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物理学Ⅰ- 第 5 回 -
前回の復習
ニュートンの第二法則と第三法則
作用・反作用の関係と物体の質量中心
ニュートンの法則の応用
運動の原因を考える場合
力によりどのような運動が起こるかを考える場合
日常の現象で働く力として摩擦力と空気抵抗の例
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今日の内容
第4章 ニュートンの法則の応用
2.空気抵抗(復習)
3.相対運動と慣性力(第2章の繰越分も含む)
第5章 仕事とエネルギー
1.イントロダクション
§3 日常の現象で働く力と運動(続き)
第4章 ニュートンの法則の応用
☆空気抵抗 (流体の抗力)
物体の運動方向とは反対向きに働くブレーキ
2種類の抗力
圧力抵抗(慣性抵抗)
物体のスピードの2乗と断面積に比例
粘性抵抗(摩擦抵抗)
物体のスピードと周長に比例4
簡単な場合 鉛直方向の落下
圧力抵抗が無視できる場合
粘性抵抗が無視できる場合
下方を正に取る
いずれの場合もスピードが上がると加速度0
⇒ 微分方程式を解く問題 意欲ある人は自習
最終速度
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§4 相対運動と慣性力(2-7、4-14,15,17,18)自然界の現象は人間が見てなくても起こる
⇒基本法則は観測しなくても常に成立しているはず?
しかし、法則を記述しているのは観測者
自然現象を観測して基本法則は見出されている
誰が観測しても成り立つなら普遍化可能と思われるが?
例 運動方程式
加速度・・・ある座標系での記述に基づく
物体の位置の変化率の変化率
座標系の原点にいる観測者から見た記述に相当
札幌駅を原点・・・地球は自転、公転していることを考えると
特殊な座標系を取っているように思える 6
☆誰にとっても運動方程式は成り立つか?
答 No!
例 床が滑らか(摩擦なし)な電車の中の観測者
1.停車中または一定速度で走行中
床に置いたものは止まったまま
重力と垂直抗力がつりあい合力0⇒加速度0
運動方程式成立
2.加速中または減速中
床に置いたものは動いてしまう
発進時は後方、停止時は前方へ加速度運動
運動方程式非成立
重力、分子間力以外の新たな力の発見か!?
観測者に問題 外から見れば物体は等速度運動
この点を理解するのがポイント
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☆相対運動
自分を中心に運動を記述する立場
そもそも基準の座標系が「良い座標系」という保証もない
実際に観測する立場に立つと自然な見方
絶対的記述比較
固定された座標系を基準にすべての物体の運動を記述
例 アリスは札幌駅から北に時速4km、
ボブは札幌駅から西に時速5kmで歩く
座標系の原点(札幌駅)にいる人の視点で記述している
ともいえるが、「その人」を特別扱いすることになる
速度、加速度という視点では「地面」が基準ともいえる
すべての人に共通⇒通常用いられる
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相対的記述
S系(原点O)での質点の位置
S’系(原点O’)での質点の位置原点に観測者
S系から見たS’系の原点の位置
⇒
動いている人(S’系)の立場での記述
誰でも基準になれる
S系に対してS’系は動いているとしよう
⇒
S系は地面基準、S’系は乗り物の中のイメージ
相対速度
S系で観測する物体の速度
S’系で観測する物体の速度
S系での位置の変化率
S系に対するS’系の速度
S’系での位置の変化率
⇒動いている(S’系)人から見た物体の速度
相対速度
特に が一定である必要はないが、一定の場合( )を考えたのが2-7
原点にいる人が観測すると考えよ
Oに対するO’の速度
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☆慣性力
ニュートンの第二法則の正しい理解
慣性の法則(第一法則)が成り立つ系で
物体に働く合力が0でない場合の法則
加速中の電車の中の観測者にとっては成り立たない
力:重力、分子間力が本質
慣性系 慣性の法則が成り立つ系
日常現象では地面に対して止まっている系や
地面に対して等速直線運動している系
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しかし、観測者が加速度運動している場合は多い
地面に立っていても地球の自転、公転で厳密には加速度運動中
加速度運動している人は力学を考えられないのか?
S系(慣性系とする)
運動方程式が成立
S’系での「力学」
S系での現象をS’系の量で表したものがS’系での現象
S’系での「運動方程式」12
S’系の人(加速度運動している人)も物体は運動方程式に従う運動をするように観測する
但し、S’系の(慣性系に対する)加速度
により が加わった方程式
慣性力 みかけの力または
加速度運動する系でも慣性力を導入すると運動方程式が使える
式の上で現れるだけで、重力や電磁気力のような力の実体はない
便利!
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実際の例1
車(と共に動く人)から見ると
水槽に慣性力が働いて見える見かけの重力
実際の例2
電車の停止時 - 前向きの力を感じる
例1をブレーキと見れば同じ
エレベーターが下り始めたとき- 体重が軽くなるように感じる
乗客は慣性の法則で等速運動し続けようとすることを「慣性力」で説明している
- 慣性力の語源が分かりやすい例
体重計に乗れば実際に軽い! 14
問1 小さな子がヘリウムガスが充填された空気よりも軽い風船を持って電車に乗った。電車が動き始めた時に、風船から手を離した。風船はどっちに行くと考えられるか。窓は締まっているとする。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
進行方向に対して後ろ、上方
進行方向に対して前、上方
進行方向に対して後ろ、下方
進行方向に対して前、下方
前後には動かず、下方
前後には動かず、上方
答 3.
風船は浮力を感じており、それ故風船は重力と逆向きに加速される。加速中の電車では見かけの重力の向きが下方から、後ろ下方に変わる。それ故、空気より重いものは後ろ下方に加速されるが、軽いものは前上方に加速されることになる。
浮力というのは、次のように説明される。空気分子にも重力は働いているが、空気分子がすべて地面に落ちてしまうことはない。これは、空気分子に働く重力と同じだけの上向きの力が働いているということである。この力は、下の方が上の方より圧力が高いことによる(圧力差による)上向きの力である。この上向きの力は空気分子に働く重力と釣り合うので、空気より軽いものに働く重力よりも大きい。
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☆遠心力
円運動(方向転換)する人が感じる慣性力
円運動
自分にとっては
遠心力遠心力は円の中心から外向き
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問2 回転式遊具に乗ると遠心力を感じる
1.
2.
3.
内側と外側の席で感じる遠心力の大きさは
内側の方が大きい
外側の方が大きい
同じ
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外側の方が大きい答 2.
速さは外側の方が大きい
角度(角速度) が共通
内側と外側では単位時間に回る
遠心力
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実際の例1
外側の方が遠心力が強い
実際の例2
車が急カーブするとき
遊園地の様々な回転式のアトラクション
・・・ 乗っている人は外向きの力を感じる20
実際の例3重力加速度の大きさ
赤道上
北極、南極
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問3 自衛隊の演習場で真南の的に向けて
大砲を撃った。空気がない場合を考えると
1.
2.
3.
4.
砲弾は的の右にはずれる
砲弾は的の左にはずれる
遠心力により的に当たるまでの時間が短くなる
新種の慣性力で的に届くはずの砲弾は手前に落ちる
空気抵抗・風の影響を無視
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砲弾は的の右にはずれる答 1.
地球は自転⇒回転している人にとって動いている物体には向きを変える
コリオリ力が働く
北半球では右向き、南半球では左向き
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コリオリ力簡単のため北極から投げる
北極上空から見ると
投げた人から見ると右にそれて行く
ただしただし、この運動には遠心力も働いているので注意
M
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回転系での方程式
ただし
M
Ωでz軸の周りに回転する座標系での運動方程式
コリオリ力
コリオリ力
コリオリ力
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大気と海洋の流れとコリオリ力
地球自転に伴う遠心力は重力の一部になる。したがって、重力と直交する面(水平面)内での「慣性力」はコリオリ力のみになる。
大気・海洋の大規模な流れはほぼ水平面に沿っている。例:台風は水平1000㎞程度、鉛直10㎞程度の扁平な渦。
1.慣性振動:コリオリ力のみによる振動コリオリ力は運動に直交する方向→等速円運動
2.地衡流・地衡風:コリオリ力と圧力傾度力のつり合い流体(空気や水)は圧力の高いところから低い方に力
を受ける。この力を圧力傾度力(気圧傾度力)という。コリオリ力と圧力傾度力が釣り合った状態。→等圧線に沿って流れる (北半球では圧力の高い方を右に見る方向に流れる)
慣性振動海洋表層の流れに追随するように設計されたブイの位置を人工衛星で追ったもの。10月23日から11月中旬まで。大規模な流れに流されながら時計周りに回転している
観測位置
生データ見やすくしたもの
10月23日
11月13日≃18時間40分
(慣性周期)
地衡流・地衡風
低圧
高圧
圧力傾度力
コリオリ力
• 冬、西高東低の気圧配置の時、風は北寄りになる
• 低気圧、台風の風は、反時計回りである
海面の高さ:等値線は0.1m毎
黒潮(とその続流)を挟んで水位が1mぐらい違う。
海面近くの流れは海面高度の等値線に沿っている。
(地表の風向きには摩擦も重要)
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第5章 仕事とエネルギー第6章 力積と運動量
運動方程式があれば運動は分かる
力学はそれですべてではないのか?
☆第5章と第6章の目的
そんなに単純だろうか?
力が分かり、運動方程式が解ければ運動が分かる
正しくは
積分
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しかし
1.力が複雑な場合
積分が難しく式では表現できない
2.力がわからない場合
運動方程式で運動を決められない
衝突など
3.粒子が多数ある場合 惑星系、物質(分子の集合)など
積分ができず運動を式では表現できない← 3粒子以上の間に力
ランダムな場合など
運動が完全には分からないにしてもなんとか情報を引き出せないだろうか?
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何を考えればよいのか?
運動が完全に分かる
時刻 での粒子の位置 が分かる
- 速度 を知ることも含む
など
= ← 運動方程式を積分する
うまく積分できる方法、条件を考えよう
⇒ 運動方程式が解ける場合にも役立つ
結果として得られる情報
速度やスピードの関係式
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§1 エネルギー・・・イントロダクション
物を動かせる (動力→車、工場)
・・・ 現代生活を支えるもの
部屋を明るくする (光→照明)
物を暖める (熱→暖房、調理)
電気製品が使える (電力→動力、照明、冷暖房、パソコン)
☆エネルギーのイメージ
第5章 仕事とエネルギー
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問4 エネルギーについて正しい説明は?(複数可)
物理学では物を動かす(仕事をする)能力をさす
エネルギーを消費するとなくなってしまうので、省エネルギーに努めなければならない
日常で使う「力」という言葉が物理的な力以外を含むように、前頁のエネルギーも物理的エネルギー以外のものも含む
1.
2.
3.
4.
5.
エネルギーは保存するので省エネルギーの必要などない
上の説明はすべて間違っている
「力学的」エネルギーであれば「仕事をする能力」で正しい
状態を変化させる能力
★ポイント1
エネルギーは形を変えても必ず保存する
★ポイント2
エネルギーにはいろいろな形態がある
運動エネルギー、ポテンシャルエネルギー、熱エネルギー、化学エネルギー、電気エネルギー、原子力エネルギー、光エネルギー
エネルギーとは?
速さ、位置(高さ、ばねの伸び、電荷からの距離など)、温度、分子の種類(化学反応)、原子核の種類(原子核反応)など
エネルギーを使う・・・欲しい変化を起こさせる
車を走らせる、冷暖房で温度を変える、部屋を明るくするなど
その背景には運動方程式がある
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使いやすいエネルギーと使いにくいエネルギー
便利に使えるエネルギーの供給源=エネルギー資源
化石燃料(石油、石炭、天然ガス)、原子力燃料、自然資源(太陽光、風力、水力、地熱)
省エネ=便利なエネルギー(エネルギー資源)の節約
熱エネルギー・・・使いにくい
低温の物体の熱エネルギーは取り出しにくい物理学Ⅱ 熱力学第二法則
エネルギーを消費する=便利なエネルギーが熱エネルギーになる
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今日のまとめ相対運動と慣性力
自分中心の記述をするのが相対運動の考え方
加速度運動をする人も慣性力を導入すると
運動方程式を使える
エネルギーと運動量
何故導入するかを運動方程式の観点から捉えよう
エネルギーの概念をしっかり理解したい
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宿題レポート
必須範囲・・・2-7、11 と 4-14、15、17、18
講義で省略した部分は自習する
該当する節を自習をして以前のレポートに指摘を
書いてくれている人は提出済みである旨書いてもらえば
再度同じことを書いて出す必要はない
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§3 日常の現象で働く力と運動(続き)
第4章 ニュートンの法則の応用
☆空気抵抗 (流体の抗力)
物体の運動方向とは反対向きに働くブレーキ
2種類の抗力
圧力抵抗(慣性抵抗)
物体のスピードの2乗と断面積に比例
粘性抵抗(摩擦抵抗)
物体のスピードと周長に比例
空気抵抗下での運動
圧力抵抗が無視できる場合(粘性抵抗のみ)
粘性抵抗が無視できる場合(圧力抵抗のみ)
圧力抵抗の方程式は難しい
成分に分けて解くことができる
成分ごとの方程式にならない
速度を求めてから積分する
方程式を解くことは求めないが例題3-5のような考察力があるとよい
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グラフで見ると似たような振る舞い
粘性抵抗のみ
(初速度≠0)
圧力抵抗のみ
(初速度=0)
比較するには初速度をそろえるべきだが・・・
速度が小さいときはブレーキが効かない
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簡単な場合 鉛直方向の落下
圧力抵抗が無視できる場合
粘性抵抗が無視できる場合
下方を正に取る
いずれの場合もスピードが上がると加速度0
⇒ 微分方程式を解く問題 意欲ある人は自習
最終速度 (終端速度)
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問1 大気がない場合、500mの高さから落下した
1 2 3 4
0% 0%0%0%
1.
2.
3.
4.
物体の地表での速さは秒速100m程になる。 地表付近での雨粒の実際の速さは?
秒速70~90m
秒速40~50m
秒速7~9m
秒速2~3m
0 / 300
10
今すぐ回答 42
答 3.
空気抵抗は非常に大きい
⇒10m程加速した後は一定の速度で落下
HPの演習問題解答5ページ目の表参照
秒速7~9m
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コリオリ力による気象
台風・低気圧(前線)
上昇気流で気圧が低下
⇒流れ込む気流は左巻きの渦
大気循環・偏西風・貿易風
北半球
教科書参照