Transcript

【事前予測との比較】多くの場合高齢者は、口頭・文書のみの説明では、医学的処置について十分に理解することは困難である。

写真を用いて視覚情報を与えることは、内容理解と意思決定の円滑化に有用であった。

【計画の実行】iPadを使用し、写真入りスライドで事前指示の項目や処置の実際を説明。急変時:心臓マッサージ、除細動、人工呼吸器経口摂取不能:経鼻栄養、胃瘻、中心静脈栄養

青木拓也

日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所

高齢外来患者や在宅患者のケアに携わる家庭医にとって、事前指示(Advanced Directive)は患者の意思決定を支援する上で重要な取り組みの一つである。しかし実際の臨床

現場においては、対象が高齢者であることが多いため内容について説明・理解が困難であったり、患者が表明した事前指示を本人や医療者がどのように管理していくべきか等課題は多い。今回当院において質改善の代表的なマネジメント手法であるPDSA modelを利用し、事前指示に関する質改善を実施したためその内容を報告する。

NEXT STEP

医療機関における管理とは別に、患者本人がどのように事前指示書の管理を行うべきかは課題の一つである。必要時に家族や第三者がアクセスしやすい環境を整えるための質改善も行っていく必要がある。参考文献 1) Cheryl Levitt, Linda Hilts. Quality Book of Tools; 2010

2) H-M Sass, R Kimura et al. Advance Directives and Surrogate Decision Making in Health Care. United

States, Germany and Japan. Johns Hopkins University Press; 1998

考察事前指示に関するPDSA cycleを回すことで、事前指示の表明と管理という2つの側面についての質改善を実施した。

事前指示は重要な取り組みであるが、一方で終末期からの死は誰しもの想定を超える事態であるため、医療職・介護職や家族は事前指示書の内容以外にも、患者本人の意向や価値観を知っておくことが望ましいと考えられる。

【目標】事前指示表明率の向上

【対象】80歳以上の担当定期外来患者・訪問診療患者

【予測】対象者は高齢であるため、文書や口頭説明のみでは事前指示についての理解が困難である。

【計画】急変時対応や経口摂取不能時の対応を、写真入りスライドを提示しながら説明する。

【実行により生じた変化】事前指示表明率(事前指示書記入率)実行前12%(2/17人)⇒実行後88%(15/17人)患者からの感想例「写真で見ると処置がすぐに分かる」

「写真を見て、言葉でイメージしていた処置の内容が、実は自分の勘違いと気づいた」

【次のサイクル】患者が表明した事前指示を、どのように活用していくのが適切であるか。

Plan

DoStudy

Act

【目標】事前指示を有効活用するための質改善

【対象】事前指示を表明した患者

【予測】介護職も事前指示の共有を望んでいる.

【計画】①患者急変など必要時に、スタッフが事前指示にアクセスしやすくする②介護職とも事前指示を共有する。

【実行により生じた変化】①緊急時にスタッフが事前指示の有無とその内容を迅速に確認できるようになった。

②院内だけでなく、院外の介護職と事前指示の情報共有を開始した。

【次のサイクル】患者側は記入した事前指示書をどのように管理すべきか

【計画の実行】①事前指示書保管場所をアクセスしやすい場所に変更し、全スタッフで共有。事前指示の有無を電子カルテに明記。

②患者の了承を得て、ケア・マネージャーと事前指示について情報共有。

【事前予測との比較】ケア・マネージャーにアンケート調査を行った結果、事前指示の共有を望む意見が大多数であった。

(理由:長期的なケア・プランに影響する、利用者の死生観も知った上で関わっていきたい等)

Plan

DoStudy

Act

「事前指示」(Advance Directive)とは「Living Willの表示」と「持続的権限代行者の指名」を併せて行うもの・Living Will:終末期における意識障害や認知症などで自己決定の能力を失った場合に、自分の選ひたい・選ひたくない治療についてあらかじめ意思を表明しておくこと。・権限代行者の指名:自分に代わり意思を表明してくれる代理者を決めておくこと。

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