Download - 13 小型航空機の運航支援に 関する予備的研究 - ASAHI Net→FIS-B: 飛行情報サービス放送 航空安全に係る情報と気象情報を送信 →ADS-B受信:航空官署等で、航空機の位置確認
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航空機の安全運航を支援する情報を地上から送信する技術
(TIS-B、FIS-B)について
塩地 誠、 小瀬木 滋、 米本 成人、
大津山 卓哉、 三垣 充彦
独立行政法人 電子航法研究所
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発表の概要
1. はじめに
航空機は周囲の交通状況がわかっているか?
2. ADS-BとTIS-Bについて
航空機から、また、地上から周囲の航空機情報を送る
通信媒体(メディア)の違い
3. 小型航空機用のUATとGBT3.1 キャプストーン計画とUAT3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験
4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置
試作装置の概要
5. まとめ
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1. はじめに
航空路監視レーダー
航空管制により 安全な間隔を維持
航空機は周囲の交通状況がわかっているか?
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1.はじめに (その2)2種類の飛行方式と周囲の交通状況の把握
• 計器飛行(IFR: Instrument Flight Rule)航法装置により、自機の位置を知る。他機との間隔維持は、航空管制による。
周囲の交通状況は、管制官からの通知、通信の傍受、(気象レーダ、衝突防止装置:CAS)によって知る。
• 有視界飛行(VFR: Visual Flight Rule)目視が頼り (視界を維持し、雲には入らない)
(定められた高度を飛行、30分おきに連絡)
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1. はじめに (その3)初めは操縦士の願望:
周囲を飛行する航空機の様子を知りたい。航空管制のレーダと同じものを見たい。
↓機上監視機能(空対空監視支援)ASAS:Airborne Separation Assistance System
(では、 周囲の交通状況を操縦席に表示する方法は?)
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2. ADS-B と TIS-Bについて
ADSADS--BB航空機航空機がが位置情報を自動位置情報を自動送信送信するする
地上送信装置 地上で把握した航空交通状況
(位置情報)を航空機へ自動送信
TIS-B
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2. ADS-BとTIS-Bについて (その2)• ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast;放送型自動位置情報伝送・監視機能)航空機が自機の位置情報などを自動送信
・ TIS-B(Traffic Information Service -Broadcast;放送型トラフィック情報サービス)
地上の航空官署が把握した航空交通情報を送信
・ FIS-B(Flight Information Service -Broadcast;放送型飛行情報
サービス)
気象情報や、安全運航に役立つ情報を地上から送信
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• 1090MHz モードS 拡張スキッタ→ 国際標準 「主流」 (19年度からTIS-B等の研究)
• UAT→ 国際標準、米国では小型機で実用。
(周波数978MHz、実験データは1090MHzの参考になる)
• VDL-(モード)4 → 国際標準、VHF航空無線帯
• (参考) AIS (船舶自動識別装置)→ VDL-4と同技術 、船舶では国際標準、搭載義務化
2. ADS-BとTIS-Bについて (その3)ADS-B,TIS-B,(FIS-B)の伝達手段
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3. 小型航空機用のUATとGBT
3.1 キャプストーン計画とUAT米国アラスカ州の小型航空機安全対策
キャプストーン・プログラムと
UAT(ユニバーサル・アクセス・トランシーバ)
3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(航空機上で UAT受信信号強度 を測定)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と電子航法研究所との共同研究。
アラスカ州アンカレッジ周辺で実施。
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3.1 キャプストーン計画とUAT(アラスカ州の航空事情と小型航空機安全対策)
• 米国アラスカ州は陸上交通は不便、小型航空機が便利な交通手段 (利用多い)→ 事故が多かった(地形、天候等の要因)
・ FAA(米国連邦航空局)アラスカ地方局を中心とした安全活動
→ 安全啓蒙活動 (特に飛行前、飛行場内)→ 移動式フライトシミュレータ による訓練→ ウェザーカメラ
(飛行場、交通要所のインターネット画像)
→ そして キャプストーン計画
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3.1キャプストーン計画とUAT(その2)
FAAのキャプストーン計画
フェーズ Iフェーズ IADSADS--B +B +関連技術関連技術
フェーズ IIフェーズ IIWAAS + WAAS + 関連技術関連技術
フェーズ3 アラスカ州全体に展開
フェーズ3 アラスカ州全体に展開
WAAS
ADS-B(放送型自動従属監視)
地上局(GBT)
アンカレッジ管制部
地方空港
978MHz
レーダー情報(TIS-B)
気象情報(FIS-B)
TIS-B/FIS-B
TIS-B/FIS-B
GPS
WAAS/RNAVルート
フェーズ1
フェーズ2
運航管理者
インターネット
フェーズⅠの効果:
航空事故が47%軽減
(空中衝突事故0件)
就航率が50%向上
捜索救援時間の短縮
フェーズⅠ:UATとGBTによるADS-B,TIS-B,FIS-Bの実証試験
フェーズⅡ:WAAS (GPS広域補強システム)
/RNAVの実証実験
フェーズⅢ:アラスカ州全域に展開
(米国資料より編集、 国土交通省航空局提供 )
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3.1 キャプストーン計画とUAT(その3)・ 小型航空機の操縦席に表示装置
(MFD:Multi Function Display)を搭載し、
周囲の航空機の位置を
レーダーのように表示。
地形図(データ搭載)も表示、
気象(悪天候)も表示。
(左図は
キャプストーン計画
初期(2000年頃)の
表示装置)
自機
周辺機
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3.1 キャプストーン計画とUAT(その4)
• UAT : Universal Access Transceiver(小型機に搭載される航空機相互間、航空機と地上間
のデータ通信装置)の機能
→ADS-B:放送型自動位置情報伝送・監視機能 (別名:
放送型自動従属監視) (航空機相互間で位置、高度、速度、進行方向を自動送/受信)
→TIS-B:トラフィック情報サービス放送
(地上から自動送信されるものを機上で受信)
→FIS-B:飛行情報サービス放送 (地上から。機上で受信)
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3.1キャプストーン計画とUAT (その5)• 地上局(GBT: Ground-Based Transceiver)を設置
→TIS-B:トラフィック情報サービス放送、
航空官署が把握している 周辺航空機の位置情報 を、航空機へ 送信
→FIS-B:飛行情報サービス放送
航空安全に係る情報と 気象情報を 送信
→ADS-B受信:航空官署等で、航空機の位置確認
地上運航者 (航空会社)でもモニタ
(インターネット経由でも 見られる)
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3.1キャプストーン計画とUAT (その6)
• 自動気象観測所(AWOS)当初はVHF音声で放送
→FIS-B対応中
・ 気象画像も
→ 全米(国家)気象ネットワークと連携中
・ 地上運航者向けインターネットモニタ
→ 既に新しいPCソフトが配布中
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3.1キャプストーン計画とUAT(その7)
• Universal Access Transceiver– DME帯域内の周波数 978MHz (伝送容量1Mbps)– 地上局(GBT)と機上局の送信時間を分離– 地上局はTDMA方式
– 機上局はタイムスロット方式ランダムアクセス(1秒に1回、自機の位置情報等を送信)(機体の上下にアンテナを2個搭載、4秒周期で切替)
1秒
地上 機上
TDMA 区切られたタイムスロットをランダムに選択して送信
0.2秒 0.8秒
① ③② ④ ①
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3.1キャプストーン計画とUAT (その8)キャプストーン機上装置(MFD)の例
フェーズⅠ後期からフェーズⅡ初期 (ⓒFAA資料)
• Traffic
• Weather
• Terrain
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市販の機上装置手前:表示装置(飛行経路ガイダンス対応)
奥:UAT本体(WAAS/GPS付8,000ドル程度)
と別の表示装置 (図1画面例の装置)
3.1キャプストーン計画とUAT (その9)
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製品版 地上装置(GBT)UAT機能に加え、1090MHz拡張スキッタADS-B受信機能付き
GBT(地上局)サイト
3.1キャプストーン計画とUAT (その10)
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UATによるジュノー空港の除雪車監視978MHzとは別な周波数
3.1キャプストーン計画とUAT (その11)
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験
宇宙航空研究開発機構(JAXA) との共同研究現地事務所・定置場:アンカレジ市 メリル飛行場日時:2006年7/11~8/3、9/13~10/10電子航法研究所は、機材とともに職員4名を交代で派遣、UAT信号強度を機上で測定した。 (写真 ⒸJAXA )
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その2)UAT信号強度測定記録装置(電子研製)
CPL
CPL
UAT
AD2ch PC
HDD
受信機は978MHzの受信信号を増幅して対数圧縮検波する。AD 変換(12Bit 2MS/s 2ch) カード付きノートPCでデジタル化。外付けハードディスクに 7秒毎に4秒連続の受信Log Video波形記録。
JAXA受信位置データ記録装置へ
抑圧バス
UAT受信機( 978MHz 2ch:ENRI製作)
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その3)UAT信号強度測定記録装置の
航空機(ボナンザ)内 実装状況
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その4)飛行実験風景(空対空 信号強度 測定)
(中央の写真:飛行実験中の表示画面、 周囲の状況写真は ⒸJAXA )
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下部アンテナ
-110
-100
-90
-80
-70
-60
-50
70000 71000 72000 73000 74000 75000 76000 77000 78000 79000
時間
強度
N888YA
GBT
横軸:時間(秒) 縦軸:信号強度換算値(dBm)(青■:相手機のADS-Bメッセージ、赤●:GBT) 9/28のFLT
3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その5)飛行実験(2時間)のデータ例(下側アンテナ)
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上部アンテナ
-110
-100
-90
-80
-70
-60
-50
70000 71000 72000 73000 74000 75000 76000 77000 78000 79000
時間
強度
N888YA
GBT
横軸:時間(秒) 縦軸:信号強度換算値(dBm)(青:相手機のADS-Bメッセージ、赤:GBT(少ない) 9/28のFLT
3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その6)飛行実験(2時間)のデータ例(上側アンテナ)
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その7)GBTメッセージ拡大図 (FIS-B情報)
G B T メ ッ セ ー ジ
0
0 .0 2
0 . 0 4
0 . 0 6
0 . 0 8
0 . 1
0 . 1 2
0 1 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0 4 0 0 0 5 0 0 0
時 間 ( u s )
強度(V)
横軸:時間(μ秒)、縦軸: ノイズレベルを0とした検波出力 (V)
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3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その8)ADS-Bメッセージの拡大図
ADS-Bメッセージ
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0 100 200 300 400 500
時間(us)
強度
(V)
横軸: 時間(μ秒)、縦軸: ノイズレベルを0とした検波出力(V)
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• 相手機と位置関係により、UATが信号を解読できない状態(リンク断)が発生した。
• 当所の受信機には上下どちらかのアンテナで十分な信号強度で受信。
• UAT装置の送信は1秒毎に上、上、下、下の順でアンテナを切り替える。(4秒周期)
• 受信では、規格、用途で異なるが、搭載したUAT装置は、上、下、上、下の順で切り替えて受信(2ch同時受信ではない)。
→ アンテナの切替えが互いに逆になって、電波が機体に遮られた可能性あり。
3.2 アラスカ州でのUAT飛行実験(その9)近距離で相手機とのリンク断
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位置情報を自動放送する航空機(位置情報を自動放送する航空機(ADSADS--B)B)
地上で把握された周辺の航空交通状況(TIS-B)
運航支援情報(空域・空港情報(空域・空港情報や気象情報)気象情報)((FISFIS--B)B)
GBT:地上送受信装置
自機
周辺機
操縦席表示のイメージ図(CAPSTONE初期)
4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置航空機の運航支援技術のイメージ
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その2)1090MHz 拡張スキッタ信号(SSRモードS応答信号)
ICAO ANNEX10 Vol. IV 米国RTCAの運用/技術基準(DO-260A,DO-267A,DO-286A)
パルス位置変調 112bit
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その3)
装置の概要 (破線は計画中)
TIS-Bサーバー
(航空機位置情報等の収集・編集・配信)
(計画中)
拡張スキッタ信号生成装置
(情報を 無線周波の拡張スキッタ信号に変換)
高周波部(電力増幅)(計画中)
ADS-B受信装置 兼
広域マルチラテレーション(WAM)実験装置
(製作中)
SSRモードS(接続計画中)
無指向性アンテナ
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その4)地上側の1090MHz拡張スキッタ送信装置
• 覆域(ターミナル管制区相当): 40NM• 航空機受信機の感度: -84dBm• 送信電力: 1 kw 程度 (尖頭値)
• 監視対象航空機数: 大250機(モードSの処理能力準用)
• 監視対象機1機当りのスキッタ送信回数:3.1回/秒• 大スキッタ送信回数:3.1×250+α=1000回/秒
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その5)評価用の受信装置・復号装置
拡張スキッタ復号装置(2系統で処理、
ダイバーシティは行わず)
記録装置(2系統のデータを収集)
ADS-B,TIS-B受信装置(機体上・下のアンテナに対応して2系統)
RF部
RF部
A/D変換 復号
A/D変換 復号
PC HDDなど
UATの経験から、実験の道具として製作、
室内実験、地上実験で使用、また、実験用航空機に搭載しての飛行実験に使用。
表示装置(計画中)
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その6)評価用の受信装置・復号装置
• 受信中心周波数 1090MHz(公称)• 受信感度 -84dBm (公称値、
受信機入力端子での解読レベル(MTL: Minimum Trigger Threshold Level)
• 拡張スキッタメッセージ出力端子
• プリアンブル検出トリガー出力端子
• 別途、GPSの位置と時刻データ、気圧高度計
の高度情報も取り込む
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4. 1090MHz拡張スキッタTIS-B装置(その7)今後の計画
• 高周波部(電力増幅)の製作
• TIS-Bサーバーの製作
• SSRモードS、 および
ADS-B受信装置兼 広域マルチラテレーション(WAM)実験装置 との接続
• 航空機上の表示装置の試作
• 空港周辺での飛行実験(デモ・フライト)H22年(目視の支援+ASAS Merging and Spacing?)
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5.まとめ
• TIS-Bの実施例:小型機向けのUAT• 機上監視(航空機相互の位置確認)と将来の
ASASには、ADS-Bが必要。
• 全ての航空機がADS-Bを搭載するまでの間、あるいはバックアップとして、TIS-Bが必要
• ADS-B,TIS-Bには幾つかの通信媒体がある
• 主流と考えられる1090MHz拡張スキッタによるTIS-B送信装置を試作した。