三田村輝章
建築設備Ⅰ
第7回 空気調和設備(3)冷暖房負荷の計算法
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《冷暖房負荷の計算法》1. 設計用熱負荷計算
2. 年間熱負荷シミュレーション
• 設計用熱負荷計算–夏,冬のピーク日の最大熱負荷を算出して,冷暖房機器の容量やダクトや配管の寸法を決定
(定常計算)
–手計算により比較的簡単に負荷を算出
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冷暖房負荷の計算(1/5)
夏・冬の一定の気象条件 建物の条件 手計算ピーク日の最大熱負荷
• 年間熱負荷シミュレーション– 365日(8760時間)の気象データを用い,1年間の時刻別の冷暖房負荷を算出
– その冷暖房装置の年間エネルギー使用量の算定や経済性の評価を行うための資料を提供(非定常計算)
– 壁体の熱伝導計算には,熱容量(蓄熱の影響)を考慮した熱計算理論に忠実な計算モデル
– パソコンなどでシミュレーションプログラムにより行う
– 手計算では不可能であった熱負荷や非空調時の室温の時刻変動を時々刻々計算することが可能
⇒太陽熱取得や蓄熱・蓄冷などのパッシブ効果も検討可能
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冷暖房負荷の計算(2/5)
熱負荷シミュレーションの例(TRNSYS)4
1. CADソフトで建物モデルを作成 2. 建物仕様・冷暖房・発熱条件の設定
3. 計算に必要なモジュールを構築4. 計算の実行と結果の表示
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冷暖房負荷の計算(3/5)
定常と非定常の壁体伝熱
熱
定常状態
• 冷房負荷計算の概要–室内を設計温湿度に維持するときに毎時,外部から流入する熱量と室内で発生する顕熱と潜熱を算定
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冷暖房負荷の計算(4/5)
• 暖房負荷計算の概要–暖房効果となる照明や人体などの室内発生熱を考慮しない(冷房負荷計算より簡単)
• P.102-104「用語の定義」⇒各自で再確認!–特に「顕熱」,「潜熱」,「実効温度差ETD」,「日射遮へい係数SC」は完璧に理解すること!
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冷暖房負荷の計算(5/5)
《計算手順》
• 教科書P.106~112,配布プリントを参照
• 例題(P.106 図4-2)と熱負荷計算表(P.105 表4-1)を元にして説明する!
• 基本的には,配布プリントの計算手順a.~k.に従って「熱負荷計算表」を埋めていけば良い!
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冷房負荷計算法(1/9)
Excelなどの表計算ソフトを活用すると便利!
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a.室内条件および外気条件の設定–室内設計条件および外気設計条件を表4-2(a),(b)
(P.106)から読み取る
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冷房負荷計算法(2/9)
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• 外気設計条件については,10時,14時,16時など,いくつかの時刻について計算し,最大値を設計用負荷とすることもある
b.窓からの熱取得の算出–計算対象室の窓ガラスの面積AGを方位別に算出
–日射熱取得qGIを表4-3(P.107)から読み取る
–計算対象となる窓ガラスの日射遮へい係数SCおよび熱貫流率KGを表4-4(P.108)から読み取る
–式4.3,4.4(P.107)により,窓からの熱取得HGを算出
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冷房負荷計算法(3/9)
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c.外壁(外部に接する部位)からの熱取得の算出–計算対象室の外壁(窓ガラスの面積は含まない)の面積AWを部位ごとに算出➢ 面積は,幅は壁心基準,高さは階高(天井高ではない)で算出する
–外壁の熱貫流率KWを部位ごとに算出⇒ P.34-36「第2章 1.2 外壁の熱貫流率」を参照
–実効温度差ETDを表4-5(P.109)から読み取る
–式4.5(P.108)により,外壁など外部に接する部位からの貫流熱取得HWを算出
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冷房負荷計算法(4/9)
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[W/m2・K]
室内側熱伝達率 ai 外気側熱伝達率 ao各材料の熱伝導率lj
各材料の厚さ d
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d.内壁(隣室・上下階)からの熱取得の算出–計算対象室の内壁の面積AWiを部位ごとに算出
➢ 面積は,高さは階高(天井高ではない)で算出する
–内壁の熱貫流率KWiを部位ごとに算出(外壁と同様)
–隣室との温度差Δtnを算出➢ 隣室が空調室の場合:Δtn = 0
➢ 隣室が非空調室の場合:設定室温と外気温度の平均値
∆𝑡𝑛 =設定室温+外気温度
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–式4.7,4.8により,内壁など隣室からの貫流熱取得HWiを算出する
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冷房負荷計算法(5/9)
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e.すき間風による熱取得の算出–式4.9~4.11(P.110)により,すき間風による顕熱取得HIS,潜熱取得HILを算出➢ 高気密な建物や室内外温度差が小さい夏期では,すき間風を0として無視することもある
f.照明器具からの熱取得の算出【照明器具の所要電力から算出する場合】–白熱灯:1W,蛍光灯:1.16Wとして,それぞれ設置台数を乗じて算出【床面積当たりの発熱量から算出する場合】–式4.12(P.110)により,照明器具からの熱取得HLを算出
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冷房負荷計算法(6/9)
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g.機器からの熱取得の算出–式4.13,4.14(P.111)により,室内機器からの顕熱発熱HAS,潜熱発熱HALを算出する➢ 潜熱は,厨房や湯沸かし室など水蒸気発生がある場合
h.人体からの熱取得の算出– 1人当たり発生する顕熱,潜熱を表4-6から読み取る
–式4.15,4.16(P.111)により,在室者からの顕熱取得HHS,潜熱取得HHLを算出
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冷房負荷計算法(7/9)
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i.室熱負荷の算出– b.~h.のうち,HIL,HAL,HHLを除く顕熱取得を合計
–式4.17(P.111)により,室顕熱負荷HRMSを算出➢ 空調システムでの顕熱取得(空調システム自体からの発生熱)ΔHSを5~15%として考慮
– e.,g.,h.のHIL,HAL,HHLの潜熱取得を合計する
–式4.18(P.111)により,室潜熱負荷HRMLを算出する➢ 空調システムでの潜熱取得(空調システム自体からの発生水蒸気)ΔHLを5%として考慮
–室顕熱負荷HRMSと室潜熱負荷HRMLを合計して,室熱負荷HRMを算出
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冷房負荷計算法(8/9)
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j.外気負荷の算出–式4.20~4.22(P.111)により,外気顕熱負荷HFS,潜熱負荷HFL,外気負荷HFを算出➢ 外気量QF =在室者1人当たりの必要換気量×在室者数N
➢ 在室者1人当たりの必要換気量=25 m3/h・人
=25 m3/3,600s=0.0069 m3/s
k.空調機負荷の算出–式4.23~4.25(P.112)により,空調機顕熱負荷HACS,潜熱負荷HACL,空調機負荷HACを算出
–冷凍機負荷HRFの場合は,式4.26(P.112)により算出
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冷房負荷計算法(9/9)
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《計算手順》(基本的には冷房負荷計算法と同様)
• 式4.27,4.28(P.112)により,室顕熱負荷HRMSと室潜熱負荷HRMLを算出– 日射,照明,室内機器,在室者などの熱取得は無視
• 式4.29,4.30 (P.112)により,外皮の熱損失を算出– 内壁については,式4.7により内壁など隣室からの貫流熱取得HWiを算出
– 方位係数kxは,北面1.1,東西面1.05,南面1.0などが用いられる
– 室内外温度差Δt,隣室との温度差Δtnは,式4.31,4.32
(P.113)により算出
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暖房負荷計算法(1/2)
• 「予熱負荷」を見込む場合–室暖房負荷の10%程度を室熱負荷に加算
• 予熱負荷–間欠暖房では,暖房装置を運転開始してから室温が設定に達するまで時間を要する
–室使用時間の前に暖房運転を開始し,室使用開始時刻に設定室温に達するまでに必要な熱量
※暖房負荷計算時の外気設計条件は,暖房開始時を想定して8時の値を使用
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暖房負荷計算法(2/2)
• 冷暖房負荷の計算–設計用熱負荷計算
–年間熱負荷シミュレーション
–冷暖房負荷計算の概要
• 冷房熱負荷の計算法–計算手順
• 暖房熱負荷の計算法–計算手順
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まとめ