dlc膜の実用化とx線散乱による構造解析 -...

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1 住友電気工業㈱ 解析技術研究センター 斎藤 吉広、飯原順次、山口浩司 DLC膜の実用化とX線散乱による構造解析 第2回 SPring-8金属材料評価研究会 (2010/03/01)

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  • 1

    住友電気工業㈱ 解析技術研究センター

    ○斎藤 吉広、飯原順次、山口浩司

    DLC膜の実用化とX線散乱による構造解析

    第2回 SPring-8金属材料評価研究会 (2010/03/01)

  • 2発表の概要

    1. DLC膜の概要: 特徴、用途、製法、etc

    2. 構造解析の手法: X線散乱測定と動径分布関数(RDF)

    分子動力学法などのシミュレーション

    3. X線散乱の測定: 各種DLCの散乱スペクトルとRDF

    標準試料(有機液体)を用いた測定

    4. シミュレーション解析: DLC構造モデルなど

    5. まとめ

  • 3DLC=ダイヤモンド ライク カーボン の概要

    高硬度、低摩擦、etc

    炭素を主成分とする非晶質 (単結合/二重結合など混在)

    基材 (SUSなど)

    DLCコーティング膜

    C

    C

    C

    H

    H

    C

    C

    C

    CC

    C

    CC

    DLCの構造&特性には、大きなバリエーションあり

    特長

    用途 コーティング膜として実用化

    (工具, 金型, 摺動部品, ハードディスク等)

    構造的な特徴

  • 4DLCの代表的な製法

    プラズマCVD アーク式イオンプレーティング

    水素~多、硬度~中 水素~少、硬度~高

    原料ガス

    カソード電極

    排気

    基材

    アーク電源

    バイアス電源

    原料ガス(CH4など)

    上部電極

    下部電極

    高周波電源

    基材

    排気

  • 5

    0.0 0.2 0.4

    原子間距離 (nm)

    動径

    分布

    関数

    (el2

    /Å

    2)

    DLCの構造解析

    動径分布関数 (RDF)・ ピーク位置⇒原子間距離・ピーク面積⇒配位数

    (より直接的な構造情報)

    構造⇔特性の相関

    (・・・ 特性改善の指針)

    ・ ラマン、EELS、IR

    ・X線散乱

    手法

    目的 [ラマンスペクトルの例]

    Ferrari et al:

    Phys. Rev. B,

    61 (2000) p14095

    ラマンシフト (cm-1

    )C

    CC

    第一近接第二近接

  • 6

    1. DLC膜の概要: 特徴、用途、製法、etc

    2. 構造解析の手法: X線散乱測定と動径分布関数(RDF)

    分子動力学法などのシミュレーション

    3. X線散乱の測定: 各種DLCの散乱スペクトルとRDF

    標準試料(有機液体)を用いた測定

    4. シミュレーション解析: DLC構造モデルなど

    5. まとめ

  • 7X線散乱の測定技術(@SPring-8)

    DLC膜を基板から剥離して、キャピラリに充填

    検出器をスキャン

    [キャピラリでの測定]

    入射X線

    散乱X線

    ・比較的、オールマイティな手法・難易度・・・比較的容易・試料少/剥離困難→適用不可

    ・薄膜試料を非破壊で分析可能・難易度・・・比較的難しい・基材からの散乱混入に要注意

    [薄膜での測定]

    GIXS=Grazing Incident X-ray Scattering (微小角入射X線散乱)

    基材 DLC薄膜入射X線

    入射角

    散乱X線検出器をスキャン

    cf. GIXS測定技術⇒2004B期にJASRI殿よりご指導頂き開発

    (産業界ビームライン5社での共同研究成果・・・C04B16XU-3000-N)

  • 8

    散乱X線

    動径分布解析の手順

    測定

    入射X線

    特有の角度依存性

    C

    C

    C C

    C

    C

    C

    C

    C

    0.0 0.2 0.4

    距離 (nm)

    動径分布関数

    規格化&FT第一近接 (~0.15nm)結合距離: C = C < C – C

    C=Cが多い→短距離側にシフト

    0 40 80 120散乱角(°)

    散乱スペクトル

    第二近接 (~0.24nm)

    面積大

    C

    C

    CC

    C

    CC

    CC

    C

    C

    H

    H

    C

    H

    面積小

    ・・・・・

    C

  • 9シミュレーション解析との組み合わせ

    測定

    入射X線

    散乱X線

    シミュレーション

    (分子動力学法など)

    構造モデル作製

    0.0 0.4 0.8

    原子間距離 (nm)

    動径

    分布

    関数

    実測

    シミュレーション(1)実測と比較(妥当性の検証)

    (2)物性の計算(材料設計)

    ・ヤング率 (硬度の推定)

    ・振動スペクトル (ラマン/赤外)

    ・油分子との親和性

    (摺動特性の予測)

  • 10

    1. DLC膜の概要: 特徴、用途、製法、etc

    2. 構造解析の手法: X線散乱測定と動径分布関数(RDF)

    分子動力学法などのシミュレーション

    3. X線散乱の測定: 各種DLCの散乱スペクトルとRDF

    標準試料(有機液体)を用いた測定

    4. シミュレーション解析: DLC構造モデルなど

    5. まとめ

  • 11

    0 50 100 150

    散乱角(°)

    散乱

    強度

    (arb

    . unit

    )DLC膜のX線散乱スペクトルの例

    散乱スペクトル⇒バックグランド&コンプトン散乱補正

    製造条件の違いによるスペクトルの差を検出

    [プラズマCVD-低密度条件]

    [イオンプレーティング]

    ・SPring-8、BL16XU・サンプル:DLC膜・X線エネルギ=15keV・キャピラリ使用

  • 12DLC膜のX線散乱スペクトルの例(2)

    0 50 100 150

    散乱角(°)

    散乱

    強度

    (arb

    . unit)

    キャピラリ測定とGIXSの比較

    [プラズマCVD-低密度条件]

    キャピラリ測定

    GIXS

  • 13DLC膜の動径分布関数(RDF)の例

    0 0.2 0.4

    原子間距離 (nm)

    RD

    F 

    (el2/nm

    2)

    [#A]

    C=C/C-C

    混在主にC-C

    原料 密度 含有水素 予想構造

    #A C2H2 + CH4 1.94 少ない 3次元的 (C=C/C-C混在)

    多い#B パラフィン系分子 1.20 ポリマー的 (主にC-C、鎖状)

    [#B]

    実測のRDF⇒予想と整合

  • 14

    R (Å)

    0.0 1.5 3.0

    J(r

    )(a

    tom

    s)DLCのC=C/C-C比の測定例 (by 中性子回折)

    ・J. Walter et al : Phys. Rev. B, 50(2) (1994) p831

    CーC

    C=C精度検証には

    C=C/C-C比が既知の標準試料が必要

  • 15構造既知の有機分子の液体試料で検証

    有機分子トリメチルベンゼン

    (TMB)

    トリエチルベンゼン

    (TEB)

    ドデカン

    (C12H26)

    分子構造

    CH3

    CH3

    CH3

    CH2

    CH3

    CH3

    CH3

    CH2

    CH2

    CH3

    CH2

    CH2

    CH2

    CH2

    CH2

    CH2

    CH3

    3種の液体をX線散乱測定→RDFを比較

    C=C:C-C 6 : 3 6 : 6 0 : 11

    密度 (g/cm3) 0.87 0.86 0.75

  • 16結果(1) X線散乱スペクトル

    0 20 40 60 80

    散乱角(°)

    散乱

    強度

    (arb

    . unit)

    TMB

    C12H26

    TEB

    ・低角部に特徴的なピーク 重点産業利用課題 (2009A1916)

    入射X線

    キャピラリ

    イメージングプレート散乱X線

    (30keV)

    @SPring-8、BL19B2

  • 17結果(2) 干渉関数

    0 5 10 15

    TMB

    C12H26

    TEB

    波数(Å-1)

    k・I(k)

    ・高角部(=高波数領域)で差

  • 18結果(3) 動径分布関数

    0.0 0.2 0.4 0.6

    原子間距離 (nm)

    動径

    分布

    関数

    (el2/Å

    2)

    0

    100

    200 TMB

    C12H26

    TEB

  • 19結果(4) 動径分布関数(横軸スケール拡大)

    0.1 0.2 0.3

    原子間距離 (nm)

    0

    100

    200

    TMBC12H26

    TEB

    動径

    分布

    関数

    (el2/Å

    2)

    TMB TEB C12H26

    C=C:C-C 6 : 3 6 : 6 0 : 11

    第二/第一 1.33 1.25 0.91

    第二近接 12 15 10

    第一近接 9 12 11

    C

    CC

    C

    C

    C

    第二近接

    C

    C

    C

    C

    第一近接

  • 20

    1. DLC膜の概要: 特徴、用途、製法、etc

    2. 構造解析の手法: X線散乱測定と動径分布関数(RDF)

    分子動力学法などのシミュレーション

    3. X線散乱の測定: 各種DLCの散乱スペクトルとRDF

    標準試料(有機液体)を用いた測定

    4. シミュレーション解析: DLC構造モデルなど

    5. まとめ

  • 21シミュレーションによる構造モデル(分子動力学法)

    0.0 0.2 0.4 0.6

    原子間距離 (nm)

    動径

    分布

    関数

    (el2

    /nm

    2)

    ・原子数=200個 (C/H=140/60)

    ・ラフなモデル作製 (経験的パラメータ使用)

    ⇒第一原理計算で精密化 (構造緩和)

    DLC動径分布関数の例

    ー 実測 (X線散乱)

    ー シミュレーション (分子動力学)

    シミュレーションにより実測の動径分布を

    ほぼ再現

    x

  • 225. まとめ: 放射光X線散乱によるDLC構造解析

    ■DLC膜の構造をX線散乱法で分析:

    ・キャピラリ(またはGIXS)で散乱スペクトル測定可能

    ・DLC動径分布関数⇒原料から予想される構造を反映

    ・有機液体の測定⇒C=C/C-C比など分子構造を反映

    ■分子動力学シミュレーション

    ・原子間ポテンシャルに基づいて安定構造を探索

    ・実測の動径分布関数をほぼ再現

  • 23謝辞

    本研究の実施にあたり、多大なご助力を頂きました

    JASRI 産業利用推進室の古宮 聰様、廣澤 一郎様、

    佐藤 真直様、大坂 恵一様 に心より感謝いたします。

    また、産業界ビームライン(BL16XU)でのGIXS共同実

    験でお世話になりました 竹村 モモ子様、三上 朗様、

    西野潤一様、尾崎 真司様、田沼 良平様、他関係者

    の皆様に深く感謝いたします。

    発表の概要DLC=ダイヤモンド ライク カーボン の概要DLCの代表的な製法DLCの構造解析X線散乱の測定技術(@SPring-8)動径分布解析の手順シミュレーション解析との組み合わせDLC膜のX線散乱スペクトルの例DLC膜のX線散乱スペクトルの例(2)DLC膜の動径分布関数(RDF)の例DLCのC=C/C-C比の測定例 (by 中性子回折)構造既知の有機分子の液体試料で検証結果(1) X線散乱スペクトル結果(2) 干渉関数シミュレーションによる構造モデル(分子動力学法)5. まとめ: 放射光X線散乱によるDLC構造解析謝辞