cw6 a5370d221 mロシア・cis 中東 南西アジア asean 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図...

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伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓) 近年発展の著しい新興国市場が世界経済に一体的に 組み込まれる中にあって、他国の競合企業に遅れるこ となく新興国需要を取り込むことは、我が国の高生産 性部門の経済活動を拡大させる上で必須かつ効果的な 対応となる。また、我が国企業のサプライチェーンの 高度化を進めて生産性を向上させる上でも、国内拠点 と海外拠点の適切な役割分担を図ることが重要である。 本章では、まず、様々なミクロ・マクロの経済指標 の概観を通して、新興国展開の重要性を示すとともに、 新興国展開に係るリスクについて述べる。第2節では、 我が国企業の新興国展開の現状と、新興国市場におけ る他国企業との競合状況を分析する。続く第3節では、 第 1 節、第 2 節の分析を踏まえて、我が国企業の新興 国展開促進に向けた通商政策の在るべき方向性を示 す。最後に、第 3 節で示した方向性に則った具体的な 取組について第 4 節で提示する。 なお、本章で用いる世界の地域区分の定義について は、付注5 に掲載する。また、「先進国」、「新興国」 という表現には地域を含む場合がある。 近年、我が国の市場が世界市場の中で相対的に小さ くなる中、我が国の高生産性部門が経済活動を拡大さ せていく上で、新興国展開の重要性はますます高まっ ている。 もっとも、一口に新興国といってもその様相は各地 域によって様々であり、展開する意義は、それぞれの 地域によって異なる。そこで本節では、地域別にミク ロ・マクロの様々な経済指標を概観し、それぞれの地 域が持つ潜在的な成長力を分析する。合わせて、新興 国展開に係るリスクについても触れる。 新興国展開の重要性 (1)新興国の経済成長見通し はじめに、GDP の成長見通しから概観する。IMF による地域別の実質 GDP成長率見通しをみると、 2018 年時点で中国が前年比 8.5%成長、南西アジアが 同 6.6%成長、ASEAN が同 5.6%成長と、アジア地域 で高い経済成長率が維持される見通しである。先進国 の 2018 年時点での実質 GDP 成長率は 2.4%と、2010 年から 2018 年にかけて、一貫して全地域・区分の中 で最も低い実質 GDP 成長率が予測されている(第Ⅱ-2- 1-1図)。 2012 年から 2018 年にかけての地域別の名目 GDP 増加額をみると、世界全体で 25.9 兆ドル増加するこ とが見込まれている中、先進国では 10.5 兆ドル増、 新興国では 15.3 兆ドル増と、世界全体の名目 GDP 増 分の約 6 割が新興国で生み出される見込みである(第 Ⅱ-2-1-2図)。 1.新興国の潜在成長力 86 2013 White Paper on International Economy and Trade

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Page 1: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓) 近年発展の著しい新興国市場が世界経済に一体的に組み込まれる中にあって、他国の競合企業に遅れることなく新興国需要を取り込むことは、我が国の高生産性部門の経済活動を拡大させる上で必須かつ効果的な対応となる。また、我が国企業のサプライチェーンの高度化を進めて生産性を向上させる上でも、国内拠点と海外拠点の適切な役割分担を図ることが重要である。 本章では、まず、様々なミクロ・マクロの経済指標の概観を通して、新興国展開の重要性を示すとともに、新興国展開に係るリスクについて述べる。第 2節では、

我が国企業の新興国展開の現状と、新興国市場における他国企業との競合状況を分析する。続く第 3節では、第 1節、第 2節の分析を踏まえて、我が国企業の新興国展開促進に向けた通商政策の在るべき方向性を示す。最後に、第 3節で示した方向性に則った具体的な取組について第 4節で提示する。 なお、本章で用いる世界の地域区分の定義については、付注 5に掲載する。また、「先進国」、「新興国」という表現には地域を含む場合がある。

 近年、我が国の市場が世界市場の中で相対的に小さくなる中、我が国の高生産性部門が経済活動を拡大させていく上で、新興国展開の重要性はますます高まっている。 もっとも、一口に新興国といってもその様相は各地

域によって様々であり、展開する意義は、それぞれの地域によって異なる。そこで本節では、地域別にミクロ・マクロの様々な経済指標を概観し、それぞれの地域が持つ潜在的な成長力を分析する。合わせて、新興国展開に係るリスクについても触れる。

新興国展開の重要性第1節

(1)新興国の経済成長見通し はじめに、GDPの成長見通しから概観する。IMFによる地域別の実質GDP成長率見通しをみると、2018 年時点で中国が前年比 8.5%成長、南西アジアが同 6.6%成長、ASEANが同 5.6%成長と、アジア地域で高い経済成長率が維持される見通しである。先進国の 2018 年時点での実質GDP成長率は 2.4%と、2010年から 2018 年にかけて、一貫して全地域・区分の中

で最も低い実質GDP成長率が予測されている(第Ⅱ-2-1-1 図)。 2012 年から 2018 年にかけての地域別の名目GDP増加額をみると、世界全体で 25.9 兆ドル増加することが見込まれている中、先進国では 10.5 兆ドル増、新興国では 15.3 兆ドル増と、世界全体の名目GDP増分の約 6割が新興国で生み出される見込みである(第Ⅱ-2-1-2 図)。

1.新興国の潜在成長力

86 2013 White Paper on International Economy and Trade

Page 2: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

(2)新興国の人口動態① 概観 次に、地域別の人口成長を見てみると、我が国の人口が 2004 年をピークに減少傾向が続いている一方で、新興国では、爆発的に人口が増加することが予想されている。国連の世界人口予測によれば、2012 年から2030 年にかけて、世界全体で 70.5 億人から 83.2 億人と 12.7 億人増加する見通しとなっているが、そのうちの 95%が新興国で生み出される見込みである。特にアフリカと南西アジアにおける人口増加が著しく、同期間にかけて、アフリカでは 4億 9千万人、南西アジアでは3億 7千万人増加する見通しである(第Ⅱ-2-1-3 図)。

② 所得階層別の人口動態 消費市場としての魅力を評価するためには、単に総体的な人口増分を見るだけでなく、どの所得層が拡大するのかを捉えることも重要である。所得の上昇によって、人々の消費性向は変化するためである。経済産業省(2012)によれば、世帯の年間可処分所得が 5,000ドルを超えると、洗濯機や冷蔵庫等、各種家庭製品の保有率が急速に上昇し、7,000~10,000 ドル辺りから外食や教育、レジャー等、各種サービスへの消費性向が急速に上昇、12,000 ドルを超えるとヘルスケア分野への消費性向が高まるという(第Ⅱ-2-1-4 図)。一般的に、高品質・高機能製品を得意としてきた我が国企業にとっては、より高い所得層の人口が増加する地域がより魅力的であると考えられる。以下、所得層を第Ⅱ-2-1-5 表の通り定義して分析を進めていく。

0

550(100 万人)

2015 2020 2025 2030

19114 16 19

69

19

7535 53 6734 42 3949

7699

177

277

366

4979

107

3 3 1

4976

98

208

347

492

先進国 中国 ASEAN 南西アジア 中東ロシア・CIS 中南米 アフリカ

50100150200250300350400450500

第Ⅱ-2-1-3 図地域別の人口増分(2012 年から 2030 年にかけての増分)

備考:中位推計を使用。資料:UN「World Population Prospects: The 2010 Revision」から作成。

70,000 ドル

上位中間層

10,000 ドル

下位中間層5,000 ドル

【世帯収入 70,000 ドル~】日本の平均世帯年収(2010 年)

【世帯収入 12,000~】・ヘルスケア分野への消費性向の 高まり

【世帯収入 7,000~10,000 ドル】・外食や教育、レジャーなど、各種サービス への消費性向が急速に上昇・インテリア等のラグジュアリー消費性向が 急速に上昇・新車の保有率が急上昇

【世帯収入 5,000 ドル~】・洗濯機や冷蔵庫など、各種家電製品の 保有率が急速に上昇

※1960 年代前半の日本の 収入水準

第Ⅱ-2-1-4 図 所得層別の消費性向イメージ

資料: 経済産業省「新中間層獲得戦略~アジアを中心とした新興国とともに成長する日本~」から作成。

8.5

6.6

5.65.44.54.0

3.9

2.4

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

中国 南西アジア ASEAN アフリカ中東 ロシア・CIS 中南米 先進国

(%)

第Ⅱ-2-1-1 図 地域別の実質GDP成長率

備考: 各地域の実質GDP成長率は、それぞれの地域に属する国の実質GDP成長率に、各年の名目GDPウェイトを乗じて算出した値の合計値。名目GDPのウェイトは、各地域の名目GDP総額に占める各国の割合。

資料:IMF「World Economic Outlook、April 2013」から作成。

0

10

15

20

25

30(兆ドル)

5

2012 2013 2014 2015 2016 20182017

先進国10.5 兆ドル

その他の新興国7.3 兆ドル

中国6.7 兆ドル

ASEAN1.4 兆ドル

アフリカ中南米ロシア・CIS中東南西アジアASEAN中国先進国

第Ⅱ-2-1-2 図地域別の名目GDP増加額(2012 年から 2018 年にかけての増分)

資料:IMF「World Economic Outlook、April 2013」から作成。

通商白書 2013 87

第1節新興国展開の重要性

Page 3: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

 世界全体の中間層・富裕層(世帯年間可処分所得が5,000 ドル以上)の人口は、2010 年から 2020 年にかけて、世界全体で 44 億 8 千万人から 58 億 9 千万人に増加することが予測されている。そのうち、先進国では 10 億 7 千万人から 11 億 2 千万人に増加する一方、新興国では、34 億万人から 47 億 7 千万人と約 14 億人増加することが見込まれている。その結果、新興国が世界全体の中間層・富裕層人口に占める割合は、2020 年には 81%となる見込みである(第Ⅱ-2-1-6 図)。 所得階層別人口の推移を地域毎に更に細かく分解してみると、中国、南西アジアで上位中間層・富裕層の

人口が大きく増加することが見込まれている。下位中間層については、アフリカでも量的拡大が見られる(第Ⅱ-2-1-7 図)。所得層 世帯年間可処分所得

富裕層 35,000 ドル以上

上位中間層 15,000 ドル以上~35,000 ドル未満

下位中間層 5,000ドル以上~15,000ドル未満

低所得層 5,000 ドル未満

資料: 経済産業省「新中間層獲得戦略~アジアを中心とした新興国とともに成長する日本~」から作成。

第Ⅱ-2-1-5 表 所得層の定義

1,072 1,097 1,120

1,119

484

1,304

336258583683

9684101,015307242545568

774340792281213501504

0

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000(100 万人)

1,072 1,097 1,120

1,119

484

1,304

336258583683

9684101,015307242545568

774340792281213501504

1,000

2010 2015 2020

アフリカ南西アジア ASEAN 中国 先進国

中南米 ロシア・CIS 中東

第Ⅱ-2-1-6 図 地域別の中間層・富裕層人口

備考:世帯可処分所得別の家計人口。各所得層の家計比率×人口で算出。   2015 年、2020 年の各所得階層の家計比率は Euromonitor 推計。資料: Euromonitor International 2013、UN「World Population Prospects:

The 2010 Revision」から作成。

710 731 771

44 86 14217 25 37 25 38 58 75 94 116 19 36 52

99 131 16330 36 46

249 255250

153255358

55 86125

73140

253110 116

124

66 89 103188 209

224

81 97 126

113 11199

577

627

619

268298323

694

837

993

96 9796

128 117103

214205 196

393 435511

19 19 16567

401269

254216172

865

756

575

39 4445

69 42 28

89 78 69

518577

595

710 731 771

44 86 14217 25 37 25 38 58 75 94 116 19 36 52

99 131 16330 36 46

249 255250

153255358

55 86125

73140

253110 116

124

66 89 103188 209

224

81 97 126

113 11199

577

627

619

268298323

694

837

993

96 9796

128 117103

214205 196

393 435511

19 19 16567

401269

254216172

865

756

575

39 4445

69 42 28

89 78 69

518577

595

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

2010

2015

2020

先進国 中国 ASEAN 南西アジア 中東 ロシア・CIS 中南米 アフリカ

低所得層下位中間層上位中間層富裕層

(100 万人)

第Ⅱ-2-1-7 図 地域別の所得階層別人口

備考:世帯可処分所得別の家計人口。各所得層の家計比率×人口で算出。   2015 年、2020 年の各所得階層の家計比率は Euromonitor 推計。資料:Euromonitor International 2013、UN「World Population Prospects: The 2010 Revision」から作成。

88 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 4: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

 拡大する所得層は地域毎に異なることがわかったが、我が国企業は、今後、海外市場においてどの所得層をターゲットとしているのだろうか。直接投資先の国・地域において、現在ターゲットとしている所得層及び今後ターゲットとする所得層について調査した企業アンケートによれば、現在・今後ともに、大多数の我が国企業が上位中間層、富裕層を主なターゲットとしていることがわかる。ただし、今後については下位中間層をターゲットとする企業の割合が、特に非製造業と中小企業の間で高まっており、ターゲットの裾野の広がりが見える(第Ⅱ-2-1-8 図)。

(3)新興国の消費市場① 消費支出 中間層・富裕層の増加に伴い、消費支出も増加する見通しである。2012 年から 2020 年にかけての地域別の消費支出額の伸び率をみると、ロシア・CIS、南西アジア、中国が約 2.4 倍に拡大する見込みである(第Ⅱ-2-1-9 図)。消費支出の増分額で見ると、同期間にかけて増加する消費支出全体の少なくとも 6割が新興国で生み出される見通しとなっている(第Ⅱ-2-1-10図)。

② 耐久消費財の普及率 前述した通り、世帯の所得水準が上昇するにつれて、耐久消費財への消費性向が高まることが期待される。我が国においては、主要な耐久消費財普及率は既に高く、今後発生する耐久消費財需要のほとんどは買い換え需要が占めるとみられ、我が国の耐久消費財メーカーにとっては、拡大が見込まれる新興国の新規需要

を獲得することが重要となろう。 ここでは、耐久消費財のうち、乗用車、カラーテレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジについて、新興国における現在の普及率を確認する。第Ⅱ-2-1-11 図は、我が国の一般家庭における耐久消費財普及率の推移を折れ線グラフで表し、マーカーで新興国の 2012 年時点の耐久消費財普及率を示したものである。新興国の現在の普及率が、我が国の何年代の普及率に相当するかが見て取れる。 我が国の耐久消費財普及率の上昇過程を見ると、製品によって前後するが、概ね S字を描く傾向にあり、新興国展開にあたっては、普及率が急速に上昇するタイミングを捉えることが重要である。例えば、インドネシアの冷蔵庫(30.6%)、トルコの電子レンジ(10.7%)、南アフリカの乗用車(28.3%)等の普及率は、S字曲線の変曲点前に位置しており、今後、急速に伸びる可能性がある。

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

2.2

2.4

2.6(2012 年=100)

2012 201720142013 2015 20192016 2018 2020

2.432.362.352.052.051.851.75

1.38

ロシア・CIS 南西アジア 中国 中東ASEAN アフリカ 中南米 先進国

第Ⅱ-2-1-9 図消費支出額の伸び率(2012 年-2020 年)

備考:データの制約上、アフリカ地域には欠損値が多数含まれる。資料:Euromonitor International 2013 から作成。

10.6

4.51.4

1.91.1

0.92.7

1.9

25.1

0

10

15

20

25

30(兆ドル)

10.6

25.14.51.4

1.91.1

0.92.7

1.9

5

先進国 中国 ASEAN 南西アジア

中東 ロシア・CIS

世界計アフリカ中南米

新規増分の少なくとも 6割が新興国

第Ⅱ-2-1-10 図消費支出額の増分(2012 年-2020 年)

備考:データの制約上、アフリカ地域には欠損値が多数含まれる。資料:Euromonitor International 2013 から作成。

5.36.52.83.25.46.34.25.24.85.7

17.612.1

11.111.317.311.015.112.716.211.9

38.236.240.345.235.7

34.641.641.838.638.3

38.945.245.840.341.748.039.240.340.444.1

0 20 40 60 80 100(%)

低所得層 下位中間層 上位中間層 富裕層

5.36.52.83.25.46.34.25.24.85.7

17.612.1

11.111.317.311.015.112.716.211.9

38.236.240.345.235.7

34.641.641.838.638.3

38.945.245.840.341.748.039.240.340.444.1

今後現在今後現在今後現在今後現在今後現在

中小企業

大企業

非製造業

製造業

全体

第Ⅱ-2-1-8 図直接投資先国・地域においてターゲットとしている所得層

資料: 帝国データバンク「通商政策の検討のための我が国企業の海外事業戦略に関するアンケート」から作成。

通商白書 2013 89

第1節新興国展開の重要性

Page 5: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

 次に、乗用車、カラーテレビ、エアコンについて、普及率の上昇率を見る。第Ⅱ-2-1-12 図から第Ⅱ-2-1-14 図は、2012 年から 2017 年にかけての各耐久消費財普及率の年平均上昇率の予測を世界地図上に表したものである。地図上、普及率の年平均上昇率が高い国ほど濃い青で塗られている。 乗用車については、インド、パキスタン等の南西アジア、エジプト、ナイジェリア等のアフリカ、カザフスタン、中国で大きく上昇する見通しとなっている(第

Ⅱ-2-1-12 図)。 カラーテレビについては、南アフリカ、ナイジェリア、ケニア等のアフリカ、インド等の南西アジア、ペルー等の中南米で大きく上昇する見通しとなっている(第Ⅱ-2-1-13 図)。 エアコンについては、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ等のロシア , CIS、インド等の南西アジア、コロンビア、ボリビア等の中南米で大きく上昇する見通しとなっている(第Ⅱ-2-1-14 図)。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100(%)

1961 1964 1967 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012

乗用車カラーテレビエアコン冷蔵庫電子レンジ

中国乗用車6.1%

中国電子レンジ 33.7%

中国冷蔵庫 77.0%

中国エアコン53.0%

中国カラーテレビ 96.8%

インドネシア乗用車7.4%

インドネシア電子レンジ 3.0%

インドネシア冷蔵庫 30.6%

インドネシアエアコン 7.6%

インドネシアカラーテレビ71.5%

インド乗用車4.4% インド

電子レンジ 8.4%

インド冷蔵庫20.7%

インドエアコン9.6%

インドカラーテレビ 67.3%

ブラジル乗用車 36.8% ブラジル

電子レンジ 38.5%

ブラジル冷蔵庫 95.9%

ブラジルエアコン 13.3%

ブラジルカラーテレビ95.7%

南アフリカ乗用車 28.3%

南アフリカ電子レンジ 44.2%

南アフリカ冷蔵庫 68.2%

南アフリカエアコン 17.4%

南アフリカカラーテレビ 76.2%

ロシア乗用車49.8%

ロシア電子レンジ 50.7%

ロシア冷蔵庫 98.0%

ロシアエアコン 8.5%

ロシアカラーテレビ 98.0%

トルコ乗用車 30.5%

トルコ電子レンジ 10.7%

トルコ冷蔵庫 98.6%

トルコエアコン 12.8%

トルコカラーテレビ 95.3%

第Ⅱ-2-1-11 図 我が国の一般家庭における耐久消費財普及率の推移と 2012 年時点の各国の耐久消費財普及率

資料:内閣府「消費動向調査」、Euromonitor International 2013 から作成。

2.6-2.9%1.4-2.4%0.7-1.3%0.0-0.6%調査対象外の国・地域

第Ⅱ-2-1-12 図 乗用車の普及率の年平均上昇率(2012 年-2017 年)

備考: 例えば普及率が 50%から 55%に上昇した場合、上昇率は 10%と計算している。資料:Euromonitor International 2013 から作成。

90 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 6: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

 このように、地域別の耐久消費財普及率の上昇率は、製品によって斑模様である。

(4)新興国のインフラ需要① インフラ需要一般 続いて、新興国のインフラ需要を見ていく。JBICのアンケート調査によると、事業展開国・地域における課題として、インド、インドネシア、ベトナムでは、「インフラが未整備」を挙げる企業の割合が過去 5年間一貫して高く(第Ⅱ-2-1-15 図)、近年、民主化に伴い我が国企業の間でも展開意欲が高まっているミャンマーについては、「インフラが未整備」を課題として挙げる企業の割合は 72.1%にも上る。 このように、新興国のインフラ不足は我が国企業にとって展開する際の課題となっているが、見方を変えれば、新興国にはインフラシステム輸出の機会が広

がっているといえる。我が国企業のビジネスモデルはインフラの完備を前提としているものも多いといわれており(例えば、コンビニエンス・ストアの展開には高度な通信システムと道路網が必要とされている。)、新興国のインフラが整備されることで、我が国企業の海外展開の円滑化が期待される。 第Ⅱ-2-1-16 図のレーダーチャートは、上から時計回りに、水へのアクセス(地方)、水へのアクセス(都市)、道路舗装率、人口 100 人当たりのインターネットユーザー、人口 100 人当たりの携帯電話加入者、人口 100 人当たりの固定電話加入者、電化率、配送電ロス率について、新興国のインフラ整備状況を示したものである。 全般的に、新興国では携帯電話加入者の割合は高いものの、インターネットユーザーや固定電話加入者といった通信関連のインフラが未整備であることがわか

1.5-2.0%0.8-1.4%0.5-0.7%0.0-0.4%調査対象外の国・地域

第Ⅱ-2-1-13 図 カラーテレビの普及率の年平均上昇率(2012 年-2017 年)

備考:例えば普及率が 50%から 55%に上昇した場合、上昇率は 10%と計算している。資料:Euromonitor International 2013 から作成。

備考:例えば普及率が 50%から 55%に上昇した場合、上昇率は 10%と計算している。資料:Euromonitor International 2013 から作成。

3.6-7.1%2.6-3.5%1.6-2.5%0.0-1.5%調査対象外の国・地域

第Ⅱ-2-1-14 図 エアコンの普及率の年平均上昇率(2012 年-2017 年)

通商白書 2013 91

第1節新興国展開の重要性

Page 7: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

る。道路舗装率については、ブラジル、南アフリカ、ミャンマー等で特に低い。電気関連については、概ねどの新興国でも配送電ロス率は高く(高いほどロスが少ない。)、電化率は、ラオス、カンボジア、ミャンマー

等で著しく低い。水道については、地方の水へのアクセスがカンボジア、インドネシア、ラオス等で十分に整備されていない状況である。

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

02008(257)

2009(260)

2010(294)

2011(255)

2012(255)

47.8

33.7

(年度)(社)

インフラが未整備他社との厳しい競争法制の運用が不透明労務問題微税システムが複雑労働コストの上昇

他社との厳しい競争インフラが未整備労働コストの上昇管理職クラスの人材確保が困難法制の運用が不透明

インフラが未整備法制の運用が不透明管理職クラスの人材確保が困難労働コストの上昇他社との厳しい競争

(%)90

80

70

60

50

40

30

20

10

02008(41)

2009(48)

2010(98)

2011(119)

2012(171)

(年度)(社)

(%)

38.0

33.3

80

70

60

50

40

30

20

10

02008(144)

2009(136)

2010(156)

2011(121)

2012(129)

(年度)(社)

(%)

45.0

27.9

インド インドネシア ベトナム

第Ⅱ-2-1-15 図 中期的(今後 3年程度)有望事業展開国・地域における課題として「インフラが未整備」を挙げた企業の割合

資料: JBIC「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告- 2012 年度海外直接投資アンケート結果(第 24 回)-」から作成。

92 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 8: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

第Ⅱ-2-1-16 図 各国のインフラ整備状況

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

国名

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2007 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

ロシア

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2009 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

インドネシア

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2009 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

ラオス

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2008 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

インド

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2009 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

トルコ

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2007 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

ベトナム

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2005 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

ミャンマー

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2000 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

ブラジル

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2001 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

南アフリカ

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2009 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

カンボジア

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

020406080100

水へのアクセス(地方)

水へのアクセス(都市)

道路舗装率(2000 年)

インターネットユーザー

(100 人当たり)

電化率

配送電ロス率

タイ

携帯電話加入者(100 人当たり)

固定電話(100 人当たり)

図の見方

水道

道路

通信

電気

備考:配電ロス率は数値が大きいほどロス率が少ない(100 -配電ロス率で表示)。    水へのアクセス(地方)、水へのアクセス(都市)は 2010 年のデータ。インターネットユーザー(100 人当たり)、携帯電話加入者(100 人当たり)、

固定電話加入者(100 人当たり)は、2011 年のデータ。電化率、配送電ロス率は、2009 年のデータ。道路舗装率のデータの時点は、グラフ内に示している。

資料:丸紅経済研究所(2012)「BRICs 経済の概況と世界経済に与える影響」を参考に、世銀「World Development Indicator」から作成。

通商白書 2013 93

第1節新興国展開の重要性

Page 9: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

② 都市関連インフラ需要 インフラ需要を左右する要因として、都市化の進展が挙げられる。都市化の進展に伴い、水道、ビル建設等、都市関連インフラの需要増加が期待されるためである。国連の世界都市化予測によれば、2010 年から2025 年にかけて、人口 100 万人以上の都市数は全世界で 449 都市から 668 都市に増加すると予測されている。増加する都市のうちの 89%は新興国で、特に中国における増加が顕著である。2025 年には中国一国だけで 163 都市と、先進国合計の 127 都市を上回ることが見込まれている。アフリカについても、同期間にかけて 43 都市が新たに人口 100 万人を超える都市の仲間入りを果たす見込みであり、新興国の中では中国に次ぐ都市数を有する地域となる(第Ⅱ-2-1-17 表)。 このような新興都市に向けて、積極的に我が国の優れたインフラシステムを輸出していくことで、新興国と我が国がwin-win の関係を築いていくことが期待される。

 都市化の進展に伴い増加が見込まれる都市関連インフラ需要の例として、都市床面積と都市水道需要を見てみる。2010 年から 2025 年にかけて、建て替え需要、商用、住居用を合わせた都市床面積は、全世界で 8万2,000km2 増加する見込みだが、そのうちの 76%は新興国で発生する見通しである(第Ⅱ-2-1-18 図)。 汚水処理、生活用水を合わせた都市水道需要については、同期間にかけて 1,040 億 m3 増加する見込みだが、そのうち 82%は新興国で発生することが見込まれている(第Ⅱ-2-1-19 図)。

(5)生産拠点としての新興国 ここまで、主に消費市場としての新興国の魅力について概観してきた。以下では、生産拠点の立地先としての新興国の魅力について、賃金、工業団地の借料といった生産コスト面と企業アンケートから概観する。

① 生産コスト ワーカー(一般工職)の月額基本給を見ると、2001年度から 2011 年度にかけて、北京では 152 ドルから538 ドルと 3.5 倍上昇、上海では 235 ドルから 439 ドルと 1.8 倍上昇するなど、中国の沿岸部における賃金は高騰している。 ASEANでは、クアラルンプール(マレーシア)、マニラ(フィリピン)、バンコク(タイ)等、中国の

2010 2025 新規増分先進国 110 133 23

中国 94 163 69

ASEAN 21 37 16

南西アジア 55 81 26

中東 33 50 17

ロシア・CIS 23 26 3

中南米 63 85 22

アフリカ 50 93 43

第Ⅱ-2-1-17 表新興国の人口 100 万人以上の都市数の変化

資料:UN「World Urbanization Prospects 2011」から作成。

第Ⅱ-2-1-18 図都市床面積の増分(2010 年-2025 年)

資料: McKinsey Global Institute「Urban world: Cities and the rise of the con-suming class」から作成。

17

410

39

29

14

445

0

20

40

60

80

30

50

70

90(1,000km2)

17

7

410

31

39

29

82

77

10

3

14

3

44513

10

中国 インド ラテンアメリカ

中東・アフリカ

その他新興国

北米 合計その他先進国

西欧

建て替え需要商用住居用

9%38% 9%9% 12% 4%4%15%

新興国・地域 先進国・地域

全体の増分に占める割合

11

20

121

3

79

93

3

158

26107

0

40

60

80

100

120

20

12114

323

79

104

11

9312

313

15823

1

26

2

10716

13%22% 11%13% 22% 1%2%16%

20

中国 インド ラテンアメリカ

中東・アフリカ

その他新興国

北米 合計その他先進国

新興国・地域 先進国・地域

西欧

汚水処理生活用水

(10 億m3)

全体の増分に占める割合

資料: McKinsey Global Institute「Urban world: Cities and the rise of the con-suming class」から作成。

第Ⅱ-2-1-19 図都市の水道需要の増分(2010 年-2025 年)

94 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 10: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

各地域(沿岸部を除く)よりも賃金が高いグループと、ハノイ(ベトナム)、プノンペン(カンボジア)、ヤンゴン(ミャンマー)等、他地域に比して賃金の低いグループに分かれる。 インドでは、ムンバイ、バンガロール等、相対的に賃金が高い地域がある一方、アーメダバードは 2011年時点で月額 73 ドルと他地域に比して安く、国内の賃金格差が大きい(第Ⅱ-2-1-20 図)。 次に、工業団地の借料を 2011 年時点で比較して見

てみると、バンコク(タイ)は 7.0 ドルドル /m2、中国のほとんどの地域は 3ドル /m2 を超えるなど、名古屋(2.3 ドル /m2)、台北(2.0 ドル /m2)等の先進地域と比べても借料が高い地域も多い。一方、ベトナム等のASEAN5 以外の東南アジア諸国では、概ね 0.2ドル /m2 を下回っている。これら新興地域への進出を、先行投資の可能性も含めて検討していくことが今後求められると考えられる(第Ⅱ-2-1-21 図)。

95

152

235

118

198

344

119 12193

157141

166

67

114 10568

120

5026

0

200

300

400

500

600(ドル)

100

北京(中国)

152

538

上海(中国)

235

439

ムンバイ(インド)

118

403

広州(中国)

352

クアラルンプール(マレーシア)

198

344

武漢(中国)

333

マニラ(フィリピン)

119

325

バンガロール(インド)

320

深圳(中国)

121

317

大連(中国)

93

316

瀋陽(中国)

157

299

バンコク(タイ)

141

286

ニューデリー(インド)

166

264

チェンナイ(インド)

260

青島(中国)

251

ジャカルタ(インドネシア)

67

209

ダナン(ベトナム)

200

セブ(フィリピン)

114

195

カラチ(パキスタン)

105

193

コロンボ(スリランカ)

68

141

ホーチミン(ベトナム)

120130

ビエンチャン(ラオス)

118

ハノイ(ベトナム)

95111

プノンペン(カンボジア)

82

ダッカ(バングラデシュ)

5078

アーメダバード(インド)

73

ヤンゴン(ミャンマー)

2668

(参考:2011 年)千葉  3,718 ドルソウル 1,696 ドル台北  1,008 ドル

20012011

第Ⅱ-2-1-20 図 ワーカー(一般工職)月額基本給

備考:金額に幅がある場合、平均値を算出。資料: JETRO「アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較」から作成。

通商白書 2013 95

第1節新興国展開の重要性

Page 11: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

② 生産拠点として有望視する理由 我が国製造業が中期的に有望な事業展開先であると考える国・地域について、生産面からその有望理由を調査した JBIC のアンケートによれば、中国では 2003年度調査から 2012 年度調査にかけて「安価な労働力」、「安価な部材・原材料」を有望理由に挙げた企業の割合が急落している。一方、「産業集積がある」の割合は上昇しており、「組み立てメーカーへの供給拠点として」の割合は横ばいである。中国におけるサプライチェーンの存在が有望理由になっていると考えられる。 また、タイでも「産業集積がある」、「第三国輸出拠点として」、「組み立てメーカーへの供給拠点として」

を有望理由に挙げる企業の割合が他地域に比べて顕著に高く、我が国製造業のサプライチェーンの存在が魅力になっていると考えられる。その他のASEAN地域については、「安価な労働力」の割合が高い。 インドでは、中国と同様に「安価な労働力」の割合が急落している。ロシアについては、全般的にどの有望理由の割合も他地域に比して低い。 中南米では、ブラジルが前回調査に比べて全般的に評価を低下させている一方、メキシコでは、「組み立てメーカーへの供給拠点として」の割合が他地域に比べて特に高く、更に「第三国輸出拠点として」も有望視されているなど注目されている(第Ⅱ-2-1-22 図)。

0

4

5

6

7

8(ドル/m2)

3

2

1

バンコク(タイ)

北京(中国)

バンガロール(インド)

深圳(中国)

ニューデリー(インド)

広州(中国)

マニラ(フィリピン)

セブ(フィリピン)

瀋陽(中国)

バタム島(インドネシア)

上海(中国)

大連(中国)

武漢(中国)

名古屋

台北(台湾)

シンガポール

青島(中国)

アーメダバード(インド)

千葉

ビエンチャン(ラオス)

ヤンゴン(ミャンマー)

ホーチミン(ベトナム)

ソウル(韓国)

ハノイ(ベトナム)

ダナン(ベトナム)

ダッカ(バングラデシュ)

コロンボ(スリランカ)

プノンペン(カンボジア)

カラチ(パキスタン)

7.0

5.9

4.8 4.84.5 4.4

4.0 4.0 4.0 3.93.6

3.1

2.5 2.32.0 1.9 1.9 1.8

1.2

0.4 0.3 0.3 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 0.1 0.0

第Ⅱ-2-1-21 図 工業団地借料(平方メートル当たり、2011 年)

備考:金額に幅がある場合、平均値を算出。資料: JETRO「アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較」から作成。

96 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 12: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

(ベトナム)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

35

74

13 14

2

3225

2119

59

813

6

169

14

30

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=85)2012(n=160)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

18

57

11

34

21

1320

30

21

36

10

3127

9 12

25

3

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=141)2012(n=160)

0

(タイ)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

5

68

13

27

11 815

27

7

40

5

28

8 7 412

2

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=62)2012(n=208)

(インドネシア)

資料:JBIC「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告- 2012 年度海外直接投資アンケート結果(第 24 回)-」から作成。

(ミャンマー)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

15

73

13

4 0

15 13 13

4

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2012(n=48)

第Ⅱ-2-1-22 図 中期的有望事業展開先国・地域の有望理由①

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

24

75

3429

14

4

22 22

12

27

16

2822

1

11 1470

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=447)2012(n=312)

(中国)

通商白書 2013 97

第1節新興国展開の重要性

Page 13: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第Ⅱ-2-1-22 図 中期的有望事業展開先国・地域の有望理由②

(インド)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

30

59

14

25

3 410

1716

38

7

25

83 3

84

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=69)2012(n=279)

0

(ロシア)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

48

4 4 4 40 0

3 5 2

21

3 0 0 0 20

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=25)2012(n=63)

(メキシコ)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

1

29

1

51

147

0

24

0

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2012(n=70)

(ブラジル)

0

10

20

30

40

50

60

70

80(%)

優秀な人材

3

36

8

22

8 6 6

17

1

14

2

23

4 2 07

30

安価な労働力

安価な部材・原材料

組み立てメーカーへの

供給拠点として

産業集積がある

他国のリスク分散の受

け皿として

対日輸出拠点として

第三国輸出拠点として

原材料の調達に有利

2003(n=36)2012(n=132)

資料:JBIC「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告- 2012 年度海外直接投資アンケート結果(第 24 回)-」から作成。

98 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 14: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

 これまで見てきた通り、新興国は高い潜在成長力を有しており、我が国企業にとっての重要性はますます高まっているといえる。一方で、2012 年 9 月に発生した中国における我が国に対する抗議活動や、2013年 1 月に発生したアルジェリアにおける邦人含む外国人拘束事案を受けて、我が国企業の間で新興国展開に係るリスクが改めて認識されるようになったのも事実である。以下では、新興国展開に係るリスクについて検討する。

(1)地域別に異なる事業リスク はじめに、我が国企業が海外事業活動においてどのようなリスクを問題視しているのか確認する。企業アンケートによれば、米国、EUにおいては、「為替」をリスクとして問題視している企業の割合がそれぞれ82%、81%と大半を占めており、その他のリスクにつ

いては割合が低い。中国については「対日感情の悪化」が 92%と特に問題視されており、その他のリスクについても他地域に比べて問題視する企業の割合が高い。ロシアも同様に、どのリスクについても他地域より問題視する企業の割合が高いといえる。ASEAN、インドについては、「法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用」がそれぞれ 46%、47%、「労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)」がそれぞれ 52%、50%と問題視されている。中南米、中東、アフリカについては、「テロ・紛争・内乱」をリスクとする企業の割合が圧倒的多数を占めている(第Ⅱ-2-1-23 図)。 このように、我が国企業が海外事業活動で問題視しているリスクは地域によって異なり、我が国政府としては、それぞれの地域の事情に即した支援を実施することが求められる。

2.新興国展開に係るリスク

通商白書 2013 99

第1節新興国展開の重要性

Page 15: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第Ⅱ-2-1-23 図 海外事業活動で問題視しているリスク

0 100(%)

4.8

82.4

13.5

9.3

12.4

6.3

3.7

2.4

16.5

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

0 100(%)

2.2

38.6

21.9

21.3

52.2

28.2

46.2

19.7

33.1

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

0 100(%)

5.5

16.6

16.9

11.4

14.1

22.8

33.3

11.2

85.1

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80 0 100(%)

6.9

28.8

21.9

17.5

22.8

27.2

43.4

6.9

62.5

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80 0 100(%)

6.5

16.6

15.8

12.1

18.3

29.6

45.6

6.8

82.0

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

0 100(%)

5.9

27.8

19.3

19.5

49.5

28.1

46.5

5.9

32.1

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80 0 100(%)

7.0

27.0

26.7

21.7

19.0

26.0

40.7

22.3

23.3

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

0 100(%)

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

5.0

80.5

14.5

10.0

11.1

3.4

3.2

1.3

10.8

0 100(%)

その他

為替変動

関税・通関リスク

税務上のリスク

労務環境の変化(人件費高騰、労働争議の頻発)

知的財産権保護制度の未整備・恣意的な運用

対日感情の悪化

テロ・紛争・内乱

20 40 60 80

3.0

35.3

46.9

41.0

65.0

58.9

60.9

91.6

35.4

(n=460)

(n=638)

(n=403) (n=320) (n=355)

(n=374) (n=300)

(n=379) (n=834)

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

法制度の未整備(知的財産権保護制度以外)・恣意的な運用

(ロシア)

(米国) (中国)

(アフリカ)

(EU)

(中東) (中南米)

(ASEAN) (インド)

資料:帝国データバンク「通商政策の検討のための我が国企業の海外事業戦略に関するアンケート」から作成。

100 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 16: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

(2)中国国内で行われた我が国に対する抗議活動 新興国展開に係るリスクが表面化した事例として、2012 年 9 月に中国国内で行われた我が国に対する抗議活動を概観する。抗議活動は中国全土で約 1週間続き、日系企業の店舗や工場が破壊される等、深刻な被害が各地で相次いだ。現在算定中の企業もあること、企業によって算定方法が異なること等により、正確な数字を算出することは困難であるが、現時点で、総額数 10 億円から 100 億円程度の損害が確認されている(第Ⅱ-2-1-24 表)。 店舗・工場等の物的被害に加えて、中国の消費マインドが急激に冷え込み、日本製品の不買・買い控えが広がった。特に、車を壊されることを恐れた中国の消費者の間で日本車を敬遠する動きが広まったため、日系企業の乗用車販売が大きく落ち込んだ。2012 年 9月の日系企業合計出荷台数を見ると、前年比 40.8%減、同年 10 月は同 59.4%減になるなど、大きく減少した(第Ⅱ-2-1-25 図)。 今回の抗議活動発生後に集計された JBIC のアンケート調査によれば、63.3%の企業が中国事業に対し「見直しが必要」、「慎重な対応が必要」 と回答している。2010 年度調査 87では、同質問に対して 「特に変わらない」 が回答の過半(54.3%)であったことに鑑みれば、今回の抗議活動により我が国企業の意識が変化し、中国事業に対してより慎重な姿勢を示すようになった可能性がある。 また、JBIC の同アンケートでは、「中国事業について見直しが必要」、「慎重な対応が必要」と回答した企業に対して、今後の中国事業・市場に対する自社の考

えを調査しており、74%の企業が中国事業への取組は今後も続ける一方で、他国・地域へのリスク分散が重要という方針をとっていることがわかった(第Ⅱ-2-1-26 図)。

1.山東省(青島市)【平成 24 年 9月 15 日、16 日】・日系スーパーや工場等への不法侵入、放火、破壊、略奪

2.江蘇省(蘇州市)【平成 24 年 9月 15 日】・ 日系スーパーや工場、日本料理店への不法侵入、生産ライン等の破壊

3.湖南省【平成 24 年 9月 15 日】・日系スーパーへの不法侵入、破壊、略奪

資料:各社報道から経済産業省作成。

第Ⅱ-2-1-24 表中国国内で行われた我が国に対する抗議活動による被害事例

0

100

200

300

400

500

600

700(千台)

日系 欧州系中資系 米系 韓国系

2009/1 2010/1 2011/1 2012/1

第Ⅱ-2-1-25 図 国籍別の中国乗用車工場出荷状況

資料: みずほコーポレート銀行産業調査部「反日デモ以降の中国自動車市場~現地ヒアリングを踏まえて~」から作成。

原出所:Fourin「中国自動車調査月報」等。

87 JBIC では、2010 年度調査でも、尖閣諸島周辺において発生した我が国の巡視船と中国漁船の衝突事件を受けて緊急追加アンケートを実施している。

通商白書 2013 101

第1節新興国展開の重要性

Page 17: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

(3)在アルジェリア邦人に対するテロ事件 新興国展開に係るリスクが表面化した他の事例として、2013 年 1 月に発生した在アルジェリア邦人に対するテロ事件を取り上げる。前述の第Ⅱ-2-1-23 図で示した企業アンケート(事案発生後に実施)で見られるように、82%の我が国企業が「テロ・紛争・内乱」

54.3%

23.2%

13.5%7.6%

55.7%

6.3%

74.4%

11.6%

7.7%

3.4%10.6%

31.7%

54.3%

23.2%

13.5%

方向性は決まっていないが、状況を見極めつつ慎重な対応が必要と感じるようになった。

何らかの見直しが必要と感じるようになった。

7.6%

55.7%現時点では分からない。特に変わらない。

方向性は決まっていないが、状況を見極めつつ慎重な対応が必要と感じるようになった。

何らかの見直しが必要と感じるようになった。 

現時点では分からない。特に変わらない。

中国事業への取組みは、今後も続けるが、一方で他国・地域へのリスク分散が重要と認識している。中国は、ビジネス相手先や市場として重要であり、従来どおり積極的に事業に取り組む。

中国事業には大きなリスクがあると認識し、中国事業・市場への依存度を下げるなど見直しを行うとともに、他国・地域での取組みを強化する。

現時点では分からない。

6.3%

74.4%

11.6%

7.7%

3.4%10.6%

31.7%

今後の中国事業・市場に対する見通しについて、貴社の考えに最も近いものをお選び下さい。(回答社数:207 社)

今後の中国事業への取組みについて意識の変化が生じましたか。(回答社数:327 社)

2010 年度追加調査

(回答社数:416 社)

資料: JBIC「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告- 2012 年度海外直接投資アンケート結果(第 24 回)-」から作成。

をアフリカにおける事業活動のリスクとして問題視しており、展開の大きな阻害要因になっていると考えられる。 テロ事件の概説に入る前に、アフリカにおける過去の国際テロの発生状況を確認しておく。2004 年から2008 年にかけて発生した国際テロ件数を地域別に見ると、約半分は中東で発生しており、アフリカの発生件数は南西アジア、ASEANに次いで 4番目である。ただし、アフリカでは同期間にかけて 91 件から 775件と発生件数が 8.5 倍に増加している(全地域合計では同期間にかけて 3.1 倍に増加)(第Ⅱ-2-1-27 図)。また、同期間にかけて発生した国際テロによる死者数についても、約半分は中東で発生しており、アフリカにおける国際テロの死者数は南西アジアに次いで 3番目だが、アフリカでは同期間にかけて 1,170 人から3,123 人と死者数が 2.7 倍に増加している(全地域合計では同期間にかけて 2.1 倍に増加)(第Ⅱ-2-1-28 図)。

第Ⅱ-2-1-26 図中国事業・市場に対する見通しと中国事業への取組みについての意識変化

208

390 6 8940

3,5241,246

4,257

99

854334

641263988

91

270

3

507

228806

502

8,467

2,884

1,025 31,427

2,474

8,216

274 476905

685 11

475 349775

5,692

3,128

335963

2004 2005 2006 2007 20080

2,000

6,000

8,000

16,000

4,000

(件)

390

10,876

6 8940

3,5241,246

4,257

99

854334

641263988

208 913,243

10,000

12,000

14,000

270

3

507

228806

502

14,422

8,467

2,884

1,025 31,427

2,474

8,216

274 476905

685

14,460

11

475 349775

5,692

3,128

335963

11,728

アフリカ南西アジア ASEAN 中国 先進国

中南米 ロシア・CIS 中東

第Ⅱ-2-1-27 図 国際テロの発生件数

資料:World Bank HP から作成。

資料:World Bank HP から作成。

218 104 64 1372,325 2,511 2,768

3,366

1,299

9,108

14,83315,863

7,395

3,834

1,170

1,102

1,5462,307

4416 2 19 1 30402 750 830 1,119 731

856

243

138153

231

146

847

558401

3693,123

2004 2005 2006 2007 20080

5,000

15,000

20,000

25,000

10,000

(人)

218 104 64 1372,325 2,511 2,768

3,366

1,299

9,108

14,83315,863

7,395

3,834

1,170

1,102

1,5462,307

4416 2 19 1 30402 750 830 1,119 731

856

243

138153

231

146

847

558401

369

7,473

14,481

20,49922,749

15,757

3,123

アフリカ南西アジア ASEAN 中国 先進国

中南米 ロシア・CIS 中東

第Ⅱ-2-1-28 図 国際テロによる死者数

102 2013 White Paper on International Economy and Trade

第2章 伸びゆく市場の獲得(新興国市場開拓)

Page 18: CW6 A5370D221 Mロシア・CIS 中東 南西アジア ASEAN 中国 先進国 第Ⅱ-2-1-2図 地域別の名目GDP増加額(2012年から2018年にかけ ての増分) 資料:IMF「World

第2章

第Ⅱ部

 このように、アフリカにおける国際テロの件数は他地域に比べて突出して多いわけではないが、近年、増加傾向にあると言える。 今回の在アルジェリア邦人に対するテロ事件は、2013 年 1 月 16 日に、イスラム系武装集団がアルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントにおいて引き起こした人質拘束事件で、日本人 10 人を含む8か国 37 人の人質が死亡するという痛ましい結果となった。 事件を受けて日本政府は、「在アルジェリア邦人に対するテロ事件の対応に関する検証委員会」を開催し、今回の政府の対応について検証を行うとともに、テロ

や騒じょう事件などの緊急事態に関し、在留邦人及び在外日本企業の保護の在り方等に関する政府の基本方針をまとめた。 検証委員会の報告書の中では、政府の基本方針として、①各省の縦割りを排し、官邸の司令塔機能の十分な発揮、②官民の間で、より効率的・効果的な情報交換・協力体制の構築、③被害者等への支援の充実、④この種の事件の対応にかかる政府全体としてのマニュアル策定が挙げられている。 今後、海外において邦人・企業が安心して活動できるよう、政府一丸となって今回の教訓を活かしていく必要がある。

通商白書 2013 103

第1節新興国展開の重要性