ひきこもりにやさしい地域を考える
ひきこもり支援は、社会全体の課題- 総社市におけるひきこもり支援の取り組み-
社会福祉法人 総社市社会福祉協議会
事務局次長 中 井 俊 雄
ひきこもり支援員 佐 々 木 恵
令和2年2月8日(土)
第2回 nest企画イベント
人口 ★69,309人
世帯 ★28,220世帯
高齢者人口 ★19,392人
高齢化率 ★27.98%
生活保護世帯 302世帯
ひとり親世帯 602世帯
手帳保持者身体:2,231人療育: 499人精神: 343人
町内(自治)会 390団体
民生児童委員 162人
福祉委員 589人
岡山県総社市の概要
ゆるキャラグランプリ
2016年全国第3位
~総社市第2次総合計画~
全国屈指の福祉文化先駆都市2
平成31年3月末現在
★令和元年12月末現在
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アルミ工場の爆発と床上浸水で大きな被害
・死者4人(関連死6人)・重傷2人・全壊184棟・大規模半壊329棟・半壊373棟・一部破損523棟・床下浸水238棟・解体件数 193件
西日本豪雨災害 (平成30年7月6日~7日)
H21~/障がい者基幹相談支援センター
H25~/権利擁護センター“しえん”
H26~/生活困窮支援センター
H24~/障がい者千人雇用センター延相談件数22,703件(2018年度)
17,154件(2017年度)
15,865件(2016年度)
横断的な総合相談支援体制の確立
H28~/そうじゃ60歳からの人生設計所
H29~/ひきこもり支援センター
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H30~/復興支援センター
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■小地域ケア会議に投げかけてみよう!
・地域とのつながりがない世帯・・・・結局、孤立状態が続くだけ・・・
生活環境の整備はあくまで第一歩!
既存の社会資源として、地区社協が行う給食サービスは一人暮らし高齢者を対象にしていたが、自治会に投げかけ「その他、給食サービスが必要な世帯」という枠を設け、配食を可能にし、活用した。配食者について、自治会組織が確立されていたので、自治会を通じて福祉委員を依頼し、配食と共に地域の見守りや相談役を依頼した。
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(公営住宅の現状)
・世帯:145
・人口:220人(男性:85人/女性:135人)
・高齢化率:44.8%・生活保護世帯:22世帯(15%)
福祉委員が6名誕生!
給食サービスの配食(35名)が
再スタート(地区社協で実施)
ミニケア会議の開催
・この団地には民生委員も福祉委員もいない・〇〇な方もいる!高齢化も心配・・・・何とかしないと!
生活困窮者支援を通じた地域づくり
町内会で検討
開 催:定期的(2か月毎に)
内 容:①県営住宅に住んでいる方についての検討
②会議で検討した方について状況を確認
③新たなニーズの発見!!
④状況に応じて社会資源へつなぐ
成 果:★民生委員児童委員の誕生!●福祉委員活動の充実!
●ニーズキャッチ機能と
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生活困窮者支援を通じた地域づくり
県営住宅ミニケア会議の開催
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地域住民と一緒に要援護者の支援を考える
地域住民として受け入れに葛藤があったが、同意の範囲で世帯の状況を伝え合意形成を促した。近隣住民への情報提供について同意を得て、地域の見守りにつなげた。地域包括支援センター等と協働し、約150戸の公営集合住宅という地域性を生かし、住宅内でのミニケア会議を企画実施した。
配食者について、自治会組織が確立されていたので、自治会を通じて福祉委員を依頼し、配食と共に地域の見守りや相談役を依頼した。
地域の方や関係機関の支援を受けて、地域で
安心して暮らせないだろうか?
総社市内にいったい何人?
今までは、家族や個人の課題?
相談機関や地域から、十分な支援ができていなかった?
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社会の一員として、活躍できないだろうか?
総社市におけるひきこもりの実態は?
目 的:市内のひきこもりの実態把握及び支援方策等を検討
⇒ひきこもり支援は、社会全体の課題であることを確認
構成委員:市民生委員協議会、市福祉委員協議会、市地域自立支援協議会、
生活困窮支援センター協議会、若者サポートステーション、
市保健福祉部、市教育委員会、市社会福祉協議会、備中保健所、
ハローワーク、学識経験者
事業実施:生活困窮者自立支援事業
岡山県社会福祉協議会助成事業(市町村社協活動活性化支援事業度)
ひきこもり支援等検討委員会の設置(H27.8月)
【総社市におけるひきこもりの定義を決定】
「中学校卒業後であって、
おおむね6か月間以上
社会から孤立している状態」10
市や県へ働きかけるとともに、事務局内で協議を重ね、委員として、市役所の全関係課長、地域代表、関係機関の参画を得ることができた。
民生委員・児童委員(161人)と福祉委員(573人)を対象に2回開催
◇第1回研修会(1月7日)
・・・194人参加
◇第2回研修会(1月9日)
・・・ 94人参加
合計:288名参加
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ひきこもり支援を考える研修会の開催
民生委員、福祉委員に委員会での協議の経緯、これからの取り組み予定等について説明、報告し、「ひきこもり支援」を本格的に始めることを知っていただこうと考えた。
市内17全地区で開催:最終的に207人の情報
【ひきこもり支援の懇談会】
①ひきこもりの定義について共通認識を図る
②ひきこもりの方の具体事例を共有する
③情報提供カードを作成する
④市内全域17地区で開催予定
【実数・実態(状態像)の把握】
①個人の特定をしない
→個人情報に配慮した調査
→氏名や年齢等は記入しない
②本人の同意がある
→氏名や年齢、生年月日等記入→すでに支援を受けている方
民生委員・福祉委員
ひきこもり支援を考える地区懇談会
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開催に抵抗のある地域もあったが、地道な説得の成果もあり、9か月間かけて全地区での実施ができることとなった。調査終了後は、個人が特定されない形で、統計的に処理し委員会に報告するとともに、市内全戸に配布の社協だよりで特集記事として連載し、市民意識の変化を促した。
懇談会であげられたケース
207人
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ひきこもり懇談会から見えてきた実態
・総社市内のひきこもり
平均 0.30%・総社市内のひきこもり
地区別 0.08%
~0.87%
・地区によって、かなりの差がある。
・かなり詳しく実態を把握されている地域がある。
①本人・家族
・誰に相談していいのか分からない
・誰にも関わってほしくない
・どうしていいのか分からない
高年齢化長期化!
ふたつの大きな壁
②地域住民・知人
・分かってはいるけど、話題にできない
・家族から触れてほしくないといわれる
・どう関わっていいのか分からない
今まで「ひきこもり」という課題は!最も難しい、閉塞した福祉課題のひとつ
14ひきこもり支援を地域福祉の課題として!
「社協だより」でひきこもり支援の特集・連載(全戸に配布)
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ひきこもり支援について市民の理解を!
市内には、ひきこもり状態の方が少なくとも207人
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ひきこもりの実態➡総社市の施策へ!
・幸福追求権(憲法第13条)の保障を前提として
・就労し、所得を得て、地域消費を支え、納税者に⇒経済の活性化・生きがいを見つけ、地域コミュニティの主役に⇒地域の活性化
総社市の“重点課題”と捉え
社会へ一歩踏み出すための体制を整備
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全国屈指福祉会議
2015年12月、福祉制度のはざまで困っている人を支え、寄り添えるまちを目指し、支援を必要としている全ての市民が安心して暮らせるまちづくりのため、総社市独自の福祉政策を検討・決定する、全国屈指福祉会議を設置。
• 高齢者支援部会(H27~)• 医療体制整備部会(H27~)• 待機児童ゼロ部会(H27~)• 発達障がい児支援部会(H27~)• 障がい者支援部会(H29~)• ひきこもり支援部会(H29~)• 子ども虐待ゼロ部会(H30~)
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全国屈指福祉会議
基本理念
– 困っている仲間を支えよう!– 子どもと仲間を増やそう!– 仲間と力を合わせよう!
基本計画
– だれもが住みたくなる総社•子育て•社会保障(高齢者・障がい者など)•住宅・生活基盤•移住・定住促進•防災・消防
– だれもが働きたくなる総社•雇用•農林業•商工業・物流
– だれもが学びたくなる総社•学校・幼児教育•家庭教育•スポーツ・文化・生涯学習
– だれもが訪れたくなる総社•観光•都市・社会基盤•自然・環境
– だれもが集いたくなる総社•市民参加•広域連携•市役所 19
平成28年3月策定
第2次総社市総合計画「全国屈指の福祉文化先駆都市」
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総合的な地域の支援の仕組み
①早期発見(見守り)機能
②早期対応(支援)機能
③ネットワーク機能
④専門的支援機能
⑤社会資源開発機能
⑥地域づくり・福祉教育機能
※美作大学教授 小坂田 稔 氏 参照
☆地域包括ケアシステム6つの機能
総社市地域包括ケア会議で検討
総社市地域包括ケア
システム構想図
ワンストップ機能
〇専門の相談員が対応!・2人の専任相談員
(社会福祉士・精神保健福祉士)
・電話、メール、訪問での相談
⇒100人の社会参加
〇ひきこもりサポーターの養成・理解ある市民が支援
⇒毎年40人のサポーター
〇居場所の創設・気軽に立ち寄れる場所
⇒平成30年2月23日設立
市町村で設置は、全国でも例のないセンター
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ひきこもり支援センター「ワンタッチ」の誕生!
●実相談者数242人・男177人(73.1%)女64人(26.4%)不明1人(0.4%)
・初回相談者:本人23件、家族79件、支援者88件、民生委員33件、その他19件
・本人接触あり 86件(対面74件、電話9件、メール3件)
・家族接触のみ 91件
●延相談件数 6,401件・訪問1,372件 ・来所2,500件
・電話2,117件 ・e-mail 他412件
●社会参加者数33人(※内訳は延人数)
・定期的居場所利用(8人)・ボランティア体験(特養5ヶ所5人、介護予防拠点施設1人、地域の農園1人)
・地区社協行事への参加(1人)・進学(4人)・復学(1人)・就労(12人)・短期就労(4人)・福祉的就労(3人)・内職(2人)・イベント出店(2人)
37 37 3531
19
8 10
178
17
14
3
4 1
0
20
40
60
10~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~ 不明
対象者の年齢層
男性 女性
ひきこもり支援センターの相談支援状況(平成29年4月~令和元年12月)
23
24
総社市のひきこもり調査・相談・推計数
6
18
44 42 32
20 12 13
5
7 3
3
2 49
34
32 33
16
7
2 6
30
144
120 119
112
79
0
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100
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160
0
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120
140
160
10代 20代 30代 40代 50代 60代 70以上 不明
総社市のひきこもり者数
調査 重複 相談実績 推計数
令和元年10月31日現在
ひきこもりに対する理解、ひきこもりの方やその家族の支え手居場所づくり等のサポーターを養成することを目的に開催
全5回講座・毎年度40人目標・多様な参加者(本人・家族・民生委員・福祉委員・ボランティア・大学生など)
「ひきこもりへの理解」「自分たちにできること」
【講師】NPO法人代表、大学教授(精神科医)、教育委員会、保健所、市、社協等の職員
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ひきこもりサポーター養成講座
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活動内容の話しあいをしたり…
ひきこもりサポーターの会「ほっともの会」設立
ほっとタッチ(居場所)で当事者と大切な時間を共有…
ひきこもりサポーター登録者77人・サポーター養成講座受講者169人/4年間・平成30年7月1日設立
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ひきこもりサポーター
体験型居場所づくり(ジャガイモ堀り)
たくさん収穫できました♪
相談支援で関わっている事例からイメージした模擬「居場所」を当事者、専門職、サポーターを交えて企画実施〇趣味活動ゲーム、音楽、読書、芸術
〇体験活動ジャガイモ堀り、卓球、収穫・調理、地域行事
〇行事・イベント映画鑑賞、ハロウィン、クリスマス会、年賀状・絵手紙書き、書初め、初詣、男子会・女子会
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「居場所」“ほっとタッチ”開設
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ひきこもり家族会「ほっとタッチの会」設立
・平成30年8月16日設立・毎月第3木曜日13:00~15:00
・情報交換や親睦・サービス等の情報交換・勉強会や研修会など・年会費1,000円
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めざすのは、社会参加!
〈社会参加の定義〉
自分の意思で、おおむね6ヶ月間以上家族以外の
第三者と交流が継続している状態。
【例えば】
・居場所(ほっとタッチ)利用、行事型居場所参加
・ボランティア体験
(福祉施設・地域の施設や農園など)
・地区社協行事への参加(行事や清掃活動
・進学、復学
・短期就労、福祉的就労、内職
・就労(アルバイト、パート、正規雇用など)
玉ねぎの収穫体験
今までの取り組みの成果と課題
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〇成果・本人と接触できた3割の方が社会参加につながった・ボランティアとして受け入れる施設が増えた・ひきこもりサポーターが77人になった・家族会が結成され、定着してきている・ひきこもり支援についての理解・関心が高まった
〇課題・まだ相談につながっていない当事者が多くいる・居場所を利用する方が限られている・就労についての課題が多くある・新しい就労についての資源の創出
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ひきこもり支援・総社のあゆみ 2018
ひきこもりサポーター養成テキスト
販売価格
1200円(税抜)
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全国ひきこもり支援サミット・フォーラム in そうじゃ開催 8/26
○ひきこもりの実態調査・地区座談会の開催(住民意識啓発)・実態調査の実施と結果の公表
○検討委員会の設置・ひきこもりの定義と理念を明確化・ひきこもり支援のネットワークの形成・ひきこもり支援施策の創設
○住民の理解協力・住民の関心・理解を広げる・ひきこもりサポーター養成
○行政の施策化・行政の重要事業として施策化、予算化
○ワンストップ窓口の設置・ひきこもり支援専門の窓口の設置・専門職の配置(社会福祉士、臨床心理士など) 35
ひきこもり支援を行うためには!