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-1- 自動車衝突時の変形エネルギ算出ソフトの開発 (Deformation Energy Software Development for Automotive Collision Impact) ・種田 克典 (Taneda Katsunori) 自動車交通事故解析科学研究所 (Automobile traffic accident analysis science laboratory) [Abstract] It is a very basic and important process to calculate the driving speed when automotive traffic accidents occur by analyzing impact energy of deformed vehicle. The Study of impact energy calculation methods has 30 years of history and they have been widely used for accident appraisal. However, not all appraisers thoroughly understand the calculation methods and we sometimes find incidents where the wrong method was used. One of the reasons which jeopardizes mutual understanding of both parties involved in traffic court is that actual impact energy is manually calculated based on the accident report drawings. As a result it may cause calculation errors and/or the parties involved will experience some difficulties in tracing the calculation methods. Following are the study results: (1)Organized study results of theory and calculation methods for impact energy of deformed vehicle. (2)Based on the (1) results, you can input deformed locations and volume in a PC and the PC will automatically calculate the impact energy. As a result, anyone can easily and accurately calculate the impact energy and all parties involved can trace the calculation results. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)本論文は、平成 23 11 18 日に行われた第 17 回日本法科学技術 学会において講演した同名タイトル論文に加筆したものである. (2)講演会において発表しました当研究所開発のエクセルを用いたパソコンソフト TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」につきましては、 本のホームページの「ご相談・受付」ページより氏名・所属等をご記入の 上メールにてご請求ください.使用許諾書に署名をいただいた後配布い たします(無料)使用に際し、マニアルはありませんので本論文を参考にして下さい。

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Page 1: (Deformation Energy Software Development for Automotive ... · PDF file- 1 - 自動車衝突時の変形エネルギ算出ソフトの開発 (Deformation Energy Software Development

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自動車衝突時の変形エネルギ算出ソフトの開発

(Deformation Energy Software Development for Automotive Collision Impact)

・種田 克典

(Taneda Katsunori)

自動車交通事故解析科学研究所

(Automobile traffic accident analysis science laboratory)

[Abstract]

It is a very basic and important process to calculate the driving speed when automotive traffic accidents

occur by analyzing impact energy of deformed vehicle. The Study of impact energy calculation methods has

30 years of history and they have been widely used for accident appraisal.

However, not all appraisers thoroughly understand the calculation methods and we sometimes find incidents

where the wrong method was used.

One of the reasons which jeopardizes mutual understanding of both parties involved in traffic court is that

actual impact energy is manually calculated based on the accident report drawings. As a result it may cause

calculation errors and/or the parties involved will experience some difficulties in tracing the calculation

methods.

Following are the study results:

(1)Organized study results of theory and calculation methods for impact energy of deformed vehicle.

(2)Based on the (1) results, you can input deformed locations and volume in a PC and the PC will

automatically calculate the impact energy.

As a result, anyone can easily and accurately calculate the impact energy and all parties involved can trace

the calculation results.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)本論文は、平成 23 年 11 月 18 日に行われた第 17 回日本法科学技術

学会において講演した同名タイトル論文に加筆したものである.

(2)講演会において発表しました当研究所開発のエクセルを用いたパソコンソフト

「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」につきましては、

本のホームページの「ご相談・受付」ページより氏名・所属等をご記入の

上メールにてご請求ください.使用許諾書に署名をいただいた後配布い

たします(無料).

使用に際し、マニアルはありませんので本論文を参考にして下さい。

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1.研究の目的

自動車交通事故の車両変形に対応する変形により消費されるエネルギー(以下変形エネル

ギ)ーを求め、衝突速度を算出したり衝突状況を推定することは工学鑑定における重

要な基本作業の一つである.一般的に変形エネルギーの算出は手作業で行われるため、

効率が悪いばかりでなく、誤りが生じやすく、またその誤りに気づきにくいという

実施上の問題点があった.このため算出過程が明確にされた、変形のデータから変形エ

ネルギーの得られるパソコンソフトが求められていた.

本報告は、当研究所で開発した簡便で誰でも使える自動車衝突変形エネルギー算出ソフト

「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」について紹介・解説する

ものある.また、使用希望者には無料配布して処理の共通化を図り、工学鑑定上の

問題点の改善を行い、工学鑑定の資質向上を計るものである。

2.変形エネルギーの算出における誤りの例

変形エネルギーの算出法は、変形マトリックス図上に事故車両の変形図を載せ面積計算する

だけの簡単な作業で、衝突速度・衝突状況を検討するができる方法である.誰でも

簡単に実施できる手法ゆえに、安易に使われている面もあり、鑑定業務を行う者が、

専門家として必ずしもその理論や技術内容を正しく理解し用いているとは考えられ

ない例が観察される.

2.1 誤りの例 1

図 1 は、E 鑑定書に記載された処理上の初歩的な誤りの例である.変形状況をマトリ

ックス上に載せるとき変形位置を間違ってしまったものである.算出結果は実際より約

30% 少ない誤った結果となっている.

図 2 が、図 1 の変形図の事故当時車両である.通常変形エネルギーの算出は、手作業

による図式解法で行われるため、事故車の変形状況をマトリックス上に再現するとき、実

際の変形に忠実に再現すればする程計算が非常に面倒になる.そのため、実際の変形

状況を簡略化して用いる.変形マトリックス自体の精度から考えて(衝突実験結果から代表

的な車種にモデル化していることにより、10%近い誤差を含んでいると考えられる.)

簡略化して用いること自体誤りではないが、算出過程に誤りがあると工学鑑定結果を

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参考にする側の混乱の原因となる.

上記のミスの原因は、実際の変形を簡略的なモデルにするとき、簡略化しすぎてモデル

図から実際の変形の想像しにくく、チェックしにくくなったことによるものである.

図 1 E 鑑定書に記載された処理上の初歩的な誤りの例

(変形状況をマトリックス上に載せるとき変形位置を間違ってしまったも.算出結果は実

際より約 30%少ない.)

図 2 図 1 の事故当時車両の変形状況

(図 1 が、かなり簡略化されている

ことがわかる.)

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2.2 誤りの例 2

図 3 は、筆者が過去に見た鑑定の中で最も酷い用い方・誤りの例である.工学鑑定所

を主催する M 氏によるもので、事故解析の参考書を読みかじり、変形エネルギー算出

法の原理・意味を理解せずに変形エネルギー算出したというもので、メチャクチャな使い方をして

いる例である.過去の交通裁判では、このようなひどい内容の鑑定書が堂々と提出さ

れ、法文系の人をたぶらかしていたのが実状である.

(1)当該事故は乗用車の側面に二輪車が斜め後方から接触した事故である.乗用車の

衝突実験結果から求めたデータによる変形エネルギー算出法を、二輪車のような質量の

小さな車との衝突事故の解析に用いること自信、まず最初に誤りなのである.

(2)次に、M 鑑定において用いた、変形マトリックスデータは、当該事故が側面衝突であるに

もかかわらず、乗用車の前面の変形エネルギー特性を用いるという、めちゃくちゃな

使用をしているである.

(3)さらに、算出した変形エネルギーから衝突速度を求める時に得られた変形エネルギーのす

べてを二輪車の運動に換算しているである.当然のことながら、衝突により生じ

た乗用車の変形は、両当事者の運動によりもたらされ、また、そのエネルギーは片方

によってのみ消費されるのではなく、乗用車・2 輪車および乗員のそれぞれの変

形または傷害により消費されるのである.すなわちこれらのバランスをきちんと考え

た上で結論を出すことが重要なのである.

図 3 変形エネル

キ ゙ー算出および

速度換算を使用

した鑑定書のうち

最もひどい誤りの

A

(1)変形エネルギー算出法は、乗用車の衝突実験結果から求めたデータであるので、二輪車の接触事故 の解析には適さず、用いること自体誤り。

(2)M鑑定は、事故が側面の衝突であるにもかかわらず、乗用車の前面の変形エネルギー特性を用いるという、理論的にめちゃくちゃな使用をしている。

(3)変形エネルギーの、生成の構成と、消費の構成の一部を算出しているだけで全体のプラスマイナスを考慮していない。

変形エネルギー生成部位

運動エネルギーは3者の損傷に消費される

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3.変形エネルギーの算出における問題点

上記の如く,鑑定業務を行う者が、変形エネルギーの算出法についてその理論・方法

を正しく理解し用いているとは言えない例が観察される.

工学鑑定上の問題として整理すると以下の二つがあげられる.

(1)算出が手作業による図上計測である.

変形エネルギーの算出は、事故車の変形を実際に測定するケースは少なく、事故後に映

された事故車の写真により検討しなければならない場合が多い.この場合、写真の

見方により変形の状態が、いろいろと推定されることが多くある.この場合、いろ

いろ考えられる条件で変形を想定し、算出・検討することが重要であるが、手作業

によるため手間がかかるため、勝手に条件を絞り込んで算出し、検討を十分に行わ

ないことがある。また、手作業ゆえに誤りを起こしやすくその誤りに気づきにくい.

算出結果が誤りを生じると、裁判の書類は厳格に扱われるため、算出結果の誤り

の修正等に無駄な時間を多くなり混乱の原因となる.

(2)他の当事者側の実施結果をトレースすることが困難

交通事故における裁判や話し合いにおいて最も重要なことは当事者間の相互理解

である.交通事故では、当事者それぞれが被害者であるという側面がある.当事者

それぞれには、それぞれの主張があり相手の立場を理解することが重要である.こ

の相互理解に寄与するのために工学鑑定があると言っても過言ではない.

変形エネルギーの算出らが正しく行われ、相互理解のために役に立つのが本来の役目

であるが、従来の手作業による方法では算出過程・結果が実施者により異なりやす

く、また、実施結果がトレースしにくいため、当事者間でデータおよび結果を共有するこ

とが困難になり相互理解の妨げとなることがある.

特に後者の問題は,当事者間の相互理解を深めることに寄与すると言う交通事故

の係争では最も大切な工学鑑定の使命への大きな妨げの一因になる.

上記問題を解決するためには、算出の過程を明確にし算出過程がトレースできるよう

にし、他の当事者の行った算出結果が他の当事者に理解できるツール、すなわちコンピュー

ターソフトが必要なのである。

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4.変形エネルギーの算出の自動化のねらい

変形解析ソフト「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」は以下の

ねらいで開発された。

(1)誰でも容易に算出でき、同じ結果が得られる.

→情報が少なくてもいろいろな検討ができる.

(2)計算経緯がトレースでき、他の人がその算出過程を理解できる.

→事故の当事者間で共通土俵に立てる.

(3)過去の研究間の、変形係数の違いや算出法の違い等を比較できる.

→車両間の違いや選択方法を検討できる。

5. 衝突のエネルギーの算出の研究の歴史

国内における自動車の衝突変形に対するエネルギー算出の研究は,1980 年の石川他の

研究に始まり 2008 年の助川他によるトラックの研究まで 7 編の研究発表がなされ,約 30

年前の研究実績が事故鑑定に広く用いられている.(下記のほかに公表されている研

究もあるが単一的な車両のデータなどであり体系化されていないために省略した.)

前面の変形エネルギーに関する研究

(1)石川他 自動車研究 Vol2 No1 p11 - 14 1980

(2)久保田他 自動車研究 Vol17 No1 1995

(3)大賀他 自動車技術会学術講演会前刷り集 No49 - 07 JSAE 20075257

後面の変形エネルギーに関する研究

(1) 石川他 自動車研究 Vol2 No1 p11 - 14 1980

(4) 久保田 自動車研究 Vol29 No3 pp95 - 98 2006

側面の変形エネルギーに関する研究

(1) 石川他 自動車研究 Vol2 No1 p11 - 14 1980

(5) 助川他 自動車研究 Vol29 No9 p471 - 476 2007

(6) 助川他 自動車研究 Vol30 No9 pp519 - 524 2008 ミニバン・トラック

(7) 助川他 自動車研究 Vol27 No3 p113 - 116 2005

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6. 変形のエネルギーの算出の原理

前章に示した各研究から、図式解法のための変形のエネルギーマトリックスデータが作成され

た.下記の作成の経緯を理解することは、変形エネルギー算出の原理を理解し正しく使

用する道であることから簡単に原理を解説する.

6.1 変形のエネルギーの算出の基礎データの作成

変形のエネルギー算出のための基礎データは、以下のようにして作られている.

(1) 衝突試験結果の入手

衝突実験結果は、実験を実際に行って入手した研究と NCAP データなどのように公

表されているデータを用いた研究がある.変位量は、ハイスピードカメラのデータまたは加速度

計データを積分して算出し、バリア荷重計の結果から衝突荷重を求める.

(図 4、図 5)

(2)変位-荷重特性を求める.

図 5 に示した変位-荷重特性の実験結果をもとに、平均等のデータ処理を行い、対

象とする車両の変位-荷重特性を決める.

(3)永久変形のエネルギー算出のためのマトリックスデータの作成

(2)の結果をもとに、図上計算を行うための変形エネルギーのマトリックスデータを作成する.

実験結果から得た変位のデータは、事故解析の変形データに対応させるために永久変

形量に簡単される.作成の方法は石川等の行った方法と鮭川・大賀等の行った方法

の 2 つがある.

図 5 前面衝突実験結果

変位-荷重特性のデータ

図 4 バリア衝突実験(NCAP)

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6.2 変形エネルギーのマトリックスデータの作成

実際に変形エネルギーを算出するための変形エネルギーのマトリックスデータは、以下の 2 つの方

法で作成された.

6.2.1 石川(1) 久保田等(2)(4)の方法

(1)石川等は 1500cc クラスの乗用車の衝突試験を行い、衝突速度と永久変形量の関係が

1 次の関係にあり,永久変形量と吸収エネルギーの関係は 2 次式となること,また変位 0

での衝突速度は塑性変形を表すために 0 にならないことを示した.この結果から永

久変形量と変形エネルギーの関係を 2 次式で現し 2 次式の各係数を提示した.また図 6

に示すように得られた 2 次式もとに標準的車両の変形面積に対応するエネルギー吸収特

性マトリックスを作成し,図上計測により永久変形から吸収エネルギー量を求められるように

し,衝突速度の推定が可能となるようにした.

この石川等の方法は、式での処理が可能であるため、コンピューターによる自動化が可

能で、応用性は高いが、単一の式で表すため自動車の部品や部位の違いによる車両

毎の剛性を反映できない短所がある.

図 7 は、筆者が第 7 回の法科学学会で発表したエネルギー吸収量の解析ソフトの説明図で

ある.石川等の研究に基づき、変形エネルギーが変形を示す台形の面積すなわち 3 次式

で得られることを解析し、コンピューターソフトによる計算を可能としたものである.

図 6 乗用車前部の永久変形量と衝突荷重および変形エネルギーの関係

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図 7 エネルギー吸収量の算出ソフトの原理の解説

(第 7 回の法科学学会において筆者が発表した.石川等の研究に基づき、変形エネルギ

ーが変形を示し台形の面積すなわち 3 次式で得られることを解析し、コンピューターソフトに

よる計算を可能とした.)

6.2.2 鮏川(5)(6)(7)、大賀(3)の方法

鮏川・大賀等は、得られた変形位置と荷重分布の結果を二次元的マトリックス上に図示

し図式解法のみで変形エネルギーを算出する方法を採用した.図 8 は、大賀の研究によ

る小型乗用車の前部の変形エネルギーマトリックスである.濃い色のブロックは単位あたりの変形

エネルギー量が大きいことを示している.この方法であると変形部位の特性が現せ、車

両構造との比較ができる長所があるが、変形式の形になっていないため、自動計算

にしにくい短所がある.

図 9 は、今回発表したソフトにおける解析図である.従来の手作業での各面積の測定

作業と、エネルギー算出方法を解析したもので、各ブロックごとの特性を乗じて変形エネ

ルギーを求める方法である。この手作業の内容の解析によりパソコンソフトの自動化が可能

になった.

石川等の研究のエネルギ吸収量の計算方法の考え方

1.四角い車両と考える

3.右図の斜線部の変形エネルギは、次の式で与えられる

2.変形は連続直線で構成する

X1 X2 X3 X4 X5 X6 X7

Y1

Y2

Y3 Y4

Y5 Y6

Y7

E =∫ (ay+by+c) dxx4

x3

2

=aα(X4-X3)/3 + (2aαβ+bβ)(X4-X3)+(αβ+bβ+c)(X4-X3)3 2 22 2

α = β= -αX3 + Y3

3

{ }4.全体のエネルギ量は各区間の総和

(X4 -X3 )(Y4 - Y3 )

y= αx +

2001.11.09 7th 法科学学会発表

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図 8 大賀の研究による小型乗用車の前部の変形エネルギーマトリックス

図 9 鮏川、大賀の方法の解析図

(従来の手作業で図の各面積を測定し、各ブロックごとの特性を乗じて変形エネルギーを求

める方法を解析したもの)

ブロック変形エネルギ計算(基礎前部係数大賀, 車幅, Etotal, wx1, wx2, hy1, hy2)

0.1

0.2

0.3

四角

位置wx1=(車0x点+wx1)×10

位置wx2wx3

hy1

hy2

hy2

四角

台形

三角

各ブロックの面積を求め,ブロックの所属するエリアのエネルギ係数を乗じ,合計エネルギを求める

第(1,1)エリア 第(1,2)エリア

第(1,3)エリア第(1,4)エリア 第(1,5)エリア

第(2,1)エリア

第(3,1)エリア

第(2,2)エリア

-1/2車幅

0(m)

車0x点(ここからの距離貸せデータ位置)

wx1-1(m)

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7. 開発した変形エネルギー算出ソフト

「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」の説明および使用方法

上記解析をもとに、開発した変形エネルギー算出ソフトの解説と使用方法を以下に示す.

このソフトは、広く使用されている「表計算ソフト[Excel]」の VBA マクロを用いて作成し

てあるので、特別なシステムの導入や訓練が不必要であり、誰でも容易に算出でき、そ

の算出過程が明確になる.

7.1 本ソフト使用上の注意

(1) 本ソフト、「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」はマクロを使用して作成さ

れていますので、Excel2010 で使用する場合は、「セキュリティセンターの信頼できる場所」

にソフトのセットされていないとマクロが作動しませんので、「信頼できる場所」にコピーし

て使用してください.

(2)本ソフトはグラフを使用するために各シートには鍵がかかっておりません.

使用中に「セル」の付加・削除・移動等が可能です.「セル」の付加・削除・移動等「を

行いますと、マクロプログラム上で指定しているセルの番地が変わってしまいますのでマクロ

が作動しなくなります.このため、「セル」の付加・削除・移動等は行わないでくだ

さい.

(3)マクロプログラムは、すべてをオープンになっております.改変は可能ですが、これらに

関する質問はお受けいたしません.

7.2 本ソフト使用法の概要

(1)本ソフト、「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」を起動します.

図 10 が表示されます.

(2)本ソフトは、「11 前面」「12 後面」「13 側面」「係数」の 4 つのシートから成り立ってい

ます.「係数」シートのみに鍵がかかっており変更は出来ません.「係数」シートは「11

前面」「12 後面」「13 側面」の変形マトリックスの各係数が、入っています.

(3)「11 前面」について使用法を以下に説明します.「12 後面」「13 側面」につきま

しては、同様の使用方法でありますので、説明は省略いたします.

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図 10 「TANEDAS 乗用車変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」起動画面

(「11 前面」の(1)計算条件の入力と計算の実行 部分(画面 1)が表示される)

7.3 「11 前面」シートの使用法

「11 前面」シートは、以下の三つの部分から構成されております.

(1)計算条件の入力と計算の実行 部分(画面 1)

(2)結果の表示 1 選択車種の詳細結果 部分(画面 2)

(3)車種の分類と計算結果 2 上記変形における車種別比較 部分(画面 3)

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7.4 データの入力

「計算条件の入力と計算の実行」部分では、変形エネルギーを計算する車両のデータ、

変形のデータを入力します.

①に車両の全長を入力します.単位は(m)です.

②に車両の質量を入力します.単位は(Kg)です.

③- 1 に左端からの距離(m)を、③- 2 に対応する変形量(m)を入力します.

20 点まで入力出来ます.(図 121). 図 11 の車両グラフの変形図が変わります.

なお、最初の点は(0,0)に、最後の点は(全幅,0)に必ずします.

④- 1 に石川等の車両区分を選択します.④- 2 に大賀の車両区分を選択します.

(図 13)

図 12 車両データおよび変形位置と変形量の入力

図 13 詳細計算結果を表示する車種の選択

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7.5 計算の実行と結果の表示

データの入力終了後、[⑤計算の実行]を 8 します.図 15、図 16 の計算結果が表示

されます.

図 15(2) 結果の表示 1 選択車種の詳細結果は、6.3 節④で選択した車両の詳細結

果です.

図 16(3)車種の分類と計算結果 2 は、上記変形における車種別比較、表示します.

図 14 計算実行ボタン

図 15 (2)結果の表示 1 選択車種の詳細結果、6.3 節④で選択した車両の詳細結果.

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図 16 (3)車種の分類と計算結果 2

8. 実施内容と考察

(1)自動車の変形に対する衝突のエネルギーの算出の理論や研究成果を整理した.

(2)その結果に基付き,変形の位置と量を入力するだけで,パソコン上で衝突のエネルギー

自動計算できるようにした自動車衝突変形エネルギー算出ソフト

「TANEDAS 乗用車 変形エネルギ計算ソフト 2011.xlsm」を開発した.

(3)広く使用されている「表計算ソフト[Excel]」上で計算できるようにした

(4)過去の全研究に対応,衝突面に算出係数の違いによる結果の比較が出来るように

した.

これにより,変形に対応する衝突のエネルギーが正しく容易に求められ,算出結果へ

のトレースも容易に出来るようにした.