電子相関によるトポロジカル絶縁体相
栗原研究室 修士2年
後藤 慎平
トポロジカル絶縁体• 2005年にKaneとMeleにより理論的に提唱
• バルクはバンド絶縁体、表面にスピン偏極した金属状態
• 強いスピン軌道相互作用をもつ物質で確認
• 真空と異なるトポロジカル不変量により定義
C. Jozwiak, et al., PRB 84, 165113 (2011)
トポロジカル絶縁体• 問題点
o スピン軌道相互作用の強いBiやSbは半導体元素
→伝導特性に物質内部からの寄与が存在
表面のスピン偏極した状態がマスクされる!
・解決策電子相関に由来するトポロジカル絶縁体相→トポロジカルMott絶縁体 S. Raghu et al., PRL 100, 156401 (2008)
トポロジカルMott絶縁体• Raghuらにより提案された電子相関により誘起される
トポロジカル絶縁体
S. Raghu et al., PRL 100, 156401 (2008)
ハニカム格子上の次近接相互作用まで加えた拡張Hubbard模型
となる領域でのみトポロジカル絶縁体相が存在
ミクロスコピックな描像• 循環カレントによる描像
Haldane模型有限のChern数(量子Hall相)非自明なトポロジカル不変量をもつことが分かっている模型
循環電流を表す項
≣≩⊾ :iサイト, ¾スピン電子の消滅演算子
t :飛び移り積分 ¸ :カレントの大きさ
電子相関により循環カレント秩序が誘起されるとトポロジカル相へと転移?
Kane-Mele模型非自明なZ2不変量(トポロジカル絶縁体相)
⊡≴≘≨≩≪≩⊾
≣≹≩⊾≣≪⊾ ∫ ≩⊸≘≨≨≩≪≩≩⊾
⊺≩≪≣≹≩⊾≣≪⊾
⊡≴≘≨≩≪≩⊾
≣≹≩⊾≣≪⊾ ∫ ≩⊸≘≨≨≩≪≩≩⊾
≳≺⊾⊾∰⊺≩≪≣≹≩⊾≣≪⊾∰
循環スピン流を表す項
Hubbard模型による解析• ミクロスコピックな模型を用いた解析
U:オンサイトCoulomb相互作用 ¹ :化学ポテンシャル
ハニカム格子上で定義されたHubbard模型を解析し, 自発的な循環カレント秩序が現れうるかを調べる
≞≈ ∽ ⊡≴≘≨≩≪≩⊾
≣≹≩⊾≣≪⊾ ∫ ≕≘≩
≮≩∢≮≩∣ ⊡ ⊹≘≩⊾
≮≩⊾
≮≩⊾ ∽ ≣≹≩⊾≣≩⊾
解析手法• 変分クラスター法
相互作用の入った無限系の模型を解くことは非常に困難→相互作用の効果を近似的に取り入れる
系のGreen関数これから様々な物理量が計算可能
自由系でのGreen関数厳密に求められる
自己エネルギー
相互作用の効果は全てここに取り入れる
少数クラスターでの自己エネルギーで近似
⊧⊼
⊧∰
M. Potthoff, EPJB 32, 429 (2003)
≇ ∽∱
≇⊡∱∰ ⊡ ⊧
短距離相関が重要となる場合(Uが大きい場合)に正当化
解析手法• 自己エネルギーによる変分
→クラスターの一体項パラメータの関数とみなせる
最も適当な自己エネルギーを変分条件
から決定
このとき循環カレントに対応する一体項に関しても変分を行い、自発的に現れる可能性を考慮する
≴∰⊹∰
⊸
⊧∰
⊱⊭≛⊧∨≴∩≝
⊱⊧∨≴∩∽ ∰
解析手法• クラスター系とそのHamiltonian
クラスターHamiltonian
変分パラメータ
S. R. Hassan and D. Sénéchal , PRL 110, 096402 (2013)
現状、ハニカム格子のSemiMetal相を最も良く記述できているクラスター
or
循環電流秩序 循環スピン流秩序
∫≩⊸≘≨≨≩≪≩≩⊾
⊺≩≪≣≹≩⊾≣≪⊾ ∫≩⊸
≘≨≨≩≪≩≩⊾⊾∰
⊺≩≪≳≺⊾⊾∰≣
≹≩⊾≣≪⊾∰
結果:カレント相の存在• 各カレント相における熱力学ポテンシャル
循環スピン流秩序
循環電流秩序
≕ ∽ ∳∺∵≴各々の¸ に対し熱浴パラメータは最適化
• 各秩序相におけるトポロジカル不変量の値
循環電流秩序
≕ ∽ ∳∺∵≴
結果:トポロジカル不変量
Z2不変量=1 →トポロジカル絶縁体相
循環スピン流秩序
Chern数=2 →量子Hall相
結果:ギャップサイズとスピン流• 循環スピン流相におけるギャップサイズとスピン流の大きさ
ギャップサイズはバンド幅(6t)のおおよそ1/1000
電子相関によるスピン流秩序→トポロジカル転移
まとめ• ハニカム格子上のHubbard模型には循環スピン流秩序相
が存在
• この循環スピン流秩序相は非自明なZ2不変量を持ったトポロジカル絶縁体相である
これからの研究課題• スピン流秩序相の起源の解明
• 他の手法による確認
Appendixトポロジカル不変量
• Chern 数
• Z2不変量
∨⊡∱∩⊢ ∽≙
⊡≩∽≔≒≉≍
≰≤≥≴≂∨⊡≩∩
≐≦∨≂∨⊡≩∩∩≂⊮⊯∨≫∩ ∽ ≨≵⊮∨⊡≫∩≪ ≞≔ ≪≵⊯∨≫∩≩
波数空間での固有状態 を用いて≪≵⊮∨≫∩≩
≣ ∽∱
∲⊼≩
≚≂≚
≤∲≫≆ ∨≫∩
≁⊹∨≫∩ ∽ ≨≵⊮∨≫∩≪≀
≀≫⊹≪≵⊮∨≫∩≩
≆ ∨≫∩ ∽≀≁≹∨≫∩
≀≫≸⊡
≀≁≸∨≫∩
≀≫≹
Appendixトポロジカル不変量と表面状態
• 異なるトポロジカル不変量をもつ物質の界面状態
トポロジカル不変量のトポロジカル保護→ギャップが閉じない限りトポロジカル不変量は変化しない
⊢ ∽ ∰ ⊢ ∽ ∱
ギャップが閉じる = 金属状態
AppendixトポロジカルHamiltonian法
• 相互作用系で比較的簡単にトポロジカル不変量を計算する方法
相互作用系でのZ2不変量
トポロジカルHamiltonianを導入
≈≴≯≰ ∽ ⊡≇⊡∱∨∰∻≫∩
すると,その固有状態 を用いて
∨⊡∱∩⊢ ∽≙
⊡≩∽≔≒≉≍
≰≤≥≴≂∨⊡≩∩
≐≦∨≂∨⊡≩∩∩≂⊮⊯∨≫∩ ∽ ≨≵⊮∨⊡≫∩≪ ≞≔ ≪≵⊯∨≫∩≩
≪≵⊮∨≫∩≩
相互作用がない場合と同じ式で表せる(Chern数についても同様)!
⊢ ∽∱
∲∴⊼∲
≚≤≫∰≤
∲≫≔≲≛⊲⊹⊺⊽≇≀⊹≇⊡∱≇≀⊺≇
⊡∱≇≀⊽≇⊡∱≝
Z. Wang and S. –C. Zhang , PRX 2, 031008 (2012)
Appendixゲージに依存しない計算法
• 局在中心発展の計算
Bloch表示をWannier表示にしたうえで,その”位置”を評価
≪⊪≮≫≩ ∽≘⊮
≧≮⊮∨≫∩ ≪⊮≫≩
↑固有状態
↑Bloch基底
≪⊮≫≩ ∽ ∱≰≎
≘≩
≪⊮≩≩ ≥≩≫⊢≒≩
↑Wannier基底
2次元系は1次元系の集まりとして扱う→状態, 演算子は でラベリングされる
≫≹
≫≸
≫≹≫≸ は離散化
1次元(x)についての位置演算子を定義
≞≘ ∽≘≩⊮
≥⊡≩⊱≫≸⊢≒≩ ≪⊮≩≩ ≨⊮≩≪ ⊱≫≸ :離散化幅
占有状態への射影演算子を構成
≞≐≫≹ ∽≘
≮∲≯∻≫≸
≪⊪≮≫≩ ≨⊪≮≫≪
位置演算子を占有空間へ射影
≞≘≐ ∨≫≹∩ ∽ ≞≐≫≹≞≘ ≞≐≫≹
∽≘≫≸≫∰≸
⊱∨≫≸ ∫ ⊱≫≸ ⊡ ≫∰≸∩≘≮≭∲≯
∢≘⊮
≧⊤≮⊮∨≫≸∩≧≭⊮∨≫∰≸∩
∣≪⊪≮≫≸∻≫≹≩ ≨⊪≭≫∰≸∻≫≹ ≪
この位置演算子の固有値はMaximally Localized Wannier Function の局在中心に対応
≫≹
0 π局在中心がシリンダーを囲う回数→ Chern 数に対応
(波数空間で見ているため局在中心は位相として表れる→周期性が存在)
結果:トポロジカル不変量• ループカレント相
o Chern 数→ 2• ループスピンカレント相
o Z2不変量 → nontrivial
≕ ∽ ∳∺∵≴
トポロジカル絶縁体• これまで実験的に確認された物質
o HgTeo Bi1-xSbx
o Bi2Te3
o Bi2-xSbxTe3-ySey…etc.,
D. Hsieh, et al., Nature 452, 970 (2008)
Z. Ren, et al., Phys. Rev. B 84, 165311 (2011)
M. König, et al., Science 318, 766 (2007)
H. –J. Noh, et al., Euro. Phys. Lett. 81, 57006 (2008)
重い元素を含む物質で確認
→スピン軌道相互作用が重要
結果:トポロジカル不変量• 循環電流秩序相
o Chern 数→ 2• 循環スピン流秩序相
o Z2不変量 → nontrivial
≕ ∽ ∳∺∵≴