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はじめに
520人の犠牲者を出した「日本航空123便墜落事故」から早や30年が過ぎた。
テレビの前でニュース速報に釘付けとなり、固唾を飲んで見守っていたこと
を思い出す。
先日、ほぼ同年代の知人と“その話”をしていた時、知人が私に「ところで、
この事故の原因は何だったのか?」と聞いてきた。私は少し唖然となりながら「人
の記憶は時と共に忘れ去るものだ」「自分との関係性が遠いほど情報への関心
が低くなる」等 “々人間の情報の受け止め方・反応”について改めて考えさせられた。
安全に携わる者(安全管理者・安全衛生推進者、統括安全衛生責任者、安全
衛生責任者、所長、安全管理者、職長、班長etc)は「安全に関する情報」に
ついては、自社の災害情報のみでなく他社・他業界、一般社会、海外等の災害
についても幅広くアンテナを張り、情報を入手し安全対策の立案・実施に活か
す必要がある。
航空機事故では、日本航空123便墜落事故を上回る史上最大の航空機事故「ロ
ス・ロディオス空港ジャンボ機衝突事故」、旅客船事故では、「韓国旅客船セウ
ォル号沈没事故」、そして有名な「タイタニック号の悲劇」がある。その他に
も数多くの注意すべき事故・災害が過去に発生している。
これらの事故・災害が「なぜ起こり」「どのような結果となり」「対策はどう
したのか」等々これらの事故・災害から得られる“教訓”は多い。現場リーダ
ーの方々は、これらの事故・災害から学び今後の安全管理・安全教育・指導に
活かし再発防止を図らねばならない。
この冊子では、「災害事例を職場に活かすためのステップ」を紹介すると共
に「 6つの巨大事故・災害事例」からの“教訓・極意”を取り上げた。これら
の“教訓・極意”が、皆様の職場・現場の安全衛生管理の向上や災害防止等に
少しでもヒントになれば幸いである。
本冊子で取りあげた事故・災害については、多数の尊い人命が犠牲になっている。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表すると共に、私たちはこのことを決して無駄にすることなく今後の安全管理の向上に活かしていくことが大切である。
(注)� 事故・災害の原因等については諸説あるが、本冊子の内容については、参考文献(巻末参照)及び著者が収集した新聞記事等からの情報に基づき、解説している。
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⑴ 安全第一の原則 …………………………………………………………………�⑵ 災害リスク・ゼロの原則 ………………………………………………………�⑶ 全員参加(みんなで)の原則 …………………………………………………�⑷ 安全先取りの原則 ………………………………………………………………�⑸ 知識・知恵・実行の教育の原則 …………………………………………………�⑹ 早期発見・即是正の原則 ………………………………………………………�
⑴ 事故・災害事例に学ぶことはなぜ必要か? …………………………………�⑵ 災害事例を職場に活かすためのステップ! …………………………………�
❶ 「日本航空123便墜落事故」から学ぶ! ………………………………………�❷ 「東海村JCO臨界事故」から学ぶ! ………………………………………�❸ 「ロス・ロディオス空港ジャンボ機衝突事故」から学ぶ! ………………�❹ 「タイタニック号の悲劇」から学ぶ! ………………………………………�❺ 「韓国旅客船セウォル号沈没事故」から学ぶ! ……………………………�❻ 「東日本大震災“釜石の奇跡”」から学ぶ! …………………………………�
(注�)事故・災害の表現については災害発生のプロセスから、安全関係分野では正常→異常→事故(人が関係しない)→災害(人が被害に遭う)と明確に区分されているが、本冊子では一般的に表記されている「〇〇〇事故」のまま記載した。
Ⅰ 安全確保のための 6原則!3
4
5
6
7
8
Ⅱ 災害事例を職場に活かす!9
10
Ⅲ 巨大事故・災害に学ぶ安全の極意!12
15
18
21
25
29
日本における社会的影響の大きい事故・災害一覧
目次
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安全確保のための 6原則!Ⅰ
安全を確保するためには色々な考え方や様々な手法があるが、特に重要なのは次の6原則である。
⑴ 安全第一の原則
トップから現場の第一線の作業員一人ひとりまで「人命最優先」「安全第一」の考え方を実践せねばならない。企業・組織・グループの体質、風土、文化が変わらない限り真の安全第一は達成できない。トップ以下全員が日々血の出るような努力を 5~ 10年続けて、初めて体質改善、安全の文化・風土が定着できるのだ。言葉や掛け声だけの安全第一ではなく“日々実践する安全第一”を目指さねばならない。
⑴ 安全第一の原則
⑵ 災害リスク・ゼロの原則
⑶ 全員参加の原則
⑷ 安全先取りの原則
⑸ 知識・知恵・実行の教育の原則
⑹ 早期発見・即是正の原則
Ⅰ 安全確保のための 6原則!
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⑵ 災害リスク・ゼロの原則
経済や経営の分野では「パレート図で表された“大きな山”の80%・90%を対象として攻めろ!」と言われ、これは効率的な手法である。しかし安全の世界ではこのような考え方は許されない。「多くの仕事をしているので死亡災害や休業災害が少し出ても仕方がない」は通用しない。例えば、ビル建設の現場で「外部足場の手摺は ₁万本もあるので、 ₁本くらい抜けていても大丈夫だ」とは言えない。そこから人が墜落すれば死亡災害になるからだ。安全の目指すべき目標は災害ゼロ・リスクゼロなのだ。
災害ゼロ・リスクゼロを目指さなければならない!
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安全確保のための 6原則!Ⅰ
⑶ 全員参加(みんなで)の原則
安全確保のためには、もちろんトップの強い意志と推進力が不可欠であるが、それだけではその組織が大きければ大きいほど安全対策はうまくいかなくなり、災害が発生する。どんなに優れたトップであっても日々刻々と変化する現場の全てを把握し対処することは不可能である。「トップダウン」だけでなく「ボトムアップ」が絶対に不可欠だ。 そのためには、現場に直接携わっている多くの人たちの“目と積極的協力”が必要となる。 全員参加し、みんなでやろう! という気概こそが、強力なボトムアップとなり災害防止に非常に有効となるのだ。
全員参加! みんなでやるぞ!
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⑷ 安全先取りの原則
安全を先取りし「危険領域を最小化すること」が大切だ。「リスクそのものをなくせないか」の考え方で設備・物・工法を検討し安全を先取りする。まず安全設備・施策を最優先で計画・実施した後にやむを得ぬケースとして管理的対策、個人保護具の使用を実施することだ。また、現場においては“安全先取り”の後、残された危険領域(場所・作業etc)を日々把握し、管理し全員に周知することも大切である。 それらをしないで、いざその場で安全対策を実施しようとしても手段も方法も限界があり、小手先の対策となり事故につながることになる。安全は“後手”ではなく“先取り”すべきだ。
①リスクの除却…危険な作業の廃止・変更、より危険性または有害性の低い材料への代替等
②リスクの隔離…工学的対策(インターロック、局所排気装置の設置等)
③リスクの管理…管理的対策(マニュアルの整備、立入禁止措置、教育、訓練、ばく露管理等)
④リスクの防御…個人用保護具の使用
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リスクをなくし、「安全先取り」を実践せよ!
<リスク低減の優先順位>
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安全確保のための 6原則!Ⅰ
⑸ 知識・知恵・実行の教育の原則
災害を起こした人に「なぜ不安全行動をしたのか」とのアンケート結果を見ると、実に67%の人が「正しい作業方法を知らなかった」と回答している。知らないから不安全行動をしてしまうのだ。安全はまず、知ること(知識)が大切である。 しかし、知るだけでは実行できない。安全について知ったうえで、自分の仕事で応用できる知恵があって初めて、その知識は実行可能となる。さらに、自然と実践・実行するためには教育・訓練が必要である。知識・知恵・実行の 3点セットの教育訓練を繰り返すことによってのみ、安全行動は本当に実践できるようになるのである。
正しい方法を知らない人が67%もいる!知っていてもやらない人が26%もいるのだ!
安全行動は「知る」ことから始まる!しかし、「知る」だけでは行動につながらない!知識・知恵・実行を目指した繰り返しの教育訓練こそが身につき、習慣化し、実践の場で行動につながる!