ctis(m)癌およびct1(sm)癌の治療 内視鏡的粘 …ct1高度浸潤癌...

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140 隆起型M/SM癌 09 141 C ポリペクトミー 高周波電流 切除標本 潰瘍 粘膜 筋層 粘膜下層 通常内視鏡とスネアを使用し,病変の茎にスネアを掛けて病変を切除する。 内視鏡的粘膜下層切開術(EMR) 高周波電流 切除標本 潰瘍 粘膜 筋層 粘膜下層 生食水 通常内視鏡と局注針とスネアを使用し,粘膜下層に局注してからスネアを掛けて病変を切除する。 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 送水機能付内視鏡と,高周波ナイフを使用し,病変周囲の粘膜切開と病変直下の粘膜下層を剥離し,病変を切除する。 高周波電流 切除標本 潰瘍 粘膜 筋層 粘膜下層 腹膜炎 敗血症 生食水 潰瘍形成 危険性 ② 穿孔(1/1000) ごく一部は手術になる可能性あり ① 出血(1/100) 内視鏡でほとんど止血可能 (前山泰彦,鶴田 修) cTis(M)癌およびcT1(SM)癌の治療 「大腸癌治療ガイドライン」によると,内視鏡治 療適応の原則は「リンパ節転移の可能性がほと んどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位 にある。」とされており,また,適応基準は①粘 膜内癌,粘膜下層への軽度浸潤癌 ②大きさ ③ 肉眼型は問わないとされている。 粘膜下層深部浸潤が明らかに疑われる病変は,内 視鏡的切除をせずに最初から外科的切除を行う。 治療法にはポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術 (endoscopic mucosal resection;EMR)と内視 鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)がある。 cTis癌, cT1癌 cTis癌または cT1軽度浸潤癌 内視鏡的摘除 内視鏡的一括摘除可能 cT1高度浸潤癌 内視鏡的一括摘除不可能 病理診断 経過観察 外科的切除 Ⅰ型隆起病変における粘膜下腫瘍様の立ち上 がりとは,丈の高い病変において病変辺縁の 立ち上がり部分が非腫瘍粘膜として観察され る所見である。このような病変では,非腫瘍 粘膜で覆われた部分の丈は粘膜下層深部に浸 潤した癌および線維化の量を表していると考 えられる。 立ち上がり非腫瘍の隆起 伸展不良所見とは,病変周囲正常部のひだ集 中,ひだのひきつれといったもので,十分に 腸管を伸展して観察することが重要である。 このような所見を有する病変では,癌が粘膜 下層の線維化を伴いながら粘膜下層深部に浸 潤していることが多い。 伸展不良所見 (大腸癌治療ガイドライン医師用 2014 年版をもとに作成)

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Page 1: cTis(M)癌およびcT1(SM)癌の治療 内視鏡的粘 …cT1高度浸潤癌 内視鏡的一括摘除不可能 病理診断 経過観察 外科的切除 Ⅰ型隆起病変における粘膜下腫瘍様の立ち上

140

隆起型M/SM癌09

141

局在性腫瘍

C

ポリペクトミー

高周波電流

切除標本

潰瘍粘膜

筋層粘膜下層

・ 通常内視鏡とスネアを使用し,病変の茎にスネアを掛けて病変を切除する。

内視鏡的粘膜下層切開術(EMR)

高周波電流

切除標本

潰瘍粘膜

筋層粘膜下層

生食水

・ 通常内視鏡と局注針とスネアを使用し,粘膜下層に局注してからスネアを掛けて病変を切除する。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)・ 送水機能付内視鏡と,高周波ナイフを使用し,病変周囲の粘膜切開と病変直下の粘膜下層を剥離し,病変を切除する。

高周波電流

切除標本

潰瘍粘膜

筋層粘膜下層

腹膜炎

敗血症

生食水

潰瘍形成危険性

② 穿孔(1/1000) ごく一部は手術になる可能性あり

① 出血(1/100)  内視鏡でほとんど止血可能

(前山泰彦,鶴田 修)

cTis(M)癌およびcT1(SM)癌の治療・ 「大腸癌治療ガイドライン」によると,内視鏡治

療適応の原則は「リンパ節転移の可能性がほと

んどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位

にある。」とされており,また,適応基準は①粘

膜内癌,粘膜下層への軽度浸潤癌 ②大きさ ③

肉眼型は問わないとされている。

・ 粘膜下層深部浸潤が明らかに疑われる病変は,内

視鏡的切除をせずに最初から外科的切除を行う。

・ 治療法にはポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術

(endoscopic mucosal resection;EMR)と内視

鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal

dissection;ESD)がある。

cTis癌, cT1癌

cTis癌またはcT1軽度浸潤癌

内視鏡的摘除

内視鏡的一括摘除可能

cT1高度浸潤癌

内視鏡的一括摘除不可能

病理診断

経過観察 外科的切除

Ⅰ型隆起病変における粘膜下腫瘍様の立ち上がりとは,丈の高い病変において病変辺縁の立ち上がり部分が非腫瘍粘膜として観察される所見である。このような病変では,非腫瘍粘膜で覆われた部分の丈は粘膜下層深部に浸潤した癌および線維化の量を表していると考えられる。

立ち上がり非腫瘍の隆起

伸展不良所見とは,病変周囲正常部のひだ集中,ひだのひきつれといったもので,十分に腸管を伸展して観察することが重要である。このような所見を有する病変では,癌が粘膜下層の線維化を伴いながら粘膜下層深部に浸潤していることが多い。

伸展不良所見

(大腸癌治療ガイドライン医師用 2014 年版をもとに作成)