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Page 1: 創刊号 - akl.co.jp · ながらオブジェクト表面をドラッグしてく ださい。 そうすると、右図④のようにバウンダリー ボックスではなく、オブジェクトの表面に

創刊号

知ってると便利なテクニック集

解析境界面に外部との 熱交換条件を設定するには

弊社ホームページ上で、FlowDesigner操作について問い合わせの多い項目について解説を掲載しているのが「FAQ」です。その中でも特にアクセス数の多いものを取り上げ、その概要を特集します。

流体解析のソフトは難しい…専門知識がないと使えない…と思われがちですが、FlowDesigner は初めて流体解析を操作する方にも、わかりやすい操作性で高い評価を頂いてます。解析をする上で「この解析はどのような設定をすればよいのだろう」「もっとモデリングが簡単にできないかな」などの初歩的な疑問について、また流体解析の知識を深められるようなアカデミックな内容を月1回定期的に紹介します。

解析空間の壁(解析境界面)は何も設定しなければ、気流も熱も通さない断熱の壁として扱われます。 その壁に外部との熱のやりとりを設定するには、「発生パネル」を使用します。解析の目的、モデリングの方法によって、「発生パネル」の温度条件の設定方法も変わってきます。

詳細については弊社ホームページFAQをご覧ください。

http://www.akl.co.jp/faq/phps/callpage.php?id=74

掲載予告

5月号 オブジェクト管理①(分類)

6月号 オブジェクト管理②(タグ)

7月号オブジェクト管理③(レイヤ)

8月号 結果表示をカスタマイズ

9月号 結果表示にバリエーションを

オブジェクトの表面に パネルを張り付ける

FlowDesignerの操作で本紙編集部が個人的に感じた 便利なワザ、知ってほしいテクニックをピックアップ! 使いこなせればモデリングの効率アップ、または結果表示のバリエーションの幅が広がるはずです

吹出口、開口部、発生パネルなど、オブジェクトの表面にパネルを作成したい場合があります。それらを配置するときにオブジェクトの表面をドラッグする事で、簡単にその表面にパネルを配置することができます。座標軸に対し斜めに配置されているパネルに対しても、この操作を行うことができます。

<グループ化されたオブジェクト>

例えば、右図①のようなグループ化されたオブジェクトについて同様の操作をします。 右図②のように、一見うまくできたかのように見えますが、実際は右図③のように配置されています。 これは「グループ化されたオブジェクトの外形を囲う直方体(バウンダリーボックス)」上に配置されるためです。 このようなときには、『Ctrlキー』を押しながらオブジェクト表面をドラッグしてください。 そうすると、右図④のようにバウンダリーボックスではなく、オブジェクトの表面にパネルが配置できます。

バウンダリーボックスがオブジェクト面と接していない場合は、この操作を使うチャンスです。ぜひお試しください。

外気温と固体表面 までの熱伝達率

外気温と熱通過率 外気温と内側表面 までの熱通過率

熱物性オブジェクトとセットで使用して、壁の厚み・蓄熱・放熱を考慮することができる。壁表面までの熱伝達率を設定します。

発生パネル単体で使用、壁を作成する必要なし。 壁と解析領域内の熱伝達を厳密に付近の気流場に応じたものにしたい場合に使用します。

パネルでの設定イメージ

発生パネル単体で使用、壁を作成する必要なし。 壁と解析領域内の熱伝達を含めた熱通過率を設定した場合に使用します。

パネルでの設定イメージ パネルでの設定イメージ

次号は「解析値の数値出力」についてお伝えします。

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FlowDesigner の解析事例

キッチン快適性指標解析

目的

ケーススタディ

解析モデル

設定条件

キッチンは調理器からの発熱、発湿による温度湿度上昇があり、快適性を維持することが難しい環境の1つである。ここでは、換気条件によって、人が感じる快適性がどのように変化するのかを見る。

キッチン内のガス調理器に発熱、発湿を設定する。 その状態で換気扇を動かせば、熱せられた空気の拡散を防ぐ事ができるが、効果的に換気を行うには新鮮な空気が必要になる。 ここでは、窓を開放して積極的に空気を取り込むモデルと、窓を閉ざして空気の流入を抑えたモデルを比べ、快適性分布を視覚的に確認する。

快適性…その温熱環境に満足を示す状態と定義されて いる。代謝量(met)と着衣量(clo)を考慮した 状態での体感温度。

解析領域として6.4m(縦)×5m(横)×2,5m(高さ)を設定し、ダイニングキッチンとする。 ガス機器から発熱条件を設定。 キッチンの横とダイニングの横に窓を設置。

排気ダクト :P-Q特性により風速を設定 窓 :2箇所 外気温度 :23℃ コンロ発熱 :3600W 着衣量(clo) :軽装(0.4) 代謝量(met) :軽作業(2.4)

解析結果

床面から1.1mの所の快適性を観察する。

外気を取り入れるモデル

外気の流入を抑えたモデル

SET*[℃] 温冷感 生理的状態

>37.5 非常に暑い、非常に不快 体温調整ができない

34.5~37.5 暑い、許容できない おびただしい発汗

30.0~34.5 暖かい、不快 発汗

25.6~30.0 やや暖かい、やや不快 軽い発汗、皮膚血管拡張

22.2~25.6 快適、許容できる 中性

17.5~22.2 やや涼しい、やや不快 皮膚血管収縮

14.5~17.5 涼しい、許容できない 軽い体冷却

10.0~14.5 寒い、非常に不快 ふるえ

解析結果の評価

室内に積極的に空気を取り入れたモデルでは室内全体にわたり、快適性が保たれている。 それに対し、外気の流入を抑えたモデルでは、キッチンでの体感温度が上がっており、快適性が損なわれている。シミュレーションの結果、外部条件の変化によって状況は変わるものの、効率的な換気が快適な作業空間を保つ要因になることがわかった。

FlowDesignerは様々な分野の解析に力を発揮することができるツールです。 実際にどのような目的の解析で、モデルはどのように作成されているか、どのような結果出たか、 簡単ではありますが、解析事例を紹介します。 今後の解析の参考になるのではないでしょうか。

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桃瀬先生の流体解析講座

< 熱・流体とは >

みなさん「熱・流体」という言葉から何を連想しますか。

非常にありふれた言葉ですので、さまざまなイメージが思い浮かぶことと思いま

す。確かに、人類が火を手にしたときから現在に至るまで、熱や流体を有効に使

うことは食料を得ることと同様人類の最大の関心事でした。そして現在、人類は

熱や流体を利用して暖をとることはもとより、ものを動かしたり冷やすことさえ

可能にしました。われわれは日ごろこれらの恩恵を享受していますが、色も匂い

もない熱や流体とはいったい何ものでしょうか。

< 熱・流体の利用価値 >

実は、人類が熱や流体の本性を暴き出したのはそれほど古い話ではなく、高々

150年ほど前、19世紀半ば頃です。そして、一旦その本性がわかりますと、それ

まで経験的または感覚的に利用していた熱や流体が、その法則に基づいてさまざ

まな形で利用されるようになりました。自動車や航空機のエンジン、冷蔵庫やエ

アコン、さらに発電所などはすべてこれら法則に基づいて設計された産物です。

さらに、直接熱や流体と関係なさそうな技術でも、その技術を極めようとすると

最後には必ずこれらの問題が立ちはだかります。よって、最先端の技術開発に従

事する研究者や技術者にとって、熱と流体の性質を理解することは必須事項であ

ると言えます。また、科学や技術に直接関係のない熱や流体の利用者にとっても、

エネルギー危機や環境破壊が叫ばれる昨今、地球を守り後世に汚点を残さないた

めにも、熱や流体の本性を理解することはますます重要になることと思われます。

そこで本連載では、まず熱の常識と非常識の史的変遷を振り返りながら、人類が

たどりついた熱力学的法則をお話しし、この法則を現実に利用する際必要となる

熱・流体力学へと話を進めようと思います。

1.はじめに

掲載予告

次号 蒸気機関とカルノー

桃瀬 一成 (工学博士)

現アドバンスドナレッジ研究所の取締役・技術フェロー。FlowDesignerに搭載されている逆解析機能の開発者。元大阪大学大学院基礎工学研究科の准教授で2011年よりアドバンスドナレッジ研究所の専任開発に従事。

FlowDesignerは直観的な操作とわかりやすい結果表示で、流体解析の専門知識

がない方にも『簡単に解析ができる』と高い評価を受けていますが、大手ゼネコ

ン・大学の研究所でも導入されるほど専門的なニーズにも応えられる顔を持って

います。解析ツールとして、より理解を深めて頂くため、興味を持って頂くため

に、理論的な背景・仕組みについて紹介します。

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大規模アリーナ施設の気流・温度分布解析

Youtube 解析例アニメーション公開中

( http://www.akl.co.jp/casestudy/movie.php)

<発行>

Vol.001 2012年4月号 5分でわかる FlowDesigner

ユーザー向け資料なのでセミナー案内は 「操作体験セミナー」ではなく、中級セミナー のほうがよいか。

メッシュ分割を制す者は CFD を制すっ!

お知らせ

モデルを詳細に作りこんでも、メッシュ分割によっては計算の精度に差が出たり、時にはエラーメッセージが表示されたり、意図しない結果が出てしまったりします。 メッシュ分割は、最初に流体解析ソフトが非常に難しく感じる1つの原因となっているかもしれません。逆に言えば、メッシュ分割さえ理解できれば、解析モデルを作成する際の注意点などが見えてくるといっても過言ではありません。メッシュ分割の仕組み、注意点などを少しずつ解説します。

メッシュの品質を考える

FlowDesignerでは、流体の基礎方程式を離散化する手法として、直交系有限体積法を採用しています。

メッシュ分割とは

いきなり難しい言葉がでてきてしまいましたが、簡単に言えば、解析空間を小さな直方体で分割して、その小さな直方体ごとに物理量の計算を行います。その小さな直方体を「要素」といい、要素に分割するための直線を「メッシュ」といいます。

隣り合う要素に出入りする物理量の収支を計算する。

メッシュ分割を細かくすれば詳細に形状を認識でき、精度は上がりますが、計算負荷も大きくなります。 では、限られた数のメッシュで解析モデルに対してどのように分割すればよいのでしょうか。(次号につづく)

メッシュでモデルを分割し、解析用に形状を認識し直してから、計算を行います。(このモデル形状はメッシュ編集画面の「形状判定の確認」で見ることができます) 解析をする上でこの形状がしっかりとれるかが重要です。

メッシュの分割数と結果の比較

各記事の掲載予告について、内容を変更をすることがあります。ご了承ください。 また冒頭にもあるように、本紙はユーザー様に流体解析、FlowDesignerにより親しんで頂くため、より知識を深めて頂くために発行しています。 掲載内容についてご意見・ご要望等お待ちしております。また本紙の増刷ご希望の方・ご不用な方は、お手数ですが弊社までご連絡ください。よろしくお願い致します。 (担当:黒岩)

メッシュの分割数によってモデル形状の判定も変わり、解析結果に差が表れます。 一般的に細かくメッシュ分割をすれば、計算精度は高まります。

メッシュ数 形状判定 解析結果 計算時間

10,000 7 秒

1,000,000 26 分

セミナーのお知らせ

◆体験セミナー◆ 4/11(満員)、5/9 、 6/13 、7/11 ◆中級セミナー◆ 4/18 、 5/23 、 6/20 、 7/18

リリースのお知らせ

逆解析で簡単に最適解を導きだせる最上位版の Enterprise版を5月リリース予定。

※計算時間はマシンの性能、状況によって変わります。

イベントのお知らせ

4月24日(火) 大塚商会主催のセミナー『IFCで実現する設備設計の「見せる化」』にてFlowDesigner活用方法を紹介致します。詳しくは弊社ホームページを。


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