世界と日本のict...近年のai、iot化の進展により世界的にデータ...

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本章では、特集部の導入として、世界と日本の ICT の現状を概観する。 まず第 1 節では、近年の日本を含む世界の ICT 市場の動向を、コンテンツ・アプリケーション、プラットフォー ム、ネットワーク、端末市場というレイヤー別に概観する。世界のデータトラヒックは年々成長を遂げており、ま た、世界的に AI・IoT 化が急速に進展して新たな市場が登場していることもあり、概ね ICT 各市場は活性化して いる。 次に第 2 節では、ICT 市場の活性化により、データ流通が増大したことに伴う様々な課題に対応するため、世界 各国で進む ICT 利用環境整備を取り上げる。例えば、2018 年 5 月には EU 一般データ保護規則(GDPR)が施行 されるなど法制度面での整備が各国で進められている。 続いて、そのように成長を遂げている ICT が経済成長に与える影響について、日米を対象として考察する。第 3 節では、マクロ面から、1990 年代以降の経済成長に ICT が与えた影響について、日米の ICT 投資額、ICT 資本ス トック、また、成長率などから考察する。第4節ではミクロ面から、日米企業調査に基づき、ICT利活用がイノ ベーション、さらには企業の業績に与える効果の分析を行う。 世界と日本の ICT 市場の動向 1 本節では、日本を含む世界のICT市場の動向を概観する。まずは、世界のデータトラヒックの拡大状況とIoT デバイスの普及状況について述べる。次に、ICT 市場の動向を、コンテンツ・アプリケーション、プラットフォー ム、ネットワーク、端末市場というレイヤーごとに概観する。 1 データトラヒックの拡大 近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ 流通が増大している。世界のトラヒックはCisco によると、2017年から2020年にかけて約1.9倍 に増加し、2020 年には 1 か月あたり 228 エクサバ イト(EB:10 の 18 乗バイト)に達すると予測され ている。特に、モバイルデータは同期間に約3倍 と、全体の成長率を上回ることが予想される(表 1-1-1-1)。 図表 1-1-1-1 世界のトラヒックの推移及び予測(トラヒッ ク種別) 40.0 49.0 65.9 83.4 103.0 127.0 155.1 17.0 19.0 22.9 27.1 31.3 35.2 38.9 3.0 4.0 7.2 11.2 16.6 24.2 34.4 60.0 73.0 96.1 121.7 150.9 186.5 228.4 0 50 100 150 200 250 300 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 固定インターネット 予測値 (エクサバイト / 月間) マネージド IP モバイルデータ ※「固定インターネット」:インターネットバックボーンを通過するすべてのIP トラヒック ※「マネージドIP」:企業のIP-WAN トラヒック、テレビ及びVoD のIP トランスポート ※「モバイル」:携帯端末、ノートパソコン カード、モバイルブロードバンド、ゲート ウェイで生成されたモバイルデータ及びインターネットトラヒック (出典)CiscoVNI 1 世界と日本の ICT 平成 30 年版 情報通信白書 第1部 6 1ICT

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Page 1: 世界と日本のICT...近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ 流通が増大している。世界のトラヒックはCisco によると、2017年から2020年にかけて約1.9倍

本章では、特集部の導入として、世界と日本のICTの現状を概観する。まず第1節では、近年の日本を含む世界のICT市場の動向を、コンテンツ・アプリケーション、プラットフォー

ム、ネットワーク、端末市場というレイヤー別に概観する。世界のデータトラヒックは年々成長を遂げており、また、世界的にAI・IoT化が急速に進展して新たな市場が登場していることもあり、概ねICT各市場は活性化している。

次に第2節では、ICT市場の活性化により、データ流通が増大したことに伴う様々な課題に対応するため、世界各国で進むICT利用環境整備を取り上げる。例えば、2018年5月にはEU一般データ保護規則(GDPR)が施行されるなど法制度面での整備が各国で進められている。

続いて、そのように成長を遂げているICTが経済成長に与える影響について、日米を対象として考察する。第3節では、マクロ面から、1990年代以降の経済成長にICTが与えた影響について、日米のICT投資額、ICT資本ストック、また、成長率などから考察する。第4節ではミクロ面から、日米企業調査に基づき、ICT利活用がイノベーション、さらには企業の業績に与える効果の分析を行う。

世界と日本のICT市場の動向第1節本節では、日本を含む世界のICT市場の動向を概観する。まずは、世界のデータトラヒックの拡大状況とIoT

デバイスの普及状況について述べる。次に、ICT市場の動向を、コンテンツ・アプリケーション、プラットフォーム、ネットワーク、端末市場というレイヤーごとに概観する。

1 データトラヒックの拡大近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ

流通が増大している。世界のトラヒックはCiscoによると、2017年から2020年にかけて約1.9倍に増加し、2020年には1か月あたり228エクサバイト(EB:10の18乗バイト)に達すると予測されている。特に、モバイルデータは同期間に約3倍と、全体の成長率を上回ることが予想される(図表1-1-1-1)。

図表1-1-1-1 世界のトラヒックの推移及び予測(トラヒック種別)

40.0 49.0 65.9 83.4 103.0 127.0 155.117.0 19.0

22.927.1

31.335.2

38.9

3.0 4.07.2

11.216.6

24.234.4

60.0 73.096.1

121.7150.9

186.5228.4

0

50

100

150

200

250

300

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

固定インターネット 予測値

(エクサバイト/月間)

マネージドIPモバイルデータ

※「固定インターネット」:インターネットバックボーンを通過するすべてのIP トラヒック※「マネージドIP」:企業のIP-WAN トラヒック、テレビ及びVoD のIP トランスポート※「モバイル」:携帯端末、ノートパソコン カード、モバイルブロードバンド、ゲート

ウェイで生成されたモバイルデータ及びインターネットトラヒック(出典)CiscoVNI

第1章 世界と日本のICT

平成30年版 情報通信白書 第1部6

第1章世界と日本のICT

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世界のトラヒックをコンシューマー(家庭、大学など)及び企業等のビジネスの2つのセグメントでみると、コンシューマが全体の約80%とトラヒックの大半を占めている(図表1-1-1-2)。

2016年のコンシューマートラヒックのうち70%はビデオであり、その割合は2020年には80%ほどに拡大することが予測される。

2 IoTデバイス*1の急速な普及インターネット技術や各種センサー・テクノロジーの進化等を背景に、パソコンやスマートフォンなど従来のイ

ンターネット接続端末に加え、家電や自動車、ビルや工場など、世界中の様々なモノがインターネットへつながるIoT時代が到来している。

世界のIoTデバイス数の動向をみると、2017年時点で稼働数が多いのはスマートフォンや通信機器などの「通信」が挙げられる。ただ、それらは市場が成熟しているため、今後は、相対的に低成長が見込まれる。

今後は、コネクテッドカーの普及によりIoT化の進展が見込まれる「自動車・輸送機器」、デジタルヘルスケアの市場が拡大している「医療」、スマート工場やスマートシティが拡大する「産業用途(工場、インフラ、物流)」などの高成長が予測される(図表1-1-2-1、図表1-1-2-2)。

*1 IHSTechnologyの定義では、IoTデバイスとは、固有のIPアドレスを持ちインターネットに接続が可能な機器及びセンサーネットワークの末端として使われる端末等を指す。

*2 各カテゴリの範囲は以下のとおりである。 「通信」:固定通信インフラ・ネットワーク機器、2G、3G、4G各種バンドのセルラー通信及びWifi・WIMAXなどの無線通信インフラ及び端末。 「コンシューマー」:家電(白物・デジタル)、プリンターなどのPC周辺機器、ポータブルオーディオ、スマートトイ、スポーツ・フィットネス、その他。 「コンピューター」:ノートパソコン、デスクトップパソコン、サーバー、ワークステーション、メインフレーム・スパコンなどコンピューティング機器。 「産業用途」:オートメーション(IA/BA)、照明、エネルギー関連、セキュリティ、検査・計測機器などオートメーション以外の工業・産業用途の機器。 「医療」:画像診断装置ほか医療向け機器、コンシューマーヘルスケア機器。 「自動車・輸送機器」:自動車(乗用車、商用車)の制御系及び情報系において、インターネットと接続が可能な機器。 「軍事・宇宙・航空」:軍事・宇宙・航空向け機器(例:航空機コックピット向け電装・計装機器、旅客システム用機器、軍用監視システムなど)。 なお、2018年から集計対象について、「通信」にLPWA接続機器など、「自動車・輸送機器」に商用車向け機器などを追加しており、それら

の台数も遡って集計している。

図表1-1-1-2 世界のトラヒックの推移及び予測(セグメント別)

48.0 59.0 78.3 99.8 124.7 154.9190.5

12.0 14.017.8

21.926.2

31.537.9

60.0 73.096.1

121.7150.9

186.5228.4

0

50

100

150

200

250

300

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

(エクサバイト/月間)

コンシューマービジネス

(出典)Cisco VNI

図表1-1-2-2 分野・産業別のIoTデバイス数及び成長率予測

8.7

13.6

-0.4

30.8

21.924.0

13.8

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

0 20 40 60 80 100 140120 160

産業用途

コンシューマー

軍事/宇宙/航空 通信

コンピューター

自動車

IoTデバイス数の年平均成長率2017-2020

IoTデバイス数(億)2017年

(%)

医療

(出典)IHS Technology

図表1-1-2-1 世界のIoTデバイス*2数の推移及び予測

93.6 113.1 132.2 147.3 161.2 175.7 189.333.838.9

45.352.0 59.3

67.2 76.3

19.321.1

22.022.2

22.122.0

21.9

18.224.9

32.742.4

54.572.8

94.9

2.02.3

2.83.4

4.15.0

6.1

3.84.7

6.07.5

9.2

11.6

14.4

0.030.04

0.040.05

0.060.07

0.07

170.7205.1

241.0274.9

310.5354.4

403.0

0.0

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

300.0

350.0

400.0

450.0

500.0

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

(億)

予測値

0.033.82.018.219.333.893.6

170.70.044.72.324.921.138.9113.1

205.10.046.02.832.722.045.3132.2

241.00.057.53.442.422.252.0147.3

274.90.069.24.154.522.159.3161.2

310.50.0711.65.072.822.067.2175.7

354.40.0714.46.194.921.976.3189.3

403.0軍事・宇宙・航空自動車医療産業用途コンピューターコンシューマー通信

合計

(出典)IHS Technology

世界と日本のICT

世界と日本の ICT市場の動向 第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部 7

第1章

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3 レイヤー別にみる市場動向ここでは、日本を含む世界のICT市場について、市場のレイヤー分類(①コンテンツ・アプリケーション、②

プラットフォーム、③ネットワーク、④端末)に基づき、近年の動向等を概観する(図表1-1-3-1)。

・ コンテンツ・アプリケーション:プラットフォームレイヤーを介して連接されたデータや、データを活用して付加価値を提供されるコンテンツ及びアプリケーションが含まれる。

・ プラットフォーム:データの蓄積や処理などの基本基盤を提供するクラウドに加え、端末や個人を識別する認証機能のほか、各種データを相互に連携させるための機能が含まれる。

・ネットワーク:データ伝送機能が含まれ、固定・移動の様々な伝送路から構成される。・ 端末:IoT化のハブとなるスマートフォン、タブレットなどの主に人間が持つ端末、センサー等のIoTデバイ

ス、ドローン、また、新たな端末としてのAIスピーカー、AR/VRなどが含まれる。

市場の全体像1各レイヤーの市場について、グローバルレベルでの市場規模と成長性を概観する。全体的には、「ネットワーク」、

「端末」の下位レイヤーの市場は、既に世界的に普及している固定・移動体ネットワークサービスを中心としてその規模は大きいが、成長率の観点からはとりわけ「端末」レイヤーは低く、スマートフォンを中心に急速に成長してきた「人」向けデバイスの成長は今後鈍化することが予想される。他方「コンテンツ・アプリケーション」や

「プラットフォーム」の上位レイヤーの市場は、現在の市場規模は前述の下位レイヤーと比べて小さいが、成長率が高いことから、今後ICT産業の付加価値は全体的に上位のレイヤーの関連へとよりシフトしていく可能性が高い。

コンテンツ・アプリケーション2「コンテンツ・アプリケーション」は、コ

ンシューマー向けが先行して拡大してきた。コンテンツの代表例として挙げられるコンシューマー向けの動画配信、音楽配信は、当初は有料のサービスから始まった。動画配信は広告が表示されて無料でコンテンツを視聴できるサービスが登場した後は、インターネット広告の拡大とともに利用が急激に拡大した。

コンシューマー向けのコンテンツ配信サービスのビジネスモデルは、一般に「広告収入型モデル」(主として無料)と「課金型モデル」(有料)に大別される。これまでインターネット広告の拡大とともに、とりわけ前者の

図表1-1-3-1 レイヤー別の対象市場

動画配信市場 音楽配信市場 モバイル向けアプリ市場

クラウドサービス市場 データセンター市場

固定ブロードバンドサービス市場 移動体通信サービス市場

光伝送機器市場 FTTH機器市場

マクロセル基地局市場 スモールセル市場

LPWAモジュール市場

スマートフォン市場 タブレット市場

AR/VR市場AIスピーカー市場ドローン市場サービスロボット市場

ウェアラブル端末市場

⑴ コンテンツ・アプリケーション

⑵ プラットフォーム

⑶ ネットワーク

⑷ 端末

(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(2018年)

図表1-1-3-2 世界の動画配信市場規模・契約数の推移及び予測

58.8 63.0 77.156.5 59.2 61.5 63.670.5

93.8124.3

260.7

357.0425.9

483.7

1.82.4

3.1

4.5

5.46.1

6.8

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

050100150200250300350400450500

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

(億ドル)予測値

(億契約)

動画配信売上高(定額制以外)(億ドル)動画配信契約数(定額制)(億契約)

動画配信売上高(定額制)(億ドル)

(出典)IHS Technology

世界と日本の ICT市場の動向第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部8

第1章世界と日本のICT

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モデルが急成長してきた。後者については、従来のダウンロード課金型サービスから、月額料金を支払うことで視聴し放題で利用できる定額制(サブスクリプション)サービスのシェアが上昇傾向にある。

定額制サービスは2015年には世界の動画配信売上高の60%となり、2016年以降は、定額制サービスの契約数及び売上高の増加ペースは定額制以外を大きく上回っている

(図表1-1-3-2)。音楽配信サービスにおいても、有料音楽配

信サービスでは、音楽コンテンツのダウンロード課金型サービスが主流であったが、最近では動画配信と同様に定額制サービスの売上高が拡大している。現在の代表例としては、欧州発のSpotify*3や米国Pandora*4などが挙げられ、我が国でも2015年夏頃よりAppleやLINE等の多くの事業者がサービス提供を開始した。2016年にダウンロード課金型と定額制の売上高は逆転し、今後も音楽配信市場においては、定額制配信型サービスの拡大が市場をリードすることが見込まれている(図表1-1-3-3)。

スマートフォンの普及に伴って、スマートフォン向けのアプリケーション市場が立ち上がったが、コンシューマー向けのゲームが市場を牽引してきた。近年では、ビジネス用途、ヘルスケア用途、地図・ナビゲーション等のアプリケーションが増加している。

モバイルアプリ市場は、スマートフォン市場の拡大に伴って拡大が続いている(図表1-1-3-4)。モバイル向けゲームアプリはゲーム人口が多いアジア地域におけるスマートフォンの普及に対応して増加し、市場全体を牽引してきた。2017年は、中国ほか新興国において無料あるいは低価格ゲームのダウンロードが増加したが、今後は、それらの成長は横ばいになると見込まれる。ビジネス用途、ヘルスケア用途、地図・ナビゲーションといったゲーム以外のアプリはビジネスや生活におけるハブ機能を担うようになるとみられており、今後はIoT化の進展に伴うIoT関連アプリケーションの成長が期待される。

さらに、AR/VRに対応したスマートグラス等の普及に伴って、AR/VRコンテンツがコンシューマ向け・企業向けともに拡大してきている。

*3 https://www.spotify.com/jp/about-us/contact/*4 https://www.pandora.com/about/*5 携帯電話、スマートフォン、タブレットのアプリ、無料及び有料のアプリ内課金を対象とする。

図表1-1-3-4 世界のモバイル向けアプリ市場*5規模の推移及び予測

267.9

369.3

513.4

605.5674.7

730.6 766.2

245.5318.8

425.6497.3

547.6582.2 609.3

59.8 69.2103.4 113.8 122.8 129.8 137.7

56.6 65.0 85.6 90.9 96.5 103.0 109.30

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

モバイルアプリ売上高(世界、億ドル)モバイルゲーム売上高(世界、億ドル)モバイルアプリ売上高(うち日本、億ドル)モバイルゲーム売上高(うち日本、億ドル)

予測値

(単位:億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-3 世界の音楽配信市場規模・契約数の推移及び予測

44.0

41.8 31.6 27.7 25.1 23.3 21.923.4 31.1

43.0

53.160.4

66.271.2

0.4

0.5

0.60.7

0.80.8

0.9

0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.0

0102030405060708090100

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

音楽配信売上高(ダウンロード)(億ドル)音楽配信契約数(定額制)(億契約)

音楽配信売上高(定額制)(億ドル)

(億ドル) (億契約)

(出典)IHS Technology

世界と日本のICT

世界と日本の ICT市場の動向 第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部 9

第1章

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プラットフォーム3コンテンツ・アプリケーションの利用を支える「プラットフォーム」は、インターネット上に設けたリソース

(サーバー、アプリケーション、データセンター、ケーブル等)を提供するクラウドサービスが成長を続けてきた。クラウドサービスの普及に伴って、企業のICTに関する意識は「所有するもの」から「利用するもの」へと変化してきた。

クラウドインフラを提供するデータセンターは、動画等のコンテンツ配信サービスの提供・配信基盤ともなるものであり、コンテンツやクラウドサービスの増加に伴って成長してきている。データセンターは IoT化の進展等によるビッグデータの拡大を受けて重要度が増しており、FinTech等金融サービスのICT化においても重要なインフラとなっており、売上高も年10%前後のペースで増加が続いている(図表1-1-3-5)。

データセンター事業者の地域別市場規模は、北米が引き続き市場の約半分を占めているが、中国やシンガポールなどアジアでのローカル企業の台頭と、それに伴うデータセンター事業者の投資拡大により、成長が見込まれる

(図表1-1-3-6)。

次に、データセンターの用途のひとつであるクラウドサービス(IaaS, PaaS, CaaS, SaaS*7)についてみる。クラウドサービスとは、インターネット上に設けたリソースを提供するサービスである*8。コンテンツ配信や電子商取引(EC)などのサービス・アプリケーションから、多様なIoTプラットフォームまで様々なICTソリューションを支えており、企業のクラウド活用の増加に伴い、高成長を遂げてきた。クラウドサービスは、IoTを活用したサービスの重要なプラットフォームであることから、今後も成長が続くと見込まれ、IHSによると、2017年には1,640億ドル、2020年には3,047億ドルに達すると予想される

(図表1-1-3-7)。

*6 「クラウド・ICTサービス」:IaaSほかクラウドサービスを展開するベンダー向け。 「コンテンツ・デジタルメディア」:SNSや電子商取引、動画などのデジタルコンテンツ・メディアサービス業者向け。 「コンテンツ配信ネットワーク(CDN)」:ネットワーク系のICTインフラ提供を主力とする事業者向け。 「エンタプライズ」:官公庁や教育、ヘルスケア、小売業などの一般事業会社のシステム向け。 「金融」:金融機関のシステム向け。*7 「IaaS(InfrastructureasaService)」インターネット経由でハードウェアやICTインフラを提供。 「PaaS(PlatformasaService)」SaaSを開発する環境や運用する環境をインターネット経由で提供。 「CaaS(Cloud-as-a-Service)」クラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型。 「SaaS(SoftwareasaService)」インターネット経由でソフトウェアパッケージを提供。*8 シスコ社Cisco®GlobalCloud Index(2016-2021)によれば、クラウドアプリケーションの拡大により、2016年から2021年までに世界の

データセンターに係るトラヒックのうちクラウドデータセンタートラヒックの割合は、88%から95%に増加するとしている。

図表1-1-3-5 世界のデータセンター市場規模の推移及び予測(カテゴリ別*6)

38.8 50.6 56.9 63.1 69.831.6 42.2 46.5 50.6 54.542.8

55.9 61.1 66.0 70.528.2

37.1 41.1 45.4 49.7

36.447.0

50.8 54.2 57.5

177.7 187.3 205.3232.8

256.4279.2

302.0

050100150200250300350

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

コンテンツ・デジタルメディアCDN エンタプライズ 金融

予測値(億ドル)

クラウド・ICTサービス

40.733.744.929.938.2

44.437.149.133.041.8

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-6 世界のデータセンター市場規模の推移及び予測(地域別)

84.4 90.9 100.2 115.5 127.3 138.4 149.241.2 45.9 49.2 55.6 60.4 64.9 69.550.3 48.1 53.4

58.865.7 72.7 79.9

1.9 2.4 2.52.8

3.03.2

3.4

177.7 187.3 205.3232.8

256.4279.2

302.0

0

50

100

150

200

250

300

350

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他 アジア太平洋 中南米

予測値

(億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-7 世界のクラウドサービス市場規模の推移及び予測(カテゴリ別)

246.4 344.2655.0 830.8 1,006.1 1,165.2

37.7 69.6

201.2310.6

432.5543.0

31.9 64.3

166.0252.6

347.4433.2

290.1 453.5

617.7711.6

808.5905.9

606.1 931.61,258.5

1,639.82,105.5

2,594.53,047.2

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

CaaS PaaSIaaS SaaS

(億ドル)

481.6121.2107.5548.2

(出典)IHS Technology

世界と日本の ICT市場の動向第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部10

第1章世界と日本のICT

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地域別動向としては、先行して立ち上がり、最大市場である北米で今後も高成長が見込まれる

(図表1-1-3-8)。

ネットワーク4「ネットワーク」では、サービス市場及びネットワークを支えるインフラ(機器)市場について整理する。ネットワークサービス市場では、固定通信では、固定ブロードバンドサービス契約数が堅調に増加してきたが、

今後は成長の鈍化が見込まれる。また、移動体通信は、2G、3G、4Gと技術の進展に伴ってサービスの高速化・大容量化が進むとともに、契約数が増加してきた。先進国での普及率は高止まり、成長は鈍化しているが、今後もアフリカやアジア等の新興国では増加が続いていくと見込まれる。

インフラ(機器)市場では、固定ブロードバンドアクセスや移動体通信サービスでは光ネットワーク技術の利用が進展しており、光伝送機器の市場規模の拡大が続いている。一方、家庭宅内・建物内にネットワークとの接続点となる家庭用ゲートウェイやFTTH機器といった機器の市場は、緩やかな減少傾向にある。

移動通信サービスを支えるインフラでは、マクロセル基地局が投資一巡からピークアウトしているものの、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラとしてスモールセル基地局は成長が続いている。

ア 固定・移動体通信サービス市場世界の固定ブロードバンドサービス(xDSL・CATV・FTTx)は、2017年には、新興国を中心に2016年のオ

リンピック需要の反動減があったため約8.1億契約と減少したものの、IHSによると、2020年には8.8億契約まで堅調に拡大することが予想される(図表1-1-3-9)。

携帯電話及びスマートフォン等の移動体通信サービスの契約数は、新興国を中心に増加してきたが、今後はアフリカやその他アジアなどの新興国で新規契約の成長は緩やかになると見込まれる(図表1-1-3-10)。

図表1-1-3-8 世界のクラウドサービス市場規模の推移及び予測(地域別)

299.0662.6 883.0 1,153.0 1,433.8 1,689.6

161.1

297.8381.4

488.8602.1

707.1

127.3

257.3324.9

401.8484.0

563.2

18.7

40.850.4

62.074.7

87.2

606.1

931.61,258.5

1,639.82,105.5

2,594.53,047.2

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米欧州その他アジア太平洋中南米

予測値

(億ドル)

479.4223.9196.132.2

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-9 世界の固定ブロードバンドサービス契約数の推移及び予測

1.1 1.1 1.2 1.2 1.3 1.3 1.3

2.5 2.6 2.7 2.4 2.5 2.6 2.7

3.7 3.9 4.0 3.8 4.0 4.1 4.3

0.6 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.67.9 8.2 8.68.1 8.3 8.6 8.8

0

2

4

6

8

10

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他 アジア太平洋 中南米

予測値(億契約)

※ブロードバンドは150kbps以上の伝送回線を指す(出典)IHS Technology

図表1-1-3-10 世界の移動体通信サービス契約数の推移及び予測

3.9 4.2 4.3 4.4 4.4 4.5 4.5

22.6 23.4 23.7 24.2 24.7 25.1 25.4

35.6 37.1 38.6 41.2 42.4 43.3 43.91.6 1.6 1.6 1.7 1.7 1.7 1.87.273.0 73.8

7.0 7.1 7.0 7.1 7.1 7.270.8 73.2 75.3 78.4 80.3 81.7 82.9

0

20

40

60

80

100

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他日本 中南米 世界人口

予測値(億件)

アジア太平洋(日本除く)

74.7 76.3 77.2 78.075.5

(出典)UN World Population Prospects 2017 IHS Technology

世界と日本のICT

世界と日本の ICT市場の動向 第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部 11

第1章

Page 7: 世界と日本のICT...近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ 流通が増大している。世界のトラヒックはCisco によると、2017年から2020年にかけて約1.9倍

イ 固定ネットワーク機器市場通信インフラは、様々なネットワーク機器・設備やそれを支える技術によって成り立っている。例えば、前述し

た固定ブロードバンドサービスに加え、クラウドサービスの中核インフラであるデータセンターなどの企業向けネットワークにおいてもトラヒックの増加に伴い、それを支える基盤として光ネットワークの利用が進展している。大容量化・高速化への対応により、その代表的な製品である光伝送機器の需要は堅調な増加が続いている(図表1-1-3-11)。

FTTH機器市場についてみると、先進国ではブロードバンドインフラの普及が一巡し、新規で導入される市場は新興国が中心となっている。最大市場である中国では、光インフラ導入が推進されてきたが、2016年以降ピークアウトし、その後も普及一巡のため、市場は緩やかながら減少傾向が見込まれる(図表1-1-3-12)。

ウ 移動体ネットワーク機器市場移動体通信サービスの成長が鈍化することが予想されており、マクロセル基地局*10市場(2G/3G/LTE)は、

2015年の中国におけるLTE投資によって大きく増加した後、2G/3G機器のライフサイクルの終焉とともに、2015年をピークに市場規模も縮小している(図表1-1-3-13)。2020年以降は5Gへの新規投資が見込まれるが、5Gインフラは既存のLTE網を活用して整備されるため、2020年までの市場全体の規模への影響は限定的であると見込まれる。

他方、主としてカバレッジを確保するためのマクロ基地局を補完し、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラとして、スモールセルの整備展開が進展する見込みである。価格下落の影響はみられるものの、LTE以降の指向性の高い無線インフラに対応した屋内設置の増加など、利便性改善への投資拡大により、全地域の市場で総じて成長が続いている(図表1-1-3-14)。

*9 BroadbandGateway、ONT、PONを含むFTTHCPE(consumerpremiseequipment)を対象とする。*10半径数百メートルから十数キロメートルに及ぶ通信エリアを構築するための基地局であり、移動体サービスのカバレッジを確保するため

に利用されてきている。

図表1-1-3-11 世界の光伝送機器市場規模の推移と予測

35.1 36.2 36.2 34.7 35.2 35.9 37.0

29.7 29.5 30.7 30.7 30.6 31.0 31.75.2 4.3 4.5 4.3 4.4 4.6 4.840.5 44.7 50.1 62.2 67.3 72.2 77.4121.0 124.9 132.3 141.8 147.5 154.0 161.4

0

40

80

120

160

200

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他 日本 アジア太平洋 中南米

予測値(億ドル)

10.5 10.2 10.9 9.9 10.0 10.2 10.5

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-12 世界のFTTH機器市場*9規模の推移と予測

4.1 4.4 6.0 7.3 7.3 7.2 6.74.3 4.5 5.2 5.9 6.3 6.0 5.5

26.435.4 38.1 34.5 31.9 30.0 28.5

1.22.3

3.2 1.2 1.2 1.2 1.236.046.5

52.5 48.9 46.7 44.4 41.8

0

20

40

60

80

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他 アジア太平洋 中南米

予測値

(億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-13 世界のマクロセル基地局市場規模の推移及び予測

84.2 80.3 77.7 72.3 72.3 58.8 61.1

164.1 176.7 167.8 152.2 132.1 123.6 125.9

40.9 34.2 33.5 27.2 20.7 15.7 19.1

264.7 297.2 272.3256.0

240.9223.9 216.4

45.145.6

36.732.3

27.825.1 24.5

599.1634.0

588.1540.0

493.8447.0 446.9

0

100

200

300

400

500

600

700

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

北米 欧州その他 日本 アジア太平洋 中南米

予測値

(億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-14 世界のスモールセル市場規模の推移及び予測

1.1 1.6 2.3 2.8 3.2 3.6 3.82.1 2.9 3.8 4.6 5.4 6.0 6.55.36.8

8.19.4

11.012.4

13.6

0.20.3

0.60.8

1.11.3

1.5

8.711.7

14.717.7

20.623.3

25.5

0

5

10

15

20

25

30

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

北米 欧州その他 アジア太平洋 中南米

(億ドル)

(出典)IHS Technology

世界と日本の ICT市場の動向第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部12

第1章世界と日本のICT

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エ LPWAIoT時代においては、多様なアプリケー

ションの通信ニーズに対応することが求められるが、現在開発・提供等が進んでいるのがLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる技術である。LPWAの通信速度は数kbpsから数百kbps程度と携帯電話システムと比較して低速なものの、一般的な電池で数年以上運用可能な省電力性や、数kmから数十kmもの通信が可能な広域性を有している。

これまでLPWAネットワーク市場は、欧州 企 業 で あ るSIGFOXに よ るSigfoxとCiscoをはじめとした米国企業が推進するLoRaWANとが牽引してきた。一方、3GPPが進めるセルラー系LPWAは、SigfoxやLoRaWANに比べると高ビットレートのため、LPWAの中でも比較的ハイスペックな用途を中心とした市場開拓が進められている。LPWAは低速、長距離、低コストを特徴とする無線技術のため、IoT化を進める中国やその他アジア地域でも今後拡大が予想される。

LPWAのモジュール出荷台数及び接続数はいずれも高い成長率での増加が続いており、2020年には全方式の出荷台数は合計4億台を超えることが予測されている(図表1-1-3-15)。

端末5「端末」は、エンドユーザー向けでは主に固定通信を利用するパソコンが普及した後、移動通信を利用するタブ

レットとスマートフォンの利用が広がってきた。その後、眼鏡や腕輪として身に着けるウェアラブル端末が開発され利用が進んできている。

また、従来のインターネット接続端末に加え、様々なモノがつながるIoT化が進展したことから、エンドユーザー向け以外のスマートメーター、自動車に搭載されるセルラーモジュール等の様々な端末の利用が拡大してきた

(IoTデバイスの普及状況については、本節第2項参照)。ロボットについては、ヘルスケア・介護や店舗の接客等でも利用されるサービスロボットも増加している。無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できるドローンは高機能化と低価格化が進み、個人が趣味に使うほか、高所・遠隔地でのモニタリング等企業での活用も広がってきている。

さらに近年では、AIの発達を受けて、AIのパーソナルアシスタンス機能を活用したAIスピーカーの利用が始まっている。また、AR(Augmented Reality:拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実)端末も普及が始まっている。

ア スマートフォン・タブレットスマートフォンの出荷台数は2010年から2015年にかけて中国その他アジア市場を中心に大きく増加し、その

後は安定的に増加している。今後は、緩やかな増加傾向が見込まれるが、新興国市場向けを中心に低価格な端末が増加することから、金額ベースではほぼ横ばいで推移するとみられる。日本では2017年はスマートフォンへの乗り換えや高シェアなOEMの新機種などにより、比較的台数が増加したものの、普及率が上昇した今後は買い替え中心の需要が見込まれる(図表1-1-3-16)。

図表1-1-3-15 世界のLPWA モジュール市場規模・出荷台数の推移及び予測

0.1 0.10.3

0.61.2

2.4

4.1

0.2 0.4 0.9

3.5

6.4

10.6

15.1

0.02.04.06.08.010.012.014.016.018.0

0.00.51.01.52.02.53.03.54.04.55.0

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

出荷台数接続収入

(億台) (億ドル)

予測値

(出典)IHS Technology

世界と日本のICT

世界と日本の ICT市場の動向 第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部 13

第1章

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タブレットの出荷台数は、スマートフォンやウルトラブックといった超薄型ノートパソコンなどとの競争から、コンシューマー向けの市場で世界的に低迷が続いている(図表1-1-3-17)。

イ ウェアラブルIoT時代における通信端末としてウェアラブル端末が引

き続き注目される。ウェアラブル端末は、一般消費者向け(BtoC)機器では、カメラやスマートウォッチなどの情報・映像型機器や、活動量計等のモニタリング機能を有するスポーツ・フィットネス型機器などが挙げられる。業務用(BtoB)では、医療、警備、防衛等の分野で人間の高度な作業を支援する端末や、従業員や作業員の作業や環境を管理・監視する端末が既に実用化されている。ここでは、特に前者の種別でみると、情報・映像型ウェアラブル市場は一部のスマートフォンメーカーによるハイエンド品中心の市場から、アジア系メーカーの参入により低価格化の影響を受けたものの、今後はアプリの拡充による裾野の広がりから市場の拡大が見込まれ、2020年には97億ドルになると予想されている。また、スポーツ・フィットネ

図表1-1-3-16 世界のスマートフォン市場規模・出荷台数の推移及び予測

1.4 1.4 1.2 1.8 1.8 1.8 1.90.8 0.9 1.0

1.3 1.3 1.3 1.33.7 4.0 4.1

3.7 3.9 3.9 3.8

4.0 4.1 4.2 4.4 4.4 4.5 4.70.4 0.4 0.4

0.4 0.4 0.4 0.42.93.4 3.5 3.3 3.6 3.8 4.013.214.2 14.4 14.8 15.4 15.7 16.03,1953,470

3,270 3,3133,521 3,542 3,461

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値(億台) (億ドル)

北米 中南米 欧州その他 中国 日本 その他アジア 出荷金額

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-17 世界のタブレット市場規模・出荷台数の推移及び予測

0.6 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4

0.70.6 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5

0.10.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1

0.9

0.80.7 0.6 0.6 0.6 0.5

0.2

0.20.1

0.1 0.1 0.1 0.1

2.5

2.11.9

1.8 1.7 1.7 1.6

71.0

100.2

131.9

114.4106.5 102.6

95.6

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

140.0

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

(億ドル)

北米 欧州その他 日本 アジア太平洋 出荷金額

(億台)

中南米

予測値

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-18 世界のウェアラブル端末市場規模の推移及び予測

3.4

56.6

85.3

56.0 63.6

74.9

96.8

25.7 28.5 30.2 32.8 34.9 36.2

0

20

40

60

80

100

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

(億ドル)

情報・映像 スポーツ・フィットネス

予測値

(出典)IHS Technology

世界と日本の ICT市場の動向第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部14

第1章世界と日本のICT

Page 10: 世界と日本のICT...近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ 流通が増大している。世界のトラヒックはCisco によると、2017年から2020年にかけて約1.9倍

ス型もアジア系メーカーの参入により低価格化の影響があるものの、先進国のみならず、新興国においても健康意識の高まりやPOC(point of care)の需要から市場は緩やかに拡大し、同年には36億ドルとなると予想されている(図表1-1-3-18)。

ウ サービスロボット・ドローン物流、ヘルスケア・介護、外食、店舗といった製造業以外のサービスロボットの世界市場は、省人化や人的負担

の軽減等を目的として拡大が続いている。国内では物流での箱詰めやピッキング等でサービスロボットの活用が広がっているほか、店舗の接客やホテルの受付・クローク業務等一般消費者と直接的に接するサービスロボットの活用も増加している(図表1-1-3-19)。

ドローン市場では、物流、農業、通信やエネルギーその他インフラなどの高所・遠隔地でのモニタリングにプロフェッショナル(業務用)ドローンの用途が拡大を続けている。国内では特区において林業や物流におけるドローン活用や、携帯電話の基地局をドローンに搭載することで災害時における通信手段を確保するといった実証実験が進められており、今後の商用利用の拡大が期待される(図表1-1-3-20)。

エ AIスピーカーAIスピーカー市場では、GoogleやAmazonが、生活

のあらゆる場面においてOSやITプラットフォームの関与によって取得するデータと、AIによるパーソナルアシスタンス機能によって生み出される経済価値の取り込みを目的として、AIスピーカーを開発、他社に先行して市場に参入している。これに追随して、MicrosoftやLINEなどのICT企業やソニー等の機器メーカーが参入し、市場の拡大が続いている(図表1-1-3-21)。

図表1-1-3-20 世界のドローン市場規模の推移及び予測

1.9 3.46.0

10.8

18.8

33.0

0510152025303540

2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

(億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-19 世界のサービスロボット市場規模の推移及び予測

25.841.6

63.5

87.2

107.1

128.4

0

20

40

60

80

100

120

140

2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値

(億ドル)

(出典)IHS Technology

図表1-1-3-21 世界のAIスピーカー市場規模の推移及び予測

- -

0.270.39

0.65

0.89

0.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.0

2015 2016 2017 2018 2019 2020

予測値(億台)

(出典)IHS Technology

世界と日本のICT

世界と日本の ICT市場の動向 第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部 15

第1章

Page 11: 世界と日本のICT...近年のAI、IoT化の進展により世界的にデータ 流通が増大している。世界のトラヒックはCisco によると、2017年から2020年にかけて約1.9倍

オ AR/VRAR/VR市場はコンシューマー向けのエン

ターテイメント用途と企業向けの教育・訓練用途等がともに拡大している。コンシューマー向けではゲームや観光地での疑似体験等でAR/VRが活用されている。企業向けでは、不動産会社のモデルルームを体験できるサービスや、設備点検おける作業手順のナビゲーション等にAR/VRが活用されている(図表1-1-3-22)。

図表1-1-3-22 世界のAR/VR市場規模・VRヘッドセット出荷台数の推移及び予測

16.835.4

51.268.7

83.3

2.7 4.910.9

20.2

30.71,809.3

2,796.7

3,742.7

4,863.1

6,202.7

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

0102030405060708090

2016 2017 2018 2019 2020

(万台)(億ドル)

VRサービス支出額(ヘッドセット、ゲーム、位置情報)ARサービス支出額 VRヘッドセット台数

予測値

(出典)IHS Technology

世界と日本の ICT市場の動向第 1節

平成30年版 情報通信白書 第1部16

第1章世界と日本のICT