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商品技術解説 富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 141 DocuPrint CP200 w/P200 b DocuPrint CP200 w/P200 b DocuPrint CP200 w/P200 b は、新開発の小型 カラーエンジンの採用により、タンデム方式のカラー レーザープリンターとしては 2011 年 11 月発売時世 界最小最軽量を達成し、毎分カラー15 枚のクラス最 高速と高画質を実現した低価格のデスクトップ型 A4 プリンターである。本稿では、小型・軽量・高画質化 に加え、ユーザーの操作を極限まで簡素化するために 採用した、感光体をカスタマー・リプレイサブル・ユ ニット(以下、CRU)方式から本体固定方式への変更、 イメージングデバイスをレーザー方式から LED プリ ントヘッド(以下、LPH)方式に変更したカラーエン ジンの特徴的な構成技術を中心に、商品の概要およ採用技術や機能について述べる。 Abstract 執筆者 平田 和弘(Kazuhiro Hirata*1 須藤 真樹(Masaki Suto*2 瀬戸 政則(Masanori Seto*3 小松 伸(Shin Komatsu*4 *1 商品開発本部 第四商品開発部 Product Development & Program Management IV, Product Development Group*2 デバイス開発本部 第二マーキング PF 開発部 Marking Platform Development II, Device Development Group*3 デバイス開発本部 イメージング PF 開発部 Imaging Platform Development, Device Development Group*4 デバイス開発本部 デバイスシステム PF 開発部 Device System Platform Development, Device Development GroupDocuPrint CP200 w/P200 b is a low-price A4 desktop printer that employs a newly developed small size color marking engine. This engine enables the product to achieve the world's smallest size and lightest weight as a tandem color laser printer as of its launch in November, 2011 and to offer high print speed of 15ppm in color and high print quality. It adopted the fixed mount type photoreceptor, instead of the customer replaceable unit (CRU) type, and the LED print head (hereafter LPH) type imaging device, instead of the laser type, in order to simplify user operation to the maximum as well as to realize downsizing, weight reduction, and high print quality. This report describes the product overview and the technologies and features adopted by DocuPrint CP200w/P200b, mainly focusing on the characteristic technologies of the color engine.

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商品技術解説

富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 141

DocuPrint CP200 w/P200 b DocuPrint CP200 w/P200 b

要 旨

DocuPrint CP200 w/P200 b は、新開発の小型

カラーエンジンの採用により、タンデム方式のカラー

レーザープリンターとしては2011年11月発売時世

界最小最軽量を達成し、毎分カラー15 枚のクラス最

高速と高画質を実現した低価格のデスクトップ型 A4

プリンターである。本稿では、小型・軽量・高画質化

に加え、ユーザーの操作を極限まで簡素化するために

採用した、感光体をカスタマー・リプレイサブル・ユ

ニット(以下、CRU)方式から本体固定方式への変更、

イメージングデバイスをレーザー方式から LED プリ

ントヘッド(以下、LPH)方式に変更したカラーエン

ジンの特徴的な構成技術を中心に、商品の概要および

採用技術や機能について述べる。

Abstract

執筆者 平田 和弘(Kazuhiro Hirata)*1 須藤 真樹(Masaki Suto)*2 瀬戸 政則(Masanori Seto)*3 小松 伸(Shin Komatsu)*4 *1 商品開発本部 第四商品開発部 ( Product Development & Program Management IV,

Product Development Group) *2 デバイス開発本部 第二マーキング PF 開発部 (Marking Platform Development II,

Device Development Group) *3 デバイス開発本部 イメージング PF 開発部 (Imaging Platform Development,

Device Development Group) *4 デバイス開発本部 デバイスシステム PF 開発部 (Device System Platform Development,

Device Development Group)

DocuPrint CP200 w/P200 b is a low-price A4desktop printer that employs a newly developed smallsize color marking engine. This engine enables theproduct to achieve the world's smallest size andlightest weight as a tandem color laser printer as of itslaunch in November, 2011 and to offer high printspeed of 15ppm in color and high print quality. Itadopted the fixed mount type photoreceptor, insteadof the customer replaceable unit (CRU) type, and theLED print head (hereafter LPH) type imaging device,instead of the laser type, in order to simplify useroperation to the maximum as well as to realizedownsizing, weight reduction, and high print quality.This report describes the product overview and thetechnologies and features adopted by DocuPrintCP200w/P200b, mainly focusing on the characteristictechnologies of the color engine.

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DocuPrint CP200 w/P200 b

142 富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012

1. 緒言

インクジェットプリンターからの出力が主流

であったパーソナルユースやスモールオフィス

のドキュメント出力環境は、近年のレーザープ

リンターの小型低コスト化によって、ビジネス

ユースに耐えうる印刷速度と普通紙画像品質、

高信頼性を兼ね備えたレーザープリンターの

ニーズが高まっている。DocuPrint CP200 w

は、このようなニーズに応えるべく開発した世

界最小最軽量と毎分 12 枚の高画質高速カラー

プリントを両立したデスクトップ型のタンデム

方式カラーレーザープリンターである(図1)。

また、同様の小型化技術を用いたモノクロプリ

ンターの DocuPrint P200 b も同時に商品化

した(図2)。

本稿では DocuPrint CP200 w に採用した

キー技術について紹介する。

2. 商品の概要

DocuPrint CP200 wは、カラー毎分12枚、

モノクロ毎分 15 枚の印刷速度を実現するタン

デム方式のマーキングエンジンを、本体容積

26.6ℓの中に凝縮配置し、本体重量 10.6kg の

軽量化を達成した。解像度 1,200×2,400dpi

の LED プリントヘッド(以下、LPH)を小型

機で初めて採用し、新たに技術開発したカラー

レ ジ 補 正 技 術 で あ る IReCT® ( Image

Registration Control Technology)を搭載す

ることにより、超小型タンデム機でありながら

も、ユーザーに求められるグラフや図、デジタ

ル写真が混在するドキュメントに於いて、弊社

高級機と比較しても遜色のないレベルの高画質

出力を可能としている。

また、設置・メインテナンス操作を簡素化し

ユーザーの使い勝手の良さを追求した。交換が

必要な消耗品を、トナー補給と廃トナー回収を

一体化した200g足らずのトナーカートリッジ

4ケ(4色分)に抑えた。カートリッジ交換時

にアクセスするドアは、扱いやすい本体右サイ

ドに配置し解放式としたため、片手ワンタッチ

操作で着脱交換を可能とした。マーキングエン

ジンはロングライフという特徴を活かして本体

内に固定して無交換化した。

更に、前述した LPH は低騒音化にも貢献す

る。レーザースキャン方式で発生するポリゴン

モーターの高速回転ノイズが原理的になくなる

ため、ユーザーの耳に近いデスクトップに設置

しても気にならない程に稼働時の騒音レベルを

低く抑えた。

3. DocuPrint CP200 w の狙いと

搭載技術

DocuPrint CP200 w は、小型軽量化と共

に真のデスクトップ設置を念頭に置いて開発し

たカラーレーザープリンターである。

その狙いとするところは、

① フットプリントおよび機械高さの最小化

② クラスを越えた高画質と画質維持性能

③ 設置、消耗品交換、ジャム処理の簡素化

④ 環境対応(騒音・消費電力・廃棄物)

である。以下、上記狙いに対して開発を行い、

商品へ搭載した技術項目について解説を行う。

3.1 マーキングエンジンの小型実装

パーソナル用途やスモールオフィスで広く用

いられているインクジェットプリンターと、こ

れまでのレーザープリンターの使い勝手の差を

考えたとき、最大の違いは機械サイズと重量で

ある。女性でも簡単に本体を持ち上げて机上間

を移動でき、スペースの狭い棚への設置も可能

なインクジェットプリンターに対し、これまで

図1. DocuPrint CP200 w(左)と DocuPrint CM200 fw(右)

DocuPrint CP200 w (L) and DocuPrint CM200 fw (R)

図 2. DocuPrint P200b(左)と DocuPrint M200 fw(右)

DocuPrint P200 b (L) and DocuPrint M200 fw (R)

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DocuPrint CP200 w/P200 b

富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 143

のレーザープリンターは最も小型な物でも

20kg以上の重量とおおよそ50cm四方のフッ

トスペースを占有するため、重量・サイズ共に

半減させる必要があった。加えて昨今のプリン

ターは、スキャナーやファクス等の機能を複合

したマルチファンクション化が進み、装置上部

にスキャンユニットを実装しなくてはならず、

マーキングエンジン本体部の高さを可能な限り

低く抑え、装置上面から消耗品交換等の操作を

行う構成を回避する必要があった。DocuPrint

CP200 w では、この非常に難易度の高い要求

仕様を満たすため、マーキングエンジンを本体

内に固定式とする新たな中間転写ベルト一体型

の 4 連マイクロタンデム技術を採用した(図3)。

マーキングエンジンを装置本体内固定式とす

る為には、高寿命な感光体や帯電器に加え、常

に安定した高画質トナー像を形成する現像器が

必要である。このため、当社の中高速機に向け

て新たに開発された低摩耗型のロングライフ感

光体とスパイラルウレタンフォームクリーナー

を装備する長寿命な DC 帯電器を小型化して搭

載すると共に、長年培われた高速印刷や階調画

像の再現性に優れるキャリアとトナーを組み合

わせて使用する2成分現像方式についても、経

時劣化の少ない重合製法キャリアを初採用する

ことにより、トナーの補給のみで当社従来機比

3倍以上の画質維持寿命をもつ新規現像器を開

発し、これまで困難とされてきたマーキングエ

ンジンの本体固定方式を実現した。

マーキングエンジンの本体固定方式は、感光

体を交換する際に必要となる LPH の退避機構

を必要とせず、各色のマーキングユニット内に

固定配置することによってユニット自体の小型

化と、像露光経路スペースの不要化によるマー

キングユニット四連配置の狭小化を可能とした。

このため、中間転写ベルト一体型4連マイクロ

タンデムエンジンユニット断面は、240mm 長

×90mm 高という小型化を達成した(図4)。

3.2 LPH イメージング技術の開発

DocuPrint CP200 w では露光装置にこれ

までのレーザー走査方式に代えて LPH を採用

した。LPH は走査光学系が不要なのでレーザー

走査方式に比べて大幅な小型化が可能で当社比

では 1/40 の体積比を達成した(図5)。

一方 LPH は光源が 10,240 個(A4 幅)も

あるためそれぞれの露光量を一定にする制御が

必要となる。

3.2.1 富士ゼロックス LPH 技術の特徴

自己走査型駆動方式(SLED:Self-Scanning

Light Emitting Device)は PNPN 構造のサイ

リスタで構成され、シフトレジスタの機能を有

する発光デバイスである。発光素子が選択的に

順次発光するので 配線数を飛躍的に削減でき

る(図6)。

図 3. DocuPrint CP200 w の構成断面図

Machine Layout of DocuPrint CP200 w

図 4. 4連マイクロタンデムエンジンのユニット断面図

Unit Layout of Micro Tandem Marking Engine

図 5. LPH とレーザー方式の比較

Juxtapose LPH units and Laser Scanning unit

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144 富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012

今回エントリークラス向けに開発した SLED

においては、発光素子を独立制御する場合に比

べて 2%(256 分の 5 本)の制御信号数で駆

動可能である(図7)。

3.2.2 露光制御技術

全 LED ドットを1つの高精度・多機能ドラ

イバーASIC で集中制御する高精度露光制御技

術 DELCIS®(Digitally-Enhanced Lighting

Control Imaging System ) を 開 発 し た 。

DELCIS®では、個々の発光サイリスタの露光量

を、露光量とのリニアリティが高いパルス幅で

制御することで補正精度を向上した(図8、9)。

3.2.3 エントリークラスの LPH イメージン

グ技術開発と実装技術

富士ゼロックスが中高速機用に開発した

1,200dpi 高解像 LPH イメージング技術をエ

ントリークラスに応用するためにさまざまなコ

ストダウンを実施した。

LPH 実装設計では必要な機能を見極めるこ

とで部品点数を削減した。

DocuPrint CP200 w は感光体の交換を必

要としないため LPH を退避させる機構を省き、

さらに退避時の脱着に耐える強度も必要ないこ

とから LPH の補強部材も削除した。

従来の位置決め機構は LPH 調整基準ピンを

感光体に突き当て焦点位置精度を確保していた

が、退避機構を必要としない為、感光体位置決

め部材に固定することで焦点位置精度を確保す

る方式に変更した(図 10)。

公差解析と部品精度の作り込みにより調整機

構を排除しながらも焦点位置精度を確保するこ

とに成功した。

しかし感光体と LPH が離れないと LPH の出

射面に堆積した汚れを清掃するのが困難となる。

DocuPrint CP200 w では 2.8mm の僅かな

空間で汚れをおとす感光体接触型清掃機構を新

たに開発した(図 11)。

®

転送サイリスタ

順次発光

SLED CHIP

図 6. SLED 動作説明図

Scanning Sequence of SLED

発光部 Wire 5 本/CHIP

図 7. SLED チップ拡大写真

Closeup Picture of SLED Chip

図 8. パルス幅と露光量

Characteristics of Pulse Width and Exposure Amount

補正前

チップ単位の

濃度差が目立つ

補正後

濃度差が見えない

図 9. 光量補正の効果

Adjustment Light Intensity Benefit

感光体固定方式退避機構式

図 10. 位置決め方式の比較

Retractable and Fixed Mount LPH

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富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 145

3.3 高画質化技術

タンデム方式カラーマーキングエンジンの高

画質化を図る上で最も解決が困難な技術課題は、

① YMCK 各色のマーキングユニットで感光

体上に現像された4色のドットを中間転写

ベルト上で、ずれなく位置合わせするカ

ラーレジストレーション性能の向上

② 画像形成中に同時に回転駆動される複数の

感光体や現像ロール、中間転写ベルト等の部

材の回転速度(Motion Quality)の安定化

の2点である。

この2つの普遍的な設計技術課題に対しても、

LPH を内包するマーキングエンジンの本体固

定方式を採用した DocuPrint CP200 w は、

感光体を含む一体型カートリッジ交換型の構成

を採る競合他社機に比べて高い優位性を有して

いる。なぜならば、カートリッジ交換型のプリ

ンターでは画像形成の心臓部である感光体や光

学系の位置精度を保つ為の固定という設計と、

ジャム処理や消耗品の交換性を確保する為の簡

易な着脱という設計が相反し、感光体の高精度

な位置決めが非常に困難なためである。感光体

のわずかな位置ずれは各色ドットの相対位置を

狂わせ、色ずれを起こすばかりでなく、回転軸

中心の位置ずれが駆動伝達を不安定にし、感光

体の回転角速度のばらつきを生み、画像に醜い

軸方向の濃淡スジを発生させる原因となる。

3.4 カラーマーキングエンジンの本体固

定方式採用による高画質化

高精度なカラーレジストレーションを達成す

るために、DocuPrint CP200 w では、第一

に各プリントエンジンの感光体中心軸と像露光

を行う LPH を同一の樹脂ハウジングで固定的

に保持した。感光体の露光位置が個体差なく画

一化できることに加え、一体となって動くので

動作時の振動による露光位置変動もキャンセル

できる(図 12)。

更に第二の特徴として、感光体と LPH とが

一体となっている4つのプリントエンジンを並

べ、各々の感光体を支持している軸を、左右両

側で別の結合用樹脂フレームに開いた穴に勘合

することによって、4つのエンジンを一体的な

ユニットに構成した。各感光体は、1つの結合

用樹脂フレームに開いた穴によって固定される

ので、4つのプリントエンジンの相対位置につ

いて高精度の位置決めを実現するばかりでなく、

駆動伝達ギアトレインも各々を最適な位置関係

に固定できる(図 13)。

上記構成により先に挙げたタンデム方式カ

ラーマーキングエンジンの困難な2つの技術課

題を同時に解決し、4つのプリントエンジンの

相対的な位置ずれと速度変動を最小限に抑える

ことに成功した。

3.5 イメージコントロール技術

高解像度の LPH イメージコントロール技術

をエントリー機に応用するために A4 サイズに

特化したLPHドライバーASICとカラー画像位

置制御 ASIC を新規に開発した。

LPH ドライバーASIC は DELCIS®の露光量

制御機能の他に、画像コントローラーと LPH

を繋ぐビデオインターフェース機能を付加し汎

用のコントローラーで LPH をドライブできる

ようにした(図 14)。

清掃棒

保護用パッド清掃ブレード

図 11. 感光体接触式清掃機構

Contact-type Cleaning Rod

図 12. LPH 固定機構

Fixation Mechanism of LPH

図 13. 4連マイクロタンデムエンジン

Micro Tandem Marking Engine Layout

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146 富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012

カラー画像位置制御 ASIC は色ずれをデジタ

ル 補 正 す る IReCT® ( Image Registration

Control Technology)を搭載した(図15、16)。

DocuPrint CP200 w ではエントリー機の

CPU でも制御できるように A4 サイズに特化

したアルゴリズムを新規開発した。補正精度は

2,400dpi で中高速機同等のカラーレジスト

レーション精度を達成した。

3.6 中間転写ベルトの蛇行(ウォーク)

制御技術の開発

4つのマーキングエンジンで形成された各色

のトナー画像は、回転駆動される中間転写ベル

ト上に順次転写されフルカラーの画像を形成す

るが、回転を繰り返すうちに、ベルトが用紙の

幅方向(主走査方向)に次第に移動する、所謂ベ

ルトの蛇行(ウォーク)が問題となる。ベルトを

用いる機構では常につきまとう課題であるが、主

走査方向の色ずれの原因となるばかりでなく、ベ

ルトが規定の位置から外れて破損する場合もあ

るため、高速な上位機種では、ベルト端面の数μ

m の挙動をセンサーで検出し、張架している

ロール間のアライメントを変化させて、蛇行方向

を能動的に修正する高額な技術を用いている。

コストに制限のある下位機種では、一般的に

ベルトの片側端部内面に設けたゴム製の凸リブ

を、ベルト張架用ロール側に備えた凹型プー

リーで受け止め、蛇行を強制的に凹幅内に収め

る技術を用いているが、蛇行量をゼロにする方

式ではない上に、傾斜地に機械を設置した場合

には、フレームが歪んでベルトを張架している

ロール間のアライメントずれを起こし、凹型

プーリーで抑えきれない蛇行量まで増大してベ

ルト破損を招く懸念がある。小型機になればな

るほど設置環境は多様化し、非水平平面上に設

置される機会が増えるため、小型軽量化を進め

る上では、新たな中間転写ベルトの蛇行制御技

術が必要となっていた。

本機においては、蛇行によるベルト端面の移

動を隣接させたプーリーに伝達し、上位機種と

同様に張架しているロール間のアライメントを

変化させて蛇行を極小化させる、小型機向けの

蛇行防止機構:LSBA(Leverage Self Belt

Aligner)技術を開発した。

本技術は2軸の中間転写ベルトユニットで、

ステアリングロールにプーリー、アーム、コイ

ルスプリングを加えたシンプルな部品で構成さ

れるが、ベルトが蛇行する方向を逆転させるよ

うに張架軸を傾けさせる動きにより、ベルト数

周で蛇行を抑えることを可能とした。以下、

LSBA の動作を具体的に示す(図 17)。

CONTROLLER

CPU

LPH Drive ASIC

LPH

図 17. LSBA 機構

LSBA Architecture

図 15. DocuPrint CP200 w の LPH 信号接続図

Schematic LPH circuit diagram of DocuPrint CP200 w

CONTROLLER

CPU 画像位置制御 ASIC

図 16. IReCT®概略図

IReCT® Diagram

色ずれ検知センサー

検査用パターン

LPH

画像位置制御 ASIC

図 14. DocuPrint P200 b の LPH 信号接続図

Schematic LPH circuit diagram of DocuPrint P200 b

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DocuPrint CP200 w/P200 b

富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 147

中間転写ベルトはあらかじめプーリー側に片

寄るように設計する。ベルトが片寄りするとき

に生じる端部への力①は、一端が固定された

アームで「てこの原理」を使って、シャフトを

押し下げる方向②に働きスプリングを押し下げ

る。その結果、このベルトが端部へ押す力とバ

ネの反発力がセルフバランスする角度にステア

リングロールの傾きを自動的に調整するため、

ベルトの蛇行移動が次第に減少し、最終的に蛇

行を解消する。

3.7 小型化のためのフレーム構成

3.7.1 背景

LPH を採用しマーキングエンジンユニット

を本体内固定方式にすることより、フレームの

機能をこれまでより簡略化し更なる小型、軽量

化を実現する構成とした。

従来のプリンターでは、定着/現像/給紙と

いったユニットが着脱可能となるように設計し

ていた(図 18)。そのため着脱ユニットの位置

決め、挿入ガイドといった機能を保持する空間

が必要不可欠であった。一方、感光体本体固定

方式では、プリンターの筐体構造から上記機能

を取り除く事により、最小限のフレーム構成に

することが可能となった。

3.7.2 課題

感光体本体固定方式による簡略フレームとし

て、両サイドのフレームを省略した(図 19)。

この構成では、解決すべき課題として次の3つ

があった。

① 搬送ロールの位置決め

従来の構成では、サイドフレームに各

ロールの位置決めがあり、フレームの精度

でロールアライメントが決まっていた。今

回は各ユニットにロールを持たせたため、

ロールアライメントがばらつきやすい。

② マシン剛性

従来はフレームに剛性を持たせることに

よって、画像形成部に歪みを生じさせないよ

うにしていたが、簡略フレーム構成ではフ

レームの剛性に頼らない構成が必要となる。

③ 駆動伝達経路

従来は、ギアの位置決め精度をフレーム

で確保し、そこに駆動ユニットを装着する

ことより、高精度な駆動伝達を実現してい

た。本機はサイドフレームがないため、駆

動ユニットを安定的に保持/位置決めする

構成が必要となる。

3.7.3 課題の解決方法

① 搬送ロールの位置決め

本機では、マーキングエンジンユニット

を基準に定着ロール、用紙搬送ロールの位

置が決まるように構成した。マーキングエ

ンジンユニットの転写ロール両端近傍に定

着ユニットと給紙ユニットの位置決めを配

置し、転写ロールに対して高精度に位置決

めを行った。また位置決め近傍で各ユニッ

トを締結することよって箱形状を形成し、

外力が掛かってもロール間のアライメント

変化が発生し難い構造とした(図 20)。

図 19. DocuPrint CP200 w のフレーム構成

Unique Frame Composition of DocuPrint CP200 w

図 18. 従来機種のフレーム構成

Traditional Frame Composition

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148 富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012

② マシン剛性

マーキングエンジンユニットに剛性を持

たせ、転写ロール両端近傍の2点と、転写

ロールとは反対側の1点を給紙ユニットに

固定する3点支持構造とし、歪みが伝わら

ないように構成した。また、マシン全体の

強度解析を行いマーキングエンジンユニッ

トの歪みを極力発生しないように各ユニッ

トの剛性を設計した(図 21、22)。給紙

ユニットはマーキングエンジンユニットよ

り剛性を弱くすることでマシンの歪みを吸

収する構造とした。

③ 駆動伝達経路

モーターを含め、駆動ユニットをマーキ

ングエンジンユニットに一体的に位置決め

/保持させることで、感光体/転写ベルト

といった画像形成系のロールについて、マ

シン歪みの影響を受けることなく高精度に

駆動する事が出来る。また感光体本体固定

方式によって感光体軸が固定されているた

め、従来方式では問題となっている感光体

と駆動ギアの相対位置変動が発生せず、バ

ンディング/カラーレジストレーションず

れを抑制した高画質が実現できる(図 23)。

モーターをマシンの中央部に配置し、そ

こから放射状に構成したギア列によって、

画像形成/用紙搬送に関わる全てのロー

ルを駆動している。感光体本体固定方式に

て生じた空間に効率的にギア列を配置す

ることにより、タンデムカラー機でありな

がら1モーター駆動を実現し、小型化に寄

与している(図 24)。

図 22. 剛性解析結果

Stiffness Analysis

Main Motor

転写ベルト

定着ロール

現像ロール

感光体

給紙ロール

転写ロール

レジストロール

図 24. 1モーター駆動レイアウト

Single Motor Transmission Layout

図 21. マーキングユニットの保持方法

Marking Unit Holding Method

固定部(1 箇所)固定部(両端 2 箇所)

マーキングユニット

駆動ユニットを一体に保持

図 23. 駆動ユニットの保持方法

Drive Unit Holding Methode

位置決め部 給紙ユニット

マーキングユニット

定着ユニット 用紙搬送ロール

転写ロール

図 20. ユニットの位置決めおよび固定方法

Unit Alignment

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DocuPrint CP200 w/P200 b

富士ゼロックス テクニカルレポート No.21 2012 149

3.7.4 結果

前述の構成により、前任の A4 カラータンデ

ム機より製品重量を 38%、体積を 52%削減す

ることに成功した。

4. 結び

以前は小型で低価格なカラーレーザープリン

ターと言えば、4回の作像を繰り返しフルカ

ラーの画像を得る4サイクル方式が主流であっ

たが、ここ数年市場では4連タンデム方式プリ

ンターの小型・低価格な製品も増加してきてい

る。DocuPrint CP200 w はその中でもいち

早く小型タンデム方式でデスクトップサイズを

実現した商品である。今後も、より高画質を求

めながら、更なる小型化・省エネルギー化・操

作性の向上を進め、安心・快適に使っていただ

ける商品を提供して、より多くのお客様に満足

いただけるように開発を進めていきたい。

5. 商標について

DELCIS®は、富士ゼロックス株式会社の登録

商標です。

IReCT®は、富士ゼロックス株式会社の登録商

標です。

その他、掲載されている会社名、製品名は、

各社の登録商標または商標です。

筆者紹介

平田 和弘 商品開発本部 第四商品開発部に所属

専門分野:電子工学、商品開発推進

須藤 真樹 デバイス開発本部 第二マーキング PF 開発部に所属

専門分野:画像形成機構設計

瀬戸 政則 デバイス開発本部 イメージング PF 開発部に所属

専門分野:画像形成機構設計

小松 伸 デバイス開発本部 デバイスシステム PF 開発部に所属

専門分野:機構設計