data scientist casual talk in 白金台
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NetworkEffectsInEconomicsBehavioral
Hiroko OnariProblem Creator in CodeIQ
Network
Effects
And
Behavioral
Economics
Marketing
NameHiroko Onari
Twitter@millionsmile
WorkCodeIQで問題作ったり、作ってもらったりが主な仕事。ITエンジニアの実務スキル評価サービス「CodeIQ」。https://codeiq.jp/
Books『データサイエンティスト養成読本』,特集2/第3章「ソーシャルメディアネットワーク分析」『プログラマのための論理パズル』Denis Shasha著 翻訳『ソフトウェアの世界でキャリアを築く』Sam Lightstone著 翻訳『なぜ3人いると噂が広まるのか』増田直紀著 レビュー
Paper“Suicide Ideation of Individuals in Online Social Networks”, PLOS ONE, 8, e62262 (2013)
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013 2
About me
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@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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本に書いたことは読んでもらい、本に書かなかったボツ案の話を少々。
知っていて損はない。ネットワーク効果のお話。エンジニアリングな話はしません。マーケティングに役立つ行動経済学なお話です。
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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ネットワーク効果について~Network Effects~
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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ネットワーク効果とは、あるサービスを使うユーザが増えるほど、ユーザの効用が増えること
※「効用」とは、経済学用語で、そのサービスを消費することで得られる満足度のこと。
※「ネットワーク外部性」とほぼ同義。外部性(externality)は、言葉の持つ意味からして外部不経済という負のイメージがあるため、「ネットワーク効果」という言葉を使おうという学者さんもいる。
ネットワーク効果とは
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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ネットワーク効果は、 効用の変化率 / 加入の変化率で求まる。
u : 自分が得る効用 s : 利用者数 d : 変化分
利用者(s)が増えると、それ以上に効用(u)が高まるので、効用の加入規模弾力性は1より大きくなる
※「弾力性」とはある変化がもう一つの変化をもたらすその比率のこと。 1を超えると弾力性があり、1を下回ると非弾力的とみる。 例)需要の所得弾力性: 所得が1%増加→贅沢品の需要も増加、日用品の需要は変化しにくい
ネットワーク効果を定式化
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
ネットワーク効果のない経済の価格均衡点は需要と供給が一致する1点のみ。
ネットワーク効果のある経済の価格均衡点は3点ある。f(0)では他の利用者がいないため効用を得ることができないため誰も買わないf(z’)を超えるとネットワーク効果により、均衡価格が上昇。f(z’’)はネットワークが飽和状態になったことにより、均衡価格が低下。
横軸がネットワーク効果、縦軸が買ってもいいという価格。 “Networks, Crowds, and Markets”より
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ネットワーク効果と価格均衡点
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
市場のロックインあるサービスを購入すると他のサービスへの乗り換えが困難となることをロックインという。そのため、消費者との継続的関係が維持されやすくなというサービス供給側にはメリットも生まれる。
一方、ロックインされなかったサービスは、ロックインされたサービスより低価格にしたとしても、消費者はそのサービスを「負け犬」とみなし、購入してくれなくなる。
例)セガサターン、任天堂64、PS1
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ネットワーク効果による市場のロックイン
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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携帯電話の利用者が増えるときのネットワーク効果をみてみる。
【ネットワークの規模】利用者(n) : 利用者が10倍、100倍へと増えたとする。
10 → 100 → 1,000【利便性の規模】通話可能な組合せ(nC2) : 利便性を通話可能な2組の組合せと考える。
45 → 4,950 → 499,500
ネットワークが10倍、100倍増えるとき、利便性は110倍、111,000倍増える!!→ネットワーク価値は、その利用者数の二乗と言われている。
ネットワーク効果とスケールメリット
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
規模の経済生産規模がアップすればするほど、生産量がそれ以上に増大する。規模の経済は、 効用の変化率 / 加入の変化率で求まる。
y : 生産量 x : 生産力(生産規模) d : 変化分
生産規模(x)が上がると、それ以上に生産量(y)が高まるので、生産量の生産規模弾力性は1より大きくなる
規模の経済は生産側の話であり、ネットワーク効果は消費者側の話であるのも大きな違いの一つ
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ネットワーク効果 ≠ 規模の経済
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
ネットワーク効果は消費者間の相互作用によって生じるものなので、その相互ネットワークがどのような構造になっているかには興味がある。
ここに三次のつながりを考慮した4つのネットワークがある。クラスター係数が高い順は図1→図3→図2→図4となる。この4つの中で普及率の高いのは、図2と図4であり、市場のロックインがされやすい。情報伝達や拡散するには、weak tieがあることがポイントとなる。また図4くらいになると、ハブ(インフルエンサーを獲得すれば効果が発揮できるが、逆に獲得できなければ全く普及しない。
ネットワーク外部性の働く製品市場のモデル化とプレゼント戦略の評価,日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌より
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ネットワーク効果と消費者間相互ネットワーク
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
経済学者ブライアン・アーサー考案「エルファロルバー問題」:火曜日の夜にのみ、生演奏をするエルファロルバーがある。みな生演奏が聞きたいので火曜日の夜にバーに行きたいと思う。しかし、バーはとても小さいく、定員が60%以下だと混雑なく楽しめるのだが、60%を超えると混雑して不愉快になる。さて、最終的に全体はバーに行く選択をするのか、しないのか?◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇60%は例であって、これは最適な閾値であると考えてもらいたい。
各人が独立して意思決定を行っている前提で、実験を行うと、「前回参加して楽しかったが今回は他人に譲ろう」という行動を起こすため、最終的に60%くらいに落ち着く。→譲り合いが全体最適を生む。みんなの意見は案外正しい。
しかし、他人がどう判断するかを知ると、集合知は低下し、間違った判断をする→評価は独立してやるべきというのはこういう研究が元になっている
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ネットワーク効果と集合知~El Farol Bar Problem
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
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結論:ネットワーク効果を知った上でマーケット戦略を考えてみると、
あなたも勝者になるかもしれません。
@millionsmile “Network Effects in Behavioral Economics” , 6th of September, 2013
Thank you for listening.参考文献:David Easley and Jon Kleinberg, "Networks, Crowds, and Markets"
「なぜ多様なスタートアップ企業群が大企業に勝るのか(前編):篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(33)」 http://www.sbbit.jp/article/cont1/23693?page=1
川村秀憲・大内東,「ネットワーク外部性の働く製品市場のモデル化とプレゼント戦略の評価」,日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌
「意見共有で「集団の知恵」が低下:研究結果」WIRED 2011.5.18 http://wired.jp/2011/05/18/%E6%84%8F%E8%A6%8B%E5%85%B1%E6%9C%89%E3%81%A7%E3%80%8C%E9%9B%86%E5%9B%A3%E3%81%AE%E7%9F%A5%E6%81%B5%E3%80%8D%E3%81%8C%E4%BD%8E%E4%B8%8B%EF%BC%9A%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%B5%90%E6%9E%9C/
高橋琢磨『戦略の経営学』