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第1章 緒言

1.1 研究背景

近年、インターネットによる情報通信は著しく発展しており、1994 年以降一般家庭

への光ファイバ通信システムの導入(FTTH : Fiber To The Home)が進められ、気軽に

大容量通信が行えるようになった。これに伴い、我が国でのブロードバンドサービス契

約者のダウンロードトラヒック総量は 2011 年 5 月で約 1.51Tbps となっており、1 年

間で約 1.2 倍増加し[1]、今後も、スマートフォン普及などによる通信量の増加は不可避

である。このような通信量の増加に伴い、光通信部品の性能向上が課題となっている。

現在の光通信では光信号が一度電気信号へと変換し処理された後光信号に戻して中

継されているが、処理速度の高速化や消費電力の低減において限界が近づきつつあると

いわれている[2]。そこで光信号をそのまま処理できる光スイッチング技術が注目され

ている。

光スイッチの種類は多様であり、電磁アクチュエータやミラーによる光制御を行う機

械式スイッチやミラー・シャッターにより光制御を行う MEMS(Micro Electro

Mechanical Systems)スイッチなどがあるが、本研究では小型化が期待できる導波路型

光スイッチにおいて熱光学効果を利用した TO (Thermal Optical effect)型光スイッチ

を作製する。

本研究では感光性ポリシラン“グラシア”と PMMA (Poly (methyl methacrylate))の

2 種類のポリマ材料を用いて光スイッチの作製を試みた。感光性ポリシランを材料とし光ス

イッチを作製することで石英系に比べ安価で、高い熱光学効果により低消費電力が期待で

きる。PMMA では PBW(Proton Beam Writing)と呼ばれる微細加工技術を利用し導波

路の形成を行う。PBW はポリマ材料である PMMA や SU8 などにプロトンビームを照

射することで 3 次元微細加工などフレキシブルな加工を行うことができる技術である。

PMMA にビームを照射することで照射部の屈折率が上昇するという特徴を利用してマ

スクレスで導波路の作製が可能となる。

また光は通信分野だけでなく光をエネルギーとした太陽光発電にも使われている。太

陽電池は無尽蔵でクリーンなエネルギーとして化石燃料に代わる新たなエネルギー源

として関心が高まっている。課題になっている変換効率の向上に関しては、現在、太陽

電池表面にランダムな凹凸構造を作製することで光閉じ込め効果による入射光の反射

の低減を図っている。本研究ではフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ技術によ

る周期構造を利用した回折効果による反射の低減を試みた。

本研究ではこれら有機材料の特徴である低コスト、加工のしやすさを生かした光機能

性デバイスの性能向上を目指した。

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1.2 研究の目的・概要

1.2.1 プロトンビーム描画による光スイッチの作製と評価

PBW とは集束プロトンビームを用いた新たな微細加工技術であり、電子ビームと比

較してビームが低散乱で照射可能、高い化学反応収率により高効率などの特徴がある。

本研究では、導波路材料としてもよく利用される PMMA にプロトンビームを照射する

ことでの材料改質による屈折率上昇効果を利用した光導波路の作製を試みた。そこで、

本研究では日本原子力研究開発機構との共同研究で、波長 1.55μm においてシングルモ

ード導波路となる PBW による光導波路を形成し、光スイッチの作製を試みる。

図 1-1 PBW を用いた PMMA 光導波路構造

1.2.2 感光性ポリシランを用いた光導波路の作製と評価

本研究では導波路に用いたポリマ材料として日本ペイント社製の感光性ポリシラン

“グラシア”を使用し、ポリマ材料の特徴である熱光学効果を利用し光導波路の作製を

行った。また、ポリマ材料の熱光学効果は石英系よりも大きいため低消費電力化が期待

できる。さらにアンテナ結合型Y分岐と曲がり導波路を用いたMZ(マッハツェンダー)

型光スイッチにより小型化が見込める。本研究ではこれらの特徴を生かし低消費電力、

消光比の向上を目的として光スイッチのための光導波路の作製を試みた。

図 1-2 ポリマを利用した光スイッチ概略図

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1.2.3 周期構造を用いた太陽電池の高効率化の検討

図 1-4(a)のテクスチャ構造はアルカリ溶液(KOH、NaOH)を用いて Si の面のエッチ

ング速度の異方性を利用する事で表面にピラミッド状の凹凸構造を作製している。この

凹凸構造によって、光の多重反射などが起こり効率の向上を図るものであるが、欠点と

して、膜厚や成膜条件に依存してしまうことや、構造自体の制御が困難であり再現性が

低いことなどが挙げられる。そこで周期構造を太陽電池表面に付加することにより、高

効率化を目指している。本研究では図 1-4(b)のような 2 光束干渉露光法を用いた構造の

制御が容易な再現性の高い周期的な凹凸構造の導入により効率の向上を目指す。

(a)テクスチャ構造 (b)周期構造

参考アドレス http:/www.agc.co.jp

図 1-3 テクスチャ構造(a)と周期構造(b)

1.3 本論文の構成

本論文の構成は以下の通りである。

第 1 章は緒言である。

第 2 章はプロトンビーム描画による光スイッチの作製と評価について述べる。

第 3 章は感光性ポリシランを用いた光導波路の作製と評価について述べる。

第 4 章は周期構造を用いた太陽電池の高効率化の検討について述べる。

第 5 章は結言である。

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第 2 章 プロトンビーム描画による光スイッチの作製と評価

2.1 はじめに

近年、半導体集積回路の高集積化などからわかるように微細加工技術の重要性は年々

高まってきている。そのような中で、1997 年ごろより、国立シンガポール大学イオン

ビーム応用センターにて次世代型微細加工技術としてPBW技術の研究が進められてき

た。この技術はビームにプロトン(H+)を用いることで電子ビームに比べ低散乱での照射

が可能であり、つまりは高い直進性を有しており、また、化学反応収率が良好なため、

尐ない照射量で露光でき、加工効率は電子ビームの数十倍以上となっている。さらに、

加速エネルギーにより侵入深さの制御も可能でありフレキシブルでマスクレスな加工

が可能といった特徴が挙げられる[3]。

図 2-1 プロトンビームと電子ビームのビーム散乱[3]

このプロトンビームを図 2-2 に示すような構造である PMMA に照射することで

PMMA 中の主鎖が切断され、圧縮効果が起こり、密度が増し、その部分で屈折率が上

昇する[4]。そこで、この屈折率上昇効果を用いて導波路作製を試みた。

本研究では MZ 型光スイッチ作製への足がかりとして直線導波路、Y 分岐導波路、

MZ 型導波路と段階を踏んで導波路の作製を行った。

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図 2-2 PMMA 化学構造式

2.1.1 PBW について

本研究では共同研究先の日本原子力研究開発機構(JAEA)の PBW 装置を使用して

サンプルの作製を行う。図 2-2 に日本原子力研究開発機構イオン照射実験施設(TIARA)

内の 3MV シングルエンド加速器とビームラインを示す[5]。左図の加速管の中には高電

圧発生部、RF イオン源があり、そこでプロトン(H+)が生成され、その後加速管を通っ

てプロトンビームが放出される。加速器を発射したプロトンビームは右図のビームライ

ンを通り、サンプルへと照射される。ビームラインの中にはスリットや、四重極レンズ

といったビーム電流を調節するもの、あるいはビームの集光に必要な装置が入っている。

図 2-3 加速器とビームライン[5]

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2.2 直線導波路の作製と評価

ここでは PBWを用いて波長 1.55μm でシングルモードとなる PMMA光導波路の作

製について述べる。

2.2.1 直線導波路の構造

本研究では図 2-4 に示すような構造の導波路を作製した。基板には端面出しの際にへ

き開しやすいように Si 基板を使用した。SiO2層は rf スパッタリングで PMMA 層はス

ピンコートにより成膜した。

※1 メトリコン社製プリズムカプラ Modes2010/M を使用して測定

(測定波長 1548nm、TE モード)

※2 [6]参考

図 2-4 導波路構造

SiO2層の屈折率は 1.440、PMMA 層のプロトン非照射部の屈折率は 1.485 であり、

PMMA の照射部の屈折率は図 2-5 を参考に非照射部に 0.003 を足した 1.488 と見積も

った。

図 2-5 PMMA へのプロトンビーム侵入深さと屈折率変化[6]

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2.2.2 光導波路の作製方法

導波路の作製工程を以下に述べる。

1. 基板には端面出しの際にへき開のしやすいシリコン基板(20mm×40mm)を使用

した。

2. rf スパッタリングにて SiO2を成膜し下クラッドを形成する。スパッタ条件を表 2-1

に示す。

表 2-1 スパッタ条件

プリスパッタ 5[min]

メインスパッタ 1300[min]

電力 200W

ガス流量 Ar:10[sccm]

3. SiO2膜の上に PMMA をスピンコートで 10μm 成膜する。5μm のスピンコート条件

とベーク条件は次のようである。5μm 工程を 2 回行い 10μm 厚にする。

スピンコート 1350[rpm] × 30[s]

ベーク 120[℃] × 2[min]

4. プロトンビームを描画し、コアを形成する。

5. 再び PMMA を 10μm 成膜し、上クラッドを形成する。これで導波路の完成となる。

図 2-6 に導波路作製手順を示す。

図 2-6 導波路作製手順

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2.2.3 PBW 照射条件

表 2-2,2-3 に PBW 照射条件を載せる。シングルモード条件の探索のため導波路幅を

4 , 6 , 8 , 10 , 12 , 14 , 16 μm と変え,ドーズ量も変えることでシングルモード条件を割り出

した。

表 2-2 直線導波路①

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 100 nC/mm2

導波路幅 4 , 6 , 8 , 10 , 12 , 14 , 16 μm

導波路長 15mm

ビーム電流 ~60pA

照射時間 1750 sec/sample

表 2-3 直線導波路②

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 200 nC/mm2

導波路幅 4 , 6 , 8 , 10 , 12 , 14 , 16 μm

導波路長 15mm

ビーム電流 ~120pA

照射時間 1750 sec/sample

2.2.4 光学顕微鏡による表面観察

図 2-7,2-8 に直線導波路①、直線導波路②について、サンプル表面観察結果を示す。

なお、表面観察は上クラッド形成前に行っている。

図 2-7 直線導波路① 図 2-8 直線導波路②

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サンプル表面にプロトンビームによってできた照射痕を確認することができる。これ

は、プロトンビーム照射による、圧縮効果がおきたために形成されたものである。また、

光学顕微鏡の観察から、導波路幅は、ほぼ設定値通りの値となっていることが分かった。

2.2.5 近視野像の評価

作製した試料の評価には図 2-9 に示すような測定系において測定を行った。

図 2-9 近視野像測定系

シングルモードとマルチモードを区別する方法として光ファイバの先端を試料から

尐しずらし(励振条件変更)、この際、観測された光が一つであればシングルモード、

分裂していればマルチモードという方法で評価を行った。

図 2-10,図 2-11 に近視野像観察結果を示す。

導波路幅

[μm] 4 6 8 10 12 14 16

励振条件

変更前

励振条件

変更後

モード シングル シングル シングル マルチ シングル マルチ マルチ

図 2-10 直線導波路①近視野像観察結果

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導波路幅

[μm] 4 6 8 10 12 14 16

励振条件

変更前

励振条件

変更後

モード シングル シングル シングル マルチ マルチ マルチ マルチ

図 2-11 直線導波路②近視野像観察結果

結果をみると直線導波路①では導波路幅 12μm、直線導波路②では導波路幅 8μm で

シングルモード導波路となった。これはドーズ量によりシングルモードが得られる導波

路幅が変化していることが考えられる。また、導波光の大きさは 10μm 程度でありシン

グルモード光ファイバとの整合性も良好といえる。

2.3 Y 分岐導波路

前節でシングルモード導波路の作製に成功した。そこで次のステップとして Y 分岐

導波路の作製を試みた。

2.3.1 Y 分岐導波路の作製

図 2-12 に Y 分岐導波路の構造を示す。図 2-13 は上図が直線導波路で構成された Y

分岐導波路で下図が分岐後を曲線とした Y 分岐型導波路の見取り図である。

図 2-12 Y 分岐導波路

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図 2-13 Y 分岐設計図

(上図:直線で構成された Y 分岐導波路、下図:正弦関数を用いた曲線導波路)

2.3.2 PBW 照射条件

導波光が確認できた試料に関して照射条件を示す。Y 分岐導波路①の照射条件を表 2-4

に、Y 分岐導波路②、③、④、⑤に関しては表 2-5 に示す。また、Y 分岐導波路①、②、③

の試料は図 2-13 の上図の直線で構成された Y 分岐導波路を、Y 分岐導波路④、⑤の試料が

図 2-13 で示した下部の曲がり導波路構造を適用している。これらの構造ではまだシミュレ

ーションを行っていないが、第三章のシミュレーション結果より、曲がり導波路の方が低

損失で導波できると考えている。

表 2-4 照射条件

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 100 nC/mm2

導波路幅 8μm(設定値)

ビーム電流 ~10pA

描画回数 10 回

描画方法

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表 2-5 照射条件

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 100 nC/mm2

導波路幅 8μm(設定値)

ビーム電流 ~10pA

描画回数 10 回

描画方法

2.3.3 光学顕微鏡による表面観察

導波路形成後の試料表面を光学顕微鏡を用いて観察した。図 2-14~図 2-18 に示す。

なお、表面観察は上クラッド成膜前に行った。

図 2-14 Y 分岐導波路① 表面観察画像

図 2-15 Y 分岐導波路② 表面観察画像

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図 2-16 Y 分岐導波路③ 表面観察画像

図 2-17 Y 分岐導波路④ 表面観察画像

図 2-18 Y 分岐導波路⑤ 表面観察画像

表面観察の結果ビーム照射部分でPMMA圧縮効果による変化を確認することができ

た。Y 分岐導波路①とそれ以外では表 2-4,2-5 に示すように描画方法が異なる。これは、

プロトンビーム照射後の不安定さを補うもので、ビームを往復させることで照射時のム

ラを減らそうとしたものである。

図 2-15 の表面観察結果より、直線導波路部分で、30μm 程度の導波路の欠損があること

が確認できた。

図 2-17 の表面観察結果より、片方の導波路上に気泡のようなものが確認できた。

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2.3.4 近視野像観察結果

図 2-19 に結果を示す。

励振条件変更前 励振条件変更後

Y 分岐導波路①

Y 分岐導波路②

Y 分岐導波路③

Y 分岐導波路④

Y 分岐導波路⑤

図 2-19 Y 分岐導波路近視野像

結果より Y 分岐導波路においてシングルモード導波路の作製に成功した。

図 2-15 の Y 分岐導波路②の表面観察結果より、直線導波路部分で、30μm 程度の導

波路の欠損があることが確認できたが、図 2-19 の Y 分岐導波路②近視野像観測結果よ

り、導波光を確認できたことから、この程度の欠陥は問題とはならないということが考

えられる。

図 2-19 の Y 分岐導波路④近視野像観測結果では、一つの導波光しか確認することが

できなかった。これは、図 2-17 の Y 分岐導波路④の表面観察結果より導波路上に気泡

があることから、その導波路では導波光の確認ができなかったと考えられる。導波路の

成膜時には気泡を作らないように注意が必要である。

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Y 分岐導波路③の試料について Y 分岐後の導波光の強度比を測定した。図 2-20 にそ

の結果を示す。測定系は図 2-9 を用いて、顕微鏡と ITV カメラ間の距離を取ることで

像を拡大している。

図 2-20 Y 分岐導波路③ 強度比

この結果より分岐後の導波光の強度ピーク比は 1:0.96 とわかった。これにより分岐

後の光強度のばらつきが尐ないため、MZ 型光スイッチを考えた時に機能させる上で十

分な特性を有することが考えられる。

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ここまで、照射時のビーム電流は 10pA で、導波路形成に照射回数を 10 回で行ってきた。

しかし、この方法は一つの試料を作り上げるのに時間が掛かるので、ビーム電流を上げて

重ね描き回数を減らしても問題なく導波するのかどうか調べた 。条件として以下の表 2-6

に示す。

表 2-6 照射条件の変更

ビーム電流(pA) 描画回数

Y 分岐導波路⑥ 10 10

Y 分岐導波路⑦ 50 2

Y 分岐導波路⑧ 100 1

図 2-21 から図 2-27 にそれぞれの条件での、光学顕微鏡による表面観察画像、照射部の

AFM(原子間力顕微鏡)画像、近視野像の評価を以下に示す。

図 2-21 Y 分岐導波路⑥ (10pA-10 回照射) 表面観察画像

図 2-22 Y 分岐導波路⑥ (10pA-10 回照射) AFM 画像

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図 2-23 Y 分岐導波路⑦ (50pA-2 回照射) 表面観察画像

図 2-24 Y 分岐導波路⑦ (50pA-2 回照射) AFM 画像

図 2-25 Y 分岐導波路⑧ (100pA-1 回照射) 表面観察画像

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図 2-26 Y 分岐導波路⑧ (100pA-1 回照射) AFM 画像

励振条件変更前 励振条件変更後

Y 分岐導波路⑥

Y 分岐導波路⑦

Y 分岐導波路⑧

図 2-27 近視野像評価結果

光学顕微鏡写真では、照射回数が多い方がより鮮明に導波路を確認できた。また、

AFM 像では照射 1 回の試料をみると蛇腹のようにむらができており導波路が荒くなっ

ていることが確認できた。

近視野像の結果ではすべての試料で励振条件変更後も高次モードは現れず、基本モー

ドのみとなっていることから、シングルモード導波路が作製できたといえる。今後は損

失評価を行うことで照射による影響を調査する必要がある。

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2.4 MZ 型導波路

前節において Y 分岐導波路の作製に成功した。そこで、最終段階である MZ 型導波

路の作製を試みた。

2.4.1 MZ 型導波路の作製

図 2-28 に MZ 型導波路の概略図を示す。

図 2-28 MZ 型導波路

MZ型導波路は前節で述べたY分岐導波路の作製プログラムを図のように左右対称に

描き分岐後の直線部分を重ねることで描画している。

図 2-29 照射イメージ図

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2.4.2 PBW 照射条件

PBW の照射条件を表 2-7 に示す。前節でビーム電流を増やし照射回数を減らしても

問題なく光が導波することを確認できたので、ビーム電流の安定性などを考慮し、以下

の条件で描画を行った。

表 2-7 MZ 型導波路 照射条件

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 100 nC/mm2

導波路幅 8μm(設定値)

ビーム電流 ~50pA

照射回数 2 回

描画方法

2.4.3 光学顕微鏡観察結果

導波路形成後の表面を光学顕微鏡を用いて観察した。図 2-30 に示す。

(a) 表面観察Ⅰ

(b) 表面観察Ⅱ

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(c) 表面観察Ⅲ

図 2-30 光学顕微鏡評価結果

導波路上にはごみはなくきれいに描画されていることが分かる。(c)の写真では、分岐

後の直線部分が重なり、照射痕が濃くなっていることが確認できる。

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2.4.4 近視野像観察結果

MZ 型導波路の近視野象観測結果を図 2-31、図 2-32 に、強度プロファイルを図 2-33、

図 2-34 に示す。測定系は図 2-9 の系を用いた。

図2-31 MZ型導波路 近視野観測結果 図2-32 MZ型導波路 励振条件変更

図 2-33 MZ 型導波路 強度プロファイル 図 2-34 MZ 型導波路 励振条件変更

強度プロファイル

励振条件変更後も高次モードが観測されず基本モードのみ観測されたためこの導波

路はシングルモード導波路だと思われる。よって、MZ 型導波路においてもシングルモ

ード導波路の作製に成功したといえる。

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2.5 光スイッチの作製と評価

前節で MZ 型導波路の作製に成功した。そこで、位相制御部を作製し光スイッチの評

価を試みた。

2.5.1 光スイッチ概要

図 2-35 光スイッチ概略図

本研究で作製する光スイッチの概略図を図 2-35 に示す。基板には Si 基板を使用し、

その上に導波路材料であるポリマを成膜する。導波路のコアに沿ってチタン(Ti)ヒー

タ及びアルミニウム(Al)電極が積載されている。導波路はマッハツェンダー型導波路

となっている。

2.5.2 光スイッチ原理

図 2–36 MZ 型光スイッチの原理説明図

図 2–36 に MZ 型光スイッチの原理説明図を示す。図 2-36 において、A から入射させ

た光は分岐点で導波路Ⅰ、Ⅱに等分され分岐する。ここで、導波路材料に熱を加えるこ

A B L

位相シフタ 分岐点 合波点

導波路Ⅰ

導波路Ⅱ

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とで熱光学効果により屈折率の変化、熱膨張により行路長の変化が起きる(位相シフタ

部)。すると、導波路Ⅰ、Ⅱにおいて位相差が生じ、合波点で合流するのだが、この時、

位相差が半波長分であるとき光は合波点近くで奇モードが励振され、導波路間隔が零に

なると 2 モード導波路の 1 次モードに変換されるので、シングルモード導波路になる過

程で放射され、B には光は現れない。位相差が波長分のときは光が合波点近くで偶モー

ドが励振され導波路間隔が零になると 2 モード導波路の 0 次モードに変換され、シング

ルモード導波路になっても 0 次モードは放射されることなく B で観測される[7]。この

ようにして光スイッチングを行う。

2.5.3 Ti ヒータと Al 電極の設計

Ti ヒータ及び Al 電極を図 2-37 に示す。ヒータ、電極材料の Ti 及び Al はいずれも

抵抗加熱式の真空蒸着法で蒸着させる。

Ti ヒータの幅はエッチングの段階におけるサイドエッジを考慮し、1μm 余分にとっ

て、11μm としている。厚さ 0.1μm、長さ 2.5mm でコア直上にできるように位置を合

わせた。Al 電極も同様に幅 11μm、厚さ 0.3μm である。取り回しは図 2-33 に示すよう、

ヒータとの接続部からコアの直上に 500μm 沿わせた後、コアと直角に曲げ、コアから

100μm 離した後ボンディング用のパッドを設けた。パッドは 100μm 角とし、厚さは電

極と同じく 0.3μm である。

コアの直上を 500μm にわたり電極を引き回したのは、導波路加熱をヒータだけでな

くヒータによって温まった電極の熱も使うためである。これはヒータから電極に流れ出

す熱の有効利用である[8]。

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25

図 2-37 Ti ヒータ、Al 電極のレイアウト

100μm

パッド

100μm 角

導波路コア

500μm

2500μm ヒータ

電極

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2.5.4 Ti ヒータの作製

以下に Ti ヒータ作製方法を示す。

1. 真空蒸着装置にて Ti を蒸着した。

2. スピンコーターにてレジスト(TSMR8900)を塗布した。回転数(rpm×秒)は

1st 800×3―2nd 1000×20―3rd 5000×2 とした。

3. ドライオーブンにてプリベーク(70℃-2 分)を行った。

4. 試料にフォトマスクを被せ、マスクアライナーで位置を合わせ 1.4 秒紫外線露光し

た。

5. NMD3 現像液を用いて現像した。

6. フッ酸(BHF110)を用いて Ti エッチングした。

7. UV ランプを用いて 1 分間露光した。

8. NMD3 現像液を用いてレジストを剥離した。

このような工程で Ti ヒータ完成となる。作製工程図を図 2-38 に示す。

図 2-38 Ti ヒータ作製工程

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Ti 蒸着後、試料にひび割れが発生してしまう事象が多発した。Ti 蒸着時のひび割れを

防ぐことはその後の作業工程に大きく影響してくるので非常に重要である。そこでひび割

れを抑える方法を以下に記述する。

①ガリウム塗布

試料と試料ホルダ(蓄熱ブロック)との間にガリウムを塗布することで放熱を促す。この時

ガリウムは試料の大きさと同じくらい試料ホルダに塗りつけて耐熱テープで試料をしっか

りと密着させる。

②試料と Ti フィラメントの位置

試料が Ti フィラメントの真上にくるように設置されているとひび割れの発生率が高いこ

とが分かった。これも Ti フィラメントからの熱が原因であると思われるが、試料を設置す

る場所も検討する必要がある。

③蒸着時間、電流

Ti は水晶振動子により膜厚を制御しており、900Hz 下がるまで蒸着するのだがこのとき

一度に 900Hz 下げてしまうのではなく数回に分けて行うことで試料への蓄熱を抑えている。

現在行っている方法としては Ti フィラメントに流れる電流は 16A とし、300Hz ごとに区

切り行っている。この時、蒸着時間が 10 分以内であるとひび割れの発生を大幅に抑えられ

ている。しかし、電流と蒸着時間に関してはまだ最適な条件があると思われるので今後も

調査をしていく必要がある。

④試料の冷却

試料の冷却も重要であり、以前は蒸着後の冷却はベルジャー内で 1 時間程度放置してい

たが、冷却が足りずにひび割れも発生してしまうことも尐なくなかった。そこで、300Hz

蒸着が終わったら一度ベルジャーを開け、試料を取り出すことで冷却を行っている。

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2.5.5 Al 電極の作製

Ti ヒータ作製後、Al 電極を作製する。以下に作製工程を示す。

1. 真空蒸着装置を用いて Al を蒸着した。

2. スピンコーターにてレジスト(TSMR8900)を塗布した。回転数は Ti ヒータ作製時と

同じである。

3. ドライオーブンにてプリベーク(70℃-2 分)を行った。

4. 試料にフォトマスクを被せ、Ti ヒータの部分にマスクアライナーで位置を合わせて

1.4 秒紫外線露光した。

5. NMD3 現像液を用いて現像した。

6. 燐酸:硝酸:純水を 20:1:1 の割合で混合した液により Al を 2 分~4 分エッチン

グした。

7. UV ランプを用いて 1 分間露光した。

8. NMD3 現像液を用いてレジストを剥離した。

このような工程で Al 電極完成となる。作製工程図を図 2-39 に示す。

図 2-39 Al 電極作製工程

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2.5.6 スイッチング特性評価

図 2-40 にスイッチング特性測定系を示す。

図 2-40 スイッチング特性測定系

Al 電極に定電流源から電流を流し、Ti ヒータに熱を発生させ、パソコンにより光強

度の変化を観測する。評価は、パソコンに表示される画像を保存し、その画像を画像処

理ソフト「bmp2csv」を用いて数値化し、それぞれの強度の最大値を探すことで行う。

この時、プローブ間電圧 V1および抵抗間電圧 V2をテスタで測定する。V2を抵抗値(1k

Ω)で割ると Ti に流れる電流 I が求められ、これを V1と掛けることでヒータ間の電力

値 W を求めることができる。そして、ヒータ間電力値 W と光強度の関係のグラフを作

成する。

図 2-41 に近視野像、図 2-42 にスイッチング特性グラフを示す。図 2-41 では電流を

流す前と後で導波路からの光が弱まりスイッチとして機能していることが確認できる。

図 2-42のスイッチング特性では消光比 9.0dB 消費電力 43.9mWという結果が得られた。

本研究の目標値は消光比では 30dB[9]、消費電力 45mW[10]であるので消光比を改善す

る必要がある。原因としては以下のことが挙げられる。

①Ti を蒸着する際に発生する熱により試料にひび割れが発生してしまう現象が原因

と考えられる。このひび割れの対策として現在 Ti 蒸着の際に試料と試料ホルダの間に

ガリウムを塗布し、基板の冷却を促す方法と蒸着の際に数回に分けて蒸着することで基

板に加わる熱を抑えている。この方法により大幅にひび割れの発生を抑えることができ

たが、まだ改善の余地があると考えている。

②測定系に問題があると考えられる。実際に得られる光強度とパソコン上から読み取

っている光強度について直線性が保障されていないため、真の消光比が測定できていな

カ メ ラ

制御装置

光ファイバ

試料 顕微鏡 ITV カメラ

パソコン

定 電 流

1kΩ

V1

V2 定電流源

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いと考えられる。これは、導波光の強度を光パワーメーター等を用いて直接測定するこ

とで解決できると考えられる。

(a) ON 状態 (b) OFF 状態

図 2-41 近視野像

図 2-42 スイッチング特性

0 10 20 30 40 50 60 70

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

光強

電力値(mW)

9.0dB

43.9mW

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2.6 まとめ

この章では PBW を用いて PMMA への導波路作製および MZ 型光スイッチの作製を

試みた。

Y 分岐導波路では直線で構成された Y 分岐導波路、正弦関数を用いて構成された曲

線導波路の両方でシングルモード導波路であることが確認できた。また、分岐後の強度

比は 1:0.96 と非常にばらつきの尐ないものであった。ビームの照射条件を変えて作製

した試料に関しては、ビーム電流を上げ照射回数を減らしても問題なく光は導波するこ

とが確認できた。しかし、照射回数が増えるにつれ表面の状態は粗くなっていることか

ら損失も大きくなってしまっていることが考えられる。

MZ 型導波路の作製では正弦関数を用いた曲線導波路においてシングルモード導波

路の作製に成功した。さらに、MZ 型導波路に Ti ヒータ、Al 電極を装荷し光スイッチ

の作製に成功した。消光比 9.0dB、消費電力 43.9mW というスイッチング特性を得た。

しかし、消光比の目標値である 30dB にはおよばなかったため、消光比の改善が求めら

れる。そのためには Ti 蒸着時に発生してしまうひび割れを防ぐことや測定系を見直す

ことが重要だと考えられる。

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下部クラッ

ド層コア層

成膜

上部クラッド

成膜

ポジ

ネガ

エッチング

石英

グラシア

レジスト

塗布 露光 現像

第 3 章 感光性ポリシランを用いた光導波路の作製と評価

3.1 はじめに

日本ペイント社製の感光性ポリシラン“グラシア”を使用しフォトブリーチング法を

用いて MZ 型導波路の作製を行った。また、曲がり導波路を採用し、さらにアンテナ結

合という伝搬光を一度クラッド部へ放射させもう一度導波路に結合させるといった方

法をとることで素子の小型化を目指した。さらに、PBW による導波路形成も試みた。

3.1.1 導波路材料について

導波路に用いた材料はポリマ材料である日本ペイント社製の感光性ポリシラン“グラ

シア”である。グラシアの特徴である紫外線露光部で屈折率が低下するというフォトブ

リーチング効果により導波路作製を行った。従来の石英を用いた場合と比較するとエッ

チングなどの工程を省けるため、グラシアを使用することで簡易なプロセスでの導波路

作製が可能である。石英とグラシアの作製工程の比較を図 3-1 に示す。

※緑は基板、黄色は導波路を表し、黄色の色が濃いほど屈折率が高いことを示す。

図 3-1 導波路の作製プロセス

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3.2 光導波路の設計とシミュレーション

3.2.1 アンテナ結合型 Y 分岐

光スイッチは素子として考えた時、小さい方が好ましいが分岐部分における光の損失は

分岐角度が大きくなるにつれて増える。そこで、導波路の分岐部分にはアンテナ結合型 Y

分岐を用いる。アンテナ結合型 Y 分岐を用いることにより低損失で分岐角度を大きくする

ことができる[11]。

アンテナ結合型 Y 分岐ではいったんクラッドへ放射した光をある角度で置かれたア

ンテナ状の導波路で受け、再び導波させるものである。

図 3-2 従来型 Y 分岐構造

z=0 (2T’secθ–T)cotθ

2T

2T’

n1

n2

n2

n2

θ

θ

z

x

n1

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図 3-3 アンテナ結合型 Y 分岐構造

次に、過去に行われた両導波路の分岐損失についての計算結果を載せる。

3.2.2 アンテナ結合型 Y 分岐の BPM 法による損失評価

ビーム伝搬法(Beam Propagation Method:BPM)によって得られる正規化された

界 E(x,z)に対し、x = 0 に関して対称であるような TE0モードの正規化された固有関数

φ0の 2 つの導波路への電力透過率 η’は、

2

0200 sinexp,2'

dxxnjkxxzxE c θφη

となる。ここに、xcは分岐後の導波路の中心の座標であり、exp(j k0 n2 sinθ x)は E(x,z)

と φ0(x–xc)の位相面の傾きを補正する項である。η’は積分が z に依存しなくなった所で

評価し、–10log η’で分岐損失を定義する。BPM による光伝搬のシミュレーション結果

から、分岐損失を計算できる[12]。

図 3-4 は分岐損失と分岐角の関係である。図 3-4 から従来型 Y 分岐の分岐角度 2θ が

小さくなる(ゼロに近づく)ほど損失も小さくなっているのに対して、アンテナ結合型

Y 分岐では分岐角度が 2θ=3°の時一番損失が小さく、分岐角度が 2θ=3°より小さくなる

(ゼロに近づく)と再び損失が増加していることがわかる。

従来型 Y 分岐の分岐角度 2θ=1°と同等の損失でアンテナ結合型 Y 分岐の分岐角度は

2θ=3°なので導波路のサイズを小さくできる。この結果より、導波路作製において分岐

角度 2θ=3°のアンテナ結合型 Y 分岐を用いた。

2T n1

n2

θ

θ

n2

2T’

x

z

n1

n2

z=0 2T’cosecθ

(3.1)

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図 3-4 導波路のコア幅 2T = 10μm の場合の分岐角度 2θ と分岐損失の関係

3.2.3 曲がり導波路概要

図 3-5 曲がり導波路で構成された MZ 型導波路の光スイッチの概略図

La=25mm

位相制御部

Ls=3mm

導 波 路 間 隔

W=310μm

2θ=3°

Lf

Le

Ld

Lc=381.95μm

Lb

Lm

熱が干渉しない程度離さな

ければならない

導波路のサイズはプロセスや実験が容易な25mm以下を

目安に設計

0

2

4

6

8

10

12

14

16

0 2 4 6 8 10 12

2θ (degrees)

junction loss

(dB

)

従来型 Y 分岐

アンテナ結合型

Y 分岐

アンテナ結合型Y分岐

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3.2.2 節の分岐によるシミュレーションでは全て直線で構成された導波路についての

損失について述べたが、図 3-5 のように分岐後―位相制御部間の導波路に曲率半径を指

定した曲がり導波路構造を取り入れる事で、位相制御部との交点における損失を尐なく

することができる。

図 3-5 の MZ 型導波路では、Ld は直線、Le、Lf は同じ曲率半径の曲線となっている。

光の伝搬特性に対して大きな影響を及ぼすのは、一般に伝搬定数よりも電磁界分布の

変形である。電磁界分布は図 3-6 のように屈折率分布が y 軸に沿って傾くと、全体が屈

折率の大きいほうに引き寄せられるように y の正方向にずれる。したがって、直線導波

路から曲がり導波路に光が入射すると、図 3-6(a)に示すようにモード電磁界分布の

中心が一致しないので損失が起きる。これを低減するには、図 3-6(b)のように電磁

界分布の中心が一致するように導波路の中心軸をずらして設計する必要がある。曲率が

逆向きの導波路同士を接続する場合も、同様の工夫が必要である。

曲がり導波路の軸ずれは BPM でシミュレーションすることで求められる。シミュレ

ーションにより曲がり導波路に入射した光の界分布がグラフ化されるので、その界分布

の中心が導波路の中心座標からどれくらいずれているかをグラフから読み取るという

ものである。シミュレーションの詳細については過去に OB の福田俊介氏が行ったもの

を付録に載せる。以下、軸ずれの値のことをオフセット値と呼ぶことにする。

(a)導波路の中心を合わせた場合

等価的な

軸ずれ

放射

y

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(b)界分布の中心を合わせた場合

図 3-6 直線導波路から曲がり導波路への接続部の電磁界分布

3.2.4 曲がり導波路設計

曲がり導波路の設計のために、図 3-5 における Lm(分岐点から分岐点までの長さ)

が計算されている[12]。これを表 3-1 に示す。

表 3-1 分岐点から対称な分岐点までの長さ

MZ 型導波路 分岐角度

2θ[°]

曲率半径

(cm)

Lm の長さ

(mm)

アンテナ結合型

Y 分岐 3°

7 14.67

12 17.30

17 19.19

20 20.07

従来型 Y 分岐 1° 17 22.04

図 3-5 の直線導波路部 Ld の長さ、曲がり導波路部 Le、Lf の曲率半径を変化してい

て、Le、Lf は互いに曲率が逆向きであり曲率半径は等しくなっている。Le、Lf の接続

部のオフセット値は、直線導波路と曲がり導波路の接続部のオフセット値を 2 倍にした

値である。MZ 型導波路のサイズはプロセスや実験が容易な 25mm 以下を目安に設計

をしてある。分岐部分にはアンテナ結合型 Y 分岐で分岐角度を 2θ=3°、位相シフタ部の

導波路長を Ls=3mm、位相シフタ部の導波路間隔を導波路の中心を基準として

y

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W=310μm、とし一定の値としてある。

曲率半径は、従来型のY分岐導波路のサイズとほぼ一緒となるR=7cmを最小値とし、

より低損失にするために、曲率半径を 5cm おきに大きくした R=12cm、R=17cm の MZ

型導波路、図 3-5 の曲がり導波路部 Le を省いた曲率半径 R=20cm の MZ 型導波路とな

っている。また、作製上限界に近いサイズの導波路として、従来型 Y 分岐で分岐角度

2θ=1°、曲率半径 R=17cm の MZ 型導波路も設計されている。

表 3-2 に、BPM を用いて得られたそれぞれのオフセット値、損失を示す。作製上限界

に近いサイズの導波路として、従来型 Y 分岐で分岐角度 2θ=1°、曲率半径 R=17cm の

MZ 型導波路についても、載せてある。

表 3-2 設計した MZ 型導波路(1)~(7)のそれぞれの全体の損失

MZ 型導波路 分 岐 角 度

曲 率 半 径

(cm)

オフセット

(μm) 損失(dB)

(1) 従来型Y分岐

3° 0 0 4.593

(7) 1° 17 0.15 0.1542

(2)

アンテナ結合型Y分岐

0 0 3.397

(3) 7 0.4 0.2041

(4) 12 0.22 0.1941

(5) 17 0.15 0.175

(6) 20 0.1 0.1561

応用を考えた際、損失は 1dB 以下となることが望ましい。表 3-2 から、アンテナ結

合型 Y 分岐を用いた曲がり導波路を採用することで、3°という広い分岐角で曲率半径

を 7cm としても、その損失は 1dB 以下となることが分かっている。よって、表 3-2 に

おける(3)~(7)の導波路と、Ti ヒータ、Al 電極のパターンをフォトマスクにのせること

にしている。(フォトマスクの作製は業者に委託)

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3.3 試料の作製・評価

3.3.1 導波路の作製

以下に導波路の作製工程について述べる。

1. Si 基板をアセトン 5 分、エタノール 5 分、純水 3 分という順で超音波洗浄する。フ

ッ酸処理はせず、酸化膜は付いたままにした。

2. スピンコーターでグラシアを Si 基板上に塗布する。回転数(rpm×秒)は

1st 800×3―2nd 1000×20―3rd 5000×2 とした。

3. ホットプレートで加熱した(プリベーク)。

4. その試料にフォトマスクを被せマスクアライナーで位置を合わせ紫外線露光した

(紫外線が照射された部分の屈折率が低下する)。

5. マッフル炉(デンケン:KDFS-70)で試料を加熱した(ポストベーク)。導波路の下ク

ラッドの完成である。

6. 2~5 の手順を繰り返してコア、上クラッド層を作製し導波路の完成となる。

下クラッド、コア層、上クラッドの作製において、露光の条件を表 3-3 にプリベーク、

ポストベーク時の作製条件を表 3-4 に示す。また、作製工程を図 3-7 に示す。

表 3-3 露光条件

No,1 No,2 No,3 No,4 No,5 No,6

下クラッド層(min) 0 0 0 0 15 15

コア層(min) 6 10 10 15 6 10

上クラッド層(min) 15 10 15 15 6 6

過去の研究では表 3-3 に示す No,1 の条件で露光を行い光スイッチの作製を行ってき

たが位相制御部作製後にマルチモード導波路となり、目標であるシングルモード導波路

での光スイッチの作製に至らなかった。そこで、位相制御部の作製後もシングルモード

導波路となる試料作製を目指し、露光条件を変えた試料を作製した。

表 3-4 ベーク条件

プリベーク

(ホットプレート)

ポストベーク

(マッフル炉)

下クラッド 140℃ 20 分後

250℃ 30 分

140℃ 10 分後

370℃ 45 分

コア層 140℃ 20 分後

250℃ 30 分

140℃ 10 分後

350℃ 45 分

上クラッド 140℃ 20 分後

250℃ 30 分

140℃ 10 分後

350℃ 45 分

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ベークは表 3-4 に示す条件で行った。プリベークはホットプレートの温度が 140℃に

なってからサンプルを入れ、20 分ベークを行う。20 分後、サンプルを入れたままホッ

トプレートのセット温度を変え、ベークする。

ポストベークも同様で、マッフル炉の温度が 140℃となったらサンプルを入れ、それ

以降、サンプルをとりだすことなく温度を上げるため、高温過程の 45 分という時間は

上昇時間を含んだものとなっている。

図 3-7 導波路作製手順

3.3.2 近視野像の評価

近視野像の評価には図 2-7 と同じ系を用いた。

しかし、作製した導波路は上クラッド成膜時には肉眼で確認するのも困難なほど薄く

なってしまった。原因としてはコア露光の際にすでに導波路は薄くなっていたことから

マスクと試料の密着性が良くなかったことや光源のパワーが足りなかったことなどが

考えられる。また、ポストベーク後も導波路が薄くなることが確認されたため、プリベ

ークも含めて再度、ベーク温度とベーク時間を検討する必要があると考えられる。

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3.4 PBW を用いた光導波路の作製

これまで感光性ポリシランには紫外線露光を用いて導波路の作製を行ってきたが、材

料探索の一環として前章で述べた PBW による導波路の作製を行った。

3.4.1 導波路構造

図 3-8 に導波路構造を示す。基板はへき開のしやすい Si 基板を使用した。下クラッ

ド層には SiO2 をコア層と上クラッド層には感光性ポリシランを使用した。また、導波

路構造は評価の際に確認のしやすい Y 分岐導波路とした。

図 3-8 導波路構造

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3.4.2 導波路作製方法

図 3-9 に導波路の作製方法を示す。

図 3-9 導波路作製方法

Si 基板 20mm×40mm 上に RF スパッタリングにて SiO2を 15μm 程度成膜する。

コア層には感光性ポリシランをスピンコーターにて 10μm 成膜する(スピンコート条件

は 3.3.1 と同じ)。その後プロトンビームを照射してコアを形成し、上クラッドとして

再び感光性ポリシランを成膜して完了となる。この時、コア層と上クラッド層のポスト

ベークは行っていない。

3.4.3 PBW 照射条件

表 3-5 に PBW の照射条件を載せる。ドーズ量を 100, 200, 300 nC/mm2と変えた 3 つ

の試料を作製し、ドーズ量の変化によるシングルモード導波路の作製を目指した。

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43

表 3-5 照射条件

照射エネルギー 1.7MeV

ドーズ量 100, 200, 300 nC/mm2

導波路幅 8μm(設定値)

ビーム電流 ~50pA

描画回数 2 回

描画方法

3.4.4 光学顕微鏡および AFM による評価

作製した試料の表面を光学顕微鏡と AFM を用いて観察した。結果を図 3-10~図 3-15

に示す。

図 3-10 光学顕微鏡による表面観察結果(ドーズ量 100 nC/mm2)

図 3-11 AFM による表面観察結果(ドーズ量 100 nC/mm2)

8 μm

12.5 nm

100 μm

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44

図 3-12 光学顕微鏡による表面観察結果(ドーズ量 200 nC/mm2)

図 3-13 AFM による表面観察結果(ドーズ量 200 nC/mm2)

図 3-14 光学顕微鏡による表面観察結果(ドーズ量 300 nC/mm2)

図 3-15 AFM による表面観察結果(ドーズ量 300 nC/mm2)

100 μm

100 μm

8 μm

8 μm

16.5 nm

15.7 nm

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結果をみると光学顕微鏡と AFM の画像は共に2章で述べた PMMA 導波路と同様の反

応が観察できた。また、AFM 画像ではドーズ量の増加に伴い、ビーム照射部の窪みも

深くなっていることが確認された。これは、ビーム照射により感光性ポリシランが収縮

していることがいえる。

3.4.5 近視野像観察結果

図 3-16 に観察結果を示す。測定系は図 2-7 を用いた。

励振条件変更前 励振条件変更後

ドーズ量 100 nC/mm2

ドーズ量 200 nC/mm2

ドーズ量 300 nC/mm2

図 3-16 近視野像評価結果

3つの試料すべてで導波光を確認することができた。これは、プロトンビームの照射

により照射部分の屈折率が上昇したことにより導波路が形成されたといえる。しかし、

励振条件の変更後の画像では高次モードが観測されているためこれらの導波路はマル

チモード導波路であると思われる。

今後、ビーム照射部の屈折率変化の測定を行っていき、シングルモード条件となるよ

うな構造を考えていく必要があると考えられる。

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46

3.5 まとめ

ポリマ材料“グラシア”を用いた MZ 型導波路の作製を試みた。導波路の分岐角度は

3°、分岐部分にはアンテナ結合型 Y 分岐を用い、分岐後は曲がり導波路を採用した。

実際に試料を作製したところ導波路が肉眼では確認できないほどに薄くなってしまっ

た。原因としては露光時にマスクと試料の密着性が良くなかったことや光源のパワーが

足りなかったことなどやポストベーク後にも導波路が薄くなってしまったことからプ

リベークも含めてベーク温度とベーク時間の検討をする必要があると考えられる。

また、PBW を用いた導波路の作製を行った。ビーム照射後の試料の表面は PMMA

と同様の反応が確認できた。近視野像の評価では導波光を確認できたがマルチモード導

波路であった。今後、ビーム照射部の屈折率変化の測定を行っていき、シングルモード

条件となるような構造を考えていく必要があると考えられる。

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第 4 章 周期構造を用いた太陽電池の高効率化の検討

4.1 はじめに

近年、地球温暖化や石油資源枯渇などが世界的な問題となっており、現在、クリーン

なエネルギーとして注目されている太陽電池の変換効率の向上は急務となっている。太

陽電池に入射する光は太陽電池表面での表面散乱や反射などにより入射光エネルギー

の 35~45[%]が失われる[13]。そこで、周期構造を設けることで回折ベクトルの作用に

より、入射光の反射率を低減させ、より多くの光を取り込むことが可能となる。本研究

では2光束干渉露光法により簡易な作製プロセスで再現性の高い図 4-1のような周期構

造を太陽電池表面へ導入することで変換効率の向上を目指した。

図 4-1 周期構造

4.1.1 周期構造による回折ベクトルの作用

太陽電池に入射する光は表面での反射などにより損失が生じ、出力の低下につながっ

ている。そこで、周期構造を施すことで、表面で発生する光の反射を回折ベクトルによ

り抑制し、より多くの光を太陽電池に取り入れることが期待できる。本来、回折ベクト

ルは屈折率が高い層から低い層へと光が入射する際に全反射臨界角を算出し、そこから

最適周期を求める。よって、今回の研究(図 4-2)のような屈折率が低い層から高い層へ

と光が入射した場合は境界面で全反射は発生しない。しかし、境界面では光が反射され

ているため、この反射した光については回折ベクトルが作用し、反射光が抑制されると

考えられる[14]。

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図 4-2 回折ベクトルの作用による反射光の抑制

4.2 周期構造の作製

周期構造の作製手法、実験系などについて述べる。

4.2.1 2 光束干渉露光の原理

図 4-3 に 2 光束干渉露光の原理図を示す。

図 4-3 2 光束干渉露光の原理

同一波長を持つ、たがいにコヒーレントな光波は互いに相関が強く、干渉を起こす。

パターンを作製する試料は x 軸上にあるとする。試料に対して 2 方向から角度θだけ傾

いて入射する。1 つの波面の伝播方向を z 軸方向として、他方の伝播方向軸 z’が y 軸を

中心に角度θだけ傾いているときのそれぞれの電界は

Ey1=A1exp[j(ω0t-k0nz+Φ1)] (4.1)

D=λ/nsinθ

D:周期

λ:波長(=325nm)

θ:2 つの波長の傾斜角

n:空気の屈折率

A1,A2:それぞれの波面の光強度

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49

Ey2=A2exp[j{ω0t-k0n(zcosθ+xsinθ)+Φ2}] (4.2)

と表される。従って、試料上の光強度分布を求めると、

IL(x)=(k0n/2ωμ0)・[A12+A2

2+2A1A2cos{Φ1-Φ2+k0n(z-zcosθ-xsinθ)}] (4.3)

となる。試料は x 軸上に固定されているので、{Φ1-Φ2+k0n(z-zcosθ)}は定数であり、IL(x)

は x に依存して濃淡を変え、干渉縞が得られる。その干渉縞の周期 D は

D=λ/nsinθ (4.4)

である。干渉縞は 2 つの光強度 A1、A2が同じ場合には明暗の差が明瞭になり、差があ

るときには干渉縞の明瞭度は弱められる。入射角θが大きくなるほど、周期 D は小さ

くなる。また、n は空気の屈折率である。

4.2.2 2 光束干渉露光法の実験系

図 4-4 に実験に用いた 2 光束干渉露光法の実験系を示す。光源には He-Cd レーザ(λ

=325nm)を用いるが、このレーザのビーム径は 1.2mm と狭く干渉露光には広範囲の

光を必要とするため、ビームエキスパンダにより 40 倍に拡大する。拡大した光はハー

フミラーにより透過光と反射光に分け、それぞれミラーで反射させ干渉露光を行った。

露光時間の制御には電磁シャッターを用いた。一度基板に干渉露光し、一次元周期を付

けた後、90°回転させ、再び干渉露光することで 2 次元正方格子の周期構造の作製を

行った。

図 4-4 2 光束干渉実験の実験系概略図

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4.2.3 周期構造の作製手順

以下に周期構造の作製方法について述べる。

1. スピンコーターにてフォトレジスト(東京応化製、THMR-iP3500HP)を塗布した。

回転数(rpm×秒)は 1st-300×3、2nd-7000×20 とした。

2. ドライオーブンにて 90℃-90 秒ベークした。

3. 図 4-4 の実験系にて露光した。

4. ドライオーブンにて 110℃-90 秒ベークした。

5. 冷却後、NMD3 現像液に 65 秒間浸し現像した。

4.3 光学特性評価

図 4-5 に示すような試料において周期長、深さを変えて光学特性に評価を試みた。

図 4-5 光学特性評価試料

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4.3.1 周期長別による反射率の評価

ZnO 薄膜上に周期構造を周期長 1000nm,1200nm,1400nm,1600nm,1800nm と変え

てそれらの反射率を測定した。深さは 500nm で統一した。測定には分光光度計を用い

た。測定結果を図 4-6 に示す。

図 4-6 周期長別反射率

結果をみると周期構造を施した試料は flat な試料と比べて全体的に反射率が低減さ

れていることがみてとれる。太陽光のピーク波長である 500nm 近傍で反射率をみると

周期長 1400nm の試料の値が低く、flat な試料と比較すると反射率は 18.4%から 2.4%

まで低減したことが分かった。

300 400 500 600 700 800

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

Reflecta

nce(%

)

Wavelength(nm)

FLAT 1000nm 1200nm 1400nm 1600nm 1800nm

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4.3.2 深さ別による反射率の評価

ZnO 薄膜上にレジストの膜厚を 500nm,700nm,900nm,1100nm と変えて周期構造を

作製してそれらの反射率を測定した。周期長は 1400nm に統一した。測定結果を図 4-7

に示す。

図 4-7 レジスト膜厚別反射率

結果をみると周期の深さが深くなるにつれて反射率も小さくなる傾向が得られた。し

かし、この結果は膜厚が厚くなったことによる光の吸収なども考えられるため正確な数

値でないことが考えられる。今後は実際に太陽電池表面に周期構造を施すことで出力特

性を比較し有用性を確認する必要がある。

300 400 500 600 700 800

0

2

4

6

8

10

12

Reflecta

nce(%

)

Wavelength(nm)

500nm 700nm 900nm 1100nm

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4.4 周期構造導入による太陽電池の I-V 特性

前節で述べた周期構造により反射率の低減が見込まれたため、図 4-8 のような構造

で試料を作製し I-V 特性を測定した。比較のため周期構造のないレジストのみ試料と周

期長 1400nm 試料の 2 つを測定した。使用した ZnO/Si 系太陽電池は、過去のデータ[14]

から最も大きい変換効率を得た太陽電池と同条件で作製した(共スパッタAlワイヤ本数

7 本、ZnO 成膜 3 時間、SiO2成膜 5 秒、N2アニール有)。図 4-9 は太陽電池表面に施し

た周期構造の AFM 像である。

(a)周期構造なし (b)周期構造あり

図 4-8 作製した試料の断面図

(a)断面図 (b)鳥瞰図

図 4-10 導入した周期構造の断面図と鳥瞰図の AFM 像

1400nm

190nm

20μ m 20μ m1400nm

190nm

1400nm

190nm

20μ m 20μ m20μ m 20μ m

1400nm

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4.4.1 変換効率の測定法

図 4-10 に実験に用いた測定系を示す。

(a)測定回路 (b)I-V 特性

図 4-10 太陽電池の測定回路(a)と I-V 特性(b)

変換効率の測定には入射光に Pin=100mW/cm2 の白熱電球を用い、開放電圧 VOC と

短絡電流 JSCおよび抵抗を変化させた時の電流と電圧の値を測定した。測定した数値を

下の式に代入することで変換効率 η を算出した。

η=

(4.5)

ここで、Vmaxと Imaxは最大電力値 Pmaxの時の電圧と電流の値とする。また、曲線因

子(FF:curve Fill Factor)は以下の式で与えられる。

(4.6)

つまり、FF は 1 に近いことが好ましいが、VOC,JSC自体の値を大きくすることも重要

である。また、図 4-10(a)の測定回路では電流計により電流を測定しているが、電流計

の内部抵抗が FF を低下させる恐れがあるため、実際の測定では外した。よって、電流

は抵抗と電圧の値から算出した。

太陽電池 V

VOC Vmax

JSC

Jmax

Pmax

0

P(Vmax, Jmax)

入射光 Pin=100mW/cm2

抵抗

I

Pin

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4.4.2 周期構造導入による I-V 特性

結果を図 4-11 に示す。また、測定をおこなった各試料の短絡電流密度 Jsc、開放電圧

Voc、曲線因子 FF、変換効率 η を表 4-1 に示す。

図 4-11 周期構造の有無による I-V 特性

表 4-1 周期構造の有無による各パラメータ

Jsc[μA/cm2] Voc[mV] FF[%] η×10-6[%]

周期無し(flat) 0.0434 166.5 24.0 1.74

周期有り(1400nm) 0.0894 188 24.3 4.09

結果をみると周期構造の有無により違いがあることが分かった。周期構造を施した試

料は周期構造無しの試料に比べ最大電流密度は 2.06 倍、変換効率は 2.35 倍と出力が向

上した。これは、周期構造により入射光の反射が抑えられ、より多くの光を取り込めた

ためであると考えられる。

今後はエッチングにより周期構造を ZnO 膜に転写することでレジスト膜で吸収され

ていた光や反射光などがさらに太陽電池表面へと入射することが考えられ、さらなる機

能向上が期待できる。

0 50 100 150 2000.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Curr

ent(μ

A/cm

2 )

Voltage(mV)

周期あり(1400nm) 周期なし(FLAT)

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4.5 まとめ

この章では太陽電池表面への 2 光束干渉露光法を用いた周期構造導入により、変換効

率の向上を目指した。

周期長 1000nm,1200nm,1400nm,1600nm,1800nm および flat の試料を作製し、反

射率を評価したところ、周期長 1400nm の試料が最も反射率を抑えられ、太陽光のピ

ーク波長 500nm 近傍における反射率は flat の試料の約 86%程度であった。また、レジ

スト膜厚(周期深さ)を 500nm,700nm,900nm,1100nm と変えた試料に周期長 1400nm

の周期構造を施し、反射率を測定したところレジスト膜厚が厚くなるにつれて低減され

ていることがわかった。しかしこの結果は膜厚が厚くなったことによる光の吸収なども

考えられるため正確な数値と言えないと思われる。今後は実際に太陽電池に周期構造を

施すことで出力特性を比較し有用性を確認する必要がある。

次に、レジスト膜厚 500nm、周期長 1400nm の周期構造を ZnO/Si 系太陽電池表面

に施し、I-V 特性を測定した。表面が flat な試料と比較すると最大電流密度は 2.06 倍、

変換効率は 2.35 倍向上した。これは、周期構造による入射光の反射率の低減により、

光を効率良く取り入れることができ、変換効率が向上したことが考えられる。今後はエ

ッチングにより ZnO に周期構造を転写することでレジスト膜を除去することでさらな

る性能向上が期待できる。

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57

第 5 章 結言

本研究では低コスト、加工がしやすいといった特徴から有機材料に着目し光機能性デバ

イスの性能向上を目指し、PMMA、感光性ポリシランを用いた光導波路および光スイ

ッチの作製やフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ技術を利用した周期構造導

入による太陽電池の高効化を行った。

第 2章ではプロトンビームを用いた微細加工技術であるPBWによる導波路の作製およ

び光スイッチの作製について述べた。

Y分岐導波路については直線で構成されたY分岐導波路と正弦関数を用いた曲線型Y

分岐導波路ともにシングルモード導波路であることが確認された。また、分岐後の強度

比もばらつきが尐ないことがわかった。ビーム電流を上げて照射回数を減らした導波路

でも問題なく光は導波することが分かった。しかし、導波路の表面は照射回数が尐なく

なるにつれ荒れていることから損失が大きくなることが考えられる。今後、損失の測定

を行うことで最適な照射条件を決める必要がある。

MZ 型導波路の試料もシングルモード導波路の作製に成功した。したがって、この試

料に Ti ヒータおよび Al 電極を装荷し光スイッチを作製した。スイッチング特性は消光

比 9.0dB 消費電力 43.9mW であった。消光比が良くない理由として Ti 蒸着時に発生す

る試料のひび割れと測定系の 2 つが考えられる。今後、Ti 蒸着時に試料への蓄熱を抑

えること、また、光強度の評価にパワーメーターを用いることで改善されると思われる。

第 3 章では感光性ポリシラン「グラシア」を用いた光導波路の作製について述べた。

導波路の分岐部分には分岐角 3°のアンテナ結合型 Y 分岐を用い、分岐後の導波路に

は曲がり導波路を採用し、素子の小型化、低損失化を図った。しかし、導波路作製後肉

眼で確認できないほどに薄くなってしまった。コア作製時の試料とマスクの密着性やベ

ーク条件を見直す必要がある。

また、今回初めての試みとして PBW を用いて導波路の作製を行った。得られた導波

路はマルチモードであったため、今後シングルモード導波路となる条件を探していく必

要がある。

第4章では2光束干渉露光法を用いた周期構造作製による太陽電池の変換効率向上につ

いて述べた。

周期長 1000,1200,1400,1600,1800 nm また表面が平坦な試料を作製し、反射率の測

定を行ったところ、周期長 1400nm の試料が最も反射率を抑えられることが分かった。

また、レジストの膜厚を変えて反射率を測定したところ厚くなるにつれ反射率が低減さ

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れる結果となった。しかし、レジストの厚さによる影響により正確な値でないことが考

えられ、今後は太陽電池表面に周期構造を作製し出力を測定することで比較していく必

要がある。

ZnO/Si 系太陽電池表面に周期構造を作製し、出力を測定したところ表面が平坦なも

のと比べ最大電流密度は 2.06 倍、変換効率は 2.35 倍向上をした。これは、周期構造に

よる入射光の反射率の低減により、光を効率良く取り入れることができ、変換効率が向

上したことが考えられる。今後はエッチングにより ZnO に周期構造を転写することで

レジスト膜を除去することでさらなる性能向上が期待できる。

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謝辞

本研究を行うにあたり終始的確で丁寧なご助言、ご指導をして頂き、研究の場を与え

てくださった花泉修教授に心より感謝致します。

本論文の作成に当たり、お忙しい中審査をしてくださった、高橋佳孝准教授に感謝い

たします。

PBW 技術を使用した光デバイスの共同研究行うに当たり、お忙しい中試料の作製を

していただいた日本原子力研究開発機構の関係各位に心より感謝いたします。

本論文の作成に当たり、お忙しい中審査をしてくださった、三浦健太准教授に感謝い

たします。また、様々な場面で多数のご助言、ご指導を頂き心より感謝いたします。

マスクアライナー使用に当たりご協力を頂いた櫻井浩教授、尾池弘美技術職員、福長

隆之研究員に心より感謝いたします。

本研究を行うにあたり、様々な場面で多数のご助言、ご指導を頂いた佐々木友之助教

に心より感謝します。

本研究を行うにあたり、様々な場面で多数のご助言、ご指導を頂いた野口克也技術専

門職員に心より感謝します。

日々の研究を行うにあたり、共に研究を行ってくださった修士 1 年の小澤優介氏、横

田潤一氏、学部 4 年の久保田篤志氏、小林俊介氏、塩野将氏、王蒙懿氏に心より感謝い

たします。

本研究を行うにあたり、共に助け合い、研究生活を有意義なものにしてくれた同期院

生、後輩の皆さんに心より感謝します。

本研究は多くの方々のご指導・ご助言のもとになされたものであり、様々な面で協力

をいただいた関係諸氏に改めて感謝し、お礼申し上げます。

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文、2007.3

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論文、2007.3

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[13] 濱川圭弘、“太陽電池” 株式会社コロナ社 P.37

[14] 平沢尚紀、“ZnO/Si 系材料を用いた光機能性デバイスの作製に関する研究” 、群

馬大学大学院修士学位論文、2010.3

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付録 BPM 法によるシミュレーション結果

MZ 型導波路の半分のレイアウト図と、MZ 型導波路全体のシミュレーション結果を

次の(1)~(5)に示す。

(1) アンテナ結合型 Y 分岐、分岐角度 2θ=3°、曲率半径 R=7cm、オフセット 0.4μm

の曲がり導波路で構成された MZ 型導波路

(a) MZ 型導波路の半分のレイアウト図

(b) MZ 型導波路全体の MZ 型導波路全体の x–z 平面上の界分布|E(x,z)|

(縦軸の単位は Amplitude、x 及び z 軸の単位は μm)(全体の損失 0.2041 dB)

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(2) アンテナ結合型 Y 分岐、分岐角度 2θ=3°、曲率半径 R=12cm、オフセット 0.22μm

の曲がり導波路で構成された MZ 型導波路

(a) MZ 型導波路の半分のレイアウト図

(b) MZ 型導波路全体の MZ 型導波路全体の x–z 平面上の界分布|E(x,z)|

(縦軸の単位は Amplitude、x 及び z 軸の単位は μm)(全体の損失 0.1941 dB)

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(3) アンテナ結合型 Y 分岐、分岐角度 2θ=3°、曲率半径 R=17cm、オフセット 0.15μm

の曲がり導波路で構成された MZ 型導波路

(a) MZ 型導波路の半分のレイアウト図

(b) MZ 型導波路全体の MZ 型導波路全体の x–z 平面上の界分布|E(x,z)|

(縦軸の単位は Amplitude、x 及び z 軸の単位は μm)(全体の損失 0.1750 dB)

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(4) アンテナ結合型 Y 分岐、分岐角度 2θ=3°、曲率半径 R=20cm、オフセット 0.1μm

の曲がり導波路で構成された MZ 型導波路

(a) MZ 型導波路の半分のレイアウト図

(b) MZ 型導波路全体の MZ 型導波路全体の x–z 平面上の界分布|E(x,z)|

(縦軸の単位は Amplitude、x 及び z 軸の単位は μm)(全体の損失 0.1561 dB)

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(5) 従来型 Y 分岐、分岐角度 2θ=1°、曲率半径 R=17cm、オフセット 0.15μm

の曲がり導波路で構成された MZ 型導波路

(a) MZ 型導波路の半分のレイアウト図

(b) MZ 型導波路全体の MZ 型導波路全体の x–z 平面上の界分布|E(x,z)|

(縦軸の単位は Amplitude、x 及び z 軸の単位は μm)(全体の損失 0.1542 dB)


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