coupling coefficient estimation using impedance...
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社団法人 電子情報通信学会THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報TECHNICAL REPORT OF IEICE.
インピーダンスインバータコイルを用いた走行中ワイヤレス給電システムにおける結合係数推定
小林 大太† 居村 岳広† 堀 洋一†
† 東京大学新領域創成科学研究科 277-8561 千葉県柏市柏の葉 5-1-5
E-mail: †kobayashi14,[email protected], ††[email protected]
あらまし ワイヤレス給電技術を用いた電気自動車の走行中給電では,車両の存在を検知し送電コイルの ON/OFF
をするシステムが必要となる.そこで,インピーダンスインバータコイルの使用により一次側入力インピーダンスを
変換し,自動的にスイッチのように働くシステムが提案されている.また,走行中給電においては効率や電力を最適
化する為,二次側の DC-DCコンバータ等による常時の二次側インピーダンス制御が必要であり,二次側の電圧情報
等からコイル間の結合係数を推定する必要がある.しかし,ここで二次側電圧が単峰性を示し一意に結合係数を推定
する事が出来ないという問題が生じる.そこで,本稿ではインピーダンスインバータコイルを用いる事で二次側電圧
のピークを移動させ,一意の結合係数推定を実現できることを理論的に示し,実験により検証する.
キーワード ワイヤレス電力伝送,磁界共振結合,走行中ワイヤレス給電,結合係数
Coupling Coefficient Estimation Using Impedance Inverter Coil
in Dynamic Wireless Power Transfer System for Electric Vehicles
Daita KOBAYASHI†, Takehiro IMURA†, and Yoichi HORI†
† Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo
Kashiwanoha 5-1-5, Kashiwa-shi, Chiba, 277-8561, Japan
E-mail: †kobayashi14,[email protected], ††[email protected]
Abstract To implement dynamic wireless charging to electric vehicles using wireless power transfer, a system
which senses the presence of vehicles and turns on/off the primary coils is necessary. Therefore, a system that
automatically turns on/off by using impedance inverter coil to change the primary input impedance was proposed.
In systems of dynamic charging, the control of the secondary impedance with DC-DC converter is needed in order
to optimize their efficiency or transmitting power. Moreover, the coupling coefficient between coils needs to be
estimated from the secondary voltage or current. However, the estimation of coupling coefficient is difficult because
secondary voltage has a peak. In this paper, a new advantage of using a impedance inverter coil that enables the
estimation of coupling coefficient by moving the peak of the secondary voltage is introduced and experimentally
verified.
Key words wireless power transfer, magnetic resonant coupling, dynamic wireless charging, coupling coefficient
1. は じ め に
近年,電気自動車への走行中ワイヤレス給電という技術が注
目を受けている [1], [2].電気自動車へのワイヤレス給電の主な
コンセプトとしては地中に埋設された送電コイルから磁界を介
して車両の底面に取り付けられた受電コイルに電力を伝送する
ものが一般的であり [3],送電に用いられる方式としては 2007
年に発表された磁界共振結合方式が有力な候補として挙げられ
る [4].この技術を用いれば,電気自動車はインフラからエネル
ギーを受け取りながら走行することが出来るので [5],擬似的
に航続距離の延長が実現でき,ユーザーのストレスも軽減でき
る.さらに,コストを犠牲にして高価な電池を大量に積まなく
てもよいので,車両価格も抑えられる.しかし,走行中ワイヤ
レス給電では,現在数多く研究されている停車中給電とは異な
り,送受電コイル間の結合状態が急速に変化する等の問題があ
り,システム全体の考察は行なわれているが,未だに最適化が
されていない.その中の一つとして,受電側回路のインピーダ
ンスを DC/DCコンバータによって変化させ,電力伝送効率を
— 1 —
Constant Voltage
Power source
Transmitter
Impedance inverter coil
Receiver
Ground
図 1 IIC を用いたシステム
Fig. 1 System with IIC
C1R1
L1
C3
L3
Lm12 R3
RLV1V3V1
Power source Load
C2
L2
R2Lm23
V2
Impedance inverter coil
図 2 IIC を用いたシステムの等価回路
Fig. 2 Equivalent circuit of system with IIC
最大化する手法が提案されている [6]~[8].しかし,文献 [8]の
提案する手法において,送受電コイル間の結合係数の情報が必
要になるが,走行中給電においては結合係数が直接測定出来な
い為,なんらかの方法で随時推定を行う必要がある.
そこで本稿では,インピーダンスインバータコイル
(Impedance Inverter Coil: IIC) を用いた走行中ワイヤレス
給電システムの有効性を示し,IICを用いることで最大効率制
御の為のリアルタイム結合係数推定が可能である事を示す.
2. インピーダンスインバータコイル (IIC)
電気自動車への走行中給電では,送受電コイル間の結合係
数がある程度大きい時のみ給電する停車中給電とは異なり,給
電中に結合係数が 0 から大きいところ (0.1 位) まで変動する.
ここで,従来のような 1 対の送受電コイルを用いると,結合
係数が小さくなったときに一次側のコイルがショート状態とな
り大電流が流れ,一次側コイルでの銅損が大きくなってしまう
問題が発生する.よって,従来の定電圧源に接続された走行中
ワイヤレス給電システムの送電コイルには車両の接近を感知
してスイッチを ON/OFFするような機構が必要不可欠であっ
た [9], [10].しかし,文献 [11] では,送受電コイルの間に共振
周波数を合わせたコイルを挿入する事によって受電コイルとの
結合係数が小さくなった時に反対に一次側入力インピーダンス
を高くし,送電側を OFFにする手法が紹介されている.本稿
では,この挿入されたコイルが一次側入力インピーダンスの結
合係数に対する挙動を反転させることから,インピーダンスイ
ンバータコイル (Impedance Inverter Coil: IIC)と呼ぶ.図 1,
図 2にそれぞれ IICを用いたシステムの概念図とその等価回路
を示す.図 2において,電源から見た一次側入力インピーダン
スは
Zin1 = R1 +(ω0Lm12)
2
R2 +(
ω0Lm23R3RL
)2 (1)
表 1 計算に使用したコイルのパラメータ
Table 1 Parameter of coils used in the calculation
Inductance L 650 µH
Capacitance C 3.9 nF
Resistance R 1.4 Ω
Resonant frequency f0 100 kHz
0 0.05 0.1 0.150
10
20
30
40
50
60
Coupling coefficient k
Pow
er (
kW)
R1R2RL
図 3 IIC を用いないときの全体での消費電力
Fig. 3 Power consumption on each coils without IIC
0 0.05 0.1 0.150
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
Coupling coefficient k
Pow
er (
kW)
R1R2R3RL
図 4 IIC を用いたときの全体での消費電力
Fig. 4 Power consumption on each coils with IIC
と表され,レシーバコイルとの結合が弱くなった時 (Lm23 ≈ 0)
に一次側入力インピーダンスは
Zin1 = R1 +(ω0Lm12)
2
R2(2)
となるので,ω0Lm12 >> R2 とすればレシーバコイルとの
結合が弱くなった時に一次側入力インピーダンスを上げること
が出来る.つまり,図 1のような構成をとると,車両が送電コ
イルから離れるだけで自動的に一次側の入力インピーダンスが
上昇し,OFF状態となり,車両が送電コイルの上に来ると自動
で ON状態となるシステムを構成する事ができ,一次側コイル
での銅損を減少させることが出来る.図 3,図 4に,全てのコ
イルに表 1に示すパラメータのコイルを用い,電源電圧 300V
の送受電システムを構成し送電をおこなったとき,IICを用い
ない場合と用いた場合の各コイルと負荷での消費電力の計算値
を示す.図 3,図 4より,一対の送受電コイルのみだと先述の
ように結合係数 k が小さいときに送電コイル R1 での損失がか
なり大きくなってしまっているが,IICを用いる事で結合係数
k が小さい範囲でも R1 は大きくならず,全ての範囲にわたっ
— 2 —
図 5 IIC を用いたシステムの全体像
Fig. 5 Whole system with IIC
C1 R1
L1
C2
L2
R2
RLV1V2
V1
Power source Transmitter and Receiver Load
Lm
図 6 磁界共振結合方式の等価回路
Fig. 6 Equivalent circuit of magnetic resonant coupling
て負荷 RL に電力が選択的に供給されている事が分かる.更に,
図 5 のように一つの定電圧源から並列にいくつかの送電コイ
ルに給電すると,センサや送電コイルの ON/OFF切り替えス
イッチが無くても自動で車両の真下のコイルの入力インピーダ
ンスだけが小さくなり (ON状態となり),給電が行われるよう
なシステムを構成することができることが文献 [11]で紹介され
ている.
3. 結合係数推定
前節では,走行中給電の地上側設備に IICを用いる事の有効
性を示したが,本節では IICを用いることで,最大効率制御に
不可欠な結合係数推定が簡単化できるという本稿の本題につい
て説明する.
3. 1 伝送効率最大化制御
通常の kHz 帯を用いるワイヤレス電力伝送において,二次
側のインピーダンスを適切な値に設定する事で給電効率を上昇
させられることが知られている [12].本研究では電気自動車へ
のワイヤレス給電の際には二次側回路に整流器や DC/DC コ
ンバータ,キャパシタもしくはバッテリー等の回路が接続され,
二次側のインピーダンスを DC/DCコンバータによって制御を
行うことを想定しているが,整流器の基本波力率が 1でかつ損
失が無いとするとき,整流器を含めた負荷全体は純抵抗とみな
せるので [6],本稿では簡単の為に二次側は純抵抗として議論を
進める.図 6に示す一般的なワイヤレス給電の等価回路 [13]に
おける伝送効率 η は
η =
(ω0k
√L1L2
)2RL
(RL +R2)R1RL +R1R2 +
(ω0k
√L1L2
)2 (3)
で与えられ,伝送効率 η が最大となる負荷抵抗値 RLηmax は
RLηmax =
√√√√R2
((ω0k
√L1L2
)2R1
+R2
)(4)
で与えられる [7].つまり,電気自動車への給電においては二次
側の等価負荷抵抗値を式 (4)の値にすれば高効率での給電が可
能である事が分かる.しかし,ここで式 (4)をみると,式中に
地中の送電コイルと車両に設置された受電コイル間の結合係数
k が存在し,走行中給電においては k が常に変化するため,k
を車両側が常に知っている必要がある.しかし,k はセンサ等
で瞬時に測定できるものではない.まず,一次側と二次側で通
信を行い kを推定する方法が考えられるが,一次側のシステム
は極力簡単にしたいことや給電に利用する磁界が通信用の電波
に干渉してしまう可能性などを考慮すると,あまりコイル間で
の通信は好ましくない.また,本研究では kHz帯を用いた電力
伝送を想定しているので文献 [14]のような反射波を用いた推定
法は使用できない。そこで,二次側の電圧情報のみから結合係
数 k を推定することを考える.
3. 2 2つのコイルにおける結合係数推定
図 6の等価回路における電圧方程式より結合係数 kを二次側
電圧 V2 で表すと,
k =1
2ω0
√L1L2
V1
V2RL ±
√(V1
V2RL)2 + 4R1(R2 +RL)
(5)
となり,一つの V2 の情報から二つの k の候補が得られてしま
うことがわかる.これは,k に対して V2 が単峰性を持ってし
まうことに起因する.よって,一つの V2 の情報から k を一意
に推定することは不可能である.
そこで,文献 [15]では,二次側等価負荷抵抗を変化させ,二
つの V2 の情報 (V2a:二次側負荷抵抗値 Z2a のときの二次側電
圧,V2b:二次側負荷抵抗値 Z2b のときの二次側電圧)を得るこ
とによって
k =V1
ω0
√L1L2
Z2aV2b(R2 + Z2b)− Z2bV2a(R2 + Z2a)
V2aV2b(Z2b − Z2a)
(6)
から kを推定する手法を提案している.しかし,走行中給電
においては k の変動がかなり急峻であり,この方法だと時間
がかかってしまう上に,二次側等価負荷抵抗値を RLηmax に合
わせるために k の推定をおこなっているのにも関わらず,随時
RL を変化させなければならなくなり,走行中給電には適用が
出来ないことが分かる.
3. 3 IICを用いた結合係数推定
ここで,著者の提案する,IICを用いた結合係数 k の推定法
を紹介する.先述のとおり,二次側電圧 V2 から一意に k を推
定できない要因は,V2 が k に対して単峰性を持ってしまうこ
とであった.そこで,IICを用いることで,V2 の kに対する特
性を変化させることを考える.
— 3 —
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
20
40
60
80
100
120
140
Vol
tage
(V
)
Coupling coefficient k
w/o impedance inverter (V2)w/ impedance inverter (V3)
図 7 IIC による二次側電圧の変化 (RL = 10Ω)
Fig. 7 Change in secondary voltage due to IIC (RL = 10Ω)
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
20
40
60
80
100
Coupling coefficient k
Sec
onda
ry lo
ad R
L (O
hm)
kRLηmaxkvpeak
図 8 IIC を用いない場合における kRLηmax と kV peak の関係
Fig. 8 kRLηmax vs. kV peak without IIC
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
20
40
60
80
100
Coupling coefficient k
Sec
onda
ry lo
ad R
L (O
hm)
kRLηmaxkvpeak
図 9 IIC を用いた場合における kRLηmax と kV peak の関係
Fig. 9 kRLηmax vs. kV peak with IIC
図 7 に,図 6 に示した IIC を用いない場合における二次側電圧 V2 の k に対する特性と,IIC を用いた場合の二次側電圧 V3 の k23(= Lm23/
√L2L3) に対する特性を示した.こ
のとき,各コイルのパラメータは表 1 に示したものを用い,k12(= Lm12/
√L1L2)は 0.05,電源電圧 V1 は 100 V,二次側
等価負荷抵抗値 RL はどちらも 10 Ω とした.図 7 より,IIC
を用いない場合,走行中給電において主に使用するであろう結合係数 0.1 辺りよりかなり k が小さいところで二次側電圧 V2
がピークを持っていることが分かる (kV peak).しかし,IICを用いた場合,二次側電圧 V3 のピークは k がかなり大きなところに移動していることが分かる.つまり,RL を 10 Ω に設定しておけば,少なくとも k < 0.1の範囲では V3 のピークの左側のみを k推定に使用するという状況を作り出せることが分か
る.しかし,走行中給電では kの変化に応じて RL を最大効率点 RLηmax に合わせる為,その時々の kRLηmax と二次側電圧がピークを持つ kV peak とを比較する必要がある.その結果を図 8,9に示す.図の赤線は最大効率となる負荷 RLηmax とそのときの kRLηmax の関係を表し,青線は RL によって変化する二次側電圧がピークを持つときの k,kV peak を表す.図の見方としては,赤線が青線の左側にある時は k推定の際に二次側電圧のピークの左側を用い,赤線が青線の右側にある時は二次側電圧のピークの右側を用いるというものである,2つの図から分かるように,IIC を用いない場合は k = 0.01 付近で赤線と青線が交差している.一方,IICを用いた場合,kV peak 曲線の傾きが kRLηmax の傾きより小さくなっており,二つの曲線が交差することがなく常にピークの左側を用いると言えることが分かる.つまり,式 (5)のような k の推定式が二つ存在する場合において常に片方の推定式しか使用しないということができる.実際に IICを用いた場合の k の推定式は
k =1
2ω0R1V3√L1L2
Lm12w0RLV1
±√
(Lm12ω0RLV1)2 − 4R1(R3 +RL)(R1R2 + L2m12ω
20)V
23
(7)
のように表され,符号がマイナスの方の式が V3 のピークの左
側に相当するので,常に符号がマイナスの推定式のみを用いる
ことが分かる.ここで,図 8,9における kV peak と kRLηmax を
それぞれ表してみる.IICを用いない場合,
kV peak : RL =k2ω2L1L2
R1−R2 (8)
kRLηmax : RL =
√R2
(k2ω2L1L2
R1+R2
)(9)
と表され,これらを連立して k について解くと
k =1
ω
√3R1R2
L1L2=
√3
Q1Q2(10)
となり,kが式 (10)の値で二つの曲線は交点を持つことが分かる.一方,IICを用いた場合,
kV peak : RL =k223ω
2L2L3R1 − R3(R1R2 + L2m12ω
2)
R1R2 + (Lm12ω)2(11)
kRLηmax : RL =(R1R
22R
23+L
2m12ω
2R2R
23+2k
223ω
2L2L3R1R2R3
+L2m12k
223ω
4L2L3R3+k
423ω
4L
22L
23R1)/(R1R
22+L
2m12ω
2R2)
1/2
(12)
と表され,これらを連立して k23 について解くと
k23 =±1
Lm12ω2
√−4R2
1R22R3−5L2
m12ω2R1R2R3−L4
m12ω4R3
L2L3
=±j
√4 + 5α12 + α2
12
α12Q2Q3
(α12 = k212Q1Q2) (13)
となり,k23 は正の実数解を持たない為,二つの曲線は交点を
持たないことが分かる.つまり,IICを用いて最大効率制御を
行う場合,どのようなパラメータのコイルであっても k推定式
の片方の式しか用いないといえる.よって,k が急峻に変化す
る走行中給電においても二次側電圧 V3 から k をリアルタイム
— 4 —
図 10 結合係数推定実験の概念図
Fig. 10 Conceptual chart of experiment
Receiver
IIC
Transmitter
(a) 拡大図 (b) 全体像
図 11 実 験 装 置
Fig. 11 Experimental unit
表 2 実験に使用したコイルのパラメータ
Table 2 Parameter of coils in experiment
coil A coil B coil C
Size (cm) 20×20 20×40 20×20
Turn number 41 36 40
Inductance L (µH) 210.5 419.0 207.5
Capacitance C (nF) 12.07 6.05 12.17
Resistance R (Ω) 1.06 1.72 1.79
Resonant frequency f0 (kHz) 99.88 99.96 100.1
で一意に推定することが可能であることが分かる.
4. 実 験
4. 1 実験装置の構成および仕様
前節において紹介した,IICを用いた結合係数推定の有効性
を確かめる為,以下のような実験を行った.図 10に示すよう
な構成の実験装置を作成し,受電コイルを x方向に動かした.
それぞれの位置において,結合係数を受電コイルに接続された
負荷の電圧から,IICを用いない場合と用いた場合でそれぞれ,
式 (5),(7)の推定式を用いて結合係数の推定を行い,実際のコ
イル間の結合係数の測定値との比較を行った.実際の実験機を
図 11に,実験に用いたコイル,共振コンデンサ等のパラメー
タを表 2に示す.
4. 2 伝送効率最大可制御の実験
前節でも述べたように,電気自動車への走行中ワイヤレス給
電において,送受電コイル間の結合係数の変化に応じて二次側
等価負荷抵抗値を変化させることで常に最大効率となる状態を
保つことが出来る.そこで,IICを用いた場合とそうでない場
合における電力伝送効率が二次側等価負荷抵抗値によってどの
0 10 20 30 400
20
40
60
80
100
Distance x (cm)
Effi
cien
cy (
%)
50 ΩRLηmax
図 12 IIC を用いない場合の伝送効率
Fig. 12 Transmitting efficiency without IIC
0 10 20 30 400
20
40
60
80
100
Distance x (cm)
Effi
cien
cy (
%)
50 ΩRLηmax
図 13 IIC を用いた場合の伝送効率
Fig. 13 Transmitting efficiency with IIC
ように変化するか,IICを用いることによる効率の低下は許容
できる範囲であるか確かめる実験を行った.今回の実験では,
二次側回路に可変の純抵抗を接続し,手動で最大効率となる抵
抗値への調整を行った.図 12に IICを用いない場合,図 13に
IIC を用いた場合の実験結果を示す.青線と緑線がそれぞれ,
二次側負荷抵抗値を RLηmax としたときと 50 Ω一定としたと
きの電力伝送効率を表す.図より,どちらの場合も二次側負荷
抵抗値を RLηmax とする事で電力伝送効率を上昇させられるこ
とが分かる.また,IICを用いる事により若干の効率低下がみ
られるものの,実用に問題があるほどの低下ではないことが分
かる.
4. 3 結合係数推定の実験
前節で述べた方法により,受電コイルに接続した負荷の両端
の電圧から結合係数の推定を行った.図 14に IICを用いない
場合,図 15に IICを用いた場合における実験結果を示す.図
中の黒実線は LCRメータによって測定した実際の結合係数 k
を表し,赤点は式 (5)や式 (7)における符号がマイナスの方の
式での推定値 kest(−),青点は符号がプラスの方の式での推定
値 kest(+) を表す.また,二次側負荷抵抗値は常に RLηmax と
なるようにした.図 14をみると,結合係数が高いところでは
プラスの符号を持つ推定式が実測値に一致しているものの,結
合係数がある値より低くなると推定値が発散してしまう.そし
て,結合係数が低いところではマイナスの符号を持つ推定式が
実測値に一致している.これは前節での説明のとおり,k 推定
— 5 —
0 10 20 30 400
0.05
0.1
Distance x (cm)
Cou
plin
g co
effic
ient
k
kest (+)kest (−)actual k
図 14 IIC を用いない場合の結合係数推定
Fig. 14 Coupling coefficient estimation without IIC
0 10 20 30 400
0.05
0.1
Distance x (cm)
Cou
plin
g co
effic
ient
k
kest (−)actual k
図 15 IIC を用いた場合の結合係数推定
Fig. 15 Coupling coefficient estimation with IIC
に用いる二次側電圧 V2 のピークが存在する点を超えてしまっ
たことを表しており,k の推定式を切り替える必要があること
を示している.しかし,図 15をみると,使用している結合係
数の全領域において,マイナスの符号を持つ推定式により kの
推定が行えていることが分かる.これは,IICを用いることで
二次側電圧 V3 のピークの左側のみを使用するように V3 のピー
クを動かすことが出来ていることを示している.
図 15より,結合係数が大きいときに少し推定誤差が大きく
なっていることが分かる.これは,k の推定式が図 2に示す等
価回路の電圧方程式から導かれていることから,送電コイルと
受電コイルのクロスカップリングが存在すると二次側電圧 V3
に誤差が生まれてしまうことが原因だと考えられる.よって,
実用の際にはクロスカップリングが生まれないように送電コイ
ルを小さくする等の工夫が必要になると考えられる.
5. ま と め
本稿では,磁界共振結合方式を用いた電気自動車への走行中
ワイヤレス給電の実現を目指すにあたり,車両の接近に伴って
スイッチレスで送電の ON/OFFを行なうことのできる IICを
用いたシステムの紹介をした.更に,電力伝送効率を最大化す
るために二次側の等価負荷抵抗値を制御する必要性を示し,IIC
を用いることにより最大効率制御に必要となるコイル間の結合
係数 kの情報が車両側の電圧情報のみから一意に推定できるこ
とを示した.これにより,二次側での複雑な推定法や制御を用
いることなくリアルタイムで走行中の最大効率制御が行うこと
が出来る.
今後の課題として,二次側を整流器や DC/DCコンバータ等
の実際のシステムに近い構成とし,実際に受電コイルを動かし
ながら結合係数の推定を行い二次側等価負荷抵抗値を操作する,
リアルタイム最大効率制御システムの設計,より高効率で大電
力伝送可能な IICの構成の検討等が挙げられる.
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