0449 0.6885

定数項 -4.0253 0.1675

――

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――

. 年度の結果

◯基本統計量 n=,

変 数 平 均 不偏分散 標準偏差 小値 大値

人口総数(自然対数) 10.096 2.083 1.443 5.303 15.121

65 歳以上人口割合 0.279 0.005 0.070 0.092 0.572

従業地第 2 次産業就業者割合 0.258 0.006 0.081 0.015 0.503

自主財源/歳入総額 0.375 0.027 0.163 0.069 0.885

一般財源/歳入総額 0.568 0.004 0.063 0.238 0.779

個人市町村税/歳入総額 0.085 0.003 0.057 0.003 0.480

法人市町村税/歳入総額 0.019 0.000 0.019 0.000 0.379

固定資産税/歳入総額 0.129 0.007 0.082 0.004 0.621

200105 合併後ダミー 0.315 0.216 0.465 0.000 1.000

200610 合併後ダミー 0.032 0.031 0.175 0.000 1.000

財政力指数(自然対数) -0.206 0.531 0.729 -4.062 3.110

◯回帰式に含まれる変数(決定係数,P 値は本文表をを参照)

変 数 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 単相関 偏相関 トレランス

人口総数(自然対数) 0.2052 0.0121 0.4064 0.6915 0.3796 0.3222

65 歳以上人口割合 -0.2650 0.2212 -0.0254 -0.5926 -0.0291 0.4146

従業地第 2 次産業就業者割合 0.7925 0.1316 0.0876 0.2867 0.1447 0.8795

自主財源/歳入総額 0.8740 0.1842 0.1958 0.7430 0.1144 0.1094

一般財源/歳入総額 0.3332 0.1753 0.0289 -0.0209 0.0461 0.8077

個人市町村税/歳入総額 0.1706 0.3518 0.0134 0.6651 0.0118 0.2431

法人市町村税/歳入総額 2.5811 0.6873 0.0683 0.5425 0.0908 0.5629

固定資産税/歳入総額 2.2132 0.2776 0.2499 0.6887 0.1900 0.1896

200105 合併後ダミー 0.0295 0.0265 0.0188 0.0874 0.0270 0.6525

200610 合併後ダミー -0.0905 0.0599 -0.0217 0.0880 -0.0367 0.9006

定数項 -3.2793 0.1762

――

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――

. 年度の結果

◯基本統計量 n=,

変 数 平 均 不偏分散 標準偏差 小値 大値

人口総数(自然対数) 10.047 2.170 1.473 5.182 15.131

65 歳以上人口割合 0.319 0.005 0.071 0.127 0.605

従業地第 2 次産業就業者割合 0.253 0.006 0.080 0.015 0.516

自主財源/歳入総額 0.378 0.022 0.148 0.098 0.909

一般財源/歳入総額 0.538 0.006 0.076 0.164 0.802

個人市町村税/歳入総額 0.082 0.003 0.053 0.004 0.286

法人市町村税/歳入総額 0.019 0.001 0.024 0.001 0.487

固定資産税/歳入総額 0.114 0.005 0.072 0.005 0.612

200105 合併後ダミー 0.315 0.216 0.465 0.000 1.000

200610 合併後ダミー 0.032 0.031 0.175 0.000 1.000

201115 合併後ダミー 0.004 0.004 0.059 0.000 1.000

財政力指数(自然対数) -0.246 0.495 0.704 -4.065 3.139

◯回帰式に含まれる変数(決定係数,P 値は本文表をを参照)

変 数 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 単相関 偏相関 トレランス

人口総数(自然対数) 0.1592 0.0123 0.3333 0.6875 0.2995 0.2728

65 歳以上人口割合 0.1420 0.2053 0.0143 -0.5668 0.0168 0.4226

従業地第 2 次産業就業者割合 0.8654 0.1269 0.0988 0.3213 0.1634 0.8649

自主財源/歳入総額 0.5706 0.1814 0.1202 0.7380 0.0761 0.1242

一般財源/歳入総額 -0.4862 0.1732 -0.0529 -0.1206 -0.0680 0.5113

個人市町村税/歳入総額 1.8578 0.4139 0.1404 0.7078 0.1084 0.1855

法人市町村税/歳入総額 1.7462 0.5374 0.0594 0.4952 0.0787 0.5430

固定資産税/歳入総額 3.0133 0.2757 0.3093 0.6968 0.2566 0.2265

200105 合併後ダミー 0.0428 0.0257 0.0283 0.0724 0.0404 0.6275

200610 合併後ダミー -0.0612 0.0572 -0.0152 0.0863 -0.0259 0.8945

201115 合併後ダミー -0.1332 0.1620 -0.0112 0.0399 -0.0200 0.9772

定数項 -2.6055 0.1778

――

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――

. 固定効果モデル被説明変数 財政力指数(自然対数)

◯基本統計量 n=,

変数(平均偏差) 平 均 不偏分散 標準偏差 小値 大値

人口総数(自然対数) 0.000 0.005 0.070 -0.403 0.453

65 歳以上人口割合 0.000 0.001 0.038 -0.108 0.139

従業地第 2 次産業就業者割合 0.000 0.001 0.038 -0.123 0.291

自主財源/歳入総額 0.000 0.002 0.045 -0.308 0.582

一般財源/歳入総額 0.000 0.004 0.059 -0.440 0.647

個人市町村税/歳入総額 0.000 0.000 0.010 -0.118 0.196

法人市町村税/歳入総額 0.000 0.000 0.010 -0.203 0.176

固定資産税/歳入総額 0.000 0.001 0.025 -0.390 0.327

2005 年度ダミー 0.250 0.188 0.433 0.000 1.000

2010 年度ダミー 0.250 0.188 0.433 0.000 1.000

2015 年度ダミー 0.250 0.188 0.433 0.000 1.000

200105 合併後ダミー 0.236 0.180 0.425 0.000 1.000

200610 合併後ダミー 0.016 0.016 0.125 0.000 1.000

201115 合併後ダミー 0.001 0.001 0.030 0.000 1.000

財政力指数(自然対数) 0.000 0.009 0.095 -0.987 1.092

◯回帰式に含まれる変数(信頼区間等,決定係数,P 値は本文表をを参照)

変 数 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 単相関 偏相関 トレランス

人口総数(自然対数) 0.2229 0.0144 0.1649 -0.0237 0.1838 0.5530

65 歳以上人口割合 -0.2781 0.0644 -0.1114 0.1930 -0.0522 0.0948

従業地第 2 次産業就業者割合 -0.0910 0.0304 -0.0361 -0.3582 -0.0362 0.4332

自主財源/歳入総額 0.2239 0.0203 0.1063 0.2614 0.1322 0.6765

一般財源/歳入総額 -0.5280 0.0187 -0.3292 -0.1050 -0.3236 0.4642

個人市町村税/歳入総額 0.0881 0.0995 0.0095 0.1428 0.0107 0.5455

法人市町村税/歳入総額 0.5454 0.0860 0.0547 0.0358 0.0766 0.8480

固定資産税/歳入総額 2.0775 0.0424 0.5501 0.4162 0.5099 0.4993

2005 年度ダミー 0.0929 0.0033 0.4237 0.2608 0.3228 0.2787

2010 年度ダミー 0.1381 0.0050 0.6297 0.2975 0.3189 0.1228

2015 年度ダミー 0.1155 0.0071 0.5264 -0.0542 0.1925 0.0597

200105 合併後ダミー 0.0165 0.0019 0.0740 0.2146 0.1054 0.8842

200610 合併後ダミー 0.0278 0.0061 0.0365 0.0617 0.0547 0.9702

201115 合併後ダミー 0.0501 0.0255 0.0156 0.0161 0.0238 0.9952

定数項 -0.0910 0.0036

――

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【参考文献】

伊藤敏安(2017)『2000 年代の市町村財政』広島大学出版会。

奥井亮(2015)「固定効果と変量効果」『日本労働研究雑誌』No.657 pp69。

佐藤主光(2011)『地方税改革の経済学』日本経済新聞社出版社。

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地方分権推進委員会(2000)「市町村合併の推進についての意見―分権型社会の創造―」2000.11.27 国会図

書館アーカイブ https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8313852/www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/gap-

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道州制と町村に関する研究会・全国町村会(2008)『「平成の合併」をめぐる実態と評価』http://

www.zck.or.jp/teigen/gappei-ma.pdf 2019.10.14 閲覧。

西田百合子(2016)「平成の市町村合併の効果に関する考察」『岡山大学経済学会雑誌』47(3)pp141154。

林亮輔(2013)「市村村合併による財政活動の効率化―合併パターンを考慮した実証分析―」『会計検査研究』

47 pp2738。

宮崎智視・佐藤主光(2013)「資本への固定資産税の経済効果―固定資産税の「資本帰着説」の検証―」『経

済研究』pp303317。

持田信樹・林正義(2018)『地方債の経済分析』有斐閣。

山下耕治(2001)「地方政府の課税インセンティブ」『日本経済研究』No.43 pp155169。

山本勲(2015)『計量経済学』中央経済社。

【採用データ】

国勢調査(2000,2005,2010,2015 年)。

地方財政状況調査(2000~2016 年各年)。

国土地理協会(市町村変更情報http://www.kokudo.or.jp/marge/index.html)。