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61 要 旨 日本語教育におけるカリキュラム・デザインの一例として、日本語能力試験の 旧 1 級合格者に相当する「超上級」の日本語学習者を対象としたカリキュラムを 紹介する。これは、筆者が同志社大学日本語日本文化教育センターでコーディネー ターとしてカリキュラム・デザインを担当した「総合科目」の事例に基づいている。 「総合科目」では、教科書の内容をより深く理解する「深読みタスク」資料の作成、 学生が選んだニュース記事を教材とする「今週のニュース」、論説文以外のジャン ルの文章を扱うための「複数教科書の併用」、視聴覚教材によってそれらの活動を 結びつける「聴解練習」などの工夫により、超上級の学習者が立体的な日本語学 習を行える環境を提供した。 キーワード 日本語 日本文化 超上級学習者 カリキュラム・デザイン 学習者主体 1 はじめに 本稿は、日本語教育におけるカリキュラム・デザインの一例として、「超上級」の日 本語学習者を対象とした「総合科目」について紹介し、検討するものである。本稿に おける「超上級」「カリキュラム・デザイン」「総合科目」の意味についてはこの後で 述べることにし、はじめに本稿の意義を簡単にまとめておきたい。 日本語教育機関においては、多くの場合、日本語能力試験を学習の動機付けとした 教育が行われており、そこでは、日本語能力試験の出題基準(国際交流基金・日本国 際教育協会 1994)をもとにシラバスを策定し、カリキュラム・デザインが行われてい ることが多い。では、日本語能力試験の最上級である N1(旧 1 級) 1 レベルの学習項 目を習得した超上級の学習者には、何を教え、どのような授業を提供すればよいのだ ろうか。 本稿で紹介するのは、同志社大学で筆者が 4 年計 8 学期間にわたって超上級レベル の日本語教育に携わった経験を踏まえ、同大学で開講されていた「総合科目」という 日本語超上級レベルのカリキュラム・デザイン 「総合科目」活用の事例からCurriculum Design for High-Advanced Level Students Study for General JapaneseLanguage Course 後藤 多恵 『同志社大学日本語・日本文化研究』第 10 号 pp. 61-78(2012. 3)

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日本語超上級レベルのカリキュラム・デザイン ─「総合科目」活用の事例から─(後藤 多恵)

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要 旨日本語教育におけるカリキュラム・デザインの一例として、日本語能力試験の旧 1級合格者に相当する「超上級」の日本語学習者を対象としたカリキュラムを紹介する。これは、筆者が同志社大学日本語日本文化教育センターでコーディネーターとしてカリキュラム・デザインを担当した「総合科目」の事例に基づいている。「総合科目」では、教科書の内容をより深く理解する「深読みタスク」資料の作成、学生が選んだニュース記事を教材とする「今週のニュース」、論説文以外のジャンルの文章を扱うための「複数教科書の併用」、視聴覚教材によってそれらの活動を結びつける「聴解練習」などの工夫により、超上級の学習者が立体的な日本語学習を行える環境を提供した。

キーワード日本語 日本文化 超上級学習者 カリキュラム・デザイン 学習者主体

1 はじめに本稿は、日本語教育におけるカリキュラム・デザインの一例として、「超上級」の日本語学習者を対象とした「総合科目」について紹介し、検討するものである。本稿における「超上級」「カリキュラム・デザイン」「総合科目」の意味についてはこの後で述べることにし、はじめに本稿の意義を簡単にまとめておきたい。日本語教育機関においては、多くの場合、日本語能力試験を学習の動機付けとした教育が行われており、そこでは、日本語能力試験の出題基準(国際交流基金・日本国際教育協会 1994)をもとにシラバスを策定し、カリキュラム・デザインが行われていることが多い。では、日本語能力試験の最上級である N1(旧 1 級)1 レベルの学習項目を習得した超上級の学習者には、何を教え、どのような授業を提供すればよいのだろうか。本稿で紹介するのは、同志社大学で筆者が 4年計 8学期間にわたって超上級レベルの日本語教育に携わった経験を踏まえ、同大学で開講されていた「総合科目」という

日本語超上級レベルのカリキュラム・デザイン─「総合科目」活用の事例から─

Curriculum Design for High-Advanced Level StudentsStudy for “General Japanese” Language Course

後藤 多恵

『同志社大学日本語・日本文化研究』第 10 号 pp. 61-78(2012. 3)

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自由なシラバス・デザインが許される科目におけるカリキュラム・デザインの事例を報告し、超上級レベルの学習者に有効な活動を提案するものである。以下、本節の残りの部分で「超上級」と「カリキュラム・デザイン」について定義し、

第 2節で事例の対象となった超上級レベルとその「総合科目」のクラス及びシラバスについて概観した上で、第 3節で筆者が理念とする「学習者主体」の考え方とそれに基づくシラバスおよびカリキュラムについて概説する。続いて、第 4節では「総合科目」の活動の取り組みを「深読みタスク」「今週のニュース」「複数教科書の併用」「聴解練習」の 4つに分けて紹介する。これらの 4つの活動が相互に連関して立体的 2 な日本語学習の機会を与えていたことが示される。第 5節では学生のアンケート調査をもとに総合科目の意義と課題を整理し、第 6節で本稿を総括する。

1-1 「超上級」現在、日本語教育における学習者の到達度をはかる統一された基準は存在しない。言語能力評価の基準としては、「読む・聞く・書く・話す」の四技能を対象としたヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for languages:

Learning, Teaching, Assessment、CEFR)や国際交流基金の「JF日本語教育スタンダード 2010」、および口頭表現能力に特化した米国外国語教育協会(American Council

on the Teaching of Foreign Languages、ACTFL)の口頭能力測定(Oral Proficiency

Interview、OPI)などの判定基準があり、これらの判定基準が日本語教育においても具体的な到達目標として活用されることがある。しかし、これらの判定基準による到達度の区分は、必ずしも日本語教育の現場でそのまま利用可能な区分とはなっていない。これらに代わって日本語教育の現場で到達度の判定基準として使われているのが国際交流基金と財団法人日本国際教育支援協会が運営する日本語能力試験である。多くの日本語教育機関では、学習段階を初級、中級、上級の 3つに分け、日本語能力試験の旧 3級までの範囲を初級、旧 2級の範囲を中級、旧 1級のレベルを上級と呼ぶことがほぼ共通の認識となっていると言える。日本語教育教材も、『日本語能力試験出題基準』(国際交流基金・日本国際教育協会 1994)を参考に作成されていることが多い。日本語能力試験の最上級が旧 1級であるため、日本語教育やその教材は必然的に究極的に旧 1級の合格を目指すことになる。そのため、あたかも日本語能力試験の旧 1級の合格が日本語学習の最終目標であるかのような誤解を与えかねない状況を生んでいる。実際には、日本語能力試験は書く能力や話す能力を試験の対象に含めていないため、旧 1級を合格したことは、旧 1級が対象とする範囲の項目に関する知識があることを意味しても、それを書いたり話したりする運用能力が身についていることを必ずしも意味するものではない。その意味で、旧 1級の合格者であっても、書いたり話したりする能力をさらに磨くことでより高い上級のレベルに到達しうることになる。

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しかしながら、日本語教育機関の多くは日本語能力試験の旧 1 級レベルまでを上級と捉えているため、旧 1 級の合格者に対する適切な呼び名が定まらない状況が生じている。脇田・三谷(2011)では旧 1 級以上のレベルを「超級」(High-Advanced

Level)としているが、OPIでは最上級レベルを「超級」(superior)と呼び「上級」(advanced)の上位と位置付けている。この OPIとの混同を避けるため、本稿では、藤井(2011)および平ほか(2010)に倣い、旧 1級レベルの学習を終えた段階を「超上級」と呼ぶ。したがって、先にも述べたように、本稿でいう超上級とは上級を超えたレベルを意味しているのではなく、広い意味では上級に含まれるものである。

1-2 カリキュラム・デザインカリキュラム・デザインとは、コースデザインの過程において、対象となる学習者の目的や目標に応じて決められたシラバス 3 を、「いつ」「どのように」教えるかを設計することである。カリキュラム・デザインは、シラバス・デザインと並んでしばしば狭義のコースデザインと同義の用語として混同して使用されることがあるが、本稿では、コースデザインはあくまで広義の「コースを実施する以前に準備されるべきことの総体」つまり学習者の選考からニーズ分析、目標設定、授業時間数や担当教師の決定なども含むものとして扱い、本稿で語られるカリキュラム・デザインやシラバス・デザインと同義のものとしない。カリキュラム・デザインの作業には、シラバスをより効果的に教授するため、コース全体の時間の枠組みにおいて何にどの程度時間を割くかといった時間配分の決定や、コースの到達目標に向けて学習者を牽引するためにコースを短期間で区切った上での目標設定や各技能別の目標設定なども含まれる。つまり、シラバス・デザインとはすでに設定された学習者(クラス編成)に「何を教えるか」(教授項目)を策定する作業であり、カリキュラム・デザインとは確定したシラバスを、設定された枠(学習期間、総授業時間数、授業時間)の中で「いつ」(学習予定表)「どのように教えるか」(教授方法・教室活動)を設計する作業であるとまとめられる(日本語教育学会 1991)。

2  対象となるレベル及びクラスの概要2-1 日本語・日本文化教育センターにおける超上級レベルのコースデザイン本稿の事例となった同志社大学の日本語・日本文化教育センターでは、留学生別科生(主に私費留学生)および交換留学生を対象とする「集中コース」を開講している。「集中コース」では、学生の到達度に応じて複数のレベルの日本語科目を開講しており、2011 年度は 1から 9までの 9つのレベルに分けられた。それらのうちの最上級レベルが本稿の対象とする超上級レベルに当たる。『2011 日本語・日本文化教育センター/留学生別科 履修要項・シラバス』によると、この超上級レベルの対象となるのは「上級文型 100、基礎語彙 10000 語、基礎漢字 2000 字程度をすでに習得した者」で、その

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到達目標は「より高度な日本語の運用能力の習得を目指」し、「日本人学生と日本語で十分な議論ができるようになる」ことである。2011 年度に超上級レベルに開講された日本語科目は 11 科目あり、そのうち 5科目が

「総合科目」で、残りの 6科目が「技能別科目」であった。この超上級レベルにおいては「総合科目」は「総合 1」から「総合 5」までを一連の授業とし、4人の講師がチームとなって 1つのカリキュラムに沿って授業を進めた。この「総合科目」は月曜日から金曜日まで連続して 1日 1回ずつ開講され、1学期間の総授業回数は 15 週分全 75 回(1 回あたり 90 分)である 4。一方、技能別科目は、「読解 A」「読解 B」「口頭表現 A」「口頭表現 B」「文章表現」「語彙」の 6科目に分かれ、それぞれの科目を 1人の講師が担当し、週 1回ずつ授業を行い、1学期間で 15 回分を 1つの授業とするものである 5。

2-2 超上級レベルにおける「総合科目」筆者は、2008 年度に先述の超上級レベルの「総合科目」の担当講師の 1人として新たなシラバス策定に関わり、2009 年度から 2011 年度はコーディネーターとして「総合科目」のカリキュラム・デザインとコース運営を担当した。本稿が事例として報告する超上級レベルにおける「総合科目」は、2008 年度から 2011 年度までを対象にしたものである。以下、その「総合科目」クラスについて、履修した学生とそのシラバスについて報告する。

2-2-1 学生『2011 日本語・日本文化教育センター/留学生別科 履修要項・シラバス』に見られる超上級レベルの能力記述は先述の通りであるが、具体的に超上級レベルの対象となる学習者は、大きく 2つのグループに分けられる。一方は「日常的に日本語を使用している日系人や海外で教育を受けた日本人海外子女」「日本で初等・中等教育を受けた経験のある外国人」などのグループで、自然習得またはそれに近い形で日本語を学び、話すことにおいてはネイティブスピーカーとしてまたはそれに近い能力を有する学習者である。もう一方は「日本語学習歴や日本滞在歴が長い外国人学習者」、「日本語能力試験旧 1級レベル以上の日本語が理解でき四技能がバランスよく伸びている外国人学習者」などのグループで初級から日本語教育の段階に沿って日本語を学んだ学習者である。以上の点を踏まえた上で、事例の対象となるクラスの構成を見てみたい。表 1は、2008 年度春学期から 2011 年度秋学期まで 8学期間の超上級レベルの「総合科目」の履修者数をまとめたものである。この表の日系の欄に示されている通り、先に述べた前者のグループに属するネイティブスピーカーの学生は 2008 年度春学期から 2010 年度春学期まで継続して1名から 3名の人数で在籍している。また日系の学生と同じグループに属するネイティブスピーカーに近い能力を有する学生は、2010 年春学期に 1名(台

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湾)、2010 年秋学期に 2名(ともに中国)在籍した。2011 年度に関しては、このグループに該当する学生ではないが、子どもの頃から自国でアニメなどによって日本語に慣れ親しみ、自然習得に近い形で日本語を学習したという学生が数名在籍した。当該クラスの構成は、学期によって履修者の状況は異なるが、概して次のようにまとめられる。中国・台湾を中心とする漢字圏の学生に日本語に近い言語を母語とする韓国人学生を加えた東アジアの学生が大半を占め、そこに非漢字圏の欧米系の学生と日系に代表される日本語のネイティブスピーカーまたはそれに近い能力を持つものが数名ずつ加わっている。以上概観したように、超上級レベルの「総合科目」クラスは、言語習得過程の異なる 2種類の学習者が混在し、そのカリキュラムはこの点に十分留意して設計することが求められる。

表 1 超上級レベル「総合科目」クラス履修者の内訳年度 2008 年度 2009 年度 2010 年度 2011 年度学期 春学期 秋学期 春学期 秋学期 春学期 秋学期 春学期 秋学期

1期 2期 3期 4期 5 期 6期 7期 8期学生総数*1 11

(2)17(2)

7(1)

16(3)

6(2)

13(0)

11(0)

10(0)

身分

別科生*2 6 15(5)

7(4)

16(5)

4(1)

7(2)

5(0)

5(2)

交換留学生*2

5 2(1)

0(0)

0(0)

2(0)

6(0)

7(1)

5(0)

国籍

中国 4 10 4 8 2 8 5 4台湾 1 1 1 1 1 0 2 4韓国 3 1 0 3 0 1 3 1日本*3 2 2 1 3 2 0 0 0米国 0 1 1 1 1 1 1 1その他 ベトナム

(1)ベトナム (1)イギリス (1)

0 0 0 スウェーデン (1)ドイツ (1)タイ (1)

オーストラリア (1)

0

凡例:*1 カッコ内の数字は日系人(内数)。*2 カッコ内の数字は前学期からの継続履修者の人数(内数)。*3 インドネシア、イギリス、ハンガリーと日本との二重国籍保持者 3人を含む。

2-2-2 シラバス先述の通り、筆者は 2008 年度に超上級レベルの「総合科目」クラスに関わり、2009

年度よりコーディネーターとして、カリキュラム・デザインおよびクラス運営に携わった。筆者が行ったカリキュラム・デザインについて報告する前に、まず本項目で「総合科目」のシラバスについて紹介したい。現行のシラバスは、2008 年度に策定されたシラバスの流れを汲んでいることから、初めに 2008 年度のシラバスについて概説する。2008 年度に超上級レベルの主教材として『留学生のための時代を読み解く上級日本語』(スリーエーネットワーク、2006 年、以下、『時代を読み解く上級日本語』)が指定

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され、春学期はそのうちのⅠ章「生活」、Ⅲ章「教育」、Ⅴ章「科学技術と人間」、秋学期はⅡ章「少子高齢化」、Ⅳ章「企業と労働」、Ⅵ章「環境」が扱われた。(各本文の内容は資料を参照のこと。)主教材のほかに漢字教材として、春学期には『完全マスター漢字日本語能力試験 1級レベル』(スリーエーネットワーク、2003 年)が、秋学期には『パターンで学ぶ日本語能力試験 1級文字・語彙練習問題集』(Jリサーチ出版、2007年)が指定された。担当教師が作成した補助教材とテスト類は、主教材に関するものでは、語彙リスト、漢字読みテスト、復習テストの 3種類と必要に応じて配布した補足資料や関連記事で、漢字教材に関しては4、5回ごとの漢字復習テスト1種類であった。いずれの学期も『時代を読み解く上級日本語』は各章の全ての課を章が若い順に扱い、漢字教材はテキストの初めから順に扱った。シラバスの範疇から外れるが、参考のため教科書の進め方を説明しておく。主教材の『時代を読み解く上級日本語』は各課共通して、1)テーマについての導入、2)本文全体のラフリーディング、3)段落ごとの精読と音読練習、4)注目すべき語彙の解説、5)重要語句・表現の解説と例文作成、6)内容理解の確認、7)課末の語句問題の回答、8)課末の内容理解のための「話す練習」、9)内容に関するディスカッション、という流れで進められた。確認のための漢字読みテストと復習テストは後日実施された。漢字教材は毎回 10 分から 15 分程度時間を割き、各課は 1日目に解説、2日目にそのテストという流れで進められた。2009 年度から 2011 年度は、上述の 2008 年度のシラバスを改訂したシラバスで授業が行われた。そのカリキュラムについては次節で詳細を述べるが、本項では最後に2009 年度の主要なシラバスの変更点をまとめておきたい。1.『時代を読み解く上級日本語』は各学期同じ章を扱うが、取り上げる課を削減する2.『時代を読み解く上級日本語』とタイプの違う文章も教材として扱う3.漢字教材は、自習が可能なものに変更する 6

4. 主教材の学習を中心に、聴解練習、発表などタイプの異なる複数の学習の流れをシラバスに組み込む

以上 4点を主な変更点とし、2009 年度の改訂シラバスが策定され、報告者は新たにカリキュラム・デザインを行った。

3  カリキュラム・デザインの理念と留意点3-1 学習者主体の日本語教育細川(2005)は「学習者主体」を「学習の主体が学習者自身であり、問題を発見し、解決するのは学習者自身以外にないという考え方およびその概念」と定義し、「教室担当者」が「「学習者主体」の環境を設計し実行することの重要性を主張している(細川2005、p.102)。細川(2005)は学習者を主体に据えた教室活動の要素として、次の 3つを挙げている。「①総合活動型コミュニケーションであること。②常に具体的な対象と

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目標を前提にして機能すること。③学習者自身の明確な意思を発信する言語学習をめざすものであること」(細川 2005、p.102)。①は四技能の運用に支えられた総合的なコミュニケーション活動を意味し、②は「達成感のある言語活動を期待するものであること」③は「人間の考えていることはすべて違っているという前提に基づく」「学習者一人一人の「個のスタイル」を保証する試みである」と細川は述べている(細川 2005、p.103)。筆者はこの細川(2005)の「学習者主体」の考えに基づき、2009 年度の超上級レベルの「総合科目」クラスのカリキュラム・デザインを行った。2008 年度の筆者が担当した授業の教室活動を見直し、学生にとって四技能の運用がバランスよくなされているか、学生が自分の意志を十分に発信する機会が与えられているか、学生一人一人の「個のスタイル」が保証されているかについて検討した。

3-2 カリキュラム・デザインの実際本項では 2009 年度の「改訂シラバス」の概要について説明したい。「改訂シラバス」では主教材は 2008 年度からの流れを引き継いで『時代を読み解く上級日本語』とし、補助教材として教科書本文の内容をさらに深く幅広く理解することを助ける「深読みタスク」を作成し授業で活用した。また、扱う文章が論説文に偏るのを防ぐため、複数の教科書を併用した。どの学生にも等しく発信する機会を確保し、「個のスタイル」が保証でき得る活動として、学生が自らの関心に応じて選んだニュース記事を教材とする「今週のニュース」も取り入れた。さらに、関連する視聴覚教材を用いてこれらの活動を相互に結び付け、立体的な日本語学習の機会を提供した。また新しいテストの試みとして、音読テストや 1回 10 問の漢字テストなどを取り入れた。2009 年度以降はこの「改訂カリキュラム」に小規模の修正を行いつつ、2011 年度まで継続して実施した。では、これらのシラバスを「いつ」「どのように」教えたのか。そのカリキュラムは総合科目の授業例として表 2に記載した通りである。表 2からわかるように、教科書に関する学習を 1つの大きな流れとし、それに平行して「今週のニュース」「聴解練習」などの活動をもう一つの流れとして設計した。この 2つの流れを組み合わせる際に留意したのは、1)学習活動を 1日単位、また 1週間単位でとらえた場合に学生がバランスよく四技能の運用ができるかどうかということと、2)学生を消耗させてしまう恐れのあるテストが連日予定に組み込まれることがないかという 2点であった。

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表 2 総合科目の授業例月 火 水 木 金

第1週

9/26ガイダンス本文 18 課

9/27本文 18 課

9/28 本文 18 課

9/29本文 18 課今週のニュース

9/30本文 18 課

第2週

10/3本文 18 課漢字テスト 11

10/4本文 21 課今週のニュース

10/5本文 21 課本文 18 課漢読テ

10/6本文 21 課今週のニュース

10/7本文 21 課本文 18 課復習テ

第3週

10/10(祝日)本文 21 課

今週のニュース

10/11本文 21 課

漢字テスト 12

10/12日本文化 3章今週のニュース本文 21 課漢読テ

10/13日本文化 3章

10/14日本文化 3章

本文 21 課復習テ第4週

10/17日本文化 3章

10/18日本文化 3章今週のニュース

10/19日本文化 3章漢字テスト 13

10/20本文 7課今週のニュース

10/21本文 7課音読テスト 1

第5週

10/24本文 7課今週のニュース

10/25本文 7課漢字テスト 14

10/26本文 7課今週のニュース

10/27本文 7課聴解練習 1

10/28本文 7課本文 7漢読テ

第6週

10/31本文 8課本文 7課復習テ

11/1本文 8課今週のニュース

11/2本文 8課漢字テスト 15

11/3(祝日)休校

11/4本文 8課今週のニュース

第7週

11/7本文 8課今週のニュース

11/8本文 8課本文 8漢読テ

11/9本文 8課今週のニュース

11/10本文 8課聴解練習 2

11/11本文 8課音読テスト 2

第8週

10/14本文 8課・15 課漢字テスト 16

11/15本文 15 課今週のニュース

11/16本文 15 課本文 8課復習テ

11/17本文 15 課聴解練習 3

11/18本文 15 課今週のニュース

4 「総合科目」の 4つの工夫総合科目では、超上級の学習者に対するカリキュラムを提供することを目的に、「深読みタスク」「今週のニュース」「複数教科書の併用」「聴解練習」の 4つの工夫(活動)を試みた。これら 4つの活動をどのように組み合わせ、どのように教えたかについて、以下、項目ごとに具体的に解説する。なお、本節の事例の報告は 2011 年度の実践に基づくものである。

4-1 「深読みタスク」教科書の本文の内容をより深く理解し、また、さまざまな場面に応じた形での表現を助けるため、本文の内容に即した、または本文の内容に関連する質問やタスクをまとめた「深読みタスク」シートを教師が作成し、学生にタスクを与えながら本文の読解を行った。「深読みタスク」は、本文の各段落に1問程度の割合で作られた質問やタスクから成る。教科書にも「話す練習」として 10 問程度の質問が挙げられているが、これらの質問はほとんどが本文中に答えが記されていることについて尋ねるものであり、本文を文法的に正確に理解していれば答えがわかるものとなっている。これに対して「深読みタ

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日本語超上級レベルのカリキュラム・デザイン ─「総合科目」活用の事例から─(後藤 多恵)

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スク」では、抽象的な語彙をわかりやすく説明させる練習や本文のテーマに即した意見を求めるタスクなど、本文の内容や背景についての知識や本文の執筆者の意図や行間がわからなければ対応できない質問やタスクを積極的に採用した。日本語の非母語話者にとってわかりにくい記述の内容については学生たちに絵で表現させ、互いに絵を見せ合って本文の内容を検討させたり、本文が扱うテーマについて学生たちの出身国では一般に人々がどのように考えるかを尋ねたりするものもタスクに加えた。教師は「深読みタスク」のシートを事前に学生に配布する。学生は授業までの時間に「深読みタスク」のシートに書かれた質問やタスクの意味を理解し、必要に応じて下調べしてくることが求められる。授業では、教科書の本文を段落ごとに扱い、新出の語彙や文型について教えたあと、その段落の「深読みタスク」の質問やタスクに答えさせる。「深読みタスク」の質問は口頭で行うが、質問やタスクによっては学生に書かせたものを提出させることもある。学生が提出したものは教師が添削して次の授業の際に各学生に返却する。学生の意見を求めるタスクなどでは、関連する事柄について調べないと意見を述べることができないため、その場合には学生が自分で調べた内容を次の授業で発表させた。

表 3 「深読みタスク」の例(一部)本文 7「少子化進行で見える社会のゆがみ」・ 【第 2段落】社会全体に生じている「大きなゆがみや欠陥」とは具体的にどのようなことを指しているのか想像してみなさい。・ 【第 5段落】「対症処療的な施策ではなく、患部を根治しない限り、効果も上がらないし、健全な社会にはならない」とはどういうことか、わかりやすく説明しなさい。・ 【第 6、7 段落】「結婚しない、あるいは結婚を遅らせる若い人たち」の 1人になったつもりで、結婚に対する考えを新聞の投書欄に投稿する文章を書いてみなさい。・ 【第 11 段落】「地域の活性化には地方自治体の責任も求められる」とあるが、地方自治体は具体的にどのようなことをすればよいと思うか。

本文の内容そのものに関する質問に対しては授業中に口頭でフィードバックを与え、それ以外のものについては学生が発表する形式に照らして適切な形でフィードバックを与えた。例えば、未婚・非婚社会について扱った本文に関して「結婚しない、あるいは結婚を遅らせる若い人たち」の 1人になったつもりで新聞に投書を書くというタスクを出した際には、学生 1人 1 人の提出物を添削したうえで、新聞の投書欄のようなレイアウトに全員の投書を配置してフィードバックした。また、電子メールによるコミュニケーションについて扱った本文に関しては、電子メールで個人的な悩みを打ち明けてきた友人にアドバイスを電子メールで返信する文章を書くというタスクを課し、その回答は学生が教師に実際にメールで送信するという形を取らせた。また、こ

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れに対するフィードバックは教師から学生へのメールの返信として行った。

4-2 「今週のニュース」週に 2~ 3 回、学生が自らの関心に即して選んだ新聞記事の内容を発表し、その内容について学生どうしで討論する「今週のニュース」を行った。「今週のニュース」は、名簿順に学生が一人ずつ担当を当てられて発表者となる。発表者となった学生は、過去 1週間ほどの日本語の新聞記事から事前に自分が関心のある記事を選び、その記事について十分に理解しておく。語彙だけでなく、必要によっては背景知識を含む関連情報も調べておき、クラスメートに解説できるように準備しておく。教師は発表者がどの記事を選んだか事前に知らされることがないため、事前の準備は特に行わない。また、発表者は当日の「今週のニュース」の進行役を兼ねるため、議事進行に関する日本語表現も練習しておくことが求められる。

表 4 「今週のニュース」の記事(一部)・「オウム裁判終結」(毎日新聞、2011 年 11 月 21 日)・「国民の幸福度 次世代への配慮 指標に」(読売新聞、2011 年 11 月 30 日)・「京滋企業 接点確保に工夫」(京都新聞、2011 年 12 月 2 日)・「民主主義 借金を前に立ちすくむ」(朝日新聞、2011 年 12 月 4 日)・「『すごっ』ツッコミ語全国区 短く便利」(朝日新聞、2011 年 12 月 5 日)・「健康長寿の秘密に迫る 元気な 100 歳の心と体」(読売新聞、2011 年 12 月 11 日)・「教育あしたへ デジタルが来た」(朝日新聞、2011 年 12 月 11 日)・「介護、中国市場を狙え」(朝日新聞、2011 年 12 月 19 日)・「金正日総書記死去 核、拉致解決への転機に」(毎日新聞、2011 年 12 月 20 日)・「岐阜北高 新聞読み比べ 見る目育てる」(朝日新聞、2011 年 12 月 21 日)

(2011 年度秋学期)

「今週のニュース」の時間では、発表者は自分が選んだニュース記事の写しをクラスメートに配布し、その記事を選んだ理由と記事の概要を 5分程度で説明する。その後、クラスメートは記事を 10 分程度で黙読する。内容が難しそうな場合には発表者が黙読の前に記事を要約することもある。黙読の後、発表者が進行役を務めて意見交換を行う。意見交換の形式は厳密に定めず、発表者が考えるやり方に沿って行われる。実際には、発表者がまずクラスメートに質問を投げかけ、その質問に沿ってクラスメートと討論することが多かった。教師は発表者から指名されたときのみコメントを述べる程度とし、それ以外は質問や方向付けなどを行わない。教師は発表や討論の流れを妨げないようにし、発表者の進行に問題がある場合にのみ進行を助ける。討論の時間は 10 分を目安とするが、クラスメートの

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関心に応じて多少増減させた。発表者が選ぶ新聞記事はおおむね他の学生も関心を持つことが多かったが、たとえば金正日総書記の死去について韓国出身の学生は大きな問題として受け止めていたのに対して中国出身の学生は金正日総書記についてあまり知らないといったように、新聞記事によっては出身地によって関心の持ち方が異なるものもあった。

4-3 「複数教科書の併用」学生が多様なジャンルの文章に触れる機会を増やすため、複数の教科書を併用した。主とした教科書には先述の通り『時代を読み解く上級日本語』を用いた。この教科書を採択した理由は、第一に、「読む、聞く、話す、書く」の四技能がバランスよく練習できるように編集されており、特に「読む」と「話す」の練習に役立つと考えたためである。第二に、テキストで扱われているのが日本の時事問題であり、新聞記事や論文などで使われるやや硬めの文章に学生が慣れるのに役立つと考えたためである。第三に、同じテキストがルビありとルビなしの二通りで掲載されており、日本語を視覚的に理解しようとしがちな漢字圏出身の学生に漢字の読みについて注意を促し、読みを定着させるのに役立つと考えたためである。ただし、『時代を読み解く上級日本語』で扱われているのは論説文ばかりであるため、多様なジャンルの文章に触れるために、次の 2冊の教科書を併用した。『日本文化を読む 上級者向け日本語教材』(アルク、2005 年、以下、『日本文化を読む』)は、1冊の中に様々なジャンルの文章が集められている。また、多くの教科書が横書きであるのに対し、本冊に収められている文章はすべて縦書きであり、新聞などの縦書きの文章に慣れるのに適している。さらに、『日本文化を読む』には教科書の本文を朗読した CDが付いており、学生が正しいアクセントや発音で読みの練習をするのに役立つ。時事問題を扱っていないため、本文の内容は時がたっても現実と大きくかけ離れたものにはならない。授業では、『日本文化を読む』のうち「リーダーシップ論」「贈るかたちと意味」の 2つの課を取り上げた。なお、『日本文化を読む』は技能別科目の「読解 A」でも教科書として使われており、総合科目で扱う課は技能別科目と重複しないように調整して選んだ。『日本を知ろう 日本の近代化に関わった人々』(アルク、2005)は、歴史的な人物の紹介を通じてその時代の社会について紹介するものであり、日本の歴史を知る上でも現代に通じる日本人の考え方を知る上でも役に立つ。歴史的な人物を順に取り上げているため、本文の内容はある程度簡単であっても、当時のことがわかる関連資料やその人物が書いたものを資料とすることで授業に広がりを持たせることができる。2011 年度の授業で取り上げたのは、福沢諭吉、吉田松陰、夏目漱石、樋口一葉の 4人である。福沢諭吉では『学問のすゝめ』と『福翁自伝』を、夏目漱石は『坊っちゃん』と『吾輩は猫である』を、樋口一葉では『たけくらべ』の冒頭部分を現代仮名遣いに

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したものの写しを配布し、これらの作品を紹介した。また、吉田松陰、福沢諭吉、夏目漱石については、関連する日本史の番組を後述する「聴解練習」で取り上げた。

4-4 「聴解練習」教科書で学んだ語彙や文型を実際の発話の中に置いたときの理解力を高めるため、また、学生の関心の幅を広げるため、教科書や「今週のニュース」などで取り上げた話題に関するニュース番組やドキュメンタリー番組を用いて聴解の練習を行った。週に 1回の頻度、1学期に 10 回程度行った。「聴解練習」の教材は教師が事前に用意した。教科書の本文のテーマに関連して深読みタスクで取り上げたものや、そのときどきの社会の動きに合わせて学生が「今週のニュース」で紹介したものに関するニュース番組やドキュメンタリー番組を選んで教材とした。また、論説文以外の教科書で扱われた人物に関する日本史の番組も対象とした。教材によっては時間が長いものもあったが、教師が映像を編集することはせず、長い場合には番組の一部のみ授業で見せた。

表 5 「聴解練習」の教材(2011 年度)テーマ 番組名 出典 放送年度

文化 葵祭の歴史 NHK特集 2009 年足利事件 足利事件釈放 NHK「週間ニュース」 2009 年

えん罪はなぜ見過ごされたか NHK「クローズアップ現代」 2009 年家族・家庭 テレビがやってきた 映画「ALWAYS三丁目の夕日」 2009 年

共感力のある家庭を NHK「視点・論点」 2009 年少子高齢化 婚活と恋愛 NHK「視点・論点」 2009 年日本語 外国人が小説を書くとき NHK「視点・論点」 2009 年歴史・文学 太宰治はなぜうける? NHK「クローズアップ現代」 2009 年女性と仕事 鳥インフルエンザを封じ込めろ 

WHO医師 進藤奈那子の仕事NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」

DVD

少子高齢化 どうなる未婚社会 NHK討論番組 2009 年格差社会 ハケンの品格 テレビドラマ DVD原子力発電 安全神話 当事者が語る事故の深層 NHKスペシャルシリーズ原発危機 2011 年科学技術 極限の宇宙 コマンダーへの道

宇宙飛行士若田光一NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」

2011 年

環境問題 密着 CO2 削減交渉 NHKクローズアップ現代 2009 年電気自動車が社会を変える NHKクローズアップ現代 2009 年

日本史 上士と下士 NHK大河ドラマ「龍馬伝」 2010 年黒船と剣 NHK大河ドラマ「龍馬伝」 2010 年松陰はどこだ NHK大河ドラマ「龍馬伝」 2010 年青雲 NHK大河ドラマ「坂の上の雲」 2009 年国家鳴動 NHK大河ドラマ「坂の上の雲」 2009 年福沢諭吉と文明開化 学研ビデオ「日本の歴史シリーズ」 ビデオ

「聴解練習」では、教師が番組について簡単に紹介した。番組の内容や背景に関する資料や語彙リストなどは配布せず、学生にはメモ用紙のみ配布し、学生は教材を視聴しながら語彙や内容でわからない箇所をメモするよう指示された。番組の視聴後、学

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生はメモ用紙のほかに感想を書く用紙が配られ、10 分程度で番組の感想を記した。「聴解練習」のための時間には制約があり、また学生によって理解度が大きく異なるため、クラス全体で番組の内容に関する意見交換を行なうことは少なかった。しかし、早く感想を書き終わった一部の学生は教師に提出する前にペアになって互いの感想を共有することもあった。学期のはじめのうちはメモ用紙を回収し、その内容をもとに次の授業で教師がメモの取り方のアドバイスや学生の内容理解への解説を行ったりしたが、後に学生がメモを取ることに慣れてくるとメモ用紙の提出は求めず、感想と内容の要約を書いた用紙のみ提出を求め、その内容を添削して学生に返却した。学生の多くが質のよい内容の感想を書いた場合は、学生が添削された文章をもとに自分の感想をクラスメートに口頭で伝えるという練習も行われた。ただし、表 5の日本史の番組に関しては、視聴の目的が内容を聞き取って理解することではなく、時代背景や当時の様子を知ることであったため、教師はメモを取ったり感想を書いたりする作業を求めず、視聴後に学生に口頭で簡単に感想を聞くだけにとどめた。

4-5 活動の総合以上見てきたように、「総合科目」ではさまざまな活動を組み合わせることで立体的な日本語学習の機会の提供を試みた。教科書は基本的に時事を扱った論説文を中心としたうえで、「深読みタスク」を通じて教科書の内容を今日の現実社会の問題と関連して捉えさせようとし、また、「今週のニュース」を通じて学生が関心を持つニュースも授業の題材として取り入れた。そのうえで、「聴解練習」によってそれらに関連した番組を視聴し、さらに幅広い角度から問題を捉え、考え、表現する力を養うことを試みた。

5  評価と課題これまで見てきた「総合科目」の取り組みは、実際に受講した学生たちにどのような影響を与えたのだろうか。この問いは、直接的には「総合科目」の到達度をどのように評価するかという問題と結びついており、間接的には超上級の学習者の日本語能力をどのように客観的に測るかという問題と結びついている。

5-1 期末試験授業科目としての総合科目の評価方法は、出席点 20%、小テスト類 20%、期末試験40%、その他の課題 20%により、学生ごとの到達度を絶対評価により採点した。小テスト類には、教科書の本文の「漢字読みテスト」、教科書の本文の内容の理解を測る「復習テスト」、テキストによる自習を前提とした漢字の書き方と読み方の「漢字テスト」、教科書の本文の「音読テスト」の 4つが含まれる。期末試験は 1学期間に学習した内

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容を「総合 1」から「総合 5」の 5回の試験に振り分け、その 5回の試験はそれぞれ、教科書の本文の内容の理解を問う問題、教科書の本文の内容に対して自分の意見を述べさせる問題、自習を前提とした漢字テキストから出題される問題などから成る。その他の課題には、「深読みタスク」で与えられたタスクに対する対応や、「今週のニュース」の発表に対する評価などを含む。期末試験は 1学期に 1度しか行わないため、期末試験の結果を比較することで「総合科目」による到達度を測ることはできないが、一部の学生は 2学期にわたって総合科目を履修しているため、連続する 2学期分の期末試験の結果を点数と共に記述問題の回答の質や量なども含めて比較することで「総合科目」による具体的な能力の伸びをうかがい知る助けになると思われる。

5-2 OPI による口頭能力測定これら以外の評価の試みは、口頭能力測定(OPI)を用いる方法である。第 1節 2項でも述べた通り、OPIとは全米外国語教育協会(ACTFL)が開発した外国語の運用能力を測定するためのインタビューテストである。OPIの試験官になるには定まった研修を受け、実際にインタビューを行って口頭運用能力を判定した結果をもとに資格認定の有無が判断される。OPIによる口頭能力の判断は「総合科目」のカリキュラムには含まれていないが、筆者が OPIの試験官の資格を持っていることから、2011 年度の秋学期より「総合科目」の学生を対象に学期の初め OPIのインタビューを行った。学期末に OPIの再インタビューを行い、OPIでの能力の向上が認められれば「総合科目」の影響を間接的ながら示す一助となるように思われる。これについては今後継続して検討していきたい。

5-3 学生のアンケート「総合科目」を通じた学生の到達度と別に、受講した学生に対して行ったアンケート調査を紹介することで、学生の満足度および「総合科目」の課題について整理しておきたい。学生アンケートは、2011 年度に「総合科目」を履修した学生を対象に行った。春学期は履修者 12 名で、欠席した 1名を除いて 11 人が回答した。秋学期は履修者 10名で、10 名が回答した。アンケートは無記名式で、教科書の内容や「深読みタスク」、「今週のニュース」、「聴解練習」などに対して 5段階で評価し、それぞれの項目について自由記述式でコメントを書く形式にした。以下、自由記述のコメントを紹介する。まず、全体については、「日本語で考える力が上達し、自然に自分の考えを話せるようになった」「発表など色々あって、話すチャンスも多かったので、自分の日本語力がけっこう伸びた」「ニュースなどを聞くときに授業で学んだ表現が役に立った」「特に硬い話題について意見を発表することが多かったので、ただの文法などの勉強ではなく本当に日本語を活用する練習ができてとても役に立った」といったコメントが挙げ

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られている。ここに見られるように、超上級の学生は日本語の読みと聞き取りが優れているが、自分の考えをまとめて日本語で議論する機会が少なく、その課題を克服するための練習の機会として、「総合科目」の授業を好意的に受け止めていたことがわかる。一方で、運用重視の授業に対し「もうちょっと文法を勉強したかった」という感想をもった学生も 1名いた。教科書については、「内容の多くが社会問題なので、正直つまらない」「役に立つが

面白さがない」「政治的に偏っているので、いろいろな立場から社会問題を見ている文章を読みたい」「記事が少し古いので、もっと現状について詳しく知りたいと思う」というように、内容そのものさや情報の古さ、また筆者の見解を批判する声はあるものの、「普段読まないテーマで、また表現が豊かなのでよかった」「日本社会の事情が分かるようになって大変よかった」「新聞の社説とほぼ同じくらいの難易度だったので、今後難しい文章を読む時に助かる」といった好意的なコメントも半数挙げられている。そして、教科書の補助教材である「深読みタスク」について記述されたコメントは、次のように全て好意的なものであった。「わかりにくいところと曖昧なところを考えさせて、具体的に説明させるので役に立った」「まとまった考えで内容を説明するのは難しいので、いい練習になった」「深読みタスクの質問に答えると本文の主旨などがもっと理解できた」「文章を読むとき、その意味について深く考えるようになった」「筆者がいったいどんな意図で文を書いているのかなど、文を理解するのに役立つ」。以上のコメントから、学生はこの深読みタスクの利用を通して深く読もうとする姿勢と自分の意見を持ち、それを日本語で書いたり読んだりする力が身についたと考えられる。次に、「聴解練習」については、「耳の練習になったが、もっと面白い内容の方がよかっ

た」「もっと頻繁に練習しないと上達できない」と内容や実施回数に改善を求める意見はあるものの、「書く練習もできたし、大切なポイントをメモすることも勉強になった」「日本人との普通の会話で出ていないトピックが聞けるから役に立った」というコメントもあり、概ね活動としては役に立ったと考えてよいであろう。最後に、「今週のニュース」の活動にはすべて好意的で満足度の高いコメントが出されている。「話すことに自信ができた」「なかなか発表する機会がなかったので、いい練習になった」「今起きていることを知ることができるだけではなく、プレゼンの練習にもなる」「日本で新聞を読まなかったけれど読むようになった」「毎回、緊張してうまく発表できなかったが、話す能力が少し上達したような気がする」「発表する機会は授業以外にないし、ていねいな言葉を使ってみんなの前でスピーチすることが大事だと思うので、よかったと思う」「質問のやりとりが役に立った」など、学生が主体的な参加によって自信を得たとみられる内容の記述が多い。以上、アンケート調査の自由記述のコメントから、「総合科目」の活動は学生に概ね好意的に評価され、最終的に多くの学生にとって日本語の運用力を伸ばすよい機会になったと考えられる。

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6  まとめと展望本稿では、超上級レベルの学生に対するカリキュラム・デザインの一例を紹介した。本稿で紹介した「総合科目」の試みでは、「深読みタスク」「今週のニュース」「聴解練習」などのさまざまな活動を教室に持ち込み、それらの活動が相互に関連することで、日本語学習に深みと広がりが増し、学生たちの達成感に結びついたように思われる。「今週のニュース」では発表を通じて現実社会に関する互いの意見交換の場になり、また「深読みタスク」では実際に投書文を書いたりメールを送ったりすることで現実のコミュニケーションにより近いものになった。複数の教科書の併用や「聴解練習」では、学習者が受け取る日本語の種類に偏りなくいろいろなジャンルを扱うことで、そこで使用される多様な日本語に幅広く触れる場を提供している。このように、超上級のカリキュラム・デザインで重要なのは、扱う語彙や文型のレベルの高さだけでなく、たとえ教室の中であってもそれが教室外の現実社会と結びついているという意識を学習者に与えることであるように思われる。客観的な能力測定の方法にはいまだ課題が多いが、学生へのアンケートの感想から「総

合科目」の活動を通して得られた達成感が読み取れ、また担当講師が目にする学生の作文や発表を時間軸にそって比較すると、着実に力を伸ばしていることが見て取れる。最後に、細川(2005)は「学習者主体における教師の役割」は「学習者自身が一つのコミュニティ(たとえばその教室)の中で自律的に変容を遂げ、成長することを見守ること」であり、「さらに、そのように変貌・成長した主体が、他のコミュニティにおいても能動的に参加していくことができるような力をつけられるような教室環境をどのようにデザインをすることができるかということが課題となる」と述べている(細川 2005、p.108)。学習者が教室以外の日本語のコミュニティにおいても、個性を保ちつつ積極的に関わっていける力を養うためには、教室という学習環境を担当する教師の「デザイン力」が重要であるのだということを常に念頭におき、今後もよりよいカリキュラムのあり方を探っていきたい。

注1  2010 年より日本語能力試験は 1級~ 4級から N1 ~ N5 に再編された。N1 ~ N5 では過去の試験問題を公表していないが、旧 1級は N1 にほぼ相当する。本稿では旧 1級~旧 4級の区分を扱う。

2 「立体的な日本語学習」とは、教科書や他の教材をそれぞれ独立させて並行して用いるのではなく、教科書と他の教材の内容に相互に関連を持たせることによって、1つのテーマについて読む、聞く、書く、話すの四技能を学習することを指す。

3 シラバスは、教える項目の何を基準にするかによって(1)構造シラバス、(2)場面シラバス、(3)機能シラバス、(4)トピックシラバス、(5)タスクシラバス、(6)スキルシラバス、という名称がつけられている(東海大学留学生センター 2005)。

4 2009 年度までは 1学期が 14 週間であったため、1学期間の総授業回数は 70 回であった。

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5  同志社大学日本語・日本文化教育センターの超上級レベルの技能別科目の詳細は、脇田・三谷(2011)および藤井(2011)でも報告されている。

6 漢字教材は日本漢字能力検定協会(2009)に変更した。

参考文献池田玲子(2009)「協働的アプローチで授業をデザインする」大島弥生・大場理恵子・岩田夏穂編『日本語表現能力を育む授業のアイデア』ひつじ書房,pp.27-42.

大島弥生(2009)「大学での日本語表現能力育成を授業のデザインを考える」大島弥生・大場理恵子・岩田夏穂編『日本語表現能力を育む授業のアイデア』ひつじ書房,pp.11-25.

岡本牧子・氏原庸子(2007)『パターンで学ぶ日本語能力試験 1級文字・語彙練習問題集』Jリサーチ出版.かたくり日本語教師会(2003)『完全マスター漢字日本語能力試験 1級レベル』スリーエーネットワーク.京都日本語教育センター(2005)『日本文化を読む―上級者向け日本語教材』アルク.国際交流基金編(2006)『日本語教師の役割/コースデザイン』ひつじ書房.国際交流基金・日本国際教育協会(1994)『日本語能力試験出題基準』凡人社.牲川波都季(2001)「学習者主体とは何か」細川英雄編『ことばと文化を結ぶ日本語教育』凡人社,

pp.11-30.舘岡洋子(2005)「コース・デザイン」東海大学留学生教育センター編『日本語教育法概論』東海大学出版会,pp.57-70.

田中 望(1988)『日本語教育の理論と実践―コースデザイン』大修館書店.同志社大学日本語・日本文化教育センター(2011)『2011 日本語・日本文化教育センター/留学生別科 履修要項・シラバス』同志社大学日本語・日本文化教育センター.日本漢字能力検定協会(2009)『3級漢字学習ステップ』改訂二版,三省堂.日本語教育学会編(1991)『日本語教育機関におけるコースデザイン』凡人社.春原憲一郎(2006)「教師研修と教師の社会的役割」春原憲一郎・横溝紳一郎編著『日本語教師の成長と自己研修―新たな教師研修ストラテジーの可能性をめざして』凡人社,pp.180-197.

平弥悠紀・米澤昌子・松本秀輔・佐尾ちとせ(2010)「同志社大学における日本語プレースメントテストの分析と妥当性の検証」『同志社大学日本語・日本文化研究』同志社大学日本語・日本文化教育センター,第 8号,pp.1-16.

藤井みゆき(2011)「語彙習得を目指す読解教材の協働的学習の活用」『同志社大学日本語・日本文化研究』同志社大学日本語・日本文化教育センター,第 9号,pp.80-94.

細川英雄(2001)「ことば・文化・教育:ことばと文化を結ぶ日本語教育をめざして」細川英雄編『ことばと文化を結ぶ日本語教育』凡人社,pp.1-10.

細川秀雄(2005)「新時代の日本語教育をめざして:早稲田大学大学院日本語教育研究科の取り組み:第 11 回学習者主体とは何か:日本語教育における学習者主体と協働の意味」『日本語学』24 号,明治書院,pp.96-110.

細川英雄(2006)「日本語教育における教育実践と教師教育の統合」春原憲一郎・横溝紳一郎編著『日本語教師の成長と自己研修―新たな教師研修ストラテジーの可能性をめざして』凡人社,pp.225-243.

牧野成一(2008)「OPI、米国スタンダード、CEFRとプロフィシエンシー」蒲田 修・嶋田和子・迫田久美子編著『真の日本語能力をめざして―プロフィシエンシーを育てる』凡人社,pp.18-37.

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三浦 昭・ワット伊東泰子(2005)『日本を知ろう―日本の近代化に関わった人々』アルク.宮原彬編(2006)『留学生のための時代を読み解く上級日本語』スリーエーネットワーク.脇田里子・三谷閑子(2011)「『文章表現』と『口頭表現』の連携:超級日本語学習者を対象にした試み」『同志社大学日本語・日本文化研究』同志社大学日本語・日本文化教育センター,第 9号,pp.59-79.

Brown, James Dean. (1995) The Elements of Language Curriculum: A Systematic Approach to

Program Development, Heinle& Heinle Publishers.

資料『留学生のための時代を読み解く上級日本語』目次

Ⅰ章 生活1.余暇2.健康産業3.見合いは親同士で4.性別役割分担5.国民の生活と日本行政6.所得分配の不平等化

Ⅱ章 少子高齢社会7.少子化進行で見える社会のゆがみ8.出生率が上がっている町9.“ 孫離れ ” できぬ祖父母10.年金改革と高齢者雇用Ⅲ章 教育11.肥大化する競争社会12.ホテル化した家庭(1)13.ホテル化した家庭(2)

Ⅳ章 企業と労働14.企業への精神的従属15.義理を欠くことの大切さ16.増える持ち帰り残業17.過労自殺の実相Ⅴ章 科学技術と人間18.自動車の普及19.電子メールとトラブル20.ケータイ社会21.原子力発電22.ラップトップを抱えた「石器人」Ⅵ章 環境23.大量廃棄社会から循環型社会へ24.バッグ持参で脱レジ袋25.ゴルフ場開発26.たばこの害